説明

プレス装置

【課題】エネルギ効率に優れ、また装置フレーム等のゆがみを生じないプレス装置を提供することである。
【解決手段】プレス装置が、熱盤を覆って該熱盤の周囲に密閉空間を形成するチャンバを有し、チャンバにおいて密閉空間と接する内周面は、断熱材に覆われている。好ましくは、チャンバが、貫通孔を有し該貫通孔内で前記熱盤を保持するプレスフレームと、貫通孔の両端の開口を覆うよう前部及び後部チャンバとを有する。好ましくは、前部チャンバには被加工物を熱盤間に搬入し、或いは該被加工物を加熱プレスすることによって得られる製品を取り出すための開口が設けられ、チャンバは、前部チャンバの開口を覆うための前部チャンバカバーを有する。さらに好ましくは、プレス装置が、前部チャンバカバーを移動させて前部チャンバの開口を開閉するためのカバー駆動機構を更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリプレグ等の樹脂材料を加熱プレスしてプリント配線基板等の製品を成形するために、下記の特許文献1に記載されているもののような、熱盤間で被加工物を加熱プレスするプレス装置が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−301599
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のプレス装置においては、熱伝導や輻射によって熱盤の熱が装置フレーム等、プレス装置の熱盤以外の部分に伝達され、さらにこの熱盤以外の部分から装置系外に放出される。このため、加熱プレスを行う際に被加工物に与える熱よりはるかに多くの熱を熱盤に供給する必要があった。これは、エネルギ効率という観点からは好ましいこととはいえない。
【0005】
また、熱盤の熱が装置フレームに伝達され、熱膨張により装置フレーム等にゆがみが生じる等の問題が発生する可能性がある。このゆがみを抑えるために装置フレーム等に冷却機構を設けることが考えられる。しかしながら、このような構成とすると、冷却機構(冷却水の循環やファンによる強制冷却を行うための機構)を動作させるためのエネルギを必要とする。加えて、装置フレーム等の温度が低くなるために熱盤から装置フレーム等への熱の移動が促進され、熱盤を十分な温度に維持するためのエネルギはより大きなものとなる。すなわち、プレス装置の装置フレーム等に冷却機構を設けた構成は、エネルギ効率という観点からは、冷却機構を設けない構成よりもさらに好ましくないものといえる。
【0006】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、エネルギ効率に優れ、また装置フレーム等のゆがみを生じないプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のプレス装置は、熱盤を覆って該熱盤の周囲に密閉空間を形成するチャンバを有し、チャンバにおいて密閉空間と接する内周面は、断熱材に覆われている。
【0008】
このように、チャンバの内周面が断熱材に覆われているため、輻射、対流等によって熱盤から放出される熱の殆どは断熱材を超えてチャンバの外部に移動することはなく、チャンバ内の密閉空間の温度は比較的熱盤温度に近い高温となる。このため、熱盤から密閉空間内へ移動する熱の量は低く抑えられる。
【0009】
また、チャンバは、貫通孔を有し該貫通孔内で前記熱盤を保持するプレスフレームと、貫通孔の両端の開口を覆うよう前部及び後部チャンバとを有する構成としてもよい。
【0010】
ここで、前部チャンバには被加工物を熱盤間に搬入し、或いは該被加工物を加熱プレスすることによって得られる製品を取り出すための開口が設けられ、チャンバは、前部チャンバの開口を覆うための前部チャンバカバーを有する構成とすることが好ましい。さらに好ましくは、プレス装置が、前部チャンバカバーを移動させて前部チャンバの開口を開閉するためのカバー駆動機構を更に有する。カバー駆動機構は、例えばエアシリンダ機構又は油圧シリンダ機構によって前部チャンバの開口を開閉する。
【0011】
また、プレスフレームには、熱盤を駆動して該熱盤間で被加工物が加熱プレスされるようにする熱盤駆動機構を収容するための凹部が形成されており、凹部の内周面には断熱材が設けられている構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のプレス装置においては、熱盤から放出される熱の量は低く抑えられるようになっている。このため、熱盤を加熱するためのヒータの出力を低く抑えることができ、従来のものよりも、エネルギ効率に優れたプレス装置が実現される。
