説明

プロピレン系ブロック共重合体及びその製造方法

【課題】 それ自体で優れた柔軟性、耐衝撃性、耐熱性およびヒートシール性を発揮できる新規なプロピレン系ブロック共重合体、及び特定の触媒系を用いることにより、該ランダム共重合体成分を高効率に製造することができる製造方法の提供。
【解決手段】 メタロセン触媒の存在下に、前段工程及び後段工程からなる多段重合を連続的に行うことによって製造される、特定の要件を満たすプロピレン系ブロック共重合体及びその製造方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なプロピレン系ブロック共重合体及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、それ自体で優れた柔軟性、耐衝撃性、耐熱性およびヒートシール性を発揮できる新規なプロピレン系ブロック共重合体、及び特定の触媒系を用いることにより、該ランダム共重合体成分を高効率に製造することができる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性ポリプロピレンは、機械的性質、耐薬品性等に優れることから各種成形分野に広く用いられている。しかしながら、結晶性ポリプロピレンとしてプロピレン単独重合体あるいは少量のα−オレフィンとのランダム共重合体を用いると、剛性は高くなるが耐衝撃性が不足する。そのため、プロピレン単独重合体やランダム共重合体にエチレン−プロピレンラバー等のプロピレン系エラストマーを添加する方法や、プロピレンの単独重合あるいは少量のα−オレフィンとのランダム共重合後に引き続いてプロピレンとエチレンあるいはα−オレフィンを共重合させた、いわゆるブロック共重合体を製造する方法により、耐衝撃性を改良することが行われてきた。
【0003】
結晶性ポリプロピレンに添加して使用されるプロピレン系エラストマーの内、特にプロピレンと1−ブテンの共重合体は、剛性、衝撃吸収性、耐熱性、耐スクラッチ性、ヒートシール性等、優れた特徴を有することから、フィルム、シートをはじめ、多分野にわたって使用されている。例えば、特許文献1には、ポリプロピレン5〜95重量%と、1−ブテン単位を5〜50モル%で含有するプロピレン/1−ブテン系エラストマー5〜95重量%とからなるポリプロピレン組成物が、柔軟性および耐衝撃性に優れるとともに、耐熱性およびヒートシール性にも優れることが開示されている。
【0004】
このように、結晶性ポリプロピレンにプロピレン/1−ブテン系エラストマーを添加すると、柔軟性および耐衝撃性が改善されたポリプロピレン組成物が得られるが、このようなエラストマーは通常、粒子状のポリマーとして得ることが困難なため、一般的には溶液重合法により製造されている。しかし、この重合法では使用溶媒を回収する工程を要するため、生産効率が悪く、エネルギー的にも経済的にも不利であった。
【0005】
また、結晶性ポリプロピレンにエラストマーを添加する場合、通常は溶融混練の工程が必要となる。この工程ではポリマーを溶融させるために膨大なエネルギーを消費し、さらには溶融混練における高温、高剪断応力下にて、結晶性ポリプロピレンあるいはエラストマーが劣化し、物性の低下が生じる問題があった。また、混練が不十分でエラストマーが結晶性ポリプロピレン中に十分に分散されない場合、エラストマーの性能を十分に発揮させることができず、物性が低下する問題があった。
【0006】
一方、結晶性ポリプロピレン成分とエラストマー成分を連続して重合させるブロック共重合では、溶融混練工程を必要としないことから、溶融混練に起因する物性低下の懸念がなく、エネルギー的、経済的にも有利である。しかしながら、現在工業的に最も広く用いられているチーグラー・ナッタ触媒系をブロック共重合体の製造に用いた場合、おもに後段のエラストマー成分製造時に多量の低分子量成分や非晶性成分を生成してしまい、これらがポリマー粒子性状を悪化させ、製造を困難にするばかりか、これらの成分は耐熱性の悪化等、物性の低下も招く。
【0007】
近年、遷移金属化合物を用いたメタロセン系触媒が開発され、各種の錯体に関する提案が成されると共に、活性点が均一であることから分子量及び組成の分布が狭く、ブロック共重合体製造時にも低分子量成分や非晶性成分の生成が非常に少ない触媒系の提案が成されている。
例えば、特許文献2には、メタロセン触媒を用いたプロピレン/プロピレン/1−ブテン・ブロック共重合体の製造方法が開示されており、この方法により製造されたブロック共重合体は、ポリマー性状が良好で、優れた耐衝撃性と剛性、透明性を有することが示されている。
【0008】
しかしながら、従来技術のメタロセン触媒では、工業化されているチーグラー・ナッタ触媒系に比べて、重合活性が未だ不十分であり、また1−ブテンとの共重合性も不十分なものであった。さらに1−ブテンを共重合させた場合の分子量も不足しており、低MFRの重合体が製造できないため、成形条件や使用用途が限定されるなどの問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開平8−208909号公報
【特許文献2】国際公開(WO)第00/08080号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前記した従来技術の欠点を解消し、それ自体で優れた柔軟性、耐衝撃性、耐熱性およびヒートシール性を発揮できる新規なプロピレン系ブロック共重合体、及び特定の触媒系を用いることにより、該ランダム共重合体成分を高効率に製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく種々検討を行った結果、特定の構造を有する遷移金属化合物からなるメタロセン触媒を用いて、前段工程でプロピレンとエチレンとのランダム共重合体成分を製造し、引き続き、後段工程でプロピレンと1−ブテンとのランダム共重合体成分を製造するとの多段重合を連続的に行うことによって製造される、前段工程で製造されたランダム共重合体成分中のエチレン含量が0.1〜8.5wt%、後段工程で製造されたランダム共重合体成分中の1−ブテン含量が5〜50wt%及び後段工程で製造されたランダム共重合体の割合がプロピレン系ブロック共重合体を基準として5〜50wt%との特定の要件を満たすプロピレン系ブロック共重合体を提供することによって、それ自体で優れた柔軟性、耐衝撃性、耐熱性およびヒートシール性を発揮できる新規なプロピレン系ブロック共重合体となることとともに、当該プロピレン系ブロック共重合体を高効率に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、メタロセン触媒の存在下に、前段工程及び後段工程からなる多段重合を連続的に行うことによって製造される、下記の要件(a)〜(c)を満たすプロピレン系ブロック共重合体であって、
