説明

プロトン伝導膜およびその製造方法、膜−電極接合体、固体高分子型燃料電池

【課題】イオン伝導性、機械的強度および耐熱寸法安定性に優れ、使用時に皺の発生が抑制されたポリアリーレン系共重合体からなるプロトン伝導膜を提供する。
【解決手段】プロトン伝式(2)で表される縮合芳香族環構成単位と、式(13)で表されるスルホン酸基を有する構成単位とを含むポリアリーレン系共重合体100質量部と有機溶剤20〜50質量部とを含有するポリマー膜を二軸延伸処理した後に有機溶剤を除去して得られるプロトン伝導膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレン系共重合体からなる二軸延伸されたプロトン伝導膜に関し、さらに詳細には、燃料電池用高分子固体電解質などに用いられるプロトン伝導膜として有用なポリアリーレン系共重合体からなる二軸延伸されたプロトン伝導膜に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の電解質は、通常、(水)溶液で用いられることが多い。しかし、近年、これを固体系に置き替えていく傾向が高まってきている(固体高分子電解質型燃料電池)。その第1の理由としては、たとえば、電気・電子材料に応用する場合のプロセッシングの容易さ、起動性・運転操作性に優れる点であり、第2の理由としては、軽薄短小および省電力化への移行である。第3の理由としては、電解質の逸散の心配がなく、メンテナンスが容易で長寿命が期待できることにある。
【0003】
このような上記固体高分子電解質型燃料電池として用いられるプロトン伝導膜として本出願人は、特開2004−345997号公報(特許文献1)、特開2004−346163号公報(特許文献2)、特開2004−346164号公報(特許文献3)にて、特定のポリアリーレン系重合体からなるプロトン伝導膜を提案している。
【0004】
このようなポリマーから形成されるプロトン伝導膜は物理的な耐久性を要求される場合が多く、両面に触媒電極層を接合させる固体高分子電解質型燃料電池では、プロトン伝導膜の一部分に集中して応力が集中し、さらに燃料電池を使用し続けることによって、膜の強度が徐々に低下し、その部分に亀裂が発生しやすくなる。
【0005】
また、固体高分子電解質型燃料電池の導電率はプロトン伝導膜の水分含有量に著しく影響を受けることが知られている。そのため、該プロトン伝導膜を加湿し適切かつ均等な湿潤状態に保つことが固体高分子電解質型燃料電池における電解質の性能維持のため重要であるが、該プロトン伝導膜は含水時には膜の長さ方向に寸法が増大しやすく、様々な弊害を生じやすい。特に、燃料電池使用時には膜が膨潤するため、膜の寸法が増大し、膜の寸法増大分は「しわ」となる。また、乾湿時には膜の寸法が減少する。この現象が繰り返されると膜に局所的な応力が生じやすくなり亀裂が生じる。そのしわまたは亀裂が燃料電池の電力を低下する一因となる。
【0006】
上記問題を解決する方法として、特開2001−35510号公報(特許文献4)には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなり、含水量の多い状態で外周部を固定して乾燥することにより延伸処理された陽イオン交換膜が提案されている。
【0007】
また、本出願人も、特開2005−219282号公報(特許文献5)にて、ポリアリーレン系延伸フィルムの製造方法を提案している。
しかしながら、特許文献4では、もともと使用される重合体のガラス転移温度が低く、耐熱性が不十分であり、高温状態では使用できないという問題点があった。
【0008】
また、特許文献5に記載された方法は、プロトン伝導膜の強度物性向上のためには有効であるが、パーフルオロカーボン重合体に比べ、ポリアリーレン系重合体は従来の方法では二軸延伸しにくく、依然として、乾湿サイクルによる寸法変化や皺の発生等の点での改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−345997号公報
【特許文献2】特開2004−346163号公報
【特許文献3】特開2004−346164号公報
【特許文献4】特開2001−035510号公報
【特許文献5】特開2005−219282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
すなわち本発明の目的は、イオン伝導性、機械的強度および耐熱寸法安定性に優れ、使用時に皺の発生が抑制されたポリアリーレン系共重合体からなるプロトン伝導膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアリーレン系共重合体からプロトン伝導膜を作製する際に、残存溶媒量をコントロールし、二軸延伸することによって、機械的強度に優れ、すなわち膜が使用される乾湿条件下でも、しわが発生しにくく、また、亀裂が生じない膜が得られ、寸法安定性に優れたフィルムが得られることを見出した。
【0012】
そしてこのようなプロトン伝導膜を固体高分子電解質型燃料電池に用いることによって、長時間にわたり電力が低下することなく、長寿命の燃料電池が得られることを見出した。
【0013】
本発明は以下のように構成される。
[1]ポリアリーレン系共重合体からなるプロトン伝導膜であって、下記式(2)で表されることを特徴とする縮合芳香族環構成単位と、式(13)で表されるスルホン酸基を有する構成単位とを含むポリアリーレン系共重合体100質量部と有機溶剤20〜50質量部とを含有するポリマー膜を二軸延伸処理した後に有機溶剤を除去して得られることを特徴とするプロトン伝導膜。
【0014】
【化1】

[式(2)中、A、Dは直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Bは酸素原子または硫黄原子を示し、Phは縮合芳香族環構造を有する2価の基を示し、R1〜R20は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。l、mは0〜4の整数を示し、qは2以上の整数を示す。tは0〜4の整数を示す。n、pは各構成単位の組成比を示し、pは0から1であり、n+p=1である。
【0015】
【化2】

(式(13)中、Zは直接結合または、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2l'−(l'は1〜10の整数である)、−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。Arは−SO3H、−O(CH2hSO3Hまたは−O(CF2hSO3Hで表される置換基を有する芳香族基を示す(hは1〜12の整数を示す)。cは0〜10の整数を示し、dは0〜10の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。)
各構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。]
【0016】
[2]前記ポリアリーレン系共重合体が、下記式(9)で表される含窒素複素環基を有する構成単位を有する、[1]に記載のプロトン伝導膜。
【0017】
【化3】

式(9)中、Zは直接結合または、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2l'−(l'は1〜10の整数である)、−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、R21は含窒素複素環基を示す。bは1〜5の整数を示し、aは0〜4の整数を示す。
【0018】
[3]前記二軸延伸における延伸倍率が1.01〜5倍であることを特徴とする[1]または[2]に記載のプロトン伝導膜。
[4]前記式(2)中、Phはナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセンからなる群から選ばれる芳香族環からなる2価の基であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のプロトン伝導膜。
[5]前記縮合芳香族環構成単位が、下記式(3)で表されるものであることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載のプロトン伝導膜;
【0019】
【化4】

[式(3)中、Aは直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、
Dは直接結合、−O−、−CO−、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)および−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、
Phは縮合芳香族環を有する2価の基を示し、R1〜R20は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。
lは0〜4の整数を示し、qは2以上の整数を示す。tは0〜4の整数を示す。
n、pは各構成単位の組成比を示し、pは0から1であり、n+p=1である。
構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。]
【0020】
[6]前記縮合芳香族環構成単位が下記式(4)で表されるものであることを特徴とする[5]に記載のプロトン伝導膜;
【0021】
【化5】

[式(4)中、Dは、−O−、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0022】
Pは下記式(5−1)〜(5−3)で表される構造から選ばれる少なくとも1種の構造であり、
Phは下記式(6)で表される構造である。
qは2以上の整数を示す。tは0〜4の整数を示す。
n、pは各構成単位の組成比を示し、pは0から1であり、n+p=1である。
構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。]
【0023】
【化6】

[7]前記式(2)で表されることを特徴とする縮合芳香族環構成単位と、式(13)で表されるスルホン酸基を有する構成単位とを含むポリアリーレン系共重合体の有機溶剤溶液を、基材上に膜状に成形した後、有機溶剤の一部を除去して該有機溶剤量をポリアリーレン系共重合体100質量部に対して20〜50質量部とした後、該基材を剥離除去し、ポリアリーレン系共重合体と有機溶剤からなるポリマー膜を二軸延伸処理することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のプロトン伝導膜の製造方法。
【0024】
[8][1]〜[7]のいずれかに記載のプロトン伝導膜と、触媒層と、ガス拡散層とを備えてなる膜−電極接合体。
[9][8]に記載の膜−電極接合体を有する、固体高分子電解質型燃料電池。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、イオン伝導性の高く、耐熱性に優れたポリアリーレン系共重合体と有機溶剤とからなる組成物を、残存溶媒量をコントロールし、二軸延伸することによって、機械的強度に優れ、すなわち膜が使用される乾湿条件下でも、しわができにくく、また、亀裂を生じることがない膜が得られるとともに、寸法安定性に優れたフィルムを得ることができる。
【0026】
したがって、本発明から得られるプロトン伝導膜を固体高分子電解質型燃料電池に用いると、長時間使用した場合においてもプロトン伝導膜としての特性を損なうことなく、広い温度範囲にわたって高いプロントン伝導性を有するため、長時間にわたり電力が低下することなく、長寿命の燃料電池を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
ポリアリーレン系共重合体
本発明で使用されるポリアリーレン系共重合体は、縮合芳香族環構成単位と、スルホン酸基を有する構成単位とを含む。
【0028】
[縮合芳香族環構成単位]
本発明の共重合体が有する縮合芳香族環構成単位は、下記式(1)で表される。かかる構成単位を含むことにより、重合体に疎水部を付与することができる。また、縮合芳香族環を有するので、前記重合体の熱水耐性を向上させることができる。
【0029】
【化7】

