説明

プロペラシャフトのガード構造

【課題】製造コストの高騰や車両重量の増加などのデメリットを未然に防止した上で、プロペラシャフトの脱落及びそれに伴う振れ回りによる種々のトラブルを確実に防止できるプロペラシャフトのガード構造を提供する。
【解決手段】車両のクロスメンバ2の下方にプロペラシャフト3を配設し、クロスメンバ2の後端縁2bに略U字状のガード枠5を吊下してプロペラシャフト3の脱落を防止する。クロスメンバ2の前端縁2aにはリレーバルブ9支持用のブラケット8を固定し、ブラケット8の下端をリレーバルブ9よりも下方に延設して、そのブラケット8のの下端によりプロペラシャフト3の振れ回りによる上方への変位を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロペラシャフトのガード構造に係り、詳しくはジョイント部の外れなどに起因するプロペラシャフトの振れ回りによるトラブルを防止するプロペラシャフトのガード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトラックや乗用車などのフロントエンジン・リアドライブの駆動方式を採用した車両では、エンジンと共に車両前部に搭載された変速機をプロペラシャフトを介して車両後部のリアアクスルの差動装置と連結することによりエンジン駆動力の伝達を行っている。プロペラシャフトは前後両端や中間にジョイント部を備え、これにより変速機側と差動装置側との間の高低差や入出力方向の差を吸収しながら駆動力を伝達するように配慮されている。
当然ながらプロペラシャフトの仕様は伝達すべき駆動力を考慮した上で十分な安全率をもって設定されているが、何らかの原因によりプロペラシャフトが変速機または差動装置から外れた場合などには車体から脱落してしまう。このときのプロペラシャフトは変速機側或いは差動装置側から切り離されて路面と接触するだけでなく、エンジン停止或いは車両停止まで所謂振れ回りを発生させる。振れ回りにより上方に変位したプロペラシャフトは車両のボディに衝突したり、或いはシャーシフレームに配設した補機に衝突したりして、これらの部材を破損させるトラブルを引き起こしてしまうおそれがある。そこで、このようなトラブルを防止するために対策が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
当該特許文献1に記載された技術では、上記したプロペラシャフトの脱落及びそれに伴う振れ回りによって発生するトラブルをガード枠により防止している。ガード枠は帯状の鋼板をU字状に湾曲形成して製作され、ガード枠内にプロペラシャフトを挿通させた状態で、ガード枠の上部両端が車両のクロスメンバの下面に固定されている。
ガード枠の内面の左右両側には、帯状の鋼板をく字状に屈曲形成したプロテクタがそれぞれ溶接され、ガード枠内で対峙した両プロテクタの間隙はプロペラシャフトの直径よりも小さく設定されている。これによりプロペラシャフトの脱落時の路面との接触をガード枠の下部により規制する一方、振れ回りに伴うプロペラシャフトの上方への変位を両プロテクタにより規制して車両のボディや補機などの破損防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−80033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにガード枠はプロペラシャフトの脱落及びそれに伴う振れ回りによる種々のトラブルを防止する非常に重要な部材ではあるが、その機能はプロペラシャフトの脱落が生じた緊急時に限定され、通常時において車両の走行性能などに何ら貢献するものではない。従って、製造コストや車両重量などを考慮すると、ガード枠の構成は可能な限り簡素であることが望ましい。
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、プロペラシャフトの上方への変位を規制するためにガード枠内にプロテクタを設けている。このため、別部材としてプロテクタを設けたことに付随する重量増加や材料費の追加、或いはプロテクタの製作及びガード枠内への溶接に伴う組立工数の増加などが発生する。そして、これらの諸要因により製造コストの高騰及び車両重量の増加などの望ましくない問題が生じた。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、製造コストの高騰や車両重量の増加などのデメリットを未然に防止した上で、プロペラシャフトの脱落及びそれに伴う振れ回りによる種々のトラブルを確実に防止することができるプロペラシャフトのガード構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、車両の前後方向に延設された左右一対のサイドメンバを相互に連結してシャーシフレームを構成するクロスメンバと、クロスメンバの下方に配設されて、エンジンからの駆動力をリアアクスル側に伝達するプロペラシャフトと、プロペラシャフトの脱落による路面との接触を規制する下方規制部材と、プロペラシャフトの上方でクロスメンバに固定され、補機が取り付けられたブラケットとを備えた車両において、ブラケットの下端を補機よりも下方に延設し、ブラケットをプロペラシャフトの振れ回りに伴う上方への変位を規制する上方規制部材として機能させるものである。
