説明

プロピレンポリマー組成物

(A)3.5%〜10.0%のエチレン誘導単位を含む結晶質プロピレンコポリマー60%〜90%;(B)18.5%〜23.5%のエチレン誘導単位を含むプロピレンのコポリマー10%〜40%;を(重量%で)含むプロピレン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の特性の最適のバランス、特に向上した衝撃強さ及び優れた光学特性を有するプロピレンポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
公知なように、アイソタクチックポリプロピレンは優れた特性の非常に優れた組合せを有しており、このために非常に数多くの用途のために好適である。かかる特性を向上させるために、プロピレンの立体規則性単独重合プロセスに1以上の共重合工程が導入されており、或いは1種類以上のモノマーがホモポリマーマトリクス中に導入されている。
【0003】
WO−01/92406は、
(A)1〜6%、好ましくは1.5〜4%のエチレンを含むプロピレンとエチレンとのランダムコポリマー70〜90%、好ましくは75〜85%;及び
(B)8〜18%、好ましくは10〜18%のエチレンを含むプロピレンとエチレンとのコポリマー10%〜30%、好ましくは15%〜25%;
を含むプロピレンポリマー組成物に関する。
【0004】
かかる組成物は、低温においても透明度、剛性、及び耐衝撃性の最適のバランスを有すると記載されている。
WO−2006/082144は、
(A)0.5モル%(0.3重量%)〜3.0モル%(2重量%)のエチレンから誘導されるコモノマー単位を含むプロピレンのコポリマー75〜95重量%;及び
(B)25モル%(18重量%)〜45モル%(35重量%)のエチレン単位を含むプロピレンのコポリマー5〜25重量%;
を含むプロピレンポリマー組成物に関する。
【0005】
かかる組成物は可撓性と衝撃特性との良好なバランスを有すると記載されている。
WO−03/051984は、
(1)15%以下、好ましくは10%以下のエチレン及び/又はC〜C10−α−オレフィンを含む結晶質のプロピレンホモポリマー又はコポリマー55%〜90%、好ましくは62%〜85%;及び
(2)プロピレンと、15%より多く40%以下のエチレン、好ましくは18%〜35%のエチレンとのコポリマー(コポリマー(a))、及び10%〜40%、好ましくは10%〜35%の1種類又は複数のC〜C10−α−オレフィンを含むエチレンと1種類以上のC〜C10−α−オレフィンとのコポリマー(コポリマー(b))のブレンド10%〜45%、好ましくは15%〜40%;
を(重量%で)含むポリオレフィン組成物に関する。
【0006】
WO−03/046021は、
(A)(A1)1〜7%のエチレンを含むプロピレンとエチレンとのランダムコポリマー;(A2)2〜10%の1種類又は複数のC〜C−α−オレフィンを含むプロピレンと1種類以上のC〜C−α−オレフィンとのコポリマー;(A3)0.5〜5%のエチレン及び2〜6%のC〜C−α−オレフィンを含むプロピレンとエチレン及び1種類以上のC〜C−α−オレフィンとのコポリマー;からなる群から選択される1種類以上のプロピレンコポリマー50〜90%;及び
(B)8〜40%のエチレン及び場合によっては1〜10%のC〜C−α−オレフィンを含むプロピレンのコポリマー10〜50%;
を含むプロピレンポリマー組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO−01/92406
【特許文献2】WO−2006/082144
【特許文献3】WO−03/051984
【特許文献4】WO−03/046021
【発明の概要】
【0008】
本出願人は、特定の種類のプロピレン組成物を用いることによって、柔軟性及び透明度の点で向上した特性を達成することができることを見出した。
本発明の対象は、
(A)3.5%〜10.0%、好ましくは3.5%〜9.0%、より好ましくは4.0%〜6.5%、更により好ましくは4.0%〜5.5%のエチレン誘導単位を含む結晶質プロピレンコポリマー60%〜90%、好ましくは70%〜90%、より好ましくは75%〜88%、更により好ましくは80%〜88%;
(B)18.5%〜23.5%、好ましくは18.5%〜22.0%、更により好ましくは19.0%〜21.0%のエチレン誘導単位を有するプロピレンのコポリマー10%〜40%、好ましくは10%〜30%、より好ましくは12%〜25%、更により好ましくは12%〜20%;
