説明

プリント配線板

【課題】 腐蝕され易い電接部の腐蝕を防止するためにメッキを施すと高価になり、また挿通穴に半田が付くのを防止するために電接部をテープまたはピーリング層で被覆すると後でテープまたはピーリング層を剥がす必要があり作業性が悪い。
【解決手段】 基板2上に装着される搭載部品であるウオーニングバルブ10の電気的接続部材に接続される複数の電接部6が形成されたプリント配線板において、電接部6上にカーボン層7が形成されていることを特徴とするプリント配線板1によって達成される。また、このカーボン層7が電気的接続部材の装着用に電接部6上に設けられた挿通穴5の周辺に形成されていることで達成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、搭載部品の電気的接続部材に接続される電接部が腐蝕および半田浸し法による半田付着から保護されるためのプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から図5に示すような自動車用の計器パネル50に取り付けられるプリント配線板30が、一般的に使用されている。この計器パネル50には速度計51や回転計等の電気部品の他に、水温、燃料、潤滑油等の危険状態を表示する有色ガラス等を照らすためのウオーニングバルブ10がプリント配線板30に電気的に接続されている。このプリント配線板30には、例えば柔軟性があるポリエステル材からなる基板2に銅箔からなる配線部3と適宜な位置に電気部品11を端子片により直接接続する電接部4が設けられている。また、電気部品11のピン状のリード線端子13を接続するための挿通穴5を形成した電接部6が設けられている。
【0003】図6に示す計器パネル50には、電気部品11の端子片12がプリント配線板30aの4本の電接部4に直接接触接続されるものである。即ち、計器パネル50にはプリント配線板30aが装着されており、このプリント配線板30aには電気部品11の4本の端子片12が直接接続される電接部4が設けられている。この電接部4は、電気的な接続がなされるために銅箔が露出されているが、他の部分は腐蝕から保護するために電接部4以外はピーリング層9によってマスキングされている。
【0004】また、図7に示すプリント配線板30bは、挿通穴5を有する電接部6にマスキングが被着されている。これは図5に示すようにリード線端子13や脚状端子が他の挿通穴に挿通された後、他の電接部に半田浸し法により半田付けされた場合に、装着されるリード線端子13やウオーニングバルブ10用の挿通穴5に半田が付くと装着が不完全になったり、装着できなかったりする場合がある。そこで、図7に示すように半田浸し法による半田付け工程に入る前に基板2上の電接部6をテープ52又はピーリング層53で被覆するものである。
【0005】また、図8示すプリント配線板30cは、実開昭56ー132778号公報に開示されているプリント配線板であり、挿通穴5への半田の付着を防止した説明図である。図中において、挿通穴54を有し半田浸し法により半田付けされる電接部55はそのままにして、後で半田付けされる電接部6にはリード線端子13(図5参照)の挿通穴5の周辺部56を囲む境界線57よりも外側の部分58および境界線57の一部分より内側に延びて挿通穴5内に抜ける細幅部分59とに挿通穴5の周辺部56を残してマスキング60が施されている。
【0006】上記構成のプリント配線板30cにおいては、もし挿通穴5にリード線端子13(図5参照)が挿通穴5に挿通されていない状態で半田付けされても挿通穴5には半田が付かない。したがって、リード線端子13を挿通穴5に装着する次工程でリード線端子13の装着が不完全になるようなことはない。そして、挿通穴5にリード線端子13が挿通されていると、このリード線端子13と周辺部56との間で半田付けが可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のプリント配線板においては、図6に示した電接部4は箔状の銅材が露出されているので酸化が進み腐蝕され易いので、電気部品11の端子片12との接触状態が低下するという問題がある。そのため、端子片12との接触圧力を強くする必要があり、端子片12や相手電接部4が大きくなり高価になるという問題がある。そして、上記腐蝕を防止するために電接部4および配線部3(図5参照)にメッキを施すと、一般にプリント配線板が大きいので高価になるという問題がある。
【0008】また、図7に示した電接部6はテープ52またはピーリング層53で被覆すると、次工程で電接部6にリード線端子13(図5参照)等を半田付けするときに挿通穴5に半田が付くのを防止することができる。しかし、次工程で電接部6にリード線端子13を半田付けするときには、テープ52またはピーリング層53を剥がす必要があるので、作業性が悪いという問題がある。
