説明

プロペンからアクリル酸への触媒的気相酸化法

【課題】新規のプロペンからアクリル酸への触媒的気相酸化法を提供する。
【解決手段】反応ガス出発混合物を、高められたプロペン負荷で、第1反応工程で、連続する2つの反応帯域A、Bに置かれている第1固床触媒に接して酸化させ(この際、反応帯域Bは、反応帯域Aよりも高い温度に保持されている)、引き続き、第1反応工程のアクロレインを含有する生成ガス混合物を、第2反応工程で、高められたアクロレイン負荷下に、連続する2つの反応帯域C、D中に置かれている第2固床触媒に接して酸化させる(この際、反応帯域Dは、反応帯域Cよりも高い温度に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペン、分子状酸素及びその体積の少なくとも20%までが分子状窒素から成る少なくとも1種の不活性ガスを含有し、分子状酸素及びプロペンをモル比O:C≧1で含有する反応ガス出発混合物1を、先ず第1反応工程で、高めた温度で、その活性物質がモリブデン及び/又はタングステン、ならびにビスマス、テルル、アンチモン、錫及び銅をからなる群から選択される1種以上含有する多種金属酸化物である第1固床触媒上に、プロペン変換率が1回の通過で≧90モル%となり、それに伴うアクロレイン生成及びアクリル酸副生成物生成の選択率が総括的に≧90モル%となるように導びき、第1反応工程を出る反応ガス混合物の温度を、間接的及び/又は直接的冷却によって場合により低下させ、生成ガス混合物に場合により分子状酸素及び/又は不活性ガスを添加し、その後に、生成ガス混合物を、アクロレイン、分子状酸素及びその体積の少なくとも20%までが分子状窒素から成る少なくとも1種の不活性ガスを含有し、分子状酸素及びアクロレインをモル比O:CO≧0.5で含有する反応ガス出発混合物2として、第2反応工程で、高めた温度で、その活性物質がモリブデン及びバナジウムを含有する少なくとも1種の多種金属酸化物である第2固床触媒上に、アクロレイン変換率が1回の通過で≧90モル%となり、双方の反応工程を経た平均のアクリル酸生成の選択率が、変換されるプロペンに対して、≧80モル%となるように導びく、プロペンからアクリル酸への触媒的気相酸化法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロペンからアクリル酸への前記の触媒的気相酸化法は、一般に公知である(例えば、DE−A3002829参照)。特に、2つの反応工程は自体公知である(例えば、EP−A714700、EP−A700893、EP−A15565、DE−C2830765、DE−C3338380、JP−A91/294239、EP−A807465、WO98/24746、EP−B279374、DE−C2513405、DE−A3300044、EP−A575897及びDE−A19855913参照)。
【0003】
アクリル酸は、重要なモノマーであり、そのものとして又はそのアルキルエステルの形で、例えば接着剤として好適なポリマーの製造に使用される。
【0004】
プロペンからアクリル酸への各2段階的固床気相酸化の目的は、基本的には、アクリル酸のできるだけ高い空−時−収率(RZAAS)を達成することにある(これは、連続的方法で、使用される触媒床の時間及び総体積毎に生じるアクリル酸の総量/Lである)。
【0005】
従って、この際、2つの固床触媒床を通る反応ガス出発混合物の1回の通過で生じるプロペン及びアクロレインの変換率及びそれに伴うアクリル酸生成の2つの反応工程を経る平均の選択率(変換されたプロペンに対する)を著しく損なうことなく、プロペンからアクリル酸へのそのような2段階的固床気相酸化を、一方で、プロペンでの第1固床触媒床のできるだけ高い負荷下に(これは、反応ガス出発混合物1の成分として、1時間当たり、触媒床1の1リットルを通って導かれるプロペンの量/NL(=NL;相応するプロペン量を、標準条件、即ち25℃及び1バールで取り込む体積/L)と解される)、かつ他方で、アクロレインでの第2固床触媒床のできるだけ高い負荷下に(これは、反応ガス出発混合物2の成分として、1時間当たり、触媒床1の1リットルを通って導かれるアクロレインの量/NL(=NL;相応するアクロレイン量を、標準条件、即ち25℃及び1バールで取り込む体積/L)と解される)実施することに一般的な関心がある。
