説明

プロテーゼ感染の決定のための方法

【課題】血液試料またはその他の生物学的流体試料から、病原性ブドウ球菌株により産生される多糖と反応する抗体を検出しプロテーゼ感染の決定を行う方法を提供する。
【解決手段】プロテーゼ感染の実験的決定のための方法が記載される。患者から単離された生物学的液体に対して実施される、この方法は、プロテーゼ装置にコロニーを形成する細菌により産生される多糖に特異的な抗体の検出に基づいている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つのスタフィロコッカス(Staphylococcus)株が関与しているプロテーゼ感染の決定のための方法に関する。その方法は、血液試料又はその他の生物学的液体試料からの、病原性ブドウ球菌株(Staphylococcal)により産生される粘液(slime)多糖と反応する抗体の検出に基づいている。
【0002】
本発明は、病原性ブドウ球菌株の培養物から出発して、前記方法において用いるための多糖を調製するための方法を提供し、さらに、引用された方法により得られる多糖自体も提供する。
【0003】
プロテーゼ感染は、一般的な外科、心臓血管外科、整形外科、眼科、及び歯科、生体材料(biomaterials)の導入が日常的に行われている全ての分野において重大な問題となっている。プロテーゼ装置は、人工栄養及び化学療法のため腫瘍学においても広く用いられている。
【0004】
プロテーゼ感染の最も重要な面は、以下の通りである。
−生体材料の最初の導入後の罹患率は、症例の2から6%であると一般的に報告されている。
−感染の結果として生体材料が新しいものと交換された場合、再感染の罹患率は約60%である。
−感染は、症例の25から45%において、臓器もしくはそれらの一部の機能的損失、又は患者の死亡すらも引き起こす可能性があるが、心臓外科のようないくつかの特定の症例においては死亡率はそれよりもはるかに高く、例えば歯科のようないくつかの医学領域においては死亡率は通常プロテーゼ感染と関連していない。
−患者の入院は非常に長く高価であることが多い。
−特異的な臨床的徴候がほぼ全く存在しないため、これらの感染の診断は困難である。
−これらの感染の最大部分(85%超)は、コアグラーゼ(coagulase)陰性ブドウ球菌により(そして、それよりも少ない程度で、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌により)引き起こされるが、腸内細菌、シュードモナス属の種、及び腸球菌のようなその他の微生物も(しばしば少なくとも一つのブドウ球菌株と関連して)様々な症例において単離されうる。
【0005】
これらの感染を引き起こす間、細菌は生体材料の表面に強力に接着し、生体材料の表面をほぼ完全に覆い、時間の経過と共に、その組織の統合性を偏らせる可能性があるバイオフィルム(biofilm)へと進展するコロニーを形成する。
【0006】
吸着後、細菌は、重要な代謝的改変を受け、その複製速度を減少させるが、高い生合成活性は維持している。この活性の主生成物は、化学物質、放射線、貪食細胞、及び抗体から細菌細胞を防御する厚い高密度線維質層を形成する細胞外多糖である(一般的に粘液と表示される)。
【0007】
生体材料上で増殖する粘液に埋め込まれた細菌は、抗生物質に曝されたとき、細菌が生体材料の非存在下で増殖した場合に得られる対応する値よりも数百倍も高い可能性がある、最少阻止濃度及び最少殺菌濃度を示す。
【0008】
バイオフィルムが一定の臨界量に達すると、それは、生体材料の新たな表面に移動してコロニーを形成する可能性がある、小さな細菌細胞塊を、周囲の液体環境に放出する。
【0009】
プロテーゼ感染は、軽症のウイルス性エピソードと混同されることが最も多く、通常の抗生物質治療後に消失した後、ある時間の後に再び出現する、稀少かつ非特異的な臨床的徴候により特徴付けられることが多い。これらのエピソードは、一般的に、血中を循環している間は宿主の免疫防御により容易に認識されて発熱を引き起こし、プランクトン様の形態で通常の抗生物質により容易に殺傷されるため、感染の根絶に類似している、バイオフィルムからの小さな細菌塊の放出による。臨床的徴候は、感染の進行期に、移植片周囲の柔組織の大きな腫脹もしくはフィステルの形成、又は一般的なコンプロミッション(compromission)の明白な徴候により明白となる。
