説明

プレス機の型点検機構

【課題】プレス機の信号を用いずとも、プレス機で用いる上型の押圧部材と下型の押圧部材の干渉を点検できるプレス機の型点検機構を提供する。
【解決手段】型点検機構2の制御手段20は、上側ピン12と下側ピン14の間隔が初期間隔にあるとき、上側ピン12と下側ピン14の干渉を点検する指示を受けると、型点検機構2の搬送手段21を作動させて、上側ピン12と下側ピン14の間に発色部材3をセットし(S1)、上側ピン12と下側ピン14の間隔が、発色部材3の厚みtよりもわずかに小さく、かつ、上側ピン12と下側ピン14が当接しない点検間隔dになるまで、上型11を下降させた後(S2)、上側ピン12と下側ピン14の間隔が初期間隔になるまでプレス機1の上型11を上昇させ(S3)、型点検機構2の搬送手段21を作動させて、プレス機1の上側ピン12と下側ピン14の間から発色部材3を取り出す(S4)、動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機で用いる上型の押圧部材と下型の押圧部材の干渉を点検するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上下に対向する2つの型の間にワークを挟み、上下に対向する2つの型の少なくとも一つを動かすことでワークをプレス加工(例えば、打ち抜き、成型)するプレス機においては、ワークをプレス加工する際に上下の型が破損せぬことが保証されているという前提で作業を行っているが、特許文献1に記載されている打ち抜き機のように、上下の型を日常的に変えることができるようなプレス機の場合は、上型もしくは下型の組合せミスまたは上型もしくは下型の作製ミスが稀に発生する。
【0003】
上型又は下型の組合せミスや上型又は下型の作製ミスがある状態でワークをプレス加工すると、上型に設けられた押圧部材(例えば、ピンボードに設けられたピン)と下型に設けられた押圧部材が当接し、上下の型のみならずプレス機本体をも破損してしまうことがあるため、プレス機を使用してワークをプレス加工する前に、プレス機で用いる上型の押圧部材と下型の押圧部材の干渉を点検することが必要になる。
【0004】
プレス機で用いる上型の押圧部材と下型の押圧部材の干渉を点検できる発明も既に開示され、例えば、特許文献1において、油圧プレス機の金型であるパンチとダイが当接してもそれぞれが破損しない試動圧力にてパンチを移動させ、パンチの移動時間及び移動距離とにより、パンチとダイの組合せの良否を判定する装置が開示されている。また、特許文献2では、サーボモータ駆動のプレス機のサーボモータの負荷を検出し、検出した負荷が規定値を超えると、パンチとダイの組合せが不良と判定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−238776号公報
【特許文献2】特開平5−177273号公報
【特許文献3】特開平10−244330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに上述した従来技術でも、プレス機で用いる上型の押圧部材と下型の押圧部材の干渉を点検することができるようになるが、上述した従来技術では、プレス機で用いる上型の押圧部材と下型の押圧部材の干渉の点検にプレス機の信号(例えば、サーボモータの負荷信号)が用いられていた。
【0007】
上述した従来技術では、プレス機の上型の押圧部材と下型の押圧部材が当接しても型が破損しないように考慮されているものの、プレス機の上型の押圧部材と下型の押圧部材の干渉がある場合、プレス機の上型の押圧部材と下型の押圧部材が当接してしまうため、プレス機の信号を用いずに、プレス機の上型の押圧部材と下型の押圧部材の干渉を点検できることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明は、プレス機の信号を用いずとも、プレス機で用いる上型の押圧部材と下型の押圧部材の干渉を点検することができるプレス機の型点検機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため本発明は、複数の上側押圧部材が設けられた上型と、複数の下側押圧部材が設けられた下型と、前記上型及び前記下型の少なくとも一つを駆動させる駆動機構を有するプレス機に設けられる機構であって、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間に発色部材をセットする動作と、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間から前記発色部材を取り出す動作を行う搬送手段と、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間隔が初期間隔の状態において、前記搬送手段を作動させて、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間に前記発色部材をセットしてから、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間隔が、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材に挟まれた箇所の前記発色部材が発色する点検間隔になるまで前記駆動機構を作動させた後、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間隔を初期間隔になるまで前記駆動機構を作動させてから、前記搬送手段を作動させて、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間から前記発色部材を取り出すように制御する制御手段を備えたことを特徴とするプレス機の型点検機構である。