上記式中、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24は、それぞれ独立に、ベンゼン環、縮合芳香環、または含窒素複素環からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を有する2価の基を示す。
ただし、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24は、その水素原子の一部又はまたはすべてが、フッ素原子、ニトロ基、ニトリル基、又はまたは水素原子の一部またはすべてがフッ素置換されていてもよいアルキル基、アリル基若しくはアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基で置換されていてもよい。
【0030】
A、Dは、それぞれ独立に、直接結合または、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO2−、−SO−、−(CF2l−(lは1〜10の整数である)、−(CH2l−(lは1〜10の整数である)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−、または−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、
Bは酸素原子または硫黄原子であり、
s、tは、それぞれ独立に、0〜4の整数を示し、rは、0または1以上の整数を示す。
【0031】
上記式(1)で表される構成単位は、好ましくは下記式(2)で表される構造である。
【0032】
【化8】

式(2)中、l、mは0〜4の整数を示し、qは2以上の整数を示す。n、pは各構成単位の組成比を示し、pは0から1の値であり、n+p=1である。これらのうち、mは0か1が好ましく、lは0か1が好ましい。また、pは0.01〜1の値をとることが好ましく、より好ましくは0.1〜1、特に好ましくは0.05〜1である。tは0〜4の整数を示し、好ましくは0〜2、より好ましくは0または1である。
【0033】
Aは直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0034】
ここで、−CR'2−のR'の具体的な例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、プロピル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基、フェニル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。これらのうち、直接結合、−O−、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)が好ましい。
【0035】
Bは酸素原子または硫黄原子を示し、酸素原子が好ましい。
Phは縮合芳香環構造を有する2価の基を示し、例えばナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環などの環構造に由来する2価の基が挙げられ、なかでもナフタレン環由来の2価の基が好ましい。これらを含有することによって、式(1)で表される芳香族化合物をモノマーとした重合体に耐水性を付与することができる。
【0036】
Dは、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0037】
各構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。
ここで、−CR'2−のR'の具体的な例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、プロピル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基、フェニル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。これらのうち、直接結合、−O−、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)が好ましい。
【0038】
1〜R20は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。
【0039】
前記縮合芳香族環構成単位が、下記式(3)で表されるものであることが好ましい。
【0040】
【化9】

[式(3)中、Aは直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、
Dは直接結合、−O−、−CO−、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)および−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、
Phは縮合芳香族環構造を有する2価の基を示し、R1〜R20は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。
【0041】
l、mは0〜4の整数を示し、qは2以上の整数を示す。tは0〜4の整数を示す。
n、pは各構成単位の組成比を示し、pは0から1であり、n+p=1である。]。
さらに、かかる縮合芳香族環構成単位として、下記式(4)で表されるものがより好ましい。
【0042】
【化10】

[式(4)中、Dは、−O−、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を示す)からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
Pは下記式(5−1)〜(5−3)で表される構造から選ばれる少なくとも1種の構造であり、
Phは下記式(6)で表される構造である。
qは2以上の整数を示す。tは0〜4の整数を示す。
n、pは各構成単位の組成比を示し、pは0から1であり、n+p=1である。]。
【0043】
耐水性を向上させるためには、より多くの縮合芳香族環構成単位を導入すること(上記pの値が大きいほど)が望ましい。しかし、より多くの縮環構成単位を導入すると、生成物の溶解性が著しく低下し、取り扱いが困難になる場合がある。そのような場合、2種類以上の異なる縮合芳香族環構成単位を用いることにより、生成物の溶解性を維持してより多くの縮合芳香族環構成単位を導入することが可能になる。pが0.01〜1の範囲にあることが好ましい。
【0044】
【化11】

このような構成単位として具体的には、以下のものが例示される。
【0045】
例えば、pが0のもの、すなわち縮合芳香族環を有さないとしては、以下のものが挙げられる。
【0046】
【化12】

また、pが0以外のもの、すなわち縮合芳香族環を有するものとしては、以下のものが挙げられる。
【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

縮合芳香族環構成単位を含有していると、共重合体の疎水性が著しく向上する。このため、従来と同様のプロトン伝導性を具備しながら、優れた熱水耐性を付与することができる。
【0050】
[含窒素複素環基を有する構成単位]
本発明では、含窒素複素環基を有する構成単位を含んでいてもよく、かかる含窒素複素環基は、下記式(7−1)で表される構造を有するものである。
−(Rs)e−(V−Rhf ・・・(7−1)
式中、Vは、電子吸引性基であれば特に限定されないが、好ましくは、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO2−又は−または−SO−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0051】
sは、直接結合、または特に限定されない、任意の二価の有機基である。二価の有機基としては、炭素数1〜20炭化水素基であればよく、具体的には、メチレン基、エチレン基などのアルキレン基、フェニレン基などの芳香族環があげられる。
【0052】
sとして、−W−Ar9−で示される基でもよい。
前記式(7-1)の含窒素複素環基を有する構造としては、具体的には、下記式(7-2)で表されるものが好ましい。
−Rs−V−Rh ・・・(7−2)
【0053】
上記式中、Ar9としては、フッ素原子で置換されていてもよい、ベンゼン環、縮合芳香環、含窒素複素環からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を有する2価の基を示す。
eは、0〜4の整数を示し、fは、1〜5の整数を示す。Wは、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CF2u−(uは1〜10の整数である)、−C(CF32−、直接結合からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0054】
hは含窒素複素環基を示し、窒素を含む5員環、6員環構造が挙げられる。また、複素環内の窒素原子の数は、1個以上あれば特に制限されない、また複素環内には、窒素以外に、酸素や硫黄を含んでいても良い。
【0055】
hを構成する含窒素複素環基として、具体的には、ピロール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、1,3,5−トリアジン、ピリミジン、ピリタジン、ピラジン、インドール、キノリン、イソキノリン、ブリン、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラゾール、テトラジン、トリアゾール、カルバゾール、アクリジン、キノキサリン、キナゾリンからなる含窒素複素環化合物およびこれらの誘導体の炭素または窒素に結合する水素原子が引き抜かれてなる構造の基である。
【0056】
これらの含窒素複素環基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トルイル基、ナフチル基等のアリール基、シアノ基、フッ素原子などがあげられる。
【0057】
本発明の共重合体が有する含窒素複素環基を有する構成単位は、下記式(8)で表される。
【0058】
【化16】

上記式(8)中、Ar10は、ベンゼン環、縮合芳香環、含窒素複素環からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を有する2価の基を示す。ただし、Ar10は、その水素原子の一部又はすべてが、フッ素原子、ニトロ基、ニトリル基、又は水素原子の一部またはすべてがフッ素置換されていてもよいアルキル基、アリル基若しくはアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基で置換されていてもよい。
【0059】
式(8)中、V、e、f、Rs、Rhは前記式(7−1)および(7−2)と同様である。
含窒素複素環基を有する構造は、本発明のスルホン化ポリアリーレン中に、好ましくは下記式(7)で表される構造を有している。
【0060】
【化17】

式(7)中、V、e、f、RsおよびRhは、式(8)の場合と同様である。構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。
【0061】
上記式(7)における、含窒素複素環基Rhは、ピリジン環であることが好ましい。ピリジン環であると、含窒素複素環の中でも元来Nの塩基性度が低めであるため、低湿度領域でのプロトン伝導度が向上するという特性が発揮される。
【0062】
また、上記式(7)における、Vは−CO−か−SO2−であることが好ましい。−CO−はピリジン環と組合わせると、共役による安定化効果により熱的に安定な構造となりやすい。また、−SO2−は電子密度を下げて窒素の塩基性度がより抑制され、これによって、低湿度領域でのプロトン伝導性を特に高めることができる。
【0063】
主鎖の芳香環と電子吸引性基Zは、直接結合しているのが安定性の面から好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲で任意の2価の基(すなわちRs)が介在しても良い。ここで介在構造としては、炭素数1〜20の二価の有機基であれば特に限定されない。
【0064】
含窒素複素環基を有する構成単位を有している共重合体を用いることにより、プロトン伝導性を損なうことなく、高温下で高いスルホン酸の安定性を有するプロトン伝導膜を得ることができる。
【0065】
[スルホン酸基を有する構成単位]
本発明の共重合体は、スルホン酸基を有する構成単位を含むことができる。スルホン酸基を有する構成単位は下記式(10)で表される構造を有する構成単位である。スルホン酸基を有することによりプロトン伝導性を有する共重合体が得られる。
【0066】
【化18】

上記式中、Ar12、Ar13は、各々独立に、フッ素原子で置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環(縮合芳香環)、含窒素複素環からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0067】
Yは、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO2−、−SO−、−(CF2u−(uは1〜10の整数である)、−C(CF32−、直接結合からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0068】
Zは、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CH2l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0069】
11は、直接結合、−O(CH2p−、−O(CF2p−、−(CH2p−、−(CF2p−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す(pは、1〜12の整数を示す)。
【0070】
12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属原子、脂肪族炭化水素基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。ただし、上記式中に含まれる全てのR12およびR13のうち少なくとも1個は水素原子である。
【0071】
1は0〜4の整数、x2は1〜5の整数、aは0〜1の整数、b1およびb2は0〜3の整数を示す。
上記式(10)で表されるスルホン酸基を有する構成単位は、好ましくは下記式(11)で表される構造を有する。
【0072】
【化19】