を(重量%で)含むプロピレン組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記の定義から、「コポリマー」という用語は2種類のコモノマーのみを含むポリマーを包含することは明らかである。
本発明の組成物に関する他の好ましい特徴は、
・0.5〜50g/10分、特に3〜20g/10分、より好ましくは4〜20g/10分のMFR−L(ISO−1133、条件L、即ち230℃及び2.16kgの負荷によるメルトフローレート);
・1〜4.5dL/g、好ましくは1.1〜3dL/g、より好ましくは1.1〜2dL/g、更により好ましくは1.1〜1.6dL/gの、室温においてキシレン中に可溶の(全組成物の)フラクションの固有粘度[IV];
である。
【0010】
本発明の組成物は、DSC(示差走査熱量測定)によって測定して130〜150℃、好ましくは135〜145℃の範囲の温度において少なくとも1つの溶融ピークを示す。
更に、本発明の組成物は、好ましくは以下の特性:
・曲げ弾性率は700MPa〜500MPaの範囲である;
・25%より低く、好ましくは23%より低い1mmプラークについて測定される曇り度;
・以下の関係:
MFR×Iz23>MFR×15+85;好ましくは、MFR×Iz23>MFR×20+85、より好ましくはMFR×Iz23>MFR×25+85;(ここで、Iz23は23℃において測定されるアイゾッド衝撃強さであり、MFRはISO−1133、条件L、即ち230℃及び2.16によるメルトフローレートである)
を満足する23℃において測定されるアイゾッド衝撃強さ及びメルトフローレート(MFR);
の幾つか又は全部を有する。
【0011】
本発明のプロピレンポリマー組成物は、少なくとも2段階の逐次重合によって製造することができ、それぞれの後段の重合段階は直前の重合反応において形成されるポリマー材料の存在下で行い、コポリマー(A)は通常は少なくとも1つの第1の重合段階において製造し、コポリマー(B)は通常は少なくとも1つの第2の重合段階において製造する。
【0012】
好ましくは、それぞれの重合段階は高立体特異性不均一チーグラー・ナッタ触媒の存在下で行う。本発明のプロピレンポリマー組成物を製造するために好適なチーグラー・ナッタ触媒は、いずれも塩化マグネシウム上に担持されている少なくとも1つのチタン−ハロゲン結合を有する少なくとも1種類のチタン化合物及び少なくとも1種類の電子ドナー化合物(内部ドナー)を含む固体触媒成分を含む。チーグラー・ナッタ触媒系は、更に、必須の共触媒として有機アルミニウム化合物、及び場合によっては外部電子ドナー化合物を含む。
【0013】
好適な触媒系は、ヨーロッパ特許EP−45977、EP−361494、EP−728769、EP−1272533、及び国際特許出願WO−000163261に記載されている。
【0014】
好ましくは、固体触媒成分は、Mg、Ti、ハロゲン、及び式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、基R及びRは、互いに同一か又は異なり、場合によっては周期律表の15〜17族に属するヘテロ原子を含む、C〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり;基R〜Rは、互いに同一か又は異なり、水素、或いは場合によってはヘテロ原子を含む、C〜Cの線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり、同じ炭素原子に結合している基R〜Rは一緒に結合して環を形成してもよい)
のスクシネートから選択される電子ドナーを含む。
【0017】
及びRは、好ましくはC〜Cアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基である。
及びRが第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR及びR基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。エチル、イソブチル、及びネオペンチルが特に好ましい。
【0018】
式(I)によって示される化合物の好ましい群の1つは、R〜Rが水素であり、Rが、3〜10個の炭素原子を有する分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基であるものである。式(I)の範囲内の化合物の他の好ましい群は、R〜Rからの少なくとも2つの基が水素とは異なり、場合によっては複数の群に属するヘテロ原子を含むC〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基から選択されるものである。
