説明

プレバイオティックオリゴ糖6−ケストースを得るための新規フルクトフラノシダーゼ活性

本発明は、プレバイオティックオリゴ糖6−ケストースを得るための新規フルクトフラノシダーゼ活性に関する。本発明の1つの目的は、シュワンニオミセス・オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(特にATCC26077、ATCC7410、ATCC20499からなる群より選択される株)の細胞外インベルターゼに関連した新規トランスフルクトシラーゼ活性であって、食品産業において広く使用されているプレバイオティックオリゴ糖、主として6−ケストースを得るために使用可能である、新規トランスフルクトシラーゼ活性をキャラクタライズすることである。本発明のもう1つの目的は、酵素製品を得るための方法、並びにフルクトフラノシダーゼ活性をもつ実質的に純粋な酵素に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー産業に含まれ、特に、食料品、乳製品、育児食、及び動物用の餌における機能性成分として使用されるためのプレバイオティックオリゴ糖を得るべく供された、食品及び農業部門に含まれる。本発明はまた、医薬及び化粧品産業の分野にも関係する。
【背景技術】
【0002】
炭水化物は、自然界で最も豊富な生体物質であり、非常に多様な産業プロセスにおいて、出発物質として使用されており;それ故、それらの代謝に関与する酵素には、基礎的及び技術的の視点の双方から、多大な興味がもたれている。
【0003】
食品の機能性成分としてのプレバイオティックオリゴ糖の分野は、この数年のうちに劇的に発展してきた。
【0004】
用語、プレバイオティックは、ギブソン(Gibson)及びロバートフロイド(Robertfroid)により導入されたが、彼らはプレバイオティックを、1又は限られた群の細菌の、結腸における増殖及び/又は活性の選択的刺激により、宿主に有益な影響を及ぼす非消化性の食品成分として定義した。
【0005】
欧州市場に対する主要なプレバイオティック分子は、フルクトオリゴ糖(FOS)である(サンギータ(P.T.Sangeetha)、アームズ(M.N.Arms)、プラプーラ(S.G.Prapulla)著、「フルクトイオリゴ糖の微生物産生、分析、及び適用における最近の傾向(Recent trens in microbial production,analysis and application of fructooligosaccharides)、トレンズ・イン・フード・サイエンス・アンド・テクノロジー(Trends Food Sci.techmol.)」、2005年、第16巻、p.442−457)。これまでに記載されたフルクトオリゴ糖には、3つのタイプがある。最も知られているフルクトオリゴ糖(Fシリーズ)は、現在販売されているものであって、β,2−1結合により、一端においてグルコース分子と結合されたフルクトース分子により形成され(ユーン(J.W.Yun)著、「フルクトオリゴ糖:発生、調製、及び適用(Frcutooligosaccharides:Occurrence,preparation and appplication)、エンザイム・アンド・マイクロバイアル・テクノロジー(Enzyme Microb.Technol.)」、1996年、第19巻、p.107−117)、GFと略記され、nは典型的には2と4の間に含まれる(ケストース、ニストース、及びフルクトシルニストース)。第2のタイプ(Fシリーズ)のフルクトオリゴ糖は、フルクトース分子がβ,2−6結合により、非還元末端においてグルコースと結合されており、徹底研究中である。これらのFOS分子は、自然界では通常、高分子量ポリマーの形状(レバン)で検出される。ネオケストースは、フルクトースがスクロース中のグルコース単位へβ,2−6結合により結合されている三糖類であり、Gシリーズの第1の代表である(第3のタイプのFOS)。3つのタイプのFOSは、上部腸管における消化に抵抗性があり、結腸の内在性細菌により代謝される。それらは、ビフィドバクテリアの増殖を刺激する能力を有することが示されてきた(ラオ(A.V.Rao)著、「腸管ビフィズス菌特異効果に対するイヌリン及びオリゴフルクトースの用量反応効果(Dose−response effect of inulin and oligosfructose on intestinal bifidogenic effect)、ザ・ジャーナル・オブ・ニュートリション(J.Nutr.)」、1998年、第80巻、p.1442S−1445S)。FOSは、天然多糖(イヌリン、レバン、その他)の部分加水分解により、或いはスクロースからの酵素合成により取得可能である。双方の方法論により生成される、産物のプロフィール(特に平均重合度に関して)は、かなり異なっており、そのことがそれらの特性に影響を及ぼしている。
【0006】
Fシリーズのフルクトオリゴ糖についての、イヌリンからの加水分解経路によるか、又は、スクロース1−フルクトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.9.)、β−フルクトフラノシダーゼ −インベルターゼ−(EC 3.2.1.26)を用いることによる、及びさらにはレバンスクラーゼ(EC 2.4.1.10)による、合成経路による製造(トルヒージョ(L.E.Trujillo)ら著、「メチロトローフ酵母ピキア・パストリスにおいて発現されるグルコンアセトバクター・ジアゾトロフィクスのレバンスクラーゼによる、フルクトオリゴ糖の製造(Fructo−oligosaccharides production by the Gluconacetobacter diazotrophicus levanscrase expressed in the metylotrophic yeast Pichia pastoris)、エンザイム・アンド・マイクロバイアル・テクノロジー(Enzyme Microb.)」、2001年、第28巻、p.139−144)が、記載されてきた。