説明

プルボタンラッチ装置

【課題】把手固定ねじとプルボタンとの螺着が長期使用にも弛むことがなく、確実に作動するプルボタンラッチ錠の提供。
【解決手段】端部にばね収容部8と中央部にカム面10を形成したラッチ本体7と、内側に案内溝2を設けた外ケース1と、ラッチ本体を包持する内ケース14とからなり、外ケースの案内溝に摺動可能に嵌合する案内突起6を有するU字状スライド体4を挿入し、内ケースを外ケース内に挿入し、U字状スライド体をラッチ本体のカム面に当接させる。頭付把手固定ねじ19をラッチ本体及び内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔6,9を貫通させ、U字状スライド体に把持させ、更に扉に固定したガイドブッシュ21に嵌合する把手ガイド25内を挿通して表へ表側に突出させ、プルボタン26に螺着する。ガイドブッシュに嵌合する把手ガイドにより、抜き差し可能で、且つ回転不可能となる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は各種のキャビネット、戸棚類、自動車のダッシュボード等の開口部を有した筐体に対して開閉自由に蝶着される扉、蓋等をこれの閉塞時にはラッチの係止によって完全に閉じた状態に拘束し、開扉時には蓋体のプルボタンを単に引くことによってワンタッチで上記拘束を解いて自由に扉の開放操作することができるプルボタンラッチ装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、この種のプルボタンラッチ装置は、米国特許第3,830,535号明細書に記載されている錠装置2がある。これは板金製の向き合った壁16および18を有するハウジング部材14を有し、その壁から切抜きタブ20が両側に切り出されて壁16,18で構成される面外に飛び出しており、そこに設けられた孔22によってこの錠装置2が扉4に取付けられる。上記向き合った壁16,18には、駆動軸部材を受け入れるために、位置合わせされた対向するスロット24,26が設けられている。そして、その図5に示すように、ハウジング部材14には連続した水平壁28とその反対側に不連続の壁30を有し、これらは壁32とともに、ラッチ部材34のための前面開放型の案内経路を形成している。この実施例では、ハウジング部材14は金属で形成され、これらの壁は一体構造にプレスなどにより作られるが、ハウジング部材14はその他の材料を使用して、その他の製造技術によって作ることも可能である。
【0003】
上記ラッチ部材34はハウジング部材14の中にぴったり収容配置され、円弧形状のラッチ部分36を有し、またV字状の曲面形状の中間カム表面部38を有している。本実施例の場合は、そのラッチ部材34はプラスチック成型品であり、錠装置2の材料の節約、および軽量化のために切り欠き部分を設けている。その底部の切り欠き部40は、組立時にコイルばね42がラッチ部材34の切り欠き部40とハウジング部材14の一部後壁32の間にぴったり収まるように設けられている。そして、コイルばね42をハウジング部材14の中に配置したときに、ラッチ部材34は図4に示すように、ハウジング部材14の内方向および外方向に往復移動ができるようになっている。そしてハウジング部材14の壁28には、操作駆動軸46の突き出た部分を受け入れるための適当な直径の貫通孔44が設けられている。上記操作駆動軸46はステム部分48を有し、その一端部50はノブ12をねじ止めできるようにねじ切りされている。
【0004】