【0010】
この独特の特徴のため、固着細菌がin vitroの培養条件に迅速に適合することができないという事実により、培養微生物学的分析の後の偽陰性の高い発生率の結果としてすら、初期の診断は極めて困難である。
【0011】
現在までのところ、血管移植片感染の診断は、客観的な臨床的パラメータ、血液パラメータ、並びに超音波検査、コンピュータ連動断層撮影、磁気共鳴、食道胃十二指腸検査、及び放射性標識白血球の注入後のシンチグラフィにより得られる機器データの分析に基づいている。このように、不十分な感度、又はデータ及び画像の解釈のよく定義された基準の欠如のため、ほとんどの症例において、感染の初期を明らかにすることは不可能である。
【0012】
全般的に、実際の診断可能性は、治療の成功にとってより好適な疾患の初期においては特に、絶対的に不十分である。
【0013】
血清試料又はその他の生物学的液体に容易に適用されうる信頼性のある安価な方法が、進展の初期においてすら、プロテーゼ装置が関与する感染の存在を明らかにすることができることが見出され、これが、本発明の目的である。この方法は、任意の種類のプロテーゼ装置の導入により治療された、特にブドウ球菌により引き起こされる感染のリスクが高い患者の継続的なモニタリングのため、日常的に実施されうる。
【0014】
この方法は、病原性ブドウ球菌株から抽出された細胞外多糖に対する特異的な抗体の存在の定量的測定にある。
【0015】
さらに、本発明は、適切に増殖したブドウ球菌細胞から、これらの細胞外多糖を調製及び精製するための方法を提供する。
【0016】
この方法のために用いられうるブドウ球菌株は、コアグラーゼ陰性及び陽性両方の、病原性であるか、又はとにかく粘液を産生することができる株である。特に、病原性のスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)株又はスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)株が好ましい。
【0017】
これらの株は、プロテーゼ感染に罹患した患者、又は参照株の標準的なカルチャー・コレクション(culture collection)のいずれかから直接的に得られうる。そのような典型的な株の特徴は、下記の実施例1に報告されている。DSMZ No.11942で本出願人により寄託されたスタフィロコッカス・アウレウス株を用いて実施された実験も示されている。
【0018】
細菌は、下記の実施例2に報告されたようないくつかの改変を有する、Hussain et al., J. Med. Microbiol. 34:143 - 147, 1991に記載された液体培地(HHW培地)中で増殖させる。
【0019】
本発明に係る多糖を調製するための手法は、以下の工程を実質的に含む。
a)4〜6日間改変HHW培地中でブドウ球菌株を培養する工程、
b)生理学的緩衝液中で細菌細胞をホモジナイズする工程、
c)15分間13,000×gで遠心分離し、上清を分離する工程、
d)12kDaのカットオフ値を有する膜を用いて透析により上清を脱塩する工程、
e)d)で得られた溶液を凍結させ、凍結乾燥させる工程、
f)凍結乾燥した材料を脱タンパク質溶液、例えばトリクロロ酢酸中に懸濁する工程、
g)f)で得られた溶液を30,000×gで遠心分離し、エタノールの添加により上清を分離する工程、
h)多糖を得るため、工程g)の上清を20,000×gで遠心分離する工程、
i)沈降した多糖を無水エタノールで洗浄し、真空下で脱水し、それを無菌H2O中に懸濁する工程。
【0020】
精製された多糖の定量は、例えば、Pelkonen et al.,Journal of Bacteriology 170, 2646, 1988により記載された方法に従い実施されうる。
【0021】
前記の方法に従い得られる多糖は、プロテーゼ装置が挿入された患者由来の血清又はその他の生物学的液体中の抗体の決定のためのアッセイにおいて用いられる。
【0022】
