説明

プレス用の液圧式精密カッターヘッドおよびこの精密カッターヘッドの送り方法

【課題】プレス用の液圧式精密カッターヘッドおよびこの精密カッターヘッドの送り方法を提供する。
【解決手段】動作めねじ12を有する、上下軸線HU回りに回転可能な調節ナット6と、主要シリンダ10の頭部41に配置されかつ調節ナットの動作めねじによって軸方向遊びをもって案内されている動作おねじ13とからなる調節機構を備え、動作ねじがねじの軸方向遊びを除去または解除するために、調節圧力に調整された液圧系の液体を供給するための通路に接続されていることと、ラムに対する主要シリンダの送りが液圧モータとブレーキ59の作動および停止によって調節可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定盤を支持し昇降運動を行うラムの上方において、ラムの上下軸線に対して軸方向に一直線に並ぶように、プレスの機械フレームに載置された頭上部材内に保持されている、機械式プレス、特に精密切断プレスのための液圧式精密カッターヘッドに関し、さらに詳しくは、頭上部材に挿入され管状に形成されたフランジの部分を備え、フランジのつばがねじ連結部によって頭上部材のラム寄りの側に回転しないように固定され、さらに管状部分内に同心的に差し込まれた主要シリンダと、この主要シリンダ内に配置されたピストンおよびピンとを備え、主要シリンダがカバーによって圧密に閉鎖されているかまたは主要板によって閉鎖され、さらに予め設定された圧力に調節された液体を主要シリンダに供給するための液圧系を備えている、液圧式精密カッターヘッドに関する。
【0002】
本発明はさらに、精密カッターヘッドの主要シリンダ内を案内される、押圧力および/または変形力を生じるためのピストンおよびピンが、液圧系の高圧源からの圧液の調節可能な圧力によって付勢され、プレスラムが機械的にまたは液圧的に駆動される、プレス、特に精密切断プレスの液圧式精密カッターヘッドを送るための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1から、カッターピストンと、薄板工作物をプレステーブルに押し付けるプレスピストンと、打ち抜くべき工作物部分を支持するカウンターピストンとを備えた精密切断プレスが知られている。この切断プレスの場合、当接フランジを調節するための調節スピンドルがプレスヘッド内に装着されている。この当接フランジは上方への可動枠の昇降運動を制限する。可動枠の下側の昇降運動制限当接は、互いに嵌合するねじ付きシリンダの回転によって調節される。ねじ調節の微調節は手動輪を用いウォームを介して、外側のねじ付きシリンダの下側に直接取付けられた歯車によって行われる。一方、急速調節のために、電動機が設けられている。この電動機は2個のかさ歯車を介してウォームを駆動する。
【0004】
このカッターヘッドの公知の高さ調節は、手動操作に起因して、ヘッドの高さ位置に関する十分な調節精度および送り精度をもたらすことができない。さらに、調節の繰り返し精度が悪く、それによって精密切断部品の品質が悪いという欠点がある。他の欠点は、切断運転中に、当然存在するシリンダ間の軸方向遊びによってスピンドル回転を排除することができないことにある。
【0005】
他の公知の解決策は、上型とラムの間の間隔を調節するために、押し込みくさび装置(特許文献2)または液圧操作シリンダ(特許文献3)が使用される。この上型はプレスのラムに固定され、そしてプレステーブルに固定された下型と協働する。上記の公知解決策は切断ピストンと刃形リングピストンと刃形リングピンが協働するため精密切断プレスには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第1279622A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2039644A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19822436A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術において、本発明の根底をなす課題は、切断運転中の調節要素間の軸方向遊びを確実に防止し、持続運転時の運転信頼性の改善と同時に、高い送り精度および繰り返し精度を保証するのに適した、プレス用液圧式精密カッターヘッドおよびこの精密カッターヘッドを送るための方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する冒頭に述べた種類の精密カッターヘッドと、請求項15に記載の特徴を有する方法によって解決される。