一方、上記操作駆動軸46はT字形状の上端部52を有し、T状をなす突起部54が前記対向するスロット24および26で受け止められ、これらのスロットが駆動軸46の運動の案内溝となる。またこの駆動軸46の上部の符号56で示される部分は曲面となっており、ラッチ部材34に設けられたカム表面38にスムーズに乗り上げることができるようになっている。この駆動軸46を貫通孔44の中を通し、2つのタブ54をスロット24,26に位置合わせし、ノブ12が駆動軸46のねじ端部50に取付けられると、上記駆動軸46がラッチ部材34に対して、操作可能な相対位置関係を保つことができるようになっている。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、前記米国特許第3,830,535号明細書に記載された錠装置2は、閉じられた扉4を開く場合にノブ12を掴んで引くと操作駆動軸46の上端部52のT状をなす突起部54が前記対向するスロット24,26に拘束されながら移動し、その上端部52の曲面56がラッチ部材34のカム面38と係合し、それによりラッチ部材34を後退させ、止め金具36とキャビネットの立ち枠6上の受座8との係合が解かれ、この単一作動により錠装置2の止め金がはずれ、扉4を開放位置にするものであるが、錠装置をキャビネットの扉4に取り付ける際に、そのラッチ部材34の止め金具36とキャビネットの立ち枠6上の受座8との相互の位置関係が正確でない場合があり、そのために扉4に固定されるハウジング部材14の取付け位置を微調整する必要が生じる。
【0006】
ところが、上記公知の錠装置ではラッチ部材34のカム面38と係合する上端部52の曲面56が操作駆動軸46と一体に形成されているため錠装置をキャビネットの扉4に取り付ける際に、扉4に固定されるハウジング部材14の取付け位置を微調整することができないという欠点がある。
そこで、上記錠装置ではハウジング部材14の取付け位置を微調整するために扉4の穿設された貫通孔10を必要以上に大きく形成し、その中に挿通された操作駆動軸46を貫通孔10内で動かしてハウジング部材14の取付け位置を微調整するようにしているが、しかしこの構造では操作駆動軸46を貫通孔10内で「あそび」があるために使用中にノブ12が弛み、ついには抜け落ちたり、あるいは操作駆動軸46上端部52の曲面56とラッチ部材34のカム面38との係合が不確実となり、終いにはノブ12を引いても受座8とラッチ部材34の止め金具36との係合が外れないために扉が開かなくなるという欠点があった。
【0007】
本考案は上記の事情に鑑みてなされたものであり、頭付把手固定ねじとU字状スライド体とを別体とし、その頭付把手固定ねじをU字状スライド体に挟持させることにより外ケースの扉への取付け位置の微調整を可能とし、加えて頭付把手固定ねじを扉に対して抜き差し可能で、かつ回転不可能とさせることにより把手固定ねじとプルボタンとの螺着が長期使用によっても弛むことがなく、確実に作動するプルボタンラッチ装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本考案は上記の目的を達成するために、長手方向の両端部に位置調整用止め孔を有し、案内溝を内側に設けた長方形の外ケースと、両側に円弧状の接触体と案内突起を備えたU字状スライド体と、端部にばね収容部を、中央部にカム面を形成し、かつ受座に係脱可能なラッチ本体と、該ラッチ本体を抱持する内ケースとから構成され、前記外ケースの案内溝に前記案内突起によってU字状スライド体を挿入し、さらにばねを前記ばね収容部に装着したラッチ本体を抱持させた状態の内ケースを前記外ケース内に挿入して、U字状スライド体の円弧状の接触体にラッチ本体のカム面を当接させ、前記U字状スライド体に挟持させた頭付把手固定ねじをラッチ本体と内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔を貫通させ、さらに扉の表側へ扉に対して抜き差し可能で、かつ回転不可能な状態で突出させ、該把手固定ねじの先端ねじ部にプルボタンを螺着したことを特徴とし、また前記外ケースの案内溝に前記案内突起によってU字状スライド体を挿入し、さらにコイルばねを前記ばね収容部に装着したラッチ本体を抱持させた状態の内ケースを前記外ケース内に挿入して、U字状スライド体の円弧状の接触体にラッチ本体のカム面を当接させ、前記U字状スライド体に挟持させた頭付把手固定ねじをラッチ本体と内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔を貫通させ、さらに扉に固定した把手ガイドブッシュに嵌合する把手ガイド内を挿通して扉の表側に突出させ、該把手固定ねじの先端ねじ部にプルボタンを螺着することによって扉に対して抜き差し可能で、かつ回転不可能としたことを特徴としている。
