説明

プログラム化されたパルス充電の減衰を備えた神経刺激システム

局所麻酔投与のためのプロセッサ搭載神経刺激システムは、印加電流のプログラムされた関数としてパルス幅を変更するか、または調整されたパルス幅の関数として印加電流を変更する。システムはまた、波形周波数内で分離され、減衰域内の印加電流の関数として同時に減衰される、様々なパルス幅成分の繰返しサイクルの波形を提供する。パルス幅と減衰域内の印加電流との間の起こり得るな関数関係の中には、印加電流の関数としてのパルス幅の指数関数的減少がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局所麻酔投与のための神経刺激システム、より詳細にはプロセッサ搭載神経刺激システムに関する。このシステムでは、パルス継続時間を印加電流のプログラム関数として変更するか、または印加電流をパルス継続時間の関数として変更することにより、減衰域全体にわたってパルス充電を変更する。
【背景技術】
【0002】
局部麻酔の分野は、手術後の苦痛を軽減するために、および外傷または慢性苦痛の長期的な軽減のために、手術の間に特定の人体領域に麻酔を投与する手法に関する。多くの場合、局部麻酔は、より高い安全性、手術後の疼痛管理の有効性および麻酔コストの低減の理由から、全身麻酔より望ましいことが明らかになっている。
【0003】
局部麻酔投与技法は、ターゲットとなる神経または神経叢の近傍における局部麻酔投与を最適化して、神経遮断を確立させることを目的としている。好結果の局部麻酔投与は、ターゲットとなる神経または神経系に対し、正確な位置に麻酔することによって得られた。
【0004】
対象神経の近傍に投与針を刺す(外部から目視できない)ために、様々な技法が使用されてきた。針の配置の従来の方法の1つは、感覚異常を引き起こすことがあった。この技法の欠点としては、特に、混乱をきたし、そして/もしくは沈静剤を与えられた患者のうちで、正確な患者応答の欠落を生じることがあった。
【0005】
一般的技法は、神経刺激器の針に電気的に接続された神経刺激器を使用していた。このような方法は、電気パルスが運動神経線維を刺激して、刺激された筋肉を収縮させるか、または知覚神経刺激の場合には感覚異常を引き起こすという現象を基礎としていた。
【0006】
神経刺激器の針は、患者の組織内の遮断される神経の近傍に刺され、先に進められる。この針の進行は、筋肉収縮を目視検知によって確認することによって、または神経刺激器の針を通って流れる電流刺激を患者が感じているという反応を誘発することによって判断できる、対象神経刺激の達成まで進められる。
【0007】
神経刺激器により供給される電流は、神経刺激器の針がさらに進行するに伴い減少され、針の進行は、針の先端と対象神経との間の所定の距離に関連させて低下させた電流レベルを用い、対象神経が刺激されるまで続いた。
【0008】
従来の電気的神経刺激技法は、振動(方形波)電流発生器によって神経刺激器の針に供給される微弱な直流電流を利用していた。電流はパルス化され、一般に1Hzまたは2Hzの周波数であった。電流振幅は、例えばポテンショメータによって調整され、周波数およびパルス継続時間は一定に維持されていた。対象神経または神経叢の筋肉神経支配に一致する適切な運動収縮が設定周波数において発生するとき、電流はアンペア値を漸進的に減少されると同時に、針は神経を探索するために進行されていた。極めて低電流(通常0.2〜0.5mA)において運動収縮が発生することは、針の先端と神経との間が近接しているかまたは接触していることを示していた。その後、麻酔量の一部が針を通して投与され、神経刺激電流への応答を終了していた。応答が最初の投与によって終了していた場合、針は対象神経に近接して適切に位置決定されているものと見なされ、残りの麻酔量が投与された。
【0009】
パルス継続時間、すなわちパルス幅は、神経または神経叢を刺激するのに用いられる周期パルス方形波のミリ秒での継続時間である。パルス継続時間または電流振幅の増加は電子の流れの総量、すなわちパルス充電を、方形波に基づいた面積に比例して増加させた。したがって、電流振幅を含む他のパラメータが一定に保たれる場合、パルス継続時間の増加は結果的に、パルス幅の関数である距離が大きく離れた位置にある神経を刺激する能力を増加する。パルス幅が長い(例えば、0.1ミリ秒に比較して0.3ミリ秒)ほど高い感度が得られ、大きく離れた位置の神経または神経叢を刺激する結果を得た。対照的に、小さいパルス幅(例えば、0.1ミリ秒または0.05ミリ秒)は、針の先端の最終的な位置が、神経まで最大の時に、特異性を最大にした。これにより針の最適な位置が保証された。
