説明

プロジェクタ

【課題】光学像の拡大を確実に行うことのできるプロジェクタを提供すること。
【解決手段】プロジェクタは、平行光束からなる画像を形成、投射する画像投射装置と、画像投射装置からの画像の一方向を拡大して射出する第1導光体6と、第1導光体6から射出された画像の一方向に直交する方向を拡大して射出する第2導光体と、第2導光体からの画像を投影するスクリーンとを備える。第1および第2導光体は、画像としての光束が進行する光路とは屈折率の異なる媒質61により構成され、入射光束に対して傾斜配置される光入出射面61Aと、光入出射面61Aと非平行に配置され、媒質内を進行する光束を反射して光入出射面61Aに導く光反射面61Bとを備える。第1および第2導光体の光入出射面に入射した画像は、屈折して光反射面に入射し、光反射面から光入出射面61Aを介して射出される過程で、一方向および当該方向の直交方向に拡大される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力する画像情報に応じて光学像を形成し、拡大投射するプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭内でのホームシアター等の用途として、プロジェクタが普及しつつある。この種のプロジェクタとして、画像情報に応じた光学像を形成して投射画像として投射する画像投射装置と、投射画像を反射する反射ミラーと、透過型のスクリーンとを備えて構成され、スクリーンの後方側から当該スクリーンに向かって光学像を投影するリアプロジェクタが知られている。
【0003】
このようなリアプロジェクタは、一般的には、画像投射装置で形成した光学像を、投射レンズを介して、反射ミラーに拡大投射し、当該反射ミラーは、入射した光学像としての光束をスクリーンに向かって反射して、当該スクリーンに光学像を投射する構成とされている。
このような構成のリアプロジェクタでは、画像投射装置で形成した光学像をスクリーンに拡大投射するためには、投射レンズが必要となるだけでなく、投射レンズからスクリーンまでの光学像を拡大するための長い光路が必要となるので、リアプロジェクタの薄型化を図りづらいという問題があった。
【0004】
このような問題に対し、2つの拡大反射鏡を備えるリアプロジェクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなリアプロジェクタの拡大反射鏡は、光束入射順に、表面コート層、ミラーベースパネルおよび反射ミラーを備えて構成されている。このうち、表面コート層は、多層にコーティングされて形成され、入射角度が大きい光束が表面で反射するのを防止して、反射ミラー側に屈折させている。また、反射ミラーで反射した光束は、表面コート層に対して小さい入射角度で入射するので、ほとんど屈折・反射せずに表面コート層から射出される。これにより、画像投射装置(画像照射装置)で形成され、拡大反射鏡に入射した光学像は、当該拡大反射鏡によって拡大されるので、投射レンズを用いることなくリアプロジェクタを構成することができるとともに、画像投射装置からスクリーンまでの光路を短くして、リアプロジェクタの薄型化を図ることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−295111号公報(第3頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的に、反射鏡に入射した光束は、当該反射鏡の入射面に対する入射角度と略同じ角度で射出されることとなるので、前述した特許文献1に記載の拡大反射鏡において、入射光束である光学像の高倍率な拡大を図るためには、表面コート層およびミラーベースパネルを屈折率の高い材料で構成する必要があるなど、実現が困難であるという問題がある。すなわち、特許文献1に記載の拡大反射鏡において、表面コート層およびミラーベースパネルを、屈折率の低い材料で構成した場合には、表面コート層から射出される光束は、当該表面コート層に入射した光束の入射角度と略同じ射出角度で射出されてしまうため、光学像の拡大が実現しづらいという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、光学像の拡大を確実に行うことのできるプロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達するために、本発明のプロジェクタは、入力する画像情報に応じて光学像を形成し、拡大投射するプロジェクタであって、平行光束からなる前記光学像を形成して、投射画像として投射する画像投射装置と、前記画像投射装置から投射された投射画像の一方向を拡大して射出する第1導光体と、前記第1導光体から射出された光束の前記一方向に直交する方向を拡大して射出する第2導光体と、この第2導光体から射出された光束を投影するスクリーンとを備え、前記第1導光体および前記第2導光体は、前記投射画像が進行する光路とは屈折率の異なる媒質により構成され、入射光束に対して傾斜配置される光入出射面と、前記光入出射面と非平行に配置され、前記媒質内を進行する光束を反射して、当該光束を前記光入出射面に導く光反射面とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1導光体に入射した光学像としての光束は、一方向に拡大して射出され、当該第1導光体から射出された光束は、第2導光体に入射して、当該第2導光体により、第1導光体で拡大される光学像の一方向に直交する方向に拡大されて射出されるので、スクリーンに投射する光学像を確実に拡大することができる。
すなわち、それぞれの導光体は、投射画像である光束の進行する光路とは屈折率の異なる媒質で構成され、当該媒質の光入出射面に入射した光は、当該光入出射面の界面で屈折して光反射面に入射する。そして、光反射面に入射した光は、当該光反射面に対する光の入射角と同じ角度で反射する。このため、光入出射面の界面で屈折した分だけ、当該導光体への入射光束の範囲に対して、射出光束の範囲は拡大されることとなる。これにより、光束、すなわち、光学像の拡大を図ることができる。
このように、画像投射装置によって形成された光学像を第1導光体に入射させることにより、当該光学像を一方向に拡大することができ、また、この拡大した光学像を第2導光体に入射させることにより、当該光学像を第1導光体による拡大方向に直交する方向に拡大することができる。従って、確実に光学像の拡大を行うことができる。
