説明

プロバイオティクス菌株GM−080が心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療に用いられる組成物及びその用途

【課題】心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療におけるプロバイオティクス菌株GM−080の提供。
【解決手段】有効含有量を有するラクトバチルス・パラカゼイGM−080を用いて、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを治療する組成物。さらに、前記プロバイオティクス菌株GM−080は、リン酸化c−Jun N末端キナーゼ(phosphorylated c−Jun N−terminal kinase;p−JNK)を特異的に抑制し、Bcl−2関連死プロモーター(Bcl−2−associated death promoter;Bad)及びBcl−2関連Xタンパク(Bcl−2−associated X protein;Bax)の発現を特異的に抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティクス菌株の用途に関し、特に、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療におけるプロバイオティクス菌株GM−080の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクス(probiotics又はprobiotic bacteria)は、一般的に人体内における、腸内健康に有益な生菌を指し、外部から補充され、体に有益になる可能性がある微生物をも指しており、例えば、乳酸菌(lactic acid bacteria;LAB)と一部の酵母菌が挙げられる。その内、乳酸菌が乳糖又はその他の糖類を乳酸に転換する微生物の総称である。乳酸菌はグラム陽性菌に属し、常に食品工業における発酵に用いられる。
【0003】
近年の研究において、乳酸菌は、アレルギーに関する疾病及び胃腸病、例えば炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease;IBD)等を改善できることが証明されている。一般的に、乳酸菌は、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、リューコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)及びレンサ球菌属(Streptococcus)等を主として、またアエロコッカス属(Aerococcus)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、腸内球菌属(Enterococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)、スポロラクトバチルス属(Sporolactobacillus)、テトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)、バゴコッカス属(Vagococcus)及びウィッセラ属(Weissella)等を有し、その内、大部分の乳酸菌が乳酸桿菌属に属する。前記菌属は乳酸桿菌目(Lactobacillales)に属し、その内、一部の菌種がプロバイオティクス(probiotics)とされている。現在、プロバイオティクスの乳酸桿菌属及びビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)に対し、深く研究されている。
【0004】
近年、感染病学に関する研究において、更に乳酸菌が免疫反応を刺激することができ、無害のアレルゲン(innocent allergens)に対しての免疫寛容(tolerance)を発達させることが示されている(Penders, J., Stobberingh, E.E., van den Brandt, P.A., Thijs, C. The role of the intestinal microbiota in the development of atopic disorders. European Journal of Allergy and Clinical Immunology 62(11), 1223−1236.(2007)を参照)。
【0005】
その他の研究において、乳酸菌が人間や家畜の抗生剤による下痢(antibiotic−associated diarrhea)と旅行者下痢(travellers' diarrhea)、小児下痢(pediatric diarrhea)、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome) (以上はFurrie, E. Probiotics and allergy. Proceedings of the Nutrition Society 64(4), 465−469, 2005; Goossens, D., Jonkers, D., Stobberingh, E., van den Bogaard, A., Russel, M., Stockbrugger, R. Probiotics in gastroentrology: indication and future perspectives. Scandinavian Journal of Gastroenterology 239 (Suppl.), 15−23, 2003; Kalliomaki, M., Salminen, S., Poussa, T., ArVilommi, H., Isolauri, E. Probiotics and prevention of atopic disease: 4−year follow−up of a randomised placebo−controlled trial. Lancet 361, 1869−1871, 2003; Pfruender, H., Amidjojo, M., Hang, F., Weuster−Botz, D. Production of Lactobacillus kefir cells for asymmetric synthesis of a 