前段工程は、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体成分を製造し、
引き続き、後段工程は、プロピレンと1−ブテンとのランダム共重合体成分を製造することによって得られることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体が提供される。
要件(a):前段工程で製造されたランダム共重合体成分中のエチレン含量が、0.1〜8.5wt%である。
要件(b):後段工程で製造されたランダム共重合体成分中の1−ブテン含量が、5〜50wt%である。
要件(c):後段工程で製造されたランダム共重合体の割合が、プロピレン系ブロック共重合体を基準として、5〜50wt%である。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、粒子の嵩比重が、0.3〜0.6g/mlであることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体が提供される。
【0014】
また、本発明の第3の発明によれば、メタロセン触媒の存在下に、前段工程及び後段工程からなる多段重合を連続的に行うことによって製造される、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、
ランダム共重合体成分中のエチレン含量が0.1〜8.5wt%である、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体成分を製造する前段工程と、引き続き、該ランダム共重合体成分の存在下、1−ブテン含量が5〜50wt%であるランダム共重合体成分を、プロピレン系ブロック共重合体を基準として、5〜50wt%となるように製造する後段工程とからなることを特徴とする第1または2の発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、メタロセン触媒は、あらかじめ予備重合されたものであることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第5の発明によれば、第3または4の発明において、後段工程は、気相重合で行うことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第6の発明によれば、第3〜5のいずれかの発明において、前段工程は、気相重合で行うことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第7の発明によれば、第3〜6のいずれかの発明において、後段工程で製造されるランダム共重合体成分の分子量は、後段工程に存在する水素の濃度によって制御されることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、前段工程でプロピレンとエチレンとの共重合体を製造し、かつこの重合体のエチレン含量を0.1〜8.5wt%に制御し、且つ連続した後段工程においてプロピレンと1−ブテンのランダム共重合体を製造することで、柔軟性および耐衝撃性に優れるとともに、耐熱性、透明性およびヒートシール性にも優れる。さらには特定のメタロセン触媒を用いることにより、従来のチーグラー・ナッタ触媒系に匹敵する重合活性、共重合性、高分子量を実現し、且つチーグラー・ナッタ触媒系よりも非晶性成分が少なくポリマー性状に優れるため、工業的に容易な条件において、高効率にて製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、下記の特徴を有する新規なプロピレン系ブロック共重合体である。以下に、具体的に詳しく述べる。
1.プロピレン系ブロック共重合体
(1)前段工程で製造されるプロピレン系ランダム共重合体成分
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の特徴は、まず前段工程にて、プロピレンとエチレンのランダム共重合体を製造することにある。このときのエチレン含量は0.1〜8.5wt%が好ましく、0.5〜5wt%がさらに好ましく、0.5〜4wt%が特に好ましく、1.5〜2.5wt%が最も好ましい。
前段工程でプロピレンとエチレンのランダム共重合体を製造することにより、触媒効率(重合活性)が格段に向上し、高効率に製品を製造することが可能となる。但し、前段工程で製造したポリマーのエチレン含量が本範囲より高い場合には、前段工程での重合量が増えすぎるため、相対的に後段での重合量が低下し、生産効率が低下する。またポリマー性状も悪化するため、より非効率な生産となり、さらにはポリマーの融点が低下するため、得られる製品の耐熱性も十分ではないものとなる。
【0021】
また前段工程において製造されるランダム共重合体のMFRは0.1〜5000g/10分であることが好ましく、1〜100g/10分であることが特に好ましく、1〜30g/10分であることが最も好ましい。MFRをこの範囲に制御することにより、高い触媒効率を維持しながら、優れた成形性を付与することができる。
【0022】
(2)後段工程で製造されるランダム共重合体成分