【0010】
使用される神経刺激器の大部分は事前設定された単一パルス継続時間(例えば、0.1ミリ秒または0.2ミリ秒)を有する。最近の神経刺激器の一部は、選択されたパルス幅、例えば、0.1ミリ秒、0.3ミリ秒、0.5ミリ秒、または1.0ミリ秒にパルス継続時間を設定することが可能であった。
【0011】
長いおよび短いパルス幅の交番連続電気パルスを発生する神経刺激器が米国特許第5,853,373号(特許文献1)に開示されていた。継続時間の長いパルスは、継続時間の短いパルスが観測可能な刺激を生成できない距離において、皮膚貫通後に1秒間隔で対象神経を刺激すると言われてきた。対象神経が近づいた場合、長いおよび短い継続時間のパルスの両方は、電流振幅の減少なく、0.5秒間隔(最初に観測された周波数の2倍)で観測可能な刺激(運動収縮)を生成すると言われていた。
【特許文献1】米国特許第5,853,373号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
神経刺激システムは1つの神経刺激器出力成分、例えばパルス幅またはパルス振幅を、他の成分のオペレータ設定の増分値の関数として変更する。
【0013】
神経刺激システムはディスプレイならびにキー、スイッチ、タッチスクリーン、ポテンショメータなどといったオペレータ入力装置に接続されたコントローラを含む。コントローラは、パルス波電流出力を発生するパルス発生ハードウェアを作動させる信号を生成する。
【0014】
コントローラは、例えばパルス幅を、パルス電流振幅のオペレータの調整による漸進的設定値の関数として変更するようにプログラムされている。関数は必ずしも線形でなく、電流振幅の段階的な増分値と、神経刺激針の先端と対象神経の間の距離との間の線形関係を最適に生成するように選択される。
【0015】
コントローラは、様々なパルス幅成分の繰返しサイクルを有するパルス波形を生成するモードに設定されてもよく、各パルス幅成分はパルス振幅のオペレータの調整による漸進的設定値の関数として独立に変化する。
【0016】
上述の概論から、本発明の態様は局部麻酔の投与における効率を改善する、上述の全体特性を有する神経刺激システムを提供することにある、ことは理解されるであろう。
【0017】
本発明の特徴は、神経刺激システム神経遮断麻酔の投与を簡素化する、上述の全体特性を有する神経刺激システムを提供することにある。
【0018】
本発明の動機は、使用が比較的簡単な、上述の全体特性を有する神経刺激システムを提供することにある。
【0019】
本発明の別の態様は、神経刺激針の誘導機能を持ち合わせる、上述の全体特性を有する神経刺激システムを提供することにある。
【0020】
本発明の別の動機は、低コストの大量生産に最適である、上述の全体特性を有する神経刺激システムを提供することにある。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、パルス充電パラメータのオペレータの調整による漸進的設定値の伝達関数としてパルス充電を変更する、上述の全体特性を有する神経刺激システムを提供することにある。
【0022】
本発明の別の特徴は、様々なパルス幅成分の繰返しサイクルを有するパルス波形を生成し、各パルス幅成分はパルス振幅のオペレータの調整による漸進的設定値の伝達関数として独立に変化する、上述の全体特性を有する神経刺激システムを提供することにある。
【0023】
本発明の他の態様、特徴および考慮事項は、一部は以下で明らかになり、一部は以下において指摘されるであろう。
【0024】
これらの目的のために、本発明は、それによって上述の態様、特徴および考慮事項、ならびに他の態様、特徴および考慮事項が達成される、要素、部品配置および一連のステップの特定の組み合わせにおける実施形態を見出す。実施形態のすべては添付図面に関連し、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲において詳細に指摘および示されるであろう。
【0025】
添付図面には、本発明の可能な様々な例示的実施形態の1つが示されている。
==関連出願==