好ましくは、アッセイは、例えば酵素結合イムノソルベント・アッセイ(ELISA)、ゲル免疫沈降、免疫拡散もしくは向流免疫電気泳動(counter-immunoelectrophoresis)、ラジオイムノアッセイ、補体結合、及び受動血球凝集のような従来の免疫化学的手法後に、IgGクラス及び/又はIgMクラスの抗体の存在を決定する。
【0023】
多糖が、例えばマイクロタイター・ウェルのような固体表面に固定化され、次に、免疫複合体の形成にとって適当な条件下で試料と反応させる固相法が、好ましい。免疫複合体が形成された後、それは、例えば、放射性同位体、化学発光物質もしくは色原性物質で標識された、又は比色定量反応を触媒する酵素及びその他の類似の物質とカップリングした、抗体又はそれらの免疫能を有する断片のような適当な分子との反応により、明らかにされうる。
【0024】
本発明により開示される方法の有効性は、以下の実験により確認された。
【0025】
第一の実験セットにおいては、血管移植片感染を有する15人の患者由来の血清を分析した。これらの患者におけるプロテーゼ感染の存在は、プロテーゼ周囲組織から採取された試料及び外科的交換後の移植片自体の試料両方の微生物学的分析により確認された。各試料から少なくとも一つのブドウ球菌株が単離された。
【0026】
これらの15人の患者のうち11人が、感染の明確な臨床的徴候を示し、4人は、感染の非特異的な臨床的徴候しか有しなかったが、99mTc標識白血球の注入後のシンチグラフィにおいては陽性であった。
【0027】
10人の男女の成人健常対象由来の血清を陰性対照として用いた。
【0028】
以下のものに対する血清の反応性をELISAフォーマットでアッセイした。
a−小さなポリプロピレン・シリンダー(0.5×1mm)上に形成された異なるブドウ球菌株(臨床的単離物及び参照株の両方)により形成された単一特異的なバイオフィルム
b−小さなポリプロピレン・シリンダー(0.5×1mm)上に形成された異なるブドウ球菌株(臨床的単離物及び参照株の両方)により形成された複数特異的(polispecific)なバイオフィルム
c−異なるブドウ球菌株の培養物から抽出された表面タンパク質
d−スタフィロコッカス・アウレウスDSM11942及びスタフィロコッカス・エピデルミディスSA1545(この株の特徴決定については実施例1を参照のこと)の培養物から抽出された、本発明において記載された多糖。
【0029】
実験は、以下の結果を与えた。
a−単一特異的又は複数特異的なブドウ球菌バイオフィルム又はブドウ球菌表面及び分泌タンパク質に対するIgG抗体力価及びIgM抗体力価はいずれも、感染患者と非感染患者とで有意に異なっていなかった。
b−本発明のブドウ球菌多糖に対するIgG抗体力価及びIgM抗体力価はいずれも、感染患者と非感染患者とで有意に異なっていた。それらは、さらに、明確に症候性の感染患者と乏症候性(pauci-sumptomatic)シンチグラフィ陽性患者とを区別することも可能にした。
【0030】
表1.マイクロタイター・ウェルを感作するためS.アウレウスDSM11942の培養物から抽出された多糖を用いて、症候性血管移植片感染を有する11人の患者、乏症候性血管移植片感染を有するが99mTC標識白血球の注入後のシンチグラフィは陽性であった4人の患者、及び10人の健常対照対象の血清試料に対して実施されたELISAアッセイにおいて得られたIgG力価及びIgM力価両方の範囲、平均値、及び標準偏差。
【0031】
【表1】

【0032】
表2.マイクロタイターウェルを感作するためS.エピデルミディスSA1545の培養物から抽出された多糖を用いて、症候性血管移植片感染を有する11人の患者、乏症候性血管移植片感染を有するが99mTC標識白血球の注入後のシンチグラフィは陽性であった4人の患者、及び10人の健常対照対象の血清試料に対して実施されたELISAアッセイにおいて得られたIgG力価及びIgM力価両方の範囲、平均値、及び標準偏差。
【0033】
【表2】

【0034】
第二の実験セットにおいては、マイクロタイター・ウェルを感作するため本発明の多糖のみを用いて実施されたELISA試験において、IgG力価及びIgM力価両方を決定するため、より多数の血清をアッセイした。これらの全ての実験において、(実施例1に記載されている)SA1545株の培養物から抽出された多糖を用いた。
