説明

プリント配線板

【目的】 電子部品の短命化及び回路の誤動作を確実に防止でき、かつ低コストでかつ比較的容易に製造できるプリント配線板を提供すること。
【構成】 配線板本体1の最外層にアルミニウム製の放熱器H1 を取付ける。放熱器H1 とグランドパターンとをベタ状の放熱用パターン2bを介して電気的に接続する。一般電子部品等から発生した熱は、グランドパターン及び放熱用パターン2bを経由して放熱器H1 へと伝導する。そして、熱は放熱器H1 のフィン7からプリント配線板10の外部へと放出される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリント配線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、高密度化かつ高集積化する傾向にあるプリント配線板では、配線板上にファインな導体パターンを形成し、かつ限られたスペースに複数の半導体及び一般電子部品を実装する必要がある。この場合、実装される部品の点数が多くなると、必然的に発熱量も増加することになる。よって、部品を保護しかつ回路の誤動作等を回避するためには、配線板の外部へ熱を効果的に放出する技術が必要となる。
【0003】そして、プリント配線板の放熱効果を向上させる技術としては、例えば以下に示すような方法が従来より提案されている。即ち、■配線のライン幅を広くとる方法、■発熱するライン上にはレジストを施さないという方法、■配線板内部に金属板を配置する方法(いわゆる金属板ベースプリント配線板)等である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記■〜■の従来方法では何れも放熱効果が不十分であったため、実装されている電子部品が短命化したり、回路に誤動作が生じるなどの欠点があった。
【0005】また、特に■の金属板ベースプリント配線板の製造工程においては、厚い金属板にスルーホールとなる穴を貫通させる必要があった。このため、工程が複雑になり、かつ製造コストも高くなるという問題があった。
【0006】本発明は上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的は、温度上昇に起因する電子部品の短命化及び回路の誤動作を確実に防止することができると共に、低コストでかつ比較的容易に製造することができるプリント配線板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明では、配線板本体の外面に放熱器を取付けるための導電性接合面を配線板本体の最外層に設け、かつその導電性接合面を介して前記放熱器とグランド層またはグランドパターンとを接続している。
【0008】
【作用】この構成によると、半導体や一般電子部品等から発生した熱は、グランド層またはグランドパターン及び導電性接合面を経由して放熱器へと伝導し、放熱器の外表面から配線板の外部へと放出される。
【0009】
【実施例】以下、本発明を具体化した各実施例1,2について図面に基づき詳細に説明する。
〔実施例1〕図1(a)及び(b)には、本実施例1の多層プリント配線板(以下、4層板という)10が示されている。前記4層板10は、内層パターン2a,2b及び外層パターン2cを備える配線板本体1と、その配線板本体1の外側面に取り付けられる放熱器H1 とによって構成されている。
【0010】配線板本体1は一枚の内層板1aとプリプレグ1bとからなる。配線板本体1を構成する絶縁性の基材3上には、銅等の金属によって、内層パターン2a,2bが形成されている。前記内層パターンのうちの表面側のもの2aは信号層であり、裏面側のもの2bはグランド層である。前記プリプレグ1bは内層板1aの上下両面に熱圧着されている。また、各プリプレグ1bの外表面には、外層パターン2cが形成されている。
【0011】また、前記プリプレグ1b上の一端側(図1(a) の右端側)には、導電性接続面としての放熱用パターン2dがベタ状に形成されている。また、配線板本体1には、めっきスルーホール5が形成されている。そして、前記めっきスルーホール5を介して放熱用パターン2dと前記内層のグランド層2bとが接続されている。この放熱用パターン2dの面積は、プリプレグ1bのスペースが許容する限度において、大きめに確保しておくことが好適である。前記配線板本体1の表面は、放熱用パターン2dの部分を除いて、ソルダーレジスト6によって被覆されている。
【0012】ここで、配線板本体1を製造する方法について簡単に説明する。配線板本体1を製造する場合の出発材料としては、例えば両面銅張積層板等が用いられる。両面銅張積層板には先ずめっきスルーホールとなる穴が透設され、その穴の内面には触媒核が付与された後、無電解銅めっき等が施される。次いで、積層板上の所定位置にはエッチングレジストが配置され、エッチングによって積層板上の銅箔の一部が溶解除去される。この処理を経ることにより、信号層2a及びグランド層2bを備えた内層板1aが形成される。
