プレス加工用の潤滑油検知装置
【課題】油滴検知装置において、受光量が低下する場合及び異なる透明度の潤滑油を使用する場合にあっても、油滴を正確に検知できるようにする。
【解決手段】バックグラウンド計測部13が油滴センサ11から出力された信号の平均値を算出し、閾値設定部14が該平均値に基づいて油滴の通過判定に用いる閾値を設定する。第1比較回路15は、油滴センサ11からの出力信号と閾値とを比較し、該出力信号が閾値を越えている時間を閾値越継続時間計測部16が計測することにより、油滴を検知する。油滴センサ11の受光部11bが汚れた場合及び透明度の異なる潤滑油が使用された場合、油滴センサ11からの出力信号の平均値が変動するため、油滴の通過判定に用いる閾値が適正化され、油滴を正確に検知できるようになる。
【解決手段】バックグラウンド計測部13が油滴センサ11から出力された信号の平均値を算出し、閾値設定部14が該平均値に基づいて油滴の通過判定に用いる閾値を設定する。第1比較回路15は、油滴センサ11からの出力信号と閾値とを比較し、該出力信号が閾値を越えている時間を閾値越継続時間計測部16が計測することにより、油滴を検知する。油滴センサ11の受光部11bが汚れた場合及び透明度の異なる潤滑油が使用された場合、油滴センサ11からの出力信号の平均値が変動するため、油滴の通過判定に用いる閾値が適正化され、油滴を正確に検知できるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工の潤滑油を検知して、油切れを防止する潤滑油検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属のプレス加工においては、加工精度の向上と被加工材及びプレス金型の表面の損傷を防止するため、プレス加工前の被加工材の表面に潤滑油を塗布するための潤滑油塗布装置が用いられている。このような潤滑油塗布装置として、潤滑油を被加工材に噴霧するタイプ(例えば、特許文献1参照)と、潤滑油を被加工材に滴下して塗り延すタイプがある。潤滑油を滴下するタイプの潤滑油塗布装置は、構造が簡素であることから、コスト上のメリットを有する反面、プレス時の被加工材の表面に油切れが生じないように、通常、潤滑油を貯蔵する給油タンク内の油量(油面高さ)を監視する必要があり、そのための油面センサが設けられている。
【0003】
しかしながら、油面センサによる油量の監視のみでは、給油タンクより下流の配管などのトラブルで被加工材への給油が停止した場合にあっては、その異常を検出することがでなきい。そこで上述した潤滑油塗布装置においては、被加工材に滴下される油滴を非接触透過型の油滴センサによって検知する油滴検知装置を併用することが提案されている。
【0004】
図11は、このような油滴センサによって検知される油滴と、油滴センサの出力信号を示している。油滴センサは、発光部11a及び受光部11bを有し、発光部11aと受光部11bの間を油滴Rが通過するとき、発光部11aから出射された光は油滴Rによって遮断されるため、受光部11bから出力される電気信号が減少する。従って、受光部11bから出力される電気信号を監視することにより、油滴の滴下回数を検知することができ、油滴が不足気味である場合には、プレス作業を停止したり、作業者に警告を発することにより、加工精度の維持等を図ることができる。
【0005】
より具体的には、図11(a)に示すように、油滴Rが発光部11aと受光部11bの間を通過するとき、光が油滴Rによって遮断されるため、図11(b)に示すように、受光部11bの出力電圧が低下する。そこで、ある一定の閾値S0を設定し、出力電圧が閾値S0よりも低下すると油滴Rが発光部11aと受光部11bの間を通過し、被加工材に落下するものとみなすことができる。油滴Rが通過することによる出力電圧の低下量は潤滑油として用いられる油の透明度に依存することから、油滴の通過の判断に用いられる閾値は、潤滑油の透明度を考慮して定められる。
【特許文献1】特開2004−314106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した油滴センサによって油滴Rを検知する油滴検知装置にあっては、長期間に亘る使用に際して、受光部11bの窓が埃等の付着により徐々に汚れることがある。このような場合、発光部11aが正常に光を出射していても受光部11bの受光量そのものが低下するため、図11(b)に一点鎖線で示したように、定常時すなわち油滴Rが発光部11aと受光部11bの間を通過してない時の出力電圧が閾値S0を下回ってしまい、油滴Rを検知することができないという不具合が発生する。また、被加工材の材質やプレス形状に応じて異なる透明度の潤滑油を使用する場合、透明度の低い潤滑油に上記閾値S0を設定すると透明度の高い潤滑油は、検出が困難となる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、受光部の汚れによって受光量が低下する場合、及び異なる透明度の潤滑油を使用する場合にあっても、油滴を正確に検知することができる油滴検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、光を受光して電気信号に変換する受光部を有し、プレス加工の被加工材の潤滑に用いられる油滴の通過に伴う受光量の変化に対応する電気信号を出力する油滴センサを備えたプレス加工用の潤滑油検知装置において、油滴センサから一定時間に出力された電気信号の平均値を算出し、該平均値に基づいて油滴検知のための閾値を設定する閾値設定手段と、油滴センサから出力された電気信号が閾値設定手段によって設定された閾値を所定の時間以上連続して越えたとき、油滴センサの前を油滴が通過したと判定し、その旨の信号を出力する油滴通過判定手段と、を備えたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置において、油滴センサから出力された電気信号を時間微分することにより、該電気信号の単位時間当たりの変化量を算出する変化量算出手段をさらに備え、変化量算出手段が算出した変化量に基づいて油滴通過判定手段に油滴センサから出力された電気信号を判定させるものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置において、変化量算出手段が算出した変化量が所定の値を複数回連続して越えたとき、油滴通過判定手段に油滴センサから出力された電気信号を判定させるものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置において、油滴通過判定手段が油滴センサの前を油滴が通過したと判定した旨の信号を出力した後、所定時間に亘って変化量算出手段の微分演算を禁止する演算禁止手段をさらに備えたものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置において、油滴通過判定手段が油滴センサの前を油滴が通過したと判定した旨の信号を所定時間内に繰り返して出力しないとき、油供給異常の信号を出力する異常信号出力手段をさらに備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、閾値設定手段が油滴センサから一定時間に出力された電気信号の平均値を算出し、該平均値に基づいて油滴検知のための閾値を設定するので、例えば油滴センサの表面が徐々に汚れ、油滴センサから出力される電気信号の値が全体的に低下傾向にある場合でも、油滴の通過を正確に判定できるようになる。また、閾値が上記電気信号の平均値に基づいて自動的に設定されるので、作業者が閾値を設定する手間を省くことができる。また、油滴通過判定手段は、油滴センサから出力された電気信号が閾値設定手段によって設定された閾値を所定の時間以上連続して越えたとき、油滴が通過したものと判定するので、信号幅が短いノイズが油滴センサと油滴通過判定手段との間の信号伝送ラインに混入した場合であっても、混入したノイズを油滴による信号として誤認する虞がなくなる。これにより、油滴の通過を正確に判定できるようになる。
【0014】