【0009】
本発明に係る精密カッターヘッドと方法の有利な実施形は従属請求項から推察可能である。
【0010】
本発明に係る解決策は、精密カッターヘッドを送るための調節機能をヘッドの既存の機能要素に統合するという認識、すなわち動作めねじを有する、ラムの上下軸線回りに回転可能な調節ナットと、この調節ナットの端面に摩擦連結的に固定されかつ上下軸線に対して垂直に配置されたスプロケットと、頭上部材に保持された、駆動軸を有する液圧モータと、この液圧モータの駆動軸とスプロケットに巻き掛けられた駆動チェーンと、駆動軸に送ることができるブレーキと、主要シリンダの頭部に取付けられた動作おねじとからなる送り機構を設けるという認識から出発している。主要シリンダのこの動作おねじは、調節ナットの動作めねじによって軸方向遊びをもって案内され、この場合動作ねじは、ねじ間の軸方向遊びを除去または解除するために、ロック圧力またはロック解除圧力に調整された液圧系の液体を供給および排出するための共通の通路を介して接続されている。ピストンとピンの圧力付勢が解除されるや否や、ラムに対する主要シリンダの送りが液圧モータの停止とブレーキの作動によって達成される。
【0011】
調節ナットが、段差部を有する、ラムとは反対側の頭上部材の壁領域に軸方向において固定され、かつフランジの管状部分によってラムの昇降運動に逆らって保持されていることがきわめて重要である。これは、精密カッターヘッドの部品の数と質量を低減することを可能にする。
【0012】
本発明に係る精密カッターヘッドのきわめて有利な実施形によれば、動作ねじに液体を供給するための通路が、管路とこの管路を開閉するための切換え可能な方向制御弁を介して低圧液圧系に接続されている。それによって、ピストンおよびピンへの押圧力または変形圧力の作用に依存して、調節機構の動作ねじを適切にロックし、圧力が低下した際に動作ねじを再び解放することができる。換言すると、動作ねじ間の遊びが解除され、かつ精密切断過程または変形過程によって送りが所望されるときに常に、圧液が液圧モータに供給される。調節機構に作用するロック圧力は例えば、方向制御弁を予備制御することによって、例えば65バールの低圧に調節することが可能である。
【0013】
さらに、頭上部材と調節ナットが少なくとも1つの通路を備え、この通路が動作ねじに潤滑剤を供給するために動作ねじに開口していると有利である。それによって、調節ナットの円滑な動きが保証される。フランジの管状部分内には、動作ねじから潤滑剤を排出するための少なくとも1つの他の通路が設けられている。それによって、通路に接続されかつ潤滑剤タンクに接続されたそれぞれ1本の管路を介して、動作ねじを連続的に潤滑することができる。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、調節ナットと主要シリンダの動作ねじが鋸歯ねじとして形成されている。この鋸歯ねじは、ロック圧力下にある圧液によって軸方向に付勢する際に片側からの安定した負荷を許容し、それによって主要シリンダの動作ねじが調節ナットの動作ねじに押し付けられ、この調節ナットの動作ねじが頭上部材の段差部に押し付けられる。その際、すべての嵌め合い遊びが除去され、調節機構は押しのけ圧力または作動圧力が加わるときにロックされる。
【0015】
本発明に係る精密カッターヘッドの他の有利な実施形態では、液圧モータが予め制御される比例弁を介して、高圧液圧系に接続された供給管路および排出管路に接続され、この比例弁を用いて予め選択可能な所定の調節圧力に調節することによって、液圧モータの回転数が調整可能である。
