説明

プレスフレーム

【課題】輸送が容易で、鋳造欠陥が生じずプレス負荷に強く、プレス高さを低くできるプレスフレームを提供する。
【解決手段】ベッド3と、ベッド3の上面に立設された左右一対のサイドフレーム2,2と、左右のサイドフレーム2,2の上端部において、前方に突出した前方結合部23,23同士を連結する前方連結部材1Aと、後方に突出した後方結合部24,24同士を連結する後方連結部材1Bとからなる。前方連結部材1Aおよび後方連結部材1Bは、前後幅よりも上下寸法が長い断面長方形の柱状部材であり、左右のサイドフレーム2,2を結合するためのタイロッド13,14の挿入孔を上下に2本形成している。各タイロッド13,14はナット15,16で締結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスフレームに関する。プレスの構造は、加圧力を受け全体を支持するフレーム、上型を取付けて往復運動するスライド、スライドに往復運動を与える駆動部等からなる。また、フレームは小・中型機に採用されるC形フレームと、中型機以上に採用されるストレートサイド構造とがある。本発明は、ストレートサイド構造のプレスフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
図5〜図7は、従来より採用されているストレートサイド構造のプレスフレームを示している。このプレスフレームは、クラウン101、アップライト102、ベッド103の3部材からなり、タイロッド104でこれら分割された三部材を締め付ける構造としている(非特許文献1)。クラウン101とアップライト102上面、ベッド103とアップライト102下面の分割面は、キーなどの位置決め部材を介在させて位置決めした後に、前記タイロッド104により強固に一体化されている。
クラウン101はプレスの頭に相当する部分で、クランク軸やギヤ類を納める部材である。通常は、左右の側方部材120,120とこれら側方部材を連結するための1個の中央部材110で構成されており、正面視で略逆U字状となる立体形状物である。
アップライト102は、クラウン101とベッド103の間にある柱状の部材である。
ベッド103は、下型を取付けたボルスタを固定する部材で、プレス全体を基礎上に安定して支持するものである。
【0003】
前記クラウン101の側方部材120,120のそれぞれには、円形の穴105,105が形成され、エキセン軸(クランク軸)の両端のジャーナル部を支持し、かつ負荷をクラウン1に伝達するようにしている。106はリング形状のスリーブである。この2つの穴105,105は、エキセン軸を水平に支持するために正確に加工する必要があることから、一つの部品(クラウン101)に加工できるように、左右のクラウン側方部材120,120とクラウン中央部材110は一体物として鋳造されている。
【0004】
上記のクラウン101における穴105の穴径は大きく、クラウン101も略逆U字状の立体形状物であるため、その寸法が大きくなるので、一般に輸送が困難である。
また、稼動中の負荷を滑らかにタイロッド104に伝達させるために、クラウン側方部材120,120は複雑な形状が必要となり、そのため鋳物で製造するが、それでも側方部材120,120と中央部材110の間は、肉流れが急激に変化する個所であるから鋳造上の欠陥が発生しやすくなり、偏心荷重が作用した場合は、応力が集中しやすいという問題がある。
さらに、クラウン101で上方が塞がれているので、スライドやコンロッドのメンテナンス性が悪い。また、プレスの高さが高いので、スライド起動停止時の振動が低減でき、プレスを設置する建屋が大形のものになり、建設費用が高くつく。
【0005】
【非特許文献1】「知りたいプレス機械改訂版」56〜57頁 2001年10月1日 2版発行 著者アイダプレス研究会 発行株式会社ジャパンマシニスト社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、輸送が容易で、鋳造欠陥が生じずプレス負荷に強く、さらにプレスの高さを低くできるプレスフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のプレスフレームは、ベッドと、該ベッドの上面に立設された左右一対のサイドフレームと、該左右一対のサイドフレームの上端部同士を連結する連結部材とからなり、前記連結部材は、前記左右一対のサイドフレームの上端部における前方部分同士を連結する前方連結部材と、後方部分同士を連結する後方連結部材とからなることを特徴とする。
第2発明のプレスフレームは、第1発明において、前記前方連結部材および前記後方連結部材は、前後幅よりも上下寸法が長い断面長方形の柱状部材であり、前記左右一対のサイドフレームを結合するためのタイロッドの挿入孔を上下に2本形成していることを特徴とする。
第3発明のプレスフレームは、第1発明において、前記左右一対のサイドフレームの上端部において前方に突出した前方部分に、前記前方連結部材を連結するための前方結合部と、後方に突出した後方部分に、前記後方連結部材を連結するための後方結合部とが形成されていることを特徴とする。
第4発明のプレスフレームは、第2発明において、前記前方連結部材と前記前方結合部との間、および前記後方連結部材と前記後方結合部との間は、いずれも位置決め部材で位置決めされていることを特徴とする。
