説明

プレザーブ載置のゲル化食品,その製造方法及び充填容器

【課題】 1.5〜3cm程度の大きさのグレープフルーツ果肉とフルーツソースのプレザーブを原料液段階でその上に載置したヨーグルトを提供する。
【解決手段】 充填容器1を,容器基部11と,その上端の断面積を外周方向に急拡大した拡開空間部12と,その上方の上位空間部13を備えた合成樹脂製とし,その容器基部11にヨーグルトの原料液2を充填供給した後に,この原料液にプレザーブ3を落下供給し,充填容器1を閉蓋冷却して製品とする。落下供給による原料液に対する衝撃を拡開空間部12が吸収し,原料液2の揺動や飛散による痕跡が拡開空間部12や上位空間部13に残ることがなく,プレザーブ3とヨーグルトをそれぞれの食味を生かした口腔内賞味をなし得るヨーグルトAとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えばヨーグルトやプリン等のゲル化食品上に,フルーツ又はフルーツとソース等のプレザーブを載置したプレザーブ載置のゲル化食品,その製造方法及び充填容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のゲル化食品として,出願人は,数mm程度に角切りした小ブロック状のリンゴとすり下しリンゴとを混合したヨーグルトを製造販売しているが,例えば下記文献は,ゴールドキウイをサイコロ形状のブロック状にカットしてヨーグルト中に混合したヨーグルトを提案しており,これによればゴールドキウイの収穫後に,これを3mm乃至2cmのサイコロ形状にカットして追熟管理下で冷凍保存した後に,該ゴールドキウイをヨーグルトに対して7対3の比率で混合したものとされ,その官能テストにおいて,該ゴールドキウイ混合のヨーグルトは,その風味,食感とも良好な結果が得られるとされる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−82号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように,角切りやサイコロ形状のフルーツの如くにブロック状食品を混合したヨーグルトの如きゲル化食品は,ブロック状食品の食味とゲル化食品の食味を同時に賞味することができるが,これらの場合,ブロック状食品はゲル化食品中に分散してこれに混合しているから,その賞味はこれらが混ざったものとなるところ,ゲル化食品にプレザーブを載置した食品とし,例えば,このプレザーブを上記ブロック状食品とすれば,ゲル化食品とプレザーブの食味を生かすとともにこれらが口腔内で混ざるプロセスを生かした口腔内賞味を行うことができ,更に良好な風味を備えた食品とすることが可能となる。
【0005】
この場合,ゲル化食品をゲル化した後に,該ゲル化食品上にプレザーブを載置すればよいが,一連工程でプレザーブ載置のゲル化食品を工場で製造する上では,充填容器に充填した原料液を,閉蓋することなく開口状態で,例えば冷却によってゲル化食品にした後にプレザーブを載置し閉蓋する必要があり,衛生面及び製造効率面から採用が困難である。一方,ゲル化食品の製造ラインを用いて,プレザーブを載置するには,充填容器にゲル化食品の原料液を充填し,この原料液上にプレザーブを載置すること,この場合プレザーブは,充填容器進行方向の定位置で該充填容器の通過を許容する高さに設置した充填機から落下供給すること,またこの落下供給は,充填容器の進行速度に合せた極く短時間に一気に行うことが必要である。しかし乍ら,ゲル化前の原料液がある程度の粘度を有していても,原料液に,例えば数cm乃至10cm程度の上方からプレザーブを一気に落下供給すれば,落下供給による衝撃によって原料液には揺動や飛散が生じて,これが充填容器の内面に付着し,その後のゲル化工程でこれがゲル化して,充填容器に揺動痕跡や飛散痕跡を残す結果,需要者に製造不良の印象を与え,その商品価値を著しく損なう可能性を生じる。特にプレザーブの重量が嵩む場合には原料液の揺動や飛散が顕著となるし,充填容器を透明乃至半透明の樹脂製とすれば,揺動の痕跡や飛散痕跡が容器外部から認識されるに至る。