説明

プロジェクションナットの選別装置と選別方法

【課題】プロジェクションナットの形状面の特性を利用して、異常なねじ孔径を有するナットの送出を規制する選別装置と選別方法を提供する。
【解決手段】プロジェクションナット1は、四角い本体部の角部を塑性変形させて溶着用突起4が形成されたもので、前記塑性変形による角部の変形長さをねじ孔の内径の大小に対応させて長変形部5aと短変形部5bに区分し、この長変形部5aと短変形部5bの長短差によって、長変形部5bを有するナット1aは通過でき、短変形部5bを有するナット1bは通過できないゲート部15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゲート部において異常なねじ孔径のプロジェクションナットの通過を禁止するとともに、正常なねじ孔径のプロジェクションナットの通過を許容するプロジェクションナットの選別装置と選別方法に関している。
【背景技術】
【0002】
搬送通路にゲート部が設けられ、このゲート部において異常状態のプロジェクションナットの通過を規制することが、特許第3416770号公報に記載されている。以下の説明において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。
【特許文献1】特許第3416770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の規制は、プロジェクションナットの表裏選別に対して機能するものであり、ねじ孔の大きさに関連した選別機能は果たしていない。とくに、四角い本体部の中央にねじ孔が形成され、前記本体部の片側の四隅に溶着用突起が形成されたナットにおいては、例えば、2つのナットが本体部の縦、横、高さが同じで、しかも溶着用突起が本体部下面から突出している突出長さも同じで、ねじ孔の内径だけが異なっている場合がある。このようにねじ孔だけが異なった複数のナットが、1つの搬送通路を通過する場合には、ナットの形状面の特性を利用して、異常なねじ孔径を有するナットの送出を規制する必要がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、プロジェクションナットの形状面の特性を利用して、異常なねじ孔径を有するナットの送出を規制することのできるプロジェクションナットの選別装置と選別方法の提供を目的とする。
【問題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、選別装置の発明であり、プロジェクションナットは、四角い本体部の中央にねじ孔が形成され、前記本体部の角部をねじ孔の軸線方向に塑性変形をさせて溶着用突起が形成されたものであって、正常寸法のプロジェクションナットはゲート部を通過し、異常寸法のプロジェクションナットはゲート部の通過が阻止されることによって異常プロジェクションナットの送出が回避されるものであって、前記塑性変形による角部の変形長さをねじ孔の内径の大小に対応させて長変形部と短変形部に区分し、この長変形部と短変形部の長短差によって、長変形部を有するプロジェクションナットは通過でき、短変形部を有するプロジェクションナットは通過できないゲート部が設けられていることを特徴とするプロジェクションナットの選別装置である。
【発明の効果】
【0006】
四角い本体部の中央にねじ孔が形成され、前記本体部の片側の四隅に溶着用突起が形成されたプロジェクションナットには、本体部の縦、横、高さおよび本体部からの溶着用突起の突出長さが同じか、もしくはこれらの各部寸法が区別できないほどに近似した寸法とされた複数のナットにおいて、ねじ孔の内径だけが大内径と小内径のように異なっている場合がある。本発明はこのようなねじ孔の内径の大小に対応したものである。
【0007】
前記塑性変形による角部の変形長さをねじ孔の内径の大小に対応させて長変形部と短変形部に区分してある。例えば、長変形部とされたナットには大内径のねじ孔を形成し、短変形部とされたナットには小内径のねじ孔を形成して区分可能としてある。そして、長変形部を有するナットはゲート部を通過でき、短変形部を有するナットはゲート部を通過できないように構成したものである。例えば、大内径のナットを貯留したパーツフィーダから搬送されるナットの中に、作業者の見間違いなどにより、小内径のナットが誤って混入している場合には、小内径ナットが送出されないように規制する必要がある。したがって、大内径ナットに長変形部を付与するとともに、小内径ナットには短変形部を付与しておくことにより、この異常な小内径ナットの送出がゲート部で阻止され、後工程に支障が発生するのを未然に防止することができる。
【0008】
つまり、長変形部を有するナットを正常ナットとしてゲート部を通過できるようにしたもので、前述の場合とは逆に小内径ナットを正常なものとして送出するときには、長変形部を有するナットに小内径のねじ孔が形成されているのである。換言すると、プロジェクションナットの形状面の特性である長変形部や短変形部の寸法差を利用して、異常なねじ孔径を有するナットの送出を規制している。
【0009】