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明によれば、上側ピンと下側ピンが干渉し、上側ピンと下側ピンに挟まされた発色部材の箇所が発色するため、搬送手段によって取り出された発色部材の発色状況を確認すれば、プレス機の信号を用いずとも、プレス機で用いる上型の押圧部材と下型の押圧部材の干渉を点検することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】型点検機構が設けられたプレス機を説明する図。
【図2】上側ピン及び下側ピンのピン配置を説明する図。
【図3】プレス機の型点検機構のブロック図。
【図4】型点検機構の制御手段の動作を説明するフロー図。
【図5】型点検機構の制御手段の動作を説明する補足図。
【図6】発色部材の層構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここから,本発明の実施形態について,本発明の技術分野に係わる当業者が,発明の内容を理解し,発明を実施できる程度に説明する。なお、これから説明する実施形態は本発明の一実施形態にしか過ぎず、本発明は,これから説明する実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能である。
【0013】
図1は、本実施形態に係る型点検機構が設けられたプレス機1を説明する図である。図1に図示したプレス機1は、ピンボード方式の型が装着されるプレス機1で、プレス加工に使用する型として、ワークシートを打ち抜くための上側押圧部材として複数の上側ピン12が設けられている上型11と、ワークシートを打ち抜くための下側押圧部材として複数の下側ピン14が設けられている下型13を備えている。
【0014】
本実施形態のプレス機1において、上型11は上下に昇降に駆動可能で、下型13は固着されており、プレス機1には、上型11を昇降させるための駆動機構10が備えられている。上型11を昇降させる駆動機構10としては、油圧方式もあるが、本実施形態では、上型11の昇降速度や停止位置を精度良く制御可能なサーボモータ方式を採用している。
【0015】
図2は、上側ピン12及び下側ピン14のピン配置を説明する図で、図2では、ワークシートを点線で、製品なる製品領域を一点鎖線で示している。図2(a)は、上側ピン12のピン配置を示し、上側ピン12は白丸で示している。図2(a)に図示したように、上型11に設けられる上側ピン12は、製品とならないワークシートのカス領域を上から押すようにピン配置されている。
【0016】
図2(b)は、下側ピン14のピン配置を示し、下側ピン14は白丸で示している。図2(b)に図示したように、下型13に設けられる下側ピン14は、ワークシートの製品領域を下から支えるようにピン配置されている。
【0017】
図2のように上側ピン12及び下側ピン14をピン配置し、一点鎖線で示した形状に沿った切り取り線が予め加工されたワークシートをプレス加工すれば、ワークシートの製品領域が下側ピン14によって支えられた状態で、ワークシートのカス領域が上側ピン12によって上から押される格好になり、ワークシートに加工された切り取り線が切断し、ワークシートの製品領域が打ち抜かれる。
【0018】
このような、ピンボード方式の型が装着されるプレス機1では、製造品目が切り替わる毎に上型11と下型13が交換されるが、上型11もしくは下型13の組合せミス、または、上型11もしくは下型13の作製ミスがあると、プレス加工した際に上側ピン12と下側ピン14が当接してしまい、上側ピン12と下側ピン14の破損のみならずプレス機1をも破損する恐れがある。
【0019】
そこで、本実施形態に係るプレス機1には、プレス機1の信号(サーボモータの負荷信号)ではなく、シート状の発色部材3の発色により、上側ピン12と下側ピン14の干渉を点検できる型点検機構2が設けられている。
【0020】
図3は、プレス機1の型点検機構2のブロック図である。プレス機1に設けられる型点検機構2は、シート状の発色部材3をプレス機1の上側ピン12と下側ピン14の間にセットする動作と、プレス機1の上側ピン12と下側ピン14の間から発色部材3を取り出す動作を行う搬送手段21と、プレス機1の駆動機構10と搬送手段21を制御する制御手段20とから少なくとも構成される。
【0021】
図1では、プレス機1に備えられた搬送手段21を、シート状の発色部材3を吸着するヘッドを有するアーム機構21aとしているが、型点検機構2に備えられた搬送手段21を実現する機構は、図1で図示した機構に限定されない。
【0022】
また、型点検機構2の制御手段20は、プログラマブルロジックコントローラなどにより実現される手段で、型点検機構2の制御手段20の機能をプレス機1の制御装置に持たせることも可能である。
【0023】
図4は、型点検機構2の制御手段20の動作を説明するフロー図で、図5は、型点検機構2の制御手段20の動作を説明する補足図である。
【0024】
型点検機構2の制御手段20は、プレス機1の上側ピン12と下側ピン14の間隔が初期間隔(例えば、上型11と下型13がプレス原点)にある状態において、図示していないプレス機1の操作盤の所定のボタンが押されるなどして、上側ピン12と下側ピン14の干渉を点検する指示を受けると、型点検機構2の搬送手段21を作動させて、図5(a)に図示したように、プレス機1の上側ピン12と下側ピン14の間に発色部材3をセットする(S1)。