また本発明においては、連続した後段工程にて、全体のポリマー量に対し5〜50wt%のプロピレンと1−ブテンのランダム共重合体を製造することが好ましく、より好ましくは10〜40wt%、さらには10〜30wt%であることが最も好ましい。
後段工程での重合量が本範囲より高い場合は、剛性や耐熱性に劣る。また前段および後段が連続していない工程で製造された場合は、両工程で製造された各々のポリマーが十分に分散せず、エラストマーの性能を十分に発揮することができない。
【0023】
さらに後段工程で製造されたランダム共重合体中の1−ブテン含量が5〜50wt%であることが好ましく、10〜50wt%であることがより好ましく、20〜50wt%であることが特に好ましく、20〜30wt%であることが最も好ましい。
後段工程で製造されたランダム共重合体中の1−ブテン含量が本範囲より低い場合は、エラストマーとしての効果が十分でないことから、ヒートシール性や耐衝撃性に劣る。一方、後段ランダム共重合体中の1−ブテン含量が本範囲より高い場合は、後段での重合活性低下が生じ、また得られる重合体の性状が悪化する。
【0024】
また後段工程で製造するランダム共重合体MFRは0.1〜5000g/10分であることが好ましく、1〜100g/10分であることが特に好ましく、1〜30g/10分であることが最も好ましい。MFRをこの範囲に制御することにより、高い触媒効率を維持しながら、優れた成形性を付与することができる。
【0025】
また前段および後段が連続していない工程で製造された場合は、両工程で製造され各々のポリマーが十分に分散せず、エラストマーの性能を十分に発揮することができない。
【0026】
(3)プロピレン系ブロック共重合体
これらの前段工程および後段工程を経ることによって得られた本発明のプロピレン系ブロック共重合体としての融点は、125〜145℃であることが好ましく、125〜135℃であることが特に好ましい。また当該プロピレン系ブロック共重合体としてのMFRは、0.1〜5000g/10分であることが好ましく、1〜100g/10分であることが特に好ましく、1〜30g/10分であることが最も好ましい。これらにより、柔軟性、耐衝撃性、耐熱性、ヒートシール性、成形性に優れた製品を得ることが出来る。
【0027】
また得られた製品の性状として、ポリマー粒子の嵩比重が0.3〜0.6g/mlであることが好ましく、さらにポリマー粒子同士の融着や、粒子表面のべたつきがないことが好ましい。これにより、工業的に生産性良く、高効率な製造が可能となる。
【0028】
2.プロピレン系ブロック共重合体の製造方法
(1)触媒
<触媒成分>
本発明のプロピレン系ブロック共重合体を製造するには、メタロセン系触媒を使用するのが好ましい。プロピレン系ブロック共重合体においては、分子量及び結晶性分布が広いとべたつきやブリードアウトが悪化することは当業者に広く知られるところであるが、本発明においても、べたつき及びブリードアウトを抑制するために、分子量及び結晶性分布を狭くできるメタロセン系触媒を用いて重合させて製造するのが望ましい。
【0029】
メタロセン系触媒は一般に、(A)共役五員環配位子を有する周期律表(短周期型)第4〜6族の遷移金属化合物からなるメタロセン錯体と、それを活性化させる(B)助触媒、並びに必要に応じて使用される(C)有機アルミニウム化合物から構成される。オレフィン重合プロセスの特性によっては、粒子化が必須とされるため、さらには(D)担体を構成要素とする場合がある。
【0030】
(A)メタロセン錯体
本発明において用いられるメタロセン錯体としては、代表的なものとして共役五員環配位子を有する周期律表第4〜6族の遷移金属化合物のメタロセン架橋錯体が挙げられ、これらのうち、下記一般式で表されるもの、中でもアズレン系のものが好ましい。
【0031】
【化1】

【0032】
(式中、Mは、Ti、ZrまたはHfである。XおよびYは、補助配位子であり、成分(B)の助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させるものである。AおよびA´は、置換基を有していてもよいインデニル基、フルオレニル基またはアズレニル基である。Qは、AとA´を架橋する基である。AおよびA´は、さらに副環上に置換基を有していてもよい。)
【0033】
AおよびA´としては、インデニル基またはアズレニル基、特にアズレニル基が好ましい。
Qは、二つの共役五員環などの配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を表し、具体的にはアルキレン基、シリレン基或いはゲルミレン基であるのが好ましい。
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、特にジルコニウムまたはハフニウムが好ましい。
XおよびYは、補助配位子であり、成分(B)の助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX,Yは配位子の種類が制限されるものではなく、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、或いはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが例示できる。これらのうち好ましいものは炭素数1〜10の炭化水素基、或いはハロゲン原子である。
【0034】
メタロセン錯体の具体的化合物として、以下のものを例示することができる。
置換基が環を構成しているシクロペンタジエニル配位子を2個有し、それらが架橋されている構造のメタロセン錯体において、アズレン系のものとしては、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(2−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(9−フェナンスリル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4―(3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、などが挙げられる。