【0013】
また、本発明のプレス装置は、熱の移動が上記のように制限されているため、プレス装置において密閉空間の外側にある部分(チャンバの外周面等)の温度は熱盤温度に比べて比較的低く、チャンバ自身や、プレス装置の装置フレーム等には、熱膨張や熱応力によるゆがみは殆ど発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の実施の形態のプレス装置の側面図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態のプレス装置のプレスフレームの斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態のプレス装置の前部チャンバの斜視図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態のプレス装置の前部チャンバカバーの斜視図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態のプレス装置の後部チャンバの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態のプレス装置1の側面図である。本実施形態のプレス装置1は、樹脂成形品である製品を得る為に熱盤間で被加工物を加熱プレスする装置である。本実施形態のプレス装置においては、被加工物は図中左側からプレス装置1に搬入され、また、製品は図中左側から取り出される。ここで、以下の説明においては、被加工物(製品)の搬送方向(図中左右方向)を前後方向と定義し、前後方向と直行する水平方向(図1の紙面表から裏に向かう方向)を幅方向と定義する。
【0016】
本実施形態のプレス装置1は、上下方向に並べられた一対のクラウン定盤11及びテーブル定盤12を有する。クラウン定盤11の下面及びテーブル定盤12の上面には、夫々断熱材13を介して上部熱盤21及び下部熱盤22が設けられている。また、上部熱盤21と下部熱盤22の間には、複数の中間熱盤23が設けられている。上部熱盤21、下部熱盤22及び中間熱盤23にはカートリッジヒータが埋め込まれており、各熱盤は被加工物の成形温度以上の温度に加熱されている。なお、各熱盤を加熱する構成としては、上記のようにカートリッジヒータを直接熱盤に埋め込むものに限定されるものではなく、各熱盤に熱媒流路を設け、熱盤の外部で加熱された熱媒をこの熱媒流路に流すことによって熱盤を加熱してもよい。
【0017】
また、プレス装置1は、クラウン定盤11及び中間熱盤23を保持するためのプレスフレーム31を有する。プレスフレーム31は、ベースフレーム51を介して、ベースBに固定されている。すなわち、プレスフレーム31は、ベースフレーム51と共に、プレス装置1の装置フレームとしての機能を有する。プレスフレーム31の斜視図を図2に示す。図2に示されるように、プレスフレーム31は、全体としては直方体形状のブロックであり、その中央には前後方向に沿って形成された矩形の貫通孔31aが形成されている。
【0018】
貫通孔31aの上側の内周面31bには、クラウン定盤11が固定されるようになっている(図1)。また、貫通孔31aの幅方向両側の内周面31cには、中間熱盤23を保持するためのフック状の熱盤保持部(不図示)が設けられており、中間熱盤23はこの熱盤保持部の上に載せられている。これによって、中間熱盤23は図1に示されるように下部熱盤22から浮上した状態で保持される。なお、熱盤保持部は上記のフック状のものに限定されるものではなく、中間熱盤23を着脱可能に保持する他の機構を採用することも可能である。ここで、図1に示されるように、上部熱盤21、中間熱盤23及び下部熱盤22は、略一定の間隔をおいて上下方向に並べて配置される。本実施形態のプレス装置1によって加熱プレスされる被加工物は、上部熱盤21と最上段の中間熱盤23の間、隣接する中間熱盤23の間、及び最下段の中間熱盤23と下部熱盤22との間に複数配置されている。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態のプレス装置1においては、テーブル定盤12を上昇させることによって、熱盤間に配置されている被加工物を加熱プレスするようになっている。すなわち、テーブル定盤12を上昇させると、下部熱盤22と最下段の中間熱盤23との間隔が狭まり、やがて両熱盤間に被加工物が挟み込まれた状態となる。