いくつかのインベルターゼを用いて達成された合成収率は、全オリゴ糖の4%を超えず、一方1−フルクトシルトランスフェラーゼでは、達成可能な収率はずっと高い(50−60%)(アントソバ(M.Antosova)、ポラコビック(M.Polakovic)著、「フルクトロシルトランスフェラーゼ:フルクトオリゴ糖の産生を触媒する酵素(Fructosyltransferases:the enzymes catalyzing production of fructoologosaccharides)、ケミカル・ペーパーズ(Chem.Pap.)」、2001年、第55巻、p.350−358)。FシリーズのFOSは、現在、合成機能において、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)のβ−フルクトフラノシダーゼを、3−5単位の短鎖オリゴ糖の生成のために用いて、工業的に製造されている(バニーウエンブルク(C.Vannieeuwnburgh)ら著、「高静水圧下のアスペルギルス・ニゲルフルクトシル−トランスフェラーゼによる糖転換の動態検査及び数学的モデル(Kinetic studies and mathematical model for sucrose conversion by Aspergillus niger fructosyl−transferase under high hydrostatic pressure)、バイオプロセス・アンド・バイオシステムズ・エンジニアリング(Bioprocess Biosys.Eng.)」、2002年、第25巻、p.13−20)。トランスフルクトシダーゼ活性をもつ他の酵素は、オーレオバシジウジム・プレランス(Aueobasidium pullulans)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、又はアスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)のような菌類において記載されてきた(チェン(C.S.Chien)ら著、「フルクトオリゴ糖製造のための、細胞をグルテン中に閉じ込めることによるアスペルギルス・ジャポニクスの固定(Immobilization of Aspergillus japonics by entrapping cells in gluten for production of fructooligosaccharides)、エンザイム・アンド・マイクロバイアル・テクノロジー」、2001年、第29巻、p.252−257)。
【0007】
Fシリーズの低分子量フルクトオリゴ糖は、レバンポリマーから酸加水分解により取得される。合成経路では、ジモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)のレバンスクラーゼからの1−ケストース形成における、少数の生成物としてのFシリーズのFOS形成が報告されているにすぎない(ベカーズ(M.Bekers)ら著、「ジモモナス・モビリス細胞外レバンスクラーゼのフルクトオリゴ糖及びレバン産生活性(Fructooligosaccharide and levan producing activity of Zymommonas mobilis extracellular levansucrase)、プロセス・バイオケミストリー(Process Biochem.)」、2002年、第38巻、p.701−706)。今日まで文献において参照された研究においては、酵母クサントフィロミケス・デンドロロウス(Xanthophyllomyces dendrorhous)(ファフィア・ロドザイマ(Phaffia rhodozyma)とも呼ばれる)の、又はいくつかの菌類(例えば(ペニシリヌム・シトリヌム(Penicillium citrimun)、固定細胞)(リー(Lee)ら著、「ペニシリヌム・シトリヌム細胞を用いた、スクロースからの新規フルクトオリゴ糖の酵素的製造のための反応経路(Reaction route for enzymatic prodution of neofructo−oligosaccharides from sucrose using Penicillium citrimum cells)、ジャーナル・オブ・マイクロバイオロジー(J.Microbiol.)」、2001年、第39巻、p.331−333;パーク(Park)ら著、「ペニシリヌム・シトリヌムの全細胞の固定による、新規フルクトオリゴ糖の連続的製造(Continuous production of neofructooligosaccharides by immobilization of whole cells of Penicillium citrinum)、バイオテクノロジー・レターズ(Biotechnol.Lett.)」、2005年、第27巻、p.127−130)の全細胞が、Gシリーズのフルクトオリゴ糖の製造に使用されている。特許は、マルトースから、マルト−及びイソオリゴ糖を生成することが可能な高スペクトルのトランスグリコシラーゼ活性をもつ、X.デンドロロウスの細胞外α−グルコシダーゼ(P200402994、UAM−CSIC)について、及び、Gシリーズ(特にネオケストース)及びF(特に1−ケストース)のフルクトオリゴ糖の形成が可能なトランスフルクトシダーゼ活性をもつ、この酵母の細胞外フルクトフラノシダーゼ(P200501875,UAM−CSIC)について出願されてきた。
【0008】
FOSの、それを消費するヒトへの影響は、非常に多様であり得る:ロタウイルスにより引き起こされる下痢事例の減少;乳糖不耐性症の改善;糞便量の増加による便秘の管理;カルシウム吸収の増加、及び結果としての骨粗鬆症のリスク低減;大腸癌に関連するニトロレダクターゼのような、ある微生物酵素の突然変異誘発能の低減;脂質代謝異常に関連した疾患の予想される低減、その他。
【0009】
