説明

プレス機用パッドおよびその製造方法

【課題】
耐久性に優れたプレス機用パッドを提供する。
【解決手段】
ポリウレタン系繊維を芯糸に有する被覆弾性糸を含む布帛を有してなることを特徴とするプレス機用パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機用パッドおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スラックス股下縫製部のクセ取りや、スラックスのプレス仕上げ加工において、スラックス専用のプレス機が使用される。プレス機は湾曲面プレス台の上に置かれたスラックスに、パッドが貼られた金枠を上から押し当てて伸ばし、パッドに高温蒸気を直接噴射してスラックスをプレス加工する装置である。金枠に貼られるパッドには布帛が用いられるが、繰り返し長期間の高温蒸気や強い押し当ての作用を受けるので、使用回数が多くなるとパッドのストレッチ性が低下したり、汚れたり、変色したり、目詰まりしたりするので、数ヶ月毎に交換する必要がある。
【0003】
プレス性能を維持しつつ、パッドに使用される繊維原料の有効活用や廃棄物の環境対応に配慮することから、耐久性に優れたパッドの開発が要求されている。
【0004】
特許文献1には、スラックスのクセ取り処理方法及びその装置が開示され、股下縫い合わせ部のクセをプレスし除去する方法とそのプレス装置であるが、パッドの耐久性については改善されていない。
【特許文献1】特開昭60−116399号公報(請求項1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐久性を改善したプレス機用パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、ポリウレタン系繊維の被覆弾性糸を含むストレッチ布帛およびその製造方法からなることを特徴とするプレス機用パッドである。
【0007】
また本発明は、熱処理前のポリウレタン系繊維に下記定義による液中熱セット率が80%以下のものを用い、染色仕上げ加工を含む工程を経て本発明のプレス機用パッドとすることを特徴とするプレス機用パッドの製造方法である。
液中熱セット率は、初期長Lの試料を2倍の長さに伸張した状態で圧力釜の液中で130℃で1分間、熱処理し、伸張から解放した状態の長さLから次式により求める。
液中熱セット率={(L−L)/L}×100 。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプレス機用パッドによれば、繰り返し長期間の高温蒸気処理に対し、優れた耐久性を有するプレス機用パッドおよびその製造方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のプレス機用パッドは、ポリウレタン系繊維を芯糸に有する被覆弾性糸を含む布帛を有してなる。
【0010】
ポリウレタン系繊維を弾性繊維として用いることにより、例えばポリエステル系の弾性繊維に比べ、繰り返し施される蒸気処理による加水分解の影響を受けにくく、耐久性に優れる。
【0011】
ポリウレタン系繊維は、ポリウレタンやポリウレタンウレアに代表されるポリウレタン系ポリマから形成される繊維である。ポリウレタンとはイソシアネート基とアルコール基が縮合してできるウレタン結合でモノマーが共重合してなる高分子化合物である。ポリウレタンは、グリコールを主とするポリオールと、主として2官能のイソシアネートである、ジイソシアネートを反応させて合成することができる。
【0012】
ポリウレタン系繊維の市販品の例としては、オペロンテックス株式会社製“ライクラ”(登録商標)のタイプT−127C、T−127、T−153C等が、高温蒸気処理に対する耐熱性が高く好ましい。
【0013】