【0016】
液圧モータに作用連結されているブレーキが、ブレーキを作動および停止するために、切換え可能な方向制御弁を介してかつ管路によって、低圧液圧系に接続されている。それによって、本発明に係る精密カッターヘッドの、位置精度の高い正確な送りが可能となる。
【0017】
本発明の他の有利な実施形態では、駆動チェーンが中空ピンチェーンである。この中空ピンチェーンが調節ナット上のスプロケットに係合すると合目的である。この場合、スプロケットには少なくとも1個の他のスプロケットが付設可能であり、このスプロケットの回転軸線が調節ナットのスプロケットに対して平行にずらして、頭上部材に支持された板上に配置されている。スプロケットが一平面内において互いに一直線に並んで水平に配置されているので、中空ピンチェーンのねじれのない駆動が保証される。
【0018】
本発明に係る他の有利な実施形態では、ラム寄りの主要板上に、接触感知テーブルが保持ピンによって相対回転しないように配置され、この保持ピンがフランジの管状部分の穴内を上下軸線に対して軸線平行に案内されている。
【0019】
特に精密切断過程にとって有利な本発明に係る精密カッターヘッドの実施形態では、環状刃を加工すべき工作物に押し付けるための刃形リングピストンと、刃形リングピストンを同軸に支持する複数の刃形リングピンと、主要板と接触感知テーブルの間に設けられた昇降変位を検出するための接触感知ピストンとが、互いに上下軸線に沿って主要シリンダ内に収容されている。
【0020】
本発明に係る精密カッターヘッドの他の実施形態では、上下軸線に対して同軸に刃形リングピンを支持する押圧板が主要板内に配置され、この押圧板内に、中央支持部材が上下軸線と一直線に並べて設けられ、押圧板が保持リングによって接触感知テーブルに保持されている。
【0021】
本発明の課題はさらに、次のステップを有する方法によって解決される。
a 動作ねじの間の軸方向遊びを取り除くために、調節機構に通じる通路を経て、ロック圧力に調節された液体を持続的に軸方向に供給することにより、押圧力および変形力を加える間に、精密カッターヘッドの頭上部材内で上下軸線回りに回転可能な調節ナットと主要シリンダの動作ねじからなる調節機構をロックし、
b 通路を遮断することによってロック圧力を遮断することにより、押圧力および変形力の作用を終了させた後で、両動作ねじをロック解除し、
c 主要シリンダが予め選択した送り位置に関してその位置に達するまで、モータによって駆動されるチェーンを介して調節ナットに固定されたスプロケットを回転させることによって調節機構を操作するために、調節圧力に調節された液体を液圧モータに供給し、
d 精密カッターヘッドの調節位置を固定保持するために、駆動圧力に調節された液体の供給を遮断しかつ調節圧力から制動圧力に調節された液体を供給することによって、モータを停止し、
e ステップaによる動作ねじのロックのために、ロック圧力を調節機構に新たに作用させる。
【0022】
本発明に係る精密カッターヘッドは機械的に駆動されるプレスだけでなく、液圧プレスにも適している。調節手段を精密カッターヘッドに一体化することにより、切断運転中の調節要素間の軸方向遊びを確実に防止し、持続運転時の運転信頼性の改善と同時に、高い送り精度および繰り返し精度を保証することができる。
【0023】
本発明の他の効果および詳細は、添付の図を参照した次の記載から明らかになる。
【0024】
次に、実施形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】プレスの頭上部材内に取付けられた本発明に係る精密カッターヘッドを備えたプレスの斜視図である。
【図2】本発明に係る精密カッターヘッドの引っ込んだ状態の断面図である。
【図3】本発明に係る精密カッターヘッドの繰り出した状態の断面図である。
【図4】本発明に係る精密カッターヘッドの繰り出した状態の、図1の平面図である。
【図5】圧液を調節機構の動作ねじに供給するための通路を示す、図4の線A−Aに沿った断面図である。