酵母シュワンニオミセス・オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(デバリオミセス・オシデンタリス(Debaryomyces occidentalis)も)は、多様な有機化合物を炭素源として使用することができる(グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、ラフィノース、ラクトース、マルトース、クエン酸塩、エタノール、プルラン、デキストリン、その他)。バイオテクノロジーにおいては、この生物は、それが極めて効率的なデンプン分解システムを示し、そのことが、デンプンを主成分とする培地におけるその増殖を可能するという理由から使用されてきた(USP 4794175)。S.オシデンタリスは、ラクトースを主成分とする培地中で、インベルターゼ活性を発現及び分泌する(コスタグリオリ(P.Costaglioli)ら著、「シュワンニオミセス・オシデンタリスからのインベルターゼ分泌(Secretion of invertase from Swanniomyces occidentalis)、バイオテクノロジー・レターズ」、1997年、第19巻、p.623−7)。該酵素は、スーパーロース(Supersose)12及びモノ(Mono)Qに基づくデュアルFPLCシステムを用いて精製され(クライン(R.D.Klein)ら著、「新規な工業用酵母、シュワンニオミセス・オシデンタリスからのインベルターゼの精製及びキャラクタリゼーション(Purification and characterization of invertase from a novel industrial yeast,Schwanniomyces occidentalis)、プレパラティブ・バイオケミストリー(Prep.Biochem.)」、1989年、第19巻、p.293−319)、かつコード遺伝子はシーケンスされた(クライン(R.D.Klein)ら著、「酵母、シュワンニオミセス・オシデンタリスからのインベルターゼをコードする遺伝子のクローニング及び配列分析(Cloning and sequence analysis of gene encoding invertase from the yeast Schwannionyces occidentalis)、カレント・ジェネティクス(Curr Genet.)」、1989年、第16巻、p.145−52;配列番号X17604)。ヌクレオチド配列から演繹されたアミノ酸配列は、533個のアミノ酸を有する(アクセス番号 P24133)。それにもかかわらず、種々の基質に対するその活性、又はそのフルクトシルトランスフェラーゼ能に関係するデータは何ら入手されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プレバイオティックオリゴ糖の産業的重要性を考慮すれば、産業上実行可能であるそれらを取得するための、酵素及び方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、プレバイオティックオリゴ糖、主として6−ケストースを得るために有用な、シュワンニオミセス・オシデンタリスの細胞外インベルターゼに関連する、新規トランスフルクトシダーゼ活性のキャラクタリゼーションに関する。したがって、本発明の1つの観点は、トランスフルクトシダーゼ活性をもつ酵素製品を得るための方法であって、S.オクシデンタリス細胞を好適な培地及び条件において培養することを含んでなる方法に関する。通常の方法により、当業者は、S.オクシデンタリスの培養のための、培地と、pH、温度、及び攪拌といた条件とを選択するであろう。培養実施例は、以下に詳細に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
トランスフルクトシダーゼ活性は、スクロースをフルクトース及びグルコースに加水分解する酵素、β−D−フルクトフラノシダーゼ又はインベルターゼ(EC 3.2.1.26)(IUBMB酵素命名法、CAS登録番号9001−42−7)の活性に関連する。
【0013】
本発明の先行法の結果である粗酵素製品は、後続の分離又は精製の段階を必要することなく、オリゴ糖の取得に向けて産業的に使用されるべく準備されている。本発明の酵素対象は細胞外へ放出されるため、本発明の1つの特別の実施態様においては、方法はさらに、培地から及び/又は細胞から、酵素製品を回収する段階を含んでなる。したがって、S.オシデンタリス細胞の、フルクトフラノシダーゼ活性がそれに対し発現されてきた好適な培地を用いた懸濁物と、無細胞分画との双方が、本明細書における酵素製品として理解される。通常の方法により、当業者は、各産業プロセスに最も好適な出発酵素製品、すなわち、粗精製か、或いは、高又は低レベルの精製を選択するであろう。
【0014】
本発明のもう1つの観点においては、S.オシデンタリス細胞は、ATCC26077、ATCC26076、及びATCC20499からなる群より選択される株に属する。インベルターゼ(フルクトフラノシダーゼ)活性をコードしている遺伝子のヌクレオチド配列は、先に公開されかつデータバンクに寄託された配列とは、著しい差異を示す。
【0015】
本発明のもう1つの観点は、先に定義された方法により取得されたトランスフルクトシダーゼ活性をもつ酵素製品に関係する。本発明の酵素製品は、スクロース分解において非常に効率的であり、1−ケストース、ニストース、及びラフィノースのようなオリゴ糖に対しても作用する。本発明の特別の実施態様においては、本発明の酵素製品は、フルクトフラノシダーゼ活性が、低い基質特異性を有し、スクロース、1−ケストース、ニストース、及びラフィノースに対し作用することにおいてキャラクタライズされる。もう1つの実施態様においては、酵素製品のフルクトフラノシダーゼ活性は、50℃では5と6の間のpH範囲において、かつ40と55℃の間の温度範囲において、最大値を呈する。
【0016】
フルクトフラノシダーゼ活性に加えて、本発明の酵素製品は、トランスフルクトシダーゼ活性を有する。1つの特別な実施態様においては、トランスフルクトシダーゼ活性から結果として生じる生成物は、Fシリーズのフルクトオリゴ糖(特に6−ケストース)、及び、少数として、Fシリーズのルクトオリゴ糖(特に1−ケストース)である。本発明のもう1つの観点は、フルクトフラノシダーゼ/トランスフルクトシダーゼ活性をもつ、実質的に純粋な酵素を取得するための方法であって:(a)好適な培地及び条件におけるS.オシデンタリス細胞の培養により、フルクトフラノシダーゼ/トランスフルクトシダーゼ活性をもつ酵素製品を取得すること;(b)培地から及び/又は細胞から、該酵素製品を回収すること;及び(c)該酵素製品を、フルクトフラノシダーゼ/トランスフルクトシダーゼ活性をもつ実質的に純粋な酵素を得るまで精製すること、の段階を含んでなる方法に関する。