被覆弾性糸におけるポリウレタン系繊維の芯糸の総繊度としては22〜500dtexが好ましく、より好ましくは44〜220dtexである。22dtex未満ではパッドの押し圧力が不足し、500dtex超ではパッドの地厚化によりプレス加工時に必要な蒸気量が増加する。
【0014】
被覆弾性糸におけるポリウレタン系繊維の芯糸の切断伸度としては、400〜800%が好ましく、より好ましくは500〜700%である。400%未満ではプレス台の湾曲面が形成しにくく、800%超ではプレス力不足となる。
【0015】
被覆弾性糸におけるポリウレタン系繊維の芯糸の切断強度としては、0.5〜0.9cN/dtexが好ましい。0.5cN/dtex未満ではプレス台の湾曲面形成の際に糸切れが生じ、0.9cN/dtex超では低伸度化するので湾曲面が形成しにくくなる。
【0016】
被覆弾性糸における鞘糸としては、ナイロン66繊維が好ましい。ナイロン66繊維は耐加水分解性に優れ、さらに融点がナイロン6、ナイロン11、ナイロン12等と比べても高いため、高温の蒸気に対する耐久性が高くプレス機用パッドに好適である。
【0017】
また被覆弾性糸における鞘糸の形態としては、ケン縮加工糸が均一に被覆するので、芯糸を熱から効率的に保護し、セット斑を防止することが出来るので好ましい。
【0018】
被覆弾性糸における鞘糸の巻き付けの形態としては、片方巻きのシングルカバーリング(「SCY」と略す)と、片方巻きの上にさらに逆方向に巻きつけるダブルカバーリング(「DCY」と略す)とがある。なかでも、DCYは被覆性に優れるので芯糸の熱劣化を防止するのに適し、またトルクが無いので操業性も良好な点で好ましい。
【0019】
本発明における、ポリウレタン系繊維を芯糸に有する被覆弾性糸を含む布帛(以下、「本発明におけるストレッチ布帛」とも呼ぶ。)は、前記被覆弾性糸とケン縮加工糸とを交織または交編してなることが好ましい。ケン縮加工糸を組み合わせて用いることにより、耐熱性及び耐加水分解性を向上させることができる。また、通常、弾性繊維ひいては被覆弾性糸は高価であることから、ケン縮加工糸を混用することは経済的にも有利である。
【0020】
前記布帛に用いるケン縮加工糸としては、伸縮性が高く、また耐加水分解性や耐熱性に優れたナイロン66繊維が好ましい。
【0021】
前記布帛に用いるケン縮加工糸のフィラメントの単繊維繊度としては、3〜10dtexが良好なストレッチ性を得る上で好ましい。
【0022】
また、前記布帛に用いるケン縮加工糸の総繊度としては、前記被覆弾性糸とほぼ同等の太さとなるようにすることが好ましい。
【0023】
前記被覆弾性糸の本発明におけるストレッチ布帛に対する混率としては、20〜95質量%が好ましく、より好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜60質量%である。20質量%以上とすることで、本発明におけるストレッチ布帛のストレッチ性や弾性が高くなりプレス性能が向上する。一方、ストレッチのパワーが高過ぎると作業性が低下したりプレス機の故障につながるので、80質量%以下とすることが好ましい。
【0024】
本発明におけるストレッチ布帛の組織形態としては、織物でも編物でもよいが、プレス加工において高いストレッチパワーを発現し、生地の型崩れを発生しにくい点で、織物が好ましい。
【0025】
本発明におけるストレッチ布帛の交織の態様としては、前記被覆弾性糸と交織するケン縮加工糸とで、1本交互、1本/2本交互、1本/3本交互などを採用することができる。ストレッチパワーを損なわないという点では、1本交互が好ましい。また、タテ方向とヨコ方向とのパワーバランスから、タテ・ヨコとも同じ構成の配列とするのが好ましい。
【0026】
本発明におけるストレッチ布帛の織物の組織としては、二重織りや三重織りなどの多重組織が好ましい。多重組織は織物がタテ・ヨコ方向にずれにくくしっかりとした構造であり、また、強い押し圧力の下でもストレッチを発現できるからである。
【0027】