3,5−dihydroxycarboxylate. Applied Microbiology and Biotechnology 67, 619−622, 2005; Shanahan, F. Probiotics and inflammatory bowel disease: is there a scientific rationale? Inflammatory Bowel Disease 6(2), 107−115, 2000を参照)、アトピー性疾患(atopic disease) (以上はPenders, J., Stobberingh, E.E., van den Brandt, P.A., Thijs, C. The role of the intestinal microbiota in the development of atopic disorders. European Journal of Allergy Clinical Immunology 62(11), 1223−1236, 2007; Lee, J., Seto, D., Bielory, L. Meta−analysis of clinical trials of probiotics for prevention and treatment of pediatric atopic dermatitis. Journal of Allergy and Clinical Immunology 123(1), 266−267, 2009.を参照)等を有効に改善できることも示されている。
【0006】
乳酸菌による心血管疾患を治療する関連研究は、すでに50年を超え行われている。従来の研究において、乳酸菌が血圧と高コレステロール血症(hypercholesterolemia)を有効に低減できることが示されている(以上はPfruender et al., 2005; Lye, H.S., Kuan, C.Y., Ewe, J.A., Fung, W.Y., Liong, M.T. The improvement of hypertension by probiotics: Effects on cholesterol, diabetes, renin, and phytoestrogens. International Journal of Molecular Sciences 10, 3755−3775, 2009を参照)。
【0007】
しかし、前記研究において、プロバイオティクス菌株がアレルギーによる心臓炎症と心臓細胞アポトーシスに応用できるかどうかについて殆ど検討されておらず、プロバイオティクス菌株が関与する制御機構も示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑みて、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療におけるプロバイオティクス菌株の新用途を提供し、プロバイオティクス菌株をその他に応用するよう開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の一態様において、プロバイオティクス菌株GM−080を含み、その含有量が心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを有効に治療できる心臓炎症と細胞アポトーシスの治療用の組成物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の他の一態様においては、プロバイオティクス菌株GM−080の用途が提供され、このプロバイオティクス菌株GM−080は、単独又はその他の混合菌株と併用してもよく、リン酸化c−Jun N末端キナーゼ(phosphorylated c−Jun N−terminal kinase;p−JNK)、Bcl−2関連死プロモーター(Bcl−2−associated death promoter;Bad)及びBcl−2関連Xタンパク(Bcl−2−associated X protein;Bax)の発現を特異的に抑制することによって、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを有効に治療する。
【0011】
本発明の前記態様によれば、心臓炎症と細胞アポトーシスの治療に用いられる組成物が提供される。一実施例において、この組成物は、プロバイオティクス菌株GM−080を含み、このプロバイオティクス菌株GM−080は、例えばラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei) GM−080(中国典型培養物保蔵センターに寄託されており、受託番号はCCTCC M 204012)であってもよい。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記プロバイオティクス菌株GM−080が生又は不活化である。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記プロバイオティクス菌株GM−080は、p−JNK、Bad及びBaxの発現を特異的に抑制することに用いられる。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記組成物は、医薬組成物、補助飲食品、食品又はその組成分である。
【0015】
本発明の他の一態様によれば、プロバイオティクス菌株GM−080の用途が示され、前記プロバイオティクス菌株GM−080は、p−JNK、Bad及びBaxの発現を特異的に抑制することができる。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記プロバイオティクス菌株GM−080は、その他の混合菌株を更に含んでもよい。
【0017】
本発明の、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療におけるプロバイオティクス菌株GM−080を応用する場合、前記プロバイオティクス菌株GM−080を用いて、p−JNK、Bad及びBaxの発現を特異的に抑制することによって、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを有効に治療し、これによりプロバイオティクス菌株をその他に応用するよう開発する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