【0017】
本発明はまた、定義された方法により取得可能な、フルクトフラノシダーゼ/トランスフルクトシダーゼ活性をもつ実質的に純粋な酵素に関する。通常の精製法が、本発明の酵素を取得するために使用可能である。精製法の一例は、本明細書において詳細に記載されている。
【0018】
本発明の酵素製品について示された基質特異性特性はまた、精製された酵素にもある。トランスフルクトシダーゼ活性もまた、精製された酵素の特徴である。
【0019】
本発明の酵素製品及び酵素のポジティブな観点は、それらが多様な作用スペクトル及び高い比活性を有することであって、それらを、オリゴ糖の加水分解又は修飾のための好適な候補たらしめている。産業レベルにおけるもう1つの重要な観点は、該酵素が、高スクロース濃度の存在下での約50℃の温度における、長い反応時間(例えば、144時間)を通じ安定であることである。
【0020】
本発明は、産業上実行可能であるフルクトオリゴ糖、主として6−ケストースを取得するための方法を伝える。したがって、本発明のもう1つの観点は、オリゴ糖を取得するための方法であって、先に定義された酵素製品又は精製された酵素を、1又は数個の糖質基質に対し作用させることを含んでなる方法に関する。通常の方法により、当業者は、この方法を行うための培地、基質、及び反応条件を選択するであろう。加えて、酵素、又は酵素の生産者、S.オシデンタリス細胞は、そのままで、或いは、担体物質へ物理的又は化学的に結合された、固定された様式で使用可能である。したがって、酵素又は細胞の再利用が可能となる。調製実施例は、本明細書において以下に包含される。
【0021】
酵素のキャラクタリゼーション
A)S.オシデンタリスのフルクトフラノシダーゼ活性の発現
フルクトフラノシダーゼ活性の産生は、ラクトースを補足された酵母用の培地中で増殖された、ATCC26077、ATCC26076、及びATCC20499株の培養物中で分析された。培養は、ガラスフラスコ内で行われ、28−30℃の間をなす温度において、180−235rpmの定常の軌道攪拌を用いてインキュベートされた。最適の増殖条件は、29℃及び235rpmであった。
【0022】
無細胞分画は、29℃及び235rpmにおいて増殖された、S.オシデンタリスATCC26077の培養物の遠心分離により取得された(F−0)。フルクトフラノシダーゼ活性は、後に、種々の基質に対するグルコース放出を測定することによりアッセイされた。比色アッセイ及び標準的な方法論が使用された。放出されたグルコースは、グルコースオキシダーゼ−ペルオキシダーゼ共役反応を用いて定量された:0.4mlの測定されるべき溶液は、0.1mlのA:B(20:1)溶液(A:0.85U/mlグルコースオキシダーゼ、0.40U/mlペルオキシダーゼ、リン酸ナトリウム緩衝液pH5中;B:0.6% O−ジアニシジン)と混合された。それは37℃で30分間インキュベートされ、分光光度測定法により450nmにおいて定量化された。標準グルコース曲線(0−100μg/ml)が使用された。フルクトフラノシダーゼ活性単位は、記載された条件において測定されたグルコースのμmol/mlとして定義される。図1は、ATCC26077株が使用され、アッセイがスクロースに対し行われる場合に得られた結果を示す。
【0023】
B)培養及び無細胞分画の遠心分離後のS.オシデンタリスフルクトフラノシダーゼ活性のキャラクタリゼーション
ラクトース培地:0.3%(w/v)YNB(アミノ酸を含まない酵母窒素ベース、ディフコ(DIFCO))、3.5%(w/v)バクトペプトン(ディフコ)、0.5%(w/v)KHPO、1%(w/v)MgSO・7HO、1%(w/v)(NH)SO、及び、炭素源としての2%ラクトース(クライン(R.D.Klein)ら著、「新規な工業用酵母、シュワンニオミセス・オシデンタリスからのインベルターゼの精製及びキャラクタリゼーション、プレパラティブ・バイオケミストリー」、1989年、第19巻、p.293−319)中で、660nmの光学密度OD8.34まで増殖されたS.オシデンタリスの培養物の、遠心分離により得られた無細胞分画は、接線濾過システム(30kDaフィルタ)、及びそれに続く4℃の温度で2時間の、20mMHCl−トリスpH7に対する透析を用いて濃縮され、種々の基質に対しアッセイされた。アッセイ結果は、表1に示されている。基質としてラクトース、ロイクロース、ツラノース、又はパラチノースが使用された場合、何ら活性は検出されなかった。
【0024】
【表1】

【0025】
C)S.オシデンタリスのフルクトフラノシダーゼ活性をもつ酵素の精製
酵素の精製には、0.58U/mlのフルクトフラノシダーゼ活性をもつ2リットルのS.オシデンタリス細胞外分画が開始用に用いられた。以下の方法が使用された:
1)接線濾過システム(30kDaフィルタ)、及びそれに続く4℃の温度で2時間の、20mMHCl−トリスpH7(緩衝液A)に対する透析を用いた、細胞外分画の濃縮。23.28U/mlの活性をもつ35mlの濃縮物(F−1)が得られた。
2)pH7におけるイオン交換クロマトグラフィー。10mlの試料は、緩衝液Aで平衡化された、20mlのDEAEセファセル(Sephacel)イオン交換カラムへ適用された。溶出は、0−2MのNaCl勾配を用いて行われた。0.2Mの塩において溶出された分画は、3.30U/mlの活性を示した。それは、20mMの酢酸ナトリウムpH5(緩衝液B)に対し、4℃で2時間透析された(F−2)。
3)pH5に対するイオン交換クロマトグラフィー。試料は、緩衝液Bで平衡化された、イオン交換DEAEセファセルカラムへ適用され、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、及び0.5Mの塩の、不連続NaCl勾配を用いて溶出された。先に示されたように測定されたフルクトフラノシダーゼ活性は、0.2Mの塩において溶出され、0.33Uであった(F−3)。
【0026】