そして、前記把手ガイドブッシュ内には多角形の軸孔を設け、他方把手固定ねじを挿通する軸孔を有する把手ガイドの外形は前記多角形の軸孔に嵌合可能としたことを特徴としている。
【0009】
また、長手方向の両端部に位置調整用止め孔を有し、案内溝を内側に設けた長方形の外ケースと、両側に円弧状の接触体と案内突起を備えたU字状スライド体と、端部にばね収容部を、中央部にカム面を形成し、かつ受座に係脱可能なラッチ本体と、該ラッチ本体を抱持する内ケースとから構成され、前記外ケースの案内溝に前記案内突起によってU字状スライド体を挿入し、さらにばねを前記ばね収容部に装着したラッチ本体を抱持させた状態の内ケースを前記外ケース内に挿入して、U字状スライド体の円弧状の接触体にラッチ本体のカム面を当接させ、固定ねじ保持体を介して前記U字状スライド体に挟持させた頭付把手固定ねじをラッチ本体と内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔を貫通させ、さらに扉の表側へ扉に対して抜き差し可能で、かつ回転不可能な状態で突出させ、該把手固定ねじの先端ねじ部にプルボタンを螺着したことを特徴とし、また前記外ケースの案内溝に前記案内突起によってU字状スライド体を挿入し、さらにコイルばねを前記ばね収容部に装着したラッチ本体を抱持させた状態の内ケースを前記外ケース内に挿入して、U字状スライド体の円弧状の接触体にラッチ本体のカム面を当接させ、固定ねじ保持体を介して前記U字状スライド体に挟持させた頭付把手固定ねじをラッチ本体と内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔を貫通させ、さらに扉に固定した把手ガイドブッシュに嵌合する把手ガイド内を挿通して扉の表側に突出させ、該把手固定ねじの先端ねじ部にプルボタンを螺着することによって扉に対して抜き差し可能で、かつ回転不可能としたことを特徴としている。
【0010】
【考案の実施の形態】
次に、本考案の実施の形態について説明する。本考案に係るプルボタンラッチ装置をキャビネットに取り付ける際は、先ず長手方向の両端部に位置調整用止め孔を有し、長方形の外ケースの内側に設けた一対の案内溝に両側に設けた案内突起によってU字状スライド体を挿入し、ラッチ本体のばね収容部にコイルばねを装着した状態で内ケースの腕部内にラッチ本体を抱持させ、その状態で内ケースを前記外ケース内に挿入し組み込む。この組み込んだ状態ではラッチ本体先端のラッチが外ケースの窓から突出し、またU字状スライド体の両側に形成した円弧状の接触体がラッチ本体中央部のカム面に当接している。
次に、キャビネットの扉の適所に把手ガイドブッシュを取り付ける透孔をドリルであけ、その透孔に外周に抜け止めおよび回り止めを備えた把手ガイドブッシュを圧入固定し、この把手ガイドブッシュ内の八角形の軸孔に外周が八角形をし、かつ把手固定ねじを抜き差しできる軸孔をもつ把手ガイドを装着し、把手ガイドが回転できないようにする。
【0011】
その後、頭付把手固定ねじを外ケースの透孔から挿入させ、外ケース内の前記U字状スライド体の中央空間部からラッチ本体と内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔を貫通させ、さらに扉に固定した把手ガイドブッシュに嵌入する把手ガイド内を挿通して扉の表側に突出させる。この際、頭付把手固定ねじはU字状スライド体の中央空間部に挟持され、その頭部がU字状スライド体に当接される。
次に、キャビネットに取り付けられた受座に対してラッチ本体先端のラッチが正しい位置にあるかどうかをみて、もしその位置がずれている場合には上記外ケースの位置を調整して受座とラッチが正しく係合するように微調整する。この微調整の際にはU字状スライド体、ラッチ本体、内ケースが外ケースとともに容易に移動する。