【0035】
アズレン系であって他の共役多員環配位子が異なるものとしては、ジメチルシリレ2ン[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}][1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル}]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0036】
インデニル配位子を2個有し、それらが架橋されている構造のメタロセン錯体としては、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルアルミニウムビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、フェニルホスフィノビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、フェニルアミノビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0037】
置換フルオレニル配位子を1個、置換シクロペンタジエニル基を1個有し、それらが架橋されている構造のメタロセン錯体としては、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライドなどのジクロル体および周期律表第4族の遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体などを例示することができる。
【0038】
これら具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物またはその逆に置き換えた化合物も好適なものとして例示される。
所望の共重合体の分子量が高い場合はハフニウム化合物が好ましい。
【0039】
上記成分(a)として好ましいのは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基或いはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物、中でも炭化水素置換基を有するシリレン基、或いはゲルミレン基で架橋されたものや、また置換インデニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなるものが好ましく、特に2位または4位、若しくは2位および4位に置換基を有するものが好ましい。
【0040】
(B)助触媒(活性化剤成分)
助触媒は、メタロセン錯体を活性化する成分で、メタロセン錯体の補助配位子と反応して当該錯体を、オレフィン重合能を有する活性種に変換させうる化合物であり、具体的には下記(B−1)〜(B−4)のものが挙げられる。
【0041】
(B−1)アルミニウムオキシ化合物
(B−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸
(B−3)固体酸
(B−4)イオン交換性層状珪酸塩
【0042】
(B−1)のアルミニウムオキシ化合物がメタロセン錯体を活性化できることは周知であり、そのような化合物としては、具体的には次の各一般式で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化2】

【0044】
上記の各一般式中、Rは水素原子または炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10、中でも炭素数1〜6の炭化水素基を示す。また、複数のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
【0045】
一般式のうち、一番目及び二番目の式で表される化合物は、アルミノキサンとも称される化合物であって、これらの中では、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
一般式の三番目で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式RB(OH)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。
一般式中、R及びRは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。
【0046】
(B−2)の化合物は、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸であり、このようなイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物などが挙げられる。また、上記のようなルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などが例示される。或いは、塩化アルミニウム、塩化マグネシウムなどの金属ハロゲン化物などが例示される。
なお、上記のルイス酸のある種のものは、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物として把握することもできる。
【0047】
ここで、成分(B−1)、成分(B−2)を担持する微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
【0048】
(B−3)の固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどが挙げられる。
【0049】
(B−4)のイオン交換性層状化合物は、粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。