精製は、各精製段階の後に存在するタンパク質(F−1、F−2、及びF−3)を、SDS−PAGEポリアクリルアミドゲルにおいて分析すること、及びクーマシー(Coomassie)ブルーで染色することにより測定された。得られた結果は、図2に示されている。
【0027】
D)精製された酵素のフルクトフラノシダーゼ活性のキャラクタリゼーション
記載された方法に従った、精製された酵素(F−3)の加水分解活性は、種々の基質に対しアッセイされた。最大活性レベルは、スクロースに対して得られる。ラクトース、ロイクロース、ツラノース、又はパラチノースに対し、活性は観察されなかった。得られた結果は、表2にまとめられている。
【0028】
【表2】

【0029】
フルクトフラノシダーゼ活性は、種々のpH及び温度においてアッセイされた。最大活性レベルは、50℃では5及び6単位の間をなすpH範囲において、及び40と55℃の温度において得られた。図3は、得られた結果を示す。
【0030】
E)S.オシデンタリスのフルクトフラノシダーゼ活性をもつ酵素をコードする遺伝子のキャラクタリゼーション
S.オシデンタリスATCC26077、ATCC26076、及びATCC20499のフルクトフラノシダーゼ活性をコードしている遺伝子(1.6kb)は、標準PCR技術(ポリメラーゼ連鎖反応)、酵母のゲノムDNA、及び、既にデータベースに寄託された(アクセス番号X17604の配列)該遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の末端の配列に向けられたオリゴヌクレオチドを用いて増幅された。
【0031】
分析された3つの酵母株における、増幅された遺伝物質の配列には、先に公開されたヌクレオチド配列に比較して著しい差異がある。配列番号1の識別配列をもつ演繹されたタンパク質は、先に記載された533個の代わりに535個のアミノ酸を有しており、公開されたものとは異なる、15、4、14、及び1アミノ酸からなる4つの配列を有する。図4は、データバンクに寄託されたフルクトフラノシダーゼ(インベルターゼ)のアミノ酸配列(P24133)と、本研究で得られたものとを比較して、得られた変化を示す。
【0032】
F)S.オシデンタリスのF−1分画のトランスフルクトシダーゼ活性
限外濾過により得られた酵素濃縮物(F−1)のグリコシル基転移活性がアッセイされた。反応は、加水分解反応の損傷の中でのグリコシド結合の形成に有利にするための、高濃度のスクロース(510g/l)と、約5U/mlの反応混合物中の最終的な酵素活性とを用いて調製された。図5は、6時間の反応混合物のクロマトグラムを示す。S.オシデンタリスの酵素が、加水分解活性と転移活性とを一緒に示していることがわかる。一方で、フルクトース(ピーク1)及びグルコース(ピーク2)が、加水分解産物として形成される。他方で、2つの三糖類が得られる:ほとんどの三糖類(ピーク5)は、6−ケストース[β−D−Fru−(2→6)−β−D−Fru−(2→1)−α−D−Glu]と同定され、もう一方の少数の三糖類(ピーク4)は1−ケストース[β−D−Fru−(2→1)−β−D−Fru−(2→1)−α−D−Glu]と同定される。反応していなかったスクロースは、ピーク3に対応する。トランスグリコシレーション反応のスキームは、図6に示されている。
【0033】
表3は、50℃における24時間の反応混合物中に存在する炭水化物の組成(g/lで)を示す。6−ケストース/1−ケストースのモル比が、4及び6時間の反応の間に最大値3.3に達することが観察される。FOS産生の最大ポイント(4時間)では、混合物中の全炭水化物に対し8.6%のFOSのパーセントに相当する43.6g/lのFOSが得られた。
【0034】
【表3】

【0035】
G)S.オシデンタリスの分画F−3のトランスフルクトシダーゼ活性
純粋な酵素(分画F−3)の、トランスグリコシレーション活性がアッセイされた。反応は、高濃度のスクロース(510g/l)と、反応混合物中約0.5U/mlの最終酵素活性とを用いて調製された。図7は、144時間の反応混合物のクロマトグラムを示す。得られた産物のプロフィールは、双方の場合に非常に類似していることが分かり、特に、得られた6−ケストース/1−ケストース比は3.3であった。
【0036】
本研究においてキャラクタライズされた新規酵素は、50℃で144時間の後に、なおトランスフルクトシダーゼ活性を保持している。144時間の反応の後、42.6g/lのFOSが得られた。フルクトオリゴ糖の全パーセント(w/w)は、8.4%であり、この値は培地中の全重量に相当する。
【0037】
記載及びクレームを通し、用語「含んでなる」及びその変形は、他の技術的特徴、添加物、成分、又は段階を排除することを意図しない。当業者には、本発明の他の目的、利益、及び特徴が、一部は記載から、また一部は本発明の実施から理解されるであろう。以下の詳細な説明、実施例、及び図面は、例証として呈示されているものであり、本発明を制限することを意図しない。
【実施例1】
【0038】
最少培地で増殖された、S.オシデンタリスATCC26077の培養全体を通じたフルクトフラノシダーゼの産生
フルクトフラノシダーゼの産生用には、ATCC26077のS.オシデンタリス株はラクトース(MML)、スクロース(MMS)、ラフィノース(MMR)、及びグルコース(MMG)を補足した、酵母用の100mlの最少培地中で培養された:0.7%(w/v)YNB(アミノ酸を含まない酵母窒素ベース、ディフコ(DIFCO)、及び対応する炭素源を以下のパーセントで:2%ラクトース、0.5%スクロース、0.2%ファフィノース、及び0.05%グルコース。培養は、40時間維持された。細胞増殖は、分光光度測定法により、660nm(OD660)の光学密度における培養物の吸収に従って測定された。250mlのガラスフラスコ、29℃の温度、及び230rpmの定常の軌道攪拌が使用された。定常期は、ラクトース、スクロース、ラフィノース、及びグルコースをベースとする培地について、各々0.112、0.757、0.455、及び0.160のOD660において到達された。
【実施例2】
【0039】
最少培地上清による、スクロースからのグルコース産生のための酵素の使用