下記の図面の簡単な説明は、本発明の前記またはその他の目的、特徴、利点及び実施例をより分かりやすくするためのものである。
【0019】
【図1】本発明の一実施例によるプロバイオティクス菌株GM−080が心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療における情報伝達経路の模式図である。
【図2】本発明の一実施例によるマウス心臓組織のウェスタンブロッティング解析図である。
【図3】α−チューブリンの発現量によって標準化された図2のp−JNK発現量を示す棒グラフである。
【図4】α−チューブリンの発現量によって標準化された図2のJNK 1/2発現量を示す棒グラフである。
【図5】本発明の一実施例によるマウス心臓組織のウェスタンブロッティング解析図である。
【図6】α−チューブリンの発現量によって標準化された図5のp−NFκB発現量を示す棒グラフである。
【図7】α−チューブリンの発現量によって標準化された図5のp−IκB発現量を示す棒グラフである。
【図8】本発明の一実施例によるマウス心臓組織のウェスタンブロッティング解析図である。
【図9】α−チューブリンの発現量によって標準化された図8のBad発現量を示す棒グラフである。
【図10】α−チューブリンの発現量によって標準化された図8のBax発現量を示す棒グラフである。
【図11】本発明の一実施例によるマウス心臓組織のウェスタンブロッティング解析図である。
【図12】α−チューブリンの発現量によって標準化された図11の細胞質のシトクロムC発現量を示す棒グラフである。
【図13】α−チューブリンの発現量によって標準化された図11の活性化状態のカスパーゼ3発現量を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前述によれば、本発明は、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療におけるプロバイオティクス菌株GM−080の用途を提供し、プロバイオティクス菌株GM−080を用いて組成物を製造し、且つこのプロバイオティクス菌株GM−080の含有量が心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを有効に治療することができる。
【0021】
ここで、本発明の「プロバイオティクス菌株GM−080」とは、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)GM−080であり、この菌株GM−080は、すでに2004年2月19日に中国典型培養物保蔵センター(China Center for Type Culture Collection;CCTCC;中国湖北省武漢市武昌珞珈山)(受託番号(accession number)はCCTCC M 204012)に寄託されている。前記プロバイオティクス菌株GM−080は、従来の方法、又は中国特許公開番号第CN 1696281A号に開示されている分離及び培養方法によって得られるので、ここで詳しく述べない。簡単に言えば、前記プロバイオティクス菌株GM−080は、MRSブロス培地(broth medium;DIFCO(商標)0881、最終pHは6.5±0.2)を用い、37℃の温度で、嫌気又は好気で培養される。他の一例において、前記MRSブロス培地を用いる菌液を寒天培地に画線接種することができる(streak plating)。
【0022】
一実施例において、生体内の(in vivo)動物免疫実験によって、本発明のプロバイオティクス菌株GM−080は、確かにp−JNK、Bad及びBaxの遺伝子発現を特異的に抑制し、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを治療することができると証明されている。心臓炎症と心臓細胞アポトーシスは、心筋炎(myocarditis)及び心筋症(cardiomyopathies)を引き起こす可能性があり、例えば、アレルギー性心筋炎(hypersensitivity myocarditis)、リウマチ性心疾患(心臓弁膜症ともいう)、肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy)、拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy)、拘束型心筋症(restrictive cardiomyopathy)等が挙げられる。さらに、このプロバイオティクス菌株GM−080の含有量は、例えばアレルギー反応によって誘発される心筋炎症と心筋細胞アポトーシスを有効に治療することができる量である。ここで特に説明すべきことは、本発明の「動物免疫実験」とは、「アレルゲン感作動物」を用いることによって、即ち、例えばオボアルブミン(ovalbumin;OVA)のようなアレルゲンにより、実験動物のアレルギー反応を人為的に誘発することであり、これによって、心筋炎症と心筋細胞アポトーシスに対するプロバイオティクス菌株GM−080の効果を評価する。
【0023】
図1は、本発明の一実施例によるプロバイオティクス菌株GM−080が心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療における情報伝達経路の模式図である。一実施例において、図1の右側の情報伝達経路(signal transduction pathway)103に示すように、プロバイオティクス菌株GM−080 101は、リン酸化c−JunN末端キナーゼ(phosphorylated c−Jun N−terminal kinase;p−JNK)を特異的に抑制することによって、下流のp−NFκB及びTNF−αの発現を抑制し、これにより例えばアレルギー反応によって誘発される心筋炎症(myocardial inflammation)等の心臓炎症(cardiac inflammation)を緩和する。
【0024】