式(11)中、Yは−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2l'−(l'は1〜10の整数である)、−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。このうち、−CO−、−SO2−が好ましい。
【0073】
Zは直接結合または、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。このうち直接結合、−O−が好ましい。
Arは−SO3Hまたは−O(CH2hSO3Hまたは−O(CF2hSO3Hで表される置換基(hは1〜12の整数を示す)を有する芳香族基を示す。
【0074】
芳香族基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらの基のうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。芳香族基は前記した−SO3Hまたは−O(CH2hSO3Hまたは−O(CF2hSO3Hで表される置換基で、少なくとも1個置換されていることが必要であり、ナフチル基である場合には2個以上置換していることが好ましい。
【0075】
cは0〜10、好ましくは0〜2の整数であり、dは0〜10、好ましくは0〜2の整数であり、kは1〜4の整数を示す。
c、dの値とY、Z、Arの構造についての好ましい組み合わせとして、
(1)c=0、d=0であり、Yは−CO−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(2)c=1、d=0であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(3)c=1、d=1、k=1であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(4)c=1、d=0であり、Yは−CO−であり、Arが置換基として2個の−SO3Hを有するナフチル基である構造、
(5)c=1、d=0であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−O(CH24SO3Hを有するフェニル基である構造などを挙げることができる。
【0076】
スルホン酸基を有する構成単位は、下記式(12a)によって表すこともできる。
【0077】
【化20】

上記式中、Ar11、Ar12、Ar13は、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい、ベンゼン環、縮合芳香環、含窒素複素環からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を有する2価の基を示す。
【0078】
Yは、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO2−、−SO−、−(CF2u−(uは1〜10の整数である)、−C(CF32−、または直接結合からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0079】
Zは、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CH2l−(lは1〜10の整数である)、−またはC(CH32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0080】
11は、直接結合、−O(CH2p−、−O(CF2p−、−(CH2p−、−または(CF2p−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す(pは、1〜12の整数を示す)。
【0081】
12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属原子、または脂肪族炭化水素基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。ただし、上記式中に含まれる全てのR12およびR13のうち少なくとも1個は水素原子である。
【0082】
1は、0〜4の整数。x2は、1〜5の整数。aは、0〜1の整数。bは、0〜3の整数を示す。
スルホン酸基を有する構成単位は、好ましくは、下記式(12)で表される繰り返し単位から構成される。
【0083】
【化21】

上記式中、Ar11、Ar12、Ar13は、各々独立に、フッ素原子で置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環(縮合芳香環)、含窒素複素環からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0084】
Yは、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO2−、−SO−、−(CF2u−(uは1〜10の整数である)、−C(CF32−、直接結合からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0085】
Zは、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CH2l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0086】
11は、直接結合、−O(CH2p−、−O(CF2p−、−(CH2p−、−(CF2p−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す(pは、1〜12の整数を示す)。
【0087】
12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属原子、脂肪族炭化水素基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。ただし、上記式中に含まれる全てのR12およびR13のうち少なくとも1個は水素原子である。
【0088】
1は0〜4の整数、x2は1〜5の整数、aは0〜1の整数、b1、b2は0〜3の整数を示す。
上記式(12)又は(12a)で表される繰り返し単位は、好ましくは、下記式(13)で表される構造を有する。
【0089】
【化22】

式(13)において、Y、Z、Ar、c、d、kについては前記式(11)と同一である。なお、各構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。
なお、前記式(8)および(11)のYおよびZは、同一のものであって異なるものであってもよい。
【0090】
スルホン化ポリアリーレン系共重合体
本発明のスルホン化ポリアリーレン系共重合体は、上記式(10)で表されるスルホン酸基を有する構成単位と、上記式(1)で表される縮合芳香族環構成単位とを含むことが特徴であり、下記式(14)又は下記式(14a)で表される重合体である。各構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。
【0091】
【化23】

上記式(14)中、Ar11、Ar12、Ar13、Y、R11、R12、x1、x2、aおよびb1,b2は、式(12)と同様である。Ar21、Ar22、Ar23、Ar24、A、B、D、r、sおよびtは、式(1)と同様である。x、yは、x+y=100モル%とした場合のモル比を示す。
【0092】
含窒素芳香族側鎖を含む場合、式(14)又は(14a)に式(7)で表される構造単位を含む。
【0093】
【化24】

上記式中、Ar11、Ar12、Ar13、Y、Z、R11、R12、R13、x1、x2、aおよびbは、式(12a)と同様である。Ar21、Ar22、Ar23、Ar24、A、B、D、r、sおよびtは、式(1)と同様である。x、yは、x+y=100モル%とした場合のモル比を示す。
【0094】
上記式(14)又は(14a)で表されるスルホン化ポリアリーレンは、好ましくは下記式(15)で表される構造を有する。
【0095】
【化25】

式(15)において、A、B、D、Y、Z、Ph、Ar、c、d、k、l、m、n、p、q、t、およびR1〜R20は、それぞれ上記式(2)、(13)中のA、B、D、Y、Z、Ph、Ar、a、b、c、d、k、l、m、n、p、q、s、t、およびR1〜R20と同義である。x、yはx+y=100モル%とした場合のモル比を示す。各構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。
【0096】
式(15)において、xは、0.5〜99.9モル%、好ましくは10〜99.5モル%であり、yは、0.1〜99.5モル%、好ましくは0.5〜89.5モル%である。
本発明に係る重合体のイオン交換容量は通常0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。イオン交換容量が0.3meq/g以上であれば、プロトン伝導度が高く、かつ発電性能の高いものが得られる。一方、5meq/g以下であれば、耐水性の低下を抑制でき、耐水性の高いものが得られる。
【0097】
上記のイオン交換容量は、縮合芳香族環構成単位、含窒素複素環基を有する構成単位およびスルホン酸基を有する構成単位の種類、使用割合、組み合わせを変えることにより、調整することができる。したがって重合時に各構成単位を誘導する前駆体(モノマー・オリゴマー)の仕込み量比、種類を変えれば調整することができる。
【0098】
概してスルホン酸基を有する構成単位が多くなるとイオン交換容量が増え、プロトン伝導性が高くなるが、耐水性が低下する。一方、スルホン酸基を有する構成単位が少なくなると、イオン交換容量が小さくなり、耐水性が高まるが、プロトン伝導性が低下する。
【0099】
上記式(15)の重合体は、式(7)で表される構成単位を含んでいてもよく、かかる構成単位を含んでいると、高温条件下でのスルホン酸基の安定性が向上し、その結果耐熱性が向上する。なお、含窒素複素環式芳香族化合物の窒素原子は、塩基性を有するため、スルホン酸基との間でイオン的な相互作用を形成する。これによって、スルホン酸基の安定性を高め、高温条件下でのスルホン酸基の脱離が抑制される。また、同様に高温条件下でスルホン酸基に由来するポリマー分子間の架橋反応をも抑制することができる。含窒素複素環式芳香族化合物は、プロトン伝導性を損なわず、これらの効果を発現できる適度な強さの塩基性を有する化合物である。また、式(13)で表される構成単位すなわちxの構成単位に対する、式(9)で表される構成単位のモル比は、0.001〜50であり、好ましくは、0.1〜30であり、さらに好ましくは、1〜25である。
【0100】
縮合芳香族環構成単位を含んでいると、分子量の調整や、上記各構成単位の含有量の調整などを行いやすくなるとともに、熱的、化学的に安定な重合体を得ることができる。縮合芳香族環構成単位を含むことにより、重合体に疎水部を付与することができるとともに、縮合芳香族環を有するので、前記重合体にメタノール耐性を付与することができる。
【0101】
本発明の重合体の分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。
このような重合体は、本出願人による、特開2008−163158号公報、特開2005−126391号公報、特開2004−346164号公報、特開2005−60484号公報、特開2005−82757号公報などに記載の方法で調製できる。
以下に具体的なポリアリーレンの製造方法について記載する。
【0102】
<ポリマーの製造方法>
本発明で使用されるスルホン酸基を有するポリアリーレンの製造には、例えば下記に示すA法、B法、C法の3通りの方法を用いることができる。
【0103】
(A法)
特開2004−137444号公報に記載の方法と同様に、下記式(16)で表されるモノマー(A)および必要に応じて下記式(24)で表されるモノマー(C)および下記式(18)で表されるモノマー(B)を共重合させ、スルホン酸エステル基を有する重合体を製造し、このスルホン酸エステル基を脱エステル化して、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することにより合成することができる。
【0104】
モノマー(A)
モノマー(A)は、スルホン酸基を有するモノマーであり、下記式(16)で表される。
【0105】
【化26】

式(16)で、Ar11、Ar12、Ar13は同一でも、異なっていてもよく、フッ素原子で置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環(複合縮合環)、含窒素複素環からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0106】
Xは、塩素、臭素、ヨウ素、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。Yは、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO2−、−SO−、−(CF2l−(lは1〜10の整数である)、−C(CF32−、直接結合からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。Zは、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CH2l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。R11は、直接結合、−O(CH2p−、−O(CF2p−、−(CH2p−、−(CF2p−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す(pは、1〜12の整数を示す)。
【0107】
12、R13は、水素原子、アルカリ金属原子、脂肪族炭化水素基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。ただし、上記式中に含まれる全てのR12およびR13のうち少なくとも1個は水素原子である。
【0108】
1は、0〜4の整数、x2は、1〜5の整数、aは、0〜1の整数、bは、0〜3の整数を示す。
上記式(16)で表されるモノマーは、好ましくは下記式(17)で表される構造を有する。
【0109】
【化27】