【0013】次に、内層板1aを二枚のプリプレグ1bで挟持し、高温下にて積層方向より圧力を加えることにより、両者1a,1bを熱圧着させる。その後、各プリプレグ1bの外表面にはめっきレジストが配され、銅めっきによって外層パターン2c及び放熱用パターン2dが形成される。その後、めっきレジストは除去され、次いで導体パターン2aの上面のみにソルダーレジスト6が形成される。
【0014】図1(a)及び(b)に示すように、本実施例1の放熱器H1 は、等間隔に並んだ複数のフィン7と、一対の取付け片8とを備えている。また、両取付け片8の間には、取付け溝8aが形成されている。この取付け溝8aは、配線板本体1の厚さより若干広い幅を有している。そして、前記放熱器H1 を形成する材料としては、熱伝導性に優れたアルミニウム等の金属材料が用いられている。
【0015】そして、配線板本体1における放熱用パターン2bが形成された部分を両取付け片8で挟持することにより、配線板本体1の外側面のうちの一つに放熱器H1が取り付けられた状態となる。この場合、両取付け片8の内壁面と放熱用パターン2dとは、例えばはんだ等によって接続される。
【0016】さて、この4層板10の構成によると、実装された半導体や一般電子部品等から発生した熱は、グランドパターン及び放熱用パターン2bを経由して放熱器H1 へと伝導する。そして、前記熱は放熱器H1 のフィン7から4層板10の外部へと放出され、このとき充分な放熱が図られる。故に本構成によると、従来問題であった温度上昇に起因する電子部品の短命化及び回路の誤動作等の発生を確実に防止することができる。
【0017】また、この4層板10は、従来の金属板ベースプリント配線板とは異なり、放熱のために厚い金属板を必要とするものではない。よって、金属板にスルーホールとなる穴を透設するというような面倒な作業も当然不要である。しかも、本構成において必要な放熱用パターン2dも、一般的なプリント配線板の製造プロセスによって形成可能なものであり、特別困難な工程を要するというものではない。以上のようなことからも、優れた4層板10を低コストにかつ比較的容易に製造できるということがわかる。
【0018】更に、この構成によれば、例えば配線板本体1の一端面に発熱量の多い大型のLSI等の電子部品(図1(a) にて示す二点鎖線)Pが集中して実装されている場合などに有効である。つまり、放熱器H1 を発熱源に近接して設置しておけば、放熱性が向上するためである。また、発熱源に近接して放熱器H1 を設置した場合、小型の放熱器H1 であっても充分な効果が得られるため、結果的に省スペース化にもつながる。
〔実施例2〕図2(a)及び(b)には、実施例2の4層板20が示されている。4層板20は、内層パターン12a,12b及び外層パターン12cを備える配線板本体11と放熱器H1 とからなる。この4層板20では、前記実施例1とは異なる位置、即ち配線板11の外表面に放熱器H2 が取付けられている。また、その取付け位置の違いに鑑み、放熱器H2 の形状等についても、前記実施例1とは若干相違している。
【0019】配線板本体11は一枚の内層板11aとプリプレグ11bとからなる。内層板11aを構成する絶縁性の基材13の表裏面には、銅等の金属により内層パターン12a,12bが形成されている。本実施例2では、前記内層パターンのうちの裏面側のもの12aが信号層であり、表面側のもの12bがグランド層である。前記プリプレグ11bは内層板11aの上下両面に熱圧着されている。また、各プリプレグ11bの外表面には、外層パターン12cが形成されている。
【0020】配線板本体11には、多数のめっきスルーホール15が密集して形成されている。そして、前記めっきスルーホール15の外層ランド15aは、実質的には放熱器H2 を取付けるための導電性接続面として機能している。これらのめっきスルーホール15は、内層のグランド層12bと電気的に導通している。
【0021】めっきスルーホール15の内壁面及び外層ランド15aの表面は、はんだによって被覆されている。一方、外層パターン12cの表面は、ソルダーレジスト16によって被覆されている。
【0022】図2(a)及び(b)に示すように、本実施例2の放熱器H2 は、等間隔に並んだ複数のフィン17と、取付け用の底部18とを備えている。この放熱器H2を形成する材料としては、前記実施例1と同様に熱伝導性に優れたアルミニウム等の金属材料が用いられている。そして、放熱器H2 の底部18は、外層ランド15aが密集している部分にはんだ等によって取付けられている。
