説明

プロジェクタ

【課題】DMDのオフ光による迷光の発生を抑えるとともに、同オフ光などによって発生する迷光の投射レンズへの入射を防止することが可能なプロジェクタを提供する。
【解決手段】DMD30gのオフ光が投射レンズ30aに入射しないように遮光する遮光板34の第一の面34aから第二の面34bにかけて形成されるDカット37と、第一の面34aおよび第二の面34bよりも投射レンズ30a寄りに配置され、迷光が投射レンズ30aの入射口に入射しないように遮光する遮光板34の第三の面に形成されるDカット38とを備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタに関し、特にDMD(Digital Mirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing)方式のプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタとしては、複数のマイクロミラーを備えるとともに、各マイクロミラーが映像データに基づいて時分割駆動されることにより、同映像データに応じた映像をスクリーンに投影させることが可能なDMD(Digital Mirror Device)を備えた所謂DLP方式のプロジェクタが知られている。
【0003】
このようなDMDを使用したプロジェクタでは、DMDがオフの時に光を投射レンズ以外の方向に反射するオフ光や、光源から投射レンズまで正規のルートを通って到達した光以外の光が投射レンズに入射する迷光などが存在する。これらオフ光や迷光が投射レンズに入射されると映像のコントラストを低下させてしまう。
【0004】
映像のコントラストを低下させることなくオフ光や迷光を遮光する技術として、特許文献1に、光軸方向に沿って複数の絞り体を備え、前記投射光学系を通過する光の量を調整する絞り装置を具備し、光軸方向前側に位置する一の絞り体を通過する投射光を、この絞り体よりも光軸方向後側に位置する他の絞り体が遮光しないように配設されている投射レンズ装置およびプロジェクタ装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ライトバルブの有効表示領域の外側に入射する不要照明光の反射光がスクリーン側に出射しないように、開口を有する光吸収素子をライトバルブの前面に配置した投写型表示装置について開示されている。そして、特許文献3には、DMDを光熱から保護するために同DMDと投影レンズの間に配されるDMDカバーが、DMDのオフ光によって加熱されて破壊されるのを防ぐために、同オフ光の照射される位置に切欠部を設けた画像表示プロジェクタについて開示されている。さらに、特許文献4には、反射型ライトバルブへの照明光路中に絞りの遮光部の形状を光軸に対して非回転対称とした投写型表示装置について開示されている。
【特許文献1】特開2006−11313号
【特許文献2】特開2004−126264号
【特許文献3】実用新案登録第3092509号
【特許文献4】再公表特許WO2002/088841
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1記載の技術は、2枚の絞り体がDMDからのオフ光の反射方向に配置されているが、この配置はオフ光が反射される側に多く通過する迷光を2枚の絞り体にて確実に遮光するためであり、2枚の絞り板は両者とも迷光を遮光するために用いるとの思想であった。また、特許文献2〜4は、DMDのオフ光や、同オフ光などにより発生する迷光に対応するものではなかった。
【0007】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、DMDのオフ光をによる迷光の発生を抑えるとともに、同オフ光などによって発生する迷光の投射レンズへの入射を防止することが可能なプロジェクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるプロジェクタでは、光を生成する光源と、略円形の入射口を有して入射される光を投射する投射レンズと、入射される光を上記投射レンズに向けて反射するオンの状態と、入射される光を上記投射レンズ以外の方向に反射するオフの状態と、を切り替えられる複数のマイクロミラーからなるミラー面を有し、映像データに基づいて各マイクロミラーが時分割駆動されるDMDと、上記光源からの光を上記DMDのミラー面に集光させる光学エンジンと、を備え、入力される映像信号に基づいて映像を生成し、同映像をスクリーン等に投影表示するプロジェクタにおいて、上記入射口の略円形に対する弦と対応する端と、同端から略円形に対する劣弧側に延出される面を有するように形成され、迷光が上記投射レンズに入射しないように遮光する表面黒色の第一の遮光板と、上記第一の遮光板よりも上記DMD寄りに配置され、上記光源から上記DMDに入射される光を遮光して整形可能な開口を有するとともに、上記投射レンズから見て上記第一の遮光板の端と略同一直線上となる端と、同端から上記第一の遮光板の延出される面と同一方向に延出される面が形成され、上記DMDのオフ光が上記投射レンズに入射しないように遮光しつつ上記DMDのオン光を通過させる表面黒色の第二の遮光板と、を備える構成としてある。