【0019】
水素とは異なる2つの基が同じ炭素原子に結合している化合物が特に好ましい。更に、水素とは異なる少なくとも2つの基、即ちR及びR又はR及びRが異なる炭素原子に結合している化合物もまた特に好ましい。
【0020】
好ましい方法によれば、固体触媒成分は、式:Ti(OR)n−y(式中、nはチタンの価数であり、yは1〜nの間の数である)のチタン化合物、好ましくはTiClを、式:MgCl・pROH(式中、pは0.1〜6、好ましくは2〜3.5の数であり、Rは1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基である)の付加体から誘導される塩化マグネシウムと反応させることによって製造することができる。この付加体は、好適には、付加体と非混和性の不活性炭化水素の存在下において、付加体の融点(100〜130℃)において撹拌条件下で操作して、アルコールと塩化マグネシウムとを混合することによって球状形態で製造することができる。次に、エマルジョンを速やかにクエンチし、それによって球状粒子の形態で付加体の固化を起こさせる。この手順にしたがって製造される球状付加体の例が、US−4,399,054及びUS−4,469,648に記載されている。かくして得られる付加体は、Ti化合物と直接反応させることができ、或いは、予め、アルコールのモル数が一般に3より小さく、好ましくは0.1〜2.5の間である付加体が得られるように、熱的に制御された脱アルコール化(80〜130℃)にかけることができる。Ti化合物との反応は、付加体(脱アルコール化又はそのまま)を冷TiCl(概して0℃)中に懸濁し;混合物を80〜130℃に加熱し、この温度で0.5〜2時間保持することによって行うことができる。Tic4による処理は1回以上行うことができる。内部ドナーは、TiClによる処理中に加えることができ、電子ドナー化合物による処理は1回以上繰り返すことができる。一般に、式(I)のスクシネートは、0.01〜1、好ましくは0.05〜0.5のMgClに対するモル比で用いる。球状形態の触媒成分の製造は、例えばヨーロッパ特許出願EP−A−395083及び国際特許出願WO−98144001に記載されている。上記の方法にしたがって得られる固体触媒成分は、一般に20〜500m/gの間、好ましくは50〜400m/gの間の表面積(BET法による)、及び0.2cm/gより高く、好ましくは0.2〜0.6cm/gの間の全多孔度(BET法による)を示す。10.000Å以下の半径を有する細孔による多孔度(Hg法)は、一般に0.3〜1.5cm/g、好ましくは0.45〜1cm/gの範囲である。
【0021】
有機アルミニウム化合物は、好ましくは、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物から選択されるアルキル−Alである。また、トリアルキルアルミニウムと、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水素化物、或いはアルキルアルミニウムセスキクロリド、例えばAlEtCl及びAlEtClとの混合物を用いることもできる。
【0022】
好ましい外部電子ドナー化合物としては、ケイ素化合物、エーテル、4−エトキシ安息香酸エチルのようなエステル、アミン、複素環式化合物、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ケトン、及び1,3−ジエーテルが挙げられる。好ましい外部ドナー化合物の他の種類は、式:RSi(OR(式中、a及びbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、(a+b+c)の合計は4であり;R、R、及びRは、場合によってはヘテロ原子を含む、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、又はアリール基である)のケイ素化合物のものである。メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2−エチルピペリジニル−2−t−ブチルジメトキシシラン、及び1,1,1−トリフルオロプロピル−2−エチルピペリジニルジメトキシシラン、並びに1,1,1−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシランが特に好ましい。外部電子ドナー化合物は、0.1〜500の有機アルミニウム化合物と電子ドナー化合物との間のモル比を与えるような量で用いる。
