説明

プレスブレーキ

【課題】維持するために手間やコストのかからない方法で作業者の指の挟み込みを防止することのできるプレスブレーキを提供する。
【解決手段】本発明のプレスブレーキ1は、上部テーブル2の横方向に移動可能に設置されて上部テーブル2の前面に平行に光線を照射する投光器4と、上部テーブル2の横方向に移動可能に設置されて投光器4から照射された光線を受光する受光器5と、投光器4と受光器5とをワークWの加工位置に移動させ、ワークWを加工するタイミングで投光器4から光線を照射させ、照射された光線を受光器5で受光しなかったときには上部テーブル2の動作を停止させる制御部とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部テーブルとワークとの間に指を挟み込むことを防止するための機能を備えたプレスブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプレスブレーキでワークを加工する場合に、加工後のワークの形状が図5に示すような形状になる場合には、上部テーブルの前面とワーク上端との間に作業者が指を挟み込んでしまう可能性があった。
【0003】
そこで、従来では特許文献1に開示されているような危険防止装置があり、この危険防止装置では、上部テーブルの前面にワイヤを張っておき、曲げ加工中にワークがワイヤに接触すると、スイッチが検知して曲げ加工を中断するようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−141337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の危険防止装置では、ワークがワイヤに接触することによって指の挟み込みを検知していたので、長期の使用によってワイヤが劣化すると、ワイヤが切断してしまうという問題点があった。さらに、ワイヤの張り具合を調節するメンテナンスやワイヤの切断を予防するための検査など維持するために手間やコストがかかるという問題点もあった。また、上部テーブルのワークの加工領域全体で危険を検知するためには上部テーブルの横幅全体にワイヤを張らなければならないので、ワイヤの本数も多くなり、上述した手間やコストの問題を解決することは重要であった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、維持するために手間やコストのかからない方法で作業者の指の挟み込みを防止することのできるプレスブレーキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係るプレスブレーキは、上部テーブルの上端または下端に配置されて前記上部テーブルの横方向に移動可能に設置され、前記上部テーブルの前面に平行に光線を照射する投光器と、前記上部テーブルの上端または下端に配置されて前記上部テーブルの横方向に移動可能に設置され、前記投光器から照射された光線を受光する受光器と、前記投光器と前記受光器とをワークの加工位置に移動させ、前記ワークを加工するタイミングで前記投光器から光線を照射させ、照射された光線を前記受光器で受光しなかったときには上部テーブルの動作を停止させる制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るプレスブレーキは、上部テーブルの上端または下端に配置されて前記上部テーブルの横方向の加工領域全体に設置され、前記上部テーブルの前面に平行に光線を照射する投光器と、前記上部テーブルの上端または下端に配置されて前記上部テーブルの横方向の加工領域全体に設置され、前記投光器から照射された光線を受光する受光器と、ワークを加工するタイミングで前記ワークの加工位置に前記投光器から光線を照射させ、照射された光線を前記受光器で受光しなかったときには上部テーブルの動作を停止させる制御手段とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るプレスブレーキによれば、上部テーブルに設置された投光器と受光器をワークの加工位置に移動させ、投光器から照射された光線を受光器で受光しなかったときにワークの加工を一時停止させるので、光線を利用して作業者の指の挟み込みを防止することができ、これによって維持するための手間やコストを低減することができる。
【0010】
また、本発明に係るプレスブレーキによれば、上部テーブルの横方向の加工領域全体に投光器を設置し、ワークの加工位置に照射された光線を受光器が受光しなかったときにワークの加工を一時停止させるので、光線を利用して作業者の指の挟み込みを防止することができ、これによって維持するための手間やコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係るプレスブレーキの構造を説明するための図である。
【図2】本発明を適用した第1実施形態に係るプレスブレーキによる挟み込み防止処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明を適用した第2実施形態に係るプレスブレーキの構造を説明するための図である。
【図4】本発明を適用した第2実施形態に係るプレスブレーキによる挟み込み防止処理を示すフローチャートである。
【図5】従来のプレスブレーキによる問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した第1及び第2実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
[第1実施形態]
[プレスブレーキの構成]