本出願は2005年8月2日出願の米国特許仮出願第60/705,009号の利益を主張する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に図面を詳細に参照すると、参照符号10は、本発明に従って構成された、神経刺激システム全体を示す。システム10はコントローラ、例えばマイクロプロセッサを含み、このコントローラは1つの神経刺激器出力パルス充電成分、例えばパルス幅またはパルス電流振幅を、他のパルス充電成分のオペレータ設定の増分値の所定の関数として変更するようにプログラムされる。複数の関数のうちの選択された1つは、特定のターゲットとなる神経または他の解剖学的パラメータに対して経験的に決定された関数として、使用されてもよい。
【0027】
コントローラ12は、ディスプレイ14およびオペレータ入力16を含むオペレータインタフェースといった入出力装置に接続される。プログラムモードを設定するため、およびパルス電流振幅またはパルス幅などの可変パラメータを調整するために、オペレータ入力16は、ディスプレイ14に組み込まれたタッチスクリーンの部分を備えてもよく、あるいはキー、メンブレンタッチパッドまたは従来の神経刺激器で使用される、例えばポテンショメータといった他の入力装置を備えてもよい。
【0028】
電源18は、コントローラならびに入力/出力デバイス14、16およびパルス発生器(すなわち、パルス発生ハードウェア20)に電力を供給するために使用される。コントローラ12は、パルス発生ハードウェアのパルス列出力を制御するためにパルス発生ハードウェア20に供給される信号を生成する。手元の特定手順に利用できる特定の伝達関数に依存して、コントローラ12は、例えば、パルス幅の値を、オペレータ入力16において設定する、パルス電流振幅のオペレータの調整による漸進的設定値の特定関数としてプログラムされる。オペレータ入力16はまた、コントローラの動作の適切なモード、例えば特定のプログラムされた関数を設定するために使用される。パルス発生ハードウェア出力は一対の出力端末22、24で表示される。
【0029】
次に図1を参照すると、リード線26は出力端末22の1つと、例えば投与針28とを相互接続し、一方、戻り電流経路リード線30は患者と他の出力端末24とを相互接続する。
【0030】
神経刺激システム10を針または皮膚プローブ28に結合することにより、システム10は、神経または神経叢の近傍の神経での侵襲的電気位置選定のため、また本明細書に引用されている米国特許第6,533,732号に示された経皮的電極誘導技法のため、または神経または神経叢の近傍の神経での非侵襲的経皮的電気位置選定のために使用されてもよい。システム10はまた、本明細書に引用されている米国特許出願第2004/0059247号に記載された、経皮電極と皮下電極とを組み合わせた誘導に関連して使用されてもよい。
【0031】
コントローラ12でプログラムされる様々な動作モードの中には、現在実施されている従来型の神経刺激がある。このようなモードは、オペレータ入力16を介して選択可能であり、これにより医師はパルス電流振幅を漸進的に増加または減少でき、一方で、出力パルス列は一定パルス幅、例えば0.1ミリ秒に維持される。
【0032】
選択される可能性がある別のプログラムされる動作モードは、各々が波形周波数の1/3(例えば 1/3秒)だけ分離している、3つの漸進的に減少または漸進的に増加するパルス幅成分の繰返しサイクルを有する出力パルス列の生成である。第1モードにおけるのと同様に、医師はオペレータ入力16の操作によってパルス電流振幅を漸進的に増加または減少でき、一方で、各パルス幅成分のパルス幅は維持される。
【0033】
この第2動作モードを使用する場合、ターゲットとなる神経から離れた位置において、医師は、例えば収縮のような、1秒間隔で長いパルス幅成分に応答した刺激を認識することになる。針28がターゲットとなる神経の方向に進行するに伴い、中間パルス幅成分がターゲットとなる神経の刺激を開始し、医師は、1/3秒継続的に休止によって分離された、1/3秒離れた2つの収縮を認識することになる。
【0034】
ターゲットとなる神経が針の先端に近接すると、パルス幅成分の各々から神経収縮が発生し、1秒当たり3増加する割合で発生する。
【0035】