さらに、上記微調整操作が終わったら扉の表側に突出された把手固定ねじの先端ねじ部にプルボタンを螺着し、プルボタンの底部によって前記把手ガイドの一端に形成した皿形状頭部を押圧させ、この把手ガイドの他端によって把手固定ねじの軸部に締結させ一体として頭付把手固定ねじを回転できないようにし、最後に、外ケースをキャビネットの扉にその長手方向の両端部に設けられた位置調整用止め孔に木ねじによって正しい位置にねじ止め固定する。
【0012】
したがって、上記扉を開く際はプルボタンを引くだけでU字状スライド体の両側に形成した円弧状の接触体がラッチ本体のカム面を押圧するからラッチ本体はコイルばねを圧縮して移動し、ラッチ本体先端のラッチと受座との係止が外れると同時にワンタッチで扉を開くことができる。反対に扉を閉じるには扉自体を押すだけでラッチ本体のラッチが受座の先端傾斜面によりコイルばねを圧縮してその傾斜面を乗り越えて係止され、扉が容易に閉塞される。
しかも、頭付把手固定ねじを把手ガイドブッシュと把手ガイドを介して扉に対して抜き差し可能で、かつ回転しないようにしたからプルボタンの螺着が長期使用によっても弛むことがない。
【0013】
さらに、他の実施の形態では前記U字状スライド体の中央空間部にその中で摺動可能な固定ねじ保持体を介在させてあるから、頭付把手固定ねじを外ケースの透孔から挿入させ、外ケース内の前記U字状スライド体の中央空間部の固定ねじ保持体の中央孔からラッチ本体と内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔を貫通させ、さらに扉に固定した把手ガイドブッシュに嵌合する把手ガイド内を挿通して扉の表側に突出させる。この際、頭付把手固定ねじはU字状スライド体の中央空間部で摺動可能な固定ねじ保持体を介してU字状スライド体に挟持され、その頭部が固定ねじ保持体に当接される。
したがって、上記外ケースの位置を調整して受座とラッチが正しく係合するように外ケースの位置を微調整する際には、U字状スライド体と固定ねじ保持体とが相互に摺動可能であるから、この微調整操作がきわめて容易となる。
【0014】
【実施例】
次に、本考案に係るプルボタンラッチ装置の実施例について図面を参照して説明すると、図1は本実施例の分解斜視図、図2は本実施例の正面図、図3は側面図であり、以下図4ないし図7はそれぞれ扉が掛け止め状態から開放される状態を順次示した断面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施例において外ケース1には箱形の両内側に案内溝2が設けられ、長手方向の突出した両端部には位置調整用の止め孔3が穿設されている。U字状をしたスライド体4にはその両側に円弧状の接触体5とその外側に案内突起6が形成されている。またラッチ本体7にはその端部にばね収容部8を備え、中央部には位置調整用通し孔9と、その両側にカム面10が形成され、先端には開口部を有するキャビネット11内の天板、底板、または側板のいずれかに固定された受座12に係脱可能なラッチ13が突設されている。
また、板状の内ケース14にはラッチ本体7を抱持する腕部15が4本突設されていて、それぞれの先端は互いに内向きに折曲され、中央に位置調整用通し孔16と両端部には位置調整用の止め孔17がそれぞれ形成されている。
【0016】
そして、これらを組み立てるには、前記外ケース1の案内溝2にU字状をしたスライド体4の案内突起6によってU字状スライド体4を挿入し、さらにコイルばね18をラッチ本体7のばね収容部8に装着し、そのラッチ本体7を内ケース14の腕部15内に抱持させ、そのコイルばね18を圧縮した状態のままの内ケース14を外ケース1内に挿入する。その際、内ケース14の腕部15が箱形の外ケース1両内側面を摺動して挿入され、ラッチ本体7先端のラッチ13が外ケース1の窓1Dから突出し、U字状スライド体4の円弧状の接触体5がラッチ本体7のカム面10に当接され、外ケース1の開口1Bが内ケース14で閉塞される。