【0023】
重合プロセスは、流動床又はスラリー反応器のような連続又はバッチ反応器内において、気相及び/又は液相中で行うことができる。例えば、モノマーの部分的脱気を除いて中間段階を行わずに、希釈剤として液体プロピレンを用いて液相中でプロピレンポリマー(A)の重合を行い、一方、プロピレンコポリマーフラクション(B)を得るための共重合段階を気相中で行うことができる。或いは、全ての逐次重合段階を気相中で行うことができる。重合工程の反応時間、温度、及び圧力は重要ではないが、フラクション(A)及び(B)を製造するための温度は、同一であっても異なっていてもよく、通常は50℃〜120℃である。重合を気相中で行う場合には、重合圧力は好ましくは0.5〜12MPaの範囲である。触媒系は、少量のオレフィンと予備接触させることができる(予備重合)。プロピレンポリマー組成物の分子量は、水素のような公知の調整剤を用いることによって調節する。
【0024】
好ましい態様によれば、プロピレンポリマー(A)は、少なくとも2つの相互接続重合区域内で行う気相重合プロセスによって製造する。かかる重合プロセスはヨーロッパ特許EP−782587に記載されている。
【0025】
本プロセスは第1及び第2の相互接続重合区域内で行い、かかる区域にプロピレン及びエチレン、或いはプロピレン及びα−オレフィンを触媒系の存在下で供給し、かかる区域から製造されたポリマーを排出する。成長ポリマー粒子を、迅速流動化条件下で第1のかかる重合区域(上昇管)を通して流し、かかる第1の重合区域から排出して第2の重合区域(降下管)に導入し、それを通して重力の作用下で緻密化形態で流して、かかる第2の重合区域から排出してかかる第1の重合区域中に再導入し、これによって2つの重合区域の間のポリマーの循環を形成する。一般に、第1の重合区域内の迅速流動化条件は、モノマー気体混合物を、成長ポリマーの再導入点より下方で第1の重合区域中に供給することによって形成される。第1の重合区域中への輸送ガスの速度は運転条件下における輸送速度よりも高く、通常は2〜15m/秒の間である。ポリマーを重力の作用下において緻密化形態で流す第2の重合区域においては、ポリマーの嵩密度に近い固体の高い密度値に到達し、したがって、流れの方向に沿って圧力の正の利得を得ることができるので、機械的手段を用いることなくポリマーを第1の反応区域中に再導入することが可能になる。このようにして、2つの重合区域の間の圧力のバランス、及びシステム中へ導入される損失水頭によって画定される「ループ」循環が形成される。場合によっては、窒素又は脂肪族炭化水素のような1種類以上の不活性ガスを、不活性ガスの分圧の合計が好ましくはガスの全圧の5〜80%になるような量で重合区域内に保持する。例えば温度のような運転パラメーターは、気相オレフィン重合プロセスにおいて通常的なもの、例えば50℃〜120℃の間である。本プロセスは、0.5〜10MPaの間、好ましくは1.5〜6MPaの間の運転圧力下で行うことができる。好ましくは、種々の触媒成分は、第1の重合区域に、第1の重合区域の任意の位置において供給する。しかしながら、これらは第2の重合区域の任意の位置において供給することもできる。当該技術において公知の分子量調整剤、特に水素を用いて、成長ポリマーの分子量を調整することができる。
【0026】
特に好ましい重合プロセスの第2段階においては、通常の流動床気相反応器内において、前段の重合工程から得られるポリマー材料及び触媒系の存在下でプロピレン/エチレンコポリマー(B)を製造する。重合混合物を降下管から気−固分離器に排出し、次に温度及び圧力の通常の条件下で運転する流動床気相反応器に供給する。
【0027】
本発明のプロピレンポリマー組成物はまた、上記に示すものと同じ触媒を用いて実質的に同じ重合条件下で運転してコポリマー(A)及び(B)を別々に製造し、次に二軸押出機のような通常の混合装置を用いてかかるコポリマーを溶融状態で機械的にブレンドすることによって得ることもできる。
【0028】
本発明のプロピレンポリマー組成物には、酸化防止剤、光安定剤、成核剤、耐酸剤、着色剤、及び充填剤のようなポリオレフィン分野において通常的に用いられる添加剤を更に含ませることができる。
【0029】
本発明のプロピレンポリマー組成物の主要な用途は、成形物品、特に射出成形品の製造である。本発明のプロピレンポリマー組成物を含む射出成形品は、良好な可撓性及び良好な衝撃特性を有し、良好な透明度も有する。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は本発明を例示するために与えるものであり、本発明を限定するものではない。