【0010】
本発明では、前記光反射面は、当該光反射面の延出方向に沿って鋸刃状に配列され、それぞれが互いに平行な複数の反射要素を備えていることが好ましい。
本発明によれば、導光体の薄型化を図ることができる。
ここで、導光体の光入出射面と、当該導光体の光反射面とは非平行に配置されているので、光反射面が1つの反射要素で構成されている場合では、導光体の厚さ寸法は、光入出射面の延出方向の寸法に応じて大きくなる。
これに対して、本発明では、光反射面は、当該光反射面に延出方向に沿って鋸刃状に配列される複数の反射要素で構成され、それぞれの反射要素の反射領域が互いに平行とされることによって、光入出射面と光反射面との交点とは反対側の寸法を小さくすることができ、ひいては、導光体の厚さ寸法を小さくすることができる。また、それぞれの反射要素を互いに平行とすることによって、光反射面が1つの反射要素から構成されている場合と同様に、入射する光学像の一方向の拡大が可能である。従って、第1および第2導光体の薄型化を図ることができる。
【0011】
本発明では、前記第1導光体および前記第2導光体の少なくともいずれかの前記光反射面の前記光入出射面に対する傾斜角度は、当該光反射面に入射した光束を、前記光入出射面に直交する方向に反射するような角度とされていることが好ましい。
本発明によれば、光反射面で反射した光束は、光入出射面に直交する方向に入射するので、当該光入出射面を屈折せずに透過することとなる。
ここで、光反射面に入射した光束は、当該光反射面に入射した光束の入射角と同じ角度で反射して光入出射面を透過して射出される。この際、光入出射面から射出される光束は、当該光入出射面に角度をもって入射した光束は、当該光入出射面に入射した際の屈折率で屈折して射出される。
【0012】
これに対し、光反射面の光入出射面に対する傾斜角度が、光反射面に入射した光束を、光入出射面に直交する方向に反射するような角度とされていることにより、光反射面で反射した光束を、屈折させずに光入出射面と直交方向に当該光入出射面から射出することができる。これにより、光学像としての光束の拡大を図ることができるほか、第1導光体と第2導光体との高さ方向の位置または幅方向の位置を一致させることができる。従って、光学像の拡大を確実に行うことができるとともに、プロジェクタの小型化を図ることができる。
【0013】
本発明では、前記画像投射装置は、平行光束を射出する光源と、当該平行光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置とを備えていることが好ましい。
このような光源として、レーザ光を射出する半導体レーザを例示することができる。また、光変調装置としては、グレーティングライトバルブ(Grating Light Valve,GLV)を例示することができる。
【0014】
ここで、第1導光体および第2導光体による安定した光束の拡大を図るためには、それぞれの導光体に入射する光束は、それぞれの導光体から反射する光束の拡散を抑えるために、平行な直線光束であることが望まれる。
これに対し、本発明では、画像投射装置が、平行光束を射出する光源と、この光源を変調して光学像を形成する光変調装置を備えることにより、当該画像投射装置から光学像として射出される光束を平行光束とすることができる。従って、確実に平行光束からなる光学像を形成して、第1導光体および第2動光体に入射させることができ、これにより、拡大した光学像を安定して得ることができる。
【0015】
本発明では、前記第1導光体は、前記スクリーンに対して略直交する位置に配置され、前記第2導光体は、前記スクリーンに対向する位置に配置され、前記画像投射装置は、前記スクリーンの下方に配置され、前記第1導光体に前記光学像としての光束を射出することが好ましい。
本発明によれば、画像投射装置から射出される光束が入射する第1導光体は、スクリーンに略直交する位置に配置される。これによれば、第1導光体は、画像投射装置から射出され、拡大される前の光学像としての光束を、スクリーンの縦方向または横方向に拡大することとなるので、当該第1導光体の幅寸法、すなわち、スクリーンに直交する方向の寸法を小さくすることができる。従って、プロジェクタの小型化を図ることができる。
また、画像投射装置は、スクリーンの下方に配置されることとなるので、プロジェクタにおける画像投射装置の配置位置が下方となる。これにより、プロジェクタの重心が下がることとなるので、当該プロジェクタの設置時の安定性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔1.第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るリアプロジェクタ1を示す斜視図である。また、図2および図3は、リアプロジェクタ1の内部構成を示す正面図(Z方向と反対方向から見た図)および平面図(Y方向と反対方向から見た図)である。なお、図1〜図3に示すX,Y,Z方向は、各図でそれぞれ同方向を示しており、観察者がリアプロジェクタ1を観察する方向と反対方向をZ方向とし、このZ方向に直交する方向のうち、水平方向をX方向とし、Z方向およびX方向に直交する高さ方向をY方向としている。
本実施形態に係るリアプロジェクタ1は、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成し、この光学像をスクリーン3に拡大投射するものである。
【0017】
(1)リアプロジェクタ1の全体構成
このリアプロジェクタ1は、図1および図2に示すように、合成樹脂製の筐体2と、当該筐体2の前面に露出して設けられる透光性のスクリーン3とを備えている。また、筐体2内には、図2および図3に示すように、スクリーン3の下方に配置され、画像情報に応じた光学像を形成、射出する画像投射装置4と、当該画像投射装置4の射出光束が入射する反射ミラー5と、当該反射ミラー5で反射した光束を一方向に拡大する第1ミラー6と、当該第1ミラー6で反射した光束が入射し、当該光束を第1ミラー6による拡大方向に直交する方向に拡大して、スクリーン3に向かって反射する第2ミラー7とを備えている。
なお、詳しい図示を省略したが、筐体2内には、これらの他に、リアプロジェクタ1全体を制御する制御基板と、リアプロジェクタ1を構成する電子部品に外部からの電力を供給する電源ユニットとが収納されている。
