プロジェクター、及び遮光部材の製造方法
【課題】調光装置から光源装置への戻り光を低減させ、光源装置の信頼性を確保できるプロジェクターを提供する。
【解決手段】プロジェクター1は、光源装置から光変調装置に至る光束の光路中に配設され、光変調装置に入射する光束の光量を調整する調光装置6を備える。調光装置6は、入射した光束を遮光する遮光面Fを有し、移動することで光源装置から出射された光束を部分的に遮光する遮光部材61を備える。遮光面Fには、曲面を有する第1凹部611が複数設けられている。
【解決手段】プロジェクター1は、光源装置から光変調装置に至る光束の光路中に配設され、光変調装置に入射する光束の光量を調整する調光装置6を備える。調光装置6は、入射した光束を遮光する遮光面Fを有し、移動することで光源装置から出射された光束を部分的に遮光する遮光部材61を備える。遮光面Fには、曲面を有する第1凹部611が複数設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター、及び遮光部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源装置と、光源装置から出射された光束を変調する光変調装置と、光変調装置にて変調された光束を投射する投射光学装置とを備えたプロジェクターが知られている。
このようなプロジェクターにおいて、投影画像のコントラスト向上等を目的として、光源装置から出射され光変調装置に入射する光束の光量を調整する調光装置を採用した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の調光装置は、光源装置から出射された光束の光軸を中心として対称配置され、回転することで光源装置から出射された光束を部分的に遮光する一対の遮蔽部材を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−71913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の調光装置では、一対の遮蔽部材は、遮光量が最大となる全閉状態(同一平面状に位置する状態)において、光源装置から出射された光束の光軸に直交する。
すなわち、全閉状態では、光源装置から出射され一対の遮蔽部材にて反射された光束(以下、調光装置からの戻り光)は、光源装置から調光装置に至る光束の光路を逆に辿って、光源装置に入射する。
なお、一対の遮蔽部材が全閉状態とは異なる状態であっても、調光装置からの戻り光が光源装置に入射する場合もある。
そして、調光装置からの戻り光が光源装置に入射した場合には、光源装置の温度が上昇し、光源装置が熱劣化してしまう、という問題がある。
【0005】
本発明の目的は、調光装置から光源装置への戻り光を低減させ、光源装置の信頼性を確保できるプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロジェクターは、光源装置と、前記光源装置から出射された光束を変調する光変調装置と、前記光変調装置にて変調された光束を投射する投射光学装置とを備えたプロジェクターであって、前記光源装置から前記光変調装置に至る光束の光路中に配設され、前記光変調装置に入射する光束の光量を調整する調光装置を備え、前記調光装置は、入射した光束を遮光する遮光面を有し、移動することで前記光源装置から出射された光束を部分的に遮光する遮光部材を備え、前記遮光面には、曲面を有する第1凸部または第1凹部が複数設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、遮光部材の遮光面には、上述した第1凸部または第1凹部が複数設けられている。
このことにより、例えば、調光装置の構成として、従来の構成と同様に一対の遮蔽部材を備えた構成とし、当該一対の遮蔽部材を全閉状態とした場合であっても、調光装置から光源装置への戻り光を低減させることができる。
具体的に、遮光面に上述した第1凸部または第1凹部が複数設けられているため、遮光部材に入射した光束は、遮光面にて反射して散乱することとなる。このため、調光装置から光源装置への戻り光を低減させることができる。
したがって、光源装置の温度上昇を抑制し、光源装置の熱劣化を防止できるため、光源装置の信頼性を十分に確保できる。
特に、第1凸部または第1凹部が曲面を有するので、遮光面に入射した光束を当該曲面にて、一方向に進行させずに、良好に散乱させることができる。このため、遮光面にて反射した光束がプロジェクター内部の一部の構成部材に集中して照射されることがなく、当該構成部材の熱劣化も防止できる。
【0008】
本発明のプロジェクターでは、前記遮光面には、曲面を有する第2凸部または第2凹部が複数設けられ、前記第2凸部または前記第2凹部は、前記第1凸部または前記第1凹部よりもサイズが小さいことが好ましい。
本発明では、遮光面には、上述した第2凸部または第2凹部が複数設けられている。
すなわち、サイズの大きい第1凸部または第1凹部とサイズの小さい第2凸部または第2凹部とを組み合わせることで、遮光面に入射した光束をさらに散乱させ易い構造とすることができる。
このため、調光装置から光源装置への戻り光をさらに低減させることができる。
また、遮光面の表面積も大きくすることができるため、遮光面への光束の入射によって生じる遮光部材の熱を放熱し易い構造とすることができる。
このため、遮光部材、ひいては、調光装置の熱劣化も防止でき、調光装置の信頼性も十分に確保できる。
【0009】
本発明の製造方法は、プロジェクターに用いられる調光装置を構成する遮光部材の製造方法であって、前記遮光部材は、入射した光束を遮光する遮光面を有し、当該製造方法は、前記遮光面に曲面を有する第1凸部または第1凹部を複数形成する第1形成工程と、前記遮光面に曲面を有し前記第1凸部または前記第1凹部よりもサイズの小さい第2凸部または第2凹部を複数形成する第2形成工程とを備えることを特徴とする。
本発明では、遮光部材の製造方法が上述した第1,第2形成工程を備えるので、上述したプロジェクターと同様の作用及び効果を享受できる。
【0010】
本発明の製造方法では、前記遮光部材の基材の表面にエンボス加工を施すことで、前記基材の表面に前記第1凸部または前記第1凹部を複数形成することが好ましい。
本発明によれば、サイズの大きい第1凸部または第1凹部の形成について、エンボス加工を利用している。
このことにより、他の手法により第1凸部または第1凹部を形成する場合と比較して、容易にかつ迅速に第1凸部または第1凹部を形成できる。
【0011】
本発明の製造方法では、前記第2形成工程は、前記第1凸部または前記第1凹部が形成された前記基材の表面上にフォトレジストを塗布してレジスト層を形成するレジスト層形成手順と、前記第2凸部または前記第2凹部に対応したパターンが形成されたフォトマスクを用いて、露光により前記レジスト層に前記パターンを転写する露光手順と、現像処理により、前記レジスト層に前記パターンを形成する現像手順と、エッチング処理により、前記基材の表面に前記第2凸部または前記第2凹部を形成するエッチング手順とを備えることが好ましい。
【0012】
本発明では、フォトリソグラフィー法(レジスト層形成手順、露光手順、現像手順、及びエッチング手順)を利用して、第2凸部または第2凹部を形成している。
このことにより、サイズの小さい第2凸部または第2凹部を適切に形成できる。
特に、エッチング手順では、エッチング処理により、遮光部材の基材の表面に直接、第2凸部または第2凹部を形成しているので、当該基材に高反射性の材料を採用しておけば、第2形成工程の後、別途、反射層を形成する工程を不要とし、遮光部材の製造工程を簡略化できる。
【0013】
本発明の製造方法では、前記第2形成工程は、前記第1凸部または前記第1凹部が形成された前記基材の表面上に感光性ポリシラザンを含むフォトレジストを塗布してレジスト層を形成するレジスト層形成手順と、前記第2凸部または前記第2凹部に対応したパターンが形成されたフォトマスクを用いて、露光により前記レジスト層に前記パターンを転写する露光手順と、現像処理により、前記レジスト層に前記第2凸部または前記第2凹部を形成する現像手順と、前記レジスト層を焼成する焼成手順とを備え、当該製造方法は、前記第2形成工程の後、前記レジスト層上に反射層を形成する反射層形成工程を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明では、フォトリソグラフィー法(レジスト層形成手順、露光手順、現像手順、及び焼成手順)を利用して、第2凸部または第2凹部を形成している。
このことにより、サイズの小さい第2凸部または第2凹部を適切に形成できる。
