説明

プレスフレーム

【課題】輸送が容易で、鋳造欠陥が生じずプレス負荷に強く、製造が容易なプレスフレームを提供する。
【解決手段】ベッド3と、ベッド3の上面に立設された左右一対のサイドフレーム2と、各サイドフレーム2の上端部同士を連結する連結部材1とからなり、各サイドフレーム2は、アップライト部21の上方にエキセン軸支持部22を一体に形成した部材であり、連結部材1は、左右のサイドフレーム2におけるエキセン軸支持部22間を連結する部材である。ベッド3と左右のサイドフレーム2は、それぞれサイドフレームを貫通したタイロッド11で結合されており、左右のサイドフレーム2同士は、連結部材1を貫通したタイロッド12で結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスフレームに関する。プレスの構造は、加圧力を受け全体を支持するフレーム、上型を取付けて往復運動するスライド、スライドに往復運動を与える駆動部分等からなる。また、フレームは小・中型機に採用されるC形フレームと、中型機以上に採用されるストレートサイド構造がある。本発明は、ストレートサイド構造であって、中型機以上に採用される分割型のプレスフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
図5〜図7は、従来より採用されているストレートサイド構造の分割型のプレスフレームを示している。このプレスフレームは、クラウン101、アップライト102、ベッド103の3部材からなり、タイロッド104でこれら分割された三部材を締め付ける構造としている(非特許文献1)。クラウン101とアップライト102上面、ベッド103とアップライト102下面の分割面は、キーなどの位置決め部材を介在させて位置決めした後に、タイロッド104により強固に一体化されている。
クラウン101はプレスの頭に相当する部分で、クランク軸やギヤ類を納める部材である。通常は、左右の側方部材120,120とこれら側方部材を連結するための1個の中央部材110で構成されており、正面視で略U字状となる立体形状物である。
アップライト102は、クラウン101とベッド103の間にある柱状の部材である。
ベッド103は、下型を取付けたボルスタを固定する部材で、プレス全体を基礎上に安定して支持するものである。
【0003】
前記クラウン101の側方部材120,120のそれぞれには、円形の穴105,105が設けられ、エキセン軸(クランク軸)の両端のジャーナル部を支持し、かつ負荷をクラウン1に伝達するようにしている。この穴105の穴径は、エキセン軸の大頭部(偏心体)の径よりも大きくし、エキセン軸を挿入して組み立てできるようにしている。したがって、クラウンには、外径がクラウン穴径と同じで、内径がエキセン軸のジャーナル径に対応するリング形状のスリーブ106が取付けられることになる。この2つの穴105,105は、エキセン軸を水平に支持するために正確に加工する必要があることから、一つの部品(クラウン101)に加工できるように、左右のクラウン側方部材120,120とクラウン中央部材110は一体物として鋳造されている。
【0004】
上記のクラウン101における穴105の穴径は、つぎのようにして決められる。プレスのストロークをSt、ジャーナル径をdとすれば、エキセン軸の大頭部の径Dは、D=d+Stで表され、dは一般にプレスの能力により決定され、Stには無関係であるため、大頭部の穴径DはStが大きいほど大きくなる。したがって、ストロークの長いプレスの場合、クラウン101に加工される穴105の穴径(D+数10mm)が大きくなり、したがってまた、穴105が形成されるクラウン101の前後寸法も大きくなる。そして、クラウン101は略U字状の立体形状物であるため、その前後寸法が大きくなると、輸送が困難になるという問題が生じる。
また、稼動中の負荷を滑らかにタイロッド104に伝達させるために、クラウン側方部材120,120は複雑な形状が必要となり、そのため鋳物で製造するが、それでも側方部材120,120と中央部材110の間は、肉流れが急激に変化する個所であるから鋳造上の欠陥が発生しやすくなる。さらに、この部分は偏心荷重が作用した場合は、応力が集中しやすいという問題がある。
【0005】
【非特許文献1】「知りたいプレス機械改訂版」56〜57頁 2001年10月1日 2版発行 著者アイダプレス研究会 発行株式会社ジャパンマシニスト社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、輸送が容易で、鋳造欠陥が生じずプレス負荷に強く、製造が容易なプレスフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のプレスフレームは、ベッドと、該ベッドの上面に立設された左右一対のサイドフレームと、前記各サイドフレームの上端部同士を連結する連結部材とからなり、前記各サイドフレームは、アップライト部と、その上方にエキセン軸支持部を一体に形成した部材であり、前記連結部材は、前記左右のサイドフレームにおけるエキセン軸支持部間を連結する部材であることを特徴とする。
第2発明のプレスフレームは、第1発明において、前記ベッドと前記左右のサイドフレームは、それぞれサイドフレームを貫通したタイロッドで結合されており、前記左右のサイドフレーム同士は、前記連結部材を貫通したタイロッドで結合されていることを特徴とする。
第3発明のプレスフレームは、第2発明において、前記連結部材と前記エキセン軸支持部とは、位置決め部材で位置決めされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、エキセン軸支持部を含むサイドフレームは、連結部材とは別体の柱状の部材であるから、クラウンのような凹凸がなく、エキセン軸を通すための穴を大きくしても、嵩張ることなく輸送することができる。また、サイドフレームと連結部材はいずれも立方体状の部材であり、かつ別体で製造すればよいので、鋳造するとしても肉流れの急変する個所はなく、鋳造欠陥は生じにくい。
第2発明によれば、プレスフレームの縦方向も横方向もタイロッドで強固に連結できるので、鋳造品に偏心荷重が作用した場合のような応力集中が生じず、プレスフレームの変形や鍛造品の寸法精度の低下を防止しうる。