また、本発明におけるストレッチ布帛の組織としては、高温の蒸気を直接噴射する表側の面に、耐加水分解性や耐熱性に優れたナイロン66等によるケン縮加工糸がなるべく多く浮き出るような、例えば織物ではサテン組織にすることが好ましい。また編物ではサンドイッチ組織やリバーシブル組織にすることが好ましい。
【0028】
本発明におけるストレッチ布帛には、抗ピル加工、防汚加工、制電加工、平滑加工などを施すのが好ましい。そうすることで、汚れ、目つまり、色やけ、滑りにくさ、などを防ぎ、プレスセットの作業性が向上する。
【0029】
また、本発明のプレス機用パッドにおけるストレッチ布帛のタテ・ヨコ方向の配置としては、プレス台の湾曲部に沿ってストレッチ性が高い方向を配することが好ましい。通常は、ストレッチ織物のヨコ方向がストレッチ性が高いので、湾曲部に沿ってヨコ方向を配することが好ましい。
【0030】
本発明におけるストレッチ布帛を本発明のプレス機用パッドに縫製する縫糸としては、耐加水分解性に優れる点で、ナイロン66繊維からなるものを用いるのが好ましい。
【0031】
次に、本発明のプレス機用パッドを製造する方法について説明する。
【0032】
本発明のプレス機用パッドの製造方法は、熱処理前のポリウレタン系繊維に、下記定義による液中熱セット率が80%以下のものを用いることが重要である。また、下記定義による乾熱中セット率が70%以下のものを用いることが好ましい。
液中熱セット率は、初期長Lの試料を2倍の長さに伸張した状態で圧力釜の液中で130℃で1分間、熱処理し、伸張から解放した状態の長さLから次式により求める。
液中熱セット率={(L−L)/L}×100
乾熱中セット率は、初期長Lの試料を2倍の長さに伸張した状態で乾熱中200℃で1分間、熱処理し、伸張から解放した状態の長さLから次式により求める。
乾熱中セット率={(L−L)/L}×100
かかるポリウレタン系繊維を用いることにより、耐加水分解性、耐熱性に優れたパッドとすることができる。
【0033】
被覆弾性糸は、カバーリング機にて芯糸を鞘糸でカバーリングして得ることができる。
【0034】
カバーリングにおける芯糸のドラフト倍率としては、良好な巻き糸解じょ性を得る上で1.1倍以上が好ましく、さらに経済性を考慮すれば2.5倍以上がより好ましい。一方、その上限値としては、芯糸の破断伸度の85%以下が好ましい。被覆弾性糸としての良好なストレッチ性を得る上で、芯糸のドラフト倍率としてさらに好ましくは3.0〜4.0倍である。
【0035】
芯糸を伸長しつつ、鞘糸を被覆させ、DCYにおいてはさらにその下撚りの鞘糸の上から逆の撚り方向に上撚りを施し、被覆弾性糸とする。
【0036】
製編織したストレッチ布帛の精練、リラックスは40〜98℃の温度が好ましく、さらに70℃前後の温度が好ましい。また、プレセットは、140〜200℃の温度が好ましく、さらに180℃から200℃の温度がストレッチパワーを維持する上で好ましい。また、仕上げ加工における幅出しは有り幅セットで、タテ方向にやや弛緩させながら150〜190℃の温度が好ましく、さらに170℃前後の温度が、ストレッチパワーおよび布帛形態を維持する上で好ましい。
【実施例】
【0037】
[測定方法]
(1)見掛け繊度(弾性繊維の芯糸)
無荷重状態で長さ10cmの試料を10本採取し、質量を量り、平均値を算出した。
【0038】
(2)見掛け繊度(弾性繊維の芯糸以外)
JIS L 1013:1999 8.3.1 A法に基づき、試料を枠周1.125mの検尺機を用いて、0.1cN/dtexの張力で10回巻きしたカセの質量を測定し、平均値を算出した。
【0039】
(3)液中熱セット率
無荷重状態で長さ10cm(L)の試料を10本採取し、試料を2倍の長さに伸張した状態で枠に固定し、圧力釜(オートクレーブ)の液中で、130℃で1分間、熱処理した。さらに枠に固定した状態で、室温で1日、放置した。次に、試料を枠から外し、伸張から解放した状態の長さ(L)を測定し、次式より液中熱セット率をもとめ、10本の平均値を算出した。