【0023】さて、この4層板20の構成によると、実装された半導体や一般電子部品等から発生した熱は、グランド層12b及びめっきスルーホール15等を経由して放熱器H2 へと伝導する。そして、前記熱は放熱器H2 のフィン17から4層板20の外部へと放出される。故に本構成によると、従来の温度上昇に関する問題は起こることがなく、それに起因する電子部品の短命化及び回路の誤動作等の発生も確実になくなる。
【0024】また、この4層板20は、従来の金属板ベースプリント配線板のような厚い金属板を必要とするものではなく、しかもめっきスルーホール15自体も特殊な工程によって形成されるというわけでもない。以上のことからも、低コストにかつ比較的容易に優れた4層板20を製造できるということがわかる。
【0025】更に、この構成によれば、例えば配線板本体11の外表面に発熱量の多い大型のLSI等の電子部品(図2(a) にて示す二点鎖線)Pが集中して実装されている場合などに有効である。即ち、前記実施例1と同様の理由により、放熱性の改善かつ省スペース化が達成される。
【0026】本発明は上記各実施例のみに限定されることはなく、以下のような構成に変更することが可能である。例えば、(a)本発明は前記実施例1,2のような多層板に限らず、両面板や片面板に具体化することも可能である。この場合、放熱器H1 ,H2 は、グランドパターンに接続された放熱用パターンまたはめっきスルーホールの外層ランドに接続される。尚、本発明は6層板、8層板等のような多層板に具体化することも勿論可能である。
【0027】(b)めっきスルーホール5,15を介して放熱器H1 ,H2 とグランド層2b,12bとが接続された前記実施例1,2に代え、バイアホールを介して接続する構成であっても良い。
【0028】(c)放熱器H1 ,H2 と放熱用パターン2dまたはめっきスルーホール15の外層ランド15aとを接続する際、必ずしもはんだを使用しなくても良い。
(d)前記各実施例1,2のようなソルダーレジスト6,16は、設けても設けなくても何れでも良い。
【0029】(e)実施例1のような側面取付けタイプの放熱器H1 は、例えば四角形状の前記両面板10の一辺のみに限らず、二〜四辺に取り付けることも可能である。また、実施例2のような上面取付けタイプの放熱器H2 は、例えば前記4層板20の表面側ばかりでなく、裏面側にも取り付けることが可能である。また、その際の取付け個数も必要に応じて変更することができる。
【0030】(f)放熱器H1 ,H2 の形状、大きさ及びフィン7,17の枚数等は前記実施例1,2にて示したものに限定されることはない。例えば、前記側面取付けタイプの放熱器H1 の場合、直線状に限らず、L字状、コ字状に変更することが可能である。
【0031】同様に、上面取付けタイプの放熱器H2 であっても、長方形状でなく、L字状、コ字状、ロ字状、その他の任意の形状に変更することが可能である。
(g)放熱器H1 ,H2 の構成を変更することにより、プリント配線板10,20をケース等に固定するための取付け金具としての機能を兼用させることも可能である。このような構成にすると、より省スペース化を図ることができる。
【0032】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のプリント配線板によれば、温度上昇に起因する電子部品の短命化及び回路の誤動作を確実に防止することができるという優れた効果を奏する。また、このプリント配線板によれば、そのような効果に加えて、低コストでかつ比較的容易に製造することができるという優れた効果をも奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は実施例1の多層プリント配線板(4層板)10を示す平面図であり、(b)はそのA−A線における部分拡大断面図である。
【図2】(a)は実施例2の多層プリント配線板(4層板)20を示す平面図であり、(b)はそのB−B線における部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1,11 配線板本体、2a 導電性接合面としての放熱用パターン、10,20 多層プリント配線板としての4層板、12b グランド層、15a 導電性接合面としてのめっきスルーホールの外層ランド、H1 ,H2 放熱器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】配線板本体の外面に放熱器を取付けるための導電性接合面を配線板本体の最外層に設け、かつその導電性接合面を介して前記放熱器とグランド層またはグランドパターンとを接続したことを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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