特に、現像手順では、現像処理により、遮光部材の基材の表面ではなく、レジスト層に第2凸部または第2凹部を形成しているので、エッチング処理により基材の表面に直接、第2凸部または第2凹部を形成する場合と比較して、微細な第2凸部または第2凹部を形成できる。
また、レジスト層形成手順では、焼成により酸化層に転化する感光性ポリシラザンを含むフォトレジストを採用している。
すなわち、焼成手順の後、レジスト層を耐熱性の高い酸化層に転化させることができるため、遮光部材の熱劣化を防止し、遮光部材の信頼性を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態におけるプロジェクターの概略構成を示す図。
【図2】第1実施形態における調光装置の構成を示す模式図。
【図3】第1実施形態における遮光部材の遮光面の一部を拡大した図。
【図4】第1実施形態における遮光部材の製造方法を説明するフローチャート。
【図5】第1実施形態における遮光部材の製造方法を説明するための図。
【図6】第2実施形態における遮光部材の製造方法を説明するフローチャート。
【図7】第2実施形態における遮光部材の製造方法を説明するための図。
【図8】各実施形態の変形例を示す図。
【図9】各実施形態の変形例を示す図。
【図10】各実施形態の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1は、プロジェクター1の概略構成を示す図である。
プロジェクター1は、画像を投射してスクリーン(図示略)上に投影画像を表示する。
そして、このプロジェクター1は、図1に示すように、外装筐体2内部に収納される光学ユニット3を備える。
【0017】
〔光学ユニットの構成〕
光学ユニット3は、図1に示すように、光学部品用筐体4と、光学部品用筐体4に支持される投射光学装置としての投射レンズ5とを備える。
そして、光学部品用筐体4には、図1に示すように、光源ランプ311及びリフレクター312を有する光源装置31と、第1,第2レンズアレイ321,322、偏光変換素子323、及び重畳レンズ324を有する照明光学装置32と、ダイクロイックミラー331,332、及び反射ミラー333を有する色分離光学装置33と、入射側レンズ341、リレーレンズ343、及び反射ミラー342,344を有するリレー光学装置34と、3つの入射側偏光板35と、光変調装置としての3つの液晶パネル36と、3つの出射側偏光板37と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム38と、調光装置6とが収納される。
そして、上記各部材31〜38,6は、図1に示すように、光学部品用筐体4内部に設定された照明光軸Ax(光源装置31から出射された光束の光軸)に対する所定位置に位置付けられる。
【0018】
上述した構成により、光源装置31から出射され照明光学装置32を介した光束は、色分離光学装置33にて赤(R),緑(G),青(B)の3つの色光に分離される。また、分離された各色光は、各液晶パネル36にてそれぞれ変調される。変調された各色光は、プリズム38にて合成され、投射レンズ5にてスクリーンに投射される。
なお、上述した各部材4,5,31〜38は、一般的なプロジェクターで用いられる構成であるため、以下では、調光装置6の構成のみを説明する。
【0019】
〔調光装置の構成〕
図2は、調光装置6の構成を示す模式図である。具体的に、図2は、調光装置6を側方から見た図であり、全開状態(遮光量が最小となる状態)を実線で示し、全閉状態(遮光量が最大となる状態)を2点鎖線で示している。
調光装置6は、図2に示すように、第1レンズアレイ321から第2レンズアレイ322に至る光束の光路中に配設され、光束を通過可能とする光通過領域Arの面積を変更する。
この調光装置6は、図2に示すように、照明光軸Axを通る水平面Fhを基準として対称配置された一対の遮光部材61を備える。
【0020】
一対の遮光部材61は、板体で構成され、制御装置(図示略)による制御の下、モーター等の駆動手段(図示略)、及びモーター等にて発生された駆動力を伝達させる歯車等の伝達機構(図示略)を介して回転可能に構成されている。
より具体的に、一対の遮光部材61は、互いに対向する各端部同士が互いに近接隔離するとともに、第2レンズアレイ322に対して近接隔離するように回転可能に構成されている。
そして、調光装置6は、図2に示すように、一対の遮光部材61が回転することで、光通過領域Ar(一対の遮光部材61の互いに対向する各端部間)の面積を変更し、第2レンズアレイ322(液晶パネル36)に入射する光束の光量を調整する。
【0021】
図3は、遮光部材61の遮光面Fの一部を拡大した図である。
上述した遮光部材61において、入射した光束を遮光する遮光面F(図2中、光入射側の板面)には、図3に示すように、複数の第1凹部611と、複数の第2凹部612とが設けられている。
複数の第1凹部611は、図3に示すように、半球状に形成された凹部(曲面を有する凹部)である。そして、複数の第1凹部611は、図3では図示を省略したが、遮光面F全体に亘って形成されている。
【0022】
複数の第2凹部612は、第1凹部611と同様に、図3に示すように、半球状に形成された凹部である。
また、半球状の第2凹部612の径寸法は、図3に示すように、半球状の第1凹部611の径寸法に対して小さくなるように設定されている。すなわち、第2凹部612は、第1凹部611に対してサイズが小さいものである。
そして、複数の第2凹部612も第1凹部611と同様に、遮光面F全体に亘って形成され、第1凹部611上にも形成されている。
【0023】
〔遮光部材の製造方法〕
次に、上述した遮光部材61の製造方法について説明する。
図4は、遮光部材61の製造方法を説明するフローチャートである。
図5は、遮光部材61の製造方法を説明するための図である。
先ず、作業者は、遮光部材61の基材610に対して、図5(A)に示すように、エンボス加工により、複数の第1凹部611を形成する(ステップS1:第1形成工程)。
例えば、基材610としては、アルミ合金からなる矩形状の板体(15mm×25mm、厚み0.5mm)を採用できる。
具体的に、第1形成工程S1では、鋼製ロール(図示略)にて基材610を圧延し、基材610の表面(遮光面F)に複数の第1凹部611を形成する。
具体的な図示は省略したが、上記鋼製ロールの外面(基材610に当接する面)には、第1凹部611に対応した半球状の凸部が設けられている。そして、当該半球状の凸部は、複数の第1凹部611の配列パターンに対応した配列パターンで複数設けられている。
なお、本実施形態では、上記半球状の凸部の径寸法は、2mmに設定されているが、0.1〜10mmの範囲であればよく、より好ましくは0.2〜3mmに設定できるとよい。
【0024】
次に、作業者は、図5(B)〜図5(F)に示すように、基材610の表面に複数の第2凹部612を形成する(ステップS2:第2形成工程)。
具体的に、先ず、作業者は、図5(B)に示すように、基材610の表面全体にフォトレジストを塗布し、レジスト層Rを形成する(ステップS21:レジスト層形成手順)。
本実施形態では、フォトレジストとして、アクリル系樹脂等の感光性樹脂材料からなるポジ型のフォトレジストを採用している。
上述したように、基材610の表面には、複数の第1凹部611が形成されている。このため、基材610の表面は、平坦状ではない。本実施形態では、凹凸面となっている基材610の表面に対して、レジスト層Rの厚みが均一となるように、スプレーを用いてフォトレジストを塗布している。
本実施形態では、上述したようにフォトレジストを塗布することで、基材610の表面に、厚みが3μmのレジスト層Rを形成している。
【0025】
次に、作業者は、図5(C)に示すように、表面全体にレジスト層Rが形成された基材610に対して、フォトマスクMを用いて、レジスト層Rの一部を感光させる(ステップS22:露光手順)。
具体的に、フォトマスクMには、第2凹部612に対応した円形状の開口部M1が設けられている。そして、開口部M1は、複数の第2凹部612の配列パターンに対応した配列パターンで複数設けられている。
なお、本実施形態では、開口部M1の径寸法は、50μmに設定されているが、1〜500μmの範囲内であればよく、より好ましくは10〜100μmに設定するのが望ましく、第1凹部611の径寸法の1/10程度がよい。
また、本実施形態では、露光量を150mJ/cm2としている。
このため、露光手順S22では、フォトマスクMを介してレジスト層Rの一部を感光させることで、開口部M1の配列パターンがレジスト層Rに転写される。
【0026】