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,ゲル化食品の原料液上にプレザーブを落下供給することによる原料液の揺動や飛散を可及的に防止し,充填容器における揺動痕跡や飛散痕跡を可及的に抑制したプレザーブ載置のゲル化食品を提供し,その製造方法を提供し,またその充填容器を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に沿って鋭意検討したところ,原料液上にプレザーブを落下供給するについて,原料液に対する落下衝撃を,充填容器に付与した緩衝機能によって緩衝して,これを吸収すること,充填容器の緩衝機能は,原料液を充填する充填部位をなす下位配置の容器基部を相対的に径小とする一方,その上位に容器基部上端の内径,即ち断面積を外周方向に急拡大する緩衝地帯,即ち原料液衝撃吸収用の拡開空間部を配置したものとすること,このときその製造過程において,ゲル化食品の原料液の充填を該充填容器の容器基部と拡開空間部の境界乃至その近傍までとすれば,上記拡開空間部が原料液の揺動と飛散を有効に防止し,これらの痕跡が充填容器の内面に残るのを抑制するとともに,充填容器におけるゲル化食品充填の上端位置を該境界又はその近傍にしてその内周方向に可及的均一位置に配置したプレザーブ載置のゲル化食品を得られるとの事実を知見した。
【0008】
本発明はかかる知見に基づいてなされたもので,即ち請求項1に記載の発明を,上記プレザーブ載置のゲル化食品を提供するように,これを,充填容器に充填した原料液にプレザーブを落下供給して閉蓋後にゲル化措置を施したプレザーブ載置のゲル化食品であって,上記充填容器を,下位径小にして原料液充填用の容器基部と,該容器基部上端の断面積を外周方向に急拡大した上位径大にして原料液衝撃吸収用の拡開空間部を具備して形成し且つ該充填容器におけるゲル化食品充填の上端位置を上記容器基部と拡開空間部の境界又はその近傍にしてその内周方向に可及的均一位置に配置するとともに該ゲル化食品充填の上端位置より上方の充填容器内面にゲル化食品の波状乃至点状の付着を抑制してなることを特徴とするプレザーブ載置のゲル化食品としたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,そのプレザーブを,例えばフルーツ,フルーツとソースの如くに,ブロック状食品又はこれと液状食品とすることによって,ゲル化食品とプレザーブの食味を生かすとともにこれらが口腔内で混ざるプロセスを生かした口腔内賞味をなし得るものとするように,これを,上記プレザーブを,ブロック状食品又は該ブロック状食品と液状食品としてなることを特徴とする請求項1に記載のプレザーブ載置のゲル化食品としたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は,更にプレザーブを,例えばグレープフルーツのじょうのう膜を除去した1房を複数分割したさのうとする如くに,その素材を粗切りして比較的大きなブロック状のものとすることによって,開蓋したときの品質感を確保するとともに上記口腔内賞味を更に有効になし得るものとするように,これを,上記ブロック状食品を,プレザーブ素材を粗切りして5cm以下の辺を有するブロック状に形成してなることを特徴とする請求項2に記載のプレザーブ載置のゲル化食品としたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は,上記プレザーブ載置のゲル化食品の製造方法を提供するように,これを,充填容器に対するゲル化食品の原料液充填と,該原料液上へのプレザーブの落下供給と,充填容器の閉蓋と,冷却による原料液ゲル化の各工程を備え,上記充填容器を,下位径小にして原料液充填用の容器基部と,該容器基部上端の断面積を外周方向に急拡大した上位径大にして原料液衝撃吸収用の拡開空間部を具備して形成した容器とし且つ該充填容器に対する上記原料液充填を充填容器の容器基部上端乃至その近傍までに規制して上記プレザーブの落下供給を行うことを特徴とするプレザーブ載置のゲル化食品の製造方法としたものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は,上記プレザーブ載置のゲル化食品を充填するに好適なゲル化食品用充填容器を提供するように,これを,充填した原料液にプレザーブを落下供給して閉蓋及びゲル化措置を施したプレザーブ載置のゲル化食品に使用する充填容器であって,下位径小にして原料液充填用の容器基部と,該容器基部上端の断面積を外周方向に急拡大した上位径大にして原料液衝撃吸収用の拡開空間部を具備して形成してなることを特徴とするプレザーブ載置のゲル化食品用充填容器としたものである。