請求項2の発明によれば、変化量算出手段が、油滴センサから出力された信号を時間微分し、その演算結果に基づいて油滴通過判定手段に上記比較を実行する旨の信号を出力する。従って、例えば、何らかの要因で油滴センサから出力された信号がある程度の時間をかけてゆっくり変化するような、明らかに油滴による信号の変化とは異なっているが、閾値判定手段の動作によっても排除できないような信号を油滴の通過に伴うものと誤認する虞を排除することができる。これにより、プレス加工の現場における予期できない信号の変動要因に対しても適切に対応して、誤作動を防止することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、変化量算出手段が算出した変化量が所定の値を複数回連続して越えたとき、油滴通過判定手段に油滴センサから出力された電気信号を判定させる。すなわち、油滴センサから出力された電気信号の変化が短時間で収束する場合には、油滴センサから出力された電気信号を油滴通過判定手段に判定させないので、油滴の通過以外の要因で油滴センサから出力される電気信号が短く変化した場合に、油滴が通過したと誤認する虞がなくなる。これにより、油滴の通過を一層正確に判定できるようになる。
【0016】
請求項4の発明によれば、油滴通過判定手段が油滴の通過を判定した後(油滴が油滴センサの前を通過した後)、演算禁止手段が変化量算出手段の微分演算を所定時間に亘って禁止するので、例えば、油滴センサの前を通常の大きさの油滴が通過した直後に、通常よりも小さな油滴が通過するような場合にあっては、後から通過した小さな油滴を検知することがない。従って、実際よりも過大に油滴の通過を検知してしまうことに伴う潤滑油の供給不足を防止することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、油滴通過判定手段が油滴センサの前を油滴が通過したと判定した旨の信号を所定時間内に繰り返して出力しないとき、異常信号出力手段が油供給異常の信号を出力するので、例えば、当該信号をプレス加工機に伝送することにより、プレス加工機の運転を速やかに停止させることができる。また、当該信号を介して作業者に油の供給が異常であることをいち早く知らせることにより、迅速な対応措置を採ることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態によるプレス加工用の潤滑油検知装置について図面を参照して説明する。図1はプレス加工機100とそれに用いられる潤滑油検知装置1を示している。プレス加工機100は、プレス加工用の雌金型2及び雄金型3と、雌金型2、雄金型3を駆動する金型駆動部4と、被加工材200を金型駆動部4に搬送する被加工材搬送部5と、被加工材搬送部5によって搬送される被加工材200に潤滑油を塗布する潤滑油塗布装置101と、潤滑油塗布装置101によって供給される潤滑油を検知する潤滑油検知装置1等によって構成されている。潤滑油塗布装置101は、被加工材200の原反と金型駆動部4との間に配設されている。潤滑油検知装置1は、潤滑油塗布装置101の近傍に配設されている。
【0019】
金型駆動部4は、油圧等を動力源として雌金型2、雄金型3を往復駆動することにより、被加工材200をプレスして所望の形状に成形する。被加工材搬送部5は、ロール状に巻回された被加工材200の原反を展開しながら金型駆動部4に搬送する。潤滑油塗布装置101は、潤滑油を貯蔵する潤滑油タンク61と、潤滑油タンク61に貯蔵された潤滑油を滴下して供給する油供給管62と、油供給管62が供給する潤滑油の供給量を調整するためのバルブ63等によって構成されている。
【0020】
潤滑油検知装置1は、油滴Rを検知して電気信号を出力する油滴センサ11と、油滴センサ11から出力された電気信号を処理する信号処理部12と、潤滑油タンク61内の潤滑油の残量を検知する油面センサ30等によって構成されている。油滴センサ11は、光を照射する発光部11aと、発光部11aに対して所定の間隔を隔てて対向配置され、発光部11aから出射された光を受光して電気信号に変換する受光部11b等によって構成されている。発光部11aには、発光ダイオード等の発光素子が用いられている。また、受光部11bには、フォトダイオード等の受光素子が用いられている。受光部11bから出力されたアナログ信号は、油滴センサ11内でA/D変換された後、信号処理部12に入力される。
【0021】
図2は、信号処理部12の構成を示している。信号処理部12は、油滴センサ11から出力された信号をバックグラウンドで計測するバックグラウンド計測部(閾値設定手段)13と、バックグラウンド計測部13によって計測された信号に基づいて、油滴Rの通過判定に用いる閾値を設定する閾値設定部(閾値設定手段)14と、油滴Rの通過を判定するための第1比較回路(油滴通過判定手段)15と、油滴Rが通過している時間を計測する閾値越継続時間計測部(油滴通過判定手段)16と、プレスの回転数を計測するプレス回転計測部17と、無注油のままプレスできる回転数の上限を設定する回転数上限設定部18と、注油状態を判定するための第2比較回路(異常信号出力手段)19と、第2比較回路19の出力信号に基づいて、油切れの警告を表示する油切れ警告表示部20と、油滴センサ11から出力された信号の所定時間あたりの変化量を算出する信号変化量算出部(変化量算出手段)21と、信号変化量算出部21の演算を所定時間に亘って禁止する演算禁止タイマ(演算禁止手段)22と、油滴センサ11及び演算禁止タイマ22から出力された信号に応じて動作するゲート回路(演算禁止手段)23等によって構成されている。
【0022】
バックグラウンド計測部13は、油滴センサ11から出力された信号を10m秒毎にバックグラウンドで計測し、64回計測した信号の平均値を算出し、閾値設定部14に出力する。すなわち、油滴センサ11から出力された信号の640m秒毎の平均値が閾値設定部14に入力される。閾値設定部14は、バックグラウンド計測部13によって算出された平均値に所定の係数、例えば0.8を乗じて得た値を閾値として設定する。閾値を算出するための係数は、潤滑油の透明度に応じて適宜定められる。
【0023】
第1比較回路15は、信号変化量算出部21から出力された信号を受けたとき、油滴センサ11から出力された信号と、閾値設定部14によって設定された閾値とを比較することにより油滴Rの通過を判定する。この判定は1m秒毎になされ、油滴センサ11から出力された信号が閾値を越えたとき、その旨の信号を閾値越継続時間計測部16に出力する。閾値越継続時間計測部16は、第1比較回路15の出力信号に基づいて、油滴センサ11から出力された信号が上記閾値を継続して越えた時間を計測し、所定の時間以上連続して閾値を越えた場合には、油滴Rが通過したものと判断し、その旨の信号をプレス回転計測部17及び演算禁止タイマ22に出力する。ここでいう所定の時間とは、油滴センサ11と第1比較回路15との間の信号伝送ラインに混入したノイズが収束するのに十分な時間であり、例えば3m秒程度である。
【0024】
プレス回転計測部17は、金型駆動部4から出力されたプレス回転信号を計数することにより、プレス回転数すなわち雌金型2及び雄金型3の開閉回数を計測する。閾値越継続時間計測部16から油滴Rが通過している旨の信号が入力されると、プレス回転計測部17は、その計数値をゼロにリセットする。これにより、油滴通過後のプレス回転数がプレス回転計測部17によって計測されることになり、その油滴通過後のプレス回転数を示す信号は第2比較回路19に入力される。
【0025】
第2比較回路19は、プレス回転計測部17から入力された油滴通過後のプレス回転数と、回転数上限設定部18によって設定されている無注油プレス回転数の上限値を比較する。油滴通過後のプレス回転数が無注油プレス回転数の上限値を越えたとき、第2比較回路19は、その旨の警告信号を油切れ警告表示部20等に出力する。第2比較回路19から警告信号を受けた油切れ警告表示部20は、警告ランプ20a(図1参照)を点灯させて、作業者に対して油切れの虞がある旨を警告する。第2比較回路19から出力する警告信号は、他の警告手段、例えば警告音出力装置(図示せず)等にも伝送される。
【0026】
また、油滴Rが通過した旨の信号は、閾値越継続時間計測部16から演算禁止タイマ22にも入力される。油滴Rが通過した旨の信号を受けた演算禁止タイマ22は、所定時間例えば1秒間に亘って演算を禁止させる旨の信号(ロー)をゲート回路23に出力する。従って、油滴Rが通過して1秒経過後は、演算禁止タイマ22からゲート回路23に入力される信号はハイとなる。また、次の油滴Rが油滴センサ11の前を通過するとき、油滴センサ11からゲート回路23に入力される信号はハイになる。ゲート回路23は、油滴センサ11及び演算禁止タイマ22から入力された信号が共にハイのとき、信号変化量算出部21に対して演算処理を行う旨の信号を出力する。