他の一実施例において、図1の左側の情報伝達経路105に示すように、前記プロバイオティクス菌株GM−080は、Bad及びBaxの発現を特異的に抑制することによって、Bcl−2関連死プロモーター(Bcl−2−associated death promoter;Bad)とBcl−2関連Xタンパク(Bcl−2−associated X protein;Bax)が糸粒体111の表面に堆積することを有効に防止でき、これにより下流のシトクロムC(cytochrome C)とカスパーゼ3(caspase 3)の発現を抑制し、これによって、心臓細胞内の糸粒体111に制御される細胞アポトーシス(apoptosis;プログラム細胞死ともいう;programmed cell death)、例えばアレルギー反応によって誘発される心筋細胞アポトーシス(myocardial apoptosis)を抑制する。
【0025】
さらに一つの実施例において、前記プロバイオティクス菌株GM−080は更にその他の混合菌株を選択的に含んで、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療用の組成物を製造することに用いることもできる。一例において、前記その他の混合菌株は、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、発酵乳酸桿菌(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルスブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、サーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・クレモリス(Lactobacillus cremoris)、ラクトバチルスパラカゼイサブスピーシーズパラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus GG)又は前記の任意の組み合わせを含むが、これらに限られない。
【0026】
ここで補充するのは、一実施例において、前記プロバイオティクス菌株GM−080(例えばラクトバチルス・パラカゼイGM−080;受託番号はCCTCC M 204012)は、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療用の組成物を製造することに用いられる場合、生(live)又は不活化(inactive)であってもよい。一例において、前記プロバイオティクス菌株GM−080は、医薬組成物、補助飲食品、食品又はその組成分であってもよい。他の一例において、前記プロバイオティクス菌株GM−080が凍結乾燥の形にしてもよく、また、このプロバイオティクス菌株GM−080がその他の成分を更に含んでもよく、例えばブドウ糖、マルトデキストリン(maltodextrin)、乳児用調製粉乳、フラクトオリゴ糖(fructo−oligosaccharides)、ステアリン酸マグネシウム(magnesium stearate)、ヨーグルト香料(yogurt spices)、その他の分離しにくい成分、又は前記の任意の組み合わせを更に含んでもよい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を用いて本発明の応用を説明するが、それは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、種々の変更及び修飾することができる。
【0028】
実 施 例 1
動物評価モードの形成:
1.プロバイオティクス菌株GM−080の調製
この実施例では、ラクトバチルス・パラカゼイGM−080(受託番号はCCTCC M 204012)を用いて動物免疫実験を行い、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを治療するプロバイオティクス菌株GM−080の効果を評価した。ラクトバチルス・パラカゼイGM−080(CCTCC M 204012)の菌量は、1gあたり約1×10〜約1×1011コロニー形成単位(colony−forming unit;CFU)(CFU/g)であってもよい。このラクトバチルス・パラカゼイGM−080(CCTCC M 204012)は、凍結乾燥の形にしてもよく、また、その他の成分を含んでもよく、例えばブドウ糖、マルトデキストリン、乳児用調製粉乳、フラクトオリゴ糖、ステアリン酸マグネシウム、ヨーグルト香料、その他の分離しにくい成分、又は前記の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0029】
この実施例では、その他の混合菌株を選んでラクトバチルス・パラカゼイと併用してもよく、前記その他の混合菌株は、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、発酵乳酸杆菌(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルスブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、サーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・クレモリス(Lactobacillus cremoris)、ラクトバチルスパラカゼイサブスピーシーズパラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus GG)又は前記の任意の組み合わせを含むが、これらに限られない。前記混合菌株を含む製品の市販品を用いて行ってもよい。
【0030】
一例において、前記その他の混合菌株は、第1の混合菌株を含んでもよく、第1の混合菌株は、例えばアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ビフィオバクテリアム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、発酵乳酸桿菌(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、サーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・クレモリス(Lactobacillus cremoris)又は前記の任意の組み合わせを含むが、これらに限られない。第1の混合菌株の菌量が1×10CFU/gより多い又は同じであってもよい。