【0013】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,ゲル化食品の原料液上にプレザーブを落下供給することによる原料液の揺動や飛散を可及的に防止し,充填容器における揺動痕跡や飛散痕跡を可及的に抑制したプレザーブ載置のゲル化食品を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,そのプレザーブを,例えばフルーツ,フルーツとソースの如くに,ブロック状食品又はこれと液状食品とすることによって,ゲル化食品とプレザーブの食味を生かすとともにこれらが口腔内で混ざるプロセスを生かした口腔内賞味をなし得るものとすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は,更にプレザーブを,例えばグレープフルーツのじょうのう膜を除去した1房を複数分割したさのうとする如くに,その素材を粗切りして比較的大きなブロック状のものとすることによって,開蓋したときの品質感を確保するとともに上記口腔内賞味を更に有効になし得るものとすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は,上記プレザーブ載置のゲル化食品の製造方法を提供することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は,上記プレザーブ載置のゲル化食品を充填するに好適なゲル化食品用充填容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明を更に具体的に説明すれば,Aは,充填容器1に充填した原料液2にプレザーブ3を落下供給して閉蓋後にゲル化措置を施したプレザーブ載置のゲル化食品であり,本例にあってプレザーブ3は,これを,ブロック状食品31又は該ブロック状食品31と液状食品32とし,例えばプレザーブ素材を粗切りして5cm以下の辺を有するブロック状にして,上記口腔内賞味に適した大きさの,例えば1.5〜3cm程度に形成したものとしてあり,本例の上記ゲル化食品Aは,これをヨーグルトとし,またプレザーブ2は,これを,じょうのう膜を除去して1房を複数分割,例えば3〜4分割したさのうとするように粗切りすることによって上記大きさのブロック状としたグレープフルーツの果肉と,該グレープフルーツの果汁を用いたフルーツソースとしてある。
【0020】
充填容器1への充填量は,例えば130gとし,ヨーグルトを90g,プレザーブを40gとしてあり,プレザーブは,ブロック状のグレープフルーツの果肉とフルーツソースを6:4の比率(重量比)でヨーグルト上に載置したものとしてあり,このときヨーグルトは,該プレザーブ3の載置を確実に行うように,その粘度をやや高めに,例えば1.3万〜2.8万mPa・s,本例にあっては2万mPa・s程度としてあり,これによって輸送時の振動等によってプレザーブ3がヨーグルト中に沈降するのを可及的に防止するようにしてある。
【0021】
充填容器1は,下位径小にして原料液充填用の容器基部11と,該容器基部11上端の断面積を外周方向に急拡大した上位径大にして原料液衝撃吸収用の拡開空間部12を具備して形成したものとしてあり,本例にあって該充填容器1は,該容器基部11と拡開空間部12に加えて,該拡開空間部12上に,これと同径乃至異径の上位空間部13を備えるとともにその上端を外周方向に張出突設したシール蓋15用の顎部14を備えたものとしてあり,該充填容器1は,上記プレザーブ3の大きさに適した容量を備えて良好なデザインを有するものとしてあり,本例にあってその底面の径を3.5cm程度,上位空間部13の径を7cm程度,高さを8cm程度とした断面円形をなす,例えば透明乃至半透明の合成樹脂製,例えばPP,PE,PS等をブロー成形して形成したものとしてある。
【0022】
容器基部11は,底面から垂直壁を起立するとともにその上端から上方に向けて壁面を緩傾斜するように拡開状とし且つ該壁面の全面に断面V字状多数のリブを傾斜配置し,その上端の径を5cm程度としたものとしてあり,その容積をゲル化食品,本例にあってはヨーグルトの充填量90gに合せたものとしてある。
【0023】