【0050】
珪酸塩は各種公知のものが使用できる。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
【0051】
(i)2:1型鉱物類
モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族;バーミキュライトなどのバーミキュライト族;雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族;パイロフィライト、タルクなどのパイロフィライト−タルク族;Mg緑泥石などの緑泥石族
【0052】
(ii)2:1リボン型鉱物類
セピオライト、パリゴルスカイトなど
【0053】
珪酸塩は、上記の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であるのが好ましく、スメクタイト族であることがより好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。珪酸塩については、天然品または工業原料として入手したものは、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すのが好ましい。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。これらの処理を互いに組み合わせて用いてもよい。これらの処理条件には特に制限はなく、公知の条件が使用できる。
【0054】
また、これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常吸着水および層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。なおこれらの化学処理の程度によってはイオン交換性が小さくなっている場合があるが、化学処理前の原料がイオン交換性層状珪酸塩であれば特に問題ない。
【0055】
(C)有機アルミニウム化合物
メタロセン触媒系に、必用に応じて使用される有機アルミニウム化合物としては、ハロゲンを含有しないものが使用され、具体的には一般式
AlR−iXi
(式中、RはC1〜20の炭化水素基、Xは水素、アルコキシ基、iは0≦i≦3の数を示す。但し、Xが水素の場合は、iは0≦i<3とする。)
で示される化合物が使用される。
【0056】
具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、またはジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルコキシ含有アルキルアルミニウム、さらにはジエチルアルミニウムハライドなどのハライド含有アルキルアルミニウムが挙げられる。
これらのうち、特にトリアルキルアルミニウム、中でもトリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムが好ましい。
【0057】
(D)担体
メタロセン触媒系において必要に応じ適宜用いられる担体としては、各種公知の無機或いは有機の微粒子状固体を挙げることができる。担体の平均粒径は通常5〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmである。また、担体の比表面積は通常50〜1,000m/g、好ましくは100〜500m/gであり、担体の細孔容積は通常0.1〜2.5cm/g、好ましくは0.2〜0.5cm/gである。無機固体の例示としては、多孔質酸化物が挙げられ、必要に応じて100〜1,000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
【0058】
具体的にはSiO、Al、MgO、ZrO、TiO、BO3、CaO、ZnO、BaO、ThOなど、またはこれらの混合物、たとえばSiO−MgO、SiO−Al、SiO−TiO、SiO−V、SiO−Cr、SiO−TiO−MgOなどが挙げられる。これらのうちSiOまたはAlを主成分とするものが好ましい。
【0059】
また、上記(B)助触媒のうち固体のものであれば、担体兼助触媒として使用することが可能であり、かつ好ましい。具体例としては、(B−3)固体酸や(B−4)イオン交換性層状珪酸塩などが挙げられる。ブロック共重合体の粒子性状を向上させるためには各種公知の造粒を行うのが好ましい。
【0060】
有機固体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体或いはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体もしくは共重合体の固体を例示することができる。
【0061】
以上の触媒の各成分(A)〜(D)の例示においては、触媒各成分が本発明の本質をなすものではないので、煩雑で冗長な列挙を避けて、簡潔に代表的な例示にとどめている。本発明においては、例示された以外の同等の成分も内包されることは当然のことであり、これらが排除される理由は何もない。
【0062】
<触媒成分の接触>
成分(A)と成分(B)及び必要に応じて成分(C)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時またはオレフィンの重合時に行ってもよい。
【0063】
1)成分(A)と成分(B)を接触させる
2)成分(A)と成分(B)を接触させた後に成分(C)を添加する
3)成分(A)と成分(C)を接触させた後に成分(B)を添加する
4)成分(B)と成分(C)を接触させた後に成分(A)を添加する
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
【0064】
好ましい接触方法は成分(B)と成分(C)を接触させた後、未反応の成分(C)を洗浄等で除去し、その後再度必要最小限の成分(C)を成分(B)に接触させ、その後成分(A)を接触させる方法である。この場合のAl/遷移金属のモル比は0.1〜1,000、好ましくは2〜10、より好ましくは4〜6の範囲である。