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明にかかるプロジェクタでは、光を生成する光源と、略円形の入射口を有して入射される光を投射する投射レンズと、複数のマイクロミラーからなるミラー面を有し、映像信号に基づいて各マイクロミラーが時分割駆動されるDMDと、上記光源からの光を上記DMDのミラー面に集光させる光学エンジンと、を備え、入力される映像信号に基づいて映像を生成し、同映像をスクリーン等に投影表示するプロジェクタにおいて、迷光が上記投射レンズに入射しないように遮光する第一の遮光板と、上記第一の遮光板よりも上記DMD寄りに配置され、上記DMDのオフ光が上記投射レンズに入射しないように遮光する第二の遮光板と、を備える構成としてある。
すなわち、上記DMDのオフ光は上記第二の遮光板により遮光され、上記投射レンズに直接入射することはない。また、DMDのミラー面以外の表面で反射・散乱された迷光や、上記第一の遮蔽板により遮蔽された光が同第一の遮蔽板の表面で反射・散乱されることにより発生する迷光は、上記第一の遮光板により遮蔽される。従って、オフ光と迷光とを効率的に遮光することができ、より多くのオフ光と迷光とを遮ることができ、投射レンズに到達する迷光を減少させ、正規のルートを通って投射レンズから投射される映像のコントラストを向上させることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、第二の遮光板によりDMDのオフ光が遮光されるため投射レンズに直接入射せず、第一の遮光板により迷光が遮蔽し、オフ光と迷光とを効率的に遮光することができるため投射レンズに到達する迷光を減少させることができ、正規のルートを通って投射レンズから投射される映像のコントラストを向上させることが可能なプロジェクタを提供することができる。
【0011】
また請求項3にかかる発明によれば、第二の遮光板で遮蔽した光が反射・散乱されにくくなり、同第二の遮光板表面にて発生する迷光を低減することが出来る。従って、DMDのオフ光に起因する迷光の発生自体を抑えることが出来る。
そして請求項4にかかる発明によれば、DMDのオフ光の出射方向と、同オフ光が第二の遮光板にて遮光されて発生する迷光の存在する方向とは、一般に一致するため、第二の遮光板の延出される面と第一の遮光板の延出される面とを一致させることにより、第一の遮光板による迷光の遮光率が高まる。
また、第二の遮光板に形成される端と第一の遮光板に形成される端とを投射レンズから見て同一直線状としたことにより、第一の遮光板によってDMDのオン光が遮蔽されることがない。従って第一の遮光板による迷光の遮光効率が高まるとともに、オン光の遮光を最小限に止めることができ、映像のコントラストを向上させることが出来る。
さらに請求項1のような、より具体的な構成において、上述した請求項2〜請求項4の各発明と同様の作用効果を奏することはいうまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)プロジェクタの構成:
(2)遮光板の構造:
(3)まとめ:
【0013】
(1)プロジェクタの構成:
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかるプロジェクタ10を斜めから見て示した外観斜視図である。プロジェクタ10は、パソコンやビデオカメラ等から入力される映像データを基に映像を生成し、その映像をスクリーン等に投影表示する装置である。プロジェクタ10は、筐体12の前面に映像を投影するための投射レンズ30aと、筐体12内部に備えられる光学エンジン30や光源装置32の冷却に使用された空気を筐体12内部から外部に排出するための吹き出し口12aとを有している。
【0014】