【0031】
他の一例において、前記その他の混合菌株は、第2の混合菌株を含んでよく、第2の混合菌株は、例えば前記第1の混合菌株に加えて、ラクトバチルスパラカゼイサブスピーシーズパラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus GG)又は前記の任意の組み合わせを更に含んでもよいが、これらに限られない。第2の混合菌株の菌量が1×10CFU/gより多いか又は同じであってもよい。
【0032】
2.アレルゲン感作動物実験モデルの作製
この実施例では、BALB/cマウス(台湾台北楽斯科生物科技股有限公司)でアレルゲン感作動物実験モデルを作製した。まず、実験マウスを3群の実験群(アレルギー実験群)及び2群の対照群(健康対照群、アレルギー対照群)に分けた。各群はそれぞれ5週齢の雄のマウス7匹(健康対照群)又は8匹(アレルギー対照群、アレルギー実験群)であった。健康対照群とアレルギー対照群のマウスには、口胃挿管(orogastric intubation)の方式を用いて、毎日一回に蒸留水0.2mLを投与した。各アレルギー実験群のマウスには、異なるプロバイオティクス菌株(それぞれ第1の混合菌株、第2の混合菌株、ラクトバチルス・パラカゼイGM−080(CCTCC M 204012))を毎日一回に経口投与し、各匹にそれぞれ約1×10〜1×1011CFU/gを与えた。アレルギー対照群とアレルギー実験群のマウスには、第0日と第14日に、それぞれ腹腔内に2マイクログラム(μg)と6マイクログラム(μg)のオボアルブミン(ovalbumin;OVA)と完全フロイントアジュバント(complete Freund's adjuvant;CFA)を注射し、マウスのアレルギー反応を誘発した。すべてのマウスに対して、28日の処理した後、秤量し、屠殺してから、心臓を取り出して蒸留水で洗浄し、左右心房と左右心室に分けて再び秤量した。
【0033】
マウスの飼育温度は25±1℃、相対湿度は65±5%であり、12時間毎の明暗サイクルに維持し、標準実験室レベルの飼料(MF−18;オリエンタル酵母工業株式会社、Oriental Yeast Co. Ltd、日本)で飼育し、飼育期間中に飼料及び水を自由摂取させた。マウスの飼育条件は、全てが台湾の国家衛生研究院より公表されている実験動物管理ガイドにより行った。
【0034】
3.心臓組織の抽出
前記マウスの左心室を溶解バッファー(lysis buffer)に入れ、組織100mg/溶解バッファー1mLの割合で、左心室組織を約1分間均質化(homogenize)して、心筋細胞(cardiomyoctyes)内のタンパク質をさらに溶出した。前記溶解バッファーは、20mMのトリスヒドロキシメチルアミノメタン(tris(hydroxymethyl)aminomethane;Tris)溶液、2mMのエチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid;EDTA)、50mMの2−メルカプトエタノール(2−mercaptoethanol)、10%のグリセリン、プロテアーゼ阻害剤(proteinase inhibitor;Roche)、およびホスファターゼ阻害剤カクテル(phosphatase inhibitor cocktail;sigma)を含み、pHが7.4である。その後、得られたホモジネート(homogenate)を氷上に約10分間置き、約12000×gの遠心力で40分間遠心し、合計二回遠心した。そして、上澄みを回収して−80℃で保存し、その後、評価を行った。
【0035】
実 施 例 2
プロバイオティクス菌株GM−080の心臓炎症治療効果の評価:
この実施例において、電気泳動分析とウェスタンブロッティング分析(Western blotting assay)によって、プロバイオティクス菌株GM−080の、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを治療する効果を評価した。以下それぞれ記述する。
【0036】
前記のように得られたホモジネートを、10%のドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis;SDS−PAGE)に付し、85V、3.5時間で行った。その後、192mMのグリシン(glycine)と20%(v/v)のメタノールを含む25mMのTris−HCl溶液(pH8.3)で15分間平衡化した。前記SDS−PAGEの調製及び関連設備は、当業者が既に熟知しているので、ここで詳しく述べない。
【0037】
前記SDS−PAGEの電気泳動ゲルは、ウェスタンブロッティング分析(Western blotting assay)を続けて行ってもよい。この実施例において、ウェスタンブロッティングキットによって、(例えばBio−Rad Scientific Instruments Transfer Unit)、85V、2.5時間で、前記電気泳動ゲルのタンパク質を転写膜に転写し、転写膜が例えばポリフッ化ビニリデン膜(polyvinylidene difluoride membrane、PVDF membrane;孔径0.45m;Millipore, Bedford, MA, U.S.A.)であってもよい。その後、5%の脱脂粉乳をTBS緩衝液(Tris−Base、NaCl、Tween−20、pH 7.4)に溶解してブロッキング溶液とし、室温で約1時間後、一次抗体(first antibody)(抗体結合溶液で500倍に希釈した。抗体結合溶液の組成は後述する)を入れて、4℃で一晩反応した。そして、TBS緩衝液で三回洗浄し、毎回10分間であった。続いて、TBS緩衝液により500倍に希釈した二次抗体(secondary antibody)を入れて、37℃、1時間で反応してから、TBS緩衝液で三回に洗浄した。洗浄は、毎回が10分間であった。その後、例えば増強化学発光(Enhanced ChemiLuminescence;ECL)ウェスタンブロッティングルミノール試薬(Western blotting luminol reagent;Santa Cruz Biotechnology, CA)などの冷光呈色剤を入れて、冷光蛍光分析器システム(例えばFujifilm LAS−3000 chemiluminescence detection system, Tokyo, Japan)によって結果を分析した。
