説明

プレス装置

【課題】プレス加工運転中のプレス装置が有するエネルギーを有効に利用して発電を行うプレス装置の提供を図る。
【解決手段】駆動源によりフライホイール117の回転を介してプレス成形型Dを往復動してプレス加工を行うプレス装置本体1と、回転駆動されて発電する発電機200と、フライホイール117の回転に伴って運動する運動部材と発電機200と連結して、運動部材の運動により発電機200を回転駆動させる運動伝達機構300とを備えるプレス装置により発電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工運転中のエネルギーを有効利用して発電を行うプレス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、波力等の自然エネルギーを利用した発電装置(特許文献1)や、自動車のエンジン等の振動エネルギーを利用した発電装置(特許文献2)が提案されている。このように、従来有効に利用されなかった大きなエネルギー源を発電に利用する開発が盛んである。
【0003】
運転中に大きなエネルギーを有する装置として、プレス装置が存在する。プレス装置は、例えば板状の被加工物をプレス加工するのに用いられるものであり、被加工物を高速に塑性変形させて所定の形状に加工するため、大きなエネルギーを利用する。プレス装置は、プレス加工に利用するエネルギーを、駆動モータによりフライホイールを回転させ、フライホイールの慣性エネルギーとして十分に蓄積されたエネルギーから得ることにより、被加工物をプレス加工している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−280240号公報
【特許文献2】特開平8−321642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プレス装置は、フライホイールに蓄積された十分な慣性エネルギーの一部をプレス加工に利用しているに過ぎない。また、プレス装置は、プレス加工運転中にかなりの振動を発生するが、プレス加工運転中の振動エネルギーについても特に利用していない。
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、プレス加工運転中のプレス装置のフライホイールに十分に蓄積された慣性エネルギーとプレス加工運転中の振動エネルギーに着目し、プレス加工運転中のプレス装置が有するエネルギーを有効に利用して発電を行うプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、第1の本発明は、駆動源によりフライホイールの回転を介してプレス成形型を往複動してプレス加工を行うプレス装置本体と、回転駆動されて発電する発電機と、フライホイールの回転に伴って運動する運動部材と発電機と連結して、運動部材の運動により前記発電機を回転駆動する運動伝達機構とを備えていることを特徴とする。
【0008】
ここで、上記「フライホイールの回転を介して」とは、プレス成形型の往復動がフライホイールの回転の慣性エネルギーを利用して行われることを意味するものである。また、上記「フライホイールの回転に伴って運動する」とは、フライホイールの回転の慣性エネルギーを利用して運動することを意味するものである。
【0009】
上記運動部材は、プレス装置本体に設けられている、プレス加工運転中に往復動するプレス成形型と反対方向に往復動するバランサ本体とすることができる。
【0010】
ここで、上記「プレス成形型」とは、一対の成形型により構成されるものであり、一方の成形型が他方の成形型に対して相対的に近接離間するように往復動することにより、一対の成形型の間の被加工物をプレス加工するものである。上記「反対方向に往復動」とは、往復動するプレス成形型の移動する方向と常に反対の方向に往復動することを意味するものである。
【0011】
上記運動伝達機構は、バランサ本体の往復動を回転運動に変換して発電機に伝達するクランク機構とすることができる。
【0012】
次に、第2の本発明は、防振機構と、防振機構上に載置されたプレス装置本体と、プレス装置本体のプレス加工によって振動する防振機構の振動部に取り付けられた、振動部と共に振動する押圧手段と、押圧手段の近傍に配置され、押圧手段の振動によって繰り返し押圧されて繰り返し撓むことにより発電する圧電素子とを備えていることを特徴とする。
【0013】
ここで、上記「繰り返し押圧」とは、必ずしも圧電素子を直接押圧する場合に限定されず、圧電素子が取り付けられた金属体等を押圧する場合も含まれる。
【0014】
上記押圧手段は、弾性体を介して圧電素子を繰り返し押圧することが望ましい。
【0015】
ここで、上記「弾性体」は、押圧の衝撃から圧電素子を保護するものであればどのようなものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プレス加工運転中のプレス装置本体のフライホイールに十分に蓄積された慣性エネルギーとプレス装置本体のプレス加工運転中の振動エネルギーを使用して、発電が可能であり、プレス装置本体がプレス加工運転中に有するエネルギーを有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の本発明の第1実施形態の概略図
【図2】第1の本発明の第2実施形態の概略図
【図3】第2の本発明の実施形態の概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、第1の本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1の本発明の第1実施形態の概略図である。
【0019】
本プレス装置1は、プレス装置1の接地面B上に設けられた防振機構400、防振機構400の上に載置されたプレス装置本体100と、プレス装置本体100の上部に配設された発電機200と、プレス装置本体100の一部に取り付けられ、発電機200を回転駆動させる運動伝達機構300とから構成されている。