図2は、図1に示したプロジェクタ10の筐体12内部を模式的に示す上面図である。同図において、筐体12内部の前方の一方の端には(図2においては右上側)、白色光を生成可能な光源装置32が設けられている。光源装置32で生成された白色光は、他方の端(図2においては左上側)に設置された光学エンジン30に向かって照射される。光学エンジン30は、画像生成素子としてのDMD(Digital Mirror Device)30gや、投射レンズ30a等を具備し、光源装置32により生成された光から画像光を生成するとともに、同画像光のスクリーンへの投影を行う。また、後方には、映像データの入力やデータ信号の入出力を行うための入出力端子を備える入出力基板18や、外部より商用電源を供給されて各種電源電圧を生成して供給可能な電源基板20が備えられ、中央部には入力された映像信号に基づいてDMDやカラーホイルを制御する映像信号処理基板16が立てて配置されている。
【0015】
次に、光学エンジン30および光源装置32について図3〜5を参照して詳細に説明する。図3は光学エンジン30と光源装置32とを上方より見て示した上面図、図4は光学エンジン30と光源装置32とを前方より見て示した正面図、図5は光学エンジン30と光源装置32とを右方より見て示した右側面図である。
【0016】
光学エンジン30は、概略、円盤状のカラーフィルタを具備するカラーホイル30bと、4枚の板ガラスを張り合わせて筒状に構成したライトトンネル30cと、2枚のレンズを組み合わせたダブレットレンズ30dと、光を反射するミラー30eと、光を集める凸面のレンズのリレーレンズ30fと、DMDと投射レンズとの間であってDMDに隣接した位置に配設される遮光板34と、複数のマイクロミラーを具備するDMD30gと、光を外部のスクリーンなどに投影させる投射レンズ30aとから構成される。また、光源装置32は、概略、ショートアークランプなどの点光源と同点光源の光を所定の方向に反射・集光させるランプ32aと、ランプ32aから出射される光から赤外線と紫外線とを除去するカバーガラス32bとから構成されている。光源装置32は光源に相当する。
【0017】
ランプ32aは、白色光を生成する点光源と同点光源から後方に出射した光を反射させる放物面形状のリフレクタとを備えており、点光源で生成された光をカラーホイル30bを介してライトトンネル30cの入り口に向けて出射させる。点光源としては、例えば、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ等を用いることが可能である。また、リフレクタとしては、例えば、放物面鏡や、楕円面鏡等を用いることが可能である。
【0018】
カラーホイル30bは、光透過可能なRGBの3色のカラーフィルタが等間隔に配置された略円盤形状であり、光源装置32からライトトンネル30cまでの光路に円盤の面が位置している。このカラーホイル30bが回転することにより、光源装置32から出射した白色光が、単位時間毎にRGBの各色が繰り返す光に変換される。むろんカラーホイル30bは、コントラスト改善と白の明るさ向上のために、RGBの他に白(透明)を加えた4セグメントカラーフィルタを使用してもよいし、RGBにイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)を加えて6色としたものでもよい。
【0019】
ライトトンネル30cは、断面視略矩形状の柱状体であり、カラーホイル30bにより分離された光を後段のミラー30eへ案内する。ダブレットレンズ30dは、ライトトンネル30cからの光をミラー30eに集光させるためのものであり、ライトトンネル30cからの光に対して可視光の波長による焦点のずれ(軸上色収差)を補正しつつ集光する。ミラー30eは、ダブレットレンズ30dより出射された光を反射する。また、リレーレンズ30fはミラー30eより反射された光をDMD25に集光させる。
【0020】
DMD30gは、RGBの各光を画像データに応じて画素毎に変調する変調素子としての複数のマイクロミラーにて構成されるミラー面を備えており、各マイクロミラーは、映像信号処理基板16などの外部から入力される映像信号に基づいて個別に制御される。そして、反射面の角度を所定角度(例えば、+12度と−12度)傾斜させることにより光源装置32からミラー30e等を介して入射される光を投射レンズ30aに向けて反射するオンと、光を投射レンズ30a以外の方向に反射するオフの状態とに切り替えられる。具体的には、図3〜図4では、DMD30gのミラー面上を右上方向から左下方向に延びる軸を中心に、ミラー面が右前下方向に傾けられるとオン、ミラー面が左後上方向に傾けられるとオフとなる。以下、オンのマイクロミラーにて反射される光をオン光、オフのマイクロミラーにて反射される光をオフ光とする。
