説明

プルーフリーディング・プライマー伸長

本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応を含むプライマー伸張反応であって、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼが、完全には相補しないプライマーを校正し、それによりその配列において変動を有しうる標的核酸の増幅及び検出を可能にする、反応を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の背景
核酸増幅技術の開発は、遺伝子分析及びエンジニアリングサイエンスに革命を起こした。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、例えば診断、法医学、又は他の適用の一部として標的核酸検出を促進するため、選択されるプライマー核酸を用いて特定の標的核酸を増幅するために頻繁に使用されている。プライマーは、通常、互いに向かって伸長するように設計されている対で機能して、選択される標的領域をカバーする。典型的PCRサイクルには、高温(例えば、85℃以上)の変性ステップで二本鎖核酸の鎖が互いに別々になるステップ、低温(例えば、45〜65℃)アニーリングステップでプライマーが別々になった一本鎖とハイブリダイズするステップ、及び中温(例えば、72℃位)伸長ステップで核酸ポリメラーゼが前記プライマーを伸長させるステップを含む。2種類の温度による熱サイクル手順も用いられる。これらは、一般に、高温変性ステップと低温アニール伸長ステップを含む。
【0002】
PCRはまた、例えば、1987年7月28日付けでMullisらに交付された「PROCESS FOR AMPLIFYING,DETECTING,AND/OR CLONING NUCLEIC ACID SEQUENCES」と題された米国特許番号第4,683,195号、1987年7月28日付けでMullisらに交付された「PROCESS FOR AMPLIFYING NUCLEIC ACID SEQUENCES」と題された米国特許番号第4,683,202号、及び1990年10月23日付けでMullisらに交付された「PROCESS FOR AMPLIFYING,DETECTING,AND/OR CLONING NUCLEIC ACID SEQUENCES USING A THERMOSTABLE ENZYME」と題された米国特許番号第4,965,188号を含めた多くの異なる米国特許に記載されている。さらに、PCR関連技術もまた、例えば、Innisら(編)、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、Elsevier Science & Technology Books(1990)、Innis etら(編)、PCR Applications:Protocols for Functional Genomics, Academic Press(1999)、Edwardsら、Real‐Time PCR、Taylor & Francis、Inc.(2004)、及びRapleyら、Molecular Analysis and Genome Discovery、John Wiley & Sons、Inc.(2004)などの様々な他の刊行物に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の簡単な概要
本発明はプライマー伸長反応の実施方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記方法は、以下のステップ:
a.オリゴヌクレオチドを、(i)鋳型核酸及び(ii)3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼと接触させ、ここで:
i.前記オリゴヌクレオチドが、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれない修飾ヌクレオチドを含んでなり;
ii.前記修飾ヌクレオチドが、前記オリゴヌクレオチドの3’又は5’末端ヌクレオチドではなく、また3’末端から二番目のヌクレオチドでもなく;
iii.前記オリゴヌクレオチドには3’部分及び5’部分があり、ここで、前記3’部分は、前記修飾ヌクレオチドの3’側に存在するオリゴヌクレオチド内のヌクレオチドを含んでなり、且つ、前記5’部分は、前記修飾ヌクレオチドの5’側に存在するオリゴヌクレオチド内のヌクレオチドを含んでなり;並びに
iv.前記オリゴヌクレオチドの3’部分が鋳型核酸に対して100%の相補性を持たない場合に、前記接触ステップは、前記ポリメラーゼがオリゴヌクレオチドの3’部分を鋳型特異的様式で校正できるようにするのに好適な条件下で実施され;そして
b.前記オリゴヌクレオチドを、鋳型依存的様式で伸長することによって、プライマー伸長反応を実施する、
を含んでなる。
【0004】
いくつかの実施形態において、前記オリゴヌクレオチドの3’部分は、校正前に鋳型核酸に対して70〜100%の相補性を持つ。
いくつかの実施形態において、前記鋳型核酸は、生体サンプルからのものである。いくつかの実施形態において、前記鋳型核酸は、ウイルス又は細菌ゲノムからのものである。
いくつかの実施形態において、前記鋳型核酸は、RNAである。いくつかの実施形態において、前記鋳型核酸は、DNAである。
【0005】
いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、2’位に‐H以外の部分を含んでなる。いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、アミノ、O‐メチル、OH、O‐ホスファート、及びホスホロチオアートから成る群から選択される2’部分を含んでなる。
いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、前記オリゴヌクレオチドの3’末端から2〜10ヌクレオチドの間に存在する。いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3’末端から5〜7ヌクレオチドの間に存在する。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは:
15〜40ヌクレオチドの長さであり;
そのオリゴヌクレオチドの全長にわたって鋳型核酸に対して少なくとも70%の相補性を持ち;及び/又は
前記修飾ヌクレオチドが、前記オリゴヌクレオチドの3’末端から2〜10ヌクレオチドの間に存在する。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記ポリメラーゼは、熱可逆的共有結合修飾を含んでなるが、ここで、アルカリpHの水性緩衝液中、50℃より高い温度でのインキュベーションが、共有結合修飾を逆戻りさせ、20分未満で酵素活性の少なくとも二倍の上昇をもたらす。
【0008】
いくつかの実施形態において、ステップbは、ポリメラーゼ連鎖反応を含んでなる。いくつかの実施形態において、ステップbは、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応を実施するステップを含んでなる。
いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、蛍光部分を含まない。
【0009】
本発明はまた、本明細書中に記載した試薬のうちの1以上を含んでなる反応混合物も提供する。いくつかの実施形態において、前記反応混合物は、オリゴヌクレオチドを含んでなり、前記オリゴヌクレオチドが核酸ポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれない修飾ヌクレオチドを含んでなり、ここで、前記修飾ヌクレオチドは、前記オリゴヌクレオチドの3’又は5’末端ヌクレオチドではなく、また3’末端から二番目のヌクレオチドでもなく、且つ、前記修飾ヌクレオチドは、蛍光部分を含まない。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記反応混合物は、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼをさらに含んでなる。いくつかの実施形態において、前記反応混合物は、鋳型核酸をさらに含んでなる。いくつかの実施形態において、前記反応混合物は、デオキシヌクレオシド三リン酸をさらに含んでなる。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記オリゴヌクレオチドには、15〜40ヌクレオチドの長さがある。
いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、前記オリゴヌクレオチドの3’末端から3〜10ヌクレオチドの間に存在する。
いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、2’位に‐H以外の部分を含んでなる。いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、アミノ、O‐メチル、OH、O‐ホスファート、及びホスホロチオアートから成る群から選択される2’部分を含んでなる。
【0012】
本発明は、本明細書中に記載した試薬のうちの1以上を含んでなるキットをさらに包含する。いくつかの実施形態において、前記キットは、オリゴヌクレオチドを含んでなり、そのオリゴヌクレオチドは、核酸ポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれない修飾ヌクレオチドを含んでなるが、ここで、前記修飾ヌクレオチドは、前記オリゴヌクレオチドの3’又は5’末端ヌクレオチドではなく、また3’末端から二番目のヌクレオチドでもなく、且つ、前記修飾ヌクレオチドは蛍光部分を含まない。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記キットは、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼを含んでなる。
いくつかの実施形態において、前記キットは、デオキシヌクレオシド三リン酸をさらに含んでなる。
いくつかの実施形態において、前記オリゴヌクレオチドには、15〜40ヌクレオチドの長さがある。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、前記オリゴヌクレオチドの3’末端から3〜10ヌクレオチドの間に存在する。いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、2’位に‐H又は‐OH以外の部分を含んでなる。いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、アミノ、O‐メチル、‐OH、O‐ホスファート、及びホスホロチオアートから成る群から選択される2’部分を含んでなる。
【0015】
本発明はまた、核酸ポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれない修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチドも提供するが、ここで、前記修飾ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3’又は5’末端ヌクレオチドではなく、また3’末端から二番目のヌクレオチドでもなく、且つ、前記修飾ヌクレオチドは蛍光部分を含まない。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記オリゴヌクレオチドには、15〜40ヌクレオチドの長さがある。
いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3’末端から3〜10ヌクレオチドの間に存在する。
いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、2’位に‐H又は‐OH以外の部分を含んでなる。いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、アミノ、O‐メチル、OH、O‐ホスファート、及びホスホロチオアートから成る群から選択される2’部分を含んでなる。
【0017】
本発明はまた、生体サンプル中の生物学的実体の存在、不存在、又はその量の検出方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記方法は、以下のステップ:
a.オリゴヌクレオチドを、(i)生物学的実体からの核酸を持っていると疑われる生体サンプル及び(ii)3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼと接触させ、ここで、前記オリゴヌクレオチドは、生物学的実体からの核酸に対して実質的に相補性を持ち;
b.ポリメラーゼ連鎖反応を実施し、それによって、前記オリゴヌクレオチドを鋳型依存的様式で伸長して、前記生物学的実体からの核酸に対して相補性を持つポリヌクレオチド産物を生じさせ;
c.前記ポリヌクレオチド産物又はその相補体を定量し;そして
d.ポリヌクレオチド産物又はその相補体の量を、生体サンプルの生物学的実体の量、又は存在若しくは不存在に相関させる、
を含んでなる。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記定量ステップは、定量的リアルタイムPCRを含んでなる。
いくつかの実施形態において、前記生物学的実体は、ウイルス、細菌、又は癌細胞である。いくつかの実施形態において、前記ウイルスは、HIV、HBV、又はHCVである。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記PCRは、オリゴヌクレオチドとウイルス核酸の間に0、1、2、又は3つのミスマッチが存在するか否かに関係なく、オリゴヌクレオチドの伸長を可能にする条件下でのステップを含んでなる。いくつかの実施形態において、前記オリゴヌクレオチドには、生物学的実体からの核酸と1つ以上のミスマッチがあり、そしてここで、前記ポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性が、前記オリゴヌクレオチドを校正してポリヌクレオチド産物をもたらす、すなわち、そのポリヌクレオチド産物に完全な相補性をもたらす。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記実施ステップは、そのうちの一部が3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いている1又は複数のポリメラーゼをさらに含んでなる。
いくつかの実施形態において、前記実施ステップは、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を欠いているか、又は実質的に欠いているポリメラーゼを含まない。
【0021】
定義
「a」、「an」、及び「the」といった語句は、別段のはっきりと指示する文脈がない限り、複数の指示対象物も含む。
【0022】
用語「核酸」とは、リボース核酸(RNA)又はデオキシリボース核酸(DNA)ポリマーに対応させることができるモノマーのポリマー、又はその類似体を指す。これには、RNA及びDNAのようなヌクレオチドポリマー、並びにその修飾形態、ペプチド核酸(PNAs)、ロックされた核酸(LNA(商標))等が含まれる。ある適用において、前記核酸は、複数のモノマータイプを含むポリマー、例えばRNA及びDNAサブユニットの両者であってもよい。核酸は、例えば、染色体又は染色体セグメント、ベクター(例えば、発現ベクター)、発現カセット、裸のDNA又はRNAポリマー、アンプリコン、オリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ等であっても、又はそれを含んでもよい。核酸は、例えば、一本鎖又は二本鎖であってもよい。別段の指示がない限り、特定の核酸配列は、明示的に示した任意の配列に加え、相補配列を任意に含んでなるか又はそれをコード化している。
【0023】
核酸は、典型的には、一本鎖又は二本鎖であり、通常、ホスホジエステル結合を含むであろうが、本明細書で概説するように、場合によっては、別の骨格を有する核酸類似体も含まれ、例えば、ホスホラミダイト(Beaucageら(1993)Tetrahedron 49(10):1925;Letsinger(1970)J.Org.Chem.35:3800;Sprinzlら(1977)Eur.J.Biochem.81:579;Letsingerら(1986)Nucl.Acids Res.14:3487;Sawaiら(1984)Chem.Lett.805;Letsingerら(1988)J.Am.Chem.Soc.110:4470;及びPauwelsら(1986)Chemica Scripta 26:1419)、ホスホロチオアート(Magら(1991)Nucleic Acids Res.19:1437及び米国特許番号第5,644,048号)、ホスホロジチオアート(Briuら(1989)J.Am.Chem.Soc.111:2321)、O‐メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein,Oligonuclceotides and Analogues:A Practical Approach,Oxford University Press(1992))、並びにペプチド核酸骨格及び結合(Egholm(1992)J.Am.Chem.Soc.114:1895;Meierら(1992)Chem.Int.Ed.Engl.31:1008;Nielsen(1993)Nature365:566;及びCarlssonら(1996)Nature380:207)が含まれるがこれだけに限定されるものではない。
【0024】
他の類似体核酸には、正電荷骨格を有するもの(Denpcyら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:6097);非イオン性骨格を有するもの(米国特許番号第5,386,023号、同第5,637,684号、同第5,602,240号、同第5,216,141号、及び同第4,469,863号;Angew(1991)Chem.Intl.Ed.English 30:423;Letsingerら(1988)J.Am.Chem.Soc.110:4470;Letsingerら(1994)Nucleoside & Nucleotide 13:1597;Chapters 2及び3、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Ed.Y.S.Sanghvi及びP.Dan Cook;Mesmaekerら(1994)Bioorganic & Medicinal Chem.Lett.4:395;Jeffsら(1994)J.Biomolecular NMR 34:17;Tetrahedron Lett.37:743(1996))、並びに米国特許番号第5,235,033号及び同第5,034,506号、及びChapers 6及び7、ASC Symposium Series 580、Carbohydrate Modifications in Antisense Research、Ed.Y.S.Sanghvi及びP.Dan Cookに記載のものを含む非リボース骨格が含まれる。数種の核酸類似体が、例えば、Rawls、C & E News、1997年6月2日、35ページにも記載されている。前記リボース‐リン酸骨格のこのような修飾は、標識部分のような付加的部分の付加を促進するため、又は生理的環境におけるこのような分子の安定性と半減期を変えるためにおこなうことができる。
【0025】
核酸に典型的に見られる天然の複素環塩基(例えば、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシル)に加えて、核酸類似体にはまた、非天然複素環又は他の修飾ヌクレオチドを持つものが含まれ、それらの多くは本明細書で記載されるか又は別段に引用されている。特に、多くの非天然塩基は、さらに、例えばSeelaら(1991)Helv.Chim.Acta 74:1790、Greinら(1994)Bioorg.Med.Chem.Lett.4:971‐976、及びSeelaら(1999)Helv.Chim.Acta 82:1640に記載されている。
【0026】
さらに例示すると、融解温度(Tm)修飾剤として作用するヌクレオチドで使用される特定の塩基もまた任意に含まれる。たとえば、これらの一部には、7‐デアザプリン(例えば、7‐デアザグアニン、7‐デアザアデニン等)、ピラゾロ〔3,4‐d〕ピリミジン、プロピニル‐dN(例えば、プロピニル‐dU、プロピニル‐dC等)等が含まれる。たとえば、1999年11月23日付けでSeelaに対して交付された「SYNTHESIS OF 7‐DEAZA‐2´‐DEOXYGUANOSINE NUCLEOTIDES」と題された米国特許番号第5,990,303号を参照のこと。
【0027】
他の代表的複素環塩基には、例えば、ヒポキサンチン、イノシン、キサンチン;2‐アミノプリン、2,6‐ジアミノプリン、2‐アミノ‐6‐クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン及びキサンチンの8‐アザ誘導体;アデニン、グアニン、2‐アミノプリン、2,6‐ジアミノプリン、2‐アミノ‐6‐クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン及びキサンチンの7‐デアザ‐8‐アザ‐誘導体;6‐アザシトシン;5‐フルオロシトシン;5‐クロロシトシン;5‐ヨードシトシン;5‐ブロモシトシン;5‐メチルシトシン;5‐プロピルシトシン;5‐ブロモビニルウラシル;5‐フルオロウラシル;5‐クロロウラシル;5‐ヨードウラシル;5‐ブロモウラシル;5‐トリフルオロメチルウラシル;5‐メトキシメチルウラシル;5‐エチニルウラシル;5‐プロピオニルウラシル等が含まれる。
【0028】
修飾ヌクレオチド及びヌクレオチドの他の例はまた、1996年1月16日付けでFroehlerらに対して交付された「OLIGONUCLEOTIDES CONTAINING 5‐PROPYNYL PYRIMIDINES」と題された米国特許番号第5,484,908号、1997年7月8日付けでFroehlerらに対して交付された「ENHANCED TRIPLE‐HELIX AND DOUBLE‐HELIX FORMATION WITH OLIGOMERS CONTAINING MODIFIED PYRIMIDINES」と題された米国特許番号第5,645,985号、1998年11月3日付けでFroehlerらに対して交付された「METHODS OF USING OLIGOMERS CONTAINING MODIFIED PYRIMIDINES」と題された米国特許番号第5,830,653号、2003年10月28日付けでKochkineらに対して交付された「SYNTHESIS OF [2.2.1]BICYCLO NUCLEOSIDES」と題された米国特許番号第6,639,059号、2001年10月16日付けでSkouvに対して交付された「ONE STEP SAMPLE PREPARATION AND DETECTION OF NUCLEIC ACIDS IN COMPLEX BIOLOGICAL SAMPLES」と題された米国特許番号第6,303,315号、及び2003年5月15日付けで公開されたKochkineらによる「SYNTHESIS OF [2.2.1]BICYCLO NUCLEOSIDES」と題された米国特許公報番号第2003/0092905号にも記載されている。
【0029】
「オリゴヌクレオチド」とは、少なくとも6個の核酸モノマー単位(例えば、ヌクレオチド)、例えば、少なくとも8、10、12、又は15個のモノマー単位を含む核酸を指す。オリゴヌクレオチドの正確な大きさは、通常、そのオリゴヌクレオチドの最終的機能又は用途を含む様々な要因に依存している。典型的には、ヌクレオチド単量体は、そのような対イオンが存在している場合には、関連対イオン、例えばH+、NH4+、Na+等を含む、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリダート、ホスホルアミダート等を含めたホスホジエステル結合又はその類似体によって連結される。オリゴヌクレオチドは、既存の又は天然の配列の分離、DNAの複製又は増幅、逆転写、適切な配列のクローンニング及び制限消化、あるいは、例えば、Narangら(1979)Meth.Enzymol.68:90‐99のホスホトリエステル法;Brownら(1979)Meth.Enzymol.68:109‐151のホスホジエステル法;Beaucageら(1981)Tetrahedron Lett.22:1859‐1862のジエチルホスホラミデート法;Matteucciら(1980)J.Am.Chem.Soc.103:3185‐3191のトリエステル法;自動化合成方法;又は1984年7月3日付けでCaruthersらに対して交付された「ポリヌクレオチドの調製過程」と題された米国特許番号第4,458,066号の固体支持体法などの方法による直接的な化学合成、あるいは当業者に知られているその他の方法を含めたいずれかの好適な方法によって随意に調製されるが、これだけに限定されるものではない。