【0018】
このうち、スクリーン3は、矩形状に形成され、かつ、筐体2内部に設けられた画像投射装置4から射出された光束を表示可能に形成されている。このようなスクリーン3は、レンチキュラーシート等で構成され、前面側がガラス基板で保護されている。
また、反射ミラー5は、当該画像投射装置4から射出された光束が入射し、当該光束を第1ミラー6に向かって反射するものであり、全反射ミラーで構成されている。具体的に、この反射ミラー5は、後述する画像投射装置4からX方向に略平行に射出された光束を、Y方向に略平行に反射して、後述する第1ミラー6の光入出射面61Aに導くものである。
【0019】
(2)画像投射装置4の構成
図4は、画像投射装置4の構成を示す模式図である。
画像投射装置4は、前述のように、スクリーン3の下方、すなわち、Y方向の反対側に配置されている。この画像投射装置4は、図4に示すように、光源としてのレーザ発振器41と、クロスダイクロイックプリズム42と、照明レンズ43と、GLV44と、ポリゴンミラー45と、fθレンズ46と、光ファイバ47と、走査同期用ミラー48と、光検出センサ49とを備えている。
【0020】
レーザ発振器41は、650nmの波長の赤色レーザを発振する赤色レーザ発振器41Rと、532nmの波長の緑色レーザを発振する緑色レーザ発振器41G、および、473nmの波長の青色レーザを発振する青色レーザ発振器41Bから構成され、それぞれクロスダイクロイックプリズム42の光束入射面に、各色のレーザ光を照射する。
これらレーザ発振器41は、図示しない制御基板に電気的に接続されており、当該制御基板により駆動が制御されている。具体的に、各レーザ発振器41は、制御基板により、後述するGLV44の駆動周期に応じたタイミングで、各色のレーザ光照射が切り替わるように制御されている。
【0021】
クロスダイクロイックプリズム42は、赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが、4つの直角プリズムの界面に沿って略X字状に設けられて構成されている。そして、このクロスダイクロイックプリズム42に赤色レーザ発振器41Rから赤色レーザが入射した場合、赤色光を反射する誘電体多層膜によって、当該赤色レーザが反射して、クロスダイクロイックプリズム42の光束射出面から、照明レンズ43に向かって射出される。また、同様に、クロスダイクロイックプリズム42に、青色レーザ発振器41Bから青色レーザが入射した場合、青色光を反射する誘電体多層膜によって、当該青色レーザが反射して、照明レンズ43に向かって射出される。なお、緑色レーザ発振器41Gから緑色レーザが入射した場合は、それぞれの誘電体多層膜を透過して、光束射出面から照明レンズ43に向かって射出される。
【0022】
照明レンズ43は、各レーザ発振器41R,41G,41Bにより一点照射された各レーザ光から、後述するGLV44の光学像形成領域を照明する線状ビーム光束を形成するものである。このような照明レンズ43は、円筒レンズで構成することができる。
【0023】
GLV(Grating Light Valve)44は、反射型の光変調装置であり、マイクロリボンアレイを用いて入射光束を変調して光学像を形成するものである。このマイクロリボンアレイは、リボン状の光回折素子がシリコン基板上に1列に配置された構成を有し、1画素が複数の光回折素子で構成されている。
このGLV44は、当該GLV44の光学像形成領域に照明レンズ43から射出された線状レーザ光束が照射され、GLV44上で1フレーム分の画像を走査するように、画像情報に応じた垂直方向の1次元画像を形成する。この1次元画像としての光学像を、後述するポリゴンミラー45の光反射面に射出することで、当該ポリゴンミラー45の回転により、1次元画像が走査されて2次元画像が形成される。
【0024】
なお、GLV44は、前述の制御基板と電気的に接続されている。このGLV44には、リアプロジェクタ1外部から入力する画像情報に応じた画像信号が入力するとともに、制御基板により、当該GLV44の駆動が制御されている。具体的には、GLV44は、制御基板の制御により、前述の赤色レーザ発振器41R、緑色レーザ発振器41G、および、青色レーザ発振器41Bによるレーザ発振と同期して、赤色成分用の画像形成、緑色成分用の画像形成、および、青色成分用の画像形成を、所定の周期で切り替えるように構成されている。
これにより、赤色レーザ発振器41Rからの赤色レーザ発振時には、赤色成分用の画像が形成され、緑色レーザ発振器41Gからの緑色レーザ発振時には、緑色成分用の画像が形成され、青色レーザ発振器41Bからの青色レーザ発振時には、青色成分用の画像が形成される。
【0025】
ポリゴンミラー45は、6つの光反射面451を有する平面視略六角形状に形成され、図示を省略するが、ポリゴンミラー45の平面中心を軸として矢印S方向に回転させるミラー回転モータが付属されている。
このポリゴンミラー45は、GLV44から傾斜して入射する光束を、後述するfθレンズ46の球面レンズ461に射出する。この際、ポリゴンミラー45は、ミラー回転モータの駆動によって当該ポリゴンミラー45の中心を軸として回転するので、GLV44から射出された1次元画像としての光束は、回転するポリゴンミラー45の光反射面451によって、画像を走査するようにfθレンズ461に入射する。これにより、1次元画像としてGLV44から射出された光束が、2次元画像として、fθレンズ46に射出される。
【0026】
fθレンズ46は、光束入射順に、球面レンズ461およびトーリックレンズ462から構成され、ポリゴンミラー45の光反射面451で反射した光束を、光ファイバ47の平らな光束入射面に集光するためのレンズであり、光の倒れを補正するものである。このうち、トーリックレンズ462の光束射出面は、当該トーリックレンズ462から射出された光束が、ポリゴンミラー45の光反射面と、入射する光ファイバ47の光束入射面とに焦点位置が合うように、凸面に形成されている。
【0027】
ここで、ポリゴンミラー45の回転速度は一定であるので、ポリゴンミラー45の光反射面451に対する光束の入射角度が小さい場合と大きい場合とでは、ポリゴンミラー45の光反射面451から射出された光束が光ファイバ47の光束入射面を走査する速度は、一定とはならないため、像面上に形成される光学像は、走査方向が歪んだ光学像となってしまう。このため、このようなfθレンズ46を設けることにより、像面における走査速度を一定として、適切な光学像を形成することができる。