【0021】
これによりDMD30gはRGB信号に基づいてミラー30eを時分割駆動し、反射された光の輝度を変化させる。すなわちDMD30gは所定の映像を形成するように投射光を加工しつつ、投射レンズ30aに向けて反射する。従って、オンの時にはリレーレンズ30fから入射する光を後述する遮光板34の開口35を通して投射レンズ30aの入射口に向かって反射し、オフの時にはリレーレンズ30fから入射する光を投射レンズ30aの入射口から外れた方向へ反射するため直接投射レンズ30aに入射されることはない。
【0022】
投射レンズ30aは、略円形の入射口を有しており、RGBの各色光の色収差等に起因する投影画像の不鮮明を防止する目的で、複数の集光素子を光軸方向に沿って配置した組レンズとして構成されている。そして、DMD30gによって変調された画像光(オン光)が入射口に入射され、同入射された光を出射口から投射してスクリーンに拡大投影する。
【0023】
(2)遮光板の構造:
遮光板の構造と、同遮光板にて遮蔽・整形される光の光路について図6、図7、図8および図9を参照して説明する。図6は遮光板34を斜めから見て示した斜視図、図7は遮光板34を投射レンズ30aの側から見て示した平面図、図8は遮光板34をDMD30gの側から見て示した平面図、図9は図7または図8のA−A’から前後方向に切断した断面を示した断面図である。
【0024】
なお以下の説明は、明記しているときを除き、光源装置32、カラーホイル30b、ダブレットレンズ30d、ミラー30e、リレーレンズ30f、DMD30gの順に通過して投射レンズ30aより出射されるオン光であり、いわゆる正規のルートを通る光についてのものである。つまり、明記しているときを除き、DMD30gにて投射レンズ30aの入射口とは異なる方向へ反射されるオフ光や、各部材の表面で意図せずして反射されたり散乱されたりした不要光(迷光)についてのものではない。
【0025】
遮光板34は、アルミニウム製の板材をアルマイト加工して、陽極酸化処理により表面黒色にした後に、ブラスト加工して表面にざらつきを与えたものであり、概略、リレーレンズ30fからDMD30gへと出射する光の光軸と略垂直な面として形成される第一の面34aと、投射レンズ30aの光軸と略垂直かつ第一の面34aから連続した面として形成される第二の面34bと、第二の面34bから投射レンズ30a寄りにオフセットした位置に同第二の面34bと略平行な面として形成される第三の面34cと、光学エンジン30の光路から外れた位置で第二の面34bと第三の面34cとを接続するとともに遮光板34を筐体12に対してネジ止めなどにより固定するための取付面34dとから構成される。この第一の面34aおよび第二の面34bが上記第二の遮光板に相当し、第三の面34cが上記第一の遮光板に相当する。
【0026】
また、遮光板34には、第一の面34aから第二の面34bにかけて光を遮光して整形可能な開口35が形成される。この開口35は、概略、リレーレンズ30fから出射される光をDMD30gの面に適合するように整形する略矩形の第一の領域35aと、DMD30gのマイクロミラーがオンのときに反射される光を投射レンズ30aに到達させるために設けられた第二の領域35bと、DMD30gのマイクロミラーがオフのときに反射されるオフ光をカットするために同光の反射される方向に合わせてDカット37が形成された第三の領域35cとから構成される。
【0027】
リレーレンズから遮光板34に到達した光は、開口35の第一の領域35aによって下側面の光と左右両側面の光のそれぞれの側面が直線状にカットされ、DMD30gのミラー面に照射される光の下側と左右両側とがミラー面の内部に納まる。すなわち、遮光板34は、DMD30gのミラー面に投射される光の上端と左右両端とが略矩形のミラー面の形状と略一致するようにリレーレンズ30fから出射される光を遮蔽して、DMD30gのミラー面に投射する光が略矩形の同ミラー面の形状と略一致するようにすることにより、DMD30gに到達する光を整形する。ここで、ミラー面の内部に納まるとは、ミラー面の端部に位置するマイクロミラーには光が照射されずともよいことを意味し、ミラー面の存在しない部位に光が当たらないようにさえすればよく、ミラー面の端部に位置するマイクロミラーにより形成される映像がカットされた映像光となることを含む。このようにすると、光源装置32からDMD30gへ正規のルートを通って照射される光がミラー面の下と左右の外側端より内側にのみ到達する。