【0065】
成分(A)と成分(C)を接触させる(その場合成分(B)が存在していてもよい)温度は好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜80℃、特に好ましくは30〜60℃である。この温度範囲より低い場合は反応が遅くなるし、また、高い場合は成分(A)の分解反応が進行する。
【0066】
また成分(A)と成分(C)を接触させる(その場合成分(B)が存在していてもよい)場合には有機溶媒を溶媒として存在させるのが好ましい。この場合の成分(A)の有機溶媒中での濃度は高い方が良く、好ましくは3mM,より好ましくは4mM、特に好ましくは6mMである。
【0067】
上記の触媒成分のうち成分(A)と成分(B)の使用量は、それぞれの組み合わせの中で最適な量比で用いられる。
【0068】
成分(B)が、アルミニウムオキシ化合物の場合はAl/遷移金属のモル比は通常10以上100,000以下、さらに100以上20,000以下、特に100以上10,000以下の範囲が適する。一方、成分(B)としてイオン性化合物或いはルイス酸を用いた場合は、対遷移金属のモル比は0.1〜1,000、好ましくは1〜100、より好ましくは2〜10の範囲である。
成分(B)として、固体酸或いはイオン交換性層状珪酸塩を用いる場合は、成分(B)1gにつき、遷移金属錯体0.001〜10ミリモル、好ましくは0.001〜1ミリモルの範囲である。またその場合成分(B)は酸点を持つのが好ましい。酸点の量の下限については、成分(B)1gにつきpKa<−8.2以下の強酸点において、好ましくは30μモル、より好ましくは50μモル、特に好ましくは100μモルである。酸点の量は特開2000−158707号公報の記載に従い測定される。
【0069】
(2)予備重合
本発明の触媒は、粒子性の改良のために、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すのが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用するのが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的に或いは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合時間は、特に限定されないが、5分〜24時間の範囲であるのが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(B)1質量部に対し、好ましくは0.01〜100質量部、より好ましくは0.1〜50質量部である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
【0070】
予備重合温度は特に制限されないが、通常0℃〜100℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜60℃、特に好ましくは30〜50℃である。この範囲を下回ると反応速度が低下したり、活性化反応が進行しないという弊害が生じる可能性があり、上回ると予備重合ポリマーが溶解したり、予備重合速度が速すぎて粒子性状が悪化したり、副反応のため活性点が失活するという弊害が生じる可能性がある。
【0071】
予備重合時には有機溶媒等の液体中で実施することもでき、むしろそうするのが好ましい。予備重合時の固体触媒の濃度は特に制限されないが、好ましくは50g/L以上、より好ましくは60g/L以上、特に好ましくは70g/L以上である。濃度が高い方がメタロセンの活性化が進行し、高活性触媒となる。
【0072】
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0073】
(3)重合
本発明のプロピレン系ブロック共重合体を製造するための重合プロセスは、前段工程、後段工程ともに、スラリー法、バルク法、気相法、溶液法などを任意に用いることができる。しかしながら本発明は、粒子性状が良好であることが特徴であるから、敢えて溶媒回収工程が必要で非効率な溶液法を用いる必要はない。またエラストマー成分を製造する後段工程においては、エラストマー成分の溶出がより少ない、バルク法あるいは気相法が好ましい。重合方式については、バッチ重合法、連続重合法のいずれを採用することも可能である。重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは、40℃〜100℃の範囲を用いることができる。重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0.1〜20MPa、好ましくは、0.5〜5MPaの範囲を用いることができる。この際に、窒素などの不活性ガスを共存させることも可能である。
【0074】
また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させることにより、分子量(あるいはMFR)を制御して所望の重合体を得ることができる。本発明においては上記の触媒系のうち、成分(A)のメタロセン錯体と、成分(B)のうちでモンモリロナイトを組み合わせた場合、通常のメタロセン活性点と比較して、水素応答性が低い活性点も生成し、高分子量成分を生成することができる。従来のメタロセン触媒を使用した場合、特に後段工程において共重合体中の1−ブテン含量が増加するほど分子量は低下するため、成形加工上実用的な分子量(MFR)にするためには、分子量調節剤である水素を使用することができない(分子量・MFRの制御ができない)、あるいはその制御範囲が非常に狭いものであった。本発明では水素が存在しても高分子量成分の存在量をほとんど維持したまま、平均重量分子量(MFR)を調節することができ、樹脂加工成形性に適した分子量(MFR)の範囲に収めることができる。この時、水素濃度の制御範囲としては、0〜1mol%の任意の値に設定することができる。