なお、これらfθレンズ46は、球面レンズ461およびトーリックレンズ462に代えて、非球面プラスチックレンズ系によって構成することも可能である。
【0028】
光ファイバ47は、fθレンズ46のトーリックレンズ462から射出された光学像としての光束を平行化するものである。この光ファイバ47は、GLV44から射出された光学像としての光束が、像面上を走査するように、ポリゴンミラー45によって反射される際に、当該ポリゴンミラー45の反射によって光束が拡大してしまうのを抑えるものである。また、光ファイバ47は、ポリゴンミラー45から射出された光束を、平行光束として反射ミラー5に中継するものである。
【0029】
走査同期用ミラー48および光検出センサ49は、レーザ発振器41およびGLV44による画像形成の同期を図るためのものである。具体的には、ポリゴンミラー45で反射した光束が、走査同期用ミラー48で反射して光検出センサ49に入射すると、当該光検出センサ49は、制御基板に所定の信号を出力する。当該信号が入力した制御基板は、レーザ発振器41R,41G,41Bの駆動を切り替える信号、および、切り替えられたレーザ発振器41のレーザ光の色に対応した画像形成をGLV44に実行させる信号を出力する。
【0030】
すなわち、ポリゴンミラー45が回転して、ある光反射面451から隣接する光反射面451に、GLV44からの光束の入射が切り替えられた際に、当該光反射面451で反射した光束は、まず、走査同期用ミラー48に入射して、光検出センサ49に入射する。この光検出センサ49により、光束の入射が検出された際に、レーザ発振器41(41R,41G,41B)の駆動切替、および、GLV44による画像形成の切替を行うことにより、ポリゴンミラー45の回転に対応し、かつ、射出されるレーザ光の色に対応した光学像形成を行うことができる。
従って、1つの光反射面451には、赤色画像、緑色画像、または、青色画像を形成する1次元画像としての光束が入射し、ポリゴンミラー45が1/2回転する際に、それぞれの色の画像が像面上で走査されて、1フレーム分の2次元画像を構成することができる。
【0031】
(3)第1ミラー6および第2ミラー7の構成
第1ミラー6は、図2および図3に示すように、スクリーン3に直交するように配置される面のうち、スクリーン3に向かって左側(X方向とは反対方向)の面に傾斜して配置される。また、第2ミラー7は、図3に示すように、スクリーン3に対向する背面に傾斜して配置される。
これら第1ミラー6および第2ミラー7は、反射ミラー5を介して、画像投射装置4から平行光束として射出された光学像を拡大して、スクリーン3に射出する本発明の第1導光体および第2導光体に相当するものである。
【0032】
すなわち、第1ミラー6は、画像投射装置4から射出された光学像としての光束を、Y方向に拡大して反射する導光体であり、第2ミラー7は、当該第1ミラー6でY方向に拡大した光学像を、Y方向に直交するX方向に拡大して反射する導光体である。そして、当該第1ミラー6および第2ミラー7でY方向およびX方向に拡大された光学像は、第2ミラー7を介して、スクリーン3に到達し、当該拡大された光学像が表示される。
【0033】
図5は、第1ミラー6の断面を拡大した図である。なお、図5において示すX方向およびY方向は、図1において示したX方向およびY方向と、それぞれ同方向である。
第1ミラー6は、図5に示すように、入射光束の光路とは屈折率の異なる媒質としてのプリズム体61と、当該プリズム体61を固定する基板62とから構成されている。
このうち、プリズム体61は、断面が略直角三角形状を有する柱状体のプリズム要素611が、Y方向に沿って並列に配置されて構成されている。具体的には、プリズム体61は、各プリズム要素611の断面である略直角三角形状の斜辺が、それぞれ平行となり、かつ、当該直角三角形の直角を挟む二辺のうちの一辺が面一となるように配置されて構成されている。この面一とされた面が光入出射面61Aを形成し、斜辺であるそれぞれの面が反射要素として、第1ミラー6の光反射面61Bを形成している。
【0034】
すなわち、光入出射面61Aは、各プリズム要素611の光入射面から形成され、第1ミラー6の全面に亘って、平坦な面として形成されている。この光入出射面61Aには、当該光入出射面61Aに入射する光束の反射防止のための反射防止膜が形成されている。これにより、光入出射面61Aに入射する光束は、略全てプリズム要素611内に入射することとなる。
また、光反射面61Bは、各プリズム要素611の斜面となる光反射面から形成されている。この光反射面61Bを構成する各プリズム要素611の反射要素としての光反射面は、光入出射面61Aに対して所定の角度で傾斜しており、プリズム体61の光反射面61B全体が、鋸刃状に形成されている。
なお、光反射面61Bは、基板62に固定されるが、当該光反射面61Bの基板62に対向する面には、入射光束を全反射するアルミニウム加工等による反射膜が形成されている。
【0035】
このようなプリズム要素611は、本実施形態では、水晶により形成されている。なお、このようなプリズム要素611は、水晶に限らず、透光性を有し、光入出射面61Aに入射した光束を所定の屈折率で屈折させて、光反射面61Bに導く性質を備えた材質であれば、他のもので構成してもよい。このような材料として、例えば、サファイア等を挙げることができ、また、プリズム要素611を透光性の合成樹脂により構成してもよい。
【0036】
以下に、プリズム要素611に入射する光の軌跡を説明する。
図6は、プリズム要素611に入射する光の軌跡を示した図である。なお、図6においては、プリズム要素611を拡大して示している。また、図6において示すX方向およびY方向は、図1において示したX方向およびY方向と、それぞれ同方向である。
プリズム体61を構成するプリズム要素611の光入出射面61Aには、図6に示すように、画像投射装置4から射出された光学像としての光束が、反射ミラー5を介して入射する。反射ミラー5を介して入射する光束Aは、光入出射面61Aに対して、入射角θで入射する。この光入出射面61Aに入射する光束Aは、当該光入出射面61Aで、プリズム要素611が有する屈折率で屈折して、屈折角θを有する光束Bとして、プリズム要素611内に入射する。