【0028】
また、DMD30gのマイクロミラーがオンのときに反射された光は、第二の領域35bの上端によって上側の光がカットされ、上記第一の領域35aにより下側の光と左右両側の光とがカットされたことと合わせて、上下左右がカットされて断面略矩形の光に整形される。
【0029】
さらに、遮光板34の第三の面34cには、図7のように投射レンズ30aの入射面の左上部分を右上から左下にかけて横切るDカット38が形成される。このDカットは、投射レンズ30aの入射口の略円形に対する弦と対応する端と、上記同端から略円形に対する劣弧側に延出される面を有するように形成される。DMD30gのいずれかのマイクロミラーがオフのとき同マイクロミラーにより反射されたオフ光は、光学エンジン30の内側面などの他の部材表面に当たって、不要光(迷光)となることがある。また、DMD30gのミラー面30g1の形成されていない領域に照射された光が反射して不要光(迷光)となることもある。Dカット38は、これら不要光が投射レンズ30aに入射するのを防ぐために、同不要光をカットする位置にDカット38が形成される。
【0030】
これらDカット37とDカット38は、図7および図8に示すように、投射レンズ30aから後方を見ると同一の直線状に形成されるため、投射レンズ30aから見てDカット37はDカット38と重なって見えない位置となる。また、遮光板34の後方より投射レンズ30aの入射口を見ても、Dカット37とDカット38とは同一の直線状に形成されるため、Dカット38はDカット27と重なるため見えない位置となる。すなわち、投射レンズ30aから見て上記第一の遮光板の端と略同一直線上となる端と、同端から上記第一の遮光板の延出される面と同一方向に延出される面が形成される。
【0031】
すなわち、DMD30gのいずれかのマイクロミラーがオフのとき同マイクロミラーにより反射されたオフ光は、遮光板34が黒色であるためDカット37によりカット・吸収され、ほとんど反射・散乱されず、従って不要光を発生しない。また、反射・散乱が生じても、光学エンジン30の後背方向に反射・散乱されるため、投射レンズ30aの入射口に到達する不要光はごく僅かとなる。従って、DMD30gのいずれかのマイクロミラーがオフのとき同マイクロミラーにより反射されたオフ光が、光学エンジン30の内側面などの他の部材表面に当たることそのものを回避することができ、Dカット38の遮光効果と合わせて投射レンズ30aに不要光が入射されることを防止することができる。さらに、Dカット37とDカット38とが投射レンズ30aから後方を見て、同一直線状に形成されるため、正規のルートを通って投射レンズ30aの入射口に到達するオン光を妨げることはない。
【0032】
つまり、光源装置32にて生成された白色光は、カラーホイル30bにより単位時間毎にRGBの各色が繰り返す光としてライトトンネル30cに入射され、ダブレットレンズ30dへと導かれる。そして、ダブレットレンズ30dは、軸上色収差を補正しつつミラー30eに導き、ミラー30eにて反射された光はリレーレンズ30fによりDMD30gに向けて集光される。
【0033】
リレーレンズ30fより出射された光は、遮光板34により、下側面の光が直線状にカットされることによりDMD30gに照射される光の下端がDMD30gのミラー面の下側端よりも内側になるように整形され、左右側面の光が直線状にカットされることによりDMD30gに照射される光の右端がDMD30gのミラー面の右側端よりも内側になるとともにDMD30gに照射される光の左端がDMD30gのミラー面の左側端よりも内側になるように整形される。つまり、光源装置32からDMD30gへと照射される光はミラー面の外側端より内側にのみ到達する。
【0034】
そして、DMD30gのマイクロミラーのうちオンのものに反射されたオン光は、遮光板34により、上側面の光が直線状にカットされることにより、断面略矩形となり、投射レンズ30aに入射され、投射レンズにてスクリーンなどに投影される。このとき、Dカット37およびDカット38は投射レンズ30aから後方を見て同一直線状に形成されておりDMD30gのミラー面30g1から正規のルートを通って投射レンズ30aに到達するオン光を妨げることはない。
【0035】
一方、DMD30gのマイクロミラーのうちオフのものに反射されたオン光は、遮光板34のDカット37により遮られ、遮光板34が黒色であるため遮光板34の表面にて吸収されて反射・散乱はほとんど生じない。また、僅かに反射・散乱が生じたとしても、第三の面34cに形成されるDカット38によって投射レンズ30aによってカットされる。