上述のようにして、ナット本体部の縦、横、高さおよび本体部からの溶着用突起の突出長さが同じか、もしくはこれらの各部寸法が区別できないほどに近似した寸法とされた複数のナットにおいて、ねじ孔の内径だけが大内径と小内径のように異なっている場合、前記長変形部と短変形部を識別の根拠にして、正規のねじ孔寸法のナットだけを送出することができ、後工程におけるトラブルを回避することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記ゲート部は、溶着用突起を上向きにした状態で本体部を収容する通過溝と、この通過溝の上側に配置された規制部材によって構成され、前記通過溝の開放角部と規制部材の間隔が、長変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できるが、短変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できない寸法とされている請求項1記載のプロジェクションナットの選別装置である。
【0011】
溶着用突起は、前記本体部の角部をねじ孔の軸線方向に塑性変形をさせて形成されているため、変形部の終了端から溶着用突起の膨らみ部が形成されている。この膨らみ部は、ねじ孔の直径方向に膨出している。溶着用突起の膨らみ部が開放角部にひっかかって本体部が吊り下げられたような状態になる。したがって、長変形部ナットにおいては前記開放角部から溶着用突起先端部までの距離が短いので、規制部材に干渉することなく通過できる。一方、短変形部ナットにおいては前記開放角部から溶着用突起先端部までの距離が長いので、規制部材に干渉し通過することができない。そして、上記のように開放角部から溶着用突起先端部までの距離に長短の差ができるので、規制部材に干渉するものと干渉しないものの区別ができる。したがって、所定のねじ孔径のナットだけを確実に送出することができ、異常内径ナットの送出が確実に禁止される。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記通過溝の深さは、長変形部の長さ以上の寸法に設定されている請求項1または請求項2記載のプロジェクションナットの選別装置である。
【0013】
ナットは、上述のように膨らみ部と開放角部との関係で吊り下げられた状態になるので、前記通過溝の深さを長変形部の長さ以上に設定することにより、本体部が通過溝内を円滑に通過できる。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記ゲート部は、溶着用突起を通過させる拡幅部と本体部を通過させる狭幅部が形成されたほぼコ字型の部材によって形成され、前記拡幅部と狭幅部の境界部に規制角部が設けられ、この規制角部の高さ位置が、長変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できるが、短変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できない高さとされている請求項1記載のプロジェクションナットの選別装置である。
【0015】
溶着用突起が下側になった状態で搬送される場合には、長変形部を有するナットの膨らみ部は低い位置となる。また、短変形部を有するナットの膨らみ部は高い位置となる。前記規制角部の高さ位置が、長変形部を有するナットの溶着用突起は通過できるが、短変形部を有するナットの溶着用突起は通過できない高さとされているので、短変形部ナットの膨らみ部が規制角部にひっかかってゲート部の通過が禁止される。したがって、長変形部ナットは正常なねじ孔ナットとして送出され、短変形部ナットは異常なねじ孔ナットとして送出が禁止される。
【0016】
請求項5記載の発明は、選別方法の発明であり、プロジェクションナットは、四角い本体部の中央にねじ孔が形成され、前記本体部の角部をねじ孔の軸線方向に塑性変形をさせて溶着用突起が形成されたものであって、正常寸法のプロジェクションナットはゲート部を通過し、異常寸法のプロジェクションナットはゲート部の通過が阻止されることによって異常プロジェクションナットの送出が回避されるものであって、前記塑性変形による角部の変形長さをねじ孔の内径の大小に対応させて長変形部と短変形部に区分したプロジェクションナットを準備し、前記ゲート部は、溶着用突起を上向きにした状態で本体部を収容する通過溝と、この通過溝の上側に配置された規制部材によって構成され、前記通過溝の開放角部と規制部材の間隔が、長変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できるが、短変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できない寸法とされ、この長変形部と短変形部の長短差によって長変形部を有するプロジェクションナットのみがゲート部を通過して異常プロジェクションナットの送出を回避することを特徴とするプロジェクションナットの選別方法である。
【0017】
上記選別方法による作用効果は、請求項1および請求項2の作用効果と同じである。
【0018】