【0006】
前記の実現は、一方で、プロペンからアクロレインへの固床気相酸化も、アクロレインからアクリル酸への固床気相酸化も強い発熱的に経過し、他方で、起こり得る平行−及び連続反応の多様性が伴うという事実によって損なわれる。
【0007】
従って、各々の固床触媒床のプロペン−又はアクロレイン負荷が増加するにつれて、実質的に一様なプロペン−又はアクロレイン変換率の目的である限界条件の実現化の際には、高められる熱発生の結果として、有価生成物生成の選択率が低下することから出発なければならない(例えばEP−B450596、例1及び例2参照)。
【0008】
従って、不活性希釈ガスの主成分としての窒素及び更に反応帯域中に存在し、この反応に沿って均一の、即ち、固床触媒床を経て化学的に単一の組成の固床触媒を使用し、反応帯域の温度を反応帯域を通じて単一の値に保つ(この際、反応帯域の温度とは、化学反応が行なわれない方法を実施する際の反応帯域中に存在する固床触媒床の温度のことであり;この温度は、反応帯域内では一定ではなく、従って、この際、反応帯域の温度の概念は、反応帯域に沿った触媒床の温度の数平均値を意味する)ことを特徴とする、プロペンからアクロレインへの、又はアクロレインからアクリル酸への触媒的固床気相酸化の慣用法は、固床触媒床のプロペン−又はアクロレイン負荷の適用すべき値を限定する。
【0009】
即ち、固床触媒床のプロペン負荷の適用値は、通例、プロペン≦155NL/触媒床L・hの値にある(例えば、EP−A15565(最高プロペン負荷=プロペン120NL/L・h)、DE−C2830765(最高プロペン負荷=プロペン94.5NL/L・h)、EP−A804465(最高プロペン負荷=プロペン128NL/L・h)、EP−B279374(最高プロペン負荷=プロペン112NL/L・h)、DE−C2513405(最高プロペン負荷=プロペン110NL/L・h)、DE−A3300044(最高プロペン負荷=プロペン112NL/L・h)、EP−A575897(最高プロペン負荷=プロペン120NL/L・h)、DE−C3338380(実際に全ての例において、最高プロペン負荷は、プロペン126NL/L・hである;特殊な触媒組成の例においてだけ、162NL/L・hのプロペン負荷が実現された)及びDE−A19855913(最高プロペン負荷=プロペン155NL/L・h)。
【0010】
世界知的所有権機構(WO)第98/24746号明細書は、プロペン148.8NL/L・hまでのプロペン負荷で既に、その体積比活性が反応ガス混合物の流れ方向で順次増加するように、触媒床を構成させることが必要であると認めている。
【0011】
特開平(JP−A)3−294239号明細書は、例としての実施態様で、実際に慣用の方法で、プロペン160NL/L・hの触媒床のプロペン負荷を、プロペンからアクロレインへの触媒的気相酸化に可能であると開示しているが、これは、同様に、反応ガス混合物の流れ方向で順次増加する体積比活性の値だけである。しかし、そのような方法は、大工業的にはあまり実施することができず、しかも、プロペンからアクロレインへの気相触媒的酸化は、何千本の接触管を有する管束反応器中で実施され、その各管は段階付けられた触媒床を装備されねばならない。
【0012】
欧州特許(EP−B)第450596号明細書に、構造化された触媒床の使用下に、その他は慣用の方法で、プロペン202.5NL/L・hの触媒床のプロペン負荷が実現された。これは、勿論、減少された有価生成物選択率を甘受している。
【0013】
欧州特許(EP−B)第253409号明細書及び付随する同等明細書、欧州特許(EP−B)第257565号明細書は、分子状窒素よりも高いモル比熱を有する不活性希釈ガスの使用下で、反応ガス出発混合物中のプロペン成分を高めることができることを開示している。しかし、それにもかかわらず、前記の2種の明細書においても、触媒床の実現された最高のプロペン負荷は、プロペン140NL/L・hである。