【0036】
(3)まとめ:
つまり、DMD30gのオフ光が投射レンズ30aに入射しないように遮光する遮光板34の第一の面34aから第二の面34bにかけて形成されるDカット37と、第一の面34aおよび第二の面34bよりも投射レンズ30a寄りに配置され、迷光が投射レンズ30aの入射口に入射しないように遮光する遮光板34の第三の面に形成されるDカット38とを備えさせる。
【0037】
以上説明したように、本実施例に対応するプロジェクタでは、光を生成する光源と、略円形の入射口を有して入射される光を投射する投射レンズと、複数のマイクロミラーからなるミラー面を有し、映像信号に基づいて各マイクロミラーが時分割駆動されるDMDと、上記光源からの光を上記DMDのミラー面に集光させる光学エンジンと、を備え、入力される映像信号に基づいて映像を生成し、同映像をスクリーン等に投影表示するプロジェクタにおいて、迷光が上記投射レンズに入射しないように遮光する第一の遮光板と、上記第一の遮光板よりも上記DMD寄りに配置され、上記DMDのオフ光が上記投射レンズに入射しないように遮光する第二の遮光板と、を備える構成としてある。
すなわち、上記DMDのオフ光は上記第二の遮光板により遮光され、上記投射レンズに直接入射することはない。また、DMDのミラー面以外の表面で反射・散乱された迷光や、上記第一の遮蔽板により遮蔽された光が同第一の遮蔽板の表面で反射・散乱されることにより発生する迷光は、上記第一の遮光板により遮蔽される。従って、オフ光と迷光とを効率的に遮光することができ、より多くのオフ光と迷光とを遮ることができ、投射レンズに到達する迷光を減少させ、正規のルートを通って投射レンズから投射される映像のコントラストを向上させることが出来る。
【0038】
また、上記第二の遮光板は、表面黒色としてもよい。表面黒色とすることにより、第二の遮光板で遮蔽した光が反射・散乱されにくくなり、同第二の遮光板表面にて発生する迷光を低減することが出来る。従って、DMDのオフ光に起因する迷光の発生自体を抑えることが出来る。
【0039】
さらに、上記第一の遮光板は、上記入射口の略円形に対する弦と対応する端と、同端から略円形に対する劣弧側に延出される面を有するように形成され、上記第二の遮光板は、上記投射レンズから見て上記第一の遮光板の端と略同一直線上となる端と、同端から上記第一の遮光板の延出される面と同一方向に延出される面が形成されても構わない。
すなわち、上記DMDのオフ光の出射方向と、同オフ光が上記第二の遮光板にて遮光されて発生する迷光の存在する方向とは、一般に一致するため、上記第二の遮光板の延出される面と上記第一の遮光板の延出される面とを一致させることにより、上記第一の遮光板による迷光の遮光率が高まる。また、上記第二の遮光板に形成される端と上記第一の遮光板に形成される端とを上記投射レンズから見て同一直線状としたことにより、上記第一の遮光板によって上記DMDのオン光が遮蔽されることがない。従って第一の遮光板による迷光の遮光効率が高まるとともに、オン光の遮光を最小限に止めることができ、映像のコントラストを向上させることが出来る。
【0040】
以上の構成を踏まえた上で、本実施例にかかるプロジェクタでは、光を生成する光源と、略円形の入射口を有して入射される光を投射する投射レンズと、入射される光を上記投射レンズに向けて反射するオンの状態と、入射される光を上記投射レンズ以外の方向に反射するオフの状態と、を切り替えられる複数のマイクロミラーからなるミラー面を有し、映像データに基づいて各マイクロミラーが時分割駆動されるDMDと、上記光源からの光を上記DMDのミラー面に集光させる光学エンジンと、を備え、入力される映像信号に基づいて映像を生成し、同映像をスクリーン等に投影表示するプロジェクタにおいて、上記入射口の略円形に対する弦と対応する端と、同端から略円形に対する劣弧側に延出される面を有するように形成され、迷光が上記投射レンズに入射しないように遮光する表面黒色の第一の遮光板と、上記第一の遮光板よりも上記DMD寄りに配置され、上記光源から上記DMDに入射される光を遮光して整形可能な開口を有するとともに、上記投射レンズから見て上記第一の遮光板の端と略同一直線上となる端と、同端から上記第一の遮光板の延出される面と同一方向に延出される面が形成され、上記DMDのオフ光が上記投射レンズに入射しないように遮光しつつ上記DMDのオン光を通過させる表面黒色の第二の遮光板と、を備える構成としてある。
【0041】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態にかかるプロジェクタの外観斜視図である。