【0020】
プレス装置本体100は、フレーム110、フレーム110に支持されたドライブ機構120、ドライブ機構120に連結され、プレス加工方向(図中Y方向)にプレス成形型Dの上成形型UDを往復運動させるスライド機構130、ドライブ機構120に連結され、プレス加工方向であって、上成形型UDの移動方向と反対方向にバランサ本体142を往復動するバランサ機構140から構成される。
【0021】
フレーム110は、支持脚を有する下部フレーム111、下部フレーム111上に配設され、プレス成形型Dの下成形型LDが取り付けられるボルスタ112、下部フレーム111上に配設され、ボルスタ112を囲む門型構造の上部フレーム113から構成されている。下部フレーム111は、プレス装置1の接地面Bに載置された防振機構400上に4つの支持脚により支持されている。上部フレーム113は、両側に左右の左右ガイド溝114、左右の左右ガイド溝114に装着され、プレス加工方向と垂直な方向(図中X方向)に滑動自在な滑子115、後述する2つのプランジャ132がプレス加工方向(図中Y方向)に滑動自在に装着される、左右の上下ガイド溝116を有している。フレーム110には、図示しない駆動モータが取り付けられており、該駆動モータには図中一点鎖線で示すフライホイール117が連結されている。
【0022】
ドライブ機構120は、フライホイール117の回転軸と連結されたドライブシャフト121、一端がドライブシャフト121と回転自在に連結され、他端が左右ガイド溝114内の各滑子115と連結ピンPを介して回転自在に連結された2つのコンロッド122から構成されている。
【0023】
スライド機構130は、連結ピンPを介してコンロッド122および滑子115と回転自在に連結された、2つのスライダリンク131、各スライダリンク131と回転自在に連結され、各上下ガイド溝116に装着された2つのプランジャ132、各プランジャ132の他端に固定された、上成形型UDが固定されるスライダ133から構成されている。
【0024】
バランサ機構140は、連結ピンPを介して各コンロッド122および各滑子115と回転自在に連結された、2つのバランサリンク141と、各バランサリンク141と回転自在に連結されたバランサ本体142とから構成されている。
【0025】
ここで、プレス装置本体100のプレス加工動作について説明する。図示しない駆動モータにより回転されるフライホイール117を介してドライブシャフト121が回転する。ドライブシャフト121の回転により、各コンロッド122が、連結ピンPで連結された各滑子115をプレス加工方向と垂直の方向(図中X方向)に滑動させると共に、連結ピンPに接続された、各スライダリンク131および各バランサリンク141を介して各プランジャ132およびバランサ本体142をプレス加工方向(図中Y方向)に移動させる。
【0026】
ここで、バランサ本体142と各プランジャ132は常に反対方向に移動する。上述したように各プランジャ132は、上成形型UDが取り付けられるスライダ133に接続しており、上成形型UDがプレス加工方向に往復動することで、下成形型LDとの間の被加工物Rをプレス加工する。
【0027】
発電機200は、回転軸201を有し、回転軸201を回転駆動することにより発電をするものである。
【0028】
運動伝達機構300は、一端がバランサ本体142と回転自在に接続されたリンク301、リンク301の他端が偏心位置で回転自在に接続されたプーリ302によりクランク機構を構成し、プーリ302の回転を発電機200の回転軸201に伝達するベルト303を有している。ここで、プーリ302からの伝達効率を変更するために、発電機200の回転軸201にもプーリを接続する場合もある。
【0029】
次に、第1実施形態の発電動作について説明する。プレス装置本体100が、フライホイール117の十分に蓄積された慣性エネルギーの一部を利用してプレス加工することにより、バランサ本体142がプレス加工方向に往復動し、バランサ本体142の往復動が上述のクランク機構により回転運動に変換され、ベルト303を介して発電機200の回転軸201が回転される。
【0030】
ここで、プレス加工運転中のプレス装置本体100は、被加工物Rのプレス加工時にエネルギーを必要とし、それ以外には大したエネルギーは必要としていない。したがって、フライホイール117に十分に蓄積されているエネルギーを有効に利用することにより、発電機200を回転駆動させるための新たな駆動源を用いずに発電機200が回転駆動されて発電できる。
【0031】
図2は、第1の本発明の第2実施形態の概略図である。第1実施形態と同一の部材には同一の番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0032】
図2に示すように、第1実施形態のプレス装置1と比較して、第2実施形態のプレス装置1のプレス装置本体100においては、フレーム110は左右ガイド溝114を有さず、上下ガイド溝116が一つであり、ドライブ機構120のコンロッド122およびプランジャ132も一つであり、バランサ機構140も有さない点において相違する。さらに、第2の例のプレス装置1の運動伝達機構300においては、バランサ機構140を有さないことから、運動伝達機構300は新たにアーム304を設けている。アーム304は一端をリンク301と回転自在に連結され、他端をスライダ133に固定されている。
【0033】
第2実施形態の発電動作について説明する。プレス装置本体100が、フライホイール117の十分に蓄積された慣性エネルギーの一部を利用してプレス加工することにより、スライダ133がプレス加工方向に往復動し、スライダ133の往復動がアーム304を介して上述のクランク機構により回転運動に変換され、ベルト303を介して発電機200の回転軸201が回転される。
【0034】
