説明

プルトップ缶の蓋と空気穴

【課題】従来プルトップ缶の開口部の大きさにより制限されていた飲料物、及び缶内の内容物の排出を開口部以外から空気を缶内に取り込むことで、スムーズかつすばやく排出させ、排出される内容物と混入する空気とのバランスにより突発的な内容物の飛散を押させる。又、飲料物においては従来の開口部の大きさにより制限されていた排出が、スムーズな排出によりさらに心地よい付加価値を提供する。
【解決手段】内容物を排出する開口部の反対側に空気穴を設けることで開口部において流入する空気と排出させれる内容物を独立して流れさせることでスムーズな内容物の排出を実現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プルトップ缶(以下 缶)に封入されている内容物即ち液体、飲料物を缶外に抵抗を少なく高効率で排出する機構、及び方法であり、このことより、人間が口内に摂取する内容物、特にビール等のある程度勢いを持って摂取することで快感を付帯させる飲料物は従来より快感を大きくさせることと、缶から他の容器に移す場合は内容物の飛散防止と移し変えの時間短縮を行える缶の蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の缶は開封後さまざまな方法で傾斜させ開口部から内容物を排出させる方法が一般的である。このとき内容物である液体が缶外に排出される原理は缶内に缶外の空気が進入しつつ缶内の液体が排出されることによる。これは缶内容物の残量と缶内の空気の和が缶の容積と同じであり、缶内容物と缶内の空気は反比例の関係にある。しかしながらこの関係はスムーズな関係を常に維持しているわけではない。
一般的には缶内容物を缶外に排出するときは缶本体を傾斜させることで開口部は排出される内容物と缶内に進入してくる空気で占有される。内容物の残量が多いときに缶を傾斜させる角度が大きいと内容物で開口部は塞がれ、一瞬排出が滞る。そして内容物の表面張力が失われたときに外部からまとまった空気が進入してくるとともに内容物もまとまった形で缶外に排出される。図1参照。
【0003】
このことから缶内の内容物を缶外の容器に移し変える場合などは容器外に飛散してしまい内容物を多少失ってしまうこともある。この現象を起こさないためには内容物が開口部を塞がないよう適度な角度を内容物の残量に合わせて調整しながら注ぎ込む必要がる。
【0004】
又、缶の内容物が飲料物である場合、通常人間が缶の開口部に直接口をつけ摂取する場合が普通であるが、特にビール等の勢いを要して摂取することで快感を得る飲料物の場合勢い余って顔面に内容物が飛散する可能性もある。これを防ぐためには前記に述べたように内容物の残量に合わせ、傾斜角度を調整しながら摂取しなくてはならないが、それではジョッキ、コップで摂取するものに比べ摂取時の快感が多少損なわれる。その為、内容物を飲み干す前に飽きてしまい、残してしまうこともある。
【0005】
これらのことを解決するために缶の開口部を大きくする方法も過去に提案されてはいるが、単に内容物を容器に移す場合はある程度このことで対策できるが、人間が直接口に摂取する場合は接触している人間の口よりもはみ出している部分から飲料物がこぼれる可能性がある。実際他容器に移しかえる用途と人間が直接口に摂取する用途では後者のほうの需要が多い。これら二通りの使用方法のために開口部に種類を持たせるにはコストと需要のバランスから考慮してもナンセンスである。その為、現在では一般的な人間の口の大きさに合わせた開口部となっているのが通例である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許公開平11−268739号公報では缶から内部の液体を注ぐ場合、缶外での液こぼれを防ぐ策となっているが、スムーズに液体を排出する対策とはなっておらず、傾斜角度によっては開口部での流出する液体と流入する空気との関係を解決できていない。
【0007】
特許公開2004−83029号公報では炭酸飲料用の缶において、きめ細かい気泡をどのように排出しながら作るかの策であり、人間がその内容物を勢いを持って摂取したい場合、若しくは外部容器に移す場合のスムーズな排出を目的とするものとは合致しない。
【0008】
特許公開平9−48435号公報においては開口部を大きくする策を、そして特許公開平5−54260号公報においては内容物の匂いを得ながら人間が摂取できる策をそれぞれ記載しているが、何れも内容物を排出する開口部を大きくしているだけであり、人間が直接内容物を摂取する場合、人間の口より上部に開口部が広がるため、缶内の内容物が少なくなり摂取する缶の角度がおおきくなった場合、内容物が顔面に飛散する可能性がある。
【0009】
缶内容物のスムーズな排出、及び内容物排出時の空気の流入による内容物飛散の対策は、他容器に移す場合は開口部を大きくすることである程度有効となるが、人間が内容物即ち飲料物を口から摂取する場合は単に開口部を大きくするだけでは缶内の残量と摂取時の缶傾斜角度によっては摂取している人間の顔面に飛散する場合もある。本発明は従来の前記に述べたように従来のプルトップ缶の開口部が人間の一般的な口の大きさにあっていることから、その開口部の大きさを従来のものから変更せず、缶内容物の人間への摂取、他容器への移し変えを含めて缶外に内容物を飛散させずスムーズに排出させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では従来の開口部のほかに開口部のある缶天面にもうひとつ空気の流入する穴を設けることで、缶外からの空気の流入、開口部からの内容物の排出、二つの要素に専用の通り道を与えることで課題を解決することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記の手段にて人間が直接缶内容物を摂取する場合と他容器に移し替える場合ともプルトップの開口部は共通化でき従来内容物の飛散防止等の策のために個々に開口部を変化させる必要がないので、缶製造工程においても共通化でき、コストは大きくならない。