【0037】
プリズム要素611内に屈折して入射した光束Bは、入射角θで光反射面61Bに入射する。そして、当該光束Bは、当該光束Bの光反射面61Bに対する入射角θと同じ角度を有する反射角θで反射して、光束Cとして光入出射面61Aに向かって射出される。
この光束Cは、光入出射面61Aに対して入射角θで入射し、光入出射面61Aから射出される際に、当該光入出射面61Aにおいて再び屈折して、光束Aが入射する光入出射面61Aに近接しない方向に光束Dとして射出される。この光束Dの射出方向は、前述のX方向に対して平行となるように、各プリズム要素611の光入出射面61AのY方向に対する傾斜、および、光反射面61Bの光入出射面61Aに対する傾斜が調整されている。これにより、光束Dは、光束Aに対して直交する方向に射出される。
【0038】
すなわち、第1ミラー6は、図2、図5および図6に示すように、画像投射装置4から射出され、反射ミラー5を介して第1ミラー6に入射する光束の角度、および、当該第1ミラー6を構成するプリズム要素611の屈折率に基づいて、当該第1ミラー6から射出される光束の方向が、X方向と平行になるように、Y方向に対して傾斜して配置されている。また、各プリズム要素611の頂角、すなわち、光入出射面61Aと光反射面61Bとによりなす角も、プリズム要素611の屈折率、および、光入出射面61Aに入射する光束の入射角に基づいて調整されている。
【0039】
図7は、プリズム要素611内の光束の光路の角度を示す図である。
ここで、各プリズム要素611の頂角をθとした場合、光束Cの光入出射面61Aに対する入射角θと、光入出射面61Aにおける光束Bの屈折角θおよび頂角θとの間には、以下のような関係がある。
図7に示すように、光束Bの光路と、光入出射面61Aおよび光反射面61Bとの交点を、それぞれ点Hおよび点Jとし、光束Cと光入出射面61Aとの交点を点Kとする。また、点Jを通り光入出射面61Aに直交する直線Eと、当該光入出射面61Aとの交点を点Lとすると、角度∠LJKは、以下の式(I)のように表される。
【0040】
[数1]
∠LJK=θ …(I)
【0041】
また、点Hを通り光入出射面61Aに直交する直線Fと、直線Eとは、平行になるので、直線Fと光反射面61Bとの交点を点Tとすると、角度∠HJLは、以下の式(II)にように表される。
【0042】
[数2]
∠HJL=∠JHT=θ …(II)
【0043】
さらに、点Jを通り光入出射面61Aの形成方向に平行な直線Gと、直線Fとの交点を点Sとすると、角度∠SJHは、以下の式(III)のように表される。
【0044】
[数3]
∠SJH=π/2−θ …(III)
【0045】
また、直線Gと光入出射面61Aの形成方向とは平行となるので、角度∠TJSは、プリズム要素611の頂角と同じとなる。このため、角度∠TJSは、以下の式(IV)のように表される。
【0046】
[数4]
∠TJS=θ …(IV)
【0047】
一方、光束Bの入射角θおよび反射角θとは、光反射面61Bの法線を挟んで同じ確度であるので、光反射面61Bと、直線S、光束Bの光路、直線Eおよび光束Cの光路との交差角から、以下の式(V)を導くことができる。
【0048】
[数5]
π=2(∠TJS+∠SJH)+∠HJL+∠LJK …(V)
【0049】
ここで、上記式(V)に、式(I)〜(IV)を代入することにより、以下の式(VI)を導くことができる。
【0050】
[数6]
θ=θ−2θ …(VI)
【0051】
従って、光束Cの光入出射面61Aに対する入射角θは、プリズム要素611の屈折率に応じて屈折して入射する光束Bの屈折角θと、プリズム要素611の頂角θとによって表すことができる。
なお、式(VI)により、入射角θが0より大きい角度となる場合は、光束Dは、光入出射面61AからY方向寄りに射出され、入射角θが0より小さい角度となる場合は、光束Dは、光入出射面61AからY方向と反対方向寄りに射出される。
【0052】
このような第1ミラー6に、光学像としての光束を入射させることにより、図5に示すように、Y方向の範囲がnである入射光束を、当該Y方向の範囲がmである光束とすることができる。すなわち、第1ミラー6に光束を入射させることにより、当該光束をY方向にm/n倍に拡大することができる。
【0053】
第2ミラー7は、第1ミラー6と同様の構成を備えており、第1ミラー6でY方向に拡大され、当該第2ミラー7に入射した光束を、X方向にm/n倍に拡大して射出する。
すなわち、第2ミラー7は、略直角三角形状の断面を有する三角柱形状のプリズム要素を備え、これらプリズム要素がX軸方向に沿って配置され、プリズム体が構成されている。これら各プリズム要素の光入出射面は、それぞれ面一とされ、また、光反射面は、互いに平行な鋸刃状とされている。
【0054】
また、第2ミラー7は、図3に示すように、第1ミラー6が、Y方向に傾斜して配置されたことと同様に、当該第2ミラー7に入射する光束の角度、および、第2ミラー7を構成するプリズム要素の屈折率および頂角に応じて、X方向に平行に配置されたスクリーン3に対して傾斜して配置されている。詳述すると、第2ミラー7は、第1ミラー6から射出された光束を拡大し、当該拡大した光束を、スクリーン3に対してZ方向に略平行に投射するように傾斜して配置されている。
【0055】
(4)第1実施形態の効果
以上のような本発明の第1実施形態に係るリアプロジェクタ1によれば、以下の効果を奏することができる。
すなわち、第1ミラー6および第2ミラー7に、画像投射装置4で形成された光学像としての光束を入射させることにより、当該光学像を第1ミラー6でY方向に拡大することができ、また、第1ミラー6でY方向に拡大した光学像を第2ミラー7に入射させることにより、当該光学像を第2ミラー7でX方向に拡大することができる。従って、X方向およびY方向に、それぞれ同じ倍率で拡大した光学像を、スクリーン3に表示することができる。
【0056】
また、プリズム体61を複数のプリズム要素611で構成し、光反射面61Bが、当該複数のプリズム要素611の光反射面で形成され、当該光反射面61Bの延出方向に沿って鋸刃状に形成されていることにより、第1ミラー6の薄型化を図ることができる。
