説明

プレミックスセメント用黒色物析出抑制剤

【課題】水と混合して得られるプレミックスセメント硬化物の表面に浮揚する黒色系粒子による硬化体表面の美観を、気泡跡による美観不良を発生することなく改善することである。
【解決手段】
平均粒径1〜15μmの多孔質シリカ微粉末と、この多孔質シリカ微粉末に吸着された下記一般式〔1〕で表されるポリオキシアルキレン誘導体を有する。多孔質シリカ微粉末とポリオキシアルキレン誘導体の比が重量比で99:1〜30:70である。
O−(PO)−(EO)−H 〔1〕
(Rは炭素数14〜22のアルキル基およびアルケニル基からなる群より選ばれた一種または二種以上の官能基であり、POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、a=1〜50、b=0〜10、かつaとbのモル比は、a:b=80〜100:20〜0である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の多孔質シリカ微粉末に、特定のポリオキシアルキレン誘導体を吸着させたものであることを特徴とする、プレミックスセメント用黒色物析出抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレミックスセメント製品は、セメント、骨材、無機フィラー等の無機系の粉体材料をあらかじめ配合した状態で袋詰めされた製品であり、施工現場にて水、あるいはポリマーエマルジョンと混練することで、セメントペースト、モルタル、およびポリマーモルタルとして外装材、断面修復材、およびセルフレベリング材等として使用されている。
【0003】
近年、プレミックスセメント製品に使用されているセメント、骨材、無機フィラー等は、その製造過程において、産業廃棄物処理としての役割を余儀なくされており、様々な不燃成分が含有せざるを得ない状況に置かれている。不燃成分の中でも、特に黒色系粒子(主にカーボン)が極微量含まれているが、このような無機粉体をプレミックスセメント製品に使用し、セメントペースト、モルタルおよびポリマーモルタルを製造すると、その表面にこれら黒色系粒子が浮揚し、硬化体表面の美観が損なわれるという問題が生じている。
【0004】
上記問題に対して、硬化体表面の再処理を行ったり、あるいは硬化体の表面を各種仕上げ材で処理するといった工程が行われている。しかし、これらの作業は非常に煩雑な作業であることから、硬化体表面の美観を向上できる添加剤が提案されている(例えば特許文献1〜3)。
【0005】
特許文献1では、特定の分散成分と消泡剤を併用することで、含有黒色系粒子の種類如何に拘わらず、水中で相反する分散挙動を有する親水性物質と疎水性物質を共に高分散化せしめて、特定成分の凝集化や偏在化を抑制できることが記載されている。また、含有黒色系粒子のような疎水性物質を分散させる分散成分は、公知の界面活性剤であり、消泡剤は、界面活性剤により生じた気泡表面に付着した疎水性黒色系粒子が気泡と共に液面に運ばれたときに、気泡を容易に且つ短時間で破泡するために添加しており、液面での滞留や凝集が抑えられることが記載されている。
【0006】
しかしながら、分散成分と消泡剤は相溶性が悪いため、実使用上それぞれを別々に添加することになるため、煩雑な作業になるのと同時に、分散成分と消泡剤の添加量バランスによっては、必ずしも黒色系粒子を高分散できなくなり、かえって凝集化を促進することになるため好ましくない。
【0007】
特許文献2、3では、特定のオレフィン−マレイン酸共重合体を使用することで、作業性や水硬性組成物としての性能を低下させることなく、硬化体表面に黒色系の斑点又は縞が発生するのを抑制できることが記載されている。しかしながら、これらのオレフィン−マレイン酸共重合体を使用した場合、通常のコンクリートに対しては有効に作用するが、プレミックスセメント製品のように、ポリマーエマルジョンや分離抵抗抑制剤等を含んでいるときには、黒色物の析出は抑制できるものの、それら由来の気泡跡が硬化体表面に出てしまうため、表面美観に関しては不十分であった。
【0008】
なお、特許文献4には、特定のシリカに吸着させた特定のポリオキシアルキレン誘導体をセメント用の消泡剤として用いることが開示されているが、モルタル硬化物表面の黒色物析出抑制効果についての記載はなく、認識は全くされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−3264号公報