缶内容物を他容器に移す場合はスムーズな排出ができるため、従来より移し変えの時間が短くなり、ビール等の炭酸飲料においては開口部での流入する空気と流出する内容物との極端な入れ替わりがないため、飛散防止になり、尚且つ余計な泡立ちを抑える役目にもなる。そして、人間が直接缶内容物を摂取する場合、特にビール等のある程度の勢いが快感を付帯させる飲料物には従来よりスムーズな排出が可能なためより大きな摂取時の快感を付帯させる役割も持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は従来の缶において内容物で示す内容物排出時の内容物と流入してくる空気の関係を図にしたものである。本発明は内容物と空気にそれぞれ専用の穴を与えることと、従来の開口部の開口動作とともに専用の穴が準備できる機構で対策し、その説明を次に示す。
【実施例1】
【0013】
図2は前記に記した空気穴の配置を示した図である。開口部と反対に位置する場所に空気穴を設ける。内容物の排出時は缶を傾斜させるのが一般的なので図1で示したように図2に示した場所の空気穴は内容物が接触しない場所となる。即ち、缶を90度以上傾斜させないと空気穴からは内容物が漏れることはなく、開封後缶を90度以上傾斜させることは日常の使用においてあり得ない。
【0014】
本発明は従来のプルトップ缶の開閉行為において図2で示す空気穴ボスを同時に開口することである。そして、その開口ボスは本体の缶から千切れることなく空気の流入できる開口だけを用意する。空気穴ボスをプルトップノブの左右に振り分けているのは、缶の開封時にプルトップにかける指に邪魔にならない為であり、2箇所の開口部の面積の和が流入する空気の量となる。また、空気穴ボスの高さは図3で示すように缶本体の外周高さより高くなってはならない。これより高くすると、運搬時等接触時に空気穴ボスが折れ、内容物が流出する可能性があるためである。
【実施例2】
【0015】
図3は本発明の機構を説明するものである。従来の開封行為同様プルトップノブを「38」の方向に引き上げられることで、「36」のカシメた支点を中心に「34」の蓋は缶本体に押し込められる。このときの蓋に「33」の連結バーは「31」の開口ボスと連結しており、蓋が缶内部に押し込められるときに「39」の方向に引っ張られる。この外力により連結バーは開口ボスと連結されていることから、開口ボスは蓋の方向に引っ張られて折れる。折られた事により、新たに2箇所の空気穴が内容物を排出する開口部と反対側に生まれる。図4は本発明によって内容物が排出されている図である。この図のように内容物が押し込められた蓋に接触し、開口部からの空気の流入がわずかになっても開口ボスによって新たに空けられた空気穴から空気が進入することで排出が滞ることはない。そして、前記でも記したように飲料物についてはすスムーズな摂取が可能になり、従来より飲み応えが増加する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明を採用することで、例えばビール等の飲料物について消費者に対し新たな心地よさの付加価値を提供することができる。又、排出がスムーズになることで摂取する人間が途中で飽きてしまい飲み残すことも少なくなり、資源の無駄も無くすとともに飲みやすさから消費も増加させると推測する。本発明の機構も従来のものより然程部材を必要とせず、製造工程においても無理が少ない気候である。本発明を採用したことによるコスト増加は微小であるが、あえて市場価格を上昇させる程の物にはならないと考えられる。
今時勢において本発明のようなものは新たな市場を開発するきっかけとなり、景気の上昇となるべく要素であることを期待する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の缶内容物排出時の状態を示した説明図である。(0002、0013より)
【図2】空気穴の配置を示した平面図である。
【図3】開封行為により空気穴が生成される機構を示した図である。
【図4】本発明条件下での内容物排出状態の図である。
【符号の説明】
【0018】
11 缶本体
12 プルトップノブ
13 押し込まれた蓋
14 缶内の内容物
15 排出される内容物
16 流入して来る空気
21 連結バー
22 空気穴開口用ボス
23 プルトップノブ
24 排出開口部の蓋
25 缶本体
31 開口された空気穴開口用ボス
32 引き上げられたプルトップノブ
33 連結バー
34 押し込められた開口蓋
35 排出開口部
36 プルトップ開口の為の支点カシメ
37 缶本体
38 プルトップノブ引き上げ方向
39 開口する行為にて引っ張られた連結バー
41 流入する空気
42 排出される内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルトップ缶に封入されている液体、飲料物を高効率的に缶外に排出、摂取するための構造
【請求項2】
プルトップ缶のプルトップを開封すると同時に請求項1の構造を可能にする機構

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2006−111325(P2006−111325A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302530(P2004−302530)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(302047787)有限会社大和技研 (2)
【Fターム(参考)】