第3発明によれば、連結部材とエキセン軸支持部は、位置決め部材によって連結位置が変位しないので、大きな負荷がかかってもフレームの位置ズレを防止し、鍛造品の寸法精度を高く維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るプレスフレームの縦断面図である。図2は同プレスフレームにおける図1のII−II線矢視図である。図3は同プレスフレームにおける図1のIII−III線矢視図である。図4は同プレスフレームの分解図である。
【0010】
図1〜図4において、3はベッドである。このベッド3は従来のベッドと同じものでよい。
このベッド3の上面には、左右一対のサイドフレーム2,2が立設されている。各サイドフレーム2は、下方のアップライト部21と、その上方のエキセン軸支持部22とを一体に形成した部材であり、全体的な形状は柱状である。前記アップライト部21は、従来のプレスフレームにおけるアップライト102(図5〜図6参照)に相当する部分であり、前後の柱状部分を含んでいる。前記エキセン軸支持部22は従来のプレスフレームにおけるクラウン側方部材120に相当する部分であるが、形状的には単純な柱状である点で相違している。
前記左右のサイドフレーム2,2の上端同士は、連結部材1で連結される。すなわち、左右のエキセン軸支持部22,22の間に連結部材1を入れ、エキセン軸支持部22と連結部材1との締結時の位置決めは、キー7等の位置決め部材を用いて行われる。この場合、組立て後の位置ズレ、とくに負荷が作用したときも位置ズレを確実に防止できるので、鍛造品の寸法精度を高めることができる。なお、図ではエキセン軸支持部22の幅方向の中央に連結部材1を結合しているが、幅方向の前方で結合してもよく後方で結合してもよい。さらに、前方と後方で2本の連結部材1で結合してもよい。
【0011】
前記サイドフレーム2と前記ベッド3との結合は、タイロッド11で締結される。タイロッド11はサイドフレーム2とベッド3を貫通してナットで締め付けられる。このように、上下方向の接合個所が従来の2カ所から1カ所に減っているので、組立工数が減少する。なお、予めプリロードを与えておくと、フレームの変形を抑制することができる。
前記左右のエキセン軸支持部22同士も連結部材1を貫通したタイロッド12で締結される。この場合もプリロードを与えておくと、フレームの変形を抑制することができる。
【0012】
本実施形態のプレスフレームにおいても、エキセン軸を通し、そのジャーナル部を支持する穴5は、サイドフレーム2の上方部分であるエキセン軸支持部22に形成される。なお、6はスリーブであり、外径が穴5の内径と同じで、内径はエキセン軸のジャーナル部を支持する径となっている。
本実施形態においても、左右の穴5,5の芯位置は正確に合わせなければならないが、そうするためには、左右のサイドフレーム2,2を重ね合せ、位置決め用のキー7を用いて直接位置決めし、連結部材1を締結するための孔を利用して、両サイドフレーム2,2を仮固定用タイロッドで固定すればよい。この場合、2つの穴5,5間の距離も短くなるので、加工も容易となる。
【0013】
前記穴5はプレスストロークが大きくなるほど、穴径が大きくなるが、左右のサイドフレーム2は柱状の部材であって、従来のプレスフレームにおけるクラウンほど凹凸が大きくないので、さほど嵩張ることなく輸送できる。
また、サイドフレーム2と連結部材1はいずれも立方体状の部材であり、かつ別体で製造すればよいので、鋳造するとしても肉流れの急変する個所はなく、鋳造欠陥は生じにくい。
【0014】
本実施形態のプレスフレームでは、サイドフレーム2が柱状の形状であって、プレスフレームの縦方向も横方向もタイロッド11,12で連結するので、プレス負荷を直接タイロッド11,12に逃がすことができる。このため、鋳造部材に偏心荷重が作用した場合のような応力集中が生じず、プレスフレームの変形や鍛造品の寸法精度の低下を防止しうる。また、連結部材1とエキセン軸支持部22は、キー7によって連結位置が変位しないので、フレームの位置ズレを防止し、鍛造品の寸法精度を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレスフレームの縦断面図である。
【図2】同プレスフレームにおける図1のII−II線矢視図である。
【図3】同プレスフレームにおける図1のIII−III線矢視図である。
【図4】同プレスフレームの分解図である。
【図5】従来のプレスフレームの縦断面図である。
【図6】従来のプレスフレームにおける図5のVI−VI線矢視図である。
【図7】従来のプレスフレームにおける図5のVII−VII線矢視図である。
【符号の説明】
【0016】
1 連結部材
2 サイドフレーム
3 ベッド
5 穴
11 タイロッド
12 タイロッド
21 アップライト部
22 エキセン軸支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、
該ベッドの上面に立設された左右一対のサイドフレームと、
前記各サイドフレームの上端部同士を連結する連結部材とからなり、
前記各サイドフレームは、アップライト部と、その上方にエキセン軸支持部を一体に形成した部材であり、
前記連結部材は、前記左右のサイドフレームにおけるエキセン軸支持部間を連結する部材である
ことを特徴とするプレスフレーム。
【請求項2】
前記ベッドと前記左右のサイドフレームは、それぞれサイドフレームを貫通したタイロッドで結合されており、
前記左右のサイドフレーム同士は、前記連結部材を貫通したタイロッドで結合されている
ことを特徴とする請求項1記載のプレスフレーム。
【請求項3】
前記連結部材と前記エキセン軸支持部とは、位置決め部材で位置決めされている
ことを特徴とする請求項2記載のプレスフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−902(P2006−902A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180733(P2004−180733)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(502235326)住友重機械テクノフォート株式会社 (122)
【Fターム(参考)】