請求項6記載の発明は、同様に選別方法の発明であり、プロジェクションナットは、四角い本体部の中央にねじ孔が形成され、前記本体部の角部をねじ孔の軸線方向に塑性変形をさせて溶着用突起が形成されたものであって、正常寸法のプロジェクションナットはゲート部を通過し、異常寸法のプロジェクションナットはゲート部の通過が阻止されることによって異常プロジェクションナットの送出が回避されるものであって、前記塑性変形による角部の変形長さをねじ孔の内径の大小に対応させて長変形部と短変形部に区分したプロジェクションナットを準備し、前記ゲート部は、溶着用突起を通過させる拡幅部と本体部を通過させる狭幅部が形成されたほぼコ字型の部材によって形成され、前記拡幅部と狭幅部の境界部に規制角部が設けられ、この規制角部の高さ位置が、長変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できるが、短変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できない高さとされ、この規制角部の前記高さ位置によって長変形部を有するプロジェクションナットのみがゲート部を通過して異常プロジェクションナットの送出を回避することを特徴とするプロジェクションナットの選別方法である。
【0019】
上記選別方法による作用効果は、請求項1および請求項4の作用効果と同じである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに、本発明のプロジェクションナットの選別装置と選別方法を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1を示す。
【0022】
まず、本実施例1におけるプロジェクションナットについて説明する。
【0023】
図3は、ナット1の斜視図、側面図および部分的な断面図である。ナット1は、平面的に見ると正方形とされた四角い本体部2と、その中央部にあけられたねじ孔3と、本体部2の片側の四隅に成型された溶着用突起4によって構成されている。この溶着用突起4は、ねじ孔3の軸線方向と直径方向の両方向に延びており、外側に張り出した箇所が後述の膨らみ部とされている。図3(B)および(C)に示すように、ナット1aと1bにおける縦、横、高さ(ねじ孔の軸方向の高さ)および本体部2の下面から突き出ている溶着用突起4の突出長さは、それぞれ同じ寸法である。なお、ナット1aおよび1bにおける本体部2の各部寸法は、縦12mm、横12mm、高さ7mm、前記突出長さ1.2mmである。そして、ナット1は鉄製である。
【0024】
両ナット1aと1bの異なっている箇所は、ねじ孔3の内径と後述の溶着用突起4の成型箇所である。ナット1aのねじ孔3aは大径孔とされ、その内径は8mmである。また、ナット1bのねじ孔3bは小径孔とされ、その内径は6mmである。
【0025】
溶着用突起4は金型を用いた塑性加工によって成形されるもので、本体部2の四つの角部をねじ孔3の軸線方向にそぎ落とすようにして変形させ、それによって移動した金属素材が金型凹部内に流動して、溶着用突起4の形状が成型される。本発明においては、このそぎ落とすようにして形成された四箇所の面5が変形部とされ、これの長いものが長変形部5aであり、短いものが短変形部5bである。
【0026】
本実施例1では、大径孔3aがあけられたナット1aが正常ナットであり、このナット1aの変形部5が長変形部5aとされている。一方、小径孔3bがあけられたナット1bが異常ナットであり、このナット1bの変形部5が短変形部5bとされている。図3(D)および(E)に示すように、長変形部5aの長さはHaで示され、短変形部5bの長さはHbで示されており、Ha>Hbとされている。
【0027】
長変形部5aの下端部から溶着用突起4が連続した状態で成型されている。この下端部が屈曲箇所6aであり、ここから溶着用突起4の膨らみ部7aに移行している。この膨らみ部7aは、ねじ孔3aの直径方向に膨らんでいる。短変形部5bの下端部から溶着用突起4が連続した状態で成型されている。この下端部が屈曲箇所6bであり、ここから溶着用突起4の膨らみ部7bに移行している。この膨らみ部7bは、ねじ孔3bの直径方向に膨らんでいる。屈曲箇所6aと6bの高さ位置は、ナット1bの方が高い箇所に位置づけられている。したがって、膨らみ部7aと7bの膨らみ空間は、ナット1bの方がナット1aよりもナットの横側に向かって高い位置から大きく張り出している。そして、両ナット1a、1bの全高LaとLbは同じ寸法である。
【0028】
本発明におけるナットの搬送通路としては、傾斜した移送通路、移送力が振動で付与される直進フィーダの移送通路、パーツフィーダの送出通路等、種々なものがある。ここでは、図4に示すように、振動式パーツフィーダ9である。ナット1を貯留しているボウル10の内側に螺旋状の搬送通路12が形成され、この搬送通路12に連続した状態で送出通路13が設けてある。起振部11からの振動によってナット1が搬送通路12から送出通路13を経て目的箇所へ移送される。なお、送出通路13に供給ホース14が接続してある。
【0029】