さらに、これをキャビネット11に装着するには、扉20の適所に把手ガイドブッシュ21を取り付ける透孔22をドリルであけ、その透孔22に外周に抜け止めおよび回り止めを備えた把手ガイドブッシュ21を圧入固定し、この把手ガイドブッシュ21内の八角形の軸孔23に外周が八角形で、かつ把手固定ねじ19を抜き差しできる軸孔24をもつ把手ガイド25を挿入する。
【0017】
その後、頭付把手固定ねじ19を外ケース1の透孔1Aから挿入させ、外ケース1内に装着されたU字状スライド体4の中央空間部からラッチ本体7の位置調整用通し孔9と内ケースの位置調整用通し孔16とを貫通させ、さらに扉20に固定した把手ガイドブッシュ21に嵌入する把手ガイド25の軸孔24内を挿通して扉20の表側に突出させる。この際、頭付把手固定ねじ19がU字状スライド体4の中央空間部で挟持され、その頭部がU字状スライド体4に当接される。
次に、外ケース1を扉20に木ねじ34によって両端部に設けられた位置調整用止め孔3,17で仮止めした後、キャビネット1の所定の位置に取り付けられた受座12に対してラッチ本体先端のラッチ13が正しい位置にあるかどうかをみて、もしその位置がずれている場合には上記外ケース1の位置を調整して受座12とラッチ13が正しく係合するように微調整する。この微調整の際には頭付把手固定ねじ19が把手ガイド25に挿通されていて動かないが、外ケース1とともにU字状スライド体4、ラッチ本体7、内ケース14がそれぞれの中央空間部、位置調整用通し孔9、位置調整用通し孔16により容易に移動できる。
【0018】
さらに、上記微調整操作が終わったら扉20の表側に突出された把手固定ねじ19の先端ねじ部にプルボタン26を螺着し、強く締め付けこのプルボタン26の底部によって前記把手ガイド25の一端に形成した皿形状頭部27を押圧させ、これによってこの把手ガイド25の他端を把手固定ねじ19の軸部19Aに締結させ、頭付把手固定ねじ19は扉20に固定された把手ガイドブッシュ21と把手ガイド25とにより回転できないようにする。最後に、内ケース14を内蔵した外ケース1をキャビネットの扉20に木ねじ34によって両端部に設けられた位置調整用止め孔3,17を通して正しい位置にねじ止め固定して取付け作業が終了する。
【0019】
次に、本実施例の動作について図4ないし図7によって説明する。図4は図2のA−A断面図、図5は同じく図2のD−D断面図であり、この閉扉状態ではラッチ本体7先端のラッチ13がコイルばね18のばね力により付勢されて外ケース1の窓1Dから突出し、その係止部1Cによって脱出が阻止され、キャビネット11の所定の位置に固定された受座12と正しく係合されている。
そして、上記ラッチ本体7先端のラッチ13と受座12との係合状態から開扉する際は、図6、図7に示すようにプルボタン26を引くと、頭付把手固定ねじ19がU字状スライド体4の中央空間部に挟持され、その頭部がU字状スライド体4に当接しているから、頭付把手固定ねじ19によってU字状スライド体4が引きよせられ、その両側の円弧状の接触体5がラッチ本体7のカム面10を押し、ラッチ本体7がコイルばね18を圧縮しながら移動し、ラッチ本体先端のラッチ13と受座12との係止が外れると同時に頭付把手固定ねじ19によってU字状スライド体4、ラッチ本体7、内ケース14が引かれワンタッチで扉20を開くことができる。この開閉後にプルボタン26を手離せばラッチ本体7がコイルばね18によって押し出され先端のラッチ13が外ケース1の窓1Aから突出され、またU字状スライド体4も元の位置に復する。
反対に、扉20を閉じるには扉自体を押すだけでラッチ本体7のラッチ13の曲面が受座12の先端傾斜面12Aによりコイルばね18を圧縮してその傾斜面12Aを乗り越えて係止され、扉が容易に閉塞される。
【0020】
したがって、本実施例によればプルボタン26を引くだけで、頭付把手固定ねじ19によってU字状スライド体4が引きよせられ、その両側の円弧状の接触体5がラッチ本体7のカム面10を押し、ラッチ本体7がコイルばね18を圧縮しながら移動し、ラッチ本体先端のラッチ13と受座12との係止が外れワンタッチで扉20を開くことができる。この際、ラッチ本体7のカム面10を押圧する接触体5が円弧状に形成されているから頭付把手固定ねじ19による応力がラッチ本体7の移動状態にかかわらず、常にカム面10に均等に加わるためラッチ本体7が円滑に移動し、開扉が迅速に、かつ確実に行なえる。