式(17)中、Xは塩素原子、臭素原子および−OSO2Rb(ここで、Rbはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を示す)から選ばれる原子または基を示す。
【0110】
Y,Zは式(16)と同じであり、Rは炭素数4〜12のアルキル基を示す。
cは0〜10、好ましくは0〜2の整数であり、dは0〜10、好ましくは0〜2の整数であり、kは1〜4の整数を示す。
【0111】
Arは−SO3Rまたは−O(CH2hSO3Rまたは−O(CF2hSO3Rで表される置換基(hは1〜12の整数を示す)を有する芳香族基を示す。
式(17)で表される化合物の具体的な例としては、下記式で表される化合物、特開2004−137444号公報、特開2004−345997号公報、特開2004−346163号公報に記載されているスルホン酸エステル類を挙げることができる。
【0112】
【化27−1】

【0113】
【化27−2】

式(17)で表される化合物において、スルホン酸エステル構造は、通常、芳香族環のメタ位に結合している。
【0114】
モノマー(B)
モノマー(B)は、縮合芳香族環構造を有するモノマーであり、下記式(18)で表される。
【0115】
【化28】

(式(18)中、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24は、ベンゼン環、ナフタレン環、含窒素複素環からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。ただし、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24は、その水素原子の一部又はまたはすべてが、フッ素原子、ニトロ基、ニトリル基、又はまたは水素原子の一部またはすべてがフッ素置換されていてもよいアルキル基、アリル基若しくはアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基で置換されていてもよい。
【0116】
Xは、塩素、臭素、ヨウ素、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【0117】
A、Dは独立に直接結合または、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CF2l−(lは1〜10の整数である)、−(CH2l−(lは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、
Bは独立に酸素原子または硫黄原子であり、
s、tは、それぞれ独立に、0〜4の整数を示し、rは、0または1以上の整数を示す。)
上記式(18)で表されるモノマーは、好ましくは下記式(19)で表される構造を有する。
【0118】
【化29】

式(19)中、A、B、D、Ph、R1〜R20、l、m、n、p、q、tは式(2)と同様である。
【0119】
Xはフッ素を除くハロゲン原子、−SO2CH3および−SO2CF3から選ばれる原子または基を示し、
Phはナフタレン基、アントラセン基、テトラセン基、ペンタセン基から選ばれる基が好ましい。
【0120】
式(19)で表される化合物は、さらには、下記式(20)で表される化合物が好ましい。
【0121】
【化30】

[式(20)中、A、D、Ph、R1〜R20、l、m、q、t、n、pは式(2)と同様である。Xは、フッ素を除くハロゲン原子から選ばれる原子を示す。
【0122】
さらに、このような化合物として、下記式(21)で表されるものが好ましい。
【0123】
【化31】

式(21)中、Xはフッ素を除くハロゲン原子から選ばれる原子を示す。D、P、Ph、q、m、t、n、pは式(19)と同様である。pが0.01〜1の範囲にあることが好ましい。
【0124】
上記式(18)で表される化合物は、例えば、次のような反応により合成することができる。
まず、下記式(22−1)で表されるビスフェノール類、必要に応じて式(22−2)で表されるビスフェノール類をアルカリ金属塩とする。
【0125】
【化32】

上記式(22−1)中、R9〜R20およびDは、式(18)と同様である。上記式(22−2)中、Phは、式(19)と同様である。
【0126】
このとき、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイドなどの誘電率の高い極性溶媒に溶解した後、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩などを加える。アルカリ金属はフェノールの水酸基に対し、過剰気味で反応させ、通常、1.1〜2倍当量、好ましくは1.2〜1.5倍当量で使用する。このとき、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソールなどの水と共沸する溶媒を共存させて、反応の進行を促進させることが好ましい。
【0127】
次いで、上記ビスフェノール類のアルカリ金属塩を下記式(23)で表されるジハロゲン化物と反応させる。
【0128】
【化33】

式(23)中、Halはハロゲン原子を示し、特にフッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0129】
式(22−1)で表されるビスフェノール類として、例えば、1,3−ビス[1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン(Bis−M)、1,4−ビス[1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3−(4−ヒドロキシベンゾイルベンゼン)、1,4−(4−ヒドロキシベンゾイルベンゼン)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、4,4'−イソプロピリデンビフェノール(Bis−A)2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(Bis−AF)、4,4'−ビスヒドロキシベンゾフェノン(4,4'−DHBP)、4,4'−ビスヒドロキシジフェニルスルホン(4,4'−DHDS)、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシビフェニル(4,4'−DHBP)、ビス(4―ヒドロキシフェニル)メタン、レゾルシノール(RES)、ヒドロキノン(HQ)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPFL)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCFL)、4,4'−イソプロピリデンビス(2−フェニルフェノール)、4,4'−シクロヘキシリデンビス(2−シクロヘキシルフェノール)などが挙げられる。なかでも1,3−ビス[1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン(Bis−M)、1,4−ビス[1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(Bis−AF)、レゾルシノール(RES)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPFL)が好ましい。これらのビスフェノール類は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。
【0130】
また、式(22−2)で表されるビスフェノール類として、例えば、1,5−ジヒドロキシナフタレン(1,5−NAP)、1,6−ジヒドロキシナフタレン(1,6−NAP)、1,7−ジヒドロキシナフタレン(1,7−NAP)、2,6−ジヒドロキシナフタレン(2,6−NAP)、2,7−ジヒドロキシナフタレン(2,7−NAP)、2,3−ジヒドロキシナフタレン(2,3−NAP)などが挙げられる。なかでも、2,7−ジヒドロキシナフタレン(2,7−NAP)、1,5−ジヒドロキシナフタレン(1,5−NAP)、1,6−ジヒドロキシナフタレン(1,6−NAP)、1,7−ジヒドロキシナフタレン(1,7−NAP)が好ましい。これらのビスフェノール類は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。
【0131】
式(23)で表されるジハロゲン化物として、例えば、4,4'−ジクロロベンゾフェノン(4,4'−DCBP)、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン(4,4'−DFBP)、4−クロロ−4'−フルオロベンゾフェノン、2−クロロ−4'−フルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン(4,4'−DCDS)、4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン(4,4'−DFDS)、2,6−ジニトロベンゾニトリル、2,5−ジニトロベンゾニトリル、2,4−ジニトロベンゾニトリル、2,6−ジクロロベンゾニトリル(2,6−DCBN)、2,5−ジクロロベンゾニトリル(2,5−DCBN)、2,4−ジクロロベンゾニトリル(2,4−DBN)、2,6−ジフルオロベンゾニトリル(2,6−DFBN)、2,5−ジフルオロベンゾニトリル(2,5−DFBN)、2,4−ジフルオロベンゾニトリル(2,4−DFBN)などが挙げられる。
これらのビスフェノール類は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。
【0132】
上記ジハロゲン化物は、ビスフェノールに対し1.0001〜3倍モル、好ましくは1.001〜2倍モルの量で用いられる。また両末端が塩素原子となるように、反応終了後に、例えば、ジクロロ化合物を過剰に加えてさらに反応させてもよい。ジフルオロ化合物やジニトロ化合物を用いた場合には、両末端が塩素原子となるよう、反応後半時にジクロロ化合物を添加する方法などを用いる工夫が必要である。
【0133】
これらの反応は、反応温度が60℃〜300℃、好ましくは80℃〜250℃の範囲で、反応時間が15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間の範囲で行われる。
得られた化合物はオリゴマーないしポリマーであるが、これらはポリマーの一般的な精製方法、例えば、溶解−沈殿の操作によって精製することができる。分子量の調整は、過剰の芳香族ジクロライドとビスフェノールとの反応モル比によって行う。芳香族ジクロライドが過剰にあるため、得られる化合物の分子末端は、芳香族クロライドになっている。
【0134】
上記の方法で合成される芳香族化合物の具体的な構造として、例えば以下のものを挙げることができる。
【0135】
【化34−1】

【0136】
【化34−2】

【0137】
【化35】

上記式中、n、pおよびqは、式(19)と同様である。
【0138】
以下は、n=0であり、2種類以上の式(22−2)の化合物を用いて構成される芳香族化合物の具体例を示す。
【0139】
【化36】

【0140】
【化37】

(上記式中、p1、p2は各構成単位の組成比を示し、p1は0から1の値のうち0以外の値をとり、p1+p2=1である。)
以下は、n=0であり、1種類の式(22−2)の化合物を用いて構成される芳香族化合物の具体例を示す。
【0141】
【化38】

【0142】
【化39】

上記式中、pおよびqは、式(19)と同様である。
【0143】
これらの芳香族化合物のなかでも、(22−2)の化合物として、2,7−ジヒドロキシナフタレン(2,7−NAP)、1,5−ジヒドロキシナフタレン(1,5−NAP)、1,6−ジヒドロキシナフタレン(1,6−NAP)、(1−1)の化合物として、1,3−ビス[1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン(Bis−M)、1,4−ビス[1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(Bis−AF)、レゾルシノール(RES)から合成される該化合物が好ましい。
【0144】
上記式中のn、pの比を変えることにより、ポリマーのガラス転移温度を調整することができる。なかでもポリマー加工性の観点から、p=0.1〜1の値をとる化合物が好ましい。
【0145】
モノマー(C)
モノマー(C)は、含窒素複素環構造を有するモノマーであり、下記式(24)で表される。
【0146】
【化40】