前記異常ナット1bの送出を阻止するために、ゲート部15が送出通路13に設けてある。このゲート部15は、長変形部5aと短変形部5bの長短差によって、長変形部5aを有するナット1aは通過させ、短変形部5bを有するナット1bは通過させない機能を果たすものである。ゲート部15は、送出通路13と規制部材16によって構成されている。
【0030】
前記送出通路13は、図1に示すように、上向きに開放している断面コ字型の通路部材17によって構成され、本体部2の横幅よりもわずかに広い幅の通過溝18が設けてある。そして、この通過溝18の深さは長変形部5aの長さよりも大きな寸法に設定されている。
【0031】
前記通路部材17の左右に平行に配置されている細長い横測部材8の上面内側の角部が、通過溝18の開放角部20である。ナット1は、本体部2が通過溝18内に収容され、溶着用突起4の膨らみ部7a、7bが開放角部20によって下側から支えられて、通過溝18内に吊り下げられた状態になって滑動する。
【0032】
前記規制部材16は、下向きに開放しているコ字型の部材であり、通路部材17に溶接等で固定された状態で、通過溝18の上側に配置してある。規制部材16の横部材19が、規制機能を果たす。前記開放角部20と規制部材16の横部材19の間隔Sが、長変形部7aを有するナット1aの溶着用突起4は通過できるが、短変形部5bを有するナット1bの溶着用突起4は通過できない寸法とされている。つまり、長変形部ナット1aにおいては前記開放角部20から溶着用突起先端部までの距離Saが短くなっており、図1における寸法Sとの関係はS>Saとなっている。したがって、ナット1aは図1(B)に示すように、吊り下げ状態で規制部材16を通過できる。また、ナット1bは図1(C)に示すように、開放角部20から溶着用突起先端部までの距離Sbが長くなっていて、S<Sbなる関係になっている。そのため、溶着用突起4の先端部が横部材19にひっかかって規制部材16で送出が阻止される。
【0033】
長孔と固定ボルトを組み合わせた調整機構によって、規制部材16と通路部材17との間隔を調整可能にしてもよい。すなわち、前記Sの寸法が調整式で求められる。
【0034】
上述のパーツフィーダ9は、ボウル10を振動させる形式であるが、これに換えて、起立した回転式円板に磁石を組み付け、この円板の回転によって吸着されたナットを送出通路13に導く形式のものとすることができる。
【0035】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0036】
四角い本体部2の中央にねじ孔3が形成され、前記本体部2の片側の四隅に溶着用突起4が形成されたプロジェクションナット1には、本体部2の縦、横、高さおよび本体部2からの溶着用突起4の突出長さが同じか、もしくはこれらの各部寸法が区別できないほどに近似した寸法とされた複数のナットにおいて、ねじ孔3の内径だけが大内径3aと小内径3bのように異なっている場合がある。本実施例1はこのようなねじ孔3の内径の大小に対応したものである。
【0037】
前記塑性変形による角部の変形長さをねじ孔の内径の大小に対応させて長変形部5aと短変形部5bに区分してある。長変形部5aとされたナット1aには大内径のねじ孔3aを形成し、短変形部5bとされたナット1bには小内径のねじ孔3bを形成して区分可能としてある。そして、長変形部5aを有するナット1aはゲート部15を通過でき、短変形部5bを有するナット1bはゲート部15を通過できないように構成したものである。例えば、大内径のナット1aを貯留したパーツフィーダ9から搬送されるナット1aの中に、作業者の見間違いなどにより、小内径のナット1bが誤って混入している場合には、小内径ナット1bが送出されないように規制する必要がある。したがって、大内径ナット1aに長変形部5aを付与するとともに、小内径ナット1bには短変形部5bを付与しておくことにより、この異常な小内径ナット1bの送出がゲート部15で阻止され、後工程に支障が発生するのを未然に防止することができる。
【0038】
つまり、長変形部5aを有するナット1aを正常ナットとしてゲート部15を通過できるようにしたもので、前述の場合とは逆に小内径ナット1bを正常なものとして送出するときには、長変形部5aを有するナット1aに小内径のねじ孔3bが形成されているのである。換言すると、プロジェクションナットの形状面の特性である長変形部5aや短変形部5bの寸法差を利用して、異常なねじ孔径を有するナットの送出を規制している。
【0039】
上述のようにして、ナット本体部の縦、横、高さおよび本体部2からの溶着用突起4の突出長さが同じか、もしくはこれらの各部寸法が区別できないほどに近似した寸法とされた複数のナットにおいて、ねじ孔3の内径だけが大内径3aと小内径3bのように異なっている場合、前記長変形部5aと短変形部5bを識別の根拠にして、正規のねじ孔寸法のナットだけを送出することができ、後工程におけるトラブルを回避することができる。
【0040】