【0027】
ゲート回路23から演算処理を行う旨の信号が入力された信号変化量算出部21は、油滴センサ11から出力された信号を時間微分し、その微分値が3回以上連続して所定の値を越えたとき、第1比較回路15に上記比較を実行する旨の信号を出力する。従って、例えば、何らかの要因で油滴センサ11から出力された信号が200m秒の時間をかけて変化するような、明らかに油滴による信号の変化とは異なっている信号を油滴の通過に伴うものと誤認する虞を排除することができる。これにより、プレス加工の現場における予期できない信号の変動要因に対しても適切に対応して、誤作動を防止することができる。
【0028】
図3乃至図7は、油滴センサ11の発光部11aと受光部11bとの間を通過する油滴Rと、油滴センサ11から出力される信号の関係を示している。油滴センサ11と潤滑油が共に正常な場合における油滴Rと油滴センサ11から出力される信号の関係は、図3において実線で、図4乃至図7において破線で示される。図3(a)に示すように、発光部11aから出射された光が落下する油滴Rによって遮られると、図3(b)に示すように、油滴センサ11から出力される信号は、一旦低下し、T秒間に亘って閾値S0を下回り、油滴Rの通過後元に戻る。本潤滑油検知装置1においては、正常な油滴Rが落下した場合、T>3m秒となるように、閾値S0を算出するための係数が設定されている。
【0029】
図4は、受光部11bの受光窓が汚れている場合における油滴Rと油滴センサ11から出力される信号の関係を示している。図4(a)に示すように、受光部11bの受光窓が汚れている場合、図4(b)において実線で示すように、油滴センサ11から出力される信号レベルは、油滴Rが落下する前後を含めて全体的に低下する。このとき仮に、元の閾値S0を用いた場合にあっては、油滴センサ11から出力される信号は常時S0を下回っているため、油滴Rを検知することができない。しかしながら、本潤滑油検知装置1においては油滴センサ11から出力される信号の平均値に基づいて閾値を変動させているため、油滴センサ11から出力される信号レベルが全体的に低下した場合には、閾値も自動的にS1まで低下する。その結果、油滴センサ11から出力される信号は、図3に示した場合と同様に、T秒間に亘って閾値S1を下回る。これにより、受光部11bの受光窓が汚れている場合にあっても、閾値が自動的に適正化され、油滴Rの通過を正確に判定できるようになる。
【0030】
図5は、透明度の高い潤滑油を使用する場合における油滴Rと油滴センサ11から出力される信号の関係を示している。図5(a)に示すように、透明度の高い潤滑油を使用する場合、落下する油滴Rによる遮光が少なくなるため、図5(b)において実線で示すように、油滴センサ11から出力される信号の変化は小さくなる。このとき仮に、元の閾値S0を用いた場合にあっては、油滴センサ11から出力される信号は常時S0を上回っていることとなり、油滴Rを検知することができない。しかしながら、本潤滑油検知装置1においては、潤滑油の透明度は、油滴センサ11から出力される信号の変化に基づいて検知することができるので、その検知した透明度に応じて上記閾値を算出するための係数の値を大きくすることにより閾値をS2まで高くすることができる。その結果、油滴センサ11から出力される信号は、図3に示した場合と同様に、T秒間に亘って閾値S2を下回り、透明度の高い潤滑油を使用する場合にあっても、油滴Rの通過を正確に判定できるようになる。
【0031】
図6は、油滴センサ11の発光部11aと受光部11bとの間を油滴以外の小さな異物が通過した場合における異物と油滴センサ11から出力される信号の関係を示している。図6(a)に示すように、発光部11aと受光部11bとの間を油滴Rよりも小さな埃等の異物Zが通過した場合、図6(b)において実線で示すように、油滴センサ11から出力される信号は、鋭く変化し、時間T’だけ閾値S0を下回る。このとき、異物Zによって極めて短かい時間だけ遮光されてT’<3m秒となることから、閾値越継続時間計測部16によって閾値を越えた時間T’が短いと判断され、異物Zを油滴Rとして誤認する虞はない。
【0032】
図7は、2つの油滴R、rが連続的に通過した場合における油滴R、rと油滴センサ11から出力される信号の関係を示している。このような場合、図7(a)に示すように、通常の大きさの油滴Rに連なって、すなわち1つめの油滴Rから1秒以下の短い時間を隔てて、小さい油滴rが落下し、図7(b)において実線で示すような出力信号が油滴センサ11から検出される。本潤滑油検知装置1においては、1つめの油滴Rが通過した後、演算禁止タイマ22及びゲート回路23が1秒間に亘って信号変化量算出部21の演算を禁止させる。従って、その間は第1比較回路15及び閾値越継続時間計測部16が動作しないため、2つめの小さい油滴rが検出される虞はない。従って、実際よりも過大に油滴の通過を検知してしまうことに伴う潤滑油の供給不足を防止することができる。
【0033】
図8は、信号処理部12のうち、特にバックグラウンド計測部13及び閾値設定部14の動作を示している。まず、バックグラウンド計測部13は、油滴センサ11から出力された信号をバックグラウンドで計測し、その平均値を算出する(#1)。ついで、閾値設定部14がバックグラウンド計測部13によって算出された平均値に基づいて、油滴Rの通過判定に用いる閾値を設定する(#2)。この#1及び#2の処理は、プレス加工機100の運転中、図9及び図10に示す動作とは独立してバックグラウンドで繰り返して実行される。
【0034】
図9は、信号処理部12のうち、特に第1比較回路15、閾値越継続時間計測部16、プレス回転計測部17、信号変化量算出部21、演算禁止タイマ22及びゲート回路23の動作を示している。まず、信号変化量算出部21は、油滴センサ11から出力された信号を時間微分し(#11)、その微分値が3回以上連続して所定の値を越えたとき(#12においてYES)、第1比較回路15が油滴センサ11から出力される信号と#2において設定した閾値とを比較し、閾値越継続時間計測部16が継続して閾値を越えた時間を計測する(#13)。閾値を越えた時間が3m秒以上のときは(#14においてYES)、油滴Rが被加工物に供給されたものとしてプレス回転計測部17のカウント数をリセットし(#15)、演算禁止タイマ22が演算禁止時間の計測を開始する(#16)。そして、禁止時間が1秒以上になると(#17においてYES)、処理を終了する。なお、#12において微分値が所定の値を越えた回数が3回未満のとき(#12においてNO)、#13以降をスキップして、処理を終了する。また、#14において閾値を越えた時間が3m秒未満のとき(#14においてNO)、#15以降をスキップして、処理を終了する。同図における#11乃至#17の一連の処理は、プレス加工機100の運転中、繰り返して実行される。
【0035】
図10は、信号処理部12のうち、特にプレス回転計測部17、回転数上限設定部18、第2比較回路19及び油切れ警告表示部20の動作を示している。まず、プレス回転計測部17は、金型駆動部4から出力されたプレス回転信号に基づいてプレス回転数を計測する(#21)。その後#15においてプレス回転数がリセットされずに計数が継続され、無注油プレス回転数の上限値以上になると(#22においてYES)、油切れ警告表示部20が、警告ランプ20aを点灯させて、作業者に対して油切れの虞がある旨を警告して(#23)、処理を終了する。なお、プレス回転数が無注油プレス回転数の上限値未満のときは(#22においてNO)、#23をスキップして処理を終了する。この#21乃至#23の処理は、プレス加工機100の運転中、図8及び図9に示す動作とは独立してバックグラウンドで繰り返して実行される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の潤滑油検知装置1によれば、閾値設定部14が油滴センサ11から一定時間に出力された電気信号の平均値を算出し、該平均値に基づいて油滴検知のための閾値を設定するので、例えば油滴センサ11の表面が徐々に汚れ、油滴センサ11から出力される電気信号が全体的に低下傾向にある場合でも、油滴Rの通過を正確に判定できるようになる。また、閾値が上記電気信号の平均値に基づいて自動的に設定されるので、作業者が閾値を設定する手間を省くことができる。また、第1比較回路15及び閾値越継続時間計測部16が、油滴センサ11から出力された電気信号が閾値設定部14によって設定された閾値を所定の時間以上連続して越えたとき、油滴Rが通過したものと判定するので、何らかの事情により信号幅が短いノイズが油滴センサ11と信号処理部12との間の信号伝送ラインに混入した場合であっても、混入したノイズを油滴Rによる信号として誤認する虞がなくなる。これにより、油滴Rの通過を正確に判定できるようになる。