【0021】
さらに、本実施例をキャビネットに取り付ける際は、頭付把手固定ねじ19をU字状スライド体4の中央空間部に挟持させたまま把手ガイド25に挿通するから作業が容易であり、取付け位置の微調整の際にも外ケース1とともにU字状スライド体4、ラッチ本体7、内ケース14がそれぞれの中央空間部、位置調整用通し孔9、位置調整用通し孔16により容易に移動し、取付け作業が迅速に、かつ確実にできる。
また、プルボタン26は扉20に固定された把手ガイドブッシュ21に八角形の把手ガイド25が嵌合され、さらにプルボタン26の底部によって前記把手ガイド25の一端に形成した皿形状頭部27を押圧させ、この把手ガイド25の他端を把手固定ねじ19の軸部19Aに締結させているから、長期使用によっても把手固定ねじ19からプルボタン26が弛むことがない。
反対に、扉20を閉じるには扉自体を押すだけでラッチ本体7のラッチ13がコイルばね18に抗して受座12の傾斜面12Aを乗り越えて係止され、扉がワンタッチで容易に閉塞できる。
【0022】
次に、他の実施例について図10ないし図12によって説明すると、図10は他の実施例の分解斜視図、図11はU字状スライド体と固定ねじ保持体との斜視図、図12はU字状スライド体と固定ねじ保持体を介在させた頭付把手固定ねじとの挟持状態を示す斜視図である。
本実施例は前記実施例と同様に、その両側に円弧状の接触体5とその外側に案内突起6が形成されたU字状スライド体4Aの中央空間部に固定ねじ保持体28を両面のU字形板30によって挾み摺動可能に嵌入させたものであり、この固定ねじ保持体28は頭付把手固定ねじ19が挿通する通し孔29を穿設したU字形板30をその両面に設け、この2枚のU字形板30を前後の支柱31により連結させ、その中間の両側は空間としたものである。そして、固定ねじ保持体28の基部の支柱31の両側にはU字状スライド体4Aの先端部に形成された突起32と係止する溝部33が形成されている。
【0023】
そして、本実施例においてプルボタンラッチ装置を組み立てるには、予めU字状スライド体4Aに両面のU字形板30によって挾み、その中央空間部に装着した後、外ケース1の案内溝2にU字状をしたスライド体4Aの案内突起6によってU字状スライド体4Aを挿入し、さらにコイルばね18をラッチ本体7のばね収容部8に装着し、そのラッチ本体7を内ケース14の腕部15内に抱持させ、そのコイルばね18を圧縮した状態のままの内ケース14を外ケース1内に挿入する。以下前記した実施例と同様な操作をする。
【0024】
したがって、上記他の実施例によれば頭付把手固定ねじ19を外ケース1の透孔1Aから挿入すると、U字状スライド体4Aに摺動可能に装着された固定ねじ保持体28の通し孔29を貫通し、ラッチ本体7の位置調整用通し孔9と内ケースの位置調整用通し孔16とを貫通し、さらに扉20に固定した把手ガイドブッシュ21に嵌入する把手ガイド25の軸孔24内を挿通して扉20の表側に突出する。この際頭付把手固定ねじ19の頭部が一方のU字形板30に当接され、また前後の支柱31の中間の空間でU字状スライド体4Aの中央空間部に挟持されていて、そのまま頭付把手固定ねじ19を把手ガイド25に容易に挿通できる。
【0025】
上記他の実施例をキャビネットに取り付ける場合の取付け位置を微調整する際には、U字状スライド体4Aと固定ねじ保持体28とが円滑に摺動するから外ケース1とともにU字状スライド体4Aとがより一層円滑に移動し、取付け作業がより迅速に、かつ確実にできる。
【0026】
【考案の効果】
上述した本考案によれば、プルボタンを引くだけで、頭付把手固定ねじによってU字状スライド体が引きよせられ、その両側の円弧状の接触体がラッチ本体のカム面を押し、ラッチ本体がコイルばねを圧縮しながら移動し、ラッチ本体先端のラッチと受座との係止が外れワンタッチで扉を開くことができる。この際、ラッチ本体のカム面を押圧する接触体が円弧状に形成されているから頭付把手固定ねじによる応力がラッチ本体の移動状態にかかわらず、常にカム面に均等に加わるためラッチ本体が円滑に移動し、開扉が迅速に、かつ確実に行なえる。