液中熱セット率={(L−L)/L}×100
ここに、L:試料の初期長(=10cm)
:熱セット後、伸張から解放した状態の長さ(cm)。
【0040】
(4)乾熱中セット率
無荷重状態で長さ10cm長(L)の試料を10本採取し、試料を2倍の長さに伸長した状態で枠に固定し、乾熱のオーブン中で、200℃で1分間、熱処理した。さらに枠に固定した状態で、室温で1日、放置した。次に、試料を枠から外し、伸長から解放した状態の長さ(L)を測定し、次式より乾熱中セット率をもとめ、10本の平均値を算出した。
乾熱中セット率={(L−L)/L}×100
ここに、L:試料の初期長(=10cm)
:熱セット後、伸張から解放した状態の長さ(cm)。
【0041】
(5)撚数、追撚数
JIS L 1013:1999 8.1.3に基づき、検撚機を用い、つかみ間隔50cmとして、荷重0.1cN/dtexの下で試料を取り付け、撚数または追撚数を10本測定して1m当たりの撚数または追撚数とし、10本の試料の平均値を算出した。
【0042】
(6)織密度
JIS L 1096:1999 8.6.1「織物の密度」に拠って測定した。
試料を平らな台の上に置き、不自然なしわや張力を除いて、織物の異なる5か所のタテ方向2.54cm×ヨコ方向2.54cmにおけるタテ糸およびヨコ糸の本数を数え、それぞれについて平均値を算出し、2.54cmあたりの本数に換算して表した。
【0043】
(7)目付け
JIS L 1096:1999 8.4.2に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した。
【0044】
(8)厚さ(mm)
JIS L 1096:1999に準じて、試料の幅1m当たり10か所について、厚さ測定機を用いて、直径22mmの加圧子による2kPaの加圧下、厚さを落ち着かせるために10秒間待った後に厚さを測定し、平均値を算出した。
【0045】
(9)織物の伸長回復率および応力
JIS L 1096:1999 8.14.2 A法(繰返し定速定伸長法) に準じて測定した。
タテ方向およびヨコ方向のそれぞれについて、試験片を10枚ずつ、採取し、幅の両側から糸を取り除いて幅30mmとした。
引張試験機に、初荷重0.27Nの下で、初期つかみ間隔10cmで試験片を取り付け、引張速度10cm/minで、タテ方向の試験片については初期つかみ間隔の20%、ヨコ方向の試験片については初期つかみ間隔の50%まで伸ばした後で30秒放置し、次に同じ速度でもとの位置まで戻し、放置時間0秒でこれを4回繰り返した。更に同じ速度で伸ばして5回目の荷重−伸び曲線を描き、この曲線から次の式によって伸長回復率を求め、タテ方向およびヨコ方向のそれぞれについて10枚の平均値を算出した。また、タテ方向およびヨコ方向のそれぞれにおける所定の伸ばし長における応力(N)を読み取り、タテ方向およびヨコ方向のそれぞれについて10枚の平均値を算出した。
伸長回復率(%)={(L−L’)/L}×100
ここに、L:所定の伸ばし長(タテ方向は20mm、ヨコ方向は50mm)
L’:5回目の残留伸び(mm)。
【0046】
(10)織物の伸長回復低下率(%)および応力低下率(%)
上記(9)の伸長回復率および応力の測定を、強制熱処理として、蒸気温度130℃で5時間処理後の試料についても測定し、次の式によって伸長回復低下率および応力低下率を求めた。
伸長回復低下率(%)={(E−E)/E}×100
応力低下率(%)={(F−F)/F}×100
ここに、E:原布の伸長回復率(%)
:5時間処理後の伸長回復率(%)
:原布の応力(N)
:5時間処理後の応力(N)。
【0047】
(11)官能評価
スラックス用プレス機(直本工業株式会社製 NP−210L)を用いて、使用蒸気圧力0.5MPaにて、3ヵ月間および6ヵ月間使用したパッドを5人の被験者により官能評価し、判定者数が多いものを代表値とした。