【0037】
また、信号変化量算出部21は、油滴センサ11から出力された信号を時間微分し、その演算結果に基づいて、第1比較回路15に上記比較を実行する旨の信号を出力する。従って、例えば、何らかの要因で油滴センサ11から出力された信号が200m秒程度の時間をかけてゆっくり変化するような場合、すなわち、明らかに油滴による信号の変化とは異なっているが、図8に示すバックグラウンド計測による閾値の設定によっては追従できないような信号の変化を油滴の通過に伴うものと誤認する虞を排除することができる。これにより、プレス加工の現場における予期できない信号の変動要因に対しても適切に対応して、誤作動を防止することができる。
【0038】
また、信号変化量算出部21が算出した変化量が所定の値を3回連続して越えたとき、第1比較回路15に油滴センサ11から出力された電気信号を判定させるので、油滴センサ11から出力された電気信号の変化が短時間で収束する場合には、第1比較回路15は動作しないことになる。これにより、油滴Rの通過以外の要因で油滴センサ11から出力される電気信号が短く変化した場合に、油滴Rが通過したと誤認する虞がなくなり、油滴Rの通過を一層正確に判定できるようになる。
【0039】
また、閾値越継続時間計測部16が油滴Rの通過を判定した後、演算禁止タイマ22が信号変化量算出部21の微分演算を1秒間禁止するので、例えば図7に示すように、油滴センサ11の前を通常の大きさの油滴Rが通過した直後に、通常よりも小さな油滴rが通過するような場合にあっては、後から通過した小さな油滴rを検知しない。従って、実際よりも過大に油滴Rの通過を検知してしまうことに伴う潤滑油の供給不足を防止することができる。
【0040】
また、閾値越継続時間計測部16が油滴センサ11の前を油滴Rが通過したと判定した旨の信号を所定時間内に繰り返して出力しないとき、第2比較回路19は油供給異常の信号を出力するので、例えば、当該信号をプレス加工機100に伝送することにより、プレス加工機100の運転を速やかに停止させることができる。また、当該信号を介して作業者に油の供給が異常であることをいち早く知らせることにより、迅速な対応措置を採ることも可能となる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく種々の変形が可能であり、例えば、潤滑油検知装置1は、油滴センサ11として透過型の光センサを用いているが、油滴Rによって反射された光を検知する反射型の光センサを適用してもよい。また、図9中、#12における微分値越回数の判定基準、#14における閾値越時間の判定基準及び#17における演算禁止時間の判定基準は、上述したものに限られることなく被加工材200や潤滑油の物性等に応じて適宜設定することができる。また、本発明は少なくとも油滴センサ11、バックグラウンド計測部13、閾値設定部14、第1比較回路15及び閾値越継続時間計測部16に相当する構成を有していればよく、信号変化量算出部21、演算禁止タイマ22及びゲート回路23を省いて、潤滑油検知装置の構成を簡素化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態によるプレス加工機とそれに用いられる潤滑油検知装置の概略構成を示す図。
【図2】同潤滑油検知装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】(a)は油滴センサの前を潤滑油の滴が通過し落下する様子を示す図、(b)はこのとき油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【図4】(a)は受光部が汚れている油滴センサの前を潤滑油の滴が通過し落下する様子を示す図、(b)はこのとき油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【図5】(a)は油滴センサの前を透明度の高い潤滑油の滴が通過し落下する様子を示す図、(b)はこのとき油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【図6】(a)は油滴センサの前を油滴以外の小さな異物が通過し落下する様子を示す図、(b)はこのとき油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【図7】(a)は油滴センサの前を2つの油滴が連続的に通過し落下する様子を示す図、(b)はこのとき油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【図8】信号処理部のうち、特にバックグラウンド計測部及び閾値設定部の動作を示すフローチャート。
【図9】信号処理部のうち、特に第1比較回路、閾値越継続時間計測部、プレス回転計測部、信号変化量算出部、演算禁止タイマ及びゲート回路の動作を示すフローチャート。
【図10】信号処理部のうち、特にプレス回転計測部、回転数上限設定部、第2比較回路及び油切れ警告表示部の動作を示すフローチャート。
【図11】(a)は油滴センサの前を潤滑油の滴が通過し落下する様子を示す図、(b)は従来の潤滑油検知装置において油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【符号の説明】
【0043】
1 潤滑油検知装置
11 油滴センサ
11b 受光部
13 バックグラウンド計測部(閾値設定手段)
14 閾値設定部(閾値設定手段)
15 第1比較回路(油滴通過判定手段)
16 閾値越継続時間計測部(油滴通過判定手段)
19 第2比較回路(異常信号出力手段)
21 信号変化量算出部(変化量算出手段)
22 演算禁止タイマ(演算禁止手段)
23 ゲート回路(演算禁止手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工の潤滑油を検知して、油切れを防止する潤滑油検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属のプレス加工においては、加工精度の向上と被加工材及びプレス金型の表面の損傷を防止するため、プレス加工前の被加工材の表面に潤滑油を塗布するための潤滑油塗布装置が用いられている。このような潤滑油塗布装置として、潤滑油を被加工材に噴霧するタイプ(例えば、特許文献1参照)と、潤滑油を被加工材に滴下して塗り延すタイプがある。潤滑油を滴下するタイプの潤滑油塗布装置は、構造が簡素であることから、コスト上のメリットを有する反面、プレス時の被加工材の表面に油切れが生じないように、通常、潤滑油を貯蔵する給油タンク内の油量(油面高さ)を監視する必要があり、そのための油面センサが設けられている。
【0003】
しかしながら、油面センサによる油量の監視のみでは、給油タンクより下流の配管などのトラブルで被加工材への給油が停止した場合にあっては、その異常を検出することがでなきい。そこで上述した潤滑油塗布装置においては、被加工材に滴下される油滴を非接触透過型の油滴センサによって検知する油滴検知装置を併用することが提案されている。
【0004】
図11は、このような油滴センサによって検知される油滴と、油滴センサの出力信号を示している。油滴センサは、発光部11a及び受光部11bを有し、発光部11aと受光部11bの間を油滴Rが通過するとき、発光部11aから出射された光は油滴Rによって遮断されるため、受光部11bから出力される電気信号が減少する。従って、受光部11bから出力される電気信号を監視することにより、油滴の滴下回数を検知することができ、油滴が不足気味である場合には、プレス作業を停止したり、作業者に警告を発することにより、加工精度の維持等を図ることができる。