拡開空間部12は,容器基部11の上端と,本例にあっては上位空間部13の下端を連結するようにこれらの間に介設してあり,本例の拡開空間部12は,これを1.4cm程度の高さにして,上記容器基部11の上端の5cm程度の径を,該高さにおいて7cm程度とするように該径,即ち容器基部11上端の断面積を急拡大する湾曲壁面をなすとともにその湾曲中心を充填容器1内の上方位置とすることによって該湾曲壁面を上向きに配置したものとし,上記断面積の急拡大を行ったものとしてある。
【0024】
上位空間部13は,該拡開空間部12の上端から垂直壁を起立して該拡開空間部12の上端の径と同径にして,例えばその高さを1cm程度としたものとしてあり,また上記顎部14は該上位空間部13の上端から円周方向に水平に張出突設したものとしてある。
【0025】
このように形成した充填容器1には,その上記ゲル化食品A,即ちヨーグルト充填の上端位置を上記容器基部11と拡開空間部12の境界又はその近傍にしてその内周方向に可及的均一位置に配置してあり,また該ヨーグルト充填の上端位置より上方の充填容器1内面にその波状乃至点状の付着を抑制して,これを解消したものとしてあり,これによって,充填したヨーグルトとプレザーブ3のブロック状グレープフルーツの果肉及びフルーツソースが透明乃至半透明とした充填容器1の外部からも視認される一方,開蓋時にはヨーグルト上に該プレザーブ3,特に粗切りした大きなグレープフルーツの果肉とフルーツソースが視認されるとともにその飲食によってヨーグルトとプレザーブの食味を生かして,これらが口腔内で混ざるプロセスを含めた口腔内賞味をなし得る,これらを混合したものに比してその食味を格段に向上したものとすることができる。
【0026】
このプレザーブ3載置のゲル化食品A,即ちグレープフルーツ果肉とフルーツソースを載置したヨーグルトの製造方法は,充填容器1に対するゲル化食品の原料液2充填と,該原料液2上へのプレザーブ3の落下供給と,充填容器1のシール蓋15による閉蓋と,冷却による原料液2ゲル化の各工程を備え,容器基部11と拡開空間部12,本例にあっては上位空間部13と顎部14とを備えた上記充填容器1を用いて,該充填容器1に対する上記原料液2充填を充填容器1の容器基部11上端乃至その近傍までに規制して上記プレザーブ3の落下供給を行うものとしてある。
【0027】
即ち該製造方法は,原料液充填工程,プレザーブ充填工程,閉蓋工程,冷却工程を経るものとしてあり,原料液充填工程は,コンベア移送の充填容器1に,ヨーグルト用に調整してゲル化剤を含有する原料液2を充填機からノズルを介して,例えば容器基部11上端位置まで充填する工程とし,プレザーブ充填工程は,該原料液2を充填してコンベア移送した充填容器1に,プレザーブ充填機4から,例えば原料液2の表面に対して数cm離隔した上方位置から,上記ブロック状のグレープフルーツ果肉とフルーツソースを混合したプレザーブ3を可及的一気に落下供給して,その充填を行う工程とし,閉蓋工程は,該原料液2とプレザーブ3を充填して閉蓋機にコンベア移送した充填容器の,本例にあって顎部14に対してシール蓋15を溶着して該充填容器1を閉蓋密封する工程とし,また冷却工程は,該閉蓋密封した充填容器1を,例えば箱詰めの出荷状態として冷蔵保存する工程としてあり,本例にあってその製造ラインは,上記のプレザーブ3落下供給用のプレザーブ充填機4を追加的に備える以外,従前のこの種ゲル化食品乃至フルーツソース入りゲル化食品用のものを使用するようにしてある。
【0028】
本例のプレザーブ充填機4は,例えば図5に示すように,上下に開口を配置した円筒基部41と,該円筒基部41内に間欠回転自在に収納した回転容器42と,該回転容器42内にその長手方向スライド自在に配置して回転容器42が下向きのときに落下による押出作用を,また回転容器42が上向きのとき落下による容器形成とエア抜きの作用を行うようにしたウエイト43とを備えたロータリー式の充填機を用い,上方の開口から回転容器42にプレザーブ3を定量供給し,該回転容器42を間欠回転することによって,上記ウエイト43の押出作用を受けて該プレザーブ3を下方の開口から充填容器1に一気に落下供給するようにしてある。