次に、作業者は、現像処理(アルカリ水溶液等の現像液に浸漬等を行う処理)により、感光した部分のレジスト層Rを除去する(ステップS23:現像手順)。
すなわち、現像手順S23を実施することで、図5(D)に示すように、レジスト層Rに開口部M1の配列パターンが形成され、当該配列パターンに応じて基材610の表面の一部が露出する。
【0027】
次に、作業者は、エッチング処理(エッチング液(リン酸、硝酸、及び酢酸の混合液等)に一定時間、浸漬等を行う処理)により、レジスト層Rを介して露出した基材610の表面をエッチングする(ステップS24:エッチング手順)。
そして、エッチング手順S24を実施することで、図5(E)に示すように、基材610の表面に、レジスト層Rに形成された開口部M1の配列パターンに応じて複数の第2凹部612が形成される。
【0028】
次に、作業者は、レジスト剥離液を用いて、図5(F)に示すように、基材610の表面上のレジスト層Rを除去する(ステップS25)。
以上の工程により、遮光部材61が製造される。
【0029】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、遮光部材61の遮光面Fには、第1凹部611が複数設けられている。
このことにより、一対の遮光部材61を全閉状態とした場合であっても、調光装置6から光源装置31への戻り光を低減させることができる。
具体的に、遮光面Fに第1凹部611が複数設けられているため、遮光部材61に入射した光束は、遮光面Fにて反射して散乱することとなる。このため、調光装置6から光源装置31への戻り光を低減させることができる。
したがって、光源装置31の温度上昇を抑制し、光源装置31の熱劣化を防止できるため、光源装置31の信頼性を十分に確保できる。
【0030】
特に、第1凹部611が半球状に形成されているので、遮光面Fに入射した光束を当該半球状の曲面にて、一方向に進行させずに、良好に散乱させることができる。このため、遮光面Fにて反射した光束がプロジェクター1内部の一部の構成部材(例えば、光学部品用筐体4)に集中して照射されることがなく、当該構成部材の熱劣化も防止できる。
【0031】
また、遮光面Fには、第1凹部611の他、第2凹部612が複数設けられている。
すなわち、サイズの大きい第1凹部611とサイズの小さい第2凹部612とを組み合わせることで、遮光面Fに入射した光束をさらに散乱させ易い構造とすることができる。
このため、調光装置6から光源装置31への戻り光をさらに低減させることができる。
また、遮光面Fの表面積も大きくすることができるため、遮光面Fへの光束の入射によって生じる遮光部材61の熱を放熱し易い構造とすることができる。
このため、遮光部材61、ひいては、調光装置6の熱劣化も防止でき、調光装置6の信頼性も十分に確保できる。
【0032】
さらに、サイズの大きい第1凹部611の形成について、エンボス加工を利用している。
このことにより、他の手法により第1凹部611を形成する場合と比較して、容易にかつ迅速に第1凹部611を形成できる。
また、フォトリソグラフィー法(レジスト層形成手順S21、露光手順S22、現像手順S23、及びエッチング手順S24)を利用して、第2凹部612を形成している。
このことにより、サイズの小さい第2凹部612を適切に形成できる。
特に、エッチング手順S24では、エッチング処理により、基材610の表面に直接、第2凹部612を形成している。このことにより、基材610に高反射性の材料を採用することで、第2形成工程S2の後、別途、反射層を形成する工程を不要とし、遮光部材61の製造工程を簡略化できる。
【0033】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の説明では、前記第1実施形態と同様の構成及び同一部材には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
前記第1実施形態では、遮光部材61を製造する際に、第1凹部611を基材610の表面に直接、形成し、さらに、第2凹部612も基材610の表面に直接、形成していた。
これに対して第2実施形態では、遮光部材61を製造する際に、第1凹部611については、前記第1実施形態と同様に、基材610の表面に直接、形成する。しかしながら、第2凹部612については、基材610の表面に直接、形成しない。
すなわち、第2実施形態では、前記第1実施形態に対して、遮光部材61の製造方法が異なるのみである。その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。
【0034】
図6は、遮光部材61の製造方法を説明するフローチャートである。
図7は、遮光部材61の製造方法を説明するための図である。
具体的に、本実施形態では、以下に示すように、遮光部材61が製造される。
先ず、作業者は、前記第1実施形態で説明したステップS1と同様に、基材610に対して、図7(A)に示すように、エンボス加工により、複数の第1凹部611を形成する(ステップS3:第1形成工程)。
次に、作業者は、図7(B)〜図7(D)に示すように、基材610の表面上に複数の第2凹部612を設ける(ステップS4:第2形成工程)。
【0035】
具体的に、先ず、作業者は、前記第1実施形態で説明したステップS21と同様に、図7(B)に示すように、基材610の表面全体にフォトレジストを塗布し、レジスト層R´を形成する(ステップS41:レジスト層形成手順)。
本実施形態では、フォトレジストとして、感光性ポリシラザン溶液を採用している。
ここで、ポリシラザンとは、Si、N、H(または有機基)からなるポリマーで、加熱・焼成によってSiO2に転化する材料である。シラザンは、Si−N結合を持つ化合物であり、ポリシラザンは、−SiH2−NH−を基本としている。さらに、感光性を得るために光触媒が添加されている。
また、本実施形態では、基材610表面に、厚みが5μmのレジスト層R´を形成している。
【0036】
次に、作業者は、前記第1実施形態で説明したステップS22と同様に、図7(C)に示すように、表面全体にレジスト層R´が形成された基材610に対して、フォトマスクM´を用いて、レジスト層R´の一部を感光させる(ステップS42:露光手順)。
本実施形態で用いるフォトマスクM´は、前記第1実施形態で説明したフォトマスクMと同様の構成を有している。
本実施形態も第1実施形態と同様に、開口部M1´の径寸法は、50μmに設定されているが、1〜500μmの範囲内であればよく、より好ましくは10〜100μmに設定するのが望ましく、第1凹部611の径寸法の1/10程度がよい。
【0037】
次に、作業者は、前記第1実施形態で説明したステップS23と同様に現像処理を実施し、図7(D)に示すように、レジスト層R´に開口部M1´の配列パターンに応じた複数の第2凹部612を形成する(ステップS43:現像手順)。
次に、作業者は、焼成処理により、レジスト層R´をシリカ系セラミックス被膜に転化させる(ステップS44・焼成手順)。
本実施形態では、300℃で10分間の焼成処理を行っている。
上述した第2形成工程S4の後、作業者は、蒸着等により、レジスト層R´上にアルミニウム等からなる反射層を形成する(ステップS5:反射層形成工程)。
本実施形態では、反射層形成工程S5において、厚みが0.5μmの反射層を形成している。
以上の工程により、遮光部材61が製造される。
【0038】
上述した第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果の他、以下の効果がある。
本実施形態では、フォトリソグラフィー法(レジスト層形成手順S41、露光手順S42、現像手順S43、及び焼成手順S44)を利用して、第2凹部612を形成している。
このことにより、サイズの小さい第2凹部612を適切に形成できる。
特に、現像手順S43では、現像処理により、基材610の表面ではなく、レジスト層R´に第2凹部612を形成しているので、エッチング処理により基材610に直接、第2凹部612を形成する場合(前記第1実施形態)と比較して、微細な第2凹部612を形成できる。
【0039】
また、レジスト層形成手順S41では、焼成により酸化層に転化する感光性ポリシラザンを含むフォトレジストを採用している。
すなわち、焼成手順S44の後、レジスト層R´を耐熱性の高い酸化層に転化させることができるため、遮光部材61の熱劣化を防止し、遮光部材61の信頼性を十分に確保できる。
【0040】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
図8から図10は、前記各実施形態の変形例を示す図である。
前記各実施形態では、遮光部材61の遮光面Fに第1,第2凹部611,612を設けていたが、これに限らない。