実施例1の培養上清は、細胞外酵素が検出される上清の、フルクトフラノシダーゼ活性の作用によるスクロースからのグルコース放出のために使用された。この目的のため、100μlの無細胞分画、0.4mlの50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH5.5、及び0.5mlの、同緩衝液中の1%スクロース(w/v)が混合され、42℃において90分間インキュベートされた。フルクトフラノシダーゼ活性は、培養の対数増殖期の最初から、定常期の最後まで観察された。最大活性レベル(MMLでは107mU/ml、MMGでは9.6mU/ml、MMSでは0.78mU/ml、及びMMRでは1.2mU/ml、)は、定常期において得られた。
【実施例3】
【0040】
ラフィノースに富む培地中で増殖されたS.オシデンタリスの培養全体を通じたフルクトフラノシダーゼの産生
フルクトフラノシダーゼの産生用には、S.オシデンタリスATCC26077は、ラフィノースを補足された100mlの(YEP)培地(YEPR)中で培養された:1%(w/v)酵母抽出物(ディフコ)、2%(w/v)バクトペプトン(ディフコ)、0.2%(w/v)ラフィノース。250mlのガラスフラスコ、30℃の温度、及び200rpmの定常の軌道攪拌が使用された。培養は、48時間維持された。細胞増殖が行われ、先行実施例と同様に測定された。定常期は、28時間の増殖において、2.28のOD660までに到達された。
【実施例4】
【0041】
ラフィノースを用いた培地の上清による、スクロースからのグルコース産生のための酵素の使用
実施例3の培養上清は、実施例2と同様に、細胞外酵素が検出される上清の、フルクトフラノシダーゼ活性の作用によるスクロースからのグルコース放出のために使用された。測定可能なフルクトフラノシダーゼ活性のレベルは、培養の対数増殖期の半ばから、曲線の最後まで、約30時間の培養にわたり得られた。最大活性レベル(0.382U/ml)は、2.28のOD660において得られた。
【実施例5】
【0042】
50及び60℃におけるS.オシデンタリスのフルクトフラノシダーゼ活性の安定性
S.オシデンタリスの培養物の細胞外分画は、接線濾過システム(30kDaフィルタ)、及びそれに続く4℃の温度で2時間の、20mMリン酸ナトリウムpH7に対する透析を用いて57倍に濃縮された。23.3U/mlの活性をもつ酵素標品が得られた。標品は、50及び60℃において、種々の時間にわたり維持された。50μlの標品は、5−10分ごとに採取された。スクロースに対するフルクトフラノシダーゼ活性は、実施例2と同様にして得られた全試料において測定された(50℃、20分間)。50℃では45及び120分後に、最初の活性の各々50及び20%が維持される。しかしながら、60℃では、2及び5分後に、各々80及び25%の活性が維持されるにすぎない。
【実施例6】
【0043】
S.オシデンタリスのゲノムDNAを取得すること
S.オシデンタリスのATCC20499株は、2%ラクトース(MML)を補足した酵母用の最少培地中で、29℃で、235rpmの定常の軌道攪拌により、7.58のOD660nmの光学密度間で培養された。ゲノムDNAは、基本的に、先に記載された、サザンブロット分析用のゲノムDNA抽出プロトコル(ローズ(M.D.Rose)ら著、「実習マニュアルのための酵母遺伝学における方法(Methods in yeast genetics to laboratory course manual)」、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1990年)に従って単離され、50μlの10mM HCl−トリスpH8.5中に再懸濁され、寒天ゲル(0.7%w/v)中で分析された。DNAの終濃度は、100ng/μlであった。
【実施例7】
【0044】
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術によるフルクトフラノシダーゼ遺伝子の増幅
実施例6に記載された方法に従って得られたDNAは、S.オシデンタリスのフルクトフラノシダーゼ(インベルターゼ)遺伝子(X17604)を増幅するための鋳型として使用された。PCR技術が用いられた。その目的のため、2つのオリゴヌクレオチドプライマーが、遺伝子X17604に特異的配列、配列番号2及び配列番号3を用いてデザインされ、それらはBamHI及びXhoI制限配列を各々包含する。各反応は:1.25UのTaqPol(プロメガ(Promega))、2.5μlのこの酵素用の10倍緩衝液、2.5μlの25mM MgCl、0.25μlの40mM dNT、5μlの実施例5に示されたように取得されたゲノムDNA、1.5μlの各オリゴヌクレオチドプライマー、及び、最終体積25μlとするまでのHO、を包含する。この反応混合物は:a)94℃で10分間、b)94℃1分間、57℃1分間、及び72℃1分間の3サイクル、c)94℃1分間、57℃1分間、及び72℃1.5分間の35サイクル、及びd)94℃1分間、57℃1分間、及び72℃6分間の1サイクルでインキュベートされた。生成物は、寒天ゲルにおいて分析された。遺伝子X17604の予想サイズに対応する1.6kbフラグメントが、約50ng/μlの濃度で増幅された。
【実施例8】
【0045】
PCRにより増幅された産物のクローニング及びそのシーケンシング
実施例7に示されたように取得されたPCR産物は、キアゲン(QIAGEN)のQIAEX IIゲル抽出キット150により精製され、EcoRVにより直鎖化されたノバジェン(Novagen)のpSTBlue−1ベクター(好ましくはブラントクローニング)中に包含された。熱ショックによる形質転換にコンピテントな大腸菌DH5αが使用され、選択はアンピシリン(100μg/ml)、IPTG、及びX−Galを用いたLBにおいて行われた。プラスミドDNAは、キット:プロメガのDNA精製システム、ウィザード・プラス・SVシステム(Wizard Plus SV System)を用いて単離され、構築物はシーケンシングにより分析された。得られた配列は、アクセス番号X17604の、記載されたものと比較された。遺伝コードを考慮することにより、コードされたタンパク質のアミノ酸配列が得られ、それは535個のアミノ酸で構成され、アクセス番号P24133に記載されたものよりも1アミノ酸多かった。さらに、新規酵素活性の配列は、先に公開された配列(P24133)と4つの領域において異なっている。図4に差異が示される。
