説明

プレートフィンの製造方法、プレートフィン及び熱交換器

【課題】塗装によるプレートフィンの腐食抑制効果をより確実に得られるようにする。
【解決手段】プレートフィン41は、ロール状の素材を使用状態の形状に成形加工した後、ディッピング塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレートフィン型熱交換器におけるプレートフィンの製造方法、プレートフィン及び熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
プレートフィン型熱交換器は、複数のプレートフィンを所定間隔おいて積層してこれら各プレートフィンに形成した貫通孔に熱媒体チューブを挿入固定して構成される。
【0003】
そして、複数のプレートフィン相互間の流路に第1の熱交換媒体(例えば高温のガス)を流通させる一方、熱媒体チューブに第2の熱交換媒体(例えば低温の冷却水)を流通させて、これら各熱交換媒体相互間で熱交換を行う(特許文献1参照)。
【0004】
このようなプレートフィン型熱交換器におけるプレートフィンは、腐食を防ぐなどの目的で塗装を施すことがある(特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−255732号公報
【特許文献2】特開昭60−117098号公報
【特許文献3】実開昭59−76884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、これらのプレートフィンに対する塗装方法としては、プレートフィンの形状に成形する前のロール状の素材に対しロールコティングにより実施するか(特許文献2)、あるいは、熱媒体チューブに取り付けて熱交換器を組み立てた後に実施している(特許文献3)。
【0007】
ところが、成形前のロール状の素材を塗装する場合には、塗装後にプレートフィンの形状にプレス成形することで、該成形時の切断面が塗装されずに外部に露出することになって腐食の要因となる。また、プレートフィンを熱媒体チューブに組み付けた後に塗装する場合には、熱媒体チューブとの結合部に塗料が充分に浸透しにくくなって腐食の要因となる。
【0008】
そこで、本発明は、塗装によるプレートフィンの腐食抑制効果をより確実に得られるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、熱媒体が流れる熱媒体チューブに取り付けられて熱交換器を構成するプレートフィンの製造方法であって、前記プレートフィンの素材となる長尺の部材を規定の大きさでかつ前記熱媒体チューブが挿入固定される貫通孔を形成した成形体に成形加工し、この成形体に塗装を施してプレートフィンとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長尺の素材を規定の大きさでかつ熱媒体チューブが挿入固定される貫通孔を有するよう成形加工した後に、塗装を行ってプレートフィンを得るようにしたため、成形加工後の切断面や熱媒体チューブを挿入固定する貫通孔の内周面も塗装でき、塗装によるプレートフィンの腐食抑制効果をより確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態のプレートフィンが適用されるガスクーラを備える圧縮機の全体構成図である。
【図2】図1のガスクーラの断面図である。
【図3】(a)は図2の左側面図、(b)は図2のA−A断面図である。
【図4】図1のガスクーラに適用されるプレートフィンの一部を示す正面図である。
【図5】図1のプレートフィンをディッピング塗装している状態を示す断面図である。
【図6】図5の塗装作業後のプレートフィンを乾燥のために保持具により保持している状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0013】
本実施形態のプレートフィン型熱交換器は、図1に示すような圧縮機(ターボコンプレッサ)1に適用されている。この圧縮機1は、圧縮機本体3と、圧縮機本体3によって回転するインペラ5,7,9と、各インペラ5,7,9によって順次圧縮した空気をそれぞれ冷却するガスクーラ11,13,15とを主として備えている。
【0014】
圧縮機本体3は、電動機17により駆動軸19を介して回転する駆動歯車21と、駆動歯車21に噛合して回転する2つの従動歯車23,25とを備えている。一方の従動歯車23には、連結軸27,29を介してインペラ5,7がそれぞれ連結され、他方の従動歯車25には、連結軸31を介してインペラ9が連結されている。
【0015】
したがって、電動機17の駆動によって圧縮機本体3が3つのインペラ5,7,9をそれぞれ回転させることになる。これら3つのインペラ5,7,9はそれぞれハウジング6,8,10内に回転可能に収容され、インペラ5,7,9の回転によって、ハウジング6,8,10内に取り込んだ空気を圧縮してハウジング6,8,10外に排出する。
【0016】