収縮の漸進的な増加率からの偏差は、刺激針28の方向が変化した、すなわち、斜めの経路に進行していることを示す。例えば、中間幅成分によって引き起こされる収縮が発生し、その収縮がその後に消滅した場合、医師は、針の貫入が中間の深さの時に、針の経路の調節が必要であることに気付くであろう。
【0036】
オペレータ入力16によってパルス充電の減衰モードに設定されると、コントローラ12はパルス発生ハードウェア20を起動して、パルス列波形出力を生成する。この場合、パルス充電成分の1つ、すなわちパルス電流振幅またはパルス幅は、他の調整された増分値の関数として変化する。
【0037】
図3に示されたグラフ表示を参照すると、ターゲットとなる神経からある一定の距離における神経刺激に対して、パルス充電成分値は、例えば5mA電流振幅および1ミリ秒パルス幅に設定される。神経刺激器の針28がターゲットとなる神経の方向に進行されるに伴い、医師はパルス電流振幅を漸進的に減少させて均一な応答収縮を維持するようにする。
【0038】
図3の点32に示されるように、パルス電流が所定のしきい値、例えば3.0mAにまで減少すると、プログラムは減衰域に入り、パルス継続時間は所定のパルス振幅の関数として、例えば指数関数的に減少し、例えば図3における点34で示される、0.5mAのパルス振幅において0.1ミリ秒の最小値またはそれ以下にまで減少する。この点において、針は適正に位置決定される。このように、減衰域は点32と34の間に広がる。パルス振幅をさらに減少させてもパルス幅に変化は生じない。
【0039】
したがって、神経に接近するに伴い、より小さいパルス充電によって反応収縮が発生し、一方で、神経を刺激する能力は維持される。
【0040】
事前にプログラムされた関数は経験的に収集されたデータに基づいてもよく、最大直線性または詳細な情報、感度、特異性または改善された患者快適性をもたらすために効果的であることを立証する他の任意の関係に関して最適に設定されてもよい。最適には、関数は、広範囲の電流レベル調整全体にわたって運動収縮を線形的に発生するようにプログラムされる。
【0041】
あるいは、コントローラ12は、パルス幅の調整される増分値の関数として電流振幅を変更し、この電流振幅が線形に変化するようにプログラムされてもよい。
【0042】
一定パルス継続時間の方形波の波形列出力を使用する場合、神経を刺激するのに必要な最小電流振幅は、神経刺激電極から神経までの距離の逆2乗の関数で変化する。
【0043】
結果的に、従来の神経刺激が用いられる場合、針が漸進的に神経の方向に進行するに伴い、一般に、強い運動反応が突然発生する。
【0044】
パルス幅は印加電流振幅の関数として徐々に変化するため、パルス振幅の関数としてのパルス幅の指数関数的増加は、神経からのある一定距離における運動反応を発生する能力を広範囲で可能にする。電流振幅に指数関数的に関係する最初の長いパルス継続時間は、神経からの距離の関数として、最小電流振幅が指数関数的に増加する事実を補償する。したがって、最小電流振幅と神経からの距離との間のより優れた線形関係が得られる。したがって、医師は、針の先端に対する最終的な神経位置の特異性を犠牲にすることなく、例えば神経からのある一定距離において、刺激能力の徐々の変化および収縮を観測できる。
【0045】
パルス電流振幅の関数としてのパルス幅の変化の様々な関数関係、またはパルス幅の関数としてのパルス電流振幅は、各々の対象神経または神経叢に対して経験的に決定できる。例えば、特定の神経または深部神経に関しては、浅部の神経に対する場合よりも長い初期パルス幅が適正であり、したがって、関数関係は振幅の高レベルの指数関数または振幅の他の関数を必要とする。特定の神経、神経の種類または神経グループに対しては特定の関数を導き出す必要があり、医師はオペレータ入力16において特定の対象神経に対する適切なプログラムを選択する、ことが予測される。
【0046】
上述のとおり、特定の神経に対するパルス幅とパルス電流振幅との関数関係は、プロッティングによって経験的に決定されてもよい。例えば、針は、米国特許第6,533,732号または米国特許出願第2004/0059247号に記載された電極誘導デバイスおよび技法を用いることにより、ターゲットとなる神経の位置を探すために解剖学的に位置決定されてもよい。
【0047】
針を皮下貫入すると、電流振幅は段階的に減少し、最大パルス幅で対象神経の刺激を発生する。次に、針は漸進的に直線距離、例えば2mmで進行され、電流振幅は徐々に、例えば5mAから4.5mAなどに減少され、この状態で最初に述べたものと実質的に同一の神経刺激レベルを有する。