例えば、図8に示すように、遮光面Fにサイズの大きい複数の第1凸部611´とサイズの小さい複数の第2凹部612とを設けても構わない。
また、例えば、図9に示すように、遮光面Fにサイズの大きい複数の第1凹部611とサイズの小さい複数の第2凸部612´とを設けても構わない。
さらに、例えば、図10に示すように、遮光面Fにサイズの大きい複数の第1凸部611´とサイズの小さい複数の第2凸部612´とを設けても構わない。
【0041】
前記各実施形態や図8ないし図10に示す構成において、第1凹部611、第1凸部611´、第2凹部612、及び第2凸部612´等で構成される凹凸面を形成する方法は、前記各実施形態で説明した方法に限らない。
例えば、凹凸面を形成する際に、エンボス加工やフォトリソグラフィー法を利用せずに、インクジェット技術を利用しても構わない。
具体的には、例えば、溶媒としてキシレンを用いたペルヒドロポリシラザン(PHPS)溶液をインクとし、当該インクをインクジェット技術で遮光面F上に塗布し、乾燥及び焼成処理を実施することで、凹凸面を有する酸化層を形成する。
そして、凹凸面を有する酸化層を形成した後、前記第2実施形態で説明した反射層形成工程S5を実施する。
【0042】
また、例えば、凹凸面を形成する際に、プラズマコーティング法、フォトリソグラフィー法、及びプラズマドライエッチング法を組み合わせた方法を利用しても構わない。
具体的には、先ず、遮光面Fにプラズマコーティング法にて酸化シリコン層を形成する。
次に、前記第1実施形態で説明したステップS21〜S23を実施する。
次に、CF4ガスによるプラズマドライエッチング法によって、酸化シリコン層に凹凸面を形成する。
そして、凹凸面を形成した後、前記第1実施形態で説明したステップS25を実施し、さらには、前記第2実施形態で説明した反射層形成工程S5を実施する。
【0043】
さらに、例えば、凹凸面を形成する際に、アルマイト処理法を利用しても構わない。
具体的には、温度20℃の15%硫酸水溶液の電解浴の中で、陰極側に銅材を設置し、陽極側に基材610を設置し、15Vの電圧(直流1.5A)を40分間印加することで、遮光面F上に凹凸面を有する酸化層を形成する。
そして、凹凸面を有する酸化層を形成した後、前記第2実施形態で説明した反射層形成工程S5を実施する。
【0044】
また、例えば、凹凸面を形成する際に、エアロゾルデポジッション法を利用しても構わない。
具体的には、先ず、前処理として、平均粒径1.0μmのシリカ粉末(SiO2)をエアロゾル発生器の容器内に入れ、150℃で加熱するとともに、容器全体に超音波を印加しながら30分間、排気系により容器内を排気し、シリカ粉末を乾燥させる。
次に、酸素ガスを容器に導入し、シリカ粉末と混合させることでエアロゾルを形成する。
次に、上述したエアロゾルを、解粉及び分級して、エアロゾルに含まれる微粒子を一次粒子化させる。
次に、成膜室(真空度10Pa以下)に設置された基材610に対して、噴射ノズルからエアロゾルを100分間噴射することで、凹凸面を有する膜厚0.1mmのSiO2膜を形成する。
そして、凹凸面を有するSiO2膜を形成した後、前記第2実施形態で説明した反射層形成工程S5を実施する。
【0045】
前記各実施形態では、遮光部材61は、回転することで、光通過領域Arの面積を変更し、入射する光束の光量を調整していたが、これに限らず、スライド移動することで、光通過領域Arの面積を変更する構成としても構わない。
前記各実施形態では、調光装置6は、第1,第2レンズアレイ321,322間に配設されていたが、これに限らず、光源装置31から液晶パネル36に至る光束の光路中であれば、いずれの位置に配設しても構わない。
【0046】
前記各実施形態や図8ないし図10に示す構成において、第1凹部611、第1凸部611´、第2凹部612、及び第2凸部612´は、半球状に形成されていたが、これに限らず、曲面を有していれば、その他の形状で構成しても構わない。
前記各実施形態や図8ないし図10に示す構成において、第1凹部611、第1凸部611´、第2凹部612、及び第2凸部612´は、遮光面Fにおいて、規則的に複数配列された構成を採用してもよく、あるいは、ランダムに複数配列された構成を採用しても構わない。
また、第1凹部611、第1凸部611´、第2凹部612、及び第2凸部612´のうち1種類のみ、3種類、あるいは全てを遮光面Fに設けた構成を採用しても構わない。
前記各実施形態では、光変調装置として透過型の液晶パネル36を採用していたが、これに限らず、反射型の液晶パネルや、マイクロミラーを用いたデバイス等、液晶以外の光変調装置を採用しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、プレゼンテーションやホームシアター等に用いられるプロジェクターに利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・プロジェクター、5・・・投射レンズ(投射光学装置)、6・・・調光装置、36・・・液晶パネル(光変調装置)、61・・・遮光部材、610・・・基材、611・・・第1凹部、611´・・・第1凸部、612・・・第2凹部、612´・・・第2凸部、F・・・遮光面、R,R´・・・レジスト層、M,M´・・・フォトマスク、S1,S3・・・第1形成工程、S2,S4・・・第2形成工程、S5・・・反射層形成工程、S21,S41・・・レジスト層形成手順、S22,S42・・・露光手順、S23,S43・・・現像手順、S24・・・エッチング手順,S44・・・焼成手順。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター、及び遮光部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源装置と、光源装置から出射された光束を変調する光変調装置と、光変調装置にて変調された光束を投射する投射光学装置とを備えたプロジェクターが知られている。
このようなプロジェクターにおいて、投影画像のコントラスト向上等を目的として、光源装置から出射され光変調装置に入射する光束の光量を調整する調光装置を採用した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の調光装置は、光源装置から出射された光束の光軸を中心として対称配置され、回転することで光源装置から出射された光束を部分的に遮光する一対の遮蔽部材を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−71913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の調光装置では、一対の遮蔽部材は、遮光量が最大となる全閉状態(同一平面状に位置する状態)において、光源装置から出射された光束の光軸に直交する。
すなわち、全閉状態では、光源装置から出射され一対の遮蔽部材にて反射された光束(以下、調光装置からの戻り光)は、光源装置から調光装置に至る光束の光路を逆に辿って、光源装置に入射する。
なお、一対の遮蔽部材が全閉状態とは異なる状態であっても、調光装置からの戻り光が光源装置に入射する場合もある。
そして、調光装置からの戻り光が光源装置に入射した場合には、光源装置の温度が上昇し、光源装置が熱劣化してしまう、という問題がある。
【0005】
本発明の目的は、調光装置から光源装置への戻り光を低減させ、光源装置の信頼性を確保できるプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロジェクターは、光源装置と、前記光源装置から出射された光束を変調する光変調装置と、前記光変調装置にて変調された光束を投射する投射光学装置とを備えたプロジェクターであって、前記光源装置から前記光変調装置に至る光束の光路中に配設され、前記光変調装置に入射する光束の光量を調整する調光装置を備え、前記調光装置は、入射した光束を遮光する遮光面を有し、移動することで前記光源装置から出射された光束を部分的に遮光する遮光部材を備え、前記遮光面には、曲面を有する第1凸部または第1凹部が複数設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、遮光部材の遮光面には、上述した第1凸部または第1凹部が複数設けられている。
このことにより、例えば、調光装置の構成として、従来の構成と同様に一対の遮蔽部材を備えた構成とし、当該一対の遮蔽部材を全閉状態とした場合であっても、調光装置から光源装置への戻り光を低減させることができる。