【0005】
より具体的には、図11(a)に示すように、油滴Rが発光部11aと受光部11bの間を通過するとき、光が油滴Rによって遮断されるため、図11(b)に示すように、受光部11bの出力電圧が低下する。そこで、ある一定の閾値S0を設定し、出力電圧が閾値S0よりも低下すると油滴Rが発光部11aと受光部11bの間を通過し、被加工材に落下するものとみなすことができる。油滴Rが通過することによる出力電圧の低下量は潤滑油として用いられる油の透明度に依存することから、油滴の通過の判断に用いられる閾値は、潤滑油の透明度を考慮して定められる。
【特許文献1】特開2004−314106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した油滴センサによって油滴Rを検知する油滴検知装置にあっては、長期間に亘る使用に際して、受光部11bの窓が埃等の付着により徐々に汚れることがある。このような場合、発光部11aが正常に光を出射していても受光部11bの受光量そのものが低下するため、図11(b)に一点鎖線で示したように、定常時すなわち油滴Rが発光部11aと受光部11bの間を通過してない時の出力電圧が閾値S0を下回ってしまい、油滴Rを検知することができないという不具合が発生する。また、被加工材の材質やプレス形状に応じて異なる透明度の潤滑油を使用する場合、透明度の低い潤滑油に上記閾値S0を設定すると透明度の高い潤滑油は、検出が困難となる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、受光部の汚れによって受光量が低下する場合、及び異なる透明度の潤滑油を使用する場合にあっても、油滴を正確に検知することができる油滴検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、光を受光して電気信号に変換する受光部を有し、プレス加工の被加工材の潤滑に用いられる油滴の通過に伴う受光量の変化に対応する電気信号を出力する油滴センサを備えたプレス加工用の潤滑油検知装置において、油滴センサから一定時間に出力された電気信号の平均値を算出し、該平均値に基づいて油滴検知のための閾値を設定する閾値設定手段と、油滴センサから出力された電気信号が閾値設定手段によって設定された閾値を所定の時間以上連続して越えたとき、油滴センサの前を油滴が通過したと判定し、その旨の信号を出力する油滴通過判定手段と、を備えたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置において、油滴センサから出力された電気信号を時間微分することにより、該電気信号の単位時間当たりの変化量を算出する変化量算出手段をさらに備え、変化量算出手段が算出した変化量に基づいて油滴通過判定手段に油滴センサから出力された電気信号を判定させるものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置において、変化量算出手段が算出した変化量が所定の値を複数回連続して越えたとき、油滴通過判定手段に油滴センサから出力された電気信号を判定させるものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置において、油滴通過判定手段が油滴センサの前を油滴が通過したと判定した旨の信号を出力した後、所定時間に亘って変化量算出手段の微分演算を禁止する演算禁止手段をさらに備えたものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置において、油滴通過判定手段が油滴センサの前を油滴が通過したと判定した旨の信号を所定時間内に繰り返して出力しないとき、油供給異常の信号を出力する異常信号出力手段をさらに備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、閾値設定手段が油滴センサから一定時間に出力された電気信号の平均値を算出し、該平均値に基づいて油滴検知のための閾値を設定するので、例えば油滴センサの表面が徐々に汚れ、油滴センサから出力される電気信号の値が全体的に低下傾向にある場合でも、油滴の通過を正確に判定できるようになる。また、閾値が上記電気信号の平均値に基づいて自動的に設定されるので、作業者が閾値を設定する手間を省くことができる。また、油滴通過判定手段は、油滴センサから出力された電気信号が閾値設定手段によって設定された閾値を所定の時間以上連続して越えたとき、油滴が通過したものと判定するので、信号幅が短いノイズが油滴センサと油滴通過判定手段との間の信号伝送ラインに混入した場合であっても、混入したノイズを油滴による信号として誤認する虞がなくなる。これにより、油滴の通過を正確に判定できるようになる。
【0014】
請求項2の発明によれば、変化量算出手段が、油滴センサから出力された信号を時間微分し、その演算結果に基づいて油滴通過判定手段に上記比較を実行する旨の信号を出力する。従って、例えば、何らかの要因で油滴センサから出力された信号がある程度の時間をかけてゆっくり変化するような、明らかに油滴による信号の変化とは異なっているが、閾値判定手段の動作によっても排除できないような信号を油滴の通過に伴うものと誤認する虞を排除することができる。これにより、プレス加工の現場における予期できない信号の変動要因に対しても適切に対応して、誤作動を防止することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、変化量算出手段が算出した変化量が所定の値を複数回連続して越えたとき、油滴通過判定手段に油滴センサから出力された電気信号を判定させる。すなわち、油滴センサから出力された電気信号の変化が短時間で収束する場合には、油滴センサから出力された電気信号を油滴通過判定手段に判定させないので、油滴の通過以外の要因で油滴センサから出力される電気信号が短く変化した場合に、油滴が通過したと誤認する虞がなくなる。これにより、油滴の通過を一層正確に判定できるようになる。
【0016】
請求項4の発明によれば、油滴通過判定手段が油滴の通過を判定した後(油滴が油滴センサの前を通過した後)、演算禁止手段が変化量算出手段の微分演算を所定時間に亘って禁止するので、例えば、油滴センサの前を通常の大きさの油滴が通過した直後に、通常よりも小さな油滴が通過するような場合にあっては、後から通過した小さな油滴を検知することがない。従って、実際よりも過大に油滴の通過を検知してしまうことに伴う潤滑油の供給不足を防止することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、油滴通過判定手段が油滴センサの前を油滴が通過したと判定した旨の信号を所定時間内に繰り返して出力しないとき、異常信号出力手段が油供給異常の信号を出力するので、例えば、当該信号をプレス加工機に伝送することにより、プレス加工機の運転を速やかに停止させることができる。また、当該信号を介して作業者に油の供給が異常であることをいち早く知らせることにより、迅速な対応措置を採ることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態によるプレス加工用の潤滑油検知装置について図面を参照して説明する。図1はプレス加工機100とそれに用いられる潤滑油検知装置1を示している。プレス加工機100は、プレス加工用の雌金型2及び雄金型3と、雌金型2、雄金型3を駆動する金型駆動部4と、被加工材200を金型駆動部4に搬送する被加工材搬送部5と、被加工材搬送部5によって搬送される被加工材200に潤滑油を塗布する潤滑油塗布装置101と、潤滑油塗布装置101によって供給される潤滑油を検知する潤滑油検知装置1等によって構成されている。潤滑油塗布装置101は、被加工材200の原反と金型駆動部4との間に配設されている。潤滑油検知装置1は、潤滑油塗布装置101の近傍に配設されている。
【0019】
金型駆動部4は、油圧等を動力源として雌金型2、雄金型3を往復駆動することにより、被加工材200をプレスして所望の形状に成形する。被加工材搬送部5は、ロール状に巻回された被加工材200の原反を展開しながら金型駆動部4に搬送する。潤滑油塗布装置101は、潤滑油を貯蔵する潤滑油タンク61と、潤滑油タンク61に貯蔵された潤滑油を滴下して供給する油供給管62と、油供給管62が供給する潤滑油の供給量を調整するためのバルブ63等によって構成されている。