図1は本実施形態に係るプレスブレーキの構造を説明するための図であり、図1(a)は前面図、図1(b)は側面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るプレスブレーキ1は、パンチPが設置される上部テーブル2と、ダイDが設置される下部テーブル3と、上部テーブル2の前面に平行に光線を照射する投光器4と、投光器4から照射された光線を受光する受光器5と、プレスブレーキ1に内蔵されて挟み込み防止処理を実行する制御部(図示せず)とを備えている。
【0015】
ここで、本実施形態に係るプレスブレーキ1は、上部テーブル2に設置されたパンチPと下部テーブル3に設置されたダイDとの間に、作業者がワークWを挿入して曲げ加工を行うものである。そして、投光器4と受光器5との間に照射された光線が遮断されたときにプレスブレーキ1の動作を停止させて、曲げられたワークWと上部テーブル2との間に作業者が指を挟み込むことを防止するものである。
【0016】
投光器4は、上部テーブル2の上端に配置され、レールなどによって上部テーブル2の横方向に移動可能に設置されている。ここで、投光器4の横方向への移動範囲は、パンチP及びダイDが設置可能な範囲であり、ワークWが加工される加工領域である。したがって、上部テーブル2の横幅に応じて投光器4の移動範囲は変化する。このような移動範囲を投光器4は移動して上部テーブル2の前面に平行な光線を照射する。ただし、投光器4は上部テーブル2の下端に配置されていてもよい。
【0017】
受光器5は、上部テーブル2の下端に配置され、投光器4と同様にレールなどによって上部テーブル2の横方向に移動可能に設置されている。受光器5の横方向への移動範囲は投光器4と同一であり、投光器4の移動に合わせて受光器5も移動して投光器4からの光線を受光する。ただし、受光器5は上部テーブル2の上端に配置されていてもよい。
【0018】
制御部は、曲げ工程が開始されると、投光器4と受光器5をワークWの加工位置に移動させ、フットスイッチが踏まれてワークWを加工するタイミングで投光器4から光線を照射させる。そして、照射された光線を受光器5で受光しなかったときには、上部テーブル2の動作を停止させてワークの加工を一時停止させ、作業者の指が上部テーブル2とワークWとの間に挟み込まれることを防止する。
【0019】
[プレスブレーキの動作]
次に、図2を参照して本実施形態に係るプレスブレーキ1の動作を説明する。図2は、本実施形態に係るプレスブレーキ1による挟み込み防止処理を示すフローチャートである。
【0020】
図2に示すように、まずステップS101においてプログラムがスタートする。このプログラムは各ワークに対して行われる曲げ工程の処理が記録されたものである。プログラムがスタートすると、制御部はステップS102において最初の工程で曲げ加工が行われるパンチP及びダイDの位置をプログラムから読み取って投光器4と受光器5をその位置へ移動させる。これにより作業者はこの工程における加工位置を知ることができる。
【0021】
次に、ステップS103において制御部は上部テーブル2を動作させるためのフットスイッチがONされたか否かを判断し、フットスイッチが踏み込まれてONされた場合にはステップS104に進んで投光器4から光線を照射させ、ステップS105に進み上部テーブル2を動作させる。そして、ステップS106において、制御部は照射された光線を受光器5が受光したか否かを判断し、指やワークWで光線が遮断されて受光していない場合にはステップS107に進んで上部テーブル2の動作を止め、ワークの加工を停止させる。その後、ステップS108において警告を発生する。警告の方法としては、ブザーやランプ等を用いてもよいし、NC装置と通信している場合にはNC画面上に警告メッセージを表示してもよい。
【0022】
こうして上部テーブル2の動作が停止して警告が発せられた後、ステップS109において再度フットスイッチをONし、ステップS110にて再び光線の照射を行う。次にステップS111において制御部は遮断されていた光線を受光したか否かを判断し、受光していない場合にはステップS107に戻って動作の停止と警告の発生を継続して行う。そして、遮断されていた光線を受光した場合と、ステップS106において光線を受光した場合には、制御部は異常なしと判断してステップS112で上部テーブル2を動作させて曲げ加工を行う。
【0023】
そして、この工程での曲げ加工が完了すると、次にステップS113へ進んで次の工程があるか否かを判断し、次の工程がある場合にはステップS102へ戻って上述した動作を繰り返し行い、次の工程がない場合には本実施形態に係る挟み込み防止処理は終了する。
【0024】
上述したように、本実施形態に係るプレスブレーキ1によれば、投光器4と受光器5をワークWの加工位置に移動させ、投光器4から照射された光線を受光器5で受光しなかったときに上部テーブル2の動作を停止させるので、光線を利用して作業者の指の挟み込みを防止することができ、これによって維持するための手間やコストを低減することができる。
【0025】
また、本実施形態に係るプレスブレーキ1によれば、投光器4と受光器5をワークWの加工位置に移動させて光線を照射するので、投光器4と受光器5は1つずつ設置すればよく、コストを低減させることができる。
【0026】
さらに、本実施形態に係るプレスブレーキ1によれば、ワークWを加工するタイミングで光線を照射するので、無駄に光線を照射することがなく、エネルギーを節約することができる。
【0027】
[第2実施形態]
次に、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。尚、上述した第1実施形態と同一の部分については詳細な説明を省略する。
【0028】