【0009】本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、電接部が腐蝕されず、かつ所望の電接部が半田浸し工程でも挿通穴への半田の付着を確実に防止するとともに、搭載部品の装着作業の向上を図ることができるプリント配線板を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、基板上に装着される搭載部品の電気的接続部材に接続される複数の電接部が形成されたプリント配線板において、電接部上にカーボン層が形成されていることを特徴とするプリント配線板によって達成することができる。また上記目的は、カーボン層が、電気的接続部材の装着用に電接部上に設けられた挿通穴の周辺に形成されていることによって達成することができる。
【0011】
【作用】本発明に係わるプリント配線板においては、電接部上にカーボン層が形成されているので、電接部に電気的接続部材を直接接続することができる。しかも、カーボンは腐蝕されず、かつ電気を通すので電気的接続に対する信頼性を向上させることができる。また、カーボンは電気抵抗体でもあるので厚みを調整することにより、電気的接続部材に所望の抵抗値を加えることができるので、搭載部品への突入電流を容易に制限することができる。
【0012】また、カーボン層が、電気的接続部材の装着用に電接部上に設けられた挿通穴の周辺に形成されているので、プリント配線板が他の電気的接続部材を接続するために半田浸し加工をされても挿通穴に半田が付着することはない。したがって、後から所望の搭載部品や電気的接続部材を半田付けする場合、確実に装着することができるので作業性の向上を図ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明のプリント配線板の実施の形態を図1乃至図4に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のプリント配線板の第1実施の形態を示す部分斜視図、図2は図1におけるA−A断面図、図3は本発明のプリント配線板の第2実施の形態を示す平面図、図4は図3におけるB−B断面図である。図1および図2においてプリント配線板1は、柔軟性があるポリエステル材からなる基板2をベースとして構成されているフレキシブル・プリント・サーキット(FPC)である。この基板2の裏面には例えば銅箔からなる配線部3が形成されている。この配線部3には、図6に示すような適宜な位置に電気部品11の端子片12を直接接続する電接部4と、図5に示すようなリード線端子13やウオーニングバルブ10を接続するために、中心に挿通穴5を有する電接部6が設けられている。
【0014】上記挿通穴5および電接部6が他の搭載部品のリード線端子13を接続するためにプリント配線板1が半田浸し加工された後で使用される場合には、挿通穴5に半田が付くと後工程に支障をきたすことになる。そのために、電接部6の表面にはカーボン層7が形成されている。
【0015】このカーボン層7の重量配合比率および厚みは以下のようなものが望ましい。即ち、ビスフェノール型エポキシ樹脂(油化シェル製、EK828)100重量部に対し、アミン系硬化剤(味の素製、アミキュアPN−23)20重量部、導電性カーボンブラック(ライオンアクゾ製ケッツエンブラックEC)20重量部を分散させ液状組成物である導電性ペーストを得る。この導電性ペーストを基板上にスクリーン印刷を用いて厚さ50μmのカーボン層が形成される。この時のペーストの処理温度は、80℃(30分間)である。
【0016】上述した構成の第1実施の形態においては、例えば図1に示した2個の挿通穴5aにリード線端子13(図5参照)が挿通された後、プリント配線板1が半田浸し法による加工が施されるとリード線端子13は電接部6aに半田付けされる。しかしながら、電接部6にはカーボン層7が形成されているので、挿通穴5には半田が付かない。したがって、ウオーニングバルブ10は後から挿通穴5に容易に挿通させることができる。また、カーボン層7は電導体であるからそのまま電接部6に電気的に接続されているので、カーボン層7と接触するウオーニングバルブ10のフランジ部10aの片面にも電接部(図示せず)が形成されている。したがって、従来のようなテープ等を剥がす工程が不要であり、搭載部品の装着作業の向上を図ることができる。
【0017】次に、本発明のプリント配線板の第2実施の形態を図3および図4に基づいて説明する。この第2実施の形態は図6に示した電気部品11に設けられた端子片12が直接プリント配線板1aに設けられた電接部4に接触して電気的に接続されるものである。即ち、基板2の裏面に銅箔からなる配線部3と4個の電接部4がプリントされており、この電接部4の表面にはカーボン層8が形成されている。