【0025】
プレス機1の上側ピン12と下側ピン14の間に発色部材3を挿入した後、型点検機構2の制御手段20は、プレス機1の駆動機構10に信号を送り、図5(b)に図示したように、上側ピン12と下側ピン14の間隔が、発色部材3の厚みtよりもわずかに小さく、かつ、上側ピン12と下側ピン14が当接しない点検間隔dになるまで、上型11を下降させる(S2)。
【0026】
次に、型点検機構2の制御手段20は、プレス機1の駆動機構10に信号を送り、図5(c)に図示したように、上側ピン12と下側ピン14の間隔が初期間隔になるまでプレス機1の上型11を上昇させた後(S3)、型点検機構2の搬送手段21を作動させて、プレス機1の上側ピン12と下側ピン14の間から発色部材3を取り出して(S4)、図4のフローは終了する。
【0027】
最後に、本実施形態の発色部材3を説明しながら、本発明の効果について説明する。図6は、本実施形態に係る発色部材3の層構成を説明する図である。
【0028】
図6(a)では、実施形態に係る発色部材3の層構成を図示し、図6(a)に図示したように発色部材3の層構成は、発色部材3の表面となる表紙層30と、発色剤を内包したカプセル310が塗布されている発色層31と、発色剤と反応させる顕色剤が塗布されている顕色層32と、発色部材3のベースとなる基紙層33から構成され、発色剤を内包したカプセル310が圧力によって破壊されると、発色剤と顕色剤が反応をおこして発色する。
【0029】
図6(b)は、発色部材3が発色する様子を説明する図である。本実施形態のプレス機1において、シート状の発色部材3に圧力を加える部材は上側ピン12と下側ピン14になり、発色部材3において発色する可能性がある箇所は上側ピン12と下側ピン14と接する箇所になる。
【0030】
しかしながら、上側ピン12と下側ピン14が干渉していない箇所では、上側ピン12又は上側ピン12が発色部材3に加える圧は発色部材3の裏側に逃げるため、該圧は弱まり、発色層31のカプセル310は破壊されずに該箇所は発色しない。これに対し、上側ピン12と下側ピン14が干渉している箇所では、上側ピン12と下側ピン14の間に発色部材3が挟まれた格好になり、大きい圧力が発色部材3に加わるため、発色層31のカプセル310は破壊し該箇所は発色する。よって、図4のフローを実行した後に、発色部材3の発色状況を確認すれば、上側ピン12と下側ピン14の干渉の有無を点検することができる。
【0031】
なお、上側ピン12と下側ピン14が干渉しない箇所であっても、発色層31のカプセル310が破壊することがあるかも知れないが、この場合、カプセル310が破壊される度合いは小さく発色が薄くなるため、図4のフローを実行した後の発色部材3の発色状況を確認すれば、上側ピン12と下側ピン14の干渉の有無を点検することはできる。
【0032】
このように、発色部材3は、上側ピン12と下側ピン14の間に発色部材3が挟まれた時の圧力によって発色するため、プレス機1の上型11を下降したときの上側ピン12と下側ピン14の間隔dは、発色部材3が発色するための圧力、ここでは、発色層31のカプセル310が破壊される圧力が、上側ピン12と下側ピン14の間に挟まれた発色部材3に加わるように決定すると良い。
【符号の説明】
【0033】
1 プレス機
10 駆動機構
11 上型
12 上側ピン
13 下型
14 下側ピン
2 型点検機構
20 制御手段
21 搬送手段
3 発色部材
31 発色層
310 カプセル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の上側押圧部材が設けられた上型と、複数の下側押圧部材が設けられた下型と、前記上型及び前記下型の少なくとも一つを駆動させる駆動機構を有するプレス機に設けられる機構であって、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間に発色部材をセットする動作と、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間から前記発色部材を取り出す動作を行う搬送手段と、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間隔が初期間隔の状態において、前記搬送手段を作動させて、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間に前記発色部材をセットしてから、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間隔が、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材に挟まれた箇所の前記発色部材が発色する点検間隔になるまで前記駆動機構を作動させた後、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間隔を初期間隔になるまで前記駆動機構を作動させてから、前記搬送手段を作動させて、前記上側押圧部材と前記下側押圧部材の間から前記発色部材を取り出すように制御する制御手段を備えたことを特徴とするプレス機の型点検機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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