汚れ :スラックスの毛羽付着などの汚れなど
色やけ :高温処理によるパッドの黄変化など
パッド緩み:金枠に張り付けたパッドの垂れ下がる度合い、
中央部の垂れ下がりが水平に対し10mmで使用不可(×)
総合判定 :パッドの緩みをもとに実用可否の評価
〇 使用可能
△ 期間短縮(可能)
× 使用不可。
【0048】
[実施例1]
(芯糸)
オペロンテックス株式会社製ポリウレタン弾性繊維“ライクラ”(登録商標)タイプT−127、繊度116dtexの糸を芯糸として用いた。尚、タイプT−127は実施例2で用いたタイプT−178Cに比べ熱セット性が低い(耐熱性が高い)。
【0049】
(鞘糸)
東レ株式会社製ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸“テトロン”(登録商標)ウーリー糸、繊度84dtex、フィラメント数24本を鞘糸として用いた。
【0050】
(被覆弾性糸)
カバーリング機(片岡機械(株)製 SSD−230)を用いて、上記芯糸を3.3倍にドラフトし、下撚数1200回/m(Z方向)、上撚数500回/m(S方向)で上記鞘糸でダブルカバリング加工し、被覆弾性糸を製造した。
【0051】
(交織用ケン縮加工糸)
東レ株式会社製ポリアミド(ナイロン66)仮撚加工糸“プロミラン”キング、繊度78dtex、フィラメント数24本を2本合撚して繊度156dtexとしたものを交織用ケン縮加工糸とした。
【0052】
(製織)
タテに上記被覆弾性糸と上記ケン縮加工糸を1本交互に、ヨコに同じく上記被覆弾性糸と上記ケン縮加工糸を1本交互に配列し、タテ糸の織密度が173本/2.54cm、ヨコ糸の織密度が185本/2.54cmインチにて図1に示すようなタテ・ヨコ3重組織の織物を製織した。
【0053】
(仕上げ加工および後加工)
得られた織物に対し、40〜70℃にて精練・リラックス処理し、乾熱温度130〜140℃にて乾燥した後、190℃の温度にてプレセットをおこない、さらに、抗ピル加工を施した。その後、170℃の乾熱にて仕上げセット加工を行った。
【0054】
得られたストレッチ織物を縫製し、スラックス用のプレス機パッドとして取り付け評価した。
【0055】
[実施例2]
(芯糸)
オペロンテックス株式会社製ポリウレタン弾性繊維“ライクラ” (登録商標)タイプT−178C、繊度116dtexの糸を芯糸として用いた。尚、タイプT−178Cは実施例1で用いたタイプT−127に比べ熱セット性が高い(耐熱性が低い)。
【0056】
(鞘糸)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0057】
(被覆弾性糸)
上記の芯糸および鞘糸を用い、実施例1と同様にして、被覆弾性糸を製造した。
【0058】
(交織用ケン縮加工糸)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0059】
(製織)
タテに上記被覆弾性糸と上記ケン縮加工糸を1本交互に、ヨコに同じく上記被覆弾性糸と上記ケン縮加工糸を1本交互に配列し、タテ糸の織密度が171本/2.54cm、ヨコ糸の織密度が180本/2.54cmインチにて図1に示すようなタテ・ヨコ3重組織の織物を製織した。
【0060】
(仕上げ加工および後加工)
得られた織物に対し、実施例1と同様に、精練・リラックス処理、プレセット、抗ピル加工、仕上げセット加工を施した。
【0061】
得られたストレッチ織物を縫製し、スラックス用プレス機パッドとして取り付け評価した。
【0062】
[比較例1]
(芯糸)
ポリエステル系弾性繊維、繊度98dtexの糸を芯糸として用いた。
【0063】
(鞘糸)
ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸、繊度88dtex、フィラメント数24本を鞘糸として用いた。
【0064】
(被覆弾性糸)