【0035】
これらの実験においては全部で97個の血清を試験した。これらの97個の血清のうち19個は感染しておらず血管移植片を保有しない対照患者から得られ、3個は感染はしていないが血管移植片を保有している対照患者から得られ、5個はグラム陰性細菌に感染した血管移植片を保有している患者から得られ、13個は感染はしていないが血管移植片を保有しておりスタフィロコッカスspp.により引き起こされた血管移植片感染の過去の履歴を有する患者から得られ、57個はスタフィロコッカスspp.に感染した血管移植片を保有している患者から得られた。
【0036】
血清の1/160希釈物及び1/320希釈物を用いて、これらの血清全てにおいて、IgG力価及びIgM力価両方を決定した。アッセイの実験内及び実験間の再現性を調査するため、2重の測定を2セット実施した。ELISAアッセイは実施例4に記載のようにして実施した。
【0037】
この第二の実験セットにおいて得られた結果を表3に要約する。
【0038】
表3.S.エピデルミディスSA1545の多糖調製物を用いて実施された酵素結合イムノソルベント・アッセイ(ELISA)の結果。
【0039】
統計的評価に用いられた各血清試料のIgM力価は、2つの異なる実験において得られた4つの異なる測定の平均値であった。統計的評価に用いられた各血清試料のIgG力価は、1つの実験において得られた2つの異なる測定の平均値であった。
【0040】
【表3】

【0041】
血清希釈=1:160で測定されたIgM力価の比較のための、スチューデントT検定の結果:
A(A1+A2)vs.D:p=1.7×10-15
B vs.D:p=2.0×10-4
C vs.D:p=7.2×10-8
A+B+C vs.D:p=5.3×10-23
A+C vs.B:p=0.142
A vs.C:p=2.07×10-11
【0042】
血清希釈=1:320で測定されたIgG力価の比較のための、スチューデントT検定の結果:
A(A1+A2)vs.D:p=4.5×10-21
B vs.D:p=7.5×10-8
C vs.D:p=8.0×10-7
A+B+C vs.D:p=3.1×10-21
A+C vs.B:p=0.265
A vs.C:p=0.024
【0043】
注釈:
S.エピデルミディスSA1545の粘液多糖(SP)に対して検出可能な抗体力価は、病歴が異なる患者群において有意差を示した。
【0044】
スタフィロコッカスspp.に感染した血管移植片を保有している患者においては、i)血管移植片を保有していても、又はしていなくても、そのような感染の履歴がない対照患者、ii)グラム陰性細菌に感染した血管移植片を保有している患者、iii)感染していない血管移植片を保有しているが、スタフィロコッカスspp.による血管移植片感染の過去の履歴を報告している患者と比較して、SA1545−SPに対する有意に高い抗体力価が見出された。これらのデータは、全体として、スタフィロコッカスspp.により引き起こされる血管移植片感染が、SPに対する特異的な体液性免疫反応を誘導すること、及びこの反応が、本特許出願において記載されたようなSA1545 SP調製物で感作された固相を用いた酵素イムノアッセイにより検出されうること、を示している。
【0045】
上記患者群における抗SA1545SPのアイソタイプ反応の分析は、IgG抗体力価及びIgM抗体力価両方の有意差を示した。IgM力価は、スタフィロコッカスspp.により引き起こされる活動性感染の状態と最も密接に関連していた。
【0046】
感染患者の力価と非感染患者の力価との間の統計的有意差の存在は、感染過程の存在の高い確率を定義することが可能なブレークポイント値を確立することを可能にする。さらに、追跡における特異的参照値として移植時に測定された抗体力価を用いて、移植片の挿入後に患者をモニターするため、この方法を用いることが可能である。
【0047】
前記の方法は、実施が容易であり、安価であり、そして他の全ての利用可能な方法がしばしば明瞭な診断的情報を与えることができない感染の初期においてすら(侵襲的手法の必要なしに)信頼性のある結果を得ることを可能にするため、この領域における従来の診断法と比較して、いくつかの利点を有することは明らかであると考えられる。さらに、この方法は、潜伏感染の発生に関する患者の定期的モニタリングを可能にし、治療結果に関する信頼性のある情報を与えることができる。
