説明

プレミックスモルタル包袋物

【課題】 少なくとも包装袋の外表面が樹脂のような撥水性の高い材質からなるプレミックスモルタル包袋物では、一般に外表面の滑り抵抗が低くなるため、積み上げられた袋が互いに滑り易く、荷崩れを起こし易い。特に、容重の小さい軽量プレミックスモルタルでは、この傾向がより顕著になる。これらの問題を鑑み、多段に積み重ねて搬送しても荷崩れを起こし難いプレミックスモルタル包袋物を袋材等のコスト上昇を伴わずに提供することを課題とする。
【解決手段】 厚さ100〜1000μmの紙製袋に収納されたものであることを特徴とするプレミックスモルタル包袋物。また、包袋物としての厚みが200mm以下であることを特徴とする前記のプレミックスモルタル包袋物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともセメントと細骨材を含有するプレミックスモルタルを袋に収納した包袋物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築や土木工事で充填材、裏込材又はグラウト材などとして充填施工されるセメント系のモルタルは、施工現場等での計量の手間を省くため、予めセメント及び細骨材等を秤量の上乾式混合し、乾式混合物は概ね数kg〜数十kg毎に袋詰めされ、プレミックスモルタル包袋物として出荷されることが多い。出荷の際は、作業効率の観点から、包袋物を概ね5〜10段ほどの高さになるようパレット上に積載し、通常は積載した状態でパレットごと搬送される。パレット上の包袋物の積載高さによっては、搬送中に荷崩れを起こし易く、また倉庫保管も通常はパレットに積み上げられたまま保管されるので振動によっても荷崩れする虞があった。荷崩れを起こすと、落下により破袋の虞がある。従来より、セメント等の水和反応性粉粒物の収納袋として、外装をクラフト紙、内装をポリエチレン等の樹脂フィルムを使用した多層袋やポリエチレン等の樹脂でラミネートした紙製の袋が使用されてきた。また、これらに用いられる樹脂フィルムよりも数倍程度厚くしたポリエチレンフィルムもプレミックスの包装に適することが知られている。(例えば、特許文献1参照。)これらの収納用袋は何れも、水分の侵入を防ぐことを主たる目的に製作されている。このため透水し難い材質である樹脂が袋素材として使用されているが、異材質からなる多層袋は製造工程が繁雑となることに加え、特に、袋材に関わるコストが上昇する。
【特許文献1】特開2003−160174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、少なくとも包装袋の外表面が樹脂のような撥水性の高い材質からなるものでは、一般に外表面の滑り抵抗が低くなるため、積み上げられた袋が互いに滑り易く、荷崩れを起こし易い。特に、容重の小さい軽量プレミックスモルタルでは、このような撥水性表面の袋に収納して積載すると、嵩の割には1袋あたりの重量が軽くなるので、重ね積みされた上部の袋の設置安定性が低下し、より荷崩れし易くなる。このため、積載段数を低く制限する等の必要があり、作業効率や搬送効率の低下に繋がった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記課題解決の為、検討を重ねた結果、特定の厚みの紙製袋を使用することによって、外表面の滑り抵抗の低下を防ぐとともに、袋材自体の圧縮性が高まり表面の変形追従性が高まり、凹凸状態を概ね維持したまま上下間の各袋の接触面積が増大するため、例え容重の小さい軽量プレミックスを収納した場合でも多段積載時の荷崩れを起こし難くなったプレミックスモルタル包袋物が得られたことから、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は、次の(1)〜(4)で表される包袋物である。(1)厚さ100〜1000μmの紙製袋に収納されたものであることを特徴とするプレミックスモルタル包袋物。(2)引張強度が2kN/m以上である紙からなる袋であることを特徴とする前記(1)のプレミックスモルタル包袋物。(3)収納されるプレミックスモルタルの単位体積あたりの質量が、1000kg/m3以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)のプレミックスモルタル包袋物。