【0030】
用語「熱安定性ポリメラーゼ」とは、熱(例えば、90〜95℃)に対して安定であり、熱耐性があり、そして二本鎖核酸の変性を達成するのに必要な、時間の温度上昇に晒された場合、続くプライマー伸長反応を達成するのに十分な活性を残し、且つ、不可逆的変性(不活性)状態にならない酵素を指す。核酸変性のために必要な加熱条件は、前記技術分野で周知であり、例えば、米国特許番号第4,583,202号、同第4,683,195号、及び同第4,985,188号に例示されている。本明細書で使用される場合、熱安定性ポリメラーゼは、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)等の温度連鎖反応における使用に好適である。本明細書の目的のための「不可逆的変性」は、酵素活性の恒久的、且つ、完全な喪失を指す。熱安定性ポリメラーゼについて、酵素活性は、鋳型核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物を形成させるのに適切な様式でのヌクレオチドの組み合わせの触媒を指す。好熱細菌由来の熱安定性DNAポリメラーゼとしては、例えば、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーマス・アクアティクス(Thermits aquations)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)、サーマス属sps17、サーマス属Z05、サーマス・カルドフィルス(Thermus caldophilus)、バチルス・カルドテナクス(Bacillus caldotenax)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neopolitana)、及びサーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)由来のDNAポリメラーゼが挙げられる。
【0031】
「3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性」は、本明細書中で使用する場合、核酸のほとんどの3’塩基を取り除くいくつかのポリメラーゼの活性を指す。この活性は、前記技術分野ではポリメラーゼの「プルーフリーディング」活性と呼ばれることもある。3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼは、ヌクレオチドの3’オリゴヌクレオチドのうちの1以上を、すなわち、連続した様式で取り除くことができる。そのヌクレオチドは、続いて、鋳型依存様式でヌクレオチドによって置き換えられ、その結果、オリゴヌクレオチドのそのヌクレオチドを「校正する」、すなわち、鋳型核酸に対して相補性を持たないヌクレオチドを鋳型に対して相補性を持つヌクレオチドで置き換える。
【0032】
「3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いている」は、天然サーモトガ・マリチマDNAポリメラーゼの活性の3%以下(例えば、1%又は0.1%未満)である3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を指す。3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いている代表的なポリメラーゼとしては、例えば、米国特許番号第7,148,049号に記載されているものが挙げられる。
【0033】
「修飾ヌクレオチド」は、本明細書中で使用される場合、ゲノムDNAにおいて天然に起こらないヌクレオチド(例えば、合成ヌクレオチド又はリボヌクレオチド)を指す。本明細書中でより詳細に記載されるとおり、ヌクレオチドのペントース糖部分の2’位に置換がある塩基は、DNAポリメラーゼの3’‐5’活性によって取り除かれない修飾ヌクレオチドをもたらす。「核酸ポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれない修飾ヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチドの3’末端又は3’末端から二番目の位置においても、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼの存在下で取り除かれない修飾ヌクレオチドを指す。
【0034】
修飾ヌクレオチドの「2’部分」は、核酸技術分野において一般的に使用される、ヌクレオチドの糖部分の2’炭素に連結された部分を指す。例えば、米国特許広報番号第2006/00888555号及び同第2007/0219361号を参照のこと。
【0035】
少なくとも核酸セグメント(すなわち、少なくとも2つの隣接塩基)が逆平行会合によって結合して、又は他の核酸の少なくとも部分配列にハイブリダイズして二本鎖を形成するとき、核酸が別の核酸との関連で「相補性を持つ」。逆平行会合は、例えば、核酸内のヘアピンループの形態で分子内に、又は2つ以上の一本鎖核酸が互いにハイブリダイズするときなどで分子間に存在し得る。本発明との関連において、特定の配列(例えば、鋳型核酸)に対して「100%の相補性を持つ」オリゴヌクレオチドに関して、そのオリゴヌクレオチドのそれぞれの塩基は、逆平行様式において特定の配列の対応する塩基に対して相補性を持つ。
【0036】
天然の核酸中で一般的に見られない特定の塩基が、本発明の核酸に含んでもよいので、例えば、イノシン、7‐デアザグアニン、及び先に議論したものを含むことができる。いくつかの実施形態において、相補性は完全でない、すなわち、オリゴヌクレオチドのヌクレオチドのうちの特定のパーセンテージだけが鋳型に対して相補性を持つことを示す「パーセント相補性」を持つ一方で、残りのヌクレオチドが相補性を持たない場合には、核酸は「実質的に相補性を持つ」。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の実質的に相補性を持つオリゴヌクレオチド(又はそれらの3’部分)は、鋳型核酸に対して100%未満の相補性を持つ、例えば、鋳型に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、又は95%の相補性を持つ。
【0037】
例えば、いくつかの実施形態において、前記オリゴヌクレオチド(又は、少なくとも前記オリゴヌクレオチドの3’部分)は、1、2、3、4、5、6つ、又はそれ以上の鋳型核酸とのミスマッチを持っている。鋳型核酸がオリゴヌクレオチド(又は指示された、その一部)より長い典型的な例において、ミスマッチ(又は相補性を持つヌクレオチド)のパーセンテージ又は数は、オリゴヌクレオチド(又は指示されたその一部)に対して相補性を持つヌクレオチドのうちで最も高い割合を持つ、オリゴヌクレオチド(又は指示されたその一部)と同じ長さの鋳型核酸の部分配列に関して測定される。
「プライマー伸長反応」は、核酸ポリメラーゼがプライマーの3’末端に鋳型特異的様式で1又は複数のヌクレオチドを付加する分子反応を指す。伸長は、プライマーの3’末端への最初のヌクレオチドの付加を指すだけではなく、伸長されたプライマーによって形成されるポリヌクレオチドのさらなるあらゆる伸長もまた含む。
【0038】
酵素の「熱可逆的な共有結合修飾」は、本明細書中で使用される場合、酵素が最初は室温にて実質的に不活性であるが、より高い温度(例えば、50℃超)にて化学(例えば、共有結合)修飾が除去されるような酵素の可逆的な化学修飾を指す。熱可逆的な共有結合不活性化の例としては、例えば、酸無水物を用いた反応によって達成される、リジン残基の化学修飾が挙げられる(EP 0 962 526を参照のこと)。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「生体サンプル」は、(例えば細菌、ウイルス、組織生検などに由来する)核酸を含む又は含むと推定される任意の物質を指す。前記サンプルは、当業者に知られているいずれかの手段によって得られる。かかるサンプルは、1体の個体又は複数の個体から単離された、組織量若しくは液体量、又はその精製画分量であり得、例えば、皮膚、血漿、血清、全血、髄液、唾液、腹水、リンパ液、房水又は硝子体液、滑液、尿、涙、血球、血液生成物、精液、精漿、膣液、肺の滲出液、漿膜液、器官、気管支肺胞洗浄液、腫瘍、パラフィン包埋組織などが挙げられるが、これだけに限定されるものではない。サンプルとしてはまた、これだけに限定されるものではないが、細胞培養培地中での細胞培養から生じる条件培地、組み換え細胞、細胞成分等を含む、インビトロ細胞培養の構成要素及び成分が挙げられる。核酸は、当技術分野で周知の手順によって生体サンプルから得られる。
【0040】
本発明の詳細な説明
I.序論
本発明は、プライマー伸長反応により標的(すなわち、鋳型)核酸の検出を可能にするが、ここで、前記反応の1又は複数のプライマーは、増幅され、そして検出されるべき標的核酸に対して完全に相補性を持つか、又は完全に相補性を持つというわけではない。本願発明は、例えば、関連配列の多様性が標的配列にあるかもしれない様々な標的の増幅及び検出のためのプライマーの設計において有用である。例として、本発明はウイルス病原体を検出するのに使用でき、ここで、前記ウイルス病原体には、潜在的ウイルスゲノムの大部分若しくはすべてを増幅する単一の又は少数のセットのプライマーを設計するのを困難又は不可能にするのに十分なほどそのゲノムに変動がある。標的又は鋳型核酸はまた、他の起源、例えば、細菌ゲノムに由来することもある。
【0041】
本発明は、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性(プルーフリーディング活性と呼ばれることもある)を有する熱安定性ポリメラーゼが、増幅に使用される1又は複数のオリゴヌクレオチドプライマーが標的にとって完全な相補性を持つわけではないいくらかの変動があり得る標的配列、例えば、鋳型を増幅するのに使用される定量的な増幅反応を提供する。PCRの条件は、プライマーが標的に対して特異性を維持するが、それでもなお、(単数若しくは複数の)プライマーと鋳型の間の相補性の多少の変動(例えば、1、2、3個のミスマッチ)を許容するように設定され得る。これらの条件下のポリメラーゼは、得られた増幅産物が標的配列に対して完全な相補性を持つようにオリゴヌクレオチドを校正するだろう。もちろん、プライマーはまた、(例えば、クローニング、配列タグ付与、標識などのための)相補性を持たないプライマーの5’末端に1又は複数のヌクレオチドを含有することもできることは理解され、そして「完全な相補性を持つ」によって、得られた反応産物はプライマーと鋳型の間に存在するあらゆる内部又は3’ミスマッチを含まないが、それでも、その機能が標的とのハイブリダイゼーション以外である5’非相補性ヌクレオチドを含み得ることが意味されていることも理解される。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記PCR産物は、単純なプライマー伸長反応(すなわち、プライマーが1又は2つのヌクレオチドだけで伸長される反応)だけではない。例えば、いくつかの実施形態において、前記PCR産物は、産物内に組み込まれもするオリゴヌクレオチド配列自体をカウントに入れずに、少なくとも10ヌクレオチドの長さである。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記反応は2以上ポリメラーゼを含む。場合により、少なくとも1つのポリメラーゼは、実質的に3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を欠いている。そのような場合、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いているポリメラーゼと比較した3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を持っているポリメラーゼの量の比は変化することがある。例えば、いくつかの実施形態において、エキソヌクレアーゼ活性を持っているポリメラーゼの量は、活性を実質的に欠いているポリメラーゼの量より少ない、すなわち、いくつかの実施形態において、その比は、1:2より少ない、1:3、1:4、又は1:10(活性を持っている/活性を実質的に欠いている)。あるいは、いくつかの実施形態において、前記反応におけるポリメラーゼの量は実質的に等しく、そしていくつかの実施形態において、活性を実質的に欠いているものに比べてエキソヌクレアーゼ活性を持っているより多くのポリメラーゼが存在する。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、サンプル中の標的核酸の量は、例えば、定量的な増幅を使用することによって定量される。所望された情報が、その配列が示されていない病原菌、微生物、癌細胞などの存在又は不存在を示す可能性のある可変鋳型の存在と量である場合、任意に、前記定量が、オリゴヌクレオチドプライマーと鋳型の間のミスマッチの存在又は不存在に関係なく実施される。一旦測定されれば、鋳型の存在又は量を、鋳型の起源である生物学的実体、すなわち、ウイルス、微生物、癌細胞などの存在又は量に相関させることができる。