前記ゲート部15は、溶着用突起4を上向きにした状態で本体部2を収容する通過溝18を備えた通路部材17と、この通過溝18の上側に配置された規制部材16によって構成され、前記通過溝18の開放角部20と規制部材16の横部材19の間隔Sが、長変形部5aを有するナット1aの溶着用突起4は通過できるが、短変形部5bを有するナット1bの溶着用突起4は通過できない寸法とされている。
【0041】
溶着用突起4は、前記本体部2の角部をねじ孔3の軸線方向に塑性変形をさせて形成されているため、変形部の終了端すなわち屈曲箇所6a、6bから溶着用突起4の膨らみ部7a、7bが形成されている。この膨らみ部7a、7bは、ねじ孔3の直径方向に膨出している。溶着用突起4の膨らみ部7a、7bが開放角部20にひっかかって本体部2が吊り下げられたような状態になる。したがって、長変形部ナット1aにおいては前記開放角部20から溶着用突起先端部までの距離Saが短いので、S>Saなる関係となり、規制部材16に干渉することなく通過できる。一方、短変形部ナット1bにおいては前記開放角部20から溶着用突起先端部までの距離Sbが長いので、S<Sbなる関係となり、規制部材16に干渉し通過することができない。そして、上記のように開放角部20から溶着用突起先端部までの距離Sa、Sbに長短の差ができるので、規制部材16に干渉するものと干渉しないものの区別ができる。したがって、所定のねじ孔径のナットだけを確実に送出することができ、異常内径ナットの送出が確実に禁止される。
【0042】
前記通過溝18の深さは、長変形部5aの長さ以上の寸法に設定されている。
【0043】
ナット1aは、上述のように膨らみ部7aと開放角部20との関係で吊り下げられた状態になるので、前記通過溝18の深さを長変形部5aの長さ以上に設定することにより、本体部2が通過溝18内を円滑に通過できる。
【0044】
本実施例1に伴う選別方法においても、選別装置の実施例と同じ作用効果がえられる。
【実施例2】
【0045】
図2は、実施例2を示す。
【0046】
実施例1は溶着用突起4の膨らみ部7a、7bが開放角部20にひっかかって吊り下げ状態になっているが、この実施例2は、溶着用突起が通路部材17上を滑動するものである。
【0047】
ゲート部15の規制部材16は、溶着用突起4を通過させる拡幅部21と本体部2を通過させる狭幅部22が形成されたほぼコ字型の部材によって形成され、前記拡幅部21と狭幅部22の境界部に規制角部23が設けられ、この規制角部23の高さ位置が、図2(B)に示すように、長変形部5aを有するナット1aの溶着用突起4は通過できるが、図2(C)や(D)に示すように、短変形部5bを有するナット1bの溶着用突起4は通過できない高さとされている。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の実施例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0048】
以上に説明した実施例2の作用効果は、つぎのとおりである。
【0049】
溶着用突起4が下側になった状態で搬送される場合には、長変形部5aを有するナット1aの膨らみ部7aは低い位置となる。また、短変形部5bを有するナット1bの膨らみ部7aは高い位置となる。前記規制角部23の高さ位置が、長変形部5aを有するナット1aの溶着用突起4は通過できるが、短変形部5bを有するナット1bの溶着用突起は通過できない高さとされているので、短変形部ナット1bの膨らみ部7bが規制角部23にひっかかって規制部材16の通過が禁止される。したがって、長変形部ナット1aは正常なねじ孔ナット1aとして送出され、短変形部ナット1bは異常なねじ孔ナット1bとして送出が禁止される。それ以外の作用効果は、先の実施例と同じである。
【0050】
本実施例2に伴う選別方法においても、選別装置の実施例と同じ作用効果がえられる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述のように、本発明によれば、プロジェクションナットの形状面の特性を利用して、異常なねじ孔径を有するナットの送出を規制することのできるプロジェクションナットの選別装置と選別方法であるから、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ゲート部の平面図と断面図である。
【図2】他の実施例におけるゲート部の平面図と断面図である。
【図3】ナットの形状を示す斜視図、側面図および部分断面図である。
【図4】パーツフィーダの側面図と平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 プロジェクションナット
1a プロジェクションナット
1b プロジェクションナット
2 本体部
3 ねじ孔
3a 大径孔
3b 小径孔
4 溶着用突起
5 変形部
5a 長変形部
5b 短変形部
6a 屈曲箇所
6b 屈曲箇所
7a 膨らみ部
7b 膨らみ部
13 送出通路
15 ゲート部
16 規制部材
17 通路部材
18 通過溝
19 横部材
20 開放角部
21 拡幅部
22 狭幅部
23 規制角部
Ha 長変形部の長さ
Hb 短変形部の長さ
S 開放角部と規制部材の間隔寸法
Sa 開放角部と溶着用突起先端部までの距離
Sb 開放角部と溶着用突起先端部までの距離