プロピレンポリマー材料のデータは以下の方法にしたがって得た。
【0031】
キシレン可溶フラクション:
冷却器及び磁気スターラーを取り付けたガラスフラスコ内に、2.5gのポリマー及び250mLのo−キシレンを導入した。温度を30分間で溶媒の沸点まで上昇させた。かくして得られた溶液を次に還流下に保持し、更に30分間撹拌した。次にフラスコを閉止し、氷水浴中に30分間、更に25℃の温度制御水浴中に30分間保持した。かくして得られた固体を迅速濾紙上で濾過し、濾液を2つの100mLアリコートに分割した。濾液の1つの100mLアリコートを予め秤量したアルミニウム容器内に注ぎ入れ、窒素流下において加熱プレート上で加熱して、蒸発によって溶媒を除去した。次に、一定重量が得られるまで、容器をオーブン上で真空下80℃に保持した。残渣を秤量してキシレン可溶ポリマーの割合を求めた。
【0032】
エチレン(C2)含量:
IR分光法によった。
ポリマーの沈殿「アモルファス」フラクションについて成分Bのコモノマー含量を求めた。沈殿「アモルファス」フラクションは次のようにして得た。上記(キシレン可溶フラクションに関する手順)のようにして得られた濾液の1つの100mLアリコートに、200mLのアセトンを激しい撹拌下で加えた。沈殿は、明らかな固体−溶液分離によって示されるように完了させなければならない。かくして得られた固体を風袋重量を測定した金属スクリーン上で濾過し、一定の重量に達するまで真空オーブン内において70℃で乾燥した。
【0033】
供給ガスのモル比:
ガスクロマトグラフィーによって求めた。
メルトフローレート(MFR):
ISO−1133(230℃、2.16kg)にしたがって求めた。
【0034】
固有粘度:
テトラヒドロナフタレン中135℃において求めた。
曲げ弾性率:
ISO−178にしたがって求めた。
【0035】
降伏点及び破断点応力:
ISO−527にしたがって求めた。
降伏点及び破断点伸び:
ISO−527にしたがって求めた。
【0036】
アイゾッド衝撃強さ:
ISO−18011Aにしたがって求めた。
延性/脆性遷移温度(D/B):
この方法にしたがって、自動コンピュータ制御打撃ハンマーによる衝撃によって二軸耐衝撃性を求めた。
【0037】
円形ハンドパンチ(直径38mm)を用いて切断することによって円形の試験片を得た。これらを23℃及び50RHにおいて少なくとも12時間コンディショニングし、次に試験温度の温度制御浴中に1時間配置した。リング支持材上に載置した円形の試験片上への打撃ハンマーの衝撃(5.3kg、1/2の直径を有する半球形のパンチ)中の力−時間曲線を検出した。用いた機械はCEAST 67581000タイプモデルNo.2であった。
【0038】
D/B遷移温度は、上記に記載の衝撃試験にかけた際に試料の50%が脆性破壊を起こす温度である。以下の方法にしたがって127×127×1.5mmの寸法を有するD/B測定用のプラークを製造した。
【0039】
射出プレスは、90トンのクランプ力を有するNegri Bossiタイプ(NB90)であった。成形型は長方形のプラークであった(127×127×1.5mm)。
主要なプロセスパラメーターを以下に報告する。
【0040】
背圧(bar):20;
射出時間(秒):3;
最大射出圧力(MPa):14;
射出水圧(MPa):6〜3;
第1の保持水圧(MPa):4±2;
第1の保持時間(秒):3;
第2の保持水圧(MPa):3±2;
第2の保持時間(秒):7;
冷却時間(秒):20;
成形型温度(℃):60;
溶融温度は220〜280℃の間であった。
【0041】
曇り度(1mmプラークについて):
用いた方法によれば、5×5cmの試験片を厚さ1mmの成形プラークに切断し、曇り度計タイプUX-10に接続したGardner光度計ユニット、或いはフィルター「C」を備えたG.E.1209光源を有する同等の装置を用いて曇り度値を測定した。装置を較正するために既知の曇り度の対照試料を用いた。試験するプラークは以下の方法にしたがって製造した。
【0042】
GBF Plastiniector G235190射出成形機、90トンを用い、以下の処理条件下で75×75×1mmのプラークを成形した。
スクリュー回転速度:120rpm;
背圧:10bar;
溶融温度:260℃;
射出時間:5秒;
保持圧力への切り替え:50bar;
第1段階の保持圧力:30bar;
第2段階の圧力:20bar;
保持圧力プロファイル:
第1段階:5秒
第2段階:10秒:
冷却時間:20秒;
成形型水温度:40℃。
【0043】