【図2】プロジェクタの筐体内部を模式的に示す上面図である。
【図3】光学エンジンと光源装置とを上方より見て示した上面図である。
【図4】光学エンジンと光源装置とを前方より見て示した正面図である。
【図5】光学エンジンと光源装置とを右方より見て示した右側面図である。
【図6】遮光板の斜視図である。
【図7】遮光板を投射レンズの側から見て示した平面図である。
【図8】遮光板をDMDの側から見て示した平面図である。
【図9】図7または図8のA−A’から前後方向に切断した断面を示した断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10…プロジェクタ
12…筐体
16…映像信号処理基板
18…入出力基板
20…電源基板
30…光学エンジン
30a…投射レンズ
30b…カラーホイル
30c…ライトトンネル
30d…ダブレットレンズ
30e…ミラー
30f…リレーレンズ
30g…DMD
30g1…ミラー面
32…光源装置
32a…ランプ
32b…カバーガラス
34…遮光板
34a…第一の面
34b…第二の面
34c…第三の面
34d…取付面
35…開口
35a…第一の領域
35b…第二の領域
35c…第三の領域
37…Dカット
38…Dカット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を生成する光源と、
略円形の入射口を有して入射される光を投射する投射レンズと、
入射される光を上記投射レンズに向けて反射するオンの状態と、入射される光を上記投射レンズ以外の方向に反射するオフの状態と、を切り替えられる複数のマイクロミラーからなるミラー面を有し、映像データに基づいて各マイクロミラーが時分割駆動されるDMDと、
上記光源からの光を上記DMDのミラー面に集光させる光学エンジンと、
を備え、入力される映像信号に基づいて映像を生成し、同映像をスクリーン等に投影表示するプロジェクタにおいて、
上記入射口の略円形に対する弦と対応する端と、同端から略円形に対する劣弧側に延出される面を有するように形成され、迷光が上記投射レンズに入射しないように遮光する表面黒色の第一の遮光板と、
上記第一の遮光板よりも上記DMD寄りに配置され、上記光源から上記DMDに入射される光を遮光して整形可能な開口を有するとともに、上記投射レンズから見て上記第一の遮光板の端と略同一直線上となる端と、同端から上記第一の遮光板の延出される面と同一方向に延出される面が形成され、上記DMDのオフ光が上記投射レンズに入射しないように遮光しつつ上記DMDのオン光を通過させる表面黒色の第二の遮光板と、
を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
光を生成する光源と、
略円形の入射口を有して入射される光を投射する投射レンズと、
複数のマイクロミラーからなるミラー面を有し、映像信号に基づいて各マイクロミラーが時分割駆動されるDMDと、
上記光源からの光を上記DMDのミラー面に集光させる光学エンジンと、
を備え、入力される映像信号に基づいて映像を生成し、同映像をスクリーン等に投影表示するプロジェクタにおいて、
迷光が上記投射レンズに入射しないように遮光する第一の遮光板と、
上記第一の遮光板よりも上記DMD寄りに配置され、上記DMDのオフ光が上記投射レンズに入射しないように遮光する第二の遮光板と、
を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
上記第二の遮光板は、表面黒色であることを特徴とする上記請求項2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
上記第一の遮光板は、上記入射口の略円形に対する弦と対応する端と、同端から略円形に対する劣弧側に延出される面を有するように形成され、
上記第二の遮光板は、上記投射レンズから見て上記第一の遮光板の端と略同一直線上となる端と、同端から上記第一の遮光板の延出される面と同一方向に延出される面が形成される
ことを特徴とする上記請求項2または上記請求項3に記載のプロジェクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−322535(P2007−322535A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150302(P2006−150302)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】