Xは塩素原子または臭素原子、−OSO2Rb(ここで、Rbはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を示す)から選ばれる原子または基を示す。
【0147】
W、V、Ar9、Ar10、R21、eおよびfは前記式(7)と同様である。
具体的には、下記式(25)で表される。
【0148】
【化41】

X、W、V、R21、eおよびfは前記式(24)と同様である。
【0149】
モノマー(C)の具体例として、下記の化合物を挙げることができる。
【0150】
【化42】

【0151】
【化43】

さらに、塩素原子が臭素原子に置き換わった化合物、塩素原子や臭素原子の結合位置の異なる異性体を挙げることができる。また−CO−結合が、−SO2−結合に置き換わった化合物を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0152】
モノマー(C)を合成する方法としては、例えば下記式(26)で表される化合物と、含窒素複素環化合物とを、求核置換反応させる方法を挙げることができる。
【0153】
【化44】

式中、X、W、eおよびfは、式(24)および(25)で示した定義と同一である。
X'はハロゲン原子を示し、具体的にはフッ素原子または塩素原子であることが好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0154】
式(26)で表される化合物の具体例としては、2,4−ジクロロ−4'−フルオロベンゾフェノン、2,5−ジクロロ−4'−フルオロベンゾフェノン、2,6−ジクロロ−4'−フルオロベンゾフェノン、2,4−ジクロロ−2'−フルオロベンゾフェノン、2,5−ジクロロ−2'−フルオロベンゾフェノン、2,6−ジクロロ−2'−フルオロベンゾフェノン、2,4−ジクロロフェニル−4'−フルオロフェニルスルホン、2,5−ジクロロフェニル−4'−フルオロフェニルスルホン、2,6−ジクロロフェニル−4'−フルオロフェニルスルホン、2,4−ジクロロフェニル−2'−フルオロフェニルスルホン、2,4−ジクロロフェニル−2'−フルオロフェニルスルホン、2,4−ジクロロフェニル−2'−フルオロフェニルスルホン。これらの化合物のうち2,5−ジクロロ−4'−フルオロベンゾフェノンが好ましい。
【0155】
含窒素複素環化合物は、活性水素を有するものであり、この活性水素と式(26)で表される化合物のX'で表される基を置換反応させる。
活性水素を有する含窒素複素環化合物としては、ピロール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、1,3,5−トリアジン、ピリミジン、ピリタジン、ピラジン、インドール、キノリン、イソキノリン、ブリン、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラゾール、テトラジン、トリアゾール、カルバゾール、アクリジン、キノキサリン、キナゾリン、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシキノリン、8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシピリミジン、2−メルカプトピリジン、3−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン、2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトベンズチアゾールなどを挙げることができる。
【0156】
これらの化合物のうち、ピロール、イミダゾール、インドール、カルバゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾールが好ましい。
式(26)で表される化合物と活性水素を有する含窒素複素環化合物との反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒を用いる。反応を促進するために、アルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩などを用いる。式(26)で表される化合物と、活性水素を有する含窒素複素環化合物との比率は、等モルもしくは活性水素を有する含窒素複素環化合物を過剰に加えて反応させる。具体的には、活性水素を有する含窒素複素環化合物は式(26)で表される化合物の1〜3倍モル、特に1〜1.5倍モル使用することが好ましい。
【0157】
反応温度は0℃〜300℃で、10℃〜200℃が好ましい。反応時間は15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間である。
生成物は再結晶などの方法で精製して用いることが好ましい。
【0158】
重合
本発明の重合体を得るためはまず上記各種モノマーを共重合させ、前駆体を得る。
この共重合は、触媒の存在下に行われるが、この際使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、(1)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに(2)還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、遷移金属塩以外の塩を添加してもよい。
【0159】
これらの触媒成分の具体例、各成分の使用割合、反応溶媒、濃度、温度、時間等の重合条件としては、特開2001−342241号公報に記載の化合物および条件を採用することができる。
【0160】
たとえば、遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケルなどが好適に使用され、また、配位子となる化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、2,2′−ビピリジンなどが好適に使用される。さらに、あらかじめ配位子が配位された遷移金属(塩)としては、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2′ビピリジン)が好適に使用される。還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどを挙げることできるが、亜鉛、マグネシウム、マンガンが好ましい。「塩」としては、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
【0161】
反応には重合溶媒を使用してもよく、具体的には、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドンなどが好適に使用される。
【0162】
触媒系における各成分の使用割合は、遷移金属塩または配位子が配位された遷移金属(塩)が、モノマーの総計1モルに対し、通常、0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。この範囲にあれば、触媒活性が高く、また分子量も高く重合することが可能である。触媒系に遷移金属塩以外の塩を使用する場合、その使用割合は、モノマーの総計1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。かかる範囲であれば、重合速度を上げる効果が充分となる。重合溶媒中におけるモノマーの総計の濃度は、通常、1〜90質量%、好ましくは5〜40質量%である。
また、本発明の重合体を重合する際の重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜100℃である。また、重合時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
【0163】
次いで、得られた重合体を加水分解して、構成単位中のスルホン酸エステル基(−SO3R)をスルホン酸基(−SO3H)に転換する。
加水分解は、(1)少量の塩酸を含む過剰量の水またはアルコールに、上記スルホン酸エステル基を有する重合体を投入し、5分間以上撹拌する方法、(2)トリフルオロ酢酸中で上記スルホン酸エステル基を有する重合体を80〜120℃程度の温度で5〜10時間程度反応させる方法、(3)重合体中のスルホン酸エステル基(−SO3R)1モルに対して1〜3倍モルのリチウムブロマイドを含む溶液、例えばN−メチルピロリドンなどの溶液中で上記スルホン酸エステル基を有する重合体を80〜150℃程度の温度で3〜10時間程度反応させた後、塩酸を添加する方法などにより行うことができる。
【0164】
(B)法
上記方法以外にも、例えば、特開2001−342241号公報に記載の方法と同様に、上記式(16)で表される骨格を有し、かつスルホン酸基、スルホン酸エステル基を有しないモノマーと、上記モノマー(18)と、上記モノマー(24)を共重合させ、この重合体を、スルホン化剤を用いて、スルホン化することにより合成することもできる(これをB法という)。
【0165】
B法において用いることのできる、上記式(10)で表される構成単位となりうるスルホン酸基、またはスルホン酸エステル基を有しないモノマーの具体的な例として、特開2001−342241号公報、特開2002−293889号公報に記載されているジハロゲン化物を挙げることができる。
【0166】
(C)法
また上記方法以外に、式(16)において、Arが−O(CH2hSO3Hまたは−O(CF2hSO3Hで表される置換基を有する芳香族基である場合には、例えば、特開2005−606254号公報に記載の方法と同様に、上記式(16)で表されるモノマーと、上記式(18)で表されるモノマーまたはオリゴマーと、上記式(24)で表されるモノマーを共重合させ、次にアルキルスルホン酸またはフッ素置換されたアルキルスルホン酸を導入する方法で合成することもできる(これをC法という)。
【0167】
(C法)において用いることのできる、上記式(16)で表されるモノマーの具体的な例として、特開2005−36125号公報に記載されているジハロゲン化物を挙げることができる。具体的には、2,5−ジクロロ−4'−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジクロロ−4'−ヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジクロロ−4'−ヒドロキシベンゾフェノン、2,5−ジクロロ−2',4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジクロロ−2',4'−ジヒドロキシベンゾフェノンをあげることができる。またこれらの化合物のヒドロキシル基をテトラヒドロピラニル基などで保護した化合物をあげることができる。またヒドロキシル基がチオール基にかわったもの、塩素原子が、臭素原子、ヨウ素原子におきかわったものもあげることができる。
【0168】
(C法)では、重合体(スルホン酸基を有さない)に、特開2005−60625号公報に記載の方法で、アルキルスルホン酸基を導入する。例えば、前駆体の重合体のヒドロキシル基と、プロパンスルトン、ブタンスルトンなどを反応させることで導入することができる。
【0169】
プロトン伝導膜
本発明のプロトン伝導膜は、上記ポリアリーレン系重合体ポリアリーレン系共重合体100質量部と有機溶剤20〜50質量部とを含有するポリマー膜を二軸延伸処理した後に有機溶剤を除去して得られる。
【0170】
具体的には、本発明のプロトン伝導膜は以下のようにして製造される。
上記ポリアリーレン共重合体を有機溶剤に溶解してポリマー溶液とした後、基材上に膜状に成形してプロトン伝導膜の前段の未延伸フィルムを作製する。
【0171】
上記ポリマー溶液を膜状に成形する方法としては特に限定されず、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法などの基材を用いない方法が挙げられる。
また、上記ポリマー溶液を基材に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ダイス、コーター、スプレー、ハケ、ロールスピンコート、ディッピングなどの手段を用いて塗布することができる。なお、塗布の繰り返しによりフィルムの厚みや表面平滑性などを制御してもよい。
【0172】
本発明で使用することができる基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ナイロン6フィルム、ナイロン6,6フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルムなどが挙げられ、好ましくはPETフィルムである。
【0173】
基材としてPETフィルムを使用する場合には、表面処理されていないものを使用することが好ましいが、表面処理されたフィルムを使用してもよい。前記表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、例えば、アクリル系樹脂またはスルホン酸塩基含有樹脂をコーテイングまたはラミネートにより積層する方法、あるいは、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法などが挙げられる。また、他の表面処理の方法としては、一般的に行われている離型処理、例えば、シリコン系化合物をコーティングする方法などが挙げられる。
【0174】
また、この基材となるフィルムの厚みは、通常25〜250μm、好ましくは50〜200μmである。25μm未満であると基材の剛性が不十分でプロトン伝導膜が均一とならないことがあり、250μmを超えると乾燥時の熱伝導が悪く十分な乾燥ができないことがある。
【0175】
本発明でポリアリーレン系重合体を溶解するために用いられる有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルアミルケトン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、クロロホルム、塩化メチレンなどを挙げることができる。これらの中では、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、エチルカルビトール、メチルカルビトールが好ましい。上記有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0176】
ポリアリーレン系重合体が溶解した組成物中のポリアリーレン系共重合体の割合は、組成物全体に対して、通常5〜20質量%、好ましくは10〜16質量%である。この範囲の割合であれば、基材を使用しない方法でも、使用する方法でも、均一な、強度のある未延伸フィルムを成膜できる。5質量%未満では、充分な厚さの未延伸フィルムが得られないことがあり、一方、20質量%を超えると、充分に流延せず、均一な未延伸フィルムが得られないことがある。
【0177】
また、本発明に用いられる組成物の室温での粘度は、通常は3000〜10000mPa・s、好ましくは4000〜6000mPa・sである。3000mPa・s未満では、膜形成が困難であり、一方、10000mPa・sを超えると、充分に流延せず、均一な塗膜が得られないことがある。
【0178】
なお、本発明に用いられる組成物は、ポリアリーレン系重合体と有機溶剤とを主成分とするが、必要に応じて添加剤、例えばレベリング剤、シランカップリング剤などを添加することができる。
【0179】
レベリング剤としては、一般的に使用されているレベリング剤であれば何れも使用できるが、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが使用できる。
【0180】
本発明では、成膜後の未延伸フィルムから有機溶剤の一部を除去して該有機溶剤量をポリアリーレン系共重合体100質量部に対して20〜50質量部とした後、基材を剥離除去して、ポリマー膜を二軸延伸する。なお、具体的には未延伸フィルム中の有機溶剤の割合を好ましくは25〜45質量部、より好ましくは25〜35質量部とする。このように、延伸前の膜に有機溶剤を特定の範囲で残存させることによって、延伸をスムーズに行なうことができ、強度的性質(強度、弾性率)が向上し、また、加熱時の寸法安定性に優れたプロトン伝導膜が得られ、燃料電池に使用したときに皺の発生を少なくできる。なお、有機溶剤の含有量は、400MHz 1H−NMRにより約2.18ppm付近に出現するNMPのプロトンの吸収から算出した。
【0181】
有機溶剤量のコントロール方法としては特に制限されないが、たとえば未延伸フィルムを予備乾燥することが望ましい。前記予備乾燥は一般的に用いられる方法、例えば多数のローラーを介して乾燥炉中を通過させる方法等で実施できるが、予備乾燥工程において、有機溶剤の蒸発に伴い気泡が発生すると、プロトン伝導膜の特性が著しく低下することがある。そのため、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程での温度あるいは風量を制御することが好ましい。各工程は、例えば、30〜200℃、好ましくは50〜180℃で、10〜180分、好ましくは15〜60分間の条件で乾燥すればよい。なお、未延伸フィルム中の有機溶剤の残存量が前記範囲にあれば、かかる予備乾燥処理は行わなくとも良い。
【0182】
なお、基材表面に組成物を塗布する場合、延伸時には基材ごと延伸してもよく、基材を取り除いてから延伸してもよい。好適には、あらかじめ基材を取り除いておくことが望ましい。
【0183】
上記非プロトン系極性溶剤とアルコールとの混合物を用いる場合には、有機溶剤の全量を100質量%として、非プロトン系極性溶剤が95〜25質量%、好ましくは90〜25質量%であり、アルコールが5〜75質量%、好ましくは10〜75質量%である。アルコールの量が上記範囲内にあることにより、溶液粘度を下げる効果に優れる。