【0075】
これらの手法により、本発明の特徴を有する所望のプロピレン系ブロック共重合体を得ることができる。
【実施例】
【0076】
下記の実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものである。本発明はその要旨を逸脱しないかぎりこれら実施例によって制約を受けるものではない。
【0077】
以下の製造例によって得られたプロピレン系ブロック共重合体は、以下の測定法により分析を行った。
【0078】
(1)各段工程で製造されたランダム共重合体重合量
o−ジクロルベンゼンを溶媒とする温度上昇溶離分別法(TREF)により、各段で製造された共重合体を分別し、各段での重合量を算出した。
(2)エチレン含量および1−ブテン含量
13C−NMRを用いて、プロピレン系ブロック共重合体中の各含量を算出し、(1)にて算出された各段での共重合体重合量より、各段でのエチレン含量および1−ブテン含量を算出した。
(3)MFR
JIS K7210 A法 条件M に従い、以下の条件で測定した。
試験温度:230℃
公称加重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm 長さ8.00mm
(5)嵩比重:JIS K8721に準拠して測定した。
(6)触媒効率:重合工程によって得られたプロピレン系ブロック共重合体の収量を、使用した触媒量(予備重合パウダーを除いた固体触媒量)にて除した値である。
(7)粒子性状:重合工程によって得られたプロピレン系ブロック共重合体の性状を目視にて観察した。
【0079】
[実施例1]
以下に触媒合成工程および重合工程を示す。以下の工程は、すべて精製窒素雰囲気下で行った。また溶媒は、モレキュラーシーブMS−4Aで脱水したものを用いた。
(1)触媒の合成
a.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた3Lセパラブルフラスコに、純水2250gを投入し、98%硫酸665gを滴下し、内部温度を90℃にした。そこへ、さらに市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:47.1μm)を400g添加後撹拌した。その後90℃で3時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、2Lの純水で5回洗浄した。
このようにして回収されたケーキは、5Lビーカー内において硫酸亜鉛7水和物423gを純水1523mlに溶解させた水溶液に加えて室温で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、2Lの純水で5回洗浄してケーキを回収し、これを120℃で終夜乾燥して295gの化学処理モンモリロナイトを得た。これを目開き74μmの篩にて篩い分けしたところ、篩通過分は全体の重量の90%であった。
【0080】
b.乾燥工程
上記a.で得た化学処理モンモリロナイトを容積1Lのフラスコに入れ、200℃で3時間減圧乾燥させたところガスの発生が収まった。その後さらに2時間減圧乾燥して被処理モンモリロナイトを得た。その水分含量を測定したところ、水分値は1.11質量%であった。
【0081】
c.被処理モンモリロナイトの有機アルミニウム処理
内容積1Lのフラスコに上記b.で得た被処理モンモリロナイト19.9gを秤量し、ヘプタン72ml、トリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液128.0ml(50.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄したのち、100ml量に調整されたスラリーを得た。
【0082】
d.プロピレンによる予備重合
上記(1)のc.で得たスラリーに、トリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液6.13ml(2400μmol)を加えた。ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で、(r)−ジクロロ[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム439mg(600.7μmol)にヘプタン(60ml)を加えたスラリーを加えて、60℃で60分間撹拌した。
このようにして得られたスラリーに、さらにヘプタン340mlを追加して全量を500mlに調整し、十分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間40℃を持した。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を400ml抜き出した。続いてトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液16.72ml(12.01mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥して固体触媒を63.80g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.12であった。
【0083】
(2)重合
(前段工程)
内容積3Lの攪拌機付きオートクレーブをプロピレンガスで十分に置換した後、温度を30℃に維持しながら、トリイソブチルアルミニウム2.0mmol、水素0.09NL、エチレン19g、プロピレン750gを入れ、攪拌を開始した。温度を70℃に昇温し、上記で調整した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)20.0mg入れた。温度を70℃に維持しながら、15分間重合を行った。温度を40℃に維持しながら残留した未反応モノマーを放出し、アルゴンガスにてオートクレーブ内を置換した。
【0084】
(後段工程)