【特許文献2】特開2004−83303号公報
【特許文献3】特開2004−175651号公報
【特許文献4】特開平10−226550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、水と混合して得られるプレミックスモルタル組成物表面に浮揚する黒色系粒子による硬化体表面の美観を、気泡跡による美観不良を発生させることなく改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、以下に示すものである。
(1) 平均粒径1〜15μmの多孔質シリカ微粉末と、この多孔質シリカ微粉末に吸着された下記一般式〔1〕で表されるポリオキシアルキレン誘導体を有しており、前記多孔質シリカ微粉末と前記ポリオキシアルキレン誘導体の比が重量比で99:1〜30:70であることを特徴とする、プレミックスセメント用黒色物析出抑制剤。
【0012】

O−(PO)−(EO)−H 〔1〕

(ただし、Rは炭素数14〜22のアルキル基およびアルケニル基からなる群より選ばれた一種または二種以上の官能基であり、POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、a=1〜50、b=0〜10、かつaとbのモル比は、a:b=80〜100:20〜0である。)
【0013】
(2) プレミックスセメントに対して、請求項1記載の黒色物析出抑制剤を添加することによって、プレミックスセメント組成物の硬化物の表面における黒色物の析出を抑制することを特徴とする、プレミックスセメントの黒色物析出抑制方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プレミックスセメントに添加することで、黒色物の析出を抑制し、気泡跡を発生することなく、得られるプレミックスセメント組成物の美観を向上させることができる。
【0015】
一般にモルタル肌面の黒い斑点や全体の黒ずみは、セメントや骨材、無機フィラー等に含有される強熱減量残渣や炭化物質、カーボン等の黒色微粉であると考えられている。本発明の抑制剤が、プレミックスセメントのモルタル肌面の黒色物析出を抑制できる理由の詳細は不明であるが、多孔質シリカ微粉末に吸着した本発明で示される特定のポリオキシアルキレン誘導体が、プレミックスセメントのモルタル中に多孔質シリカ微粉末から徐々に析出することで、セメント自体の分散を阻害せず、上記黒色微粉末を吸着分散しつつ、モルタル中の気泡を抑制することから、カーボン等の分散促進に有効、かつ気泡跡のない表面美観の改善されたものになると推定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のプレミックスセメント用黒色物析出抑制剤は、平均粒径1〜15μmの多孔質シリカ微粉末を使用する。平均粒径は、プレミックスセメントに混合するときの作業性を考慮して、5〜15μm程度であることが好ましい。また、比表面積に特に制限はないが、ポリオキシアルキレン誘導体の吸着量を考慮して、50〜400m/gであることが好ましい。
【0017】
本発明のプレミックスセメント用黒色物析出抑制剤は、一般式〔1〕で表されるポリオキシアルキレン誘導体を含む。式(1)において、Rは、炭素数14〜22のアルキル基、および炭素数14〜22のアルケニル基からなる群より選ばれた一種または二種以上の官能基である。Rで示される炭素数14〜22のアルキル基、炭素数14〜22のアルケニル基としては、例えばテトラデシル基、ヘキサデシル基、イソセチル基、オクタデシル基、イソステアリル基、ベへニル基等のアルキル基;オレイル基等のアルケニル基が挙げられる。Rの炭素数は16〜18であることが更に好ましく、18であることがもっとも好ましい。また、Rは、更に好ましくは、ヘキサデシル基、イソセチル基、オクタデシル基、イソステアリル基、オレイル基であり、より好ましくは、炭素数18のオクタデシル基、イソステアリル基、オレイル基であり、最も好ましくは、オレイル基である。
【0018】