【0014】
欧州特許(EP−A)第293224号明細書で、プロペン160NL/L・h以上のプロペン負荷が実現された。これは、勿論、分子状窒素が全く含有されていない、特別に使用すべき不活性希釈ガスの負担にある。殊に、分子状窒素と異なり、その全ての成分とは、経費のかかる方法での連続的実施方法において、経済的な理由から、少なくとも部分的に、気相酸化に回収させるべき有価生成物のことであることが、この希釈ガスの欠点である。
【0015】
公知技術水準の方法は、相応して、アクロレインからアクリル酸への触媒的気相酸化における固床触媒床のアクロレイン負荷の適用すべき値を、通例、アクロレイン≦150NL/触媒L・hの値に限定する(例えば、EP−B714700参照;そこでは、最高適用アクロレイン負荷=アクロレイン120NL/L・hである)。
【0016】
双方の酸化工程で、各固床触媒の高いプロペン負荷も、高いアクロレイン負荷も実施される、プロペンからアクリル酸への2段階の気相酸化は、公知技術水準からは、ほとんど知られていない。
【0017】
少ない例外の1つは、既に引用された欧州特許(EP−B)第253409号明細書及び付随する均等物、欧州特許(EP−B)第257565号明細書である。しかし、それにもかかわらず、この2つの明細書においても、窒素よりも高いモル比熱を有する不活性希釈ガスの使用にもからわらず、実現された最高プロペン負荷及び同時に実際に自動的に、アクロレイン酸化工程へのプロペン酸化工程の生成ガス混合物の直接通過の際に続く触媒床のアクロレイン負荷は、反応成分(プロペン又はアクロレイン)≦140NL/L・hである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】DE−A3002829
【特許文献2】EP−A714700
【特許文献3】EP−A700893
【特許文献4】EP−A15565
【特許文献5】DE−C2830765
【特許文献6】DE−C3338380
【特許文献7】JP−A91/294239
【特許文献8】EP−A807465
【特許文献9】WO98/24746
【特許文献10】EP−B279374
【特許文献11】DE−C2513405
【特許文献12】DE−A3300044
【特許文献13】EP−A575897
【特許文献14】DE−A19855913
【特許文献15】EP−B450596
【特許文献16】EP−A804465
【特許文献17】EP−B253409
【特許文献18】EP−B257565
【特許文献19】EP−A293224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、本発明の目的は、公知技術水準の高負荷法の欠点を示すことのない、アクリル酸の高められた空−時−収率を保証する、冒頭に記載したプロペンからアクリル酸への触媒的気相酸化法を得ることにあった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、プロペン、分子状酸素及びその体積の少なくとも20%までが分子状窒素から成る少なくとも1種の不活性ガスを含有し、分子状酸素及びプロペンをモル比O:C≧1で含有する反応ガス出発混合物1を、先ず第1反応工程で、高めた温度で、その活性物質がモリブデン及び/又はタングステン、ならびにビスマス、テルル、アンチモン、錫及び銅からなる群から選択される1種以上を含有する多種金属酸化物である第1固床触媒上に、プロペン変換率が1回の通過で≧90モル%となり、それに伴うアクロレイン生成及びアクリル酸副生成物生成の選択率が総括的に≧90モル%となるように導入させ、第1反応工程を出る生成ガス混合物の温度を、間接的及び/又は直接的冷却によって場合により低下させ、生成ガス混合物に場合により分子状酸素及び/又は不活性ガスを添加し、その後に、生成ガス混合物を、アクロレイン、分子状酸素及びその体積の少なくとも20%までが分子状窒素から成る少なくとも1種の不活性ガスを含有し、分子状酸素及びアクロレインをモル比O:CO≧0.5で含有する反応ガス出発混合物2として、第2反応工程で、高めた温度で、その活性物質がモリブデン及びバナジウムを含有する少なくとも1種の多種金属酸化物である第2固床触媒上に、アクロレイン変換率が1回の通過で≧90モル%となり、双方の反応工程を経た平均のアクリル酸生成の選択率が、変換されるプロペンに対して、≧80モル%となるように導びくことよりなる、プロペンからアクリル酸への触媒的気相酸化法が発見され、この方法は、
a)反応ガス出発混合物1中に含有されるプロペンでの第1固床触媒の負荷が、プロペン≧160NL/触媒床L・hであり、
b)第1固床触媒は、空間的に連続する2つの反応帯域A、B中に配置される触媒床から成り、この際、反応帯域Aの温度は300〜390℃又は〜350℃であり、反応帯域Bの温度は、305〜420℃又は〜380℃であると同時に、反応帯域Aの温度の少なくとも5℃上まわっており、
c)反応ガス出発混合物1は、反応帯域A、Bを、"最初にA"、"次にB"の時間的順序で流過し、
d)反応帯域Aは、プロペン変換率40〜80モル%まで延長し、
e)反応ガス出発混合物2中に含有されるアクロレインでの第2固床触媒の負荷は、アクロレイン≧140NL/触媒床L・hであり、
f)第2固床触媒は、空間的に連続する2つの反応帯域C、D中に配置される触媒床から成り、この際、反応帯域Cの温度は230〜270℃であり、反応帯域Dの温度は、250〜300℃であると同時に、反応帯域Cの温度の少なくとも5℃上まわっており、
g)反応ガス出発混合物2は、反応帯域C、Dを、"最初にC"、"次にD"の時間的順序で流過し、かつ
h)反応帯域Cは、アクロレイン変換率55〜85モル%まで延長することを特徴とする。
【0021】
反応帯域Aは、有利にプロペン変換率50〜70モル%まで、特に有利にプロペン変換率65〜75モル%まで延長する。
【0022】
本発明により、反応帯域Bの温度は、有利な方法で、305〜365℃、又は340℃及び特に有利に310〜330℃である。更に、反応帯域Bの温度は、有利に反応帯域Aの温度の少なくとも10℃上まわっている。
【0023】
本発明による方法で、触媒床1のプロペン負荷がより高く選択されればされるほど、反応帯域Aの温度と反応帯域Bの温度との間の差はより大きく選択されるべきである。しかし、本発明による方法における前記の温度差は、通例、50℃よりも多くない。即ち、反応帯域Aの温度と反応帯域Bの温度との間の差は、本発明により、20℃まで、25℃まで、30℃まで、40℃まで、45℃まで又は50℃までであってよい。
【0024】
本発明による方法で、第1反応工程で、単一の通過に関連するプロペン変換率は、通例、≧92モル%又は≧94モル%である。この際、第1反応工程において単一の通過で生じるアクロレイン生成及びアクリル酸副産物生成の選択率は、通例、≧92モル%又は≧94モル%、しばしば≧95モル%又は≧96モル%又は≧97モル%である。
【0025】
前記のことは、意外にも、触媒床1のプロペン負荷≧165NL/L・h又は≧170NL/L・h又は≧175NL/L・h又は≧180NL/L・hのみならず、触媒床1のプロペン負荷≧185NL/L・h又は≧190NL/L・h又は≧200NL/L・h又は≧210NL/L・h及び負荷値≧220NL/L・h又は≧230NL/L・h又は≧240NL/L・h又は≧250NL/L・hにも当てはまる。
【0026】
この際、前記の値は、反応ガス出発混合物1のために本発明により使用される不活性ガスが、≧30体積%又は≧40体積%又は≧50体積%又は≧60体積%又は≧70体積%又は≧80体積%又は≧90体積%又は≧95体積%まで分子状窒素から成る場合でさえも達成可能であることは意外である。
【0027】