第5発明のプレスフレームは、第1発明において、前記各サイドフレームは、下方のアップライト部と、その上方のエキセン軸支持部を一体に形成した部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、サイドフレームと連結部材を別体で製造できるので、輸送が容易であり、鋳造するとしても肉流れの急変する個所はなく、鋳造欠陥は生じにくい。また、前後の連結部材は、各サイドフレームの上端部であって前方と後方に分散されて取付けられている。このため、スライドおよびコンロッドの上方空間が空くので、スライドやコンロッドのメンテナンス性が向上する。さらに、連結部材をプレスフレームの上面に置かず前後面に配置したことによって、プレスフレームの高さが低くなるので、スライド起動停止時の振動が低減でき、プレスを設置する建屋の高さが低くてすみ、建設費用を低減できる。
第2発明によれば、前後の連結部材は幅よりも上下寸法が長いので、各連結部材の上下方向剛性が上がり、サイドフレームの変形を低減しやすくなる。
第3発明によれば、連結部材と結合されるプレスフレーム側の結合部分は前方と後方に突出しているので、前後の連結部材によって囲まれた空間はプレスフレームの前後幅より狭くならず、スライドやコンロッドを小さくしなくても収容でき、大きな性能を発揮することができる。
第4発明によれば、前後方連結部材と前後方結合部は、位置決め部材によって連結位置が変位しないので、大きな負荷がかかってもフレームの位置ズレを防止し、鍛造品の寸法精度を高く維持できる。
第5発明によれば、エキセン軸支持部を含むサイドフレームは、連結部材とは別体の柱状の部材であるから、クラウンのような凹凸がなく、エキセン軸を通すための穴を大きくしても、嵩張ることなく輸送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るプレスフレームの縦断面図である。図2は同プレスフレームにおける図1のII−II線矢視図である。図3は同プレスフレームにおける頭部の平面図である。図4は同プレスフレームにおける頭部の部分斜視図である。
【0010】
図1〜図2において、3はベッドである。このベッド3は従来のベッドと同じものでよい。
このベッド3の上面には、左右一対のサイドフレーム2,2が立設されている。各サイドフレーム2は、下方のアップライト部21と、その上方のエキセン軸支持部22とを一体に形成した部材であり、全体的な形状は柱状である。前記アップライト部21は、従来のプレスフレームにおけるアップライト102(図5〜図6参照)に相当する部分であり、前後の柱状部分を含んでいる。前記エキセン軸支持部22は従来のプレスフレームにおけるクラウン側方部材120に相当する部分であるが、形状的には単純な柱状である点で相違している。
【0011】
前記左右のサイドフレーム2,2の上端部同士は、2本の連結部材1A,1Bで連結される。すなわち、各サイドフレーム2,2の上端部(つまり、エキセン軸支持部22,22の上端部)の前面には、下端部よりも前方に突出した前方結合部23,23が形成されており、後面にも後方に突出した後方結合部24,24が形成されている。これらの各結合部23,24は突出幅よりも上下寸法が長い形状で、タイロッドを通すためのロッド挿通孔が上下に2本形成されている。
【0012】
前記左右の前方結合部23,23の間には前方連結部材1Aが入れられるが、この前方連結部材1Aは断面長四角の柱状部材であって、幅よりも上下寸法が大きくなっている。そして、タイロッドを通すためのロッド挿通孔が上下に2本形成されている。
また、前記左右の後方結合部24,24の間にも後方連結部材1Bが入れられるが、この後方連結部材1Bも断面長四角の柱状部材であって、幅よりも上下寸法が大きくなっている。そして、タイロッドを通すためのロッド挿通孔が上下に2本形成されている。
【0013】
本実施形態のプレスフレームを組立てる際は、左右の前方結合部23,23の間に、前方連結部材1Aを入れ、各ロッド挿通孔に、2本の前方タイロッド13,13を挿入し、その両端にナット15,15をねじ込んで締結する。同様に、左右の後方結合部24,24の間に、後方連結部材1Bを入れ、各ロッド挿入孔に、2本の後方タイロッド14,14を挿入し、その両端にナット16,16をねじ込んで締結する。
上記の各タイロッド13,14には、プリロードを与えておくと、フレームの変形を抑制することができる。
【0014】
本実施形態において、前後の連結部材1A,1Bは幅よりも上下寸法が長いので、各連結部材1A,1Bの上下方向剛性が上がり、サイドフレーム2,2の変形を低減しやすくなる。
また、連結部材と結合される前後方結合部23,24は前方と後方に突出しているので、前後の連結部材によって囲まれた空間はプレスフレームの前後幅より狭くならず、スライドやコンロッドを小さくしなくても収容でき、大きな性能を発揮することができる。
【0015】
さらに、前方結合部23,23と前方連結部材1Aとの間、および後方結合部24,24と後方連結部材1Bとの締結時の位置決めは、キー7等の位置決め部材を用いて行われる。この場合、組立て後の位置ズレ、とくに負荷が作用したときも位置ズレを確実に防止できるので、フレームの剛性が上り、鍛造品の寸法精度を高めることができる。
【0016】