【0048】
本発明は、最後に、媒体、賦形剤、並びに保存料及び安定剤のような添加剤と共に、適切な容器中に多糖調製物、標準抗体、及び検出のための試薬を含む、アッセイを実施するためのキットを提供する。
【0049】
好ましくは、キットは、(元の力価を有する)陽性対照血清及び陰性対照血清と共に抗原で予め感作されたマイクロタイター・ストリップを含むであろう。
【0050】
以下の実施例は、本発明をより明解にするためのものである。
【0051】
実施例1
アッセイにとって適切な細菌株の特徴決定
API 20 STAPH同定システムを用いて同定のため試験されたとき数字コード6704773を与える、SA1545と表示されるスタフィロコッカス・エピデルミディス株を、成人男性から外植された大動脈・両側大腿動脈(aorto-bifemoral)移植片から単離した。
【0052】
単離物は、5%脱線維ヒツジ血液を追加されたコロンビア寒天(Columbia Agar)プレート上で増殖させたとき、コロニーの明白な二形性を示した。それは、マンニトール塩寒天上で増殖させたとき、マンニトール発酵に関して陰性であり、コロニーは37℃で18hのインキュベーションの後1mm未満の直径を示した。
【0053】
単離物は、キルビー・バウエル(Kirby Bauer)アッセイを用いて調査したとき、以下の抗生物質:ゲンタマイシン、バンコマイシン、オフロキサシン、エリトロマイシン、イミペネム、セファロチン、アモキシシリン(Amoxicillin)+クラブラン酸、セフォペラゾン(cefoperazone)に対して感受性であった。
【0054】
単離物の生化学的パターンは以下の通りであった。
発酵 グルコース +
発酵 フルクトース +
発酵 マルトース +
発酵 ラクトース +
発酵 トレハロース −
発酵 マンニトール −
発酵 キシリトール −
発酵 メリビオース −
発酵 ラフィノース −
発酵 キシロース −
発酵 サッカロース +
産生 硝酸塩 −
産生 アルカリホスファターゼ −
産生 アセトイン −
産生 N−アセチル−グルコサミニダーゼ −
産生 アルギニンヒドロラーゼ +
産生 ウレアーゼ +
【0055】
他の多くの症例において、類似の特徴を示し、本発明のアッセイに用いるのに適した株が単離されている。
【0056】
実施例2
培養培地の調製
培養培地は1リットル当たり以下の化合物を含む。
Na2HPO4(2H2O) 10g
KH2PO4 3g
L−アスパラギン酸 150mg
L−アラニン 100mg
L−アルギニン 100mg
L−シスチン 50mg
グリシン 100mg
L−グルタミン酸 150mg
L−ヒスチジン 100mg
L−イソロイシン 150mg
L−リジン 100mg
L−ロイシン 150mg
L−メチオニン 100mg
L−フェニルアラニン 100mg
L−プロリン 150mg
L−セリン 100mg
L−トレオニン 150mg
L−トリプトファン 100mg
L−チロシン 100mg
L−バリン 150mg
グルコース 10g
MgSO4(7H2O) 500mg
ビオチン 0.1mg
ニコチン酸 2mg
D−パントテン酸 2mg
ピリドキサール 4mg
ピリドキサミン 4mg
リボフラビン 2mg
チアミン 2mg
アデニン 20mg
グアニン 20mg
CaCl2(6H2O) 10mg
MnSO4 5mg
(NH4)2SO4FeSO4(6H2O) 6mg
【0057】
培地の組成は、調製に関して以下の改変を有する、Hussain, Hastings, White, J. Med. Microbiol. 34:143 - 147, 1991に記載のものに相当する。全ての培地成分を計量した後、MgSO4(7H2O)を蒸留水に溶解し、次に絶えず振とうしながら残りの全ての成分を一度に添加した。L−シスチンは、培地への添加の前に、2〜3滴の5N NaOHに溶解させなければならない。
【0058】
(少量の沈殿物が残存していてもよいが)全ての成分が溶解した後、蒸留水で容量を1lに調整し、0.2μmの多孔性膜を通す濾過により滅菌する。