【実施例9】
【0046】
S.オシデンタリスの酵素濃縮物(F−1)により触媒される、スクロースからの50℃におけるフルクトオリゴ糖の形成
0.2M酢酸ナトリウム緩衝液pH5.6中の、高濃度のスクロース(510g/l)溶液が調製された。フルクトフラノシダーゼは、反応混合物中の終濃度5U/mlまで添加された(1ユニットUは、0.2M酢酸ナトリウム緩衝液pH5.6中で、50℃において、基質として100g/lのスクロースを用いた場合の、1分間当たりの還元糖の放出マイクロモルに相当する酵素活性である)。反応混合物は、50℃において、700rpmでの軌道攪拌を用いて24時間インキュベートされた。アリコートは種々の時間に抽出され、酵素を不活化するべく80℃で5分間インキュベートされ、水で1:2(v/v)に希釈され、0.45μmのフィルタを具備したエッペンドルフチューブ内で、6000rpmで5分間遠心分離され、HPLC液体クロマトグラフィーにより分析された。形成された生成物のプロフィールは、図5に示されている。S.オシデンタリスのフルクトフラノシダーゼは、転移活性(トランスフルクトシレーション)を有することが観察される。二つの三糖類が得られる:1つの主要な三糖類、6−ケストース[β−D−Fru−(2→6)−β−D−Fru−(2→1)−α−D−Glu]、及び、1−ケストース[β−D−Fru−(2→1)−β−D−Fru−(2→1)−α−D−Glu]として同定された、もう一方の少数の三糖類。FOS産生の最大ポイント(4時間)では、系の組成は、フルクトース8.7%、グルコース11.9%、スクロース70.8%、1−ケストース2.0%、及び6−ケストース6.6%であった。
【実施例10】
【0047】
S.オシデンタリスの純粋な酵素(F−3)により触媒される、スクロースからの50℃におけるフルクトオリゴ糖の形成
0.2M酢酸ナトリウム緩衝液pH5.6中の、高濃度のスクロース(510g/l)溶液が調製された。フルクトフラノシダーゼは、反応混合物中の終濃度5U/mlまで添加された(1ユニットUは、0.2M酢酸ナトリウム緩衝液pH5.6中で、50℃において、基質として100g/lのスクロースを用いた場合の、1分間当たりの還元糖の放出マイクロモルに相当する酵素活性である)。反応混合物は、50℃において、700rpmでの軌道攪拌を用いて144時間インキュベートされた。アリコートは種々の時間に抽出され、酵素を不活化するべく80℃で5分間インキュベートされ、水で1:2(v/v)に希釈され、0.45μmのフィルタを具備したエッペンドルフチューブ内で、6000rpmで5分間遠心分離され、HPLC液体クロマトグラフィーにより分析された。形成された生成物のプロフィールは、図7に示されている。二つの三糖類が得られる:形成された主要な三糖類は、6−ケストースと同定され、もう一方の少数の三糖類は、1−ケストースと同定された。最終反応時間(144時間)では、系の組成は、フルクトース12.7%、グルコース14.8%、スクロース64.1%、1−ケストース2.4%、及び6−ケストース5.9%であった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】S.オシデンタリスATCC26077の培養全体を通じた細胞外フルクトフラノシダーゼ活性の産生を示す図である。酵母は、2%ラクトース培地中で、29℃において、235rpmの定常の軌道攪拌により72時間増殖された。培養物の増殖は、OD660nmで表されており(四角形)、細胞外培地中で測定されたU/mlでのフルクトフラノシダーゼ活性(円形)は、示されている時間において達せられた。活性は、0.5%スクロースに対しアッセイされた。
【図2】精製全体を通じて存在するタンパク質のSDS−PAGE(8%)による分析の結果を示す図である。1mlの、示された分画は、TCA(10%(w/v))で沈澱され、10μlの1.5M HCl−トリスpH7.5中に再懸濁され、8%ポリアクリルアミドゲルにおいて分析された。ゲルは、標準的な方法論に従って、クーマシーブルーで染色された。M:分子量マーカー;1、2及び3:各々F−1、F−2、及びF−3。
【図3】酵素活性を、pH及び温度の関数として示している図であり、対応する最大値を示している。アッセイは、スクロースに対し、純粋なタンパク質の溶液を用いて行われた。100%は、5.59U/mlの活性に相当する。図3A:フルクトフラノシダーゼ活性は、種々のpH(3−9pH単位)において、アッセイ温度50℃で、pH範囲3−4.5、5.0−7.5、及び8.0−9.0のための、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びHCl−トリス各緩衝液(それらの全てが100mM)において測定された。図3B:温度アッセイ(30−70℃)は、50mMリン酸ナトリウムpH5.5中で行われた。
【図4】本研究において得られたS.オシデンタリスATCC26077のフルクトフラノシダーゼの配列分析の結果を示す図である。先に記載されたタンパク質のアミノ酸 配列(P24133)、及び本研究において得られたもの(Ffase)が示されている。
【図5】510g/lの濃度のスクロースの、S.オシデンタリスの酵素製品(酵素濃縮物F−1)とのインキュベーションの後に得られた産物のプロフィールを示す図である。反応条件、HPLC分析条件、及び化合物名は、表3におけるものと同じである。クロマトグラフィー分析は6時間の反応に対応する。
【図6】S.オシデンタリスのフルクトフラノシダーゼにより触媒されるトランスグリコシレーション反応のスキームを示す図である。