式(1)のポリオキシアルキレン誘導体のRの炭素数が16〜18である場合、Rの炭素数が16〜18から外れる式(1)のポリオキシアルキレン誘導体も、本発明の抑制剤中に更に含有されていてよい。この式(1)のポリオキシアルキレン誘導体のRの炭素数が18である場合、Rの炭素数が18から外れる式(1)のポリオキシアルキレン誘導体も、本発明の抑制剤中に更に含有されていてよい。こうした場合、Rの炭素数が16〜18である式(1)のポリオキシアルキレン誘導体、あるいはRの炭素数が18である式(1)のポリオキシアルキレン誘導体は、式(1)のポリオキシアルキレン誘導体の主成分であることが好ましく、例えば50重量%以上であることが好ましく、65重量%以上であることが更に好ましい。
【0019】
の炭素数を14以上とすることによって、黒色物析出抑制効果が得られる。また、Rの炭素数を22以下とすることによって、式(1)の誘導体の製造が容易になる。
【0020】
式(1)において、POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基である。
式(1)において、aはオキシプロピレン基の付加モル数であって1〜50である。aの値が50を超えると、本誘導体の製造が困難になる。また、aが0であると、黒色物析出抑制効果が得られない。本発明の観点からは、aは、好ましくは1以上であり、より好ましくは3以上であり、更に好ましくは20以上であり、特に好ましくは28以上である。また、aは50以下であるが、好ましくは40以下であり、更に好ましくは30以下である。
【0021】
bは、オキシエチレン基の付加モル数であり、0〜10である。bを10以下とすることによって、黒色物析出抑制効果が著しく向上し、気泡跡が発生しにくくなる。この観点からは、bは、より好ましくは0〜5であり、特に好ましくは0〜3.3である。
【0022】
aとbのモル比は、a:b=80〜100:20〜0であり、好ましくは、a:b=90〜100:10〜0である。aのモル比率が80よりも低く、bのモル比率が20よりも高いと、黒色物析出抑制効果が低下し、気泡跡が発生しやすくなる。
【0023】
また、本発明で用いるポリオキシアルキレン誘導体は、公知の方法により得ることができる。製造方法としては、炭素数14〜22のアルキル基、または炭素数14〜22のアルケニル基を持ったアルコール化合物にプロピレンオキシドを付加重合した後、エチレンオキシドを付加重合することにより、製造することができる。
【0024】
本発明のプレミックスセメント用黒色物析出抑制剤は、ポリオキシアルキレン誘導体を多孔質シリカ微粉末に吸着した粉状混合物の形態である。その場合、ポリオキシアルキレン誘導体の含有率は、多孔質シリカ微粉末とポリオキシアルキレン誘導体との合計質量を100重量%としたとき、1〜70重量%、より好ましくは20〜65重量%、さらに好ましくは40〜60重量%である。ポリオキシアルキレン誘導体の含有率を1重量%よりも多くすることで、本発明の抑制剤の効果を発揮させるための添加量が多くならず、好ましい。また、これを70重量%以下とすることによって、多孔質シリカ微粉末にポリオキシアルキレン誘導体をすべて吸着させ易く、得られる製品が粉末状になり易いので、好ましい。
【0025】
本発明のプレミックスセメント用黒色物析出抑制剤には、保存安定性の向上を目的として、各種酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、および2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)等のフェノール系化合物、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルメテート、アスコルビン酸ステアレート等のアスコルビン酸系化合物等が挙げられ、好ましくは、フェノール系化合物であり、より好ましくはメトキシハイドロキノンである。酸化防止剤の添加量は、ポリオキシアルキレン誘導体100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部、特に好ましくは0.1〜2重量部である。
【0026】
本発明では、黒色物析出抑制効果をより安定に発現させるために、ポリオキシアルキレン誘導体を、プレミックスセメント中のセメント100重量部に対して、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜1重量部、特に好ましくは0.05〜0.5重量部の比率で用いる。
【0027】