本発明による方法のために、250NL/L・h以上の触媒床1のプロペン負荷の場合に、反応ガス出発混合物1のために、不活性希釈ガス、例えば、プロパン、エタン、メタン、ペンタン、ブタン、CO、CO、水蒸気及び/又は貴ガスの併用(この際、不活性希釈ガスは、一般に、各反応段階を1回通過する際に、5%よりも少なく、有利に2%よりも少なく反応するものであるべきである)が推奨される。しかし、勿論、このガス及びその混合物は、触媒床のより少ないプロペン負荷で既に反応ガス出発混合物1中で併用されることもでき、又は単独の希釈ガスとして使用されることもできる。言うに値する程の範囲における変換率−及び/又は選択率損失を受けることなく、本発明による方法が、反応帯域A、Bについて考慮される均一の、即ち化学的に単一の触媒床1を用いて実施することができることは驚異的である。
【0028】
本発明による方法では、第1固床触媒のプロペン負荷は、通例、600NL/L・hの値を越えない。本発明による方法における第1固床触媒のプロペン負荷は、典型的には、変換率及び選択率の著しい損失なしに、≦300NL/L・h、しばしば≦250NL/L・hの値である。
【0029】
本発明による方法では、操作圧は、第1反応工程では、標準圧以下(例えば、0.5バールまで)でも、標準圧以上でもよい。第1反応工程での操作圧は、典型的には、1〜5バール、しばしば1.5〜3.5バールの値である。第1反応工程での反応圧は、通例、100バールを越えない。
【0030】
反応ガス出発混合物1中のO:Cのモル比は、本発明によれば≧1であるべきである。この比率は、通例≦3の値である。反応ガス出発混合物1中のO:Cのモル比は、本発明によれば、しばしば≧1.5及び≦2.0である。
【0031】
第1反応工程で必要な分子状酸素のための給源としては、空気も、分子状窒素を除いた空気(例えばO≧90体積%、N≦10体積%)もこれに該当する。
【0032】
反応ガス出発混合物1中のプロペン成分は、本発明によれば、例えば4〜15体積%、しばしば5〜12体積%又は5〜8体積%であってよい(各々、総体積に対して)。
【0033】
本発明による方法を、しばしば、反応ガス出発混合物1中の体積比プロペン:酸素:不活性ガス(水蒸気を含む)1:(1.0〜3.0):(5〜25)、有利に1:(1.7〜2.3):(10〜15)で実施する。
【0034】
反応ガス出発混合物1は、通例、前記の成分の他に、実際に他の成分を含有しない。
【0035】
本発明による方法のために、固床触媒1として、その活性物質が少なくとも1種のMo、Bi及びFeを含有する多種金属酸化物である全てのものがこれに該当する。
【0036】
即ち、原則的に、西ドイツ国特許(DE−C)第3338380号明細書、西ドイツ国特許(DE−A)第19902562号明細書、欧州特許(EP−A)第15565号明細書、西ドイツ国特許(DE−C)第2380765号明細書、欧州特許(EP−A)第807465号明細書、欧州特許(EP−A)第279374号明細書、西ドイツ国特許(DE−A)第3300044号明細書、欧州特許(EP−A)第575897号明細書、米国特許(US−A)第4438217号明細書、西ドイツ国特許(DE−A)第19855913号明細書、世界知的所有権機構(WO)第98/24746号明細書、西ドイツ国特許(DE−A)第19746210号明細書(一般式IIのそれ)、特開平(JP−A)3−294239号明細書、欧州特許(EP−A)第293224号明細書及び欧州特許(EP−A)第700714号明細書に開示されている全ての触媒を、固床触媒1として使用することができる。これは、殊に、これらの明細書中の例としての実施態様に当てはまり、この内、欧州特許(EP−A)第15565号明細書、欧州特許(EP−A)第575897号明細書、西ドイツ国特許(DE−A)第19746210号明細書及び西ドイツ国特許(DE−A)第19855913号明細書のそれが特に有利である。これに関連して、欧州特許(EP−A)第15565号明細書からの例1cによる触媒及び相応する方法で製造可能な触媒を特に挙げることができるが、その活性物質は、Mo12Ni6.5ZnFeBi0.00650.06・10SiOの組成を有する。