【0018】上記構成のプリント配線板1aにおいては、カーボンが電気的伝導体であると共に腐蝕されないことから、図6に示した端子片12を直接カーボン層8に接触させれば電接部4に電気的に接続されることになる。このとき、カーボン層8を剥がす必要はないから手間が省けるので作業効率の向上を図ることができる。
【0019】この場合の重量配分比率および厚みは下記のものが望ましい。即ち、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂(群栄化学製PL2211)をブチルセロソルブに固形分70%で溶解した液状組成物に、黒鉛粉末(日本坩堝SGP40)を樹脂100重量部に対して20重量部、導電性カーボンブラック(ライオンアクゾ製ケッツエンブラックEC)を10重量部を分散させ、さらに溶剤にて固形分60%となるように調製して液状組成物である導電性ペーストを得る。この導電性ペーストを基板上にスクリーン印刷を用いて厚さ30μmのカーボン層が形成される。この時のペーストの処理温度は、150℃(30分間)である。
【0020】また、カーボンは電気抵抗値を持つため、カーボン層8の厚さ等を調整することにより電接部4に任意の抵抗値を持たせることができる。これにより、電気部品11(図6参照)への突入電流を制限するための抵抗を入れる必要がなくなり、スペース的に小型化できると共に原価を低減させることができる。即ち、上記第1実施の形態の厚さ50μmのカーボン層の場合の電気抵抗率は、6Ω・cmであり、第2実施の形態の厚さ30μmのカーボン層の場合の電気抵抗率は、0.2Ω・cmであることが直流4端子法にて確認されている。
【0021】なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものでなく、適宜な変更を行うことにより、他の態様でも実施することができる。例えば、上記実施の形態では基板には柔軟性があるポリエステル材が使用されていたが、例えば硬質のプラスチック材からなる基板にも適用することができる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように本発明のプリント配線板によれば、電接部の表面にカーボン層が形成されている。したがって、搭載部品の電気的接続部材は電導体であるカーボン層に直接接触することで電接部に電気的に接続される。よって、カーボン層を剥がす必要がないので作業の手間が省け作業効率を向上させることができる。また、カーボン層の厚さ等を調整することにより電接部に任意の抵抗値を持たせることができる。これにより、搭載部品への突入電流を制限するための抵抗を入れる必要がなくなり、さらに小型化を図ることができると共に製造コストの低減を図ることができる。
【0023】更に、カーボン層が電気的接続部材の装着用に電接部上に設けられた挿通穴の周辺に形成されている。これにより、他の挿通穴に他の電気的接続部材が挿通された後、プリント配線板に半田浸し法による半田付け加工が施されても、カーボン層が形成されているので、電接部の挿通穴には半田が付着することはない。よって、後から装着される搭載部品の電気的接続部材が所望の挿通穴に容易かつ確実に挿通させることができ、作業効率の向上と共に信頼性の高いプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリント配線板の第1実施の形態を示す部分斜視図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明のプリント配線板の第2実施の形態を示す部分平面図である。
【図4】図3におけるB−B断面図である。
【図5】従来および本発明における計器パネルを示す斜視図である。
【図6】従来および本発明における搭載部品の端子片が直接接続される電接部を示す斜視図である。
【図7】従来のプリント配線板のマスキングされた電接部の説明図である。
【図8】従来のプリント配線板の挿通穴にマスキングされた電接部の説明図である。
【符号の説明】
1 プリント配線板
2 基板
3 配線部
4,6 電接部
5 挿通穴
7,8 カーボン層
10 ウオーニングバルブ(搭載部品)
11 電気部品(搭載部品)
12 端子片(電気的接続部材)
13 リード線端子(電気的接続部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に装着される搭載部品の電気的接続部材と接続される複数の電接部が形成されたプリント配線板において、前記電接部上にカーボン層が形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】 前記カーボン層が、前記電気的接続部材の装着用に前記電接部上に設けられた挿通穴の周辺に形成されていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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