反対に、扉を閉じるには扉自体を押すだけでラッチ本体のラッチがコイルばねに抗して受座の傾斜面を乗り越えて係止され、扉がワンタッチで容易に閉塞できる。
【0027】
また、キャビネットに取り付ける際は、頭付把手固定ねじをU字状スライド体の中央空間部に挟持させたまま把手ガイドに挿通するから作業が容易であり、取付け位置の微調整の際にも外ケースとともにU字状スライド体、ラッチ本体、内ケースがそれぞれの中央空間部、位置調整用通し孔、位置調整用通し孔により容易に移動し、取付け作業が迅速に、かつ確実にできる。
さらに、U字状スライド体と固定ねじ保持体とが円滑に摺動するから、外ケースとともにU字状スライド体とがより一層円滑に移動し、取付け作業がより迅速に、かつ確実にできる。
また、プルボタンは扉に固定された把手ガイドブッシュに多角形の把手ガイドが嵌合され、さらにプルボタンの底部によって前記把手ガイドの一端に形成された皿形状頭部を押圧させ、この把手ガイドの他端を把手固定ねじの軸部に締結させているから、長期使用によっても把手固定ねじからプルボタンが弛むことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の分解斜視図である。
【図2】本実施例の正面図である。
【図3】本実施例の側面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図2のC−C断面図である。
【図6】図4のラッチの係合が外れた状態の断面図である。
【図7】図2のラッチの係合が外れた状態のB−B断面図である。
【図8】図3のD−D断面図である。
【図9】本実施例のU字状スライド体と頭付把手固定ねじとの挟持状態を示す斜視図である。
【図10】他の実施例の分解斜視図である。
【図11】U字状スライド体と固定ねじ保持体との斜視図である。
【図12】他の実施例のU字状スライド体と固定ねじ保持体を介在させた頭付把手固定ねじとの挟持状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 外ケース
1A 透孔
1B 開口
1C 係止部
1D 窓
2 案内溝
3,17 位置調整用止め孔
4,4A U字状スライド体
5 円弧状接触体
6 案内突起
7 ラッチ本体
8 ばね収容部
9,16 位置調整用通し孔
10 カム面
11 キャビネット
12 受座
13 ラッチ
14 内ケース
15 腕部
18 コイルばね
19 頭付把手固定ねじ
20 扉
21 把手ガイドブッシュ
23 八角形軸孔
24 軸孔
25 把手ガイド
27 皿形状頭部
28 固定ねじ保持体
29 通し孔
30 U字形板
31 支柱
32 先端部突起
33 溝部

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 案内溝を内側に設けた外ケースと、両側に円弧状の接触体と案内突起を備えたU字状スライド体と、端部にばね収容部を、中央部にカム面を形成し、かつ受座に係脱可能なラッチ本体と、該ラッチ本体を抱持する内ケースとから構成され、前記外ケースの案内溝に前記案内突起によってU字状スライド体を挿入し、さらにばねを前記ばね収容部に装着したラッチ本体を抱持させた状態の内ケースを前記外ケース内に挿入して、U字状スライド体の円弧状の接触体にラッチ本体のカム面を当接させ、前記U字状スライド体に挟持させた頭付把手固定ねじをラッチ本体と内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔を貫通させ、さらに扉の表側へ扉に対して抜き差し可能で、かつ回転不可能な状態で突出させ、該把手固定ねじの先端ねじ部にプルボタンを螺着したことを特徴とするプルボタンラッチ装置。