具体的に、遮光面に上述した第1凸部または第1凹部が複数設けられているため、遮光部材に入射した光束は、遮光面にて反射して散乱することとなる。このため、調光装置から光源装置への戻り光を低減させることができる。
したがって、光源装置の温度上昇を抑制し、光源装置の熱劣化を防止できるため、光源装置の信頼性を十分に確保できる。
特に、第1凸部または第1凹部が曲面を有するので、遮光面に入射した光束を当該曲面にて、一方向に進行させずに、良好に散乱させることができる。このため、遮光面にて反射した光束がプロジェクター内部の一部の構成部材に集中して照射されることがなく、当該構成部材の熱劣化も防止できる。
【0008】
本発明のプロジェクターでは、前記遮光面には、曲面を有する第2凸部または第2凹部が複数設けられ、前記第2凸部または前記第2凹部は、前記第1凸部または前記第1凹部よりもサイズが小さいことが好ましい。
本発明では、遮光面には、上述した第2凸部または第2凹部が複数設けられている。
すなわち、サイズの大きい第1凸部または第1凹部とサイズの小さい第2凸部または第2凹部とを組み合わせることで、遮光面に入射した光束をさらに散乱させ易い構造とすることができる。
このため、調光装置から光源装置への戻り光をさらに低減させることができる。
また、遮光面の表面積も大きくすることができるため、遮光面への光束の入射によって生じる遮光部材の熱を放熱し易い構造とすることができる。
このため、遮光部材、ひいては、調光装置の熱劣化も防止でき、調光装置の信頼性も十分に確保できる。
【0009】
本発明の製造方法は、プロジェクターに用いられる調光装置を構成する遮光部材の製造方法であって、前記遮光部材は、入射した光束を遮光する遮光面を有し、当該製造方法は、前記遮光面に曲面を有する第1凸部または第1凹部を複数形成する第1形成工程と、前記遮光面に曲面を有し前記第1凸部または前記第1凹部よりもサイズの小さい第2凸部または第2凹部を複数形成する第2形成工程とを備えることを特徴とする。
本発明では、遮光部材の製造方法が上述した第1,第2形成工程を備えるので、上述したプロジェクターと同様の作用及び効果を享受できる。
【0010】
本発明の製造方法では、前記遮光部材の基材の表面にエンボス加工を施すことで、前記基材の表面に前記第1凸部または前記第1凹部を複数形成することが好ましい。
本発明によれば、サイズの大きい第1凸部または第1凹部の形成について、エンボス加工を利用している。
このことにより、他の手法により第1凸部または第1凹部を形成する場合と比較して、容易にかつ迅速に第1凸部または第1凹部を形成できる。
【0011】
本発明の製造方法では、前記第2形成工程は、前記第1凸部または前記第1凹部が形成された前記基材の表面上にフォトレジストを塗布してレジスト層を形成するレジスト層形成手順と、前記第2凸部または前記第2凹部に対応したパターンが形成されたフォトマスクを用いて、露光により前記レジスト層に前記パターンを転写する露光手順と、現像処理により、前記レジスト層に前記パターンを形成する現像手順と、エッチング処理により、前記基材の表面に前記第2凸部または前記第2凹部を形成するエッチング手順とを備えることが好ましい。
【0012】
本発明では、フォトリソグラフィー法(レジスト層形成手順、露光手順、現像手順、及びエッチング手順)を利用して、第2凸部または第2凹部を形成している。
このことにより、サイズの小さい第2凸部または第2凹部を適切に形成できる。
特に、エッチング手順では、エッチング処理により、遮光部材の基材の表面に直接、第2凸部または第2凹部を形成しているので、当該基材に高反射性の材料を採用しておけば、第2形成工程の後、別途、反射層を形成する工程を不要とし、遮光部材の製造工程を簡略化できる。
【0013】
本発明の製造方法では、前記第2形成工程は、前記第1凸部または前記第1凹部が形成された前記基材の表面上に感光性ポリシラザンを含むフォトレジストを塗布してレジスト層を形成するレジスト層形成手順と、前記第2凸部または前記第2凹部に対応したパターンが形成されたフォトマスクを用いて、露光により前記レジスト層に前記パターンを転写する露光手順と、現像処理により、前記レジスト層に前記第2凸部または前記第2凹部を形成する現像手順と、前記レジスト層を焼成する焼成手順とを備え、当該製造方法は、前記第2形成工程の後、前記レジスト層上に反射層を形成する反射層形成工程を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明では、フォトリソグラフィー法(レジスト層形成手順、露光手順、現像手順、及び焼成手順)を利用して、第2凸部または第2凹部を形成している。
このことにより、サイズの小さい第2凸部または第2凹部を適切に形成できる。
特に、現像手順では、現像処理により、遮光部材の基材の表面ではなく、レジスト層に第2凸部または第2凹部を形成しているので、エッチング処理により基材の表面に直接、第2凸部または第2凹部を形成する場合と比較して、微細な第2凸部または第2凹部を形成できる。
また、レジスト層形成手順では、焼成により酸化層に転化する感光性ポリシラザンを含むフォトレジストを採用している。
すなわち、焼成手順の後、レジスト層を耐熱性の高い酸化層に転化させることができるため、遮光部材の熱劣化を防止し、遮光部材の信頼性を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態におけるプロジェクターの概略構成を示す図。
【図2】第1実施形態における調光装置の構成を示す模式図。
【図3】第1実施形態における遮光部材の遮光面の一部を拡大した図。
【図4】第1実施形態における遮光部材の製造方法を説明するフローチャート。
【図5】第1実施形態における遮光部材の製造方法を説明するための図。
【図6】第2実施形態における遮光部材の製造方法を説明するフローチャート。
【図7】第2実施形態における遮光部材の製造方法を説明するための図。
【図8】各実施形態の変形例を示す図。
【図9】各実施形態の変形例を示す図。
【図10】各実施形態の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1は、プロジェクター1の概略構成を示す図である。
プロジェクター1は、画像を投射してスクリーン(図示略)上に投影画像を表示する。
そして、このプロジェクター1は、図1に示すように、外装筐体2内部に収納される光学ユニット3を備える。
【0017】
〔光学ユニットの構成〕
光学ユニット3は、図1に示すように、光学部品用筐体4と、光学部品用筐体4に支持される投射光学装置としての投射レンズ5とを備える。
そして、光学部品用筐体4には、図1に示すように、光源ランプ311及びリフレクター312を有する光源装置31と、第1,第2レンズアレイ321,322、偏光変換素子323、及び重畳レンズ324を有する照明光学装置32と、ダイクロイックミラー331,332、及び反射ミラー333を有する色分離光学装置33と、入射側レンズ341、リレーレンズ343、及び反射ミラー342,344を有するリレー光学装置34と、3つの入射側偏光板35と、光変調装置としての3つの液晶パネル36と、3つの出射側偏光板37と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム38と、調光装置6とが収納される。
そして、上記各部材31〜38,6は、図1に示すように、光学部品用筐体4内部に設定された照明光軸Ax(光源装置31から出射された光束の光軸)に対する所定位置に位置付けられる。
【0018】
上述した構成により、光源装置31から出射され照明光学装置32を介した光束は、色分離光学装置33にて赤(R),緑(G),青(B)の3つの色光に分離される。また、分離された各色光は、各液晶パネル36にてそれぞれ変調される。変調された各色光は、プリズム38にて合成され、投射レンズ5にてスクリーンに投射される。
なお、上述した各部材4,5,31〜38は、一般的なプロジェクターで用いられる構成であるため、以下では、調光装置6の構成のみを説明する。
【0019】
〔調光装置の構成〕
図2は、調光装置6の構成を示す模式図である。具体的に、図2は、調光装置6を側方から見た図であり、全開状態(遮光量が最小となる状態)を実線で示し、全閉状態(遮光量が最大となる状態)を2点鎖線で示している。
調光装置6は、図2に示すように、第1レンズアレイ321から第2レンズアレイ322に至る光束の光路中に配設され、光束を通過可能とする光通過領域Arの面積を変更する。
この調光装置6は、図2に示すように、照明光軸Axを通る水平面Fhを基準として対称配置された一対の遮光部材61を備える。
【0020】
一対の遮光部材61は、板体で構成され、制御装置(図示略)による制御の下、モーター等の駆動手段(図示略)、及びモーター等にて発生された駆動力を伝達させる歯車等の伝達機構(図示略)を介して回転可能に構成されている。