黒色微粉末を含有する粉体としては、フライアッシュ(石炭灰)、鉄鋼スラグ、銅スラグ、シリカフューム、石粉、炭酸カルシウム、木炭その他カーボン粉末類またはこれらとのセメントブレンド物であるフライアッシュセメント、高炉セメント、シリカヒュームセメント等が挙げられる。黒色微粉末を有する骨材としては亜炭含有頁岩を原料とする砕砂の他に溶融スラグ砂、フェロニッケルスラグ砂等が挙げられる。
【0028】
セメントの具体例としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカヒュームセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等が挙げられる。
【0029】
骨材として細骨材が挙げられ、細骨材は珪砂、山砂、陸砂、川砂、砕砂、軽量骨材等があり、好ましくは、珪砂である。
【0030】
また、本発明の対象とするプレミックスセメントには、公知の添加剤(材)や無機フィラーを使用することができる。一例を挙げれば、AE剤、流動化剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、保水剤、増粘剤、防水剤、撥水剤、分離抵抗抑制剤、減水剤、高性能減水剤、消泡剤、収縮低減剤や膨張材、珪石粉末、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石膏等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明する。なお、式(1)で示される化合物の構造式、および多孔質シリカ微粉末とポリオキシアルキレン誘導体の重量%を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
(製造例1)
5リットル加圧反応器にオレイルアルコールを主成分とする原料(オレイルアルコール含有率:約65重量%、セチルアルコール含有率:約30重量%)247g(1.0モル)と触媒としてナトリウムメチラート1.0gをとり、系内の空気を窒素ガスで置換したのち、100〜120℃でプロピレンオキシド1624g(28.0モル)を約0.05〜0.5MPa(ゲージ圧)で徐々に圧入して付加反応を行った。その後、100〜140℃でエチレンオキシド88g(2.0モル)を約0.05〜0.5MPa(ゲージ圧)で徐々に圧入して付加反応を行った。反応終了後60℃まで冷却し、触媒を中和し、一般式[1]で表されるポリオキシアルキレン誘導体を得た。なお表1には主成分であるオレイルアルコールを原料としたときの構造式を示し、以下の製造例も同様とした。
【0034】
次に、表1に示した多孔質シリカ微粉末(平均粒径:8.1μm(コールターカウンター法による)、比表面積:193m/g(BET法による))1kgをヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)に投入、撹拌しながら、上記で得られたポリオキシアルキレン誘導体1kgに酸化防止剤としてメトキシハイドロキノンを10g添加した液体を徐々に投入し、投入完了後、さらに数分間撹拌し、本発明のプレミックスセメント用黒色物析出抑制剤を得た。
【0035】
(製造例2)
製造例1で使用したアルコールをステアリルアルコールを主成分とする原料(ステアリルアルコール含有率:約87重量%、セチルアルコール含有率:約13重量%)に変更し、プロピレンオキシド、エチレンオキシドの付加モル数を表1の通りにした以外は、同様の方法により、一般式[1]で表されるポリオキシアルキレン誘導体を得た後、本発明のプレミックスセメント用黒色物析出抑制剤を得た。
【0036】
(製造例3)
製造例1のプロピレンオキシドの付加モル数を表1の通りにし、エチレンオキシドを付加させない以外は、同様の方法により、一般式[1]で表されるポリオキシアルキレン誘導体を得た後、本発明のプレミックスセメント用黒色物析出抑制剤を得た。
【0037】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