【0045】
本発明はまた、プライマー伸長反応においてプライマーとしての役割を果たすオリゴヌクレオチドを提供する。3’‐5’活性によるプライマーの分解のために起こり得る特異性の欠如をもたらすため、通常、プライマー伸長反応は3’‐5エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼの使用を伴わないが、本発明は、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有する少なくとも1の酵素、例えば、ポリメラーゼの包含をおこなう。しかしながら、プライマーの分解を防ぐために、いくつかの実施形態において、本発明は、プライマー・オリゴヌクレオチドの中央への修飾ヌクレオチドの包含をおこなう。修飾ヌクレオチドは3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれることができないので、プライマーの3’部分だけが3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって校正され得る。これが、プライマーの5’非分解部分との多少の特異性の維持を可能にし、そのため、プライマーと潜在的可変鋳型の3’部分の間に起こるかもしれない最初のミスマッチにもかかわらず、プライマーのハイブリダイゼーションと伸長を可能にする。
【0046】
II.修飾ヌクレオチド
本発明は、(鋳型へのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションがその鋳型と修飾ヌクレオチドのミスマッチをもたらす)鋳型の存在下、修飾ヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの3’末端に存在するときに、塩基が3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼの存在下でオリゴヌクレオチドの実質的な分解を妨げるのであれば、あらゆるタイプの修飾ヌクレオチドの使用をおこなう。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記修飾ヌクレオチドには、修飾された2’位がある(すなわち、ここで、2’位は‐H(DNA)ではない)。前記修飾ヌクレオチドは、以下の:2’アミノ、2’O‐メチル、2’OH(リボ)、2’O‐ホスファート、及び2’ホスホロチオアートを包含するが、これだけに限定されるものではない。
【0048】
III.本発明のオリゴヌクレオチド
本発明のオリゴヌクレオチドは、プライマー伸長反応における使用のために便利なあらゆる長さのものであることができる。本発明のオリゴヌクレオチドは、少なくとも8ヌクレオチドの長さであり、そしてオリゴヌクレオチドの3’又は5’末端に存在することのない修飾ヌクレオチドを任意に含んでなる。修飾ヌクレオチドを含む本発明のオリゴヌクレオチドは、3’及び5’部分に関して説明されることができ、ここで、前記3’部分は、オリゴヌクレオチド内の修飾ヌクレオチドの3’側のヌクレオチドを指し、そして前記5’部分は、オリゴヌクレオチド内の修飾ヌクレオチドの5’側のヌクレオチドを指す。本明細書中に記載したような修飾ヌクレオチドは別として、オリゴヌクレオチド内の残りのヌクレオチドとしては、天然若しくは合成ヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド類似体)、又はその組み合わせが挙げられる。しかしながら、一般に、ヌクレオチドの3’部分は、ポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除くことができないヌクレオチドを含まないであろう。
【0049】
オリゴヌクレオチドの5’部分は、配列のいずれかである。例えば、オリゴヌクレオチドの5’部分は、プライマー伸長反応において標的(鋳型)核酸に(単独で、又は3’部分のいくつか又はすべてと組み合わせて)ハイブリダイズするように設計されることができる。いくつかの実施形態において、標的核酸に多少の変動がある場合(例えば、ウイルス又は細菌ゲノム)、5’部分は、少なくとも部分的に保存されている標的配列の領域にハイブリダイズするように設計されることができる。このことは、例えば、標的に対して相当数の相補性ヌクレオチドを持つように、例えば、標的核酸に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%の相補性を持つように5’部分を設計することによって達成できる。
【0050】
オリゴヌクレオチドの5’部分の長さ(すなわち、ヌクレオチドの数)は、プライマー伸長のために便利なあらゆる長さであることができる。いくつかの実施形態において、5’部分は、少なくとも3、4、5、6,7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40ヌクレオチド、又はそれ以上である。例えば、いくつかの実施形態において、5’部分には、6〜50ヌクレオチドの長さ、例えば、10〜20、8〜20、15〜50、20〜50、25〜50、15〜40、20〜40ヌクレオチドの長さがある。
【0051】
オリゴヌクレオチドの3’部分もまた、プライマー伸長反応に有用なあらゆる長さのものであることができる。3’部分はポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって校正される可能性があるので、いくつかの実施形態において、3’部分は、5’部分に比べてプライマー伸長反応の特異性を制御するのに小さな役割しか果たさない。よって、いくつかの実施形態において、3’部分の長さは、5’部分よりさらに短いであろう。よって、例えば、いくつかの実施形態において、3’部分には、1〜15ヌクレオチドの長さ、例えば、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜10、2〜8、2〜5、3〜10、3〜8ヌクレオチドの長さがある。いくつかの実施形態において、3’部分には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド、又はそれ以上の長さがある。
【0052】
任意に、本発明のオリゴヌクレオチドは、標識され得るか、又は共有結合若しくは他の方法で連結されたその他の残基を持つ。いくつかの実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、標識物を包含しない。いくつかの実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、蛍光標識を包含しない。本発明のオリゴヌクレオチドが標識されているいずれかの実施形態において、あらゆる標識物が使用され得る。所望であれば、オリゴヌクレオチドには、例えば、分光分析、光化学、生化学、免疫化学、化学、又は他の技術によって検出可能な標識を組み込むことができる。例示すると、有用な標識物としては、放射性同位元素、蛍光色素、電子稠密薬、(ELISAsで一般的に使用されるような)酵素、ビオチン、又は抗血清若しくはモノクローナル抗体が利用可能なハプテン及びタンパク質が挙げられる。これらの多くと他の標識物が、さらに本明細書中に記載されており、及び/又は別の形で前記技術分野で知られている。
【0053】
本発明の特定の実施形態では、標識物は蛍光色素又はフルオロフォアである。通常、ある特定のフルオロフォアは、より短い波長の光を吸収した後に、特定の波長の光を出すことができる。特定のフルオロフォアが出す光の波長は、そのフルオロフォアに特徴的である。よって、特定のフルオロフォアは、より短い波長の光を用いたそのフルオロフォアの励起後に適切な波長の光を検出することによって検出できる。蛍光標識としては、負に帯電した色素、例えば、フルオレセイン・ファミリーの色素など、又は電荷が中性の色素、例えば、カルボキシローダミン・ファミリーの色素など、又は正に帯電した色素、例えば、シアニン・ファミリーの色素やローダミン・ファミリーの色素などを挙げることができる。本発明で利用可能な他のファミリーの色素としては、例えば、ポリハロフルオレセイン‐ファミリーの色素、ヘキサクロロフルオレセイン‐ファミリーの色素、クマリン‐ファミリーの色素、オキサジン‐ファミリーの色素、チアジン‐ファミリーの色素、スクアレン‐ファミリーの色素、キレート化ランタニド‐ファミリーの色素、ALEXA FLUOR(登録商標)色素、及びBODIPY(登録商標)ファミリーの色素などが挙げられる。フルオレセイン・ファミリーの色素としては、例えば、FAM、HEX、TET、JOE、NAN、及びZOEなどが挙げられる。カルボキシローダミン・ファミリーの色素としては、Texas Red、ROX、R110、R6G、及びTAMRAなどが挙げられる。FAM、HEX、TET、JOE、NAN、ZOE、ROX、R110、R6G、TAMRAは、Perkin‐Elmer(Foster City,Calif.)から市販されているのに対し、Texas Redは、Molecular Probes,Inc.(Eugene,Oreg.)から市販されている。シアニン・ファミリーの色素としては、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、及びCy7などが挙げられ、そしてAmersham GE Healthcare(Piscataway,N.J.)から市販されている。
【0054】
IV.3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ
3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有するあらゆるポリメラーゼが、本明細書中に記載したように使用できる。(熱安定性ポリメラーゼを含めた)3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有する代表的なポリメラーゼとしては、例えば、サーモトガ・マリチマ(Tma[Tma D323A E325Aを含むが、これだけに限定されるものではない]、UlTma、Tma25など[例えば、米国特許番号第6,228,628号を参照のこと])、Tma/Z05キメラ(例えば、Schonbrunnerら、Biochemistry 45:12786‐12795(2006)を参照のこと)、ピロディクティウム・オクルタム(Pyrodictium occultum)(Poc)[形態1と2]及びピロディクティウム・アビッシ(Pyrodictium abyssi)(Pab)[形態1と2]を含めたピロディクティウム属、及びサーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)(Taf)由来のDNAポリメラーゼが挙げられる。
【0055】