プレザーブ3は上記ブロック状のグレープフルーツ果肉と液状のフルーツソースであることにより,フルーツソースの粘度が低いと,回転容器42の回転方向先端部分が下方の開口に至った際にフルーツソースが先行流下することによって,ブロック状のグレープフルーツ果肉が回転容器42に密着してその落下供給が妨げられる可能性があるところ,本例にあってはフルーツソースの粘度を,例えば700〜4000mPa・s程度とする如くに比較的高く調整することによって,上記フルーツソースの先行流下を可及的に防止するとともに下方の開口においてこれらグレープフルーツ果肉とフルーツソースの全量を可及的一体的にして一気に充填容器1の原料液2上に落下供給するようにしてある。即ち液状食品32,本例にあってフルーツソースの粘度が上記700mPa・s程度を下回ると,その粘性が弱く,上記先行流下を生じる可能性がある一方,4000mPa・s程度を上回ると,逆にその粘性が強く,プレザーブ3の落下供給がスムーズになし得ずにその回転容器42内残存と充填容量の不足を生じる可能性があり,これらの可能性を解消する上で,該粘度は上記範囲とするのが好ましい。またこのとき上記回転容器42の回転速度は,これを0.2〜0.5秒,好ましくは0.3〜0.4秒と設定するのがよく,これによってプレザーブ3の落下供給を継続的且つ確実に行って,その生産性を可及的高度に確保することができる。
【0029】
このとき本例の回転容器42は,その内径を,充填容器1における容器基部11と同等乃至それ以下に設定してあり,これによってプレザーブ3の落下位置を,充填容器1に充填した原料液2の可及的に中心部位乃至その同心円部位とし得るとともにプレザーブ3の落下供給を上記円筒基部41の下方の開口から行うようにしてあるため,回転容器42が円筒基部41の内周に沿う円弧面を有するものとなり,従って回転容器42内のブロック状のグレープフルーツ果肉は,これが上記下方の開口に至る間にその進行方向の中央部位に集中するように移動し,その落下位置を充填容器1の中央部位に向けて行うことができる。従ってロータリー式の充填機4を用いること,またその回転容器42の径を上記のように設定することによって,グレープフルーツ果肉が原料液2上に分散落下して原料液2に対する落下衝撃を過大化することによる揺動痕跡や飛散痕跡を更に有効且つ適切に防止し得るとともに充填容器1の拡開空間12部内面にグレープフルーツ果肉が接触してその痕跡を残すようなことを防止できる。
【0030】
落下供給は,例えば原料液2の液面から数cm乃至10cm,好ましくは3cm乃至6cm程度の高さからこれを行うものとしてあり,該高さからのプレザーブ3の落下供給を行うことによって,前工程からの充填容器1のコンベア移送を妨げることなく,プレザーブ載置のゲル化食品Aを一連工程によって量産することが可能となる。また一般にこのように落下供給,特にブロック状のグレープフルーツ果肉のように重量が嵩むものを落下供給すれば,ゲル化前の原料液2は,該落下供給の衝撃によってその液面が揺動し,原料液が飛散する結果となるところ,上記充填容器を使用することによってこれら揺動や飛散が可及的に抑制されて,該原料液の揺動や飛散による付着やその痕跡が充填容器1,特に拡開空間部12や上位空間部13に残存するのを抑制して,これを解消することができる。
【0031】
即ち充填容器1は,容器基部11の断面積を外周方向に急拡大する拡開空間部12を備えたことによって,該拡開空間部12が,原料液2に対するプレザーブ3の落下供給により生じる落下衝撃を緩衝して,これを吸収することによって該拡開空間部12が原料液衝撃吸収用の緩衝機能を発揮する結果,容器基部11に充填した原料液2が幾分拡開空間部12に及ぶとしても,その揺動と飛散を可及的に防止し,落下衝撃によって該原料液2が容器基部11上に至ってその痕跡を残すのを防止できる。このとき本例にあって拡開空間部12は,上記湾曲中心を充填容器1内の上方位置として湾曲壁面を上向きに配置してその断面積の急拡大を行ったことによって,上記原料液衝撃吸収用の緩衝機能を充分に発揮して,落下衝撃を高度に吸収することができる。従って,例えば原料液2を容器基部11の上端位置まで充填した場合,これに載置したプレザーブ3の体積に応じて原料液2の液面が上昇するも,該上昇が大きく波状を呈したりするのを防止できる上,プレザーブ3,特にフルーツソース等の液状食品32を使用したときは,これが原料液2の上に積層することによってゲル化食品を液状食品32が覆ってその露出のない美麗な製品とすることができる。
【0032】