【図7】510g/lの濃度のスクロースの、S.オシデンタリスの純粋な酵素(F−3)とのインキュベーションの後に得られた産物のプロフィールを示す図である。反応条件、HPLC分析条件、及び化合物名は、表3におけるものと同じである。クロマトグラフィー分析は144時間の反応に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルクトフラノシダーゼ活性をもつ酵素製品を得るための方法であって、シュワンニオミセス・オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(デバリオミセス・オシデンタリス(Debaryomyces occidentalis)も)細胞を、ラクトースをベースとする酵母用の培地、29℃の温度、及び235rpmの定常軌道攪拌において培養することを含んでなる方法。
【請求項2】
シュワンニオミセス・オシデンタリス細胞を、種々の炭素供給源(ラクトース、スクロース、ラフィノース、グルコース)をベースとする酵母用の最少又は富化培地、28と30℃の間をなす温度、及び180と235rpmの間をなす定常軌道攪拌範囲において培養することを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記培地から、及び/又は前記細胞から、酵素製品を回収する付加的な段階を含んでなる、請求項1及び2記載の方法。
【請求項4】
前記シュワンニオミセス・オシデンタリス細胞が、ATCC26077、ATCC26076、及びATCC20499からなる群より選択される株に属している、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに定義された方法により取得可能な、フルクトフラノシダーゼ活性をもつ酵素製品。
【請求項6】
前記フルクトフラノシダーゼ活性が、スクロース、1−ケストース、ニストース、及びラフィノースに対し低い基質特異性を有することを特徴とする、請求項5記載の酵素製品。
【請求項7】
ラクトース、ロイクロース、ツラノース、又はパラチノースに対し、何らフルクトフラノシダーゼ活性をもたないことを特徴とする、請求項5及び6のいずれかに記載の酵素製品。
【請求項8】
前記フルクトフラノシダーゼ活性が、50℃では5と6単位の間のpH範囲において、かつ40から55℃までの温度範囲において最大値を有する、請求項5乃至7のいずれかに記載の酵素製品。
【請求項9】
1又は数個の糖質基質の存在下にトランスフルクトシダーゼ活性を有することを特徴とする、請求項5乃至8のいずれかに記載の酵素製品。
【請求項10】
前記糖質基質がフルクトオリゴ糖であることを特徴とする、請求項9記載の酵素製品。
【請求項11】
前記トランスフルクトシダーゼ活性から結果として得られる産物が、β−1,2、及びβ−2,6結合をもつフルクトオリゴ糖である、請求項10記載の酵素製品。
【請求項12】
前記トランスフルクトシダーゼ活性から結果として得られる産物が、基本的に6−ケストース及び1−ケストースである、請求項11記載の酵素製品。
【請求項13】
オリゴ糖を取得するための方法であって、請求項5乃至12のいずれかに定義された酵素製品を、1又は数個の糖質基質に対し作用させることを含んでなる方法。
【請求項14】
請求項1及び2記載の方法により得られた酵素製品から、フルクトフラノシダーゼ活性をもつ実質的に純粋な酵素を取得するための方法であって、前記酵素製品を、実質的に純粋な酵素を取得するまで精製する付加的な段階を含んでなる方法。
【請求項15】
前記シュワンニオミセス・オシデンタリス細胞が、ATCC26077、ATCC26076、及びATCC20499からなる群より選択される株に属している、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項14及び15のいずれかに定義された方法により取得可能な、フルクトフラノシダーゼ活性をもつ実質的に純粋な酵素。
【請求項17】
前記フルクトフラノシダーゼ活性が、低い基質特異性を有しており、スクロース、1−ケストース、ニストース、及びラフィノースに対し作用することを特徴とする、請求項16記載の酵素。
【請求項18】
ラクトース、ロイクロース、ツラノース、又はパラチノースに対し、何らフルクトフラノシダーゼ活性をもたないことを特徴とする、請求項16及び17のいずれかに記載の酵素。
【請求項19】
前記フルクトフラノシダーゼ活性が、50℃では5と6単位の間のpH範囲において、かつ40と55℃の間の温度範囲において最大値を有する、請求項16乃至18のいずれかに記載の酵素。
【請求項20】
1又は数個の糖質基質の存在下にトランスフルクトシダーゼ活性を有することを特徴とする、請求項16乃至19のいずれかに記載の酵素。
【請求項21】
前記糖質基質がフルクトオリゴ糖であることを特徴とする、請求項20記載の酵素。
【請求項22】
前記トランスフルクトシダーゼ活性から結果として得られる産物が、β−1,2、及びβ−2,6結合をもつオリゴ糖である、請求項21記載の酵素。
【請求項23】
前記トランスフルクトシダーゼ活性から結果として得られる産物が、基本的に6−ケストース及び1−ケストースである、請求項22記載の酵素。
【請求項24】
そのアミノ酸配列、配列番号1により、及び、535個のアミノ酸を有することにより特徴づけられる、請求項16乃至23のいずれかに記載の酵素。
【請求項25】
そのヌクレオチド配列、配列番号4により特徴づけられる、請求項16乃至24のいずれかに定義された酵素をコードしているDNA配列。
【請求項26】
オリゴ糖を取得するための方法であって、請求項16乃至25のいずれかに定義された酵素を、1又は数個の糖質基質に対し作用させることを含んでなる方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−521240(P2009−521240A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547993(P2008−547993)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000693
【国際公開番号】WO2007/074187
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508191927)ユニバーシダッド オートノマ デ マドリッド (1)
【出願人】(508191787)
【Fターム(参考)】