【図6】液圧モータと中空ピンチェーンを備えた調節機構の斜視図である。
【図7】スプロケットを備えた液圧モータの平面図である。
【図8】ヘッド調節部の液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、機械的に駆動されるトグルレバー構造の精密切断プレスの斜視図である。定盤を支持するこのプレスのラム1は上下軸線HU方向におよびプレスの頭上部材2の方へ昇降運動を行う。プレスの頭上部材2内には、本発明に係る精密カッターヘッド3が上下軸線HUと一直線に並んで配置されている。
【0027】
図2は本発明に係る精密カッターヘッド3の断面図である。精密カッターヘッド3は頭上部材2の収容部内にコンパクトな構造ユニットとして挿入され、そこに形状連結的に固定されている。本発明に係る精密カッターヘッド3は調節ナット6とスプロケット7と液圧モータ8と回転センサ4と駆動チェーン9と主要シリンダ10とからなる調節機構11(図6参照)を備えている。上下軸線HUの回りに回転可能な調節ナット6と、上下軸線HUに沿って摺動可能な主要シリンダ10は、フランク角が互いに適合した鋸歯ねじの形をした動作ねじ12、13を備えている。この動作ねじが上下軸線HUに対して同軸的に互いにかみ合っているので、調節ナット6の回転時に主要シリンダ10はラム1に関して引っ込んだ位置から繰り出した位置(図3参照)にもたらすことが可能である。換言すると、主要シリンダはラム1に対してその高さ位置を調節可能である。
【0028】
頭上部材2は上下軸線HUの方向に突出する階段状の段差部15を備えている。この段差部は頭上部材2の内壁14の頭上側およびラムと反対側に形成されている。この段差部15には、調節ナット6が軸方向において支持されている。この調節ナットの外側輪郭は階段状の段差部15に適合している。調節ナット6の下側の端面16、すなわちラム1の方にある端面は、頭上部材2内に挿入されたフランジ19の管状部分18の端面17に支持されている。それによって、調節ナット6はラムとは反対側でもラム寄りの側でも軸方向に保持されている。
【0029】
フランジ19のつば20は図3に示すように、ラム寄りの側がねじ連結部21によって頭上部材2の端面に固定されている。フランジ19のつば20には、直径方向に向き合う2つの穴22が設けられている。この穴は上下軸線HUに対して平行に管状部分18の内部に形成されている。この穴22はピン状の回転防止部材23を収容する働きをする。この回転防止部材は主要シリンダ10を閉鎖する主要板24を軸方向に案内する。回転防止部材23の端面25はねじ連結部によって固定されている。
【0030】
主要シリンダ10内には、刃形リングピストン27と接触感知ピストン28が互いに軸方向に整列して収容されている。刃形リングピストン27は主要シリンダ10に機械的に当接している。接触感知ピストン28は刃形リングピストン27に対して形状連結的に液圧連結されている。刃形リングピン29が主要板24を貫通し、刃形リング押圧板30に支持されている。この刃形リング押圧板は接触感知テーブル26に固定された刃形リング保持リング31によって保持されている。主要板24には、技術相の間工具を支持する中央支持部32が保持されている。
【0031】
主要シリンダ10は頭側が刃形リングカバー33によって圧密に閉鎖されている。調節ナット6の上側端面34にはスプロケット7が摩擦連結的に固定されている。このスプロケット7は駆動チェーン9、例えば中空ピンチェーンと液圧モータ8を介して、調節ナット6を、上下軸線HUに一致するその軸線回りに回転させる。この駆動装置の構造は段落番号0038に記載されている。
【0032】
フランジ19の管状部分18は上下軸線HU寄りのその内壁38に、上下軸線HUの方向に突出する階段状の上側の段差部39と、この段差部39の下方に配置されかつ上下軸線HUの方向に突出する他の段差部40とを有する。その際、上側の段差部39は段差部40と比べてはるかに大きな段差部高さHを有するので、管状部分18の内壁38は、主要シリンダ10を摺動支持するための、高さ方向にずらした2つの軸方向支持面M1、M2に分割されている。