【0038】
前記一次抗体は、例えば腫瘍壊死因子−α(tumor necrosis factor−α;TNF−α;Cell Signaling Technology, Beverly, MA, USA)、Toll様受容体4(Toll−like receptor 4;TLR4)、p−JNK、c−Jun N末端キナーゼ1/2(c−Jun N−terminal kinase;JNK 1/2)、リン酸化核因子−κB (phosphorylated nuclear factor−κB;p−NFκB)、リン酸化NF−κB抑制因子(phosphorylated−IκB;p−IκB)、p−p38、Bad、Bax、シトクロムC、カスパーゼ3及びα−チューブリン(α−tubulin)に対するモノクロナール抗体(上記製品がSanta Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USAより)であってもよい。前記二次抗体は、例えばワサビペルオキシダーゼを結合したヤギ抗マウスIgG(goat anti−mouse IgG−HRP)、ワサビペルオキシダーゼを結合したヤギ抗ウサギIgG(goat anti−rabbit IgG−HRP)、又はワサビペルオキシダーゼを結合したロバ抗ヤギIgG(donkey anti−goat IgG−HRP)(上記製品がSanta Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USAより)であってもよい。
【0039】
前記抗体結合溶液は、例えば100mMのTris−HCl溶液(pH7.5)、0.9%(v/v)のNaCl及び0.1%(v/v)のTween−20を含んでもよい。
【0040】
1.プロバイオティクス菌株GM−080がアレルゲン感作マウス心臓p−JNK及び
JNK 1/2発現量に対する影響の評価:
図2は、本発明の一実施例によるマウス心臓組織のウェスタンブロッティング解析図であり、レーン1−2が健康対照群を表し、レーン3−4がアレルギー対照群を表し、レーン5−6がアレルギー実験群(混合菌株A、即ち第1の混合菌株)を表し、レーン7−8がアレルギー実験群(混合菌株B、即ち第2の混合菌株)を表し、レーン9−10がアレルギー実験群(ラクトバチルス・パラカゼイGM−080(CCTCC M 204012))を表す。図2は、アレルゲン感作マウス心臓組織内の、TLR4(約89kDa)、p−JNK(約54kDaと46kDa)及びJNK 1/2(約54kDaと46kDa)の発現を分析するものである。α−チューブリン(約57kDa)は、内部標準(internal control)とすることにより、前記タンパクの発現量を標準化する。
【0041】
図3は、α−チューブリンの発現量によって標準化された図2のp−JNK発現量を示す棒グラフであり、縦軸はα−チューブリンの発現量によって標準化されたp−JNK発現量の相対発現量(即ち、p−JNK/α−チューブリンの相対発現量)を示し、また、健康対照群のp−JNK/α−チューブリンの相対発現量を1.0とする。
【0042】
図4は、α−チューブリンの発現量によって標準化された図2のJNK 1/2発現量を示す棒グラフであり、縦軸はα−チューブリンの発現量によって標準化されたp−JNK発現量の相対発現量(即ち、JNK 1/2/α−チューブリンの相対発現量)を示し、また、健康対照群のJNK 1/2/α−チューブリンの相対発現量を1.0とする。
【0043】
図2〜図4の結果から、健康対照群(図2のレーン1−2)に比べて、マウスがアレルゲン感作された後、アレルギー対照群(図2のレーン3−4)のマウス心臓組織のp−JNK及びJNK 1/2の発現量が著しく増加したことが分かった。そして、アレルギー対照群(図2のレーン3−4)に比べて、アレルギー実験群のマウスの心臓組織におけるp−JNK及びJNK 1/2の発現量(図2のレーン9−10)が、アレルギー実験群(混合菌株Aと混合菌株B、図2のレーン5−8)とアレルギー対照群(図2のレーン3−4)より著しく低く、図3〜図4に示すように、実施例1のプロバイオティクス菌株GM−080を経口摂取することにより確かにp−JNK及びJNK 1/2の発現量を特異的に抑制できる。
【0044】
2.プロバイオティクス菌株GM−080がアレルゲン感作マウス心臓p−NFκB及び
p−IκB発現量に対する影響の評価:
図5は、本発明の一実施例によるマウス心臓組織のウェスタンブロッティング解析図であり、レーン1−2が健康対照群を表し、レーン3−4がアレルギー対照群を表し、レーン5−6がアレルギー実験群(混合菌株A、即ち第1の混合菌株)を表し、レーン7−8がアレルギー実験群(混合菌株B、即ち第1の混合菌株)を表し、レーン9−10がアレルギー実験群(ラクトバチルス・パラカゼイGM−080(CCTCC M 204012))を表す。図5は、アレルゲン感作のマウス心臓組織内の、p−NFκB(約65kDa)及びp−IκB(約40kDa)の発現を分析するものであり、α−チューブリンは、前記タンパクの発現量を標準化することに用いられる。
【0045】
図6は、α−チューブリンの発現量によって標準化された図5のp−NFκB発現量を示す棒グラフであり、縦軸はα−チューブリンの発現量によって標準化されたp−NFκB発現量の相対発現量(即ち、p−NFκB/α−チューブリンの相対発現量)を示し、また、健康対照群のp−NFκB/α−チューブリンの相対発現量を1.0とする。
【0046】
図7は、α−チューブリンの発現量によって標準化された図5のp−IκB発現量を示す棒グラフであり、縦軸はα−チューブリンの発現量によって標準化されたp−IκB発現量の相対発現量(即ち、p−IκB/α−チューブリンの相対発現量)を示し、また、健康対照群のp−IκB/α−チューブリンの相対発現量を1.0とする。
【0047】
図5〜図7の結果により、健康対照群(図5のレーン1−2)に比べて、マウスがアレルゲン感作された後、アレルギー対照群(図5のレーン3−4)のマウス心臓組織のp−NFκB及びp−IκBの発現量が多少増加したことが分かった。そして、アレルギー対照群(図5のレーン3−4)に比べて、アレルギー実験群のマウスの心臓組織におけるp−NFκBの発現量(図5のレーン9−10)が、アレルギー対照群(図5のレーン3−4)より著しく低く、さらに、アレルギー実験群のマウスの心臓組織におけるp−IκBの発現量(図5のレーン9−10)が、アレルギー実験群(混合菌株Aと混合菌株B、図5のレーン5−8)とアレルギー対照群(図5のレーン3−4)より著しく低く、図5〜図7に示すように、実施例1のプロバイオティクス菌株GM−080を経口摂取することにより確かにp−NFκB及びp−IκBの発現量を特異的に抑制できる。