上記の芯糸および鞘糸を用い、実施例1と同様にして、被覆弾性糸を製造した。
【0065】
(交織用ケン縮加工糸)
ポリアミド(ナイロン66)仮撚加工糸、繊度162dtex、フィラメント数26本の単糸を交織用ケン縮加工糸とした。
【0066】
(織物製造)
タテに上記被覆弾性糸と上記ケン縮加工糸を1本交互に、ヨコに同じく上記被覆弾性糸と上記ケン縮加工糸を1本交互に配列し、図1に示すようなタテ・ヨコ3重組織の織物を製織した。
【0067】
(仕上げ加工)
得られた織物に対し、実施例1と同様に、精練・リラックス処理、プレセット、抗ピル加工、仕上げセット加工を施した。
【0068】
得られたストレッチ織物を縫製し、スラックス用プレス機パッドとして取り付け評価した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
表2中において、「原布/5時間処理」とは、未使用パッドを用いて、0.5m×0.5mの金枠に中央部が垂れ下がらないよう貼り付け、この金枠を水平状態で130℃×5時間の連続蒸気処理の強制熱処理を施し、風乾する処理を施さないもの/施したものである。ポリウレタン系弾性繊維を用いた実施例1はポリエステル系弾性繊維を用いた比較例1に比べて、伸長回復低下率および応力低下率が小さく、パッドにおいて蒸気処理による耐久性が優れている。
【0072】
【表3】

【0073】
表3中において、「3ヶ月」、「6ヶ月」とは、評価までの使用期間を表す。実施例1は6ヶ月間の使用に耐えることが出来るが、比較例1はパッド緩みが生じ6ヶ月ですでに使用不可となり、実用評価においても実施例1の耐久性に劣っている。また、実施例2では弾性糸の耐熱性が低いので、耐久性が低い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】プレス機用パッドの織物組織図の一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン系繊維を芯糸に有する被覆弾性糸を含む布帛を有してなることを特徴とするプレス機用パッド。
【請求項2】
前記被覆弾性糸の鞘糸がナイロン66繊維である、請求項1記載のプレス機用パッド。
【請求項3】
前記布帛が前記被覆弾性糸とケン縮加工糸とを交織または交編してなる、請求項1または2記載のプレス機用パッド。
【請求項4】
前記被覆弾性糸の前記布帛に対する混率が20〜95質量%である、請求項1〜3のいずれか記載のプレス機用パッド。
【請求項5】
前記布帛の組織が多重組織である、請求項1〜4のいずれか記載のプレス機用パッド。
【請求項6】
熱処理前のポリウレタン系繊維に下記定義による液中熱セット率が80%以下のものを用い、染色仕上げ加工を含む工程を経て請求項1〜5のいずれか記載のプレス機用パッドとすることを特徴とするプレス機用パッドの製造方法。
液中熱セット率は、初期長Lの試料を2倍の長さに伸張した状態で圧力釜の液中で130℃で1分間、熱処理し、伸張から解放した状態の長さLから次式により求める。
液中熱セット率={(L−L)/L}×100
【請求項7】
前記熱処理前のポリウレタン系繊維の下記定義による乾熱中セット率が70%以下である、請求項6記載のプレス機用パッドの製造方法。
乾熱中セット率は、初期長Lの試料を2倍の長さに伸張した状態で乾熱中200℃で1分間、熱処理し、伸張から解放した状態の長さLから次式により求める。
乾熱中セット率={(L−L)/L}×100

【図1】
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【公開番号】特開2008−184708(P2008−184708A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19010(P2007−19010)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】