ここで、画像投射装置4で形成された光学像を、スクリーン3の全面に亘って投射する場合には、スクリーン3のY方向の寸法より大きな寸法を有する第1ミラー6を設ける必要がある。このため、第1ミラー6が、1つのプリズム要素611で構成されている場合には、光入出射面61Aと光反射面61Bとが交差する端部とは反対側の端部の寸法は、スクリーン3のY方向の寸法に応じて大きくなる。
これに対し、プリズム体61を複数のプリズム要素611で構成し、それぞれのプリズム要素611の光反射面を平行として鋸刃状とすることにより、当該第1ミラー6による光学像のY方向の拡大を実現しつつ、光入出射面61Aと光反射面61Bとが交差する端部とは反対側の端部の寸法を小さくすることができる。従って、第1ミラー6の薄型化を図ることができる。
なお、第1ミラー6と略同じ構成とされる第2ミラー7についても同様に、当該第2ミラー7の薄型化を図ることができるという効果を奏することができる。
【0057】
また、第1ミラー6は、リアプロジェクタ1のX方向と反対方向の側面に対して傾斜して配置されているので、第1ミラー6の厚さ寸法は、リアプロジェクタ1のX方向の寸法に影響する。ここで、前述の構成により、第1ミラー6の薄型化を図ることができるので、リアプロジェクタ1のX方向の寸法、すなわち、幅方向の寸法を小さくすることができる。従って、リアプロジェクタ1の小型化を、一層促進することができる。
さらに、重量の大きい画像投射装置4が、リアプロジェクタ1の下方(Y方向の反対側)に配置されているので、リアプロジェクタ1の重心が下がり、リアプロジェクタ1を安定して設置することができる。
【0058】
画像投射装置4は、赤、緑、青のレーザ光を発振するレーザ発振器41(41R,41G,41B)を光源として備え、また、光変調装置としてGLV44を備えて構成されている。これによれば、確実に、平行光束からなる光学像を形成して、第1ミラー6および第2ミラー7に入射させることができる。
ここで、第1ミラー6および第2ミラー7を用いて、光学像の拡大を行う場合、それぞれ第1ミラー6および第2ミラー7に平行でない光束が入射した場合では、それぞれのミラー6,7において光が拡散してしまうため、必要な光学像の拡大を図れないばかりか、光学像が劣化する可能性がある。これに対して、レーザ発振器41およびGLV44を備えて構成される画像投射装置4によって平行光束からなる光学像を確実に形成することができるので、適切な光学像の形成および拡大を、安定的に行うことができる。
【0059】
また、第1ミラー6から射出される光束は、X軸方向に平行な光束となるように、第1ミラー6が、Y方向に対して傾斜して配置されているので、当該第1ミラー6から射出される光束が、Y方向またはY方向の反対方向にずれる場合に比べ、リアプロジェクタ1の高さ寸法が大きくならないようにすることができる。
すなわち、第1ミラー6から射出される光束の方向が、Y方向またはY方向の反対方向にずれる場合には、第2ミラーのX方向先端側に入射する光束は、第1ミラー6からX方向と平行に射出される場合に比べ、Y方向またはY方向と反対方向に大きくずれて入射することとなる。このような場合は、第1ミラー6からの射出光束のずれを考慮して第2ミラー7を配置することとなるので、リアプロジェクタ1の高さ寸法(Y方向の寸法)が影響されることとなる。
これに対し、第1ミラー6の光束射出方向をX方向と略平行となるようにしたので、第1ミラー6の配置位置と略同じY方向の位置に、第2ミラー7を配置することができるので、リアプロジェクタ1の高さ寸法を小さくすることができる。
【0060】
〔2.第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るリアプロジェクタについて説明する。
第2実施形態に係るリアプロジェクタは、前述した第1実施形態に係るリアプロジェクタと略同じ構成を備えるが、反射ミラーを設けない構成とした点、および、第1ミラーの構成について、第1実施形態のリアプロジェクタと相違する。
なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
図8および図9は、第2実施形態に係るリアプロジェクタ1Aの内部構成を示す正面図(Z方向と反対方向から見た図)および平面図(Y方向と反対方向から見た図)である。
リアプロジェクタ1Aは、リアプロジェクタ1と同様に、筐体2を備え、当該筐体2内に、図8および図9に示すように、スクリーン3、画像投射装置4、第1ミラー6および第2ミラー7が収納されている。また、筐体2内には、図示を省略するが、これらのほかに、制御基板および電源ユニット等が収納されている。
このリアプロジェクタ1Aでは、画像投射装置4から射出された光学像としての光束は、第1ミラー8に入射し、当該第1ミラー8に入射した光束は、第2ミラー7を介して、スクリーン3に投射される。この第1ミラー8および第2ミラー7における光束の反射過程で、当該光束は、Y方向およびX方向に拡大される。
【0062】
図10は、第1ミラー8の断面を拡大した図である。
第1ミラー8は、図8および図9に示すように、当該第1ミラー8の光入出射面81AがY方向に平行となるように、スクリーン3のX方向と反対方向の端部側に配置されている。
このような第1ミラー8は、図10に示すように、入射光束の光路とは屈折率の異なる媒質としてのプリズム体81と、当該プリズム体81を固定する基板82とから構成されている。
【0063】
プリズム体81は、前述のプリズム体61と同様に、断面略直角三角形状を有する柱状体として構成されるプリズム要素811が、Y方向に沿って複数並列配置されて構成されている。
詳述すると、各プリズム要素811は、当該プリズム要素811の光入出射面が面一となるように配置され、これら光入出射面により、第1ミラー8の光入出射面81Aが形成されている。また、各プリズム要素811の光反射面は、光入出射面81Aに対して傾斜しており、それぞれの光入出射面は平行となるように構成され、これらにより第1ミラー8の光反射面81Bが、鋸刃状に形成されている。
なお、これら各プリズム要素811は、前述の第1実施形態で示したプリズム要素611と同様に水晶により形成されているが、他の材料によって形成してもよい。
【0064】
このような第1ミラー8は、光入出射面81Aに入射した光束を、光反射面81Bで反射して、光入出射面81Aに対して直交する光束として射出するように、光反射面81Bの光入出射面81Aに対する傾斜角度、すなわち、各プリズム要素811の頂角が調整されている。具体的には、各プリズム要素811の頂角は、光反射面81Bで反射した光束が光入出射面81Aに垂直に入射するように、前述の式(VI)に基づいて、光入出射面81Aに入射し、当該光入出射面81Aで屈折してプリズム要素811内に入射する光束の屈折角の1/2の角度とされている。