この状態からさらにテーブル定盤12を上昇させると、下部熱盤22によって最下段の中間熱盤23がすくい上げられて下部熱盤22と共に上昇し、下から2番目の中間熱盤23に近接する。このように、テーブル定盤12を上昇させていくと、中間熱盤23が下から順にすくい上げられ、最終的には、全ての熱盤間に被加工物が挟み込まれた状態となる。この状態からテーブル定盤12を上昇させる方向に駆動すると、熱盤間の被加工物は加圧される。図1に示されるように、テーブル定盤12の駆動は、テーブル定盤12の下部に取り付けられている油圧シリンダ41によって行われる。図2に示されるように、貫通孔31aの下側の内周面31dには、油圧シリンダ41を取り付けるための凹部31eが形成されている。
【0020】
プレスフレーム31の貫通孔31aの前側(被加工物が搬入/搬出される側。図1中左側)の開口は、ボルト等でプレスフレーム31に固定されている前部チャンバ32によって覆われている。前部チャンバ32の斜視図を図3に示す。
【0021】
図3に示されるように、本実施形態の前部チャンバ32は、幅方向及び上下方向に沿った4辺を有する長方形形状のプレート部32aと、プレート部32aの上下の辺から後ろ側(被加工物がプレス装置1に向かって搬送される方向。図3においては左下から右上に向かう方向)に突出する上部及び下部フランジ部32b、32cと、プレート部32aの幅方向両側の辺から後ろ側に向かう方向に突出する一対の側部フランジ部32dを有する。上部フランジ部32bと側部フランジ部32d、及び下部フランジ部32cと側部フランジ部32dは、隙間なく接合されており、前部チャンバ32は、全体として盆形状に形成されている。
【0022】
また、前部チャンバ32のプレート部32の略中央には、開口32eが形成されている。プレス装置1によって加熱プレスされる被加工物は、この開口32eを介してプレス装置1の各熱盤(図1)間に挿入される。同様に、被加工物を加熱プレスすることにより得られる製品は、開口32eを介してプレス装置1から取り出される。
【0023】
図1に示されるように、前部チャンバ32の開口32eは、前部チャンバカバー33によって覆われている。前部チャンバカバー33は、カバー駆動機構42によって、上下方向及び前後方向に駆動される。図1に示される状態から、カバー駆動機構42によって前部チャンバカバー33を前側(図中左側)に移動させ、次いで前部チャンバカバー33を下に移動させることによって、前部チャンバ32の開口32eが露出した状態となり、開口32eを介して被加工物の搬入及び製品の取り出しを行うことができるようになる。また、この状態からカバー駆動機構42によって前部チャンバカバー33を開口32eの前まで上昇させ、次いで前部チャンバカバー33を後ろ側(図中右側)に移動させると、前部チャンバカバー33が前部チャンバ32に密着し、開口32eが前部チャンバカバー33に覆われる。なお、カバー駆動機構42は、エアシリンダ機構又は油圧シリンダ機構により、前部チャンバカバー33を駆動する。
【0024】
本実施形態の前部チャンバカバー33の斜視図を図4に示す。図4に示されるように、前部チャンバカバー33は、前部チャンバ32の開口32e(図3)を覆うことができるだけの大きさを有するプレートである。
【0025】
プレスフレーム31の貫通孔31aの後ろ側(被加工物が搬入/搬出される側と反対の側。図1中右側)の開口は、ボルト等でプレスフレーム31に固定されている後部チャンバ34によって覆われている。後部チャンバ34の斜視図を図5に示す。
【0026】
図5に示されるように、後部チャンバ34は、5枚のプレート34b、34cを結合した直方体の箱型形状となっている。この後部チャンバ34の開口34aと反対側のプレート34cによってプレスフレーム31の貫通孔31a(図1)が覆われるように、後部チャンバ34はプレスフレーム31に固定される。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のプレス装置1においては、プレスフレーム31、前部チャンバ32、前部チャンバカバー33及び後部チャンバ34によって、上部及び下部定盤11、12及び熱盤21〜23を密閉する密閉空間S(図1)が形成される(すなわち、プレスフレーム31、前部チャンバ32、前部チャンバカバー33及び後部チャンバ34によって各熱盤及び各定盤を囲むチャンバが形成される)。このため、輻射や対流によって、熱盤21〜23の熱が直接プレス装置1の外部に逃げないようになっている。