【0048】
針の漸進的な進行およびパルス振幅の減少は、パルス振幅に相互に関係する特定の深さに針が達するまで、例えば3.0mAから2.5mA(図3のグラフ上の点32)に達するまで続き、その後、刺激レベルを維持するためにパルス幅を減少する。
【0049】
神経刺激レベルを維持するのに必要な、パルス振幅の漸進的な減少に関連する針の漸進的直線的進行およびパルス幅の減少は、例えばパルス振幅が約0.5mAである点(図3のグラフ上の点34)に達するまで続き、その後、必要がなくなるまでパルス幅はさらに減少し、針の先端の適正位置をほぼ決定する。
【0050】
様々な神経または神経叢の各々に対するプロット値に相関のある、パルス振幅に対するパルス幅の伝達関数が次に生成され、プログラムされてコントローラ12に格納される。
【0051】
オペレータ入力16において選択される可能性がある動作の別のモードは、パルス充電の減衰に関連し、各々が波形周波数の1/3(例えば 1/3秒)だけ分離した、3つの漸進的に減少または漸進的に増加するパルス幅成分の繰返しサイクルを有する出力パルス列の生成である。
【0052】
図5を参照すると、3つのパルス幅成分の各々に対するパルス充電値のプロットが示されている。最大パルス幅成分は0.6ミリ秒の初期パルス幅で、中間パルス幅成分は初期パルス幅0.4ミリ秒で示され、最小パルス幅成分は初期パルス幅0.6ミリ秒を有する。
【0053】
上述のとおり、漸進的に増加または漸進的に減少するパルス幅成分を用いることにより、収縮の割合または神経刺激の他の指標の割合の変化を試験することによって、針の誘導を容易にできる。
【0054】
再度図5を参照すると、パルス幅成分の各々に対するパルス充電値が最初に、例えば5mAパルス電流振幅に、設定されていることに注意すべきである。医師が針をターゲットとなる神経の方向に進行するに伴い、医師は漸進的に、直線的にパルス電流振幅を減少させて、神経刺激を維持するようにする。
【0055】
パルス電流が所定のしきい値、例えば3.0mAまたは2.5mAを超えて減少する時、コントローラ12は各々のパルス幅のパルス幅成分を供給パルス振幅の所定の関数として減少させる。この減少は、針が適切に位置する0.5mAまたはそれ以下のパルス振幅において、例えば0.1ミリ秒の、均一な最小パルス幅が得られるまで続けられる。
【0056】
このように、本発明の様々な態様、特徴および動機を達成し、および実際的用途での条件に適合する、プログラム化されたパルス充電の減衰を備えた神経刺激システムが提供されることは理解されるであろう。
【0057】
様々な実行可能な実施形態が本発明から実現されるため、そして本発明の精神から逸脱することなく本明細書に記載された例示的実施形態において様々な変更が可能であるため、本明細書に記載され、または添付図面に示されるすべての事項は、例示的なものであり、これらに制限されるものではないと解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
添付図面には、本発明の可能な様々な例示的実施形態の1つが示されている。
【図1】対象の正中神経の位置を確認するために神経刺激器の針を位置決めするのに使用される、本発明の神経刺激システムの典型的用途の図である。
【図2】本発明の神経刺激システムの構成要素のブロック図であり、本発明に従って神経刺激器出力の発生を制御するためにパルス発生ハードウェアに接続されたコントローラを示す。
【図3】神経刺激器の出力パルス充電成分を表すグラフであり、本発明に従ってパルス電流振幅の関数として変化するパルス幅またはパルス継続時間を示す。
【図4】図3に示される場合と同様な、パルス電流振幅の関数として変化するパルス幅値の棒グラフ表示である。
【図5】本発明に従う神経刺激器の出力パルス充電成分のグラフ表示であり、パルス列は様々なパルス幅成分のサイクルを含み、その各パルス幅成分は印加電流振幅の関数として変化する。
【図6】図5に示された3つのパルス幅成分の各々のパルス幅値の棒グラフ表示であり、その各パルス幅値は印加電流振幅の関数として変化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システムであって、
前記システムはコントローラ、パルス発生器およびオペレータインタフェースを備え、