(4)プレミックスモルタル包袋物の厚みが200mm以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)何れかのプレミックスモルタル包袋物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、かなり高い高さまで多段に重ね置きしても搬送時に荷崩れを起こし難いプレミックスモルタル包袋物が得られる。特に、容重の小さいプレミックスモルタルでも容重の小さいプレミックスモルタルの場合と遜色ない程度まで多段積載しても荷崩れを起こり難く、しかもコスト的にも比較的安価な包装用の袋の使用で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のプレミックスモルタル包袋物に使用する袋は紙製の袋を使用する。紙は、特に強度が低いものや透水性が高いもの以外であれば、使用に制限されるものではない。好ましくは、引張強度が方向によらず概ね2kN/m以上有することができる紙が良い。このような紙として、例えば、クラフト紙、耐油紙、撥水紙、クレープ紙等を挙げることができる。最も好ましくは、強度やコストの両面で有利なクラフト紙が良い。一方、ポリエチレン等の樹脂製の袋では積載時に袋表面の滑り抵抗が低く、積み上げたときの安定性に欠け易く、荷崩れを起こし易いので好ましくない。
【0008】
また、本発明のプレミックスモルタル包袋物に使用する袋紙の厚みは100〜1000μmとする。厚みが100μm未満では、概して引張強度が低いため破袋し易く、また透水防止能力も不足する他、袋を積み上げた際の重さによる袋自体の圧縮量が小さく、荷崩れ防止作用が得られ難いので好ましくない。また、厚みが1000μmを超えると、荷重による紙自体の圧縮率が低下するため、細かい凹凸に応じた変形追従性が得難くなり、滑り抵抗が低下し易くなるので好ましくない。
【0009】
また、本発明のプレミックスモルタル包袋物に使用する袋の形状は特に限定されない。好ましくは、所定の袋厚み幅を備えた直方体状等の形状とする。また、袋の寸法もプレミックスモルタルを収納した包袋物としての厚み以外は特に制限されない。プレミックスモルタル包袋物の厚みは200mm以下にするのが好ましい。厚みの下限値は特に制限されない。厚みが200mmを超えると、多段に積み重ねて積載した際、積載物全体の重心が高くなり過ぎることがあり、設置安定性が確保し難くなるので適当でない。ここで、包袋物の厚みとはプレミックスモルタルを包袋物を重ね積みしようとする際の積載高さ方向の包袋物寸法である。また、包袋物の厚み以外の包袋物寸法は特に制限されず、好ましくは、略直方体状となるものでは、縦及び横とも包袋物の厚みのおよそ2倍以上10倍以下であれば設置に適する。
【0010】
また、本発明のプレミックスモルタル包袋物は、包袋物内部の空隙が少ない方が好ましい。さらに防湿対策から包袋物のプレミックスモルタル投入口は密封状態にしておくのが望ましい。
【0011】
また、本発明のプレミックスモルタル包袋物に収納されるプレミックスモルタルは、単位体積あたりの質量が、1000kg/m3以下のモルタルが好適である。下限値は特には制限されない。好ましくは、100kg/m3とする。1000kg/m3以下のプレミックスモルタルを収納した包袋物では、容積の割にはかなり軽量な為、一般に摩擦力が低く、積載時に荷崩れを起こし易くなるが、本発明の包袋物では十分な滑り抵抗を確保できる。また、プレミックスモルタルは、少なくともセメントと細骨材の乾式混合物で、必要に応じて混和剤・材が添加配合されたものである。任意付加材料である混和剤・材は、モルタルやコンクリートに使用できるものなら特に限定されない。例えば、分散剤(減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤又は流動化剤と称するものを含む。)、保水剤、膨張材、収縮低減剤、気泡剤、空気連行剤、消泡剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、ポゾラン反応性物質、繊維、ポリマーディスパージョン、再乳化粉末樹脂、抗菌剤、顔料等を挙げることができる。また、細骨材は限定されないが、軽量骨材や超軽量骨材を使用すると低容重のプレミックスモルタルが得られやすいので好ましい。より好ましくは、細骨材の最大粒子径が1mm以下の細骨材を使用する。また、セメントは水硬性のものであれば、何れのセメントでも使用できる。