前記サイドフレーム2と前記ベッド3との結合は、タイロッド11で締結される。タイロッド11はサイドフレーム2とベッド3を貫通してナットで締め付けられる。このように、上下方向の接合個所が従来の2カ所から1カ所に減っているので、組立工数が減少する。なお、予めプリロードを与えておくと、フレームの変形を抑制することができる。
【0017】
本実施形態のプレスフレームにおいても、エキセン軸を通し、そのジャーナル部を支持する穴5は、サイドフレーム2の上方部分であるエキセン軸支持部22に形成される。なお、6はスリーブであり、外径が穴5の内径と同じで、内径はエキセン軸のジャーナル部を支持する径となっている。
本実施形態においても、左右の穴5,5の芯位置は正確に合わせなければならないが、そうするためには、左右のサイドフレーム2,2を重ね合せ、位置決め用のキー7を用いて直接位置決めし、連結部材1A,1Bを締結するための孔を利用して、両サイドフレーム2,2を仮固定用タイロッドで固定すればよい。この場合、2つの穴5,5間の距離も短くなるので、加工も容易となる。
【0018】
前記穴5はプレスストロークが大きくなるほど、穴径が大きくなるが、左右のサイドフレーム2は柱状の部材であって、従来のプレスフレームにおけるクラウンほど凹凸が大きくないので、さほど嵩張ることなく輸送できる。
また、サイドフレーム2と連結部材1A,1Bはいずれも立方体状の部材であり、かつ別体で製造すればよいので、鋳造するとしても肉流れの急変する個所はなく、鋳造欠陥は生じにくい。
【0019】
本実施形態のプレスフレームでは、両サイドフレーム2,2の連結部材1A,1Bは各サイドフレーム2,2の上端部であって前方と後方に分散されて取付けられている。このため、スライドおよびコンロッドの上方空間が空くので、スライドやコンロッドのメンテナンス性が向上する。また、プレスフレームの高さが低くなるので、スライド起動停止時の振動が低減できる。さらに、プレスフレームの高さが低くなることから、プレスを設置する建屋の高さが低くてすみ、既存建屋に設置する場合は建屋の改造が少なくてすみ、新築建屋の場合は建設費用を低減できる。
本実施形態のプレスフレームでは、サイドフレーム2が柱状の形状であって、プレスフレームの縦方向も横方向もタイロッド11,13,14で連結するので、プレス負荷を直接タイロッド11,13,14に逃がすことができる。このため、鋳造部材に偏心荷重が作用した場合のような応力集中が生じず、プレスフレームの変形や鍛造品の寸法精度の低下を防止しうる。また、連結部材1A,1Bと前後方結合部23,24は、キー7によって連結位置が変位しないので、フレームの位置ズレを防止し、鍛造品の寸法精度を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレスフレームの縦断面図である。
【図2】同プレスフレームにおける図1のII−II線矢視図である。
【図3】同プレスフレームにおける頭部の平面図である。
【図4】同プレスフレームにおける頭部の部分斜視図である。
【図5】従来のプレスフレームの縦断面図である。
【図6】従来のプレスフレームにおける図5のVI−VI線矢視図である。
【図7】従来のプレスフレームにおける図5のVII−VII線矢視図である。
【符号の説明】
【0021】
1A,1B 連結部材
2 サイドフレーム
3 ベッド
7 キー
13 タイロッド
14 タイロッド
23 前方結合部
24 後方結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、
該ベッドの上面に立設された左右一対のサイドフレームと、
該左右一対のサイドフレームの上端部同士を連結する連結部材とからなり、
前記連結部材は、前記左右一対のサイドフレームの上端部における前方部分同士を連結する前方連結部材と、後方部分同士を連結する後方連結部材とからなる
ことを特徴とするプレスフレーム。
【請求項2】
前記前方連結部材および前記後方連結部材は、前後幅よりも上下寸法が長い断面長方形の柱状部材であり、前記左右一対のサイドフレームを結合するためのタイロッドの挿入孔を上下に2本形成している
ことを特徴とする請求項1記載のプレスフレーム。
【請求項3】
前記左右一対のサイドフレームの上端部において前方に突出した前方部分に、前記前方連結部材を連結するための前方結合部と、後方に突出した後方部分に、前記後方連結部材を連結するための後方結合部とが形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のプレスフレーム。
【請求項4】
前記前方連結部材と前記前方結合部との間、および前記後方連結部材と前記後方結合部との間は、いずれも位置決め部材で位置決めされている
ことを特徴とする請求項2記載のプレスフレーム。
【請求項5】
前記各サイドフレームは、下方のアップライト部と、その上方のエキセン軸支持部を一体に形成した部材である
ことを特徴とする請求項1記載のプレスフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−297454(P2006−297454A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124276(P2005−124276)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(502235326)住友重機械テクノフォート株式会社 (122)
【Fターム(参考)】