使用した原料組成は表2に示す通りであり、具体的な材料名は、セメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)、石膏(半水、試薬)、高炉スラグ(新日鐵高炉セメント製)、骨材として珪砂6号(山形県産)から成る配合100質量部に、減水剤(ポリカルボン酸系共重合体の粉体品)、分離抵抗抑制剤(信越化学工業製、メトローズ90SH−4000)および表1の成分を添加し、水を加え、混練し、モルタルを調整した。なお比較例1は表3記載の成分を0.2部、比較例2、3は表3記載の成分を0.1部添加し、モルタルを調整した。
【0038】
【表2】

【0039】
モルタルの評価は、流動性、単位容積質量、表面状態の確認により行った。流動性の評価は、モルタルを内径50mm、高さ50mmの塩化ビニル樹脂製の円筒コーンに詰め、引き上げた後の拡がりであるフロー値(mm)を測定した。単位容積質量の評価は、モルタルを内径約75mm、深さ約115mmの金属製の容器(容積:約500cm3)に詰め、測定した。結果を表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
表3中の各符号は以下を示す。
*1 特許文献2(特開2004−83303号公報)記載のジイソブチレン−マレイン酸共重合体(25%水溶液)
*2 HO-(EO)1.7-(PO)35-(EO)1.7-Hを多孔質シリカ微粉末に吸着させたもの(重量比率 1:1)
*3 特許文献4(特開平10−226550号公報)記載のポリオキシアルキレン化合物B(C12H25-O-(PO)15-(EO)12-(PO)15-H)
を多孔質シリカ微粉末に吸着させたもの(重量比率 1:1)
*4 黒色物析出状態: ◎・・・全体に黒色物の析出がなく、表面美観良好。
○・・・ほとんど黒色物の析出がなく、表面美観やや良好。
△・・・一部に黒色物の析出があり、表面美観はやや悪い。
×・・・全体に黒色物の析出があり、表面美観は悪い。
*5 表面気泡状態: ◎・・・全体に気泡跡がなく、表面美観良好。
○・・・ほとんど気泡跡がなく、表面美観やや良好。
△・・・一部に気泡跡があり、表面美観はやや悪い。
×・・・全体に気泡跡があり、表面美観は悪い。
【0042】
以上の結果から、実施例1〜3と比較例1〜3の比較により、本発明のプレミックスセメント用黒色物析出抑制剤を添加したプレミックスモルタル組成物は、モルタル表面に黒色物の析出がなく、また表面に気泡跡もなく表面の美観を向上させることができる。比較例1は、黒色物の析出抑制効果は良好であるが、プレミックスセメント配合内に含まれている分離抵抗抑制剤由来の気泡を抑制することができないため、気泡跡があり、表面美観が悪くなっていることがわかる。
【0043】
また、比較例2、3で使用している添加剤は、一般的にモルタル中の気泡を抑制する効果、すなわち消泡効果を有しているものであるが、単位容積質量の値から、消泡効果が低下していることがわかる。これは、これら添加剤が黒色物に吸着することで消泡効果が低下していることを意味している。本発明では、黒色微粉末に吸着分散しつつ、同時に消泡効果を発揮しているため、表面美観が改善されていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径1〜15μmの多孔質シリカ微粉末と、この多孔質シリカ微粉末に吸着された下記一般式〔1〕で表されるポリオキシアルキレン誘導体を有しており、前記多孔質シリカ微粉末と前記ポリオキシアルキレン誘導体の比が重量比で99:1〜30:70であることを特徴とする、プレミックスセメント用黒色物析出抑制剤。

O−(PO)−(EO)−H 〔1〕

(ただし、Rは炭素数14〜22のアルキル基およびアルケニル基からなる群より選ばれた一種または二種以上の官能基であり、POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、a=1〜50、b=0〜10、かつaとbのモル比は、a:b=80〜100:20〜0である。)
【請求項2】
プレミックスセメントに対して、請求項1記載の黒色物析出抑制剤を添加することによって、プレミックスセメントの硬化物の表面における黒色物の析出を抑制することを特徴とする、プレミックスセメントの黒色物析出抑制方法。

【公開番号】特開2012−197209(P2012−197209A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63961(P2011−63961)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】