3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を含む他のDNAポリメラーゼとしては、例えばエッシェリシア・コリ(Eschericia coli)(E.コリ‐DNA pol I、Klenow Fragment);phi29 DNAポリメラーゼ;T4 DNAポリメラーゼ;T7 DNAポリメラーゼ;サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli、通称Vent & Deep Vent);パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu);パイロコッカス属KOD1株;サーモコッカス属TY;サーモコッカス属9°N‐7;メタノコッカス・ジャナシ(Methanococcus jannaschii);バチルス・カルドテナクス(Bacillus caldotenax)(Bca);スルフォロバス・アシドカルダニウス(Sulfolobus acidocaldarius)(Sac);サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)(Tac);メタノバクテリウム・サーモオートトロピカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)(Mth);サーモコッカス・グルゴナリウス(Thermococcus gorgonarius)(RAS Tgo)が挙げられる。
【0056】
追加的な市販の3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼとしては:Invitrogen(例えば、AccuPrime(商標)含有Taq DNAポリメラーゼ及びパイロコッカス属GB‐Dポリメラーゼ由来の3’‐5’エキソヌクレアーゼ含有DNAポリメラーゼ;古細菌サーモコッカス・ジリジイ(Thermococcus zilligii)由来のPfx50(商標)DNAポリメラーゼ;サーモコッカス属KOD株由来のAccuPrime(商標)Pfx DNAポリメラーゼ)、Qiagen(例えば、HotStar(商標)とProofStart(商標))、及びStratagene(EXL(商標)DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、及びArchaeMaxx(登録商標)ポリメラーゼ増強因子)によって販売されているものが挙げられるが、これだけに限定されるものではない。また、米国特許番号第5,747,298号も参照のこと。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明のポリメラーゼには、そのポリメラーゼが改善された活性を持つような天然ポリメラーゼの修飾形態を含む。例えば、いくつかの実施形態において、前記ポリメラーゼは、蛍光標識されたヌクレオチドが、最も密接に関連した天然ポリメラーゼと比較して無標識ヌクレオチドと比べて減弱された差別しか受けずに取り込まれるように修飾される。例えば、米国特許広報番号第2003/0152988号に記載の「4位」におけるアミノ酸の修飾が、差別を減弱するのに使用される。他の有効な突然変異は、例えば、米国特許番号第7,148,049号に記載されている。
【0058】
V.可逆的化学修飾
いくつかの実施形態において、本発明に使用するポリメラーゼには、ポリメラーゼがDNAを変性するのに十分な温度まで、例えば、少なくとも60℃、そして一般に約80〜95℃まで加熱されるまでそのポリメラーゼが実質的に減弱された活性を有するような可逆的修飾が含まれる。そのような修飾は、例えば、常温における核酸基質の非特異的伸長又は分解を予防するのに有用である。
【0059】
いくつかの実施形態において、酵素の活性は、酵素と阻害試薬の間の反応によって可逆的に防がれ、それが酵素の活性のすべて、又はほとんどすべて(例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%)の損失をもたらす。前記阻害試薬は、阻害が高温で可逆的であるように選ばれる。いくつかの実施形態において、前記阻害試薬は、上述の熱安定酵素のうちの1つを阻害することができる抗体である。任意に、抗体を使用する代わりに、前記酵素は、そのポリメラーゼの可逆的化学修飾をもたらす別の阻害試薬によって阻害できる。本発明に記載されているとおり、熱安定酵素の可逆的不活性化は、リジン残基の化学修飾によっておこなうことができる。例えば、リジンの化学修飾は、酸無水物によって実施できる(例えば、EP 0 962 526、米国特許番号第5,773,258号を参照のこと)。しかしながら、他のアミノ酸残基の化学修飾は、好適な特徴を有する修飾タンパク質をもたらすことができる。可逆的な様式でアミノ基と反応する多くの化合物が、文献に記載された。
【0060】
例えば、アミノ基は、トリフルオロアセチル化(Goldberger及びAnfinsen、1962、Biochemistry 1:410を参照のこと)、アミジノ化(Hunter及びLudwig、1962、J.Amer.Chem.Soc.84:3491を参照のこと)、マレイル化(Butlerら、1967、Biochem.J.103:78を参照のこと)、アセトアセチル化(Marzottoら、1967、Biochem.Biophys.Res.Commun.26:517及びMarzottoら、1968,Biochim.Biophys.Acta 154:450を参照のこと)、テトラフルオロスクシニル化(Braunitzerら、1968、Hoppe‐Seyler’s Z.Physiol.Chem.349:265を参照のこと)、及びシトラコニル化(Dixon及びPerham、1968、Biochem.J.109:312‐314;並びにHabeeb及びAtassi、1970、Biochemistry 9(25):4939‐4944を参照のこと)により可逆的に修飾された。
【0061】
リジン残基のε‐アミノ基の化学修飾のための代表的な試薬は、ジカルボン酸無水物である。米国特許番号第5,773,258号;米国特許広報番号第2004/0115639号を参照のこと。そのため、いくつかの実施形態において、可逆的修飾ポリメラーゼは、酵素と修飾試薬の混合物の反応によって作製される。ここで上述の反応は、約25℃未満の温度にてアルカリ性pHでおこなわれ、ここで、上述の試薬は、以下の一般式:
【0062】
【化1】

【0063】
{式中、R1及びR2は、水素又は有機基であり、それらは連結されていてもよい。}又は以下の一般式:
【0064】
【化2】

【0065】
{式中、R1及びR2は、有機基であって、それらは連結されていてもよく、そして水素は、シス配置である。}
によって表されるジカルボン酸無水物であり、そしてここで、上述の反応は、酵素活性の事実上完全な不活性化をもたらす。
【0066】
前記有機基は、炭素‐炭素結合によって、又は炭素‐ヘテロ原子結合、例えば炭素‐酸素、炭素‐窒素、若しくは炭素‐硫黄結合を通して、環に直接取り付けられてもよい。前記有機基は、例えば3,4,5,6‐テトラヒドロフタル酸無水物のように互いに連結して環構造を形成してもよい。
【0067】
典型的な試薬の例としては、無水マレイン酸;置換された無水マレイン酸、例えばシトラコン酸無水物、シス‐アコニット酸無水物、及び2,3‐ジメチルマレイン酸無水物;エキソ‐シス‐3,6‐エンドオキソ‐Δ4‐テトラヒドロフタル酸無水物;並びに3,4,5,6‐テトラヒドロフタル酸無水物が挙げられる。これらの試薬は、例えばAldrich Chemical Co.(Milwaukee、WI)、Sigma Chemical Co.(St.Louis、MO)、又はSpectrum Chemical Mfg.Corp.(Gardena、CA)から市販されている。
【0068】
V.鋳型核酸
標的核酸は、生体又は合成起源に由来することができる。標的は、例えば、DNA又はRNAであることができる。一般に、アンプリコンが作り出される場合には、アンプリコンはDNAで構成されるが、リボヌクレオチド又は合成ヌクレオチドもまた増幅産物に組み込まれ得る。当業者がRNAを検出することを望む場合には、増幅工程は、通常、例えば逆転写PCR(RT‐PCR)を含めた逆転写の使用を伴うであろう。
【0069】
具体的な標的配列としては、例えば、ウイルス核酸(例えば、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、(サイトメガロウイルス(CMV)、パルボB19ウイルス、エプスタイン‐バール・ウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト・パピローマウイルス(HPV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、西ナイルウイルス(WNV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、マレーバレー脳炎ウイルス、及びクンジンウイルス)、細菌の核酸(例えば、S.アウレウス(S.aureus)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、プラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)、クラミジア・ムリダルム(Chlamydia muridarum)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ミコバクテリア、真菌核酸、又は動物若しくは植物からの核酸が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記標的核酸は、動物(例えば、ヒト)核酸であるか、又は動物(例えば、ヒト)のサンプル(すなわち、ウイルス又は他の病原菌核酸は、動物生検検体、血液サンプル、尿サンプル、糞便サンプル、唾液などからのサンプル中に存在している可能性がある)に由来する。いくつかの実施形態において、標的核酸は、例えば、疾患(例えば、癌、糖尿病など)に関連する変異を含む可能性があるヒト遺伝領域である。
【0070】
VI.プライマー伸長反応
プライマー伸長反応条件は、一般に、オリゴヌクレオチドと標的の間にいくつかのミスマッチがあっても、全体でオリゴヌクレオチドが標的配列にハイブリダイズするように設計されている。当業者は、プライマーとプローブの融解温度を決定でき、そして増幅温度がオリゴヌクレオチド・アニーリングのために十分低い温度、なおかつ、所望の量のプライマー特異性を達成するのに十分高い温度を許容するように制御できることを理解するであろう。
【0071】
プライマー伸長に好適な条件は前記技術分野で知られている。例えば、Sambrookら、前掲を参照のこと。また、Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology(4版、John Wiley & Sons 1999)も参照のこと。一般に、プライマーを、標的核酸にアニールさせて、すなわち、ハイブリダイズさせて、プライマー‐鋳型複合体を形成させる。プライマー‐鋳型複合体を、好適な環境中、DNAポリメラーゼ及び遊離ヌクレオチドと接触させて、プライマーの3’末端への1又は複数のヌクレオチドの付加を可能にし、その結果、標的核酸に対して相補性を持つ伸長プライマーを生じさせる。本明細書中で議論したとおり、プライマーの伸長前に、オリゴヌクレオチドの3’部分の1又は複数のヌクレオチドが、ポリメラーゼのプルーフリーディング活性によって切り取られる。
【0072】
プライマーは、例えば、1又は複数のヌクレオチド類似体を包含することができる。加えて、遊離ヌクレオチドは、通常のヌクレオチド、特殊なヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド又は標識ヌクレオチド)、又はその混合物である。いくつかの変形形態において、プライマー伸長反応は、標的核酸の増幅を含んでなる。DNAポリメラーゼとプライマー対を使用した核酸増幅に好適な条件はまた、前記技術分野でも知られている(例えば、PCR増幅法)。例えば、Sambrookら、前掲;Ausubelら、前掲;PCR Applications:Protocols for Functional Genomics、Innisら編、Academic Press 1999を参照のこと。その他の排他的ではない実施形態において、プライマー伸長反応はRNA鋳型の逆転写を含んでなる(例えば、RT‐PCR)。例えば、改良された伸長速度、又はその他の形で改善されたプライマー伸長反応、例えば比較的短いインキュベーション時間でそういったポリメラーゼ伸長反応を実施する能力を可能にする、本突然変異ポリメラーゼの使用は、酵素濃度を下げ、及び/又は産物収量を増やす。
【0073】