【0028】
また、図2〜5に示されるように、プレスフレーム31、前部チャンバ32、前部チャンバカバー33及び後部チャンバ34において、密閉空間Sと接触する部分には、断熱材I(図中斜線部分)が設けられている。この断熱材Iによって、密閉空間Sの熱がプレスフレーム31、前部チャンバ32、前部チャンバ33及び後部チャンバ34を通過してプレス装置1の外部に逃げることが防止される。
【0029】
また、図2に示されるように、プレスフレーム31の凹部31eの内周面にも断熱材Iが設けられている。このため、下部定盤11から油圧シリンダ41に伝導した熱は、プレスフレーム31の外周面側には殆ど伝導しないようになっている。
【0030】
なお、断熱材Iとしては、グラスウールを充填したボード等、耐熱性に優れたものが使用される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態においては、熱盤21〜23からの熱の移動は、プレスフレーム31、前部チャンバ32、前部チャンバカバー33及び後部チャンバ34によって形成される密閉空間Sまでに限定され、プレス装置1の外部には殆ど逃げないようになっている。そのため、被加工物のプレスを行う際に熱盤に加える熱の量を低く抑えることが可能である。
【0032】
また、本実施形態のプレス装置1においては、熱の移動が上記のように制限されているため、プレス装置1において密閉空間Sの外側にある部分(プレスフレーム31の外周面等)の温度は熱盤温度に比べて比較的低く、プレスフレーム31や前部チャンバ32、後部チャンバ34、及びベースフレーム51等には、熱膨張や熱応力によるゆがみは殆ど発生しない。
【符号の説明】
【0033】
1 プレス装置
11 クラウン定盤
12 テーブル定盤
21 上部熱盤
22 下部熱盤
23 中間熱盤
31 プレスフレーム
32 前部チャンバ
33 前部チャンバカバー
34 後部チャンバ
51 ベースフレーム
B ベース
I 断熱材
S 密閉空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱盤間で被加工物を加熱プレスするプレス装置であって、
前記熱盤を覆って該熱盤の周囲に密閉空間を形成するチャンバを有し、
前記チャンバにおいて前記密閉空間と接する内周面は、断熱材に覆われている
ことを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記チャンバは、貫通孔を有し該貫通孔内で前記熱盤を保持するプレスフレームと、前記貫通孔の両端の開口を覆うよう前記プレスフレームに固定される前部及び後部チャンバとを有することを特徴とする請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記前部チャンバには、前記被加工物を前記熱盤間に搬入し、或いは該被加工物を加熱プレスすることによって得られる製品を取り出すための開口が設けられ、
前記チャンバは、前記前部チャンバの開口を覆うための前部チャンバカバーを有する
ことを特徴とする請求項2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記前部チャンバカバーを移動させて前記前部チャンバの開口を開閉するためのカバー駆動機構を更に有することを特徴とする請求項3に記載のプレス装置。
【請求項5】
前記カバー駆動機構は、エアシリンダ機構又は油圧シリンダ機構によって前記前部チャンバの開口を開閉することを特徴とする請求項4に記載のプレス装置。
【請求項6】
前記プレスフレームには、前記熱盤を駆動して該熱盤間で被加工物が加熱プレスされるようにする熱盤駆動機構を収容するための凹部が形成されており、
前記凹部の内周面には断熱材が設けられている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプレス装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−188417(P2010−188417A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151916(P2009−151916)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000242242)北川精機株式会社 (26)
【Fターム(参考)】