[プレスブレーキの構成]
図3は本実施形態に係るプレスブレーキの構造を説明するための図であり、図3(a)は前面図、図3(b)は側面図である。
【0029】
図3に示すように、本実施形態に係るプレスブレーキ11は、パンチPが設置される上部テーブル2と、ダイDが設置される下部テーブル3と、上部テーブル2の前面に平行に光線を照射する投光器14と、投光器14から照射された光線を受光する受光器15と、プレスブレーキ11に内蔵されて挟み込み防止処理を実行する制御部(図示せず)とを備えている。
【0030】
ここで、投光器14は上部テーブル2の上端に配置され、上部テーブル2の横方向の加工領域全体に設置されている。この加工領域は、パンチP及びダイDが設置可能な範囲であり、設置されたパンチPとダイDでワークWを加工することが可能な領域である。ワークWを加工するタイミングになると、加工領域全体に設置された投光器14のうち、ワークWの加工位置にある投光器14から上部テーブル2の前面に平行な光線が照射される。ただし、投光器14は上部テーブル2の下端に配置されていてもよい。
【0031】
受光器15は、上部テーブル2の下端に配置され、上部テーブル2の横方向の加工領域全体に設置され、投光器14から照射された光線を受光する。ワークWの加工位置にある投光器14から光線が照射されると、光線を照射した投光器14に対応して設置されている受光器15が光線を受光する。ただし、受光器15は上部テーブル2の上端に配置されていてもよい。
【0032】
制御部は、曲げ工程が開始されると、フットスイッチが踏まれてワークWを加工するタイミングで、ワークWの加工位置にある投光器14から光線を照射させる。そして、照射された光線を加工位置にある受光器15で受光しなかったときには、上部テーブル2の動作を停止させて作業者の指が上部テーブル2とワークWとの間に挟み込まれることを防止する。
【0033】
[プレスブレーキの動作]
次に、図4を参照して本実施形態に係るプレスブレーキ11の動作を説明する。図4は、本実施形態に係るプレスブレーキ11による挟み込み防止処理を示すフローチャートである。
【0034】
図4に示すように、本実施形態に係るプレスブレーキ11の動作は、第1実施形態と比較してステップS202の処理が相違しているだけなので、他のステップの説明は省略する。
【0035】
ステップS201においてプログラムがスタートすると、ステップS202では制御部が最初の工程で曲げ加工が行われるパンチP及びダイDの位置をプログラムから読み取って、加工位置を判定する。そして、ステップS203において上部テーブル2を動作させるためのフットスイッチがONされたか否かを制御部が判断し、フットスイッチが踏み込まれると加工位置にある投光器14から光線が照射され(S204)、受光器15で光線を受光しなかったときには上部テーブル2の動作を止め、ワークの加工を停止させる(S207)。以下、第1実施形態と同様の処理が実行されて本実施形態に係る挟み込み防止処理は終了する。
【0036】
上述したように、本実施形態に係るプレスブレーキ11によれば、上部テーブル2の横方向の加工領域全体に投光器14を設置し、ワークWの加工位置に照射された光線を受光器15が受光しなかったときに上部テーブル2の動作を停止させるので、光線を利用して作業者の指の挟み込みを防止することができ、これによって維持するための手間やコストを低減することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るプレスブレーキ11によれば、ワークWを加工するタイミングで加工位置のみに光線を照射するので、無駄に光線を照射することがなく、エネルギーを節約することができる。
【0038】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1、11 プレスブレーキ
2 上部テーブル
3 下部テーブル
4、14 投光器
5、15 受光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部テーブルの上端または下端に配置されて前記上部テーブルの横方向に移動可能に設置され、前記上部テーブルの前面に平行に光線を照射する投光器と、
前記上部テーブルの上端または下端に配置されて前記上部テーブルの横方向に移動可能に設置され、前記投光器から照射された光線を受光する受光器と、
前記投光器と前記受光器とをワークの加工位置に移動させ、前記ワークを加工するタイミングで前記投光器から光線を照射させ、照射された光線を前記受光器で受光しなかったときには前記上部テーブルの動作を停止させる制御手段と
を備えていることを特徴とするプレスブレーキ。
【請求項2】
上部テーブルの上端または下端に配置されて前記上部テーブルの横方向の加工領域全体に設置され、前記上部テーブルの前面に平行に光線を照射する投光器と、
前記上部テーブルの上端または下端に配置されて前記上部テーブルの横方向の加工領域全体に設置され、前記投光器から照射された光線を受光する受光器と、
ワークを加工するタイミングで前記ワークの加工位置に前記投光器から光線を照射させ、照射された光線を前記受光器で受光しなかったときには前記上部テーブルの動作を停止させる制御手段と
を備えていることを特徴とするプレスブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−111594(P2013−111594A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258590(P2011−258590)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】