【0033】
主要シリンダ10の頭部41の動作おねじ13は、調節ナット6の動作めねじ12の全長にわたって延在している。この場合、主要シリンダ10の頭部41の動作おねじ13は、上下軸線HUの方向において後方にずれた、主要シリンダ10の外壁42の上側段差部43のところで終わっている。外壁42は上下軸線HUの方向において動作おねじ13よりも後方にずれた他の下側段差部44を有するので、主要シリンダ10の外壁42には、管状部分18の外周面M1、M2に摺動支持するための、互いに高さ方向にずれた2つの支持面M3、M4が生じる。
【0034】
調節機構11の動作ねじ12、13は図2に示すように引っ込んでいるので、動作ねじ12、13の下方には自由空間45が生じる。この自由空間は管状部分18の上側段差部39と、動作ねじ13に付設された、主要シリンダ10の外壁42の上側段差部43と、内壁38または外壁42の対応する領域とによって画成されている。この自由空間45は管状部分18の壁内の通路46と、頭上部材2の壁内の通路47を介して、それ以上図示していない潤滑系のタンクに潤滑剤を排出するための管路48に接続されている。通路46、47の上方において、他の通路49が頭上部材2の壁を通過し、通路50が調節ナット6の壁を通過している。この通路50は潤滑剤を供給するために調節ナット6の動作ねじ12に開口している。通路49は管路51に接続され、この管路を介して潤滑剤がポンプによって動作ねじ12、13に供給可能である。
【0035】
主要シリンダ10はその軸方向支持面M3、M4によって管状部分18の軸方向支持面M1、M2に支持されている。主要シリンダ10の外壁42の下側段差部44と、管状部分18の内壁38の下側段差部40の間には、軸方向に延在する狭い自由空間52が生じる。この自由空間52内に供給通路54が案内されている。この供給通路は供給管路61を介して低圧液圧系の圧力管路53に接続されている。供給通路54は頭上部材の壁と管状部分18の壁を貫通している。圧力管路53は方向制御弁55(図8参照)を介して液圧系に接続されている。この方向制御弁は、液圧系の圧力を、動作ねじ12、13をロックするのに十分なオーダーの圧力に低下させる。
【0036】
図3には、動作ねじ12、13が繰り出された状態の本発明に係る精密カッターヘッド3が示してある。主要シリンダ10は調節ナット6の回転によってその外壁42の上側段差部43が管状部分18の内壁38の上側段差部39まで移動し、段差部39に対して所定の間隔をおいて保持される。プレスのラム1に対する精密カッターヘッド3の最大送り高さは、液圧モータ8の回転センサ4によって測定される。そして、主要シリンダ10は接触感知テーブル26と共に精密切断板24を適当な値だけラム1の方へ調節する。
【0037】
図4と5は供給通路56の位置を示している。面40、44が自由空間52を介して反対方向に液圧的に押されるので、方向制御弁55によって調節された圧液のロック圧力は主要シリンダ10の動作ねじ13を調節ナット6の動作ねじ12に押し付けることができる。これは動作ねじをロックすることになる。
【0038】
図6と7は、頭上部材2に固定した液圧モータ8と駆動チェーン9、例えば中空ピンチェーンと回転センサ4とを有する本発明に係る精密カッターヘッドの頭部に設けた調節機構を示している。調節ナット6の端面34上に設けられたスプロケット7の平面においてプレスの頭上部材2内に配置された板57上には、2個のスプロケット35が並べて配置されて、互いに平行な軸B回りに回転可能に軸承されている。駆動チェーン9はスプロケット7、35周りにねじれないように巻き掛けられている。液圧モータ8は供給管路62と比例弁37を介して高圧下の液圧系に接続されている。排出管路58は比例弁37を介して液圧モータ8とタンク管路53を接続する。スプロケット35の軸にはブレーキ59が作用する。このブレーキは供給管路60と方向制御弁55を介して液圧系に接続されている。
【0039】