【0020】
潤滑油検知装置1は、油滴Rを検知して電気信号を出力する油滴センサ11と、油滴センサ11から出力された電気信号を処理する信号処理部12と、潤滑油タンク61内の潤滑油の残量を検知する油面センサ30等によって構成されている。油滴センサ11は、光を照射する発光部11aと、発光部11aに対して所定の間隔を隔てて対向配置され、発光部11aから出射された光を受光して電気信号に変換する受光部11b等によって構成されている。発光部11aには、発光ダイオード等の発光素子が用いられている。また、受光部11bには、フォトダイオード等の受光素子が用いられている。受光部11bから出力されたアナログ信号は、油滴センサ11内でA/D変換された後、信号処理部12に入力される。
【0021】
図2は、信号処理部12の構成を示している。信号処理部12は、油滴センサ11から出力された信号をバックグラウンドで計測するバックグラウンド計測部(閾値設定手段)13と、バックグラウンド計測部13によって計測された信号に基づいて、油滴Rの通過判定に用いる閾値を設定する閾値設定部(閾値設定手段)14と、油滴Rの通過を判定するための第1比較回路(油滴通過判定手段)15と、油滴Rが通過している時間を計測する閾値越継続時間計測部(油滴通過判定手段)16と、プレスの回転数を計測するプレス回転計測部17と、無注油のままプレスできる回転数の上限を設定する回転数上限設定部18と、注油状態を判定するための第2比較回路(異常信号出力手段)19と、第2比較回路19の出力信号に基づいて、油切れの警告を表示する油切れ警告表示部20と、油滴センサ11から出力された信号の所定時間あたりの変化量を算出する信号変化量算出部(変化量算出手段)21と、信号変化量算出部21の演算を所定時間に亘って禁止する演算禁止タイマ(演算禁止手段)22と、油滴センサ11及び演算禁止タイマ22から出力された信号に応じて動作するゲート回路(演算禁止手段)23等によって構成されている。
【0022】
バックグラウンド計測部13は、油滴センサ11から出力された信号を10m秒毎にバックグラウンドで計測し、64回計測した信号の平均値を算出し、閾値設定部14に出力する。すなわち、油滴センサ11から出力された信号の640m秒毎の平均値が閾値設定部14に入力される。閾値設定部14は、バックグラウンド計測部13によって算出された平均値に所定の係数、例えば0.8を乗じて得た値を閾値として設定する。閾値を算出するための係数は、潤滑油の透明度に応じて適宜定められる。
【0023】
第1比較回路15は、信号変化量算出部21から出力された信号を受けたとき、油滴センサ11から出力された信号と、閾値設定部14によって設定された閾値とを比較することにより油滴Rの通過を判定する。この判定は1m秒毎になされ、油滴センサ11から出力された信号が閾値を越えたとき、その旨の信号を閾値越継続時間計測部16に出力する。閾値越継続時間計測部16は、第1比較回路15の出力信号に基づいて、油滴センサ11から出力された信号が上記閾値を継続して越えた時間を計測し、所定の時間以上連続して閾値を越えた場合には、油滴Rが通過したものと判断し、その旨の信号をプレス回転計測部17及び演算禁止タイマ22に出力する。ここでいう所定の時間とは、油滴センサ11と第1比較回路15との間の信号伝送ラインに混入したノイズが収束するのに十分な時間であり、例えば3m秒程度である。
【0024】
プレス回転計測部17は、金型駆動部4から出力されたプレス回転信号を計数することにより、プレス回転数すなわち雌金型2及び雄金型3の開閉回数を計測する。閾値越継続時間計測部16から油滴Rが通過している旨の信号が入力されると、プレス回転計測部17は、その計数値をゼロにリセットする。これにより、油滴通過後のプレス回転数がプレス回転計測部17によって計測されることになり、その油滴通過後のプレス回転数を示す信号は第2比較回路19に入力される。
【0025】
第2比較回路19は、プレス回転計測部17から入力された油滴通過後のプレス回転数と、回転数上限設定部18によって設定されている無注油プレス回転数の上限値を比較する。油滴通過後のプレス回転数が無注油プレス回転数の上限値を越えたとき、第2比較回路19は、その旨の警告信号を油切れ警告表示部20等に出力する。第2比較回路19から警告信号を受けた油切れ警告表示部20は、警告ランプ20a(図1参照)を点灯させて、作業者に対して油切れの虞がある旨を警告する。第2比較回路19から出力する警告信号は、他の警告手段、例えば警告音出力装置(図示せず)等にも伝送される。
【0026】
また、油滴Rが通過した旨の信号は、閾値越継続時間計測部16から演算禁止タイマ22にも入力される。油滴Rが通過した旨の信号を受けた演算禁止タイマ22は、所定時間例えば1秒間に亘って演算を禁止させる旨の信号(ロー)をゲート回路23に出力する。従って、油滴Rが通過して1秒経過後は、演算禁止タイマ22からゲート回路23に入力される信号はハイとなる。また、次の油滴Rが油滴センサ11の前を通過するとき、油滴センサ11からゲート回路23に入力される信号はハイになる。ゲート回路23は、油滴センサ11及び演算禁止タイマ22から入力された信号が共にハイのとき、信号変化量算出部21に対して演算処理を行う旨の信号を出力する。
【0027】
ゲート回路23から演算処理を行う旨の信号が入力された信号変化量算出部21は、油滴センサ11から出力された信号を時間微分し、その微分値が3回以上連続して所定の値を越えたとき、第1比較回路15に上記比較を実行する旨の信号を出力する。従って、例えば、何らかの要因で油滴センサ11から出力された信号が200m秒の時間をかけて変化するような、明らかに油滴による信号の変化とは異なっている信号を油滴の通過に伴うものと誤認する虞を排除することができる。これにより、プレス加工の現場における予期できない信号の変動要因に対しても適切に対応して、誤作動を防止することができる。
【0028】
図3乃至図7は、油滴センサ11の発光部11aと受光部11bとの間を通過する油滴Rと、油滴センサ11から出力される信号の関係を示している。油滴センサ11と潤滑油が共に正常な場合における油滴Rと油滴センサ11から出力される信号の関係は、図3において実線で、図4乃至図7において破線で示される。図3(a)に示すように、発光部11aから出射された光が落下する油滴Rによって遮られると、図3(b)に示すように、油滴センサ11から出力される信号は、一旦低下し、T秒間に亘って閾値S0を下回り、油滴Rの通過後元に戻る。本潤滑油検知装置1においては、正常な油滴Rが落下した場合、T>3m秒となるように、閾値S0を算出するための係数が設定されている。
【0029】
図4は、受光部11bの受光窓が汚れている場合における油滴Rと油滴センサ11から出力される信号の関係を示している。図4(a)に示すように、受光部11bの受光窓が汚れている場合、図4(b)において実線で示すように、油滴センサ11から出力される信号レベルは、油滴Rが落下する前後を含めて全体的に低下する。このとき仮に、元の閾値S0を用いた場合にあっては、油滴センサ11から出力される信号は常時S0を下回っているため、油滴Rを検知することができない。しかしながら、本潤滑油検知装置1においては油滴センサ11から出力される信号の平均値に基づいて閾値を変動させているため、油滴センサ11から出力される信号レベルが全体的に低下した場合には、閾値も自動的にS1まで低下する。その結果、油滴センサ11から出力される信号は、図3に示した場合と同様に、T秒間に亘って閾値S1を下回る。これにより、受光部11bの受光窓が汚れている場合にあっても、閾値が自動的に適正化され、油滴Rの通過を正確に判定できるようになる。
【0030】
図5は、透明度の高い潤滑油を使用する場合における油滴Rと油滴センサ11から出力される信号の関係を示している。図5(a)に示すように、透明度の高い潤滑油を使用する場合、落下する油滴Rによる遮光が少なくなるため、図5(b)において実線で示すように、油滴センサ11から出力される信号の変化は小さくなる。このとき仮に、元の閾値S0を用いた場合にあっては、油滴センサ11から出力される信号は常時S0を上回っていることとなり、油滴Rを検知することができない。しかしながら、本潤滑油検知装置1においては、潤滑油の透明度は、油滴センサ11から出力される信号の変化に基づいて検知することができるので、その検知した透明度に応じて上記閾値を算出するための係数の値を大きくすることにより閾値をS2まで高くすることができる。その結果、油滴センサ11から出力される信号は、図3に示した場合と同様に、T秒間に亘って閾値S2を下回り、透明度の高い潤滑油を使用する場合にあっても、油滴Rの通過を正確に判定できるようになる。