【請求項2】 案内溝を内側に設けた外ケースと、両側に円弧状の接触体と案内突起を備えたU字状スライド体と、端部にばね収容部を、中央部にカム面を形成し、かつ受座に係脱可能なラッチ本体と、該ラッチ本体を抱持する内ケースとから構成され、前記外ケースの案内溝に前記案内突起によってU字状スライド体を挿入し、さらにコイルばねを前記ばね収容部に装着したラッチ本体を抱持させた状態の内ケースを前記外ケース内に挿入して、U字状スライド体の円弧状の接触体にラッチ本体のカム面を当接させ、前記U字状スライド体に挟持させた頭付把手固定ねじをラッチ本体と内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔を貫通させ、さらに扉に固定した把手ガイドブッシュに嵌合する把手ガイド内を挿通して扉の表側に突出させ、該把手固定ねじの先端ねじ部にプルボタンを螺着することによって扉に対して抜き差し可能で、かつ回転不可能としたことを特徴とするプルボタンラッチ装置。
【請求項3】 案内溝を内側に設けた外ケースと、両側に円弧状の接触体と案内突起を備えたU字状スライド体と、端部にばね収容部を、中央部にカム面を形成し、かつ受座に係脱可能なラッチ本体と、該ラッチ本体を抱持する内ケースとから構成され、前記外ケースの案内溝に前記案内突起によってU字状スライド体を挿入し、さらにばねを前記ばね収容部に装着したラッチ本体を抱持させた状態の内ケースを前記外ケース内に挿入して、U字状スライド体の円弧状の接触体にラッチ本体のカム面を当接させ、固定ねじ保持体を介して前記U字状スライド体に挟持させた頭付把手固定ねじをラッチ本体と内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔を貫通させ、さらに扉の表側へ扉に対して抜き差し可能で、かつ回転不可能な状態で突出させ、該把手固定ねじの先端ねじ部にプルボタンを螺着したことを特徴とするプルボタンラッチ装置。
【請求項4】 案内溝を内側に設けた外ケースと、両側に円弧状の接触体と案内突起を備えたU字状スライド体と、端部にばね収容部を、中央部にカム面を形成し、かつ受座に係脱可能なラッチ本体と、該ラッチ本体を抱持する内ケースとから構成され、前記外ケースの案内溝に前記案内突起によってU字状スライド体を挿入し、さらにコイルばねを前記ばね収容部に装着したラッチ本体を抱持させた状態の内ケースを前記外ケース内に挿入して、U字状スライド体の円弧状の接触体にラッチ本体のカム面を当接させ、固定ねじ保持体を介して前記U字状スライド体に挟持させた頭付把手固定ねじをラッチ本体と内ケースのそれぞれの位置調整用通し孔を貫通させ、さらに扉に固定した把手ガイドブッシュに嵌合する把手ガイド内を挿通して扉の表側に突出させ、該把手固定ねじの先端ねじ部にプルボタンを螺着することによって扉に対して抜き差し可能で、かつ回転不可能としたことを特徴とするプルボタンラッチ装置。
【請求項5】 把手ガイドブッシュ内には多角形の軸孔を設け、他方把手固定ねじを挿通する軸孔を有する把手ガイドの外形は前記多角形の軸孔に嵌合可能としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載のプルボタンラッチ装置。
【請求項6】 長方形の外ケースとこれに挿入される内ケースの長手方向の両端部に位置調整用止め孔を形成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1記載のプルボタンラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図9】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【登録番号】第3026885号
【登録日】平成8年(1996)5月8日
【発行日】平成8年(1996)7月23日
【考案の名称】プルボタンラッチ装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−458
【出願日】平成8年(1996)1月17日
【出願人】(000148807)株式会社太田製作所 (10)