図8を参照して本発明に係る方法の経過を詳しく説明する。液圧系は圧力管路62とタンク管路53とからなっている。この圧力管路は図示していない圧力源によって65バールの圧力をかけられている。圧力管路62は比例弁37を経て液圧モータ8に通じている。比例弁37は予備調節可能な目標圧力に予備制御され、圧液の供給圧力を、調節ナット6のための0〜250バール、特に220バールの調節圧力に調節する。比例弁37は遮断中央位置を有する4/3方向制御弁として形成されている。従って、詳しく後述する動作ねじ12、13のロックが解除され、ラム1に対する本発明に係る精密カッターヘッド3の新たな送りを行うべきであるときに、液圧モータ8は常に遮断機能から開放機能へ切換え可能である。本発明に係る精密カッターヘッド3の予め定めた送り位置が達成されるや否や、比例弁37は再び閉鎖位置に切換えられ、それによってブレーキ59は新たな位置を固定保持する。これはブレーキ59を操作する方向制御弁55の開放によって行われる。
【0040】
液圧系の圧力管路60から供給管路53が分岐している。この供給管路は方向制御弁55と、フランジ19と管状部分18の壁内の通路54と、通路56とを経て圧液を自由空間52に案内する。この自由空間は圧液を調節機構11に供給する。方向制御弁55が圧液を通過させるので、動作ねじ12、13の確実なロックが保証される。刃形リング押圧力および/または変形押圧力が作用している間、動作ねじがロックされたままであるので、ラムに対する精密カッターヘッド3の送り高さの調節は不可能である。
【0041】
本発明に係る方法は次のように行われる。ナット6の動作ねじ12と主要シリンダ10の動作ねじ13は、押圧力および変形力を加える間、ロック圧力に調節された圧液を持続的に供給することによって軸方向に液圧的にロックされる。押圧力と変形力を加え終わった後で両動作ねじが圧液の停止または遮断によってロック解除されるので、調節機構の動作ねじは運動遊びを有する。一方の動作ねじ、すなわち主要シリンダの動作ねじの運動自由度が生じるや否や、液圧モータ8が運転させられる。この液圧モータは、主要シリンダ10が回転センサ4を用いてラム1に対して予め定めたその位置に達するまで、スプロケット7と駆動チェーン9を介して調節ナット6の動作ねじ12を回転させる。液圧モータ8は圧液の遮断によって停止され、液圧モータ8の駆動軸はブレーキ59によって停止する。動作ねじ12、13のためのロック圧力が新たに接続されて供給されるので、刃形リング押圧力および/または変形圧力が作用する際、動作ねじは力特性曲線上で全く遊びがない。
【符号の説明】
【0042】
1 ラム
2 プレスの頭上部材
3 精密カッターヘッド
4 液圧モータ8に設けた回転センサ
6 調節ナット
7 スプロケット
8 液圧モータ
9 駆動チェーン
10 主要シリンダ
11 調節機構
12 調節ナットの動作ねじ
13 主要シリンダの動作ねじ
14 頭上部材の内壁
15 内壁14に設けた階段状の段差部
16 調節ナット6の端面
17 管状部分18の端面
18 フランジ19の管状部分
19 フランジ
20 フランジ19のつば
21 ねじ連結部
22 フランジ19の穴
23 回転防止部材
24 主要板
25 回転防止部材23の端面
26 接触感知テーブル
27 刃形リングピストン
28 接触感知ピストン
29 刃形リングピン
30 刃形リング押圧板
31 刃形リング保持リング
32 中央支持部
33 刃形リングカバー
34 調節ナット6の上側端面
35 画のスプロケット
37 比例弁
38 管状部分18の内壁
39 内壁の階段状の上側段差部
40 内壁の階段状の下側段差部
41 主要シリンダ10の頭部
42 主要シリンダ10の外壁
43 外壁42の上側段差部
44 外壁42の下側段差部
45 自由空間
46 管状部分18の壁内の通路
47 頭上部材の壁内の通路
48 潤滑剤を排出するための管路
49、50 潤滑のための通路
51 通路49のための管路
52 自由空間
53 タンク管路または供給管路
54 自由空間52に通じる供給通路
55 方向制御弁
56 動作ねじに通じる通路
57 板
58 排出管路