【0031】
図6は、油滴センサ11の発光部11aと受光部11bとの間を油滴以外の小さな異物が通過した場合における異物と油滴センサ11から出力される信号の関係を示している。図6(a)に示すように、発光部11aと受光部11bとの間を油滴Rよりも小さな埃等の異物Zが通過した場合、図6(b)において実線で示すように、油滴センサ11から出力される信号は、鋭く変化し、時間T’だけ閾値S0を下回る。このとき、異物Zによって極めて短かい時間だけ遮光されてT’<3m秒となることから、閾値越継続時間計測部16によって閾値を越えた時間T’が短いと判断され、異物Zを油滴Rとして誤認する虞はない。
【0032】
図7は、2つの油滴R、rが連続的に通過した場合における油滴R、rと油滴センサ11から出力される信号の関係を示している。このような場合、図7(a)に示すように、通常の大きさの油滴Rに連なって、すなわち1つめの油滴Rから1秒以下の短い時間を隔てて、小さい油滴rが落下し、図7(b)において実線で示すような出力信号が油滴センサ11から検出される。本潤滑油検知装置1においては、1つめの油滴Rが通過した後、演算禁止タイマ22及びゲート回路23が1秒間に亘って信号変化量算出部21の演算を禁止させる。従って、その間は第1比較回路15及び閾値越継続時間計測部16が動作しないため、2つめの小さい油滴rが検出される虞はない。従って、実際よりも過大に油滴の通過を検知してしまうことに伴う潤滑油の供給不足を防止することができる。
【0033】
図8は、信号処理部12のうち、特にバックグラウンド計測部13及び閾値設定部14の動作を示している。まず、バックグラウンド計測部13は、油滴センサ11から出力された信号をバックグラウンドで計測し、その平均値を算出する(#1)。ついで、閾値設定部14がバックグラウンド計測部13によって算出された平均値に基づいて、油滴Rの通過判定に用いる閾値を設定する(#2)。この#1及び#2の処理は、プレス加工機100の運転中、図9及び図10に示す動作とは独立してバックグラウンドで繰り返して実行される。
【0034】
図9は、信号処理部12のうち、特に第1比較回路15、閾値越継続時間計測部16、プレス回転計測部17、信号変化量算出部21、演算禁止タイマ22及びゲート回路23の動作を示している。まず、信号変化量算出部21は、油滴センサ11から出力された信号を時間微分し(#11)、その微分値が3回以上連続して所定の値を越えたとき(#12においてYES)、第1比較回路15が油滴センサ11から出力される信号と#2において設定した閾値とを比較し、閾値越継続時間計測部16が継続して閾値を越えた時間を計測する(#13)。閾値を越えた時間が3m秒以上のときは(#14においてYES)、油滴Rが被加工物に供給されたものとしてプレス回転計測部17のカウント数をリセットし(#15)、演算禁止タイマ22が演算禁止時間の計測を開始する(#16)。そして、禁止時間が1秒以上になると(#17においてYES)、処理を終了する。なお、#12において微分値が所定の値を越えた回数が3回未満のとき(#12においてNO)、#13以降をスキップして、処理を終了する。また、#14において閾値を越えた時間が3m秒未満のとき(#14においてNO)、#15以降をスキップして、処理を終了する。同図における#11乃至#17の一連の処理は、プレス加工機100の運転中、繰り返して実行される。
【0035】
図10は、信号処理部12のうち、特にプレス回転計測部17、回転数上限設定部18、第2比較回路19及び油切れ警告表示部20の動作を示している。まず、プレス回転計測部17は、金型駆動部4から出力されたプレス回転信号に基づいてプレス回転数を計測する(#21)。その後#15においてプレス回転数がリセットされずに計数が継続され、無注油プレス回転数の上限値以上になると(#22においてYES)、油切れ警告表示部20が、警告ランプ20aを点灯させて、作業者に対して油切れの虞がある旨を警告して(#23)、処理を終了する。なお、プレス回転数が無注油プレス回転数の上限値未満のときは(#22においてNO)、#23をスキップして処理を終了する。この#21乃至#23の処理は、プレス加工機100の運転中、図8及び図9に示す動作とは独立してバックグラウンドで繰り返して実行される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の潤滑油検知装置1によれば、閾値設定部14が油滴センサ11から一定時間に出力された電気信号の平均値を算出し、該平均値に基づいて油滴検知のための閾値を設定するので、例えば油滴センサ11の表面が徐々に汚れ、油滴センサ11から出力される電気信号が全体的に低下傾向にある場合でも、油滴Rの通過を正確に判定できるようになる。また、閾値が上記電気信号の平均値に基づいて自動的に設定されるので、作業者が閾値を設定する手間を省くことができる。また、第1比較回路15及び閾値越継続時間計測部16が、油滴センサ11から出力された電気信号が閾値設定部14によって設定された閾値を所定の時間以上連続して越えたとき、油滴Rが通過したものと判定するので、何らかの事情により信号幅が短いノイズが油滴センサ11と信号処理部12との間の信号伝送ラインに混入した場合であっても、混入したノイズを油滴Rによる信号として誤認する虞がなくなる。これにより、油滴Rの通過を正確に判定できるようになる。
【0037】
また、信号変化量算出部21は、油滴センサ11から出力された信号を時間微分し、その演算結果に基づいて、第1比較回路15に上記比較を実行する旨の信号を出力する。従って、例えば、何らかの要因で油滴センサ11から出力された信号が200m秒程度の時間をかけてゆっくり変化するような場合、すなわち、明らかに油滴による信号の変化とは異なっているが、図8に示すバックグラウンド計測による閾値の設定によっては追従できないような信号の変化を油滴の通過に伴うものと誤認する虞を排除することができる。これにより、プレス加工の現場における予期できない信号の変動要因に対しても適切に対応して、誤作動を防止することができる。
【0038】
また、信号変化量算出部21が算出した変化量が所定の値を3回連続して越えたとき、第1比較回路15に油滴センサ11から出力された電気信号を判定させるので、油滴センサ11から出力された電気信号の変化が短時間で収束する場合には、第1比較回路15は動作しないことになる。これにより、油滴Rの通過以外の要因で油滴センサ11から出力される電気信号が短く変化した場合に、油滴Rが通過したと誤認する虞がなくなり、油滴Rの通過を一層正確に判定できるようになる。
【0039】
また、閾値越継続時間計測部16が油滴Rの通過を判定した後、演算禁止タイマ22が信号変化量算出部21の微分演算を1秒間禁止するので、例えば図7に示すように、油滴センサ11の前を通常の大きさの油滴Rが通過した直後に、通常よりも小さな油滴rが通過するような場合にあっては、後から通過した小さな油滴rを検知しない。従って、実際よりも過大に油滴Rの通過を検知してしまうことに伴う潤滑油の供給不足を防止することができる。
【0040】
また、閾値越継続時間計測部16が油滴センサ11の前を油滴Rが通過したと判定した旨の信号を所定時間内に繰り返して出力しないとき、第2比較回路19は油供給異常の信号を出力するので、例えば、当該信号をプレス加工機100に伝送することにより、プレス加工機100の運転を速やかに停止させることができる。また、当該信号を介して作業者に油の供給が異常であることをいち早く知らせることにより、迅速な対応措置を採ることも可能となる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく種々の変形が可能であり、例えば、潤滑油検知装置1は、油滴センサ11として透過型の光センサを用いているが、油滴Rによって反射された光を検知する反射型の光センサを適用してもよい。また、図9中、#12における微分値越回数の判定基準、#14における閾値越時間の判定基準及び#17における演算禁止時間の判定基準は、上述したものに限られることなく被加工材200や潤滑油の物性等に応じて適宜設定することができる。また、本発明は少なくとも油滴センサ11、バックグラウンド計測部13、閾値設定部14、第1比較回路15及び閾値越継続時間計測部16に相当する構成を有していればよく、信号変化量算出部21、演算禁止タイマ22及びゲート回路23を省いて、潤滑油検知装置の構成を簡素化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態によるプレス加工機とそれに用いられる潤滑油検知装置の概略構成を示す図。