より具体的に、一対の遮光部材61は、互いに対向する各端部同士が互いに近接隔離するとともに、第2レンズアレイ322に対して近接隔離するように回転可能に構成されている。
そして、調光装置6は、図2に示すように、一対の遮光部材61が回転することで、光通過領域Ar(一対の遮光部材61の互いに対向する各端部間)の面積を変更し、第2レンズアレイ322(液晶パネル36)に入射する光束の光量を調整する。
【0021】
図3は、遮光部材61の遮光面Fの一部を拡大した図である。
上述した遮光部材61において、入射した光束を遮光する遮光面F(図2中、光入射側の板面)には、図3に示すように、複数の第1凹部611と、複数の第2凹部612とが設けられている。
複数の第1凹部611は、図3に示すように、半球状に形成された凹部(曲面を有する凹部)である。そして、複数の第1凹部611は、図3では図示を省略したが、遮光面F全体に亘って形成されている。
【0022】
複数の第2凹部612は、第1凹部611と同様に、図3に示すように、半球状に形成された凹部である。
また、半球状の第2凹部612の径寸法は、図3に示すように、半球状の第1凹部611の径寸法に対して小さくなるように設定されている。すなわち、第2凹部612は、第1凹部611に対してサイズが小さいものである。
そして、複数の第2凹部612も第1凹部611と同様に、遮光面F全体に亘って形成され、第1凹部611上にも形成されている。
【0023】
〔遮光部材の製造方法〕
次に、上述した遮光部材61の製造方法について説明する。
図4は、遮光部材61の製造方法を説明するフローチャートである。
図5は、遮光部材61の製造方法を説明するための図である。
先ず、作業者は、遮光部材61の基材610に対して、図5(A)に示すように、エンボス加工により、複数の第1凹部611を形成する(ステップS1:第1形成工程)。
例えば、基材610としては、アルミ合金からなる矩形状の板体(15mm×25mm、厚み0.5mm)を採用できる。
具体的に、第1形成工程S1では、鋼製ロール(図示略)にて基材610を圧延し、基材610の表面(遮光面F)に複数の第1凹部611を形成する。
具体的な図示は省略したが、上記鋼製ロールの外面(基材610に当接する面)には、第1凹部611に対応した半球状の凸部が設けられている。そして、当該半球状の凸部は、複数の第1凹部611の配列パターンに対応した配列パターンで複数設けられている。
なお、本実施形態では、上記半球状の凸部の径寸法は、2mmに設定されているが、0.1〜10mmの範囲であればよく、より好ましくは0.2〜3mmに設定できるとよい。
【0024】
次に、作業者は、図5(B)〜図5(F)に示すように、基材610の表面に複数の第2凹部612を形成する(ステップS2:第2形成工程)。
具体的に、先ず、作業者は、図5(B)に示すように、基材610の表面全体にフォトレジストを塗布し、レジスト層Rを形成する(ステップS21:レジスト層形成手順)。
本実施形態では、フォトレジストとして、アクリル系樹脂等の感光性樹脂材料からなるポジ型のフォトレジストを採用している。
上述したように、基材610の表面には、複数の第1凹部611が形成されている。このため、基材610の表面は、平坦状ではない。本実施形態では、凹凸面となっている基材610の表面に対して、レジスト層Rの厚みが均一となるように、スプレーを用いてフォトレジストを塗布している。
本実施形態では、上述したようにフォトレジストを塗布することで、基材610の表面に、厚みが3μmのレジスト層Rを形成している。
【0025】
次に、作業者は、図5(C)に示すように、表面全体にレジスト層Rが形成された基材610に対して、フォトマスクMを用いて、レジスト層Rの一部を感光させる(ステップS22:露光手順)。
具体的に、フォトマスクMには、第2凹部612に対応した円形状の開口部M1が設けられている。そして、開口部M1は、複数の第2凹部612の配列パターンに対応した配列パターンで複数設けられている。
なお、本実施形態では、開口部M1の径寸法は、50μmに設定されているが、1〜500μmの範囲内であればよく、より好ましくは10〜100μmに設定するのが望ましく、第1凹部611の径寸法の1/10程度がよい。
また、本実施形態では、露光量を150mJ/cm2としている。
このため、露光手順S22では、フォトマスクMを介してレジスト層Rの一部を感光させることで、開口部M1の配列パターンがレジスト層Rに転写される。
【0026】
次に、作業者は、現像処理(アルカリ水溶液等の現像液に浸漬等を行う処理)により、感光した部分のレジスト層Rを除去する(ステップS23:現像手順)。
すなわち、現像手順S23を実施することで、図5(D)に示すように、レジスト層Rに開口部M1の配列パターンが形成され、当該配列パターンに応じて基材610の表面の一部が露出する。
【0027】
次に、作業者は、エッチング処理(エッチング液(リン酸、硝酸、及び酢酸の混合液等)に一定時間、浸漬等を行う処理)により、レジスト層Rを介して露出した基材610の表面をエッチングする(ステップS24:エッチング手順)。
そして、エッチング手順S24を実施することで、図5(E)に示すように、基材610の表面に、レジスト層Rに形成された開口部M1の配列パターンに応じて複数の第2凹部612が形成される。
【0028】
次に、作業者は、レジスト剥離液を用いて、図5(F)に示すように、基材610の表面上のレジスト層Rを除去する(ステップS25)。
以上の工程により、遮光部材61が製造される。
【0029】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、遮光部材61の遮光面Fには、第1凹部611が複数設けられている。
このことにより、一対の遮光部材61を全閉状態とした場合であっても、調光装置6から光源装置31への戻り光を低減させることができる。
具体的に、遮光面Fに第1凹部611が複数設けられているため、遮光部材61に入射した光束は、遮光面Fにて反射して散乱することとなる。このため、調光装置6から光源装置31への戻り光を低減させることができる。
したがって、光源装置31の温度上昇を抑制し、光源装置31の熱劣化を防止できるため、光源装置31の信頼性を十分に確保できる。
【0030】
特に、第1凹部611が半球状に形成されているので、遮光面Fに入射した光束を当該半球状の曲面にて、一方向に進行させずに、良好に散乱させることができる。このため、遮光面Fにて反射した光束がプロジェクター1内部の一部の構成部材(例えば、光学部品用筐体4)に集中して照射されることがなく、当該構成部材の熱劣化も防止できる。
【0031】
また、遮光面Fには、第1凹部611の他、第2凹部612が複数設けられている。
すなわち、サイズの大きい第1凹部611とサイズの小さい第2凹部612とを組み合わせることで、遮光面Fに入射した光束をさらに散乱させ易い構造とすることができる。
このため、調光装置6から光源装置31への戻り光をさらに低減させることができる。
また、遮光面Fの表面積も大きくすることができるため、遮光面Fへの光束の入射によって生じる遮光部材61の熱を放熱し易い構造とすることができる。
このため、遮光部材61、ひいては、調光装置6の熱劣化も防止でき、調光装置6の信頼性も十分に確保できる。
【0032】
さらに、サイズの大きい第1凹部611の形成について、エンボス加工を利用している。
このことにより、他の手法により第1凹部611を形成する場合と比較して、容易にかつ迅速に第1凹部611を形成できる。
また、フォトリソグラフィー法(レジスト層形成手順S21、露光手順S22、現像手順S23、及びエッチング手順S24)を利用して、第2凹部612を形成している。
このことにより、サイズの小さい第2凹部612を適切に形成できる。
特に、エッチング手順S24では、エッチング処理により、基材610の表面に直接、第2凹部612を形成している。このことにより、基材610に高反射性の材料を採用することで、第2形成工程S2の後、別途、反射層を形成する工程を不要とし、遮光部材61の製造工程を簡略化できる。
【0033】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の説明では、前記第1実施形態と同様の構成及び同一部材には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
前記第1実施形態では、遮光部材61を製造する際に、第1凹部611を基材610の表面に直接、形成し、さらに、第2凹部612も基材610の表面に直接、形成していた。