【0048】
3.プロバイオティクス菌株GM−080がアレルゲン感作マウス心臓Bad及びBax
発現量に対する影響の評価:
図8は、本発明の一実施例によるマウス心臓組織のウェスタンブロッティング解析図であり、レーン1−2が健康対照群を表し、レーン3−4がアレルギー対照群を表し、レーン5−6がアレルギー実験群(混合菌株A、即ち第1の混合菌株)を表し、レーン7−8がアレルギー実験群(混合菌株B、即ち第1の混合菌株)を表し、レーン9−10がアレルギー実験群(ラクトバチルス・パラカゼイGM−080(CCTCC M 204012))を表す。図8は、アレルゲン感作のマウス心臓組織内の、Bad(約25kDa)及びBax(約23kDa)の発現を分析するものであり、α−チューブリンは、前記タンパクの発現量を標準化することに用いられる。
【0049】
図9は、α−チューブリンの発現量によって標準化された図8のBad発現量を示す棒グラフであり、縦軸はα−チューブリンの発現量によって標準化されたBad発現量の相対発現量(即ちBad/α−チューブリンの相対発現量)を示し、また、健康対照群のBad/α−チューブリンの相対発現量を1.0とする。
【0050】
図10は、α−チューブリンの発現量によって標準化された図8のBax発現量を示す棒グラフであり、縦軸はα−チューブリンの発現量によって標準化されたBax発現量の相対発現量(即ちBax/α−チューブリンの相対発現量)を示し、また、健康対照群のBax/α−チューブリンの相対発現量を1.0とする。
【0051】
図8〜図10の結果により、健康対照群(図8のレーン1−2)に比べて、マウスがアレルゲン感作された後、アレルギー対照群(図8のレーン3−4)のマウス心臓組織のBad及びBaxの発現量が著しく増加したことが分かった。そして、アレルギー対照群(図8のレーン3−4)に比べて、アレルギー実験群のマウスの心臓組織におけるBad及びBaxの発現量(図8のレーン9−10)が、アレルギー実験群(混合菌株Aと混合菌株B、図8のレーン5−8)とアレルギー対照群(図8のレーン3−4)より著しく低く、図8〜図10に示すように、実施例1のプロバイオティクス菌株GM−080を経口摂取することにより確かにBad及びBaxの発現量を特異的に抑制できる。
【0052】
4.プロバイオティクス菌株GM−080がアレルゲン感作マウス心臓のシトクロムC及
びカスパーゼ3発現量に対する影響の評価:
図11は、本発明の一実施例によるマウス心臓組織のウェスタンブロッティング解析図であり、レーン1−2が健康対照群を表し、レーン3−4がアレルギー対照群を表し、レーン5−6がアレルギー実験群(混合菌株A、即ち第1の混合菌株)を表し、レーン7−8がアレルギー実験群(混合菌株B、即ち第2の混合菌株)を表し、レーン9−10がアレルギー実験群(ラクトバチルス・パラカゼイGM−080(CCTCC M 204012))を表す。図11は、アレルゲン感作したマウスの心臓組織内の、細胞質のシトクロムC(約11kDa)及び活性化状態のカスパーゼ3(約17kDa)の発現を分析するものであり、α−チューブリンは、前記タンパクの発現量を標準化することに用いられる。
【0053】
図12は、α−チューブリンの発現量によって標準化された図11の細胞質のシトクロムC発現量を示す棒グラフであり、縦軸はα−チューブリンの発現量によって標準化されたシトクロムC発現量の相対発現量(即ち、シトクロムC/α−チューブリンの相対発現量)を示す。なお、健康対照群のシトクロムC/α−チューブリンの相対発現量を1.0とする。
【0054】
図13は、α−チューブリンの発現量によって標準化された図11の活性化状態のカスパーゼ3発現量を示す棒グラフであり、縦軸はα−チューブリンの発現量によって標準化されたカスパーゼ3発現量の相対発現量(即ち、活性化状態のカスパーゼ3/α−チューブリンの相対発現量)を示す。なお、健康対照群の活性化状態のカスパーゼ3/α−チューブリンの相対発現量を1.0とする。
【0055】
図11〜図13の結果により、健康対照群(図11のレーン1−2)に比べて、マウスがアレルゲン感作された後、アレルギー対照群(図11のレーン3−4)のマウス心臓組織におけるシトクロムC及びカスパーゼ3の発現量が多少増加したことが分かった。そして、アレルギー対照群(図11のレーン3−4)に比べて、アレルギー実験群のマウスの心臓組織におけるシトクロムC及びカスパーゼ3の発現量(図11のレーン9−10)が、アレルギー実験群(混合菌株Aと混合菌株B、図11のレーン5−8)とアレルギー対照群(図11のレーン3−4)より著しく低く、図12〜図13に示すように、実施例1のプロバイオティクス菌株GM−080を経口摂取することにより確かに細胞質のシトクロムC及び活性化状態のカスパーゼ3の発現量を特異的に抑制できる。
【0056】
上記によって、本発明のプロバイオティクス菌株GM−080(ラクトバチルス・クレモリスGM−080)(受託番号はCCTCC M 204012)はアレルギーで起こる心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療に応用できることが証明されており、また、本発明は、乳酸菌が関与する制御機構、即ち、p−JNK、Bad及びBaxの発現を特異的に抑制することによって、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを有効に治療できる制御機構を提供し、これによりプロバイオティクス菌株をその他に応用するよう開発できる。ここで補充するのは、本発明は、特定の菌株、特定の分析方式、特定の動物モデル、特定の反応条件、特定の免疫方法、特定の材料又は特定の設備等を例として、本発明の、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療におけるプロバイオティクス菌株GM−080の用途を説明するが、当業者が理解するように、本発明はこれらに限られなく、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、本発明のプロバイオティクス菌株GM−080がその他のプロバイオティクス菌株、その他の分析方式、その他の動物モデル、その他の反応条件、その他の免疫方法、その他の同等レベルの材料又はその他の設備等によって行ってもよい。