ここで、プレス加工運転中のプレス装置本体100は、被加工物Rのプレス加工時にエネルギーを必要とし、それ以外には大したエネルギーは必要としていない。したがって、フライホイール117に十分に蓄積されているエネルギーを有効に利用することにより、発電機200を回転駆動させるための新たな駆動源を用いずに発電機200が回転駆動されて発電できる。
【0035】
次に、第2の本発明の実施形態について説明する。なお、第2の本発明の実施形態におけるプレス装置本体100は、第1の本発明の第1あるいは第2実施形態におけるプレス装置本体100と同一構成であり、説明を省略する。図3は、第2の本発明の実施形態の概略図である。図3は、理解を容易にするため、プレス装置本体100の支持脚のみを図示している。
【0036】
第2の本発明のプレス装置1は、プレス装置1の接地面B上に設けられた防振機構400、防振機構400の上に載置された、支持脚のみを図示したプレス装置本体100、防振機構400の上部からプレス加工方向と垂直方向(図中X方向)に延出するように取り付けられた押圧手段500、押圧手段500の下方に位置するように設置面B上に設けられた発電手段600から構成されている。
【0037】
防振機構400は、接地面B上に設置されるベースプレート401を有し、ベースプレート401の上面には、ダンパ402と、防振スプリング403と、ストッパ404が設けられている。さらに、防振機構400は、ベースプレート401と並行して、ダンパ402を介してベースプレート401と接続されるトッププレート405を有し、トッププレート405の下面には、防振スプリング調整手段406と、図示しない貫通穴を有するガイドプレート407が設けられている。ガイドプレート407の貫通穴には、ストッパ404が相対的に移動可能に挿入されており、これによりガイドプレート407は、ストッパ404に沿ってプレス加工方向(図中Y方向)に振動可能となっている。スプリング調整手段406は、防振スプリング403の初期撓みを変更できるものである。
【0038】
プレス装置本体100の説明は、上述したように省略する。
【0039】
次に、押圧手段500について説明する。押圧手段500は、トッププレート405からプレス加工方向と垂直な方向(図中X方向)に延出した、貫通穴を有する梁501、梁501に取り付けられた押圧部510から構成されている。
【0040】
押圧部510は、スライドシャフト512、押圧スプリング513、ナット514により構成されている。スライドシャフト512は、一端に頭部512aを有し、他端の一部にネジ部が形成されている。押圧スプリング513に、スライドシャフト512をネジ部側の端から挿入する。さらに、このスライドシャフト512のネジ部側の端を梁501の貫通穴に下方から挿入し、梁501から上方に突出したネジ部にナット514を螺合させる。これにより、押圧部510は、一定の与圧がかけられた状態で、梁501に対して相対移動可能となっている。
【0041】
発電手段600は、接地面B上に設けられた支持体601、支持体601により両端のみ支持された板状の金属体602、金属体602の表面の両面に取り付けられた圧電素子603により構成されている。
【0042】
上記実施形態の発電動作について説明する。防振機構400上に載置されたプレス装置本体100がプレス加工することにより、プレス装置本体100が振動し、この振動によりトッププレート405が上下方向に振動する。トッププレート405が上下方向に振動することにより、トッププレート405と一体化している梁501が上下方向に振動し、梁501に取り付けられた押圧部510の頭部512aが金属体602を下方向に押圧して金属体602を撓ませ、金属体602の撓みに伴って金属体602の表面に取り付けられた圧電素子603が撓む。したがって、プレス加工運転中のプレス装置本体100の振動エネルギーを有効に利用することにより、圧電素子603が撓み発電できる。
【0043】
第1の本発明および第2の本発明により、プレス加工運転中のプレス装置本体100の、フライホイール117に十分に蓄積された慣性エネルギーや振動エネルギーにより発電することで、プレス装置本体100がプレス加工運転中に有するエネルギーを有効に利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 プレス装置
100 プレス装置本体
117 フライホイール
133 スライダ
142 バランサ本体
200 発電機
300 運動伝達機構
301 リンク
302 プーリ
304 アーム
400 防振機構
405 トッププレート
500 押圧手段
513 押圧スプリング
603 圧電素子
D プレス成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振機構と、
該防振機構上に載置されたプレス装置本体と、
該プレス装置本体のプレス加工によって振動する前記防振機構の振動部に取り付けられた、該振動部と共に振動する押圧手段と、
該押圧手段の近傍に配置され、該押圧手段の振動によって繰り返し押圧されて繰り返し撓むことにより発電する圧電素子とを備えていることを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記押圧手段が、弾性体を介して前記圧電素子を繰り返し押圧するものであることを特徴とする請求項1に記載のプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−31881(P2013−31881A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−250932(P2012−250932)
【出願日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【分割の表示】特願2007−263139(P2007−263139)の分割
【原出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(597131440)株式会社和光精機 (4)
【出願人】(507334392)
【Fターム(参考)】