【0184】
また、上記アルコールの他に、硫酸、リン酸などの無機酸、カルボン酸を含む有機酸、適量の水などを併用してもよい。
製膜する際の溶液のポリマー濃度は、通常5〜40質量%、好ましくは7〜25質量%である。ポリマー濃度が5質量%未満では、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい傾向にある。一方、ポリマー濃度が40質量%を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、表面平滑性に欠けることがある。
【0185】
本発明における延伸加工は、公知の二軸延伸法により行うことができる。また枚葉で行う場合には膜周囲の端部をチャックにより固定しチャック部を各方向に移動させることにより二軸延伸を行うことができる。
【0186】
二軸延伸法の場合、2方向同時に延伸を行う方法、または一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する方法がある。この時、延伸後の膜の強度を制御するための2つの延伸軸の交わり角度は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよく、通常1〜5,000%/分、好ましくは50〜1,000%/分、より好ましくは100〜1,000%/分、特に好ましくは100〜500%/分である。
【0187】
延伸倍率は、所望の特性に応じて決定されるが、通常1.01〜5倍、好ましくは1.03〜3倍、より好ましくは1.05〜1.75倍である。延伸倍率が1.01倍未満では、得られる膜の機械的強度が充分に向上せず、一方、5倍を超えると、均質な配向が難しくなる。なお、本明細書において延伸倍率とは、延伸前後における1軸延伸方向の長さ比率をいう。通常、二軸延伸は2軸の各軸方向に同一の延伸倍率で行うが、軸方向によって延伸倍率が異なっていてもよい。以下、単一の延伸倍率で表す場合は各軸方向に同一の延伸倍率で延伸したものである。
【0188】
上述したように膜中に有機溶剤を残存させた状態で延伸することにより、高い延伸比を達成し、成分[A]の分子鎖の配列が均質に延伸方向に揃うとともに、膜の延伸による損傷がなくなる。
【0189】
二軸延伸処理の行った後に、有機溶剤を除去する。有機溶剤を除去する方法としては、特に限定されないが、下記の方法を用いることができる。
延伸したポリマー膜を、50〜200℃、好ましくは60〜180℃、より好ましくは80〜160℃で、0.01〜10時間、好ましくは0.1〜5時間ヒートセット(加熱後処理)する。
【0190】
なお、この加熱後処理の雰囲気圧力は、常圧から真空の範囲、好ましくは300mmHg〜0.1mmHgである。減圧下に加熱後処理することにより、より低い温度、かつ、より短時間で有機溶剤を完全に揮発させることができる。
【0191】
別の方法としては、下記のように延伸後のフィルムを純水中につける方法も行うことができる。
延伸したポリマー膜(以下、未乾燥フィルムともいう。)を水に浸漬すると、未乾燥フィルム中の有機溶剤を水と置換することができる。なお、水に浸漬する前に、予備乾燥してもよい。予備乾燥は、未乾燥フィルムを、通常50〜150℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行われる。
【0192】
未乾燥フィルム(予備乾燥後のフィルムも含む。以下同じ。)を水に浸漬する際は、枚葉を水に浸漬するバッチ方式でもよく、基板フィルム(たとえば、PET)上に成膜された状態の積層フィルムのまま、または基板から分離した膜を水に浸漬させて、巻き取っていく連続方式でもよい。また、バッチ方式の場合は、処理後のフィルム表面に皺が形成されるのを抑制するために、未乾燥フィルムを枠にはめるなどの方法で、水に浸漬させることが好ましい。
【0193】
未乾燥フィルムを水に浸漬する際の水の使用量は、未乾燥フィルム1質量部に対して、10質量部以上、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上の割合である。水の使用量が上記範囲であれば、得られるプロトン伝導膜の残存溶媒量を少なくすることができる。また、浸漬に使用する水を交換したり、オーバーフローさせたりして、常に水中の有機溶剤濃度を一定濃度以下に維持しておくことも、得られるプロトン伝導膜の残存溶媒量を低減することに有効である。さらに、プロトン伝導膜中に残存する有機溶剤量の面内分布を小さく抑えるためには、水中の有機溶剤濃度を撹拌等によって均質化させることが効果的である。
【0194】
未乾燥フィルムを水に浸漬する際の水の温度は、置換速度および取り扱いやすさの点から、通常5〜80℃、好ましくは10〜60℃の範囲である。高温ほど、有機溶剤と水との置換速度は速くなるが、フィルムの吸水量も大きくなるので、乾燥後に得られるプロトン伝導膜の表面状態が悪化することがある。また、フィルムの浸漬時間は、初期の残存溶媒量、水の使用量および処理温度にもよるが、通常10分〜240時間、好ましくは30分〜100時間の範囲である。
【0195】
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後、フィルムを30〜100℃、好ましくは50〜80℃で、10〜180分、好ましくは15〜60分乾燥し、次いで、50〜150℃で、好ましくは500mmHg〜0.1mmHgの減圧下において、0.5〜24時間真空乾燥することにより、プロトン伝導膜を得ることができる。
【0196】
上記のようにして得られたプロトン伝導膜の残存溶媒量は、通常5質量%以下、好ましくは1質量%以下にまで低減される。
本発明の製造方法により得られるプロトン伝導膜の厚さは、通常は15〜50μm、好ましくは25〜45μm、より好ましくは35〜40μmである。フィルムの厚みが薄いと、実質的にハンドリングが困難となり、厚すぎても、プロトン伝導性が低下することがある。
【0197】
本発明の製造方法により得られるプロトン伝導膜の厚み分布は、厚みの平均値に対して通常±30%以内、好ましくは±20%以内、より好ましくは±15%以内、特に好ましくは±10%以内である。かかる厚み制御を実施することにより、延伸配向した際の強度ムラを防ぐことができる。
【0198】
本発明の方法により得られるプロトン伝導膜 は、フィルムの強度的性質(強度、弾性率)が向上し、また加熱時の寸法安定性に優れている(収縮が抑えられる)。
したがって、本発明から得られるプロトン伝導膜を固体高分子電解質型燃料電池に用いると、長時間使用した場合においてもプロトン伝導膜としての特性を損なうことなく、広い温度範囲にわたって高いプロントン伝導性を有するため、長時間にわたり電力が低下することなく、長寿命の燃料電池を得ることができる。
【0199】
[膜−電極接合体]
本発明にかかる膜−電極接合体は、前記プロトン伝導膜と、触媒層と、ガス拡散層とを備えた膜−電極接合体である。典型的には、前記プロトン伝導膜を挟んで一方にはカソード電極用の触媒層と他方にはアノード電極用の触媒層が設けられており、さらにカソード側およびアノード側の各触媒層のプロトン伝導膜と反対側に接して、カソード側およびアノード側にそれぞれガス拡散層が設けられている。
【0200】
ガス拡散層、触媒層として、公知のものを特に制限なく使用可能である。
具体的にガス拡散層は、多孔性基材又は多孔性基材と微多孔層の積層構造体からなる。ガス拡散層が多孔性基材と微多孔層の積層構造体からなる場合には、微多孔層が触媒層に接して設けられる。カソード側およびアノード側のガス拡散層は、撥水性を付与するために含フッ素重合体を含んでいることが好ましい。
【0201】
触媒層は、触媒、イオン交換樹脂電解質から構成される。触媒としては、白金、パラジウム、金、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属触媒が好ましく用いられる。また、貴金属触媒は、合金や混合物などのように、2種以上の元素が含まれるものであってもよい。このような貴金属触媒は、通常、高比表面積カーボン微粒子に担持したものを用いることができる。
【0202】
イオン交換樹脂電解質は、前記触媒を担持したカーボンを結着させるバインダー成分として働くとともに、燃料極では触媒上の反応によって発生したイオンをプロトン伝導膜へ効率的に供給し、また、空気極ではプロトン伝導膜から供給されたイオンを触媒へ効率的に供給する。
【0203】
本発明で用いられる触媒層のイオン交換樹脂としては、触媒層内のプロトン伝導性を向上させるためにプロトン交換基を有するポリマーが好ましい。このようなポリマーに含まれるプロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などがあるが特に限定されるものではない。また、このようなプロトン交換基を有するポリマーも、特に限定されることなく選ばれるが、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるプロトン交換基を有するポリマーや、スルホン化ポリアリーレンなどが好ましく用いられる。また、上記のプロトン伝導膜を構成するスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体をイオン交換性樹脂として使用してもよく、さらにプロトン交換基を有するフッ素原子を含むポリマーや、エチレンやスチレンなどから得られる他のポリマー、これらの共重合体やブレンドであっても構わない。このようなイオン交換樹脂電解質は、公知のものを特に制限なく使用可能であり、たとえばNafion(DuPont社、登録商標)やスルホン化ポリアリーレン等を特に制限なく使用できる。
【0204】
本発明で用いられる触媒層に必要に応じてさらに、炭素繊維、イオン交換基を有しない樹脂を用いてもよい。これらの樹脂としては撥水性の高い樹脂であることが好ましい。例えば含フッ素共重合体、シランカップリング剤、シリコーン樹脂、ワックス、ポリホスファゼンなどを挙げることができるが、好ましくは含フッ素共重合体である。
【0205】
[燃料電池]
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、前記膜−電極接合体を含むことを特徴としている。具体的には、少なくとも一つ以上の膜−電極接合体及びその両側に位置するセパレータを含む少なくとも一つの電気発生部;燃料を前記電気発生部に供給する燃料供給部;及び酸化剤を前記電気発生部に供給する酸化剤供給部を含む固体高分子型燃料電池であって、膜−電極接合体が上記記載のものであることを特徴とする。
【0206】
本発明の電池に用いられるセパレーターとしては、通常の燃料電池に用いられるものを用いることができる。具体的にはカーボンタイプのもの、金属タイプのものなどを用いることができる。
【0207】
また、燃料電池を構成する部材としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能である。本発明の電池は単セルで用いることもできるし、複数の単セルを直列に繋いだスタックとして用いることもできる。スタックの方法としては公知のものを用いることができる。具体的には単セルを平面状に並べた平面スタッキング、及び燃料または酸化剤の流路がセパレーターの裏表面にそれぞれ形成されているセパレーターを介して単セルを積み重ねるバイポーラースタッキングを用いることができる。
【0208】
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0209】
<電極ペーストの調製>
50mlのポリボトルに直径5mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製「YTZボール」)25gを入れ、白金担持カーボン粒子(Pt:46質量%担持、田中貴金属工業株式会社製「TEC10E50E」)1.51g、蒸留水0.88g、n−プロピルアルコール12.47gおよびナフィオン(商品名、デュポン社製)の20質量%溶液4.59gを加え、ペイントシェーカーで60分間攪拌することにより、電極ペーストを得た。
【0210】
<電極の製造>
上記の様に調製した高分子電解質膜の片面に、5cm×5cmの開口を有するマスクを用いて上記電極ペーストをドクターブレードにて塗布し、また上記電極ペーストを塗布していない面に、5cm×5cmの開口を有するマスクを用いて、ドクターブレードにて上記電極ペーストを塗布した。これを120℃で60分間乾燥後、各電極触媒層の触媒塗布量は0.50mg/cm2であった。
【0211】
<ガス拡散層の作製>
(1)多孔性基材の作製
多孔性基材としてカーボンペーパー(商品名:TGPH−060、東レ株式会社製)を5cm×5cmのサイズに切断し、これを30mlの1.2質量%ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子分散水溶液に5分間浸漬させた後、75℃の乾燥炉にて15分間乾燥させた。この基材を370℃の電気炉にて1時間焼成させ、アノードおよびカソード用撥水剤コート多孔性基材を作製した。
【0212】
(2)微多孔層の形成
炭素粒子(商品名:バルカンXC−72、キャボット社製)2.4g、60質量%ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子分散水溶液6.2g、蒸留水104.9g、分散剤(商品名:TRITONX−100、シグマ−アルドリッチ社製)10.3gを混合させ、この混合物を均一になるまで遊星ボールミル(商品名:P−5、フリッチュ社製)を使用して攪拌し、アノード用微多孔層形成用ペーストを調製した。このペーストを微多孔層の重量が1.0mg/cm2となるようにアプリケーターを使用して均一に塗布した後、75℃の乾燥炉にて30分間乾燥させ、微多孔層付き撥水剤コート多孔性基材を作製した。
【0213】
<燃料電池の作製>
上記電極触媒層が両面に形成された電解質膜を、2枚のガス拡散層で挟み、圧力60kg/cm2下、160℃×20minの条件でホットプレス成形して、膜−電極接合体を作製した。得られた電極−膜接合体を2枚のチタン製の集電体で挟み、さらにその外側にヒーターを配置し、有効面積25cm2の評価用燃料電池を作製した。
【0214】
<乾湿サイクル耐久評価>
(1)乾湿サイクル試験
燃料電池の温度を70℃に保ち、アノード極とカソード極ともに、相対湿度100%を10分間、相対湿度0%(乾燥窒素ガスの相対湿度である)を40分間の条件を1サイクルとして、窒素を大気圧供給し、10サイクル毎に水素クロスオーバー量を測定し、乾湿サイクル評価前の水素クロスオーバー量の10倍以上になるサイクル数まで試験を継続した。
【0215】
(2)水素クロスオーバー量測定
燃料電池の温度を70℃に保ち、アノード極とカソード極に、相対湿度100%の条件で、アノード極に水素、カソード極に窒素を大気圧供給し、電圧0.4Vで1時間保持した際の酸化電流の平均値から水素クロスオーバー量を算出した。
【0216】
<プロトン伝導度の測定>
得られたプロトン伝導膜を5mm幅の短冊状膜試料に加工し、かかる試料表面に、白金線(直径0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から交流抵抗を求めた。すなわち、85℃、相対湿度90%の環境下で交流10kHzにおけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置として、(株)NF回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを用い、恒温恒湿装置には、(株)ヤマト科学製のJW241を使用した。白金線は、5mm間隔に5本押し当てて、線間距離を5〜20mmに変化させ、交流インピーダンスを測定した。交流インピーダンスから、各抵抗線間勾配を測定し、線間距離と抵抗線間勾配から膜の比抵抗を算出し、比抵抗の逆数および膜厚から、プロトン伝導率を算出した。
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
【0217】
[合成例1]:疎水性ユニットDの合成
撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1lの三つ口のフラスコに、2,6−ジクロロベンゾニトリル49.4g(0.29mol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン88.4g(0.26mol)、炭酸カリウム47.3g(0.34mol)をはかりとった。窒素置換後、スルホラン346ml、トルエン173mlを加えて攪拌した。フラスコをオイルバスにつけ、150℃に加熱還流させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean−Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を徐々に上げながら大部分のトルエンを除去した後、200℃で3時間反応を続けた。次に、2,6−ジクロロベンゾニトリル12.3g(0.072mol)を加え、さらに5時間反応した。
【0218】
得られた反応液を放冷後、トルエン100mlを加えて希釈した。副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を2lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、テトラヒドロフラン250mlに溶解した。これをメタノール2lに再沈殿し、目的の化合物107gを得た。
【0219】
得られた目的の化合物のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は7300であった。得られた化合物は構造式D−1で表されるオリゴマーであった。
【0220】
【化45】