更に、西ドイツ国特許(DE−A)第19855913号明細書からの連続番号No.3を有する例(化学量論:Mo12CoFeBi0.60.08Si1.6)は、形状寸法5mm×3mm×2mm(外径×高さ×内径)の中空筒完全触媒として及び西ドイツ国特許(DE−A)第19746210号明細書の例1による多種金属酸化物II−完全触媒を特にあげることができる。更に、米国特許(US−A)第4438217号明細書の多種金属酸化物−触媒を挙げることができる。後者は、殊に、この中空筒が、形状寸法5mm×2mm×2mm又は5mm×3mm×2mm又は6mm×3mm×3mm又は7mm×3mm×4mm(各々外径×高さ×内径)を有する場合に当てはまる。
【0037】
多数の固床触媒1として好適な多種金属酸化物活性物質は、一般式I:
【化1】

[式中、変数は、次のものを表わす:
=ニッケル及び/又はコバルト、
=タリウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、
=亜鉛、燐、砒素、硼素、アンチモン、錫、セリウム、鉛及び/又はタングステン、
=珪素、アルミニウム、チタン及び/又はジルコニウム、
a=0.5〜5、
b=0.01〜5、有利に2〜4、
c=0〜10、有利に3〜10、
d=0〜2、有利に0.02〜2、
e=0〜8、有利に0〜5、
f=0〜10及び
n=I中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数]下に包含され得る。
【0038】
これは自体公知の方法で得られ(例えば、DE−A4023239参照)、通例、そのものとして、球状物、環状物又は筒状物に成形され、又はシェル型触媒、即ち、活性物質で被覆された予備成形不活性担体の形状で使用される。しかし、勿論、これらは粉末状で触媒1として使用することもできる。勿論、触媒1として、本発明により、ニッポンショクバイ社(Fa.Nippon Scokubai)のBi、Mo及びFeを包含する多種金属酸化物触媒ACS−4を使用することもできる。
【0039】
原則的に、固床触媒1に好適な活性物質、殊に一般式Iのそれは、簡単な方法で、その元素成分の好適な給源から、できるだけ緊密に混和された、有利に微粉砕の、その化学量論に相応して組成された乾燥混合物を製造し、これを350〜650℃の温度でか焼させることによって製造することができる。か焼は、不活性ガス下でも、酸化的雰囲気、例えば空気(不活性ガス及び酸素から成る混合物)下でも、及び還元的雰囲気(例えば不活性ガス、NH、CO及び/又はHから成る混合物)下でも行なうことができる。か焼時間は、数分間から数時間であり、通例、温度と共に減少する。多種金属酸化物活性物質1の元素成分の給源として、既に酸化物及び/又は少なくとも酸素が存在して、加熱によって酸化物に変換可能である化合物がこれに該当する。
【0040】
酸化物の他に、そのような出発化合物として、特に、ハロゲニド、硝酸塩、蟻酸塩、蓚酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、アミン複合体、アンモニウム−塩及び/又は水酸化物がこれに該当する(遅くとも、その後のか焼の際に、完全にガス状で漏出する化合物に崩壊及び/又は分解され得る化合物、例えば、NHOH、(NHCO、NHNO、NHCHO、CHCOOH、NHCHCO及び/又は蓚酸アンモニウムは、緊密に混和された乾燥混合物に付加的に加入混合され得る)。
【0041】
多種金属酸化物物質Iの製造のための出発化合物の緊密な混和は、乾式又は湿式で行なうことができる。乾式で行なう場合には、出発化合物を、有利に微粉末として使用し、混合及び場合により圧縮後にか焼させる。しかし、緊密な混和は、湿式で有利に行なわれる。この際、通例は、出発化合物を水溶液及び/又は懸濁液の形で相互に混合させる。特に乾燥緊密混和は、前記の混合法で、排他的に、溶解形で存在する元素成分給源から出発する場合に得られる。溶剤として有利に水を使用する。得られる水性物質を引き続き乾燥させ、この際、乾燥過程は、有利に水性混合物の噴霧乾燥によって、排出温度100〜150℃で行なわれる。