【0065】
ここで、第1ミラー8に入射する光の軌跡を説明する。
第1ミラー8の光入出射面81Aに入射した光学像としての光束は、当該光入出射面81Aで屈折してプリズム体81を通過する。そして、プリズム体81内を通過する光束は、光反射面81Bに入射して、当該光反射面81Bへの入射角と同じ角度で、光入出射面81Aに向かって反射する。ここで、各プリズム要素811の頂角は、光入出射面81Aに屈折して入射する光束の屈折角の1/2とされているので、光反射面81Bで反射した光束は、光入出射面81Aに対して入射角が0°、すなわち、光入出射面81Aに直交する方向で、当該光入出射面81Aに入射する。このため、光反射面81Bで反射して光入出射面81Aに入射する光束は、当該光入出射面81Aを屈折せずに透過して、光入出射面81Aに直交する光束として射出される。このように、第1ミラー8に入射した光束は、Y方向に拡大され、当該第1ミラー8の光入出射面81Aに直交する光束、すなわち、X方向に平行な光束として、第2ミラー7に射出される。
【0066】
また、第2ミラー7は、リアプロジェクタ1の場合と同様に、当該第2ミラー7の光入出射面がX方向に対して傾斜し、スクリーン3に向かい合うように配置されている。
さらに、画像投射装置4は、スクリーン3の下方(Y方向の反対方向)に、Y方向に傾斜するように配置され、当該画像投射装置4で形成した光学像としての光束を、第1ミラー6の光入出射面61Aに対して傾斜するように射出する。
【0067】
ここで、画像投射装置4から射出され各プリズム要素811の光入出射面81Aに入射する光学像としての光束は、光入出射面81Aに対する入射角が大きいほど、光学像の拡大率が大きくなる。
例えば、対角が1インチの画像としての光束を第1ミラー8および第2ミラー7に、それぞれ約89.045°の入射角で入射させると、それぞれのミラー7,8によって、対角60インチの画像に拡大することができる。同様に、第1ミラー8および第2ミラー7に、それぞれ約88.854°または約88.567°の入射角で入射させると、光学像としての光束を、50倍または40倍に拡大することができる。これにより、レンズ等を用いることなく光学像の拡大を図ることができる。なお、光入出射面に対する光束の入射角が大きいほど、光学像の拡大率が大きくなることは、前述の第1ミラー6においても同様である。
【0068】
このような第2実施形態に係るリアプロジェクタ1Aによれば、前述の第1実施形態に係るリアプロジェクタ1と略同じ効果を奏することができるほか、以下の効果を奏することができる。
すなわち、第1ミラー8が、Y方向に対して平行に配置され、画像投射装置4がY方向に対して傾斜して配置され、当該画像投射装置4は、当該第1ミラー8の光入出射面81Aに、光学像としての光束を傾斜して射出する。これによれば、リアプロジェクタ1Aの幅方向(X方向)の寸法を、より小さくすることができる。
ここで、第1実施形態のリアプロジェクタ1では、第1ミラー6が、Y方向に対して傾斜して配置されていたので、リアプロジェクタ1のX方向の寸法が、Y方向と反対方向に向かうにしたがって、スクリーン3のX方向の寸法よりも大きくなる。
これに対し、第2実施形態のリアプロジェクタ1Aでは、第1ミラー8をY方向に平行に配置したことにより、リアプロジェクタ1AのX方向の寸法を、スクリーン3のX方向の寸法と同じ程度に抑えることができる。従って、リアプロジェクタ1Aの小型化を一層促進することができる。
【0069】
また、各プリズム要素811の頂角は、光入出射面81Aで屈折してプリズム要素811に入射する光束の屈折角の1/2とされているので、光反射面81Bで反射した光束を、光入出射面81Aに入射角0°で入射させることができ、これにより、光入出射面81Aで屈折させずに、当該光入出射面81Aから射出することができる。従って、画像投射装置4で形成した光学像を最も効率よく拡大することができる。
ここで、光反射面81Bで反射して光束が、光入出射面81Aに垂直に入射しない場合は、当該光束は、光入出射面81Aを透過する際に屈折してしまうので、このような第1ミラーおよび第2ミラーを介して、画像投射装置4から射出された光学像としての光束を拡大した場合には、当該光束の拡大率が低下してしまう。これに対し、光入出射面81Aに対して光束を垂直に入射させることにより、当該光入出射面81Aでの屈折が生じないため、光学像を最大限に拡大することができる。従って、効率よく光学像の拡大を行うことができる。
【0070】
〔3.実施形態の変形〕
本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0071】
前記各実施形態では、第1ミラー6,8を構成するプリズム体61,81、および、第2ミラー7を構成するプリズム体は、複数のプリズム要素611,811から構成され、当該プリズム要素611,811の光反射面はそれぞれ平行に配置され、全体として光反射面61B,81Bが、鋸刃状に形成されるとしたが、本発明はこれに限らない。
すなわち、第1ミラーおよび第2ミラーを、断面略直角三角形状を有する1つの柱状体で構成し、当該直角三角形状の斜辺となる面を光反射面とし、当該直角三角形状の直角を挟む一辺となる面を光入出射面とするように構成してもよい。
なお、第1ミラーおよび第2ミラーを、複数のプリズム要素を備えるプリズム体で構成し、光反射面が鋸刃状となるように構成すれば、第1ミラーおよび第2ミラーの薄型化を図ることができる。特に、第1ミラーがこのような構成であれば、リアプロジェクタの幅方向(X方向)の寸法を小さくでき、当該リアプロジェクタの小型化を図ることができる。
【0072】
前記各実施形態では、画像投射装置4は、光源として赤、緑、青の各レーザ光を発振するレーザ発振器41R,41G,41Bと、光変調装置としてのGLV44を備えて構成されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、画像投射装置は、平行光束からなる光学像を形成、射出する構成であれば、他の構成であってもよい。