融点、溶融エンタルピー、及び結晶化温度:
DSCにより、20℃/分の温度変化を用いて求めた。
実施例1〜2
ヨーロッパ特許EP−728769の実施例5、48〜55行にしたがってチーグラー・ナッタ触媒を製造した。共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL)、外部ドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシランを用いた。
【0044】
実施例のプロピレンポリマー組成物を2段階の重合プロセスで製造した。コポリマー(A)は、第1の重合段階において、ヨーロッパ特許EP−782587に記載されているような2つの相互接続重合区域である上昇管及び降下管を含む気相重合反応器(反応器MZCR)にモノマー及び触媒系を供給することによって製造した。反応器から重合混合物を排出し、気−固分離器に送り、重合した物質を通常の気相流動床反応器中に送り、ここでプロピレンエチレンコポリマー(B)を製造した。運転条件を表1に示す。
【0045】
第2の重合段階から排出されたポリマー粒子を蒸気処理にかけて未反応のモノマーを除去し、乾燥した。
プロピレンポリマー組成物に以下の添加剤:ステアリン酸カルシウム:500ppm;
GMS90:500ppm;Irganox B215:1500ppm;Millad 3988:1800ppm;を加え、二軸押出機Berstorff(L/D=33)内で以下の運転条件下において押出した。
【0046】
供給セクションの温度:190〜210℃;
溶融温度:240℃;
ダイセクションの温度:230℃;
流速:16kg/時;
回転速度:250rpm。
【0047】
【表1】

【0048】
比較例1はWO−03/046021の実施例1であり、比較例2はWO−2006/114357の実施例3である。
これらの材料の特性、及び本発明の組成物の特性を表2に報告する。
【0049】
【表2】

【0050】
比較例1を本発明の実施例と比較することによって、成分B中のエチレン含量が特許請求の範囲外である場合には、アイゾッド衝撃強さはより低いことが分かる。一方、コポリマーA中のエチレン含量が特許請求の範囲外である場合には、曲げ弾性率がより高く、したがって得られるコポリマーはより柔軟でない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)3.5%〜10.0%のエチレン誘導単位を含む結晶質プロピレンコポリマー60%〜90%;
(B)18.5%〜23.5%のエチレン誘導単位を含むプロピレンのコポリマー10%〜40%;
を(重量%で)含むプロピレン組成物。
【請求項2】
成分(A)が3.5重量%〜9.0重量%のエチレン誘導単位を含むプロピレンコポリマーであり、成分(B)が18.5重量%〜22重量%のエチレン誘導単位を含むプロピレンのコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
MFR−L(ISO−1133、条件L、即ち230℃及び2.16kgの負荷によるメルトフローレート)が0.5〜50g/10分の範囲である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
700MPa〜500MPaの範囲の曲げ弾性率を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
25%より低い曇り度を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
23℃において測定されるアイゾッド衝撃強さ及びMFRが次の関係:
MFR×Iz23>MFR×15+85
(式中、Iz23は23℃において測定されるアイゾッド衝撃強さであり;MFRはISO−1133、条件L、即ち230℃及び2.16によるメルトフローレートである)
を満足する、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。

【公表番号】特表2012−527500(P2012−527500A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511223(P2012−511223)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055788
【国際公開番号】WO2010/133434
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】