図示した例は以上のとおりとしたが,充填容器における拡開空間部を,上記湾曲壁に代えて,水平位置から緩傾斜する傾斜壁によって区画するように形成すること,湾曲壁,傾斜壁を問わず,拡開空間部の内面に水返し用水平の突出乃至凹陥のリブを配置し,原料液の揺動による衝撃緩衝作用の確実化を期すること,拡開空間部の高さを可及的に低く,例えば2〜3mmから5mm程度とすること,上位空間部の設置を省略し,拡開空間部の上端に閉蓋用顎部を配置すること,ゲル化食品を,ゲル化剤を含有してゲル化を行うゼリー,プリン,その他の食品とすること,プレザーブを適宜のフルーツ,野菜の他,乳製品,餡の如き各種の加工品又はこれらをブロック状に形成したブロック状食品とし,また液状食品を用いるとき,これを,クリーム,ジャム,シロップ等とすること等を含めて,本発明の実施に当って,ゲル化食品,プレザーブ,充填容器,容器基部,拡開空間部,製造工程,充填装置,必要に応じて用いるブロック状食品,液状食品等の各具体的形状,構造,材質,方法,寸法,これらに対する付加等は,上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】プレザーブ載置のゲル化食品のモデルを示す充填容器の側面図である。
【図2】プレザーブ載置の状態を示すゲル化食品のモデルを示す平面図である。
【図3】充填容器の側断面図である。
【図4】充填容器の平面図である。
【図5】ロータリー充填機のモデルを示す要部の縦断面図である。
【図6】プレザーブ載置のゲル化食品製造工程図である。
【符号の説明】
【0034】
A ゲル化食品
1 充填容器
11 容器基部
12 拡開空間部
13 上位空間部
14 顎部
15 シール蓋
2 原料液
3 プレザーブ
31 ブロック状食品
32 液状食品
4 プレザーブ充填機
41 円筒基部
42 回転容器
43 ウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填容器に充填した原料液にプレザーブを落下供給して閉蓋後にゲル化措置を施したプレザーブ載置のゲル化食品であって,上記充填容器を,下位径小にして原料液充填用の容器基部と,該容器基部上端の断面積を外周方向に急拡大した上位径大にして原料液衝撃吸収用の拡開空間部を具備して形成し且つ該充填容器におけるゲル化食品充填の上端位置を上記容器基部と拡開空間部の境界又はその近傍にしてその内周方向に可及的均一位置に配置するとともに該ゲル化食品充填の上端位置より上方の充填容器内面にゲル化食品の波状乃至点状の付着を抑制してなることを特徴とするプレザーブ載置のゲル化食品。
【請求項2】
上記プレザーブを,ブロック状食品又は該ブロック状食品と液状食品としてなることを特徴とする請求項1に記載のプレザーブ載置のゲル化食品。
【請求項3】
上記ブロック状食品を,プレザーブ素材を粗切りして5cm以下の辺を有するブロック状に形成してなることを特徴とする請求項2に記載のプレザーブ載置のゲル化食品。
【請求項4】
充填容器に対するゲル化食品の原料液充填と,該原料液上へのプレザーブの落下供給と,充填容器の閉蓋と,冷却による原料液ゲル化の各工程を備え,上記充填容器を,下位径小にして原料液充填用の容器基部と,該容器基部上端の断面積を外周方向に急拡大した上位径大にして原料液衝撃吸収用の拡開空間部を具備して形成した容器とし且つ該充填容器に対する上記原料液充填を充填容器の容器基部上端乃至その近傍までに規制して上記プレザーブの落下供給を行うことを特徴とするプレザーブ載置のゲル化食品の製造方法。
【請求項5】
充填した原料液にプレザーブを落下供給して閉蓋及びゲル化措置を施したプレザーブ載置のゲル化食品に使用する充填容器であって,下位径小にして原料液充填用の容器基部と,該容器基部上端の断面積を外周方向に急拡大した上位径大にして原料液衝撃吸収用の拡開空間部を具備して形成してなることを特徴とするプレザーブ載置のゲル化食品用充填容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−131198(P2009−131198A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309823(P2007−309823)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(390001270)グリコ乳業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】