いくつかの実施形態において、側面に位置するが、標的SNP位置に直接ハイブリダイズしないプライマーが、標的SNP位置に隣接する(すなわち、標的SNP部位から1、2、3つ、又はそれ以上のヌクレオチドの範囲内の)領域にプライマーがハイブリダイズするプライマー伸長反応に使用される。プライマー伸長反応中、特定のヌクレオチド(対立遺伝子)が標的SNP部位に存在していた場合に、プライマーは、通常、標的SNP部位を通過して伸長することができないので、SNP対立遺伝子が標的SNP部位に存在していることを判断するためにプライマー伸長産物が検出され得る。例えば、特定のddNTPsは、ddNTPが伸長産物に組み込まれた時点でプライマー伸長を終わらせるためにプライマー伸長反応に使用できる(例えば、プライマー伸長産物は、プライマー伸長産物の3’最末端にddNTPを含有し、そしてそこでは、そのddNTPが検出されるべきSNPのヌクレオチドである)。
【0074】
特定の実施形態において、PCR反応は、熱安定性酵素を用いる自動プロセスとして実施される。このプロセスにおいて、反応混合物は、変性ステップ、プローブ(及び任意に、プライマー)アニーリングステップ、そして開裂と置換がプライマー依存性鋳型伸長と同時に起こる合成ステップを通してサイクルさせる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、システムを用いて実施される。任意に、例えば、Applied Biosystems(Foster City、CA、USA)から市販されているもののようなサーマルサイクラーは熱安定性酵素を用いた使用のために設計されており、これらを利用することもできる。
【0075】
標的核酸へのプライマー又はプローブのハイブリダイゼーションは、適切なハイブリダイゼーション条件を選択することによって達成できる。オリゴヌクレオチド:標的核酸ハイブリッドの安定性は、通常、プライマー/プローブと標的核酸との間でのみ安定で検出可能なハイブリッドが形成されるような、アッセイ及び洗浄条件が適合するように選択される。1又は複数の異なるアッセイパラメータの操作により、特定のハイブリダイゼーションアッセイの正確な感度と特異性が決定される。
【0076】
より具体的には、DNA、RNA,PNA、又はDNA,RNA及びPNAの組み合わせの相補性塩基間でのハイブリダイゼーションは、温度、塩濃度、静電気強度、緩衝液組成等において変動する広範囲の様々な条件下で起こる。これらの条件とそれらを適用するための方法の例は、例えば、Tijssen,Hybridization with Nucleic Acid Probes,Vol.24,Elsevier Science(1993)及びHames and Higgins、前掲に記載されている。ハイブリダイゼーションは、一般に、約0℃〜約70℃の間で、約1分〜約1時間の期間で起こり、ハイブリダイズさせる配列の性質とその長さに依存している。しかし、ハイブリダイゼーションが秒又は時間の単位で、反応条件に応じて起こり得ることは認識されている。例示すると、2種類の20merの混合物についての典型的なハイブリダイゼーション条件は、その混合物を68℃に置き、続いて室温(22℃)まで5分間冷却し、又は2マイクロリットルで非常に低い温度、例えば2℃などで冷却する。核酸間のハイブリダイゼーションは、例えばTris‐EDTA(TE)、Tris‐HCl及びHEPESなどの緩衝液、塩溶液(例えば、NaCl,KCl、CaCl2)、又は他の水溶液、試薬及び化学物質を用いて促進することもできる。これらの試薬の例としては、例えば、Rec Aタンパク質、T4遺伝子32タンパク質、E.コリ一本鎖結合タンパク質及び主要な又はマイナーな核酸溝結合タンパク質などの一本鎖結合タンパク質が挙げられる。このような試薬及び化学物質の他の例としては、二価イオン、多価イオン及び、例えば、エチジウムブロマイド、アクチノマイシンD、ソラレン、及びアンゲリシンなどの相互作用物質が挙げられる。
【0077】
いくつかの実施形態において、(例えば、PCRを含めた)プライマー伸長反応は、「リアルタイム」で観察され、そしてそれは任意に定量的である。例えば、Real‐Time PCR:An Essential Guide,Horizon Scientific Press(2004),Innisら(編)を参照のこと。定量的増幅の方法は、例えば、米国特許番号第6,180,349号;同第6,033,854号;及び同第5,972,602号、並びに、例えば、Gibsonら、Genome Research 6(1996)995‐1001;DeGravesら、Biotechniques 34(2003)106‐10,112‐5;Deiman B.ら、Mol Biotechnol.20(2):163‐79(2002)に開示されている。
【0078】
試料中の特定のRNAの量を定量するために、目的の遺伝子を含むプラスミドのランオフ転写から標準曲線を作成することもできる。標準曲線は、アッセイにおいて用いられる初期cDNA濃度に関連する、リアルタイムPCRで測定された閾値(Ct)値を用いて作成することもできる。加えて、標準曲線は、標準ポリヌクレオチド(例えば、前もって定量された配列)に関して作成することもできる。このことは、比較目的のための標準の量に対する生体サンプルの初期RNA含有量の標準化を可能にする。例えば、The PCR Technique:Quantitative PCR(J.Larrick(編)1997)を参照のこと。
【0079】
プライマー伸長(増幅を含む)産物の検出のためのあらゆる方法が使用できる。いくつかの実施形態において、反応産物に特異的に結合した(すなわち、ハイブリダイズした)標識核酸プローブが、産物の蓄積を検出するのに使用される。増幅産物の検出のための1つの方法が、(例えば、COBAS TaqMan 48 Analyzer(商標)(Roche Molecular Systems、Pleasanton,CA)を用いた)5’ヌクレアーゼPCRアッセイである。例えば、Hollandら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276‐7280(1991);Leeら、Nucleic Acids Res.21:3761‐3766(1993);米国特許番号第6,214,979号;同第5,804,375号;同第5,487,972号;及び同第5,210,015号を参照のこと。このアッセイは、増幅反応中の二重標識蛍光発生プローブのハイブリダイゼーション、そして開裂によって特定のPCR産物の蓄積を検出する。蛍光発生プローブは、蛍光レポーター色素及びクエンチャー色素の両方で標識された(例えば、所望の標的核酸又はその相補体にハイブリダイズする)オリゴヌクレオチドからなり得る。PCR中に、このプローブは、それが増幅されているセグメントにハイブリダイズした場合に、DNAポリメラーゼの5’‐ヌクレアーゼ活性によって開裂され、開裂されるのはその場合のみである。プローブの開裂によって、レポーター色素の蛍光強度の増加が生じる。
【0080】
エネルギー移動の使用に依存する増幅産物を検出する別の方法は、Tyagi及びKramer(Nature Biotech.14:303‐309(1996))によって記載された「分子ビーコンプローブ」法であり、これはまた、米国特許番号第5,119,801号及び同第5,312,728号の対象でもある。この方法は、ヘアピン構造を形成し得るオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを使用する。ハイブリダイゼーションプローブの一方の末端(5’又は3’ 末端のいずれか)には、供与体フルオロフォアがあり、もう一方の末端には、受容体部分がある。Tyagi及びKramerの方法の場合、この受容体部分はクエンチャーである、つまり、供与体によって放出されたエネルギーを受容体が吸収するが、このとき、それ自身は蛍光を発しない。よって、ビーコンがヘアピン(閉じた)構造にある場合には供与体フルオロフォアの蛍光がクエンチされるが、ビーコンが開いた構造にある場合、供与体フルオロフォアの蛍光は検出可能である。PCRで使用される場合、ハイブリダイズしないままのものは蛍光を発しないが、PCR産物の鎖の一つにハイブリダイズした分子ビーコンプローブは、「開いた構造」であり、蛍光が検出される(Tyagi及びKramer、Nature Biotechnol.14:303‐306(1996)。その結果、PCR産物の量が増加すると蛍光の量が増加し、そのため、PCRの進行の尺度として用いられ得る。
【0081】
リアルタイムPCR法に有用な他のタイプのプローブとしては、Proligo,C(Boulder,CO)製の「単標識」及び「二重標識」形式で利用可能なScorpion(商標)プローブが挙げられる。また、Batesら、Mol.Plant Pathol.2(5):275‐280(2001)も参照のこと。当業者は、他の定量的増幅の方法もまた利用可能であることを認識しているであろう。
【0082】
VII.反応混合物
本発明はまた、本明細書中に記載した試薬の反応混合物を提供する。反応混合物は、例えば、ポリメラーゼ3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれないで、またオリゴヌクレオチドの3’又は5’末端には存在しない修飾ヌクレオチドを包含するオリゴヌクレオチドを含んでなることができる。好ましくは、前記修飾ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3’末端から3〜10ヌクレオチドの間に存在する。好ましくは15〜40ヌクレオチドの長さがある、本明細書中に記載のオリゴヌクレオチドの具体的な実施形態は、本発明の反応混合物に任意に包含されることが明確に企図される。いくつかの実施形態において、前記反応混合物は、さらに、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを含んでなる。
【0083】
任意に、反応混合物はまた、生体サンプル(例えば、生物体からの核酸)も含んでなる。いくつかの実施形態において、前記反応混合物は、鋳型核酸を含んでなる。いくつかの実施形態において、前記オリゴヌクレオチドの3’部分は、鋳型核酸に対して70〜100%の相補性を持つか、そうでなければ、本明細書中に記載した鋳型に対して相補性を持つ。
【0084】
VIII.キット
本発明はまた、本明細書中に記載した試薬のうちの1つ又は複数を含んでなるキットも提供する。いくつかの実施形態において、前記キットは、例えば、ポリメラーゼ3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれないで、またオリゴヌクレオチドの3’又は5’末端には存在しない修飾ヌクレオチドを包含するオリゴヌクレオチドを含んでなる。好ましくは、前記修飾ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3’末端から3〜10ヌクレオチドの間に存在する。好ましくは15〜40ヌクレオチドの長さがある、本明細書中に記載のオリゴヌクレオチドの具体的な実施形態は、本発明のキットに任意に包含されることが明確に企図される。いくつかの実施形態において、前記反応混合物は、さらに、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを含んでなる。本発明のキットは、任意に、取扱説明書を含むことができる。そういった取扱説明書は、紙、(例えば、CD‐ROM又はDVDによる)電子的なもの、又は他の形態であることができる。
【0085】
IX.システム
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のプライマー伸長反応を実施する、及び/又はその結果を検出するための統合システムを提供する。前記システムには、特に、プライマー伸長反応の結果を導き出す手段にアルゴリズム、及び/又は電子的に保存された情報(例えば、回収された蛍光データ、伸長産物に関する予定された選択肢など)を含んでなる場合、回収されたデータを解釈し、そして分析する計装と手段を含むことができる。前記統合システムの各部分は、機能的に相互接続されることができ、場合によっては、物理的に接続されることができる。いくつかの実施形態において、前記統合システムは、自動化されていて、そこでは、分析開始後に操作者によるサンプル又は計装に関していずれの操作も必要としない。
【0086】
本発明のシステムは、計装を含むことができる。例えば、本発明は、例えば、蛍光検出器(例えば、分光蛍光光度計)などの検出装置を含むことができる。単数又は複数の検出装置が、例えば、蛍光の変化として計測される場合には、例えば、プライマー伸長反応を観察又は計測するために本発明に関連して使用されることがある。検出装置は、アッセイの高速大量処理を容易にするためにマルチウェルプレート・リーダーの形をとることがある。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記統合システムは、反応物の温度を制御する目的のために、温度サイクリングデバイス又はサーモサイクラーを含む。いくつかの実施形態において、温度サイクリングデバイスと検出装置は、温度サイクリングと発光検出(例えば、蛍光検出)が同じデバイス内でおこなわれる統合装置である。