【0012】
また、本発明のプレミックスモルタル包袋物は、例えば施工現場等へ搬送し、開封後混練機中で水を加えて混練すれば打設使用可能なフレッシュモルタルを容易に得ることができる。
【実施例】
【0013】
以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明するが、本発明は以下に表す実施例に限定されるものではない。
【0014】
以下に表す超軽量細骨材(A1〜A2)又は普通細骨材(A3)とセメント(B)を表1に表す配合質量となるようレーディゲミキサ(容積100リットル)に投入し、乾式混合を約1分間行い、プレミックスモルタルを作製した。各プレミックスモルタル約10kgを、以下に表す紙厚さのクラフト紙(C1〜C5)又は樹脂フィルム(D)からなる、横50cm×幅35cm×高さ8cmの略直方体状の袋に表2の組み合わせとなるよう充填し、袋の投入口を密封して包袋物を得た。
【0015】
A1;真珠岩系人工軽量骨材(容重0.1kg/L、最大粒径0.6mm)
A2;真珠岩系人工軽量骨材(容重0.2kg/L、最大粒径3mm)
A3;石灰石砕石(容重1.7kg/L、最大粒径1mm)
B;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
C1;クラフト紙(厚さ75μm、縦方向引張強度2.3kN/m、横方向引張強度1.2kN/m)
C2;クラフト紙(厚さ130μm、縦方向引張強度4kN/m、横方向引張強度2.1kN/m)
C3;クラフト紙(厚さ400μm、縦方向引張強度12.5kN/m、横方向引張強度5.9kN/m)
C4;クラフト紙(厚さ800μm、縦方向引張強度25.1kN/m、横方向引張強度12.0kN/m)
C5;クラフト紙(厚さ1600μm、縦方向引張強度50.4kN/m、横方向引張強度24.3kN/m)
D;ポリエチレンフィルム(厚さ250μm)
【0016】
【表1】

【0017】
得られたプレミックスモルタル包袋物は、110×125cmの設置面を有する木製パレット上に、5段重ね及び10段重ねした。パレットへの包袋物の積載は極力同じ状態とし、パレット積載の包袋物は紐や特別な装置等を用いてのパレット上への或いは包袋物間の固定は一切行わなかった。この包袋物を積載したパレットを、フォークリフトで100mの実質無傾斜の平坦な道を、それぞれ10往復(計2000m)走行中の平均速度10km/時で搬送した。2000m走行の間にパレット積載物の一部ても荷崩れした場合の回数を調べた。尚、荷崩れしたものは、その都度元の積載状態に整えた上で、残りの距離を搬送し、さらに荷崩れ発生の回数を調べた。この結果を表1に併せて記す。
【0018】
表1の結果より、本発明品のプレミックスモルタルは何れもパレットにかなりの段数まで積み重ねても荷崩れを起こし難く、滑り抵抗が高いことがわかる。一方、本発明外の参考品は、何れも荷崩れが頻繁に見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ100〜1000μmの紙製袋に収納されたものであることを特徴とするプレミックスモルタル包袋物。
【請求項2】
引張強度が2kN/m以上である紙からなる袋であることを特徴とする請求項1記載のプレミックスモルタル包袋物。
【請求項3】
収納されるプレミックスモルタルの単位体積あたりの質量が、1000kg/m3以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のプレミックスモルタル包袋物。
【請求項4】
プレミックスモルタル収納物の厚みが200mm以下であることを特徴とする請求項1〜3何れか記載のプレミックスモルタル包袋物。

【公開番号】特開2009−154957(P2009−154957A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338672(P2007−338672)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】