これに対して第2実施形態では、遮光部材61を製造する際に、第1凹部611については、前記第1実施形態と同様に、基材610の表面に直接、形成する。しかしながら、第2凹部612については、基材610の表面に直接、形成しない。
すなわち、第2実施形態では、前記第1実施形態に対して、遮光部材61の製造方法が異なるのみである。その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。
【0034】
図6は、遮光部材61の製造方法を説明するフローチャートである。
図7は、遮光部材61の製造方法を説明するための図である。
具体的に、本実施形態では、以下に示すように、遮光部材61が製造される。
先ず、作業者は、前記第1実施形態で説明したステップS1と同様に、基材610に対して、図7(A)に示すように、エンボス加工により、複数の第1凹部611を形成する(ステップS3:第1形成工程)。
次に、作業者は、図7(B)〜図7(D)に示すように、基材610の表面上に複数の第2凹部612を設ける(ステップS4:第2形成工程)。
【0035】
具体的に、先ず、作業者は、前記第1実施形態で説明したステップS21と同様に、図7(B)に示すように、基材610の表面全体にフォトレジストを塗布し、レジスト層R´を形成する(ステップS41:レジスト層形成手順)。
本実施形態では、フォトレジストとして、感光性ポリシラザン溶液を採用している。
ここで、ポリシラザンとは、Si、N、H(または有機基)からなるポリマーで、加熱・焼成によってSiO2に転化する材料である。シラザンは、Si−N結合を持つ化合物であり、ポリシラザンは、−SiH2−NH−を基本としている。さらに、感光性を得るために光触媒が添加されている。
また、本実施形態では、基材610表面に、厚みが5μmのレジスト層R´を形成している。
【0036】
次に、作業者は、前記第1実施形態で説明したステップS22と同様に、図7(C)に示すように、表面全体にレジスト層R´が形成された基材610に対して、フォトマスクM´を用いて、レジスト層R´の一部を感光させる(ステップS42:露光手順)。
本実施形態で用いるフォトマスクM´は、前記第1実施形態で説明したフォトマスクMと同様の構成を有している。
本実施形態も第1実施形態と同様に、開口部M1´の径寸法は、50μmに設定されているが、1〜500μmの範囲内であればよく、より好ましくは10〜100μmに設定するのが望ましく、第1凹部611の径寸法の1/10程度がよい。
【0037】
次に、作業者は、前記第1実施形態で説明したステップS23と同様に現像処理を実施し、図7(D)に示すように、レジスト層R´に開口部M1´の配列パターンに応じた複数の第2凹部612を形成する(ステップS43:現像手順)。
次に、作業者は、焼成処理により、レジスト層R´をシリカ系セラミックス被膜に転化させる(ステップS44・焼成手順)。
本実施形態では、300℃で10分間の焼成処理を行っている。
上述した第2形成工程S4の後、作業者は、蒸着等により、レジスト層R´上にアルミニウム等からなる反射層を形成する(ステップS5:反射層形成工程)。
本実施形態では、反射層形成工程S5において、厚みが0.5μmの反射層を形成している。
以上の工程により、遮光部材61が製造される。
【0038】
上述した第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果の他、以下の効果がある。
本実施形態では、フォトリソグラフィー法(レジスト層形成手順S41、露光手順S42、現像手順S43、及び焼成手順S44)を利用して、第2凹部612を形成している。
このことにより、サイズの小さい第2凹部612を適切に形成できる。
特に、現像手順S43では、現像処理により、基材610の表面ではなく、レジスト層R´に第2凹部612を形成しているので、エッチング処理により基材610に直接、第2凹部612を形成する場合(前記第1実施形態)と比較して、微細な第2凹部612を形成できる。
【0039】
また、レジスト層形成手順S41では、焼成により酸化層に転化する感光性ポリシラザンを含むフォトレジストを採用している。
すなわち、焼成手順S44の後、レジスト層R´を耐熱性の高い酸化層に転化させることができるため、遮光部材61の熱劣化を防止し、遮光部材61の信頼性を十分に確保できる。
【0040】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
図8から図10は、前記各実施形態の変形例を示す図である。
前記各実施形態では、遮光部材61の遮光面Fに第1,第2凹部611,612を設けていたが、これに限らない。
例えば、図8に示すように、遮光面Fにサイズの大きい複数の第1凸部611´とサイズの小さい複数の第2凹部612とを設けても構わない。
また、例えば、図9に示すように、遮光面Fにサイズの大きい複数の第1凹部611とサイズの小さい複数の第2凸部612´とを設けても構わない。
さらに、例えば、図10に示すように、遮光面Fにサイズの大きい複数の第1凸部611´とサイズの小さい複数の第2凸部612´とを設けても構わない。
【0041】
前記各実施形態や図8ないし図10に示す構成において、第1凹部611、第1凸部611´、第2凹部612、及び第2凸部612´等で構成される凹凸面を形成する方法は、前記各実施形態で説明した方法に限らない。
例えば、凹凸面を形成する際に、エンボス加工やフォトリソグラフィー法を利用せずに、インクジェット技術を利用しても構わない。
具体的には、例えば、溶媒としてキシレンを用いたペルヒドロポリシラザン(PHPS)溶液をインクとし、当該インクをインクジェット技術で遮光面F上に塗布し、乾燥及び焼成処理を実施することで、凹凸面を有する酸化層を形成する。
そして、凹凸面を有する酸化層を形成した後、前記第2実施形態で説明した反射層形成工程S5を実施する。
【0042】
また、例えば、凹凸面を形成する際に、プラズマコーティング法、フォトリソグラフィー法、及びプラズマドライエッチング法を組み合わせた方法を利用しても構わない。
具体的には、先ず、遮光面Fにプラズマコーティング法にて酸化シリコン層を形成する。
次に、前記第1実施形態で説明したステップS21〜S23を実施する。
次に、CF4ガスによるプラズマドライエッチング法によって、酸化シリコン層に凹凸面を形成する。
そして、凹凸面を形成した後、前記第1実施形態で説明したステップS25を実施し、さらには、前記第2実施形態で説明した反射層形成工程S5を実施する。
【0043】
さらに、例えば、凹凸面を形成する際に、アルマイト処理法を利用しても構わない。
具体的には、温度20℃の15%硫酸水溶液の電解浴の中で、陰極側に銅材を設置し、陽極側に基材610を設置し、15Vの電圧(直流1.5A)を40分間印加することで、遮光面F上に凹凸面を有する酸化層を形成する。
そして、凹凸面を有する酸化層を形成した後、前記第2実施形態で説明した反射層形成工程S5を実施する。
【0044】
また、例えば、凹凸面を形成する際に、エアロゾルデポジッション法を利用しても構わない。
具体的には、先ず、前処理として、平均粒径1.0μmのシリカ粉末(SiO2)をエアロゾル発生器の容器内に入れ、150℃で加熱するとともに、容器全体に超音波を印加しながら30分間、排気系により容器内を排気し、シリカ粉末を乾燥させる。
次に、酸素ガスを容器に導入し、シリカ粉末と混合させることでエアロゾルを形成する。
次に、上述したエアロゾルを、解粉及び分級して、エアロゾルに含まれる微粒子を一次粒子化させる。
次に、成膜室(真空度10Pa以下)に設置された基材610に対して、噴射ノズルからエアロゾルを100分間噴射することで、凹凸面を有する膜厚0.1mmのSiO2膜を形成する。
そして、凹凸面を有するSiO2膜を形成した後、前記第2実施形態で説明した反射層形成工程S5を実施する。
【0045】
前記各実施形態では、遮光部材61は、回転することで、光通過領域Arの面積を変更し、入射する光束の光量を調整していたが、これに限らず、スライド移動することで、光通過領域Arの面積を変更する構成としても構わない。
前記各実施形態では、調光装置6は、第1,第2レンズアレイ321,322間に配設されていたが、これに限らず、光源装置31から液晶パネル36に至る光束の光路中であれば、いずれの位置に配設しても構わない。
【0046】
前記各実施形態や図8ないし図10に示す構成において、第1凹部611、第1凸部611´、第2凹部612、及び第2凸部612´は、半球状に形成されていたが、これに限らず、曲面を有していれば、その他の形状で構成しても構わない。