【0088】
検出装置、例えば分光蛍光光度計は、分光光度計の操作パラメーター(例えば、励起波長、及び/又は検出される発光波長)を制御する、及び/又は検出装置から回収されたデータ(例えば、増幅サイクル中の蛍光測定値)の記憶のためにコンピューターに接続されている。前記コンピューターはまた、システムの温度変化の温度、タイミング、及び/又は速度を制御するために、温度サイクリングデバイスに稼動できるように接続されてもよい。前記統合コンピュータはまた、検出装置から回収されたデータを(電子的に)分析する「相関モジュール」を含むこともできる。いくつかの実施形態において、前記相関モジュールは、例えば、可能性のある出力に関するデータベースを用いて作成されたデータを比較することによって、作成されたデータ、例えば、ウイルス若しくは他の病原菌の存在又は不存在を判断する、検出されるべきSNP若しくは他の潜在的標的の存在又は不存在、の分析のためのコンピュータプログラムを含んでなる。
【0089】
いくつかの実施形態において、検出装置は、例えば(例えば、容器中、固体支持体上などで)あるアッセイシステムの別の成分中又はそれに近接して産生された検出可能シグナルを検出するための構造となっている。任意に利用されるか又は使用のために適応させた好適なシグナル検出装置は、本明細書中では、例えば、蛍光、リン光、放射能、吸光度、屈折率、発光、質量などを検出する。検出装置は、任意に、例えば、あるアッセイステップの実行の開始時点、及び/又は終了時点からの1つ又は複数のシグナルを観察する。たとえば、検出装置は、任意に、位置的に“リアルタイム”な結果に相当する複数の光シグナルを観察する。例示的な検出装置又はセンサーとしては、光増倍管、CCDアレイ、光センサー、温度センサー、圧力センサー、pHセンサー、伝導度センサー、走査型検出装置などが挙げられる。本発明の方法を実施する際に任意に利用されるさらに具体的な例示的な検出装置としては、例えば、共鳴光分散検出装置、発光分光器、蛍光分光器、リン光分光器、発光分光器、分光光度計、光度計などが挙げられる。検出装置はまた、例えば、Skoogら、Principles of Instrumental Analysis、第5版、Harcourt Brace College Publishers(1998)及びCurrell、Analytical Instrumentation:Performance Characteristics and Quality、John Wiley & Sons,Inc.(2000)にも記載されている。
【0090】
本発明のシステムにはまた、通常、システムの1又は複数のコンポーネント(例えば、検出装置、熱調節器、流体移動コンポーネント等)と稼動できるように接続されたコントローラーが含まれ、前記コンポーネントの稼動を制御する。さらに詳細に述べると、コントローラーは、例えば、検出装置からのデータの受け取る、容器中の温度を生じる及び/又は制御する、選択された容器への又はそれからの流体の流れを生じる及び/又は制御する等、のために利用される別々の又は統合されたシステムコンポーネントとして広く含まれている。コントローラー及び/又は他のシステムコンポーネントは、任意に、適当にプログラミングされたプロセッサー、コンピュータ、デジタルデバイス又は他の情報家電(例えば、必要に応じて、アナログからデジタル又はデジタルからアナログへのコンバーターを含む)と結合され、それは、事前にプログラミングされたか又はユーザー入力指示に従ってこれらの機器の稼動を指示し、これらの機器からデータ及び情報を受け取り、及びこの情報を解釈し、操作しかつユーザーに報告するように作動する。適切なコントローラーは、広く前記技術分野で公知であり、さまざまな商業的な供給業者から入手可能である。
【0091】
コントローラー又はコンピュータはいずれも任意にモニターを含み、それは、陰極線管(「CRT」)ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ(例えば、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ、液晶ディスプレイ等)等であることが多い。コンピュータ回路はボックス内に収められていることが多く、それには、例えば、マイクロプロセッサー、メモリ、インターフェイス回路等といった多数の集積回路チップが含まれる。前記ボックスはまた、任意に、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、例えば書き込み可能なCD‐ROMのような大容量リムーバブルドライブ、及び他の一般的な周辺機器要素が含まれる。例えばキーボード又はマウスなどの入力デバイスは、任意に、ユーザーからの入力のために提供される。これらのコンポーネントは、さらに下文で例示される。
【0092】
前記コンピューターは、通常、例えば、GUIにおいてパラメータフィールドセットへのユーザー入力の形態、又は、例えば、様々な異なる具体的操作のために事前にプログラミングされたプログラム済指示の形態のいずれかにおいて、ユーザー指示を受け取るための適切なソフトウェアを含む。次に、前記ソフトウェアは、これらの指示を適切な言語に変換し、1又は複数のコントローラーの稼動を指示し、所望の操作をおこなう。次に、コンピューターは、例えば、システム内部のセンサー/検出装置からデータを受け取り、このデータを解釈し、ユーザーが理解できるフォーマットでそれを提供するか、又はこのデータを用いて重量尺度等から得た流体重量データに対応して流体流れ制御器を制御することなどさらなるコントローラー指示を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】ミスマッチ校正に関する略図を提供する。プライマー配列の中の2つのT(下線)は標的に対するミスマッチである。DNAポリメラーゼは、それを伸長する前にプライマー上のミスマッチを取り除く。プライマーは、プライマー配列内の2’アミノ修飾によってさらに酵素的分解から保護される。この過程は、その標的に完全に一致するプライマーを作り出す。
【図2A】実施例で使用したプライマー(配列番号1〜4)及び鋳型(配列番号5〜8)を提供する。
【図2B】3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いている(左のパネル)又は3’‐5’ エキソヌクレアーゼ活性を持っている(右のパネル)ポリメラーゼを含むPCR反応におけるマッチ及びミスマッチ・プライマーに関してサイクル数の関数として産物の蓄積を例示する。
【図2C】3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いている又は3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を持っているポリメラーゼを含む反応に関するCtの平均差を例示する。
【図3】異なる酵素及びベンジル化プライマーの有無に関係するマッチ及びミスマッチ・プライマーの平均Ct値を例示する。
【図4A】3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いている(「なし」)ポリメラーゼだけを使用した、又は3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を持っているポリメラーゼのかなりの量をさらに含む、HIV標的配列向けのマッチ(A)及びミスマッチ(B)プライマーの平均Ct値を例示する。
【図4B】3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いている(「なし」)ポリメラーゼだけを使用した、又は3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を持っているポリメラーゼのかなりの量をさらに含む、HIV標的配列向けのマッチ(A)及びミスマッチ(B)プライマーの平均Ct値を例示する。
【実施例】
【0094】
PCR及びRT/PCRに使用されるDNAポリメラーゼは、一般に、プライマーの3’末端付近にミスマッチを含んでいて標的を増幅するのが困難である傾向がある。残念ながら、これは、例えば、HIVやHCVの診断アッセイにおける標的など顕著な配列不均一性を有する標的に関してよく観察される。3’末端においてミスマッチを誤伸長してしまうDNAポリメラーゼの能力低下は、プライマーがアルキル化によって修飾されているとき、よりいっそう顕著である。プライマーのアルキル化はプライマー/二量体効果を低減するが(例えば、米国特許番号第6,001,611号;同第6,794,142号を参照のこと)、しかし、本発明の方法はアルキル化プライマーを用いることなく実施される。これらの末端ミスマッチの影響を最小限にする1つの方法論が、オリゴヌクレオチドプライマーを伸長する前にミスマッチを完全に取り除くことである。我々は、ミスマッチ不耐性を緩和するために修飾された3’‐5’エキソヌクレアーゼ(プルーフリーディング)活性を有するDNAポリメラーゼの使用を評価し、そしてプルーフリーディング活性を欠いている酵素とそれらを比較した。DNAポリメラーゼのプルーフリーディング活性は、プライマー配列内の2’アミノ修飾塩基の使用によって妨げることができる。我々は、プルーフリーディング分解の所望の程度を提供するようにこれらのブロック基を有するプライマーを設計した。末端から二番目の塩基(すべてのプルーフリーディングを妨げるため)又は3’末端の潜在的ミスマッチの上流(3’末端のプルーフリーディングを可能にするが、酵素がさらにオリゴヌクレオチドを分解しないようにするため)において2’アミノ修飾を用いてプライマーを設計した。これらの研究の結果は、プルーフリーディング活性はDNAポリメラーゼがこれらのミスマッチ標的を効率的に増幅することを可能にすることを実証している。よって、我々は、オリゴヌクレオチドプライマーの下での配列不均一性によって検証される増幅系の性能を改善するためのアプローチを実証した。
【0095】
キメラDNAポリメラーゼ、CS5を、サーマス属Z05からの5’‐3’エキソヌクレアーゼドメインと、サーモトガ・マリチマからの3’‐5’エキソヌクレアーゼ、及びDNAポリメラーゼドメインを組み合わせることによって作製した。Schonbrunnerら、Biochemistry 45:12786‐12795(2006)を参照のこと。このDNAポリメラーゼを、約10%のプルーフリーディング活性を保有するCS5L(突然変異L329Aを持つCS5)及びプルーフリーディングを欠いているCS6を用いた、弱化プルーフリーディング活性を有するキメラ変異DNAポリメラーゼのコレクションの作製のために使用した。Schonbrunnerら、Biochemistry 45:12786‐12795(2006)を参照のこと。突然変異誘発の第2ラウンドでは、SYBR Greenの存在下、用意されたM13DNA鋳型において改善された伸長速度を有する酵素を選択した。CS5L突然変異体のうちのいくつかが、長い高感度RT/PCRを実施する能力を示した。最も有望な突然変異体は、D640Gであった。我々は、これらの突然変異体をCS5 DNAポリメラーゼ骨格から野性型Tma DNAポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼとDNAポリメラーゼドメインに移した。Tma6D及びTmaLD DNAポリメラーゼは、D640G「高速伸長因子」突然変異を含むが、Tma6Dはプルーフリーディング活性を欠き、そしてTmaLDはプルーフリーディング活性が減少した。同様に、我々は、相同D640G DNAポリメラーゼドメイン変異をCS5からZ05に移した(D580G)。
【0096】
DNAポリメラーゼのプルーフリーディング活性は、プライマー配列内の2’アミノ修飾塩基の使用によって制限される。プライマーを、末端から二番目の塩基(プルーフリーディングを完全に妨げるため)、又は3’末端の潜在的ミスマッチの上流であるプライマーのN−6位(限定されたプルーフリーディングを可能にするため)のいずれかに2’アミノ修飾を用いて設計した。これらのプライマーを、2’アミノ修飾を含まないアルキル化プライマーと比較した。プライマーの3’末端のミスマッチによって引き起こされた性能低下を緩和するために、修飾されたプルーフリーディング活性を有する酵素の使用と、新しいDNAポリメラーゼの使用を評価した。