【0059】
実施例3
多糖の調製
1000mlの改変HHW培地中で37℃で6日間、振とうしながら株を増殖させた。
【0060】
細菌ペレットを、4℃で15分間13,000×gでの遠心分離により収集し、20mlの無菌氷冷生理食塩水(NaCl 0.9%)中に懸濁し、−20℃で2h凍結した。次に、細菌懸濁液を室温にて解凍し、30秒間隔で30秒間10回ホモジナイズした。
【0061】
次に、ホモジネートを、4℃で15分間13,000×gで遠心分離した。得られた上清を4℃で保存し、得られたペレットを、20mlの無菌氷冷生理食塩水中に再び懸濁させ、前記と同様にホモジナイズした。第二のホモジナイゼーション工程から得られた上清を、先に得られたものに添加し、12kDaのカットオフ値を有する透析膜を用いて、4℃で2h、1,000容量の蒸留水に対する透析により脱塩した。次に、試料を−80℃で凍結し、凍結乾燥し、5%(W/V)トリクロロ酢酸中に懸濁し、4℃で15分間インキュベートした。
【0062】
次に、試料を、4℃で30分間30,000×gで遠心分離した。次に、4容量の氷冷無水エタノールを上清に添加し、それをさらに48h4℃でインキュベートした。次に、バルクの多糖を、4℃で30分間20,000×gでの遠心分離により収集し、0.5容量の氷冷無水エタノールで洗浄し、真空下で脱水し、最後に2mlの無菌蒸留水に懸濁させた。前記のようにして得られた多糖を、適切な希釈の後、マイクロタイター・ウェルを感作するために用いた(典型的には50μlずつ)。
【0063】
実施例4
ELISAアッセイの実行
マイクロタイター・プレートのウェルを、実施例3に従い調製し、無菌蒸留水で1/80に希釈した50μlの多糖で感作し、適切に密封し、4℃で18〜24hインキュベートした。インキュベーション後、ウェルを空にし、100μlの0,05%トゥイーン20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で5回洗浄した。
【0064】
次に、ウェルを空にし、200μlの10%豆乳を含むPBSで飽和し、適切に密封し、37℃で1時間インキュベートした。次に、ウェルを空にし、前記と同様に洗浄し、希釈された血清を50μlずつ添加した。一つの陽性対照及び一つの陰性対照を含む血清を、典型的には、1/160及び1/320にPBSで希釈した。血清の添加後、ウェルを適切に密封し、37℃で1時間インキュベートした。次に、ウェルを空にし、前記と同様に洗浄し、50μlの「ペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヒトIgG」(例えば、DAKO cod.P0214)(10%豆乳を含むPBSで1/15,000に希釈)又は「ペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヒトIgM」(例えば、DAKO cod.P0215)(10%豆乳を含むPBSで1/1,500に希釈)のいずれかを添加した。次に、ウェルを適切に密封し、37℃で1時間インキュベートし、空にし、前記と同様に洗浄した。
【0065】
最後の洗浄後、ペルオキシダーゼの色原性基質(例えば、BM Blue POD Substrate Boehringer Mannheim, cod 1484281)を50μl、各ウェルに添加した。
【0066】
次に、ウェルを、37℃で10分間インキュベートし、次に、50μlの0.5N H2SO4を添加することにより反応を停止させた。次に、ブランクとして100μlの0.5N H2SO4を含む未処理の1ウェルを用いて、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて、各ウェルのOD450nmを評価した。
【0067】
概して、陽性対照のOD450nmは、1.5という値を超えるべきではない。
【0068】
これが起こった場合には、ペルオキシダーゼ基質のインキュベーション時間を減少させ、アッセイを繰り返さなければならない。