請求項2の発明は、請求項1において、プロペラシャフトが、車両前方から車両後方に下るように傾斜して配設され、下方規制部材が、プロペラシャフトを下方及び左右両側方から包囲するように略U字状に形成されて、クロスメンバの後端部に吊下されたガード枠であり、ブラケットが、クロスメンバの前端部に固定されたものである。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように請求項1の発明のプロペラシャフトのガード構造によれば、車両のシャーシフレームを構成するクロスメンバの下方にプロペラシャフトを配設すると共に、プロペラシャフトの脱落による路面との接触を規制する下方規制部材を設け、クロスメンバに固定された補機取付用のブラケットの下端を下方に延設して、プロペラシャフトの振れ回りに伴う上方への変位を規制する上方規制部材として機能させるようにした。
従って、プロペラシャフトが脱落したときには下方規制部材により路面との接触が防止され、脱落に伴う振れ回りによりプロペラシャフトが上方に変位すると、ブラケットの支持面の下端に衝突して規制される。このため、例えばブラケットに取り付けられた補機やその周辺に配設された別の補機などへのプロペラシャフトの衝突が防止され、これらの部材の破損を未然に防止することができる。
【0008】
そして、補機の取付のために備えられた既存のブラケットを利用し、その下端を下方に延設して上方規制部材として機能させているため、これによる重量増加及び材料費の増加はごく僅かである。また、ブラケットの形状変更だけで対応可能なため、新たに別部材の製作などにより組立工数が増加することもない。よって、製造コストの高騰や車両重量の増加などのデメリットを回避した上で実施することができる。
請求項2の発明のプロペラシャフトのガード構造によれば、請求項1に加えて、クロスメンバの後端部に下方規制部材としてのガード枠を吊下し、クロスメンバの前端部にブラケットを固定して、その支持面を上部規制部材として機能させるようにした。
従って、クロスメンバの後端部にブラケットを固定した場合に比較して前端部に固定した場合には、車両前方から車両後方に下るように傾斜して配設されたプロペラシャフトに対してブラケットが接近する。このため、ブラケットの支持面をそれほど下方に延設しなくてもプロペラシャフトの変位を規制可能となり、支持面の下方への延設量を極力縮小してブラケットの重量や材料費を一層節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態のトラックのプロペラシャフトを斜め下方より見た斜視図である。
【図2】同じくプロペラシャフトを側方より見た図1のII−II線断面図である。
【図3】同じくプロペラシャフトを前方より見た図2のIII−III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をトラック用のプロペラシャフトのガード構造に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のトラックのプロペラシャフトを斜め下方より見た斜視図、図2は同じくプロペラシャフトを側方より見た図1のII−II線断面図、図3は同じくプロペラシャフトを前方より見た図2のIII−III線断面図である。
トラックのシャーシフレームは、左右一対の前後方向に延設したサイドメンバ1、及びこれらのサイドメンバ1を前後方向の複数箇所において相互に連結する複数のクロスメンバ2からなる所謂ラダーフレームとして構成されている。なお、各図では車両前方より2番目のクロスメンバ2が示されている。
図示はしないが、図1,2の左方に相当する車両前部にはシャーシフレーム上にエンジン及び変速機が搭載され、右方に相当する車両後部にはシャーシフレーム上に差動装置を含めたリアアクスルが設けられている。変速機と差動装置とはプロペラシャフト3により連結され、上記クロスメンバ2はプロペラシャフト3の上方、且つ前後方向の略中間に位置している。
【0011】