【0097】
酵素活性
図1は、ミスマッチ校正に関する略図を提供する。プライマー配列の中の2つのTは標的に対するミスマッチである。DNAポリメラーゼは、それを伸長する前にプライマー上のミスマッチを取り除く。プライマーは、プライマー配列内の2’アミノ修飾によってさらに酵素的分解から保護される。この過程は、その標的に完全に一致するプライマーを作り出す。
【0098】
マッチ及びミスマッチ標的のRT/PCR
図2Aは、HIVのGAG領域の増幅に使用したプライマーと鋳型を示している。図2Bは、(3’部分の)完全に一致した転写産物又はミスマッチ転写産物(T97599‐1)のいずれかを使用した15分間のRTステップによるHIV RT/PCR(SYBR Green)の結果を示している。RTプライマー上の2’アミノ修飾は、末端から二番目の位置(−1)、又はプライマー3’末端からN−6位に存在した。
【0099】
Tma6D DNAポリメラーゼ(プルーフリーディング活性なし)では、2’アミノ修飾プライマー(−1と−6)を用いたミスマッチ標的に関して〜8Ctの遅延があった。プルーフリーディングDNAポリメラーゼTmaLDでは、−1位2’アミノ修飾プライマーを用いたミスマッチ標的に関しては〜6サイクルの遅延があるが、−6位アミノ修飾プライマー(2’アミノ基はミスマッチの上流)を用いると遅延は1サイクルより少なかった。Ctの差もまた、図2Cに例示されている。
【0100】
アルキル修飾プライマーを用いた増幅
3’末端のミスマッチを伸長する難しさは、(より大きいCt遅延を引き起こす)プライマーがベンジル基で修飾されているときに深刻になる。図3を参照のこと。Tma6D DNAポリメラーゼは、ベンジル化プライマーと共にミスマッチ標的を使用することで〜15サイクルの遅延を示すのに対して、プルーフリーディングDNAポリメラーゼTmaLDは<1サイクルの遅延しか示さなかった。TmaL DNAポリメラーゼ(同様にプルーフリーディング酵素)は、ミスマッチ標的に関して〜7サイクルの遅延を示す。これらの結果は、プルーフリーディング活性がミスマッチ標的の増幅の改善に関与し、そしてTmaのD640G突然変異がさらにそれを改善したことを示唆している。これらの結果は、アルキル化プライマーがDNAポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ(プルーフリーディング)活性によって分解されることを裏付けている。
【0101】
HIV‐1MMXに添加されたプルーフリーディング酵素
プルーフリーディング酵素CS5G又はCS5GLを、COBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HIV‐1試験の製品版Mastermix中に混入した。0.1UのCS5G又は1UのCS5GL DNAポリメラーゼのいずれかを加えたとき、好ましい結果を得た。図4A及び4Bを参照のこと。ミスマッチ標的T97599‐1を使用して、0.1UのCS5G又は1UのCS5GL DNAポリメラーゼのいずれかの添加は、単独のZ05 DNAポリメラーゼに比べて、8.5〜11.6サイクル早いCtを示した。定量標準(QS)は、それぞれ2.1〜3.9サイクル早いCtを示した。よって、プルーフリーディング酵素の添加は、このミスマッチ転写産物に関してより正確なコピー数測定につながる。マッチ標的であるEF021を用いると、結果は、添加が定量におけるわずかな変化しか引き起こさなかったことを示した。
【0102】
結論
我々は、ミスマッチ鋳型によって検証される増幅系の性能を改善する多様なアプローチを実証した。DNAポリメラーゼ(例えば、TmaLD)のプルーフリーディング活性が、プライマーの3’末端にミスマッチを持つ標的を首尾よく増幅することを示した。プルーフリーディングの程度を制限した、すなわち、プライマー配列の末端から二番目の位置に2’アミノ修飾ヌクレオチドを持つプライマーを使用したとき、増幅は、非プルーフリーディングDNAポリメラーゼを使用したかのように振る舞った(Tma6Dと同程度)。しかしながら、2’アミノ修飾形態をミスマッチの上流に配置したとき、ミスマッチを通過して2’アミノ基の1塩基前までの分解が、その標的と完全に一致したプライマーを可能にし、その結果、増幅が改善された。
【0103】
アルキル修飾が、(より大きなCt遅延を引き起こして)3’‐ミスマッチを伸長する難しさを深刻にする。これらの結果は、プルーフリーディング活性が、ミスマッチ標的の増幅を改善するのに関与し、そしてTma(Z05のD580G)のD640G突然変異がさらにそれを改善したことを示唆している。これらの結果は、ベンジル化プライマーがDNAポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ(プルーフリーディング)活性によって分解されることを裏付けている。
【0104】
現在のZ05ベースのウイルスTaqMan試験へのプルーフリーディング酵素の添加は、オリゴヌクレオチドプライマーの下の配列不均一性によって検証される既存の増幅系における性能改善の解決策となる可能性がある。
【0105】
Tma及びZ05 DNAポリメラーゼで特徴とされる特異的突然変異は、ミスマッチ鋳型が生じるとき、アルキル化プライマーを使用したシステムにおいて二重の利益をもたらすことができる。Tma DNAポリメラーゼにおけるD640G突然変異、及びZ05 DNAポリメラーゼにおけるD580位の突然変異(例えば、Z05Dなどの)は3’修飾プライマーの伸長を改善するので、ミスマッチ耐性を改善する。
【0106】
本明細書中に記載した実施例及び実施形態が例示目的のためだけに存在すること、そしてそれを考慮した様々な修飾形態又は変更が当業者に示され、且つ、本出願の要旨と添付の請求項の範囲の範囲内に含まれるべきであることは理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマー伸長反応の実施方法であって、以下のステップ:
a.オリゴヌクレオチドを、(i)鋳型核酸及び(ii)3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼと接触させ、ここで:
i.前記オリゴヌクレオチドが、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれない修飾ヌクレオチドを含んでなり;
ii.前記修飾ヌクレオチドが、前記オリゴヌクレオチドの3’又は5’末端ヌクレオチドではなく、また3’末端から二番目のヌクレオチドでもなく;
iii.前記オリゴヌクレオチドには3’部分と5’部分があり、ここで、当該3’部分が、前記修飾ヌクレオチドの3’側に存在するオリゴヌクレオチド内のヌクレオチドを含んでなり、且つ、前記5’部分が、前記修飾ヌクレオチドの5’側に存在するオリゴヌクレオチド内のヌクレオチドを含んでなり;並びに
iv.前記オリゴヌクレオチドの3’部分が鋳型核酸に対して100%の相補性を持たない場合に、前記接触ステップは、前記ポリメラーゼがオリゴヌクレオチドの3’部分を鋳型特異的様式で校正できるようにするのに好適な条件下で実施され;そして
b.前記オリゴヌクレオチドを、鋳型依存的様式で伸長することによって、プライマー伸長反応を実施する、
を含んでなる前記方法。
【請求項2】
前記修飾ヌクレオチドが、アミノ、O‐メチル、OH、O‐ホスファート、及びホスホロチオアートから成る群から選択される2’部分を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記修飾ヌクレオチドが、前記オリゴヌクレオチドの3’末端から2〜10ヌクレオチドの間に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記修飾ヌクレオチドが、蛍光部分を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドを含んでなる反応混合物であって、当該オリゴヌクレオチドが、核酸ポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれない修飾ヌクレオチドを含んでなり、ここで、当該修飾ヌクレオチドが、前記オリゴヌクレオチドの3’又は5’末端ヌクレオチドではなく、また3’末端から二番目のヌクレオチドでもなく、且つ、前記修飾ヌクレオチドが蛍光部分を含まない前記反応混合物。
【請求項6】
3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼをさらに含んでなる、請求項5に記載の反応混合物。
【請求項7】
鋳型核酸をさらに含んでなる、請求項5又は6に記載の反応混合物。
【請求項8】
オリゴヌクレオチドを含んでなるキットであって、当該オリゴヌクレオチドが、核酸ポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性によって取り除かれない修飾ヌクレオチドを含んでなり、ここで、前記修飾ヌクレオチドが、3’又は5’末端ヌクレオチドではなく、またオリゴヌクレオチドの3’末端から二番目のヌクレオチドでもなく、且つ、前記修飾ヌクレオチドが蛍光部分を含まない前記キット。
【請求項9】
3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼをさらに含んでなる、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記修飾ヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの3’末端から3〜10ヌクレオチドの間に存在する、請求項8に記載のキット。
【請求項11】
前記修飾ヌクレオチドが、アミノ、O‐メチル、‐OH、O‐ホスファート、及びホスホロチオアートから成る群から選択される2’部分を含んでなる、請求項8に記載のキット。
【請求項12】
生体サンプル中の生物学的実体の有無、又は量の検出方法であって、以下のステップ:
a.オリゴヌクレオチドを、(i)生物学的実体からの核酸を持っていると疑われる生体サンプル及び(ii)3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼと接触させ、ここで、前記オリゴヌクレオチドは生物学的実体からの核酸に対して実質的に相補性を持ち;
b.ポリメラーゼ連鎖反応を実施し、それによって、前記オリゴヌクレオチドを鋳型依存的様式で伸長して、生物学的実体由来の核酸に対して相補性を持つポリヌクレオチド産物を生じさせ;
c.ポリヌクレオチド産物又はその相補体を定量し;そして
d.ポリヌクレオチド産物又はその相補体の量を、生体サンプルの生物学的実体の量、又は有無に相関させる、
を含んでなる前記方法。
【請求項13】
前記定量ステップが、定量的リアルタイムPCRを含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記PCRが、オリゴヌクレオチドとウイルス核酸の間に0、1、2、又は3つのミスマッチが存在するか否かに関係なくオリゴヌクレオチドの伸長を可能にする条件下でのステップを含んでなり、そしてここで、前記オリゴヌクレオチドには、生物学的実体からの核酸との1つ又は複数のミスマッチがあり、且つ、ここで、前記ポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性が前記オリゴヌクレオチドを校正して、ポリヌクレオチド産物に対して完全な相補性を持つポリヌクレオチド産物をもたらす、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記実施ステップが、そのうちの一部が3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いている1つ又は複数のポリメラーゼをさらに含んでなる、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2011−530301(P2011−530301A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522421(P2011−522421)
【出願日】平成21年8月8日(2009.8.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005770
【国際公開番号】WO2010/017932
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】