前記コントローラは前記パルス発生器および前記オペレータインタフェースに動作可能に接続され、
前記パルス発生器はパルス出力波形を発生し、
前記波形は複数のパルスを含み、各パルスはパルス充電を有し、
各パルス充電は可変パラメータの関数を含み、
前記可変パラメータはパルス電流振幅およびパルス幅を含み、
前記オペレータ入力は、前記パラメータの1つを漸進的に変更することに関与し、
前記コントローラは、他のパラメータを前記1つのパラメータの増分値の関数として変更するようにプログラムされている、神経刺激システム。
【請求項2】
前記関数が指数関数であることを特徴とする、請求項1に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項3】
前記パラメータの1つがパルス電流振幅を含み、前記他のパラメータはパルス幅を含むことを特徴とする、請求項1に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項4】
投与針をさらに含み、前記パルス発生器が前記投与針に動作可能に接続されていることを特徴とする、請求項3に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項5】
前記関数が経験的に導き出されていることを特徴とする、請求項1に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項6】
前記コントローラが、漸進的パルス電流振幅値の初期の範囲全体にわたって一定のパルス幅を維持し、その後、漸進的に減少するパルス電流振幅値の減衰域全体にわたってパルス幅を減衰させることを特徴とする、請求項3に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項7】
前記波形が、波形周波数の1/3だけ分離している3つの異なるパルス幅成分の繰返しサイクルを有するパルス列を備え、
各パルス幅成分は可変パラメータの関数を含むパルス充電を有し、
前記可変パラメータはパルス電流振幅およびパルス幅を含み、
前記オペレータ入力は、前記各パルス幅成分の前記パルス電流振幅パラメータを変更することに関与し、
前記コントローラは、前記各パルス幅成分の前記パルス幅パラメータを、前記パルス振幅パラメータの増分値の関数として変更するようにプログラムされていることを特徴とする、請求項1に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項8】
ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システムであって、
前記システムがコントローラ、パルス発生器およびオペレータインタフェースを備え、
前記コントローラは前記パルス発生器および前記オペレータインタフェースに動作可能に接続され、
前記パルス発生器はパルス出力波形を発生し、
前記波形は、前記同一パルス電流振幅において、波形周波数の1/3だけ分離している3つの異なるパルス幅成分の繰返しサイクルを含み、
前記オペレータインタフェースは、各パルス幅成分の前記パルス電流振幅を同時に変更することに関与する、神経刺激システム。
【請求項9】
前記3つの異なるパルス幅成分がパルス幅を漸進的に減少させることを特徴とする、請求項8に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項10】
前記コントローラが、動作の1つのモードにおいて前記他のパラメータを1つのパラメータの増分値の関数として変更し、
前記コントローラは動作の複数のモードにおいてプログラムされていることを特徴とする、請求項1に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項11】
前記コントローラが動作の異なるモードにおいてプログラムされている神経刺激システムであって
前記他のパラメータは、一定値を維持し、前記1つのパラメータの増分値の関数として変化しないことを特徴とする、請求項10に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項12】
前記コントローラが動作の異なるモードにおいてプログラムされている、神経刺激システムであって、