La ナットの全高
Lb ナットの全高

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクションナットは、四角い本体部の中央にねじ孔が形成され、前記本体部の角部をねじ孔の軸線方向に塑性変形をさせて溶着用突起が形成されたものであって、正常寸法のプロジェクションナットはゲート部を通過し、異常寸法のプロジェクションナットはゲート部の通過が阻止されることによって異常プロジェクションナットの送出が回避されるものであって、前記塑性変形による角部の変形長さをねじ孔の内径の大小に対応させて長変形部と短変形部に区分し、この長変形部と短変形部の長短差によって、長変形部を有するプロジェクションナットは通過でき、短変形部を有するプロジェクションナットは通過できないゲート部が設けられていることを特徴とするプロジェクションナットの選別装置。
【請求項2】
前記ゲート部は、溶着用突起を上向きにした状態で本体部を収容する通過溝と、この通過溝の上側に配置された規制部材によって構成され、前記通過溝の開放角部と規制部材の間隔が、長変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できるが、短変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できない寸法とされている請求項1記載のプロジェクションナットの選別装置。
【請求項3】
前記通過溝の深さは、長変形部の長さ以上の寸法に設定されている請求項1または請求項2記載のプロジェクションナットの選別装置。
【請求項4】
前記ゲート部は、溶着用突起を通過させる拡幅部と本体部を通過させる狭幅部が形成されたほぼコ字型の部材によって形成され、前記拡幅部と狭幅部の境界部に規制角部が設けられ、この規制角部の高さ位置が、長変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できるが、短変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できない高さとされている請求項1記載のプロジェクションナットの選別装置。
【請求項5】
プロジェクションナットは、四角い本体部の中央にねじ孔が形成され、前記本体部の角部をねじ孔の軸線方向に塑性変形をさせて溶着用突起が形成されたものであって、正常寸法のプロジェクションナットはゲート部を通過し、異常寸法のプロジェクションナットはゲート部の通過が阻止されることによって異常プロジェクションナットの送出が回避されるものであって、前記塑性変形による角部の変形長さをねじ孔の内径の大小に対応させて長変形部と短変形部に区分したプロジェクションナットを準備し、前記ゲート部は、溶着用突起を上向きにした状態で本体部を収容する通過溝と、この通過溝の上側に配置された規制部材によって構成され、前記通過溝の開放角部と規制部材の間隔が、長変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できるが、短変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できない寸法とされ、この長変形部と短変形部の長短差によって長変形部を有するプロジェクションナットのみがゲート部を通過して異常プロジェクションナットの送出を回避することを特徴とするプロジェクションナットの選別方法。
【請求項6】
プロジェクションナットは、四角い本体部の中央にねじ孔が形成され、前記本体部の角部をねじ孔の軸線方向に塑性変形をさせて溶着用突起が形成されたものであって、正常寸法のプロジェクションナットはゲート部を通過し、異常寸法のプロジェクションナットはゲート部の通過が阻止されることによって異常プロジェクションナットの送出が回避されるものであって、前記塑性変形による角部の変形長さをねじ孔の内径の大小に対応させて長変形部と短変形部に区分したプロジェクションナットを準備し、前記ゲート部は、溶着用突起を通過させる拡幅部と本体部を通過させる狭幅部が形成されたほぼコ字型の部材によって形成され、前記拡幅部と狭幅部の境界部に規制角部が設けられ、この規制角部の高さ位置が、長変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できるが、短変形部を有するプロジェクションナットの溶着用突起は通過できない高さとされ、この規制角部の前記高さ位置によって長変形部を有するプロジェクションナットのみがゲート部を通過して異常プロジェクションナットの送出を回避することを特徴とするプロジェクションナットの選別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−105815(P2010−105815A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305476(P2008−305476)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000196886)
【Fターム(参考)】