また、本発明のプロバイオティクス菌株GM−080を、例えば医薬組成物、補助飲食品、食品又はその組成分などの、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを治療する組成物の製造に用いる場合、プロバイオティクス菌株GM−080は、生又は不活化であってもよく、また、凍結乾燥の形であってもよい。なお、本発明のプロバイオティクス菌株GM−080は更にその他の成分を含んでもよく、例えばブドウ糖、マルトデキストリン、乳児用調製粉乳、フラクトオリゴ糖、ステアリン酸マグネシウム、ヨーグルト香料、その他の分離しにくい成分、又は前記の任意の組み合わせを更に含んでもよい。
【0057】
本発明の前記実施例から分かるように、本発明の、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスの治療におけるプロバイオティクス菌株GM−080の用途は、その利点がプロバイオティクス菌株GM−080を用いて、p−JNK、Bad及びBaxの発現を特異的に抑制することによって、心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを有効に治療することであり、これによりプロバイオティクス菌株GM−080をその他に応用するよう開発できる。
【0058】
本発明を複数の実施例によって以上のように開示したが、これは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、各種の変更及び修飾することができる。本発明は、特許請求の範囲の記載によって限定される。
【符号の説明】
【0059】
101 プロバイオティクス菌株GM−080
111 糸粒体
103/105 情報伝達路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓炎症と細胞アポトーシスの治療用の組成物であって、前記組成物がプロバイオティクス菌株GM−080を含み、前記プロバイオティクス菌株GM−080がラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)GM−080(受託番号 CCTCC M 204012)であり、且つ前記プロバイオティクス菌株GM−080の含有量が心臓炎症と心臓細胞アポトーシスを有効に治療するものである心臓炎症と細胞アポトーシスの治療用の組成物。
【請求項2】
前記プロバイオティクス菌株GM−080は、生又は不活化されるものである請求項1に記載の心臓炎症と細胞アポトーシスの治療用の組成物。
【請求項3】
前記プロバイオティクス菌株GM−080は、リン酸化c−Jun N末端キナーゼ(phosphorylated c−Jun N−terminal kinase;p−JNK)を特異的に抑制することに用いられるものである請求項1に記載の心臓炎症と細胞アポトーシスの治療用の組成物。
【請求項4】
前記プロバイオティクス菌株GM−080は、Bcl−2関連死プロモーター(Bcl−2−associated death promoter;Bad)及びBcl−2関連Xタンパク(Bcl−2−associated X protein;Bax)の発現を特異的に抑制することに用いられるものである請求項1に記載の心臓炎症と細胞アポトーシスの治療用の組成物。
【請求項5】
前記プロバイオティクス菌株GM−080の含有量は、アレルギー反応により誘発される心筋炎症と心筋細胞アポトーシスを有効に治療する量である請求項1に記載の心臓炎症と細胞アポトーシスの治療用の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、医薬組成物、補助飲食品、食品又はその組成分である請求項1に記載の心臓炎症と細胞アポトーシスの治療用の組成物。
【請求項7】
プロバイオティクス菌株GM−080の用途であって、前記プロバイオティクス菌株GM−080は、ラクトバチルス・パラカゼイGM−080(受託番号はCCTCC M 204012)であり、p−JNK、Bad及びBaxの発現を特異的に抑制するものであるプロバイオティクス菌株GM−080の用途。
【請求項8】
前記プロバイオティクス菌株GM−080は、生又は不活化である請求項7に記載のプロバイオティクス菌株GM−080の用途。
【請求項9】
前記プロバイオティクス菌株GM−080は、その他の混合菌株を更に含むものである請求項7に記載のプロバイオティクス菌株GM−080の用途。
【請求項10】
前記その他の混合菌株は、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、発酵乳酸桿菌(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルスブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、サーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・クレモリス(Lactobacillus cremoris)、ラクトバチルスパラカゼイサブスピーシーズパラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus GG)及び前記の任意の組み合わせからなる群より選ばれたものである請求項9に記載のプロバイオティクス菌株GM−080の用途。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−51869(P2012−51869A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291410(P2010−291410)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(511028375)景岳生物科技股▲ふん▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】