【図2】同潤滑油検知装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】(a)は油滴センサの前を潤滑油の滴が通過し落下する様子を示す図、(b)はこのとき油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【図4】(a)は受光部が汚れている油滴センサの前を潤滑油の滴が通過し落下する様子を示す図、(b)はこのとき油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【図5】(a)は油滴センサの前を透明度の高い潤滑油の滴が通過し落下する様子を示す図、(b)はこのとき油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【図6】(a)は油滴センサの前を油滴以外の小さな異物が通過し落下する様子を示す図、(b)はこのとき油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【図7】(a)は油滴センサの前を2つの油滴が連続的に通過し落下する様子を示す図、(b)はこのとき油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【図8】信号処理部のうち、特にバックグラウンド計測部及び閾値設定部の動作を示すフローチャート。
【図9】信号処理部のうち、特に第1比較回路、閾値越継続時間計測部、プレス回転計測部、信号変化量算出部、演算禁止タイマ及びゲート回路の動作を示すフローチャート。
【図10】信号処理部のうち、特にプレス回転計測部、回転数上限設定部、第2比較回路及び油切れ警告表示部の動作を示すフローチャート。
【図11】(a)は油滴センサの前を潤滑油の滴が通過し落下する様子を示す図、(b)は従来の潤滑油検知装置において油滴センサから出力される信号と油滴通過の判定のための閾値との関係を示す図。
【符号の説明】
【0043】
1 潤滑油検知装置
11 油滴センサ
11b 受光部
13 バックグラウンド計測部(閾値設定手段)
14 閾値設定部(閾値設定手段)
15 第1比較回路(油滴通過判定手段)
16 閾値越継続時間計測部(油滴通過判定手段)
19 第2比較回路(異常信号出力手段)
21 信号変化量算出部(変化量算出手段)
22 演算禁止タイマ(演算禁止手段)
23 ゲート回路(演算禁止手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を受光して電気信号に変換する受光部を有し、プレス加工の被加工材の潤滑に用いられる油滴の通過に伴う受光量の変化に対応する電気信号を出力する油滴センサを備えたプレス加工用の潤滑油検知装置において、
前記油滴センサから一定時間に出力された電気信号の平均値を算出し、該平均値に基づいて油滴検知のための閾値を設定する閾値設定手段と、
前記油滴センサから出力された電気信号が前記閾値設定手段によって設定された閾値を所定の時間以上連続して越えたとき、前記油滴センサの前を油滴が通過したと判定し、その旨の信号を出力する油滴通過判定手段と、
を備えたことを特徴とするプレス加工用の潤滑油検知装置。
【請求項2】
前記油滴センサから出力された電気信号を時間微分することにより、該電気信号の単位時間当たりの変化量を算出する変化量算出手段をさらに備え、
前記変化量算出手段が算出した変化量に基づいて前記油滴通過判定手段に前記油滴センサから出力された電気信号を判定させることを特徴とする請求項1に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置。
【請求項3】
前記変化量算出手段が算出した変化量が所定の値を複数回連続して越えたとき、前記油滴通過判定手段に前記油滴センサから出力された電気信号を判定させることを特徴とする請求項2に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置。
【請求項4】
前記油滴通過判定手段が前記油滴センサの前を油滴が通過したと判定した旨の信号を出力した後、所定時間に亘って前記変化量算出手段の微分演算を禁止する演算禁止手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置。
【請求項5】
前記油滴通過判定手段が前記油滴センサの前を油滴が通過したと判定した旨の信号を所定時間内に繰り返して出力しないとき、油供給異常の信号を出力する異常信号出力手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置。
【請求項1】
光を受光して電気信号に変換する受光部を有し、プレス加工の被加工材の潤滑に用いられる油滴の通過に伴う受光量の変化に対応する電気信号を出力する油滴センサを備えたプレス加工用の潤滑油検知装置において、
前記油滴センサから一定時間に出力された電気信号の平均値を算出し、該平均値に基づいて油滴検知のための閾値を設定する閾値設定手段と、
前記油滴センサから出力された電気信号が前記閾値設定手段によって設定された閾値を所定の時間以上連続して越えたとき、前記油滴センサの前を油滴が通過したと判定し、その旨の信号を出力する油滴通過判定手段と、
を備えたことを特徴とするプレス加工用の潤滑油検知装置。
【請求項2】
前記油滴センサから出力された電気信号を時間微分することにより、該電気信号の単位時間当たりの変化量を算出する変化量算出手段をさらに備え、
前記変化量算出手段が算出した変化量に基づいて前記油滴通過判定手段に前記油滴センサから出力された電気信号を判定させることを特徴とする請求項1に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置。
【請求項3】
前記変化量算出手段が算出した変化量が所定の値を複数回連続して越えたとき、前記油滴通過判定手段に前記油滴センサから出力された電気信号を判定させることを特徴とする請求項2に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置。
【請求項4】
前記油滴通過判定手段が前記油滴センサの前を油滴が通過したと判定した旨の信号を出力した後、所定時間に亘って前記変化量算出手段の微分演算を禁止する演算禁止手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置。
【請求項5】
前記油滴通過判定手段が前記油滴センサの前を油滴が通過したと判定した旨の信号を所定時間内に繰り返して出力しないとき、油供給異常の信号を出力する異常信号出力手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のプレス加工用の潤滑油検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−248142(P2009−248142A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99711(P2008−99711)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(300019445)株式会社カサタニ (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(300019445)株式会社カサタニ (19)
【Fターム(参考)】
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