ここで、インペラ5は吸入フィルタ33を通して空気Aを取り込み、このインペラ5が取り込んだ空気は、ガスクーラ11→インペラ7→ガスクーラ13→インペラ9→ガスクーラ15の順に流れる。また、3つのガスクーラ11,13,15には、その各冷却水入口11a,13a,15aから冷却水Wがそれぞれ供給され、前記した空気と熱交換を行った後、各冷却水出口11b,13b,15bから外部に排出される。
【0017】
すなわち、本実施形態の圧縮機1では、まず、最上流のインペラ5によって圧縮されて温度上昇した空気が、第1インタクーラとなるガスクーラ11で冷却される。このガスクーラ11で冷却された空気は、その下流に位置するインペラ7によってさらに圧縮されて温度上昇し、第2インタクーラとなるガスクーラ13で冷却される。そして、このガスクーラ13冷却された空気は、最下流に位置するインペラ9によってさらに圧縮されて温度上昇し、アフタクーラとなるガスクーラ15で冷却されてから、レシーバタンク35に貯留される。
【0018】
次に、ガスクーラ11,13,15の詳細な構造について、図2に示したガスクーラ37を用いて説明する。
【0019】
ガスクーラ37は、熱媒体としての冷却水が流れる熱媒体チューブである多数の導管39が、図4に示すプレートフィン41に形成してある貫通孔としての嵌合孔41aに挿入固定されている。プレートフィン41は、図2では省略しているが、導管39の流路方向(図2中で左右方向)に沿って複数積層して配置され、各プレートフィン41相互間には空気流路となる隙間を形成している。また、このプレートフィン41の嵌合孔41a相互間には、多数の切り起こし部41bをブリッジ状に形成してあり、切り起こし部41bにより空気の流れを整流している。
【0020】
嵌合孔41aの周囲には、例えばバーリング加工によって導管39の流路方向(図4では紙面手前側)に突出する筒部41cを形成してある。この筒部41cは、隣接するプレートフィン41との間の隙間(空気流路)を形成するためのスペーサとして機能するとともに、導管39との熱伝達部としても機能する。
【0021】
これら多数の導管39と多数のプレートフィン41とによって熱授受ニット43を構成している。熱授受ニット43はハウジングを構成する胴筒部45内に格納しており、胴筒部45の両端には管板47,49を設けている。管板47,49の外側には、それぞれ液室51,53が形成され、液室51には導管39の一端が開口し、液室53には導管39の他端が開口している。
【0022】
また、液室51は、図3(a)に示す仕切板55によって2つの分室51a,51bに仕切られ、一方の分室51aには、前記した冷却水入口11a(13a,15a)が連通形成され、他方の分室51bには、前記した冷却水出口11b(13b,15b)が連通形成される。すなわち、冷却水入口11a(13a,15a)から分室51aに流入した冷却水は、分室51aに対応する位置にある導管39を通って反対側の液室53に流入する。液室53に流入した冷却水は、液室53で反転してから分室51bに対応する位置にある導管39を通って分室51bに流入し、冷却水出口11b(13b,15b)から外部に流出する。
【0023】
胴筒部45の内部は、気密に形成されていて図3(b)に示す仕切板57によって軸心に沿って空気流動室59が形成されるよう仕切られている。仕切られた他方(図3(b)中で右側)は、図2に示す仕切板61 により、さらに軸心方向(図2中で左右方向)に沿って2つの空気流入室63,65に分割されている。一方の空気流入室63には空気流入口67が設けられ、他方の空気流入室65には空気流出口69が設けられている。
【0024】
そして、図3(b)のように空気流入口67より空気流入室63に流入した空気が、空気流入室63から熱授受ユニット43の図2中で左半分を図2の紙面に対して垂直方向奥側に向けて流れ、図3(b)に示す空気流動室59に至る。その後空気は、空気流動室59を図2中で右方向に流れ、熱授受ユニット43の図2中で右半分を紙面手前に向けて流れてから空気流入室65に至り、空気流出口69より外部に流出する。
【0025】
これにより、導管39を流通する冷却水によって熱授受ユニット43が冷却され、該熱授受ユニット43を空気が流通することで冷却され、冷却された空気が上記したように空気流出口69より流出することになる。
【0026】
このようなガスクーラ37(ガスクーラ11,13,15)に使用している図4に示すプレートフィン41は、長尺の部材であるロール状とした銅よりなる薄板の素材を、規定の大きさにプレス成形して切断する。その際、嵌合孔41aや切り起こし部41bなども同時または別工程で成形加工する。プレートフィン41を、アルミニウムや鉄に比較して熱伝導率の高い銅製とすることで、熱交換器1における熱交換効率を高めている。
【0027】
そして、この成形後の成形体を、ディップ槽に満たした塗料中に浸漬させてディッピング塗装する。すなわち、本実施形態では、プレートフィン41の素材となる長尺の部材を、規定の大きさでかつ導管39が挿入固定される嵌合孔41aを形成した成形体に成形加工し、この成形体に塗装を施してプレートフィン41としている。
【0028】