【0042】
本発明による固床触媒1として好適な多種金属酸化物物質、殊に一般式Iのそれは、本発明による方法のために、粉末形でも、一定の触媒形状に成形しても使用することができ、この際、成形は、最終のか焼前又はその後に行なうことができる。例えば、活性物質の粉末形又はその未か焼及び/又は部分的か焼の前駆物質から、所望の触媒形状への圧縮によって(例えば、錠剤化、押出又は射出成形によって)完全触媒を製造することができ、この際、場合により、助剤、例えばグラファイト又はステアリン酸を、滑剤及び/又は成形助剤として、及び強化剤、例えばガラス、石綿、炭化珪素又はチタン酸カリウムから成るミクロ繊維を添加することができる。好適な完全触媒形状は、例えば、外径及び長さ2〜10mmを有する完全筒又は中空筒である。中空筒の場合には、1〜3mmの壁厚が有利である。勿論、完全触媒は、球状の形状を有することができ、この際、球径は2〜10mmであってよい。
【0043】
勿論、粉末状の活性物質又はその粉末状の、未か焼及び/又は部分的か焼の前駆物質の成形は、予備成形された不活性触媒担体上への被覆によって行なうこともできる。シェル型触媒の製造のための担体本体の被覆は、通例、例えば、西ドイツ国特許(DE−A)第2909671号明細書、欧州特許(EP−A)第293859号明細書又は欧州特許(EP−A)第714700号明細書から公知である好適な回転可能な容器中で実施される。担体本体の被覆のために、有利に、被覆すべき粉末物質を湿潤させ、塗布後に、例えば熱気によって、更に乾燥させる。担体本体上に被覆された粉末物質の層厚は、10〜1000μmの範囲、有利に50〜500μmの範囲及び特に有利に150〜250μmの範囲で有利に選択される。
【0044】
この際、担体材料として、慣用の多孔性又は非孔性酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化トリウム、二酸化ジルコン、炭化珪素又は珪酸塩、例えば珪酸マグネシウム又は珪酸アルミニウムを使用することができる。担体本体は、規則的又は不規則的に成形されていてよく、この際、明らかに形成された表面粗性を有する規則的に成形された担体本体、例えば球状体又は中空筒が有利である。実際に、その直径が1〜8mm、有利に4〜5mmであるステアタイトから成る非孔性の、表面粗性の球形担体の使用が好適である。しかし、担体本体として、その長さが2〜10mmであり、その外径が4〜10mmである筒状物の使用も好適である。更に、担体本体として本発明により好適な環状物の場合には、壁厚は、通例1〜4mmである。本発明により有利に使用することができる環状の担体本体は、長さ3〜6mm、外径4〜8mm及び壁厚1〜2mmを有する。特に、形状7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)の環状物も、担体本体として本発明により好適である。担体本体の表面上に被覆すべき触媒活性酸化物物質の微細度は、自明で、所望のシェル厚に適合される(EP−A714700参照)。
【0045】
更に、固床触媒1として本発明により使用すべき有利な多種金属酸化物物質は、一般式II:
【化2】

[式中、変数は、次のものを表わす:
=ビスマス、テルル、アンチモン、錫及び/又は銅、
=モリブデン及び/又はタングステン、
=アルカリ金属、タリウム及び/又はサマリウム、
=アルカリ土類金属、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、亜鉛、錫、カドミウム及び/又は水銀、
=鉄、クロム、セリウム及び/又はバナジウム、
=燐、砒素、硼素及び/又はアンチモン、
=希土類金属、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、レニウム、ルテニウム、ロジウム、銀、金、アルミニウム、ガリウム、インジウム、珪素、ゲルマニウム、鉛、トリウム及び/又はウラン、
a’=0.01〜8、
b’=0.1〜30、
c’=0〜4、