反応器の温度を80℃、圧力を2.0MPaGに保ち、かつオートクレーブ内気相部の1−ブテン/プロピレンモル比が0.175、水素濃度が0.011mol%になるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、60分間気相重合を行った。温度を40℃に維持しながら残留した未反応モノマーを放出し、アルゴンガスにてオートクレーブ内を置換した。結果、オートクレーブ内に365gのプロピレン系ブロック共重合体を得た。得られた重合体の分析結果を表1に示す。
【0085】
[実施例2〜3、比較例1〜2]
重合条件を一部変更した以外は、実施例1と同様にしてプロピレン系ブロック共重合体を得た。重合条件と重合結果(重合体の分析結果)を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
(実施例および比較例による考察)
表1の結果から、実施例1〜3と比較例1又は2とを対比すると、本発明の特定事項である、「後段工程は、1−ブテン含量が5〜50wt%のランダム共重合体成分を製造する」との要件を満たさない比較例1では、後段工程での1−ブテン含量が本請求範囲を逸脱しているため、重合体は塊状となり、工業的に高効率に生産することはできないこと、及び、同じく本発明の特定事項である、「前段工程は、エチレン含量が0.1〜8.5wt%のランダム共重合体成分を製造する」との要件を満たさない比較例2では、前段工程でのエチレン含量が本請求範囲を逸脱しているため、性状は良好であるが触媒効率が極端に低下しており、実施例に比べ生産性に劣っているのに比べて、実施例によるものは、そのような問題が無く、後段工程においてブテン系エラストマーとして十分な1−ブテン含量を有するランダム共重合体成分を、プロピレン系ブロック共重合体中に含有し、さらにこのような共重合体を性状良く、高効率に製造可能であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、それ自体で優れた柔軟性および耐衝撃性に優れるとともに、耐熱性およびヒートシール性にも優れる新規なプロピレン系ブロック共重合体を粒子状で得ることができる。そのため、特にキャストフィルムまたは二軸延伸フィルムのシーラントとして好適に用いることができ、加工性に優れたフィルムを与えることができる。
また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、特定のメタロセン触媒を用いることにより、従来のチーグラー・ナッタ触媒系に匹敵する重合活性、共重合性、高分子量を実現し、且つチーグラー・ナッタ触媒系よりも非晶性成分が少なくポリマー性状に優れるため、工業的に容易な条件において、高効率且つ低エネルギーにて製造することができるため、工業的価値は極めて大きい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒の存在下に、前段工程及び後段工程からなる多段重合を連続的に行うことによって製造される、下記の要件(a)〜(c)を満たすプロピレン系ブロック共重合体であって、
前段工程は、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体成分を製造し、
引き続き、後段工程は、プロピレンと1−ブテンとのランダム共重合体成分を製造することによって得られることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体。
要件(a):前段工程で製造されたランダム共重合体成分中のエチレン含量が、0.1〜8.5wt%である。
要件(b):後段工程で製造されたランダム共重合体成分中の1−ブテン含量が、5〜50wt%である。
要件(c):後段工程で製造されたランダム共重合体成分の割合が、プロピレン系ブロック共重合体を基準として、5〜50wt%である。
【請求項2】
粒子の嵩比重が、0.3〜0.6g/mlであることを特徴とする請求項1のプロピレン系ブロック共重合体。
【請求項3】
メタロセン触媒の存在下に、前段工程及び後段工程からなる多段重合を連続的に行うことによって製造される、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、
ランダム共重合体成分中のエチレン含量が0.1〜8.5wt%である、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体成分を製造する前段工程と、引き続き、該ランダム共重合体成分の存在下、1−ブテン含量が5〜50wt%であるランダム共重合体成分を、プロピレン系ブロック共重合体を基準として、5〜50wt%となるように製造する後段工程とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
メタロセン触媒は、あらかじめ予備重合されたものであることを特徴とする請求項3に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
後段工程は、気相重合で行うことを特徴とする請求項3または4に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項6】
前段工程は、気相重合で行うことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
後段工程で製造されるランダム共重合体成分の分子量は、後段工程に存在する水素の濃度によって制御されることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。



【公開番号】特開2008−260827(P2008−260827A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103778(P2007−103778)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】