【0069】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料又はその他の生物学的流体試料から、病原性ブドウ球菌株(Staphylococcal strain)により産生される多糖と反応する抗体を検出することを含む、少なくとも一つのスタフィロコッカス(Staphylococcus)株が関与しているプロテーゼ感染の決定のための方法。
【請求項2】
抗体がIgG及びIgMである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
病原性ブドウ球菌株がコアグラーゼ(coagulase)陰性種又は陽性種の株である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
該種がスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)又はスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
病原性ブドウ球菌株がDSMZ No.11942である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
多糖が以下の工程、
a)4〜6日間改変HHW培地中でブドウ球菌株を培養する工程、
b)生理学的緩衝液中で細菌細胞をホモジナイズする工程、
c)15分間13,000×gで遠心分離し、上清を分離する工程、
d)12kDaのカットオフ値を有する膜を用いて透析により上清を脱塩する工程、
e)d)で得られた溶液を凍結し、凍結乾燥する工程、
f)凍結乾燥した材料を脱タンパク質溶液中に懸濁する工程、
g)f)で得られた溶液を30,000×gで遠心分離し、エタノールの添加により上清を分離する工程、
h)多糖を得るため、工程g)の上清を20,000×gで遠心分離する工程、
i)沈降した多糖を無水エタノールで洗浄し、真空下で脱水し、それを無菌H2O中に懸濁する工程
により得られる、請求項1〜5記載の方法。
【請求項7】
ELISA、ゲル免疫沈降、免疫拡散、向流免疫電気泳動(contro-immunoelectrophoresis)、ラジオイムノアッセイ、補体結合の形態である、請求項1〜6記載の方法。
【請求項8】
a)4〜6日間改変HHW培地中でブドウ球菌株を培養する工程、
b)生理学的緩衝液中で細菌細胞をホモジナイズする工程、
c)15分間13,000×gで遠心分離し、上清を分離する工程、
d)12kDaのカットオフ値を有する膜を用いて透析により上清を脱塩する工程、
e)d)で得られた溶液を凍結し、凍結乾燥する工程、
f)凍結乾燥した材料を脱タンパク質溶液中に懸濁する工程、
g)f)で得られた溶液を30,000×gで遠心分離し、エタノールの添加により上清を分離する工程、
h)多糖を得るため、工程 g)の上清を20,000×gで遠心分離する工程、
i)沈降した多糖を無水エタノールで洗浄し、真空下で脱水し、それを無菌H2O中に懸濁する工程
を含む、スタフィロコッカス培養物から多糖を調製するための方法。
【請求項9】
請求項6の方法により入手可能な多糖。
【請求項10】
媒体、賦形剤、添加剤、保存料、又は安定剤と組み合わされた多糖、抗体、及び検出試薬を適当な容器中に含む、請求項1〜5記載の方法における使用のためのキット。
【請求項11】
陽性対照血清及び陰性対照血清と共に抗原で予め感作されたマイクロタイター・ストリップを含む、請求項8記載のキット。
【請求項12】
プロテーゼ感染の決定のための免疫化学的アッセイにおける、病原性ブドウ球菌株により産生される多糖の使用。
【請求項13】
多糖が請求項9の多糖である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
受託番号11942でDSMZに寄託されているブドウ球菌株。

【公開番号】特開2010−145416(P2010−145416A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−18353(P2010−18353)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【分割の表示】特願2000−530802(P2000−530802)の分割
【原出願日】平成11年2月1日(1999.2.1)
【出願人】(596005333)
【Fターム(参考)】