変速機の出力位置に対して差動装置の入力位置は低く、このためプロペラシャフト3は車両前方から車両後方に下るように傾斜して配設されている。プロペラシャフト3の前後両端にはジョイント部が備えられ、これにより変速機と差動装置との高低差や入出力方向の差を吸収しながらプロペラシャフト3が駆動力を伝達するようになっている。
上記クロスメンバ2は鋼板をプレス成型して製作され、その左右両端は下方に直角に屈曲されてサイドメンバ1の内側面に対してそれぞれ一対のボルト4により結合されている。クロスメンバ2は剛性確保のために、図2に示すように側方より見た断面形状が全体として下方に開口するコ字状に形成されており、その前端縁2a(前端部)は前方に向けて水平に延設され、後端縁2b(後端部)は後方に向けて水平に延設されている。
【0012】
クロスメンバ2の後端縁2bの下面にはガード枠5(下方規制部材)が取り付けられている。ガード枠5は帯状の鋼板をU字状に湾曲形成して製作され、その上部両端は互いに接近方向に屈曲されてそれぞれ固定面5aを形成している。これらの固定面5aはクロスメンバ2の後端縁2bの下面に対してそれぞれボルト6で固定され、これによりガード枠5は後端縁2bの下面から吊下された姿勢でシャーシフレームに取り付けられている。上記プロペラシャフト3はガード枠5内に挿通されて略中央に位置し、ガード枠5の内面と接触することなく自由に回転可能となっている。
ここで、各図から明らかなように本実施形態のガード枠5は、プロペラシャフト3を下方及び左右両側方から包囲するものの、例えば特許文献1に記載されたガード枠が有するプロテクタに相当する部材は備えていない。このため、後述するプロペラシャフト3の振れ回り時には、その上方への変位を規制する役割をガード枠5が果すことはない。
【0013】
一方、クロスメンバ2の前端縁2aには固定面8a及び支持面8bからなる断面L字状のブラケット8(上方規制部材)が配設され、その固定面8aは前端縁2aの上面に当接して溶接されている。ブラケット8の支持面8bは固定面8aから車両下方側に屈曲するように設けられ、その前面にはリレーバルブ9(補機)が取り付けられている。ブラケット8及びリレーバルブ9は左右方向においてプロペラシャフト3の上方に位置し、リレーバルブ9はプロペラシャフト3から十分な間隙L1をもって上方に離間している。
リレーバルブ9は車両のエアブレーキシステムの一部を構成するバルブユニットであり、より具体的には、車両駐車時に各車輪に制動力を作用させるホイールパーキングブレーキ装置のためのエア制御用のバルブユニットである。リレーバルブ9からは多数のエア配管10が左右方向に向けて延設されて、それぞれ図示しないエアタンクや各車輪のブレーキ装置などに接続されている。車両駐車時のリレーバルブ9は、エアタンクからの圧縮エアを切換制御してエア配管10を介して各車輪のブレーキ装置に供給して作動させ、これによりパーキングブレーキ機能を奏する。
【0014】
リレーバルブ9への衝撃はエア切換不能につながり、エア配管10への衝撃はエア漏れにつながり、何れもパーキングブレーキ機能を損ねる要因になる。このため、振れ回り時のプロペラシャフト3が上方に変位したときに、リレーバルブ9、エア配管10に衝突する事態を防止する対策が必須となる。
ところで、リレーバルブ9支持の観点からは、リレーバルブ9と対応する高さにブラケット8の支持面8bを形成すれば、何ら問題なくリレーバルブ9を取付可能である。このときのブラケット8の支持面8bの下端はプロペラシャフト3よりも上方に十分に離間することになるが、本実施形態では、リレーバルブ9支持に必要な領域を越えてブラケット8の支持面8bがさらに下方に延設されている。詳しくは、ブラケット8の支持面8bはリレーバルブ9の下面に相当する高さよりもさらに下方に延設され、支持面8bの下端はプロペラシャフト3の直上に位置して僅かな間隙L2(<L1)をもって離間している。
【0015】
当然であるが、プロペラシャフト3の回転時にはブラケット8の支持面8bがプロペラシャフト3に干渉しないように、間隙L2の大きさが設定されている。なお、各図では支持面8bの下端を直線状に形成しているが、これに限ることはなく、例えば円弧状に凸または凹となるように支持面8bの下端を形成してもよい。
また、特に図3に示すように、ブラケット8の支持面8bの左右幅はリレーバルブ9支持に必要な最小限の領域を確保した上で、ガード枠5の左右幅よりも格段に狭くなっている。このため、ブラケット8の支持面8bの左端及び右端とガード枠5の内面との間にはそれぞれ間隙L3が形成され、各間隙L3はプロペラシャフト3の直径Dよりも狭く設定されている(D>L3)。
【0016】
次に、以上のように構成されたプロペラシャフト3のガード構造による作用を説明する。
車両走行時においてプロペラシャフト3は回転しながら変速機からの駆動力を差動装置側に伝達しており、このときのプロペラシャフト3はガード枠5の内面やブラケット8の支持面8bと干渉することなく動力伝達を行う。