[合成例2]:ポリアリーレン系共重合体の合成
乾燥したN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)540mlを、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル135.0g(0.336mol)と、合成例1で合成した疎水性ユニットD40.7g(5.6mmol)、2,5−ジクロロ−4'−(1−イミダゾリル)ベンゾフェノン6.71g(16.8mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド6.71g(10.3mmol)、トリフェニルホスフィン35.9g(0.137mol)、ヨウ化ナトリウム1.54g(10.3mmol)、亜鉛53.7g(0.821mol)の混合物中に窒素下で加えた。
【0221】
反応系を撹拌下に加熱し(最終的には79℃まで加温)、3時間反応させた。反応途中で系中の粘度上昇が観察された。重合反応溶液をDMAc730mlで希釈し、30分撹拌し、セライトを濾過助剤に用い、濾過した。
【0222】
濾液の一部をメタノールに注ぎ、凝固させた。ネオペンチル基で保護されたスルホン酸誘導体からなる共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量は、Mn=58,000、Mw=135,300であった。
【0223】
前記濾液をエバポレーターで濃縮し、濾液に臭化リチウム43.8g(0.505mol)を加え、内温110℃で7時間、窒素雰囲気下で反応させた。反応後、室温まで冷却し、アセトン4lに注ぎ、凝固した。凝固物を濾集、風乾後、ミキサーで粉砕し、1N塩酸1500mlで攪拌しながら洗浄を行った。濾過後、生成物は洗浄液のpHが5以上となるまで、イオン交換水で洗浄後、80℃で一晩乾燥し、目的のポリアリーレン系共重合体23.0gを得た。この脱保護後のポリアリーレン系共重合体の分子量は、Mn=60,000、Mw=175,000であった。このポリマーのイオン交換容量は2.4meq/gであった。得られたポリアリーレン系共重合体D−N1は、構造式D−2で表される化合物である。
【0224】
【化46】