前記各実施形態や図8ないし図10に示す構成において、第1凹部611、第1凸部611´、第2凹部612、及び第2凸部612´は、遮光面Fにおいて、規則的に複数配列された構成を採用してもよく、あるいは、ランダムに複数配列された構成を採用しても構わない。
また、第1凹部611、第1凸部611´、第2凹部612、及び第2凸部612´のうち1種類のみ、3種類、あるいは全てを遮光面Fに設けた構成を採用しても構わない。
前記各実施形態では、光変調装置として透過型の液晶パネル36を採用していたが、これに限らず、反射型の液晶パネルや、マイクロミラーを用いたデバイス等、液晶以外の光変調装置を採用しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、プレゼンテーションやホームシアター等に用いられるプロジェクターに利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・プロジェクター、5・・・投射レンズ(投射光学装置)、6・・・調光装置、36・・・液晶パネル(光変調装置)、61・・・遮光部材、610・・・基材、611・・・第1凹部、611´・・・第1凸部、612・・・第2凹部、612´・・・第2凸部、F・・・遮光面、R,R´・・・レジスト層、M,M´・・・フォトマスク、S1,S3・・・第1形成工程、S2,S4・・・第2形成工程、S5・・・反射層形成工程、S21,S41・・・レジスト層形成手順、S22,S42・・・露光手順、S23,S43・・・現像手順、S24・・・エッチング手順,S44・・・焼成手順。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置と、前記光源装置から出射された光束を変調する光変調装置と、前記光変調装置にて変調された光束を投射する投射光学装置とを備えたプロジェクターであって、
前記光源装置から前記光変調装置に至る光束の光路中に配設され、前記光変調装置に入射する光束の光量を調整する調光装置を備え、
前記調光装置は、
入射した光束を遮光する遮光面を有し、移動することで前記光源装置から出射された光束を部分的に遮光する遮光部材を備え、
前記遮光面には、
曲面を有する第1凸部または第1凹部が複数設けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記遮光面には、
曲面を有する第2凸部または第2凹部が複数設けられ、
前記第2凸部または前記第2凹部は、
前記第1凸部または前記第1凹部よりもサイズが小さい
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
プロジェクターに用いられる調光装置を構成する遮光部材の製造方法であって、
前記遮光部材は、
入射した光束を遮光する遮光面を有し、
当該製造方法は、
前記遮光面に曲面を有する第1凸部または第1凹部を複数形成する第1形成工程と、
前記遮光面に曲面を有し前記第1凸部または前記第1凹部よりもサイズの小さい第2凸部または第2凹部を複数形成する第2形成工程とを備える
ことを特徴とする遮光部材の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の遮光部材の製造方法において、
前記第1形成工程は、
前記遮光部材の基材の表面にエンボス加工を施すことで、前記基材の表面に前記第1凸部または前記第1凹部を複数形成する
ことを特徴とする遮光部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の遮光部材の製造方法において、
前記第2形成工程は、
前記第1凸部または前記第1凹部が形成された前記基材の表面上にフォトレジストを塗布してレジスト層を形成するレジスト層形成手順と、
前記第2凸部または前記第2凹部に対応したパターンが形成されたフォトマスクを用いて、露光により前記レジスト層に前記パターンを転写する露光手順と、
現像処理により、前記レジスト層に前記パターンを形成する現像手順と、
エッチング処理により、前記基材の表面に前記第2凸部または前記第2凹部を形成するエッチング手順とを備える
ことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の遮光部材の製造方法において、
前記第2形成工程は、
前記第1凸部または前記第1凹部が形成された前記基材の表面上に感光性ポリシラザンを含むフォトレジストを塗布してレジスト層を形成するレジスト層形成手順と、
前記第2凸部または前記第2凹部に対応したパターンが形成されたフォトマスクを用いて、露光により前記レジスト層に前記パターンを転写する露光手順と、
現像処理により、前記レジスト層に前記第2凸部または前記第2凹部を形成する現像手順と、
前記レジスト層を焼成する焼成手順とを備え、
当該製造方法は、
前記第2形成工程の後、前記レジスト層上に反射層を形成する反射層形成工程を備える
ことを特徴とする遮光部材の製造方法。
【請求項1】
光源装置と、前記光源装置から出射された光束を変調する光変調装置と、前記光変調装置にて変調された光束を投射する投射光学装置とを備えたプロジェクターであって、
前記光源装置から前記光変調装置に至る光束の光路中に配設され、前記光変調装置に入射する光束の光量を調整する調光装置を備え、
前記調光装置は、
入射した光束を遮光する遮光面を有し、移動することで前記光源装置から出射された光束を部分的に遮光する遮光部材を備え、
前記遮光面には、
曲面を有する第1凸部または第1凹部が複数設けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記遮光面には、
曲面を有する第2凸部または第2凹部が複数設けられ、
前記第2凸部または前記第2凹部は、
前記第1凸部または前記第1凹部よりもサイズが小さい
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
プロジェクターに用いられる調光装置を構成する遮光部材の製造方法であって、
前記遮光部材は、
入射した光束を遮光する遮光面を有し、
当該製造方法は、
前記遮光面に曲面を有する第1凸部または第1凹部を複数形成する第1形成工程と、
前記遮光面に曲面を有し前記第1凸部または前記第1凹部よりもサイズの小さい第2凸部または第2凹部を複数形成する第2形成工程とを備える
ことを特徴とする遮光部材の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の遮光部材の製造方法において、
前記第1形成工程は、
前記遮光部材の基材の表面にエンボス加工を施すことで、前記基材の表面に前記第1凸部または前記第1凹部を複数形成する
ことを特徴とする遮光部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の遮光部材の製造方法において、
前記第2形成工程は、
前記第1凸部または前記第1凹部が形成された前記基材の表面上にフォトレジストを塗布してレジスト層を形成するレジスト層形成手順と、
前記第2凸部または前記第2凹部に対応したパターンが形成されたフォトマスクを用いて、露光により前記レジスト層に前記パターンを転写する露光手順と、
現像処理により、前記レジスト層に前記パターンを形成する現像手順と、
エッチング処理により、前記基材の表面に前記第2凸部または前記第2凹部を形成するエッチング手順とを備える
ことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の遮光部材の製造方法において、
前記第2形成工程は、
前記第1凸部または前記第1凹部が形成された前記基材の表面上に感光性ポリシラザンを含むフォトレジストを塗布してレジスト層を形成するレジスト層形成手順と、
前記第2凸部または前記第2凹部に対応したパターンが形成されたフォトマスクを用いて、露光により前記レジスト層に前記パターンを転写する露光手順と、
現像処理により、前記レジスト層に前記第2凸部または前記第2凹部を形成する現像手順と、
前記レジスト層を焼成する焼成手順とを備え、
当該製造方法は、
前記第2形成工程の後、前記レジスト層上に反射層を形成する反射層形成工程を備える
ことを特徴とする遮光部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−109133(P2013−109133A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253732(P2011−253732)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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