例えばプロペラシャフト3の前後両端に設けられたジョイント部などが何らかの原因により変速機または差動装置から外れたりすると、プロペラシャフト3は変速機側或いは差動装置側から切り離されて脱落してしまう。このようなプロペラシャフト3の脱落はガード枠5により規制され、これによりプロペラシャフト3と路面との接触が防止される。
【0017】
また、上記したようにガード枠5は特許文献1に記載されたプロテクタに相当する部材を備えないため、脱落に伴ってプロペラシャフト3が振れ回りを発生したとき、プロペラシャフト3の上方への変位を規制する役割は果たさない。しかし、このプロテクタの機能は、本実施形態ではブラケット8の支持面8bにより代替される。
即ち、振れ回りにより上方に変位したプロペラシャフト3は、その直上に位置するブラケット8の支持面8bの下端に衝突して規制される。ブラケット8の支持面8bの左右に形成された間隙L3はプロペラシャフト3の直径Dよりも狭いため、図3に二点鎖線で示すように、プロペラシャフト3の上方への変位がガード枠5内の左側または右側で生じたときでも、プロペラシャフト3は支持面8bに衝突して確実に規制される。
【0018】
そして、支持面8bの下端よりもリレーバルブ9の下面が上方に位置していることから、プロペラシャフト3のリレーバルブ9への衝突が防止されると共に、エア配管10への衝突も防止される。よって、このようなプロペラシャフト3の振れ回りが発生した場合であっても、ホイールパーキングブレーキ装置は障害を受けることなく正常な機能を維持する。
なお、振れ回りによりプロペラシャフト3は左右両側方にも変位するが、これらの方向への変位は従来の特許文献1の技術と同じくガード枠5により規制される。よって、シャーシフレーム上のプロペラシャフト3の左右何れかの位置にリレーバルブとは別の補機が配置されていても、当該機器へのプロペラシャフト3の衝突による破損がガード枠5により防止される。
【0019】
以上のようにプロペラシャフト3の脱落及びそれに伴う振れ回りによる種々のトラブルは、ガード枠5とブラケット8の支持面8bが協調することにより確実に防止される。
ここで、パーキングブレーキ機能を維持するためにリレーバルブ9及びエア配管10の保護は特に優先すべきものであるが、本実施形態では、リレーバルブ9を支持するブラケット8自体がプロペラシャフト3の上方への変位を規制する役割を果たしているため、リレーバルブ9及びエア配管10の破損をより確実に防止できる。
【0020】
そして、本実施形態のプロペラシャフト3のガード構造を特許文献1の技術と比較した場合、製造コストや車両重量の面で格段に有利になる。
即ち、本実施形態は、特許文献1の技術のプロテクタをブラケット8の支持面8bで代替したものであるが、元々ブラケット8はリレーバルブ9の取付のために備えられた既存の部材であり、その支持面8bを下方に延設して利用しているに過ぎない。よって、これによる重量増加及び材料費の増加はごく僅かであり、またブラケット8の形状変更だけで対応できることから、別部材のプロテクタの製作や溶接などで組立工数が増加することもない。結果として、特許文献1の技術が抱える製造コストの高騰や車両重量の増加などのデメリットを未然に回避した上で、上記のようなプロペラシャフト3の振れ回りによる種々のトラブルを確実に防止することができる。
【0021】
一方、プロペラシャフト3は車両後方に下るように傾斜しているため、クロスメンバ2の後端縁2bにブラケット8を配設すると、その支持面8bをかなり下方に延設しなければプロペラシャフト3の変位を規制できない。これに対して本実施形態のようにクロスメンバ2の前端縁2aにブラケット8を配設した場合には、プロペラシャフト3に対してブラケット8が接近することから、支持面8bをそれほど下方に延設しなくてもプロペラシャフト3の変位を規制可能となる。このため、ブラケット8の支持面8bの下方への延設量を極力縮小でき、もって重量や材料費のさらなる節減を達成することができる。
但し、本発明は、クロスメンバ2の前端縁2aにブラケット8を配設した構成に限定されるものではない。よって、例えばクロスメンバ2の後端縁2bにブラケット8を配設し、前端縁8aにガード枠5を吊下してもよい。この場合、ブラケット8の支持面8bは後方に面し、その支持面8bにリレーバルブ8などの補機が取り付けられることになる。
【0022】
また、ブラケット8の支持面8bの左右幅は、リレーバルブ9を支障なく支持可能であり且つプロペラシャフト3の上方への変位を規制可能な必要最小限の大きさに設定されている。この要因もブラケット8の重量や材料費の節減に貢献している。