[実施例1]
合成例2で得られたポリアリーレン共重合体130g を、メタノール218gおよびNMP652gの混合溶媒に溶解させ、濃度13質量%(室温での溶液粘度は7,000mPa・s)の組成物を調製した。この溶液を井上金属工業製INVEXラボコーターを用い、表面処理のされていない厚さ125μmのPETフィルム(帝人デュポン(株)製、テトロンHSL−125)に塗布した。これを予備乾燥として80℃で乾燥後、さらに140℃で乾燥し、PETフィルムのまま20cm角に打ち抜いた。それからPETフィルムを剥離除去して、乾燥後のフィルム厚みが45μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムの残留溶剤を、400MHz1H−NMRを用いて測定したところ、31.5質量%であった。
【0225】
得られた未延伸フィルムを、二軸延伸機((株)東洋精機製作所製、×6H−S型)を用いて140℃で第1軸方向に1.2倍に延伸した。この際、延伸状態で140℃で60分間熱処理した。膜厚を確認したところ25μmであった。さらに140℃で第1軸と直交する第2軸方向に延伸倍率1.2倍に延伸した。この際、延伸状態で140℃で1分熱処理した。得られたプロトン伝導膜の膜厚を確認したところ38μmであった。
【0226】
得られたプロトン伝導膜を用いて膜電極複合体および燃料電池を製造し、乾湿サイクル耐久評価を行ったところ、耐久試験前のプロトン伝導率は、0.34S/cm、水素クロスオーバー量は、15mmol/h/cm2であったのに対して、乾湿サイクル試験で200回後の水素クロスオーバー量は、23mmol/h/cm2であり、乾湿サイクル評価前の水素クロスオーバー量の10倍未満であった。乾湿サイクル試験は200回までで終了とした。
【0227】
乾湿サイクル耐久評価後の膜電極複合体および燃料電池を分解し目視確認したところ「しわ」は確認されなかった。以上のことから延伸によりしわが発生しにくく寸法安定性に優れることが確認された。
【0228】
〔比較例1〕
合成例2で得られたポリアリーレン系共重合体をN−メチル−2−ピロリドンに溶解した。ポリマー溶液の粘度は5000mPa・sであった。
【0229】
得られたポリマー溶液を、ペットフィルム上にドクターブレードによりに塗布したのち、乾燥して、表面にイオン交換樹脂層を形成した。
得られたプロトン伝導膜を用いて膜電極複合体および燃料電池を製造し、乾湿サイクル耐久評価を行ったところ、耐久試験前のプロトン伝導率は、0.33S/cm、水素クロスオーバー量は、14mmol/h/cm2であったのに対して、乾湿サイクル試験30回で水素クロスオーバー量は、154mmol/h/cm2となり、乾湿サイクル評価前の水素クロスオーバー量の10倍以上となった。
【0230】
乾湿サイクル耐久評価後の膜電極複合体および燃料電池を分解し目視確認したところ「しわ」が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレン系共重合体からなるプロトン伝導膜であって、下記式(2)で表されることを特徴とする縮合芳香族環構成単位と、式(13)で表されるスルホン酸基を有する構成単位とを含むポリアリーレン系共重合体100質量部と有機溶剤20〜50質量部とを含有するポリマー膜を二軸延伸処理した後に有機溶剤を除去して得られることを特徴とするプロトン伝導膜。
【化1】

[式(2)中、A、Dは直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Bは酸素原子または硫黄原子を示し、Phは縮合芳香族環構造を有する2価の基を示し、R1〜R20は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。l、mは0〜4の整数を示し、qは2以上の整数を示す。tは0〜4の整数を示す。n、pは各構成単位の組成比を示し、pは0から1であり、n+p=1である。
【化2】

(式(13)中、Zは直接結合または、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2l'−(l'は1〜10の整数である)、−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。Arは−SO3H、−O(CH2hSO3Hまたは−O(CF2hSO3Hで表される置換基を有する芳香族基を示す(hは1〜12の整数を示す)。cは0〜10の整数を示し、dは0〜10の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。)
各構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。]
【請求項2】
前記ポリアリーレン系共重合体が、下記式(9)で表される含窒素複素環基を有する構成単位を有する、請求項1に記載のプロトン伝導膜。
【化3】

式(9)中、Zは直接結合または、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2l'−(l'は1〜10の整数である)、−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、R21は含窒素複素環基を示す。bは1〜5の整数を示し、aは0〜4の整数を示す。
【請求項3】
前記二軸延伸における延伸倍率が1.01〜5倍であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロトン伝導膜。
【請求項4】
前記式(2)中、Phはナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセンからなる群から選ばれる芳香族環からなる2価の基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のプロトン伝導膜。
【請求項5】
前記縮合芳香族環構成単位が、下記式(3)で表されるものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のプロトン伝導膜;
【化4】

[式(3)中、Aは直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、
Dは直接結合、−O−、−CO−、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)および−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、 Phは縮合芳香族環を有する2価の基を示し、R1〜R20は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。
lは0〜4の整数を示し、qは2以上の整数を示す。tは0〜4の整数を示す。
n、pは各構成単位の組成比を示し、pは0から1であり、n+p=1である。
構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。]
【請求項6】
前記縮合芳香族環構成単位が下記式(4)で表されるものであることを特徴とする請求項5に記載のプロトン伝導膜;
【化5】

[式(4)中、Dは、−O−、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す)からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
Pは下記式(5−1)〜(5−3)で表される構造から選ばれる少なくとも1種の構造であり、
Phは下記式(6)で表される構造である。
qは2以上の整数を示す。tは0〜4の整数を示す。
n、pは各構成単位の組成比を示し、pは0から1であり、n+p=1である。
構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。]
【化6】

【請求項7】
前記式(2)で表されることを特徴とする縮合芳香族環構成単位と、式(13)で表されるスルホン酸基を有する構成単位とを含むポリアリーレン系共重合体の有機溶剤溶液を、基材上に膜状に成形した後、有機溶剤の一部を除去して該有機溶剤量をポリアリーレン系共重合体100質量部に対して20〜50質量部とした後、該基材を剥離除去し、ポリアリーレン系共重合体と有機溶剤からなるポリマー膜を二軸延伸処理することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプロトン伝導膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のプロトン伝導膜と、触媒層と、ガス拡散層とを備えてなる膜−電極接合体。
【請求項9】
請求項8に記載の膜−電極接合体を有する、固体高分子電解質型燃料電池。

【公開番号】特開2010−135282(P2010−135282A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67571(P2009−67571)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】