59 ブレーキ
60 ブレーキ用の供給管路
61 供給管路
62 高圧側液圧系の圧力管路および液圧モータ用供給管路
H 上側段差部39の段差部の高さ
HU ラム1の上下軸線
M1〜M4 軸方向支持面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤を支持し昇降運動を行うラム(1)の上方において、ラムの上下軸線(HU)に対して軸方向に一直線に並ぶように、プレスの機械フレームに載置された頭上部材(2)内に保持されている、機械式プレス、特に精密切断プレスのための液圧式精密カッターヘッドであって、頭上部材(2)に挿入され管状に形成されたフランジ(19)の部分(18)を備え、フランジのつば(20)がねじ連結部(21)によって頭上部材(2)のラム寄りの側に回転しないように固定され、さらに管状部分(18)内に同心的に差し込まれた主要シリンダ(10)と、この主要シリンダ(10)内に配置されたピストン(27、28)およびピン(29)とを備え、主要シリンダ(10)がカバー(33)によって圧密に閉鎖されているかまたは主要板(24)によって閉鎖され、さらに予め設定された圧力に調節された液体を主要シリンダ(10)に供給するための液圧系を備えている、液圧式精密カッターヘッドにおいて、
動作めねじ(12)を有する、上下軸線(HU)回りに回転可能な調節ナット(6)と、この調節ナット(6)の端面(34)に摩擦連結的に固定されかつ上下軸線(HU)に対して垂直に配置されたスプロケット(7)と、頭上部材(2)に保持された、駆動軸を有する液圧モータ(8)と、この液圧モータ(8)の駆動軸とスプロケット(7)に巻き掛けられた駆動チェーン(9)と、駆動軸に送ることができるブレーキ(59)と、主要シリンダ(10)の頭部(41)に配置されかつ調節ナット(6)の動作ねじ(12)によって軸方向遊びをもって案内されている動作おねじ(13)とからなる調節機構(11)が設けられ、動作ねじ(12;13)が、ねじの軸方向遊びを除去または解除するために、調節圧力に調整された液圧系の液体を供給するための通路(56)に接続されていることと、ラム(1)に対する主要シリンダ(10)の送りが液圧モータ(8)とブレーキ(59)の作動および停止によって調節可能であることを特徴とする精密カッターヘッド。
【請求項2】
調節ナット(6)が、段差部(15)を有する、ラム(1)とは反対側の頭上部材(2)の壁領域に軸方向において固定され、かつフランジ(19)の管状部分(18)によってラムの昇降運動に逆らって保持されていることを特徴とする請求項1に記載の精密カッターヘッド。
【請求項3】
調節ナット(6)と頭上部材(2)が少なくとも1つの通路(50)を備え、この通路が動作ねじに潤滑剤を供給するために動作ねじに開口していることを特徴とする請求項1に記載の精密カッターヘッド。
【請求項4】
フランジ(19)の管状部分(18)内に、動作ねじ(12;13)から潤滑剤を排出するための少なくとも1つの通路(46)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の精密カッターヘッド。
【請求項5】
通路(46、47)がそれぞれ1本の管路(48)によって潤滑剤タンクに接続されていることを特徴とする請求項3または4に記載の精密カッターヘッド。
【請求項6】
調節ナット(6)と主要シリンダ(10)の動作ねじ(12;13)が鋸歯ねじであることを特徴とする請求項1に記載の精密カッターヘッド。
【請求項7】
液圧モータ(8)が予め選択可能な調節圧力を生じるために、予め制御される比例弁(37)を介してかつ供給管路(62)によって、高圧液圧系に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の精密カッターヘッド。
【請求項8】
液圧モータ(8)に作用連結されているブレーキ(59)が、ブレーキ(59)を作動および停止するために、切換え可能な方向制御弁(55)を介してかつ管路(61)によって低圧液圧系に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の精密カッターヘッド。