これにより、成形加工後の成形体の切断面や導管39を取り付ける嵌合孔41aの内周面及び切り起こし部41bの端面も塗装可能となり、塗装によるプレートフィン41の腐食抑制効果をより確実に得ることができ、圧縮機1の性能低下を抑制することができる。
【0029】
このような腐食抑制効果は、本実施形態の圧縮機1を使用するにあたり、高温化した圧縮空気をガスクーラ11,13,15で冷却する際にドレンが排出されて腐食が発生しやすく、特に空気に異物が混入するなど周囲の使用環境が悪い場合には有効である。腐食が発生した場合には、その下流側のインペラに腐食片が付着して動作不良を起こす恐れがあり、ガスクーラ11,13のそれぞれ下流側に位置するインペラ7,9を保護する意味でも有効である。
【0030】
成形後の成形体に対する塗装の前には、成形体に対し、アルカリ脱脂などにより油脂を除去してから、水による洗浄を実施する。洗浄後はエアガンなどの使用によるエアブローによって成形体の表面に付着した水滴を除去する。
【0031】
成形体に対する塗装作業は、図5に示すように、ディップ槽である塗料容器71に満たした塗料73中に成形体(プレートフィン41)を浸漬する。このときプレートフィン41は、その嵌合孔41aに支持棒75が挿入されて支持され、支持棒75は支持アーム77によって支持されている。なお、塗料73としては、エマルジョン塗料(例えば、アクリル変性エポキシ樹脂塗料(コスマー9105:関西ペイント株式会社))を使用する。
【0032】
支持アーム77は、上部に位置して水平方向に延びる掴み部77aと、掴み部77aの両端から下方に延びる連結部77bと、連結部77bの下端から互いに接近する水平方向に延び、支持棒75の端部の凹部に挿入される支持部77cとを備えている。
【0033】
そして、作業者が掴み部77aを掴み、プレートフィン41を図5中で上下左右あるいは前後に移動させることで、プレートフィン41の嵌合孔41aの内周面や切り起こし部41bの切断面などにも塗料を入り込ませ、外部に露出する部分の全域に塗料を付着させる。このとき、支持棒75の外径は、プレートフィン41の嵌合孔41aの内径より充分小さく設定する。これにより、プレートフィン41を図5中で上下あるいは前後に移動させたときに、支持棒75が嵌合孔41a内をその直径方向に相対移動可能であるので、嵌合孔41aの内周面に対しても塗料を付着させることができる。
【0034】
塗料を付着させた後は、プレートフィン41を塗料容器71から取り出し、余分に付着している塗料を塗料容器71に充分滴下させてから、図6に示すように、1枚ずつ保持具79に吊り下げた状態で、図示しない乾燥炉に投入して乾燥させる。保持具79に吊り下げるプレートフィン41は、図5の浸漬時とは上下を逆にすることで、塗料の付着をより均一化する。
【0035】
保持具79は、長方形状のフレーム79aの下部に位置し、プレートフィン41の嵌合孔41aに挿入して支持するフック79bと、フレーム79aの上部に位置し、乾燥炉のラック81に保持させるアーム79cとを備えている。
【0036】
なお、成形後の成形体の塗装については、上記したディッピング塗装に限ることはなく、吹き付け塗装、粉体塗装、焼付け塗装などでもよい。要するに、成形体の表裏両面だけでなく、嵌合孔41aの内周面や切り起こし部41bの切断面など、成形後に外部に露出する部分の全域に塗料を付着できるのであれば、どのような塗装方法でも構わない。
【0037】
また、塗装することによって、例えばメッキによるコーティングよりもコーティング状態を長く保持でき熱交換器として長寿命化を達成できる。しかも、メッキの場合には、塗装に比較して高価な専用の設備が必要であり、設備コストの上昇を招くので、塗装することによって設備コストの上昇を抑えることができる。
【符号の説明】
【0038】
11,13,15 ガスクーラ(熱交換器)
39 導管(熱媒体チューブ)
41 プレートフィン
41a プレートフィンの嵌合孔(貫通孔)
73 塗料
W 冷却水(熱媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が流れる熱媒体チューブに取り付けられて熱交換器を構成するプレートフィンの製造方法であって、前記プレートフィンの素材となる長尺の部材を規定の大きさでかつ前記熱媒体チューブが挿入固定される貫通孔を形成した成形体に成形加工し、この成形体に塗装を施してプレートフィンとすることを特徴とするプレートフィンの製造方法。
【請求項2】
前記成形体に対する塗装は、成形体を塗料中に浸漬して行うディッピング塗装法であることを特徴とする請求項1に記載のプレートフィンの製造方法。
【請求項3】
熱媒体が流れる熱媒体チューブに取り付けられて熱交換器を構成するプレートフィンであって、前記プレートフィンの素材となる長尺の部材が規定の大きさでかつ前記熱媒体チューブが挿入固定される貫通孔を有するよう成形加工された成形体が塗装されていることを特徴とするプレートフィン。
【請求項4】
請求項3に記載のプレートフィンを備えたことを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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