例えば、光源として高圧水銀ランプ等の放射光源を備え、液晶パネルおよびマイクロミラーデバイス等の光変調装置を備えた画像投射装置であってもよい。このような場合、第1ミラーおよび第2ミラーによる光の拡散を防ぐために、光束を平行化する前述の特許文献1の図7および図8に示されるような光ファイバ等を介して、画像投射装置から光束を射出するように構成すればよい。
また、GLV44等の光変調装置を設けずに、画像情報に応じてレーザ光を射出するレーザ発振器と、それぞれ直交する方向に配置され、レーザ発振器から射出されたレーザ光でスクリーンの縦方向および横方向に走査させて画像を形成する2つのカルバノミラーとを備えた画像投射装置で構成してもよい。
【0073】
また、前記各実施形態では、GLV44は、画像投射装置4に1つ設けられ、当該GLV44をポリゴンミラー45の回転に応じて、赤色光用の画像、緑色光用の画像、および青色光用の画像を切り替えて投射画像を形成するとしたが、本発明は、各色ごとにGLV44を設ける構成としてもよい。
【0074】
前記各実施形態では、第1ミラー6,8をスクリーン3のX方向と反対方向の端部側に配置し、第2ミラー7をスクリーン3に対向するように傾斜して配置し、画像投射装置4をスクリーン3の下方に配置したが、本発明はこのような配置位置に限るものではない。すなわち、第1ミラー6,8、第2ミラー7および画像投射装置4の配置位置は、適宜決定してよい。例えば、第1ミラー6,8を、スクリーン3に対向する位置に配置し、第2ミラー7をスクリーン3に直交する面に沿って配置してもよい。また、画像投射装置4を、スクリーン3の上方に設ける構成であってもよい。
なお、第1ミラー6,8をスクリーン3のX方向の両端部のうちのいずれかの端部側、または、Y方向の両端部のうちのいずれかの端部側に配置すれば、第1ミラー6,8は、画像投射装置4からの光束を一方向に拡大するので、第1ミラー6,8のZ方向の寸法を小さくすることができ、ひいては、リアプロジェクタ1,1Aの薄型化を図ることができ、省資源化を図ることができる。
【0075】
前記各実施形態では、スクリーン3を観察する方向とは反対側から光学像の投射を行なうリアタイプのプロジェクタ1,1Aの例のみを挙げたが、本発明は、スクリーンを観察する方向から投写を行なうフロントタイプのプロジェクタにも適用可能である。この場合、第1ミラー6,8をプロジェクタの内部または近傍に配置し、第2ミラー7をスクリーン近傍に配置することにより、光学像の拡大を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、入力する画像情報に応じた光学像を形成し、当該光学像をスクリーン上に拡大投射するプロジェクタ、特にリアプロジェクタに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリアプロジェクタの概要斜視図。
【図2】前記実施形態のリアプロジェクタの内部構成を示す正面図。
【図3】前記実施形態のリアプロジェクタの内部構成を示す平面図。
【図4】前記実施形態の画像投射装置の構成を示す模式図。
【図5】前記実施形態の第1ミラーの断面の拡大図。
【図6】前記実施形態のプリズム要素に入射する光の軌跡を示す図。
【図7】前記実施形態のプリズム要素内の光束の光路の角度を説明する図。
【図8】本発明の第2実施形態に係るリアプロジェクタの内部構成を示す正面図。
【図9】前記実施形態におけるリアプロジェクタの内部構成を示す平面図。
【図10】前記実施形態における第1ミラーの断面の拡大図。
【符号の説明】
【0078】
1,1A…リアプロジェクタ(プロジェクタ)、3…スクリーン、4…画像投射装置、6,8…第1ミラー(第1導光体)、7…第2ミラー(第2導光体)、41(41R,41G,41B)…レーザ発振器(光源)、44…GLV(光変調装置)、61,81…プリズム体(媒質)、61A,81A…光入出射面、61B,81B…光反射面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力する画像情報に応じて光学像を形成し、拡大投射するプロジェクタであって、
平行光束からなる前記光学像を形成して、投射画像として投射する画像投射装置と、
前記画像投射装置から投射された投射画像の一方向を拡大して射出する第1導光体と、
前記第1導光体から射出された光束の前記一方向に直交する方向を拡大して射出する第2導光体と、
この第2導光体から射出された光束を投影するスクリーンとを備え、
前記第1導光体および前記第2導光体は、前記投射画像が進行する光路とは屈折率の異なる媒質により構成され、
入射光束に対して傾斜配置される光入出射面と、
前記光入出射面と非平行に配置され、前記媒質内を進行する光束を反射して、当該光束を前記光入出射面に導く光反射面とを備えていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記光反射面は、当該光反射面の延出方向に沿って鋸刃状に配列され、それぞれが互いに平行な複数の反射要素を備えていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記第1導光体および前記第2導光体の少なくともいずれかの前記光反射面の前記光入出射面に対する傾斜角度は、当該光反射面に入射した光束を、前記光入出射面に直交する方向に反射するような角度とされていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記画像投射装置は、平行光束を射出する光源と、当該平行光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置とを備えていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記第1導光体は、前記スクリーンに対して略直交する位置に配置され、
前記第2導光体は、前記スクリーンに対向する位置に配置され、
前記画像投射装置は、前記スクリーンの下方に配置され、前記第1導光体に前記光学像としての光束を射出することを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−119533(P2006−119533A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309767(P2004−309767)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】