【請求項9】
液体を供給するための通路(54、56)が、管路(61)とこの管路を開閉するための切換え可能な方向制御弁(55)を介して低圧液圧系に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の精密カッターヘッド。
【請求項10】
駆動チェーン(9)が中空ピンチェーンであることを特徴とする請求項1に記載の精密カッターヘッド。
【請求項11】
スプロケット(7)に少なくとも1個の他のスプロケット(35)が付設され、このスプロケットの回転軸線がスプレケット(7)に対して平行にずらして板(57)上に配置され、スプロケット(7、35)が一平面内において互いに一直線に並んで水平に配向されていることを特徴とする請求項1に記載の精密カッターヘッド。
【請求項12】
ラム(1)寄りの主要板(24)上に、接触感知テーブル(26)が保持ピン(23)によって相対回転しないように配置され、この保持ピンがフランジ(19)の管状部分(18)の穴(22)内を上下軸線(HU)に対して軸線平行に案内されていることを特徴とする請求項1に記載の精密カッターヘッド。
【請求項13】
刃形リングを動かすための刃形リングピストン(27)と、複数の刃形リングピン(29)と、主要板(24)と接触感知テーブル(26)の間で定められた昇降変位を検出するための接触感知ピストン(28)とが、互いに上下軸線(HU)に沿って主要シリンダ(10)内に収容されていることを特徴とする請求項1または12に記載の精密カッターヘッド。
【請求項14】
上下軸線(HU)に対して同軸に複数の刃形リングピン(29)を支持する押圧板(30)が主要板(24)内に配置され、この押圧板内に、押圧板(30)用の中央支持部材(32)が上下軸線(HU)と一直線に並べて設けられ、押圧板(30)が保持リング(31)によって接触感知テーブル(26)に保持されていることを特徴とする請求項13に記載の精密カッターヘッド。
【請求項15】
精密カッターヘッドの主要シリンダ内を案内される、押圧力および/または変形力を生じるためのピストンおよびピンが、液圧系の高圧源からの圧液の調節可能な押しのけ圧力または作動圧力によって付勢され、プレスラムが機械的にまたは液圧的に駆動される、プレス、特に精密切断プレスの液圧式精密カッターヘッドを送るための方法において、
a 動作ねじの間の軸方向遊びを取り除くために、調節機構に通じる通路を経て液体を持続的に軸方向に供給することにより、押圧力および変形力を加える間に、精密カッターヘッドの頭上部材内で上下軸線(HU)回りに回転可能な調節ナット(6)と主要シリンダ(10)との動作ねじ(12;13)からなる調節機構(11)をロックし、
b 通路を遮断することによってロック圧力を遮断することにより、押圧力および変形力の作用を終了させた後で、両動作ねじをロック解除し、
c 主要シリンダが予め選択した送り位置に関して予め定めた位置に達するまで、モータによって駆動されるチェーンを介してねじ付きナットに固定されたスプロケットを回転させることによって調節機構を操作するために、駆動圧力に調節された液体を液圧モータに供給し、
d 精密カッターヘッドの調節位置を固定保持するために、駆動圧力に調節された液体の供給を遮断しかつ調節圧力から制動圧力に調節された液体を供給することによって、モータを停止し、
e ステップaによる動作ねじのロックのために、ロック圧力を調節機構に新たに作用させることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−280000(P2010−280000A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126758(P2010−126758)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(507094865)ファインツール・インテレクチュアル・プロパティ・アクチエンゲゼルシャフト (18)
【Fターム(参考)】