ところで、本実施形態では、補機としてホイールパーキングブレーキ装置のリレーバルブ9をブラケット8に支持したが、本発明の補機はリレーバルブ9に限定されるものではない。プロペラシャフト3の周辺には種々の補機が配設されているため、それらの補機の中からプロペラシャフト3の直上に位置変更可能なものを選択し、その補機をクロスメンバ2からブラケット8を介して取り付け、ブラケット8の支持面を振れ回り時のプロペラシャフト3の上方への変位を規制するために利用すればよい。
【0023】
具体的には、トラックに搭載されたディーゼルエンジンの排気系には排気浄化装置としてSCR触媒が装備されると共に、その上流側に尿素水の噴射ノズルが設けられ、尿素水から生成されたアンモニアを利用してSCR触媒がNOx浄化作用を奏している。そして、噴射ノズルの近接位置には噴射量を定量調整するためのドージングバルブが配設されているが、このドージングバルブを補機と見なしてクロスメンバ2からブラケット8で支持してもよい。
また、噴射ノズルには尿素水をエアと混合して噴射する方式のものが存在するが、この場合にはエアの供給を制御するためのエア制御バルブを噴射ノズルの近接位置に設けている。そこで、このエア制御バルブを補機と見なしてクロスメンバ2からブラケット8で支持してもよい。
【0024】
また、トラックの燃料タンクは車両の側部や後部に配設され、燃料タンク内の燃料は燃料配管を介して車両前部のエンジンに供給されている。従って、燃料配管はプロペラシャフト3の近接位置を経て配設され、燃料配管上には燃料ポンプやストレーナなどが介装されている。そこで、燃料ポンプやストレーナを補機と見なしてクロスメンバ2からブラケット8で支持してもよいし、燃料配管自体を補機と見なしてブラケット8で支持してもよい。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではトラック用のプロペラシャフト3のガード構造に具体化したが、対象となる車両はこれに限定されるものではなく、プロペラシャフト3を備えた車両であれば任意に変更可能であり、例えば乗用車やバスに適用してもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、帯状の鋼板をU字状に湾曲形成したガード枠5をブラケット8と共通のクロスメンバ2に固定したが、ガード枠5の形状や取付位置は上記に限定されるものではない。例えばブラケット8とは別のクロスメンバにガード枠5を取り付けてもよいし、ガード枠5の形状を四角枠状などに変更してもよい。
また、上記実施形態では、一体型のプロペラシャフト3を対象としたが、前後に2分割したプロペラシャフトに適用してもよい。その場合には前後のプロペラシャフトの振れ回りをそれぞれ想定して、各プロペラシャフトに個別に上記のようなガード枠5及びブラケット8を設けてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 サイドメンバ
2 クロスメンバ
2a 前端縁(前端部)
2b 後端縁(後端部)
3 プロペラシャフト
5 ガード枠(下方規制部材)
8 ブラケット(上方規制部材)
8b 支持面(上方規制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延設された左右一対のサイドメンバを相互に連結してシャーシフレームを構成するクロスメンバと、
上記クロスメンバの下方に配設されて、エンジンからの駆動力をリアアクスル側に伝達するプロペラシャフトと、
上記プロペラシャフトの脱落による路面との接触を規制する下方規制部材と、
上記プロペラシャフトの上方で上記クロスメンバに固定され、補機が取り付けられたブラケットと
を備えた車両において、
上記ブラケットの下端を上記補機よりも下方に延設し、該ブラケットを上記プロペラシャフトの振れ回りに伴う上方への変位を規制する上方規制部材として機能させることを特徴とするプロペラシャフトのガード構造。
【請求項2】
上記プロペラシャフトは、車両前方から車両後方に下るように傾斜して配設され、
上記下方規制部材は、上記プロペラシャフトを下方及び左右両側方から包囲するように略U字状に形成されて、上記クロスメンバの後端部に吊下されたガード枠であり、
上記ブラケットは、上記クロスメンバの前端部に固定されたことを特徴とする請求項1記載のプロペラシャフトのガード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−254726(P2012−254726A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129041(P2011−129041)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】