前記パルス発生器は、波形周波数の1/3だけ分離している3つの異なるパルス幅成分の繰返しサイクルを含むパルス出力波形を発生し、
前記オペレータ入力は、前記パルス幅成分の各々の前記パルス電流振幅を漸進的に変更することに関与することを特徴とする、請求項10に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項13】
請求項1に従って構成された神経刺激システムのコントローラをプログラミングする方法であって、
1)投与針を前記パルス発生器に動作可能に接続するステップと、
2)ターゲットとなる神経の位置を確認するために、被験者の体内の解剖学的に位置決定された位置に前記投与針を導入するステップと、
3)前記投与針を前記ターゲットとなる神経の方向に直線的に進行すると同時に、前記パルス電流振幅を直線的に漸進的に減少することにより、前記ターゲットとなる神経に対する刺激を発生するステップと、
4)投与針の貫入とパルス電流振幅との間の線形関係を維持させつつ、刺激を維持させる必要があるときに、前記パルス幅を減少させるステップと、
5)前記ターゲットとなる神経の認識および追跡の刺激を維持するのに必要な、パルス電流振幅とパルス幅の前記観測された相関値を認識するステップと、
6)プロットされた値と相関する、パルス電流振幅に対するパルス幅の伝達関数を用いて前記コントローラをプログラミングするステップと、を備えるプログラミング方法。
【請求項14】
パルス波形出力を発生するパルス発生器とオペレータインタフェースとを有する神経刺激システムのコントローラをプログラミングする方法であって、前記コントローラは前記パルス発生器および前記オペレータインタフェースに動作可能に接続されており、
a)投与針を前記パルス発生器に動作可能に接続するステップと、
b)ターゲットとなる神経の位置を確認するために、被験者の体内の解剖学的に位置決定された位置に前記投与針を導入するステップと、
c)前記投与針を前記ターゲットとなる神経の方向に直線的に進行すると同時に、前記パルス電流振幅を直線的、漸進的に減少することにより、前記ターゲットとなる神経の刺激を発生するステップと、
d)投与針の貫入とパルス電流振幅との間の線形関係を維持させつつ、刺激を維持させる必要があるときに、前記パルス幅を減少させるステップと、
e)前記ターゲットとなる神経の刺激を維持するのに必要な、パルス電流振幅とパルス幅の相関値を観測および認識するステップと、
f)プロットされた値と相関する、パルス電流振幅に対するパルス幅の伝達関数を用いて前記コントローラをプログラミングするステップと、を備えるプログラミング方法。
【請求項15】
前記1つのパラメータがパルス幅を含み、前記他のパラメータはパルス電流振幅を含むことを特徴とする、請求項1に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項16】
前記コントローラが、漸進的に減少するパルス幅値の減衰域全体にわたってパルス電流振幅を減衰させることを特徴とする、請求項15に記載のターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項17】
電流振幅値が前記減衰域より低い値まで減少すると、前記コントローラが一定パルス幅を維持することを特徴とする、請求項6に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。
【請求項18】
前記コントローラが、各パルス幅成分の前記パルス幅パラメータを、前記パルス振幅の増分値の関数として同時に変更するようにプログラムされていることを特徴とする、請求項7に記載の、ターゲットとなる神経の近傍で投与針の位置決定を行うための神経刺激システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−502433(P2009−502433A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525109(P2008−525109)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/029892
【国際公開番号】WO2007/016550
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(503143253)
【Fターム(参考)】