d’=0〜20、
e’=0〜20、
f’=0〜6、
g’=0〜15、
h’=8〜16、
x’、y’=II中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数、及び
p、q=その比率p/qが0.1〜10である数]の、3次元的に拡張された、その局所環境とは異なるその組成に基づくその局所環境によって限定され、その最大直径(範囲の表面(界面)上に存在する2つの点の、範囲の重心を通る最長の結合距離)が1nm〜100μm、しばしば10nm〜500nm又は1μm〜50又は25μmである、化学的組成Ya′b′x′の範囲を含有する物質である。
【0046】
特に有利な本発明による多種金属酸化物物質IIは、式中のYがビスマスであるものである。
【0047】
その内で、再び、一般式III:
【化3】

[式中、変数は、次のものを表わす:
=モリブデン及び/又はタングステン、
=ニッケル及び/又はコバルト、
=タリウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、
=燐、砒素、硼素、アンチモン、錫、セリウム及び/又は鉛、
=珪素、アルミニウム、チタン、及び/又はジルコニウム、
=銅、銀及び/又は金、
a"=0.1〜1
b"=0.2〜2、
c"=3〜10、
d"=0.02〜2
e"=0.01〜5、有利に0.1〜3、
f"=0〜5、
g"=0〜10、
h"=0〜1、
x"、y"=III中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数、
p"、q"=その比率p"/q"が0.1〜5、有利に0.5〜2である数]に相応するものが有利であり、この際、式中のZb″=(タングステン)b″及びZ12=(モリブデン)12である物質IIIが極めて特に有利である。
【0048】
更に、固床触媒1として、本発明により好適な多種金属酸化物物質II(多種金属酸化物物質III)における総成分[Ya′b′x′(Bia″b″X″p″)の少なくとも25モル%(有利に少なくとも50モル%及び特に有利に少なくとも100モル%)が、3次元的に拡張された、その局所環境とは異なるその組成に基づくその局所環境によって限定され、その最大直径が1nm〜100μmである化学的組成Ya′b′x′[Bia″b″X″]の範囲の形で存在する場合が有利である。
【0049】
多種金属酸化物物質II−触媒に関する成形については、多種金属酸化物物質I−触媒で記載したことが当てはまる。
【0050】
多種金属酸化物物質II−活性物質の製造は、例えば、欧州特許(EP−A)第575897号明細書及び西ドイツ国特許(DE−A)第19855913号明細書に記載されている。
【0051】
本発明による方法の第1反応工程の実施は、使用技術的に有利な方法で、2帯域管束反応器中で行なわれる。本発明により使用可能な2帯域管束反応器の有利な1変形は、西ドイツ国特許(DE−C)第2830765号明細書に明らかにされている。しかし、西ドイツ国特許(DE−C)第2513405号明細書、米国特許(US−A)第3147084号明細書、西ドイツ国特許(DE−A)第2201528号明細書、欧州特許(EP−A)第383224号明細書及び西ドイツ国特許(DE−A)第2903218号明細書に明らかにされた2帯域管束反応器も、本発明による方法の第1反応工程の実施に好適である。
【0052】
即ち、最も簡単な方法で、本発明により使用すべき固床触媒1は、管束反応器の金属管中に存在し、金属管の囲りを、相互に実際に空間的に別々の2種の調温媒体、通例、塩溶融物が流れている。本発明により、各塩浴がその上を覆っている管部分が、反応帯域を表している。即ち、最も簡単な方法で、塩浴Aは、プロペンの酸化的変換(1回の通過で)が40〜80モル%の範囲で変換率の達成まで成し遂げられる管部分(反応帯域A)の囲りを流れていて、塩浴Bは、プロペンの酸化的最終変換(1回の通過で)が少なくとも90モル%の変換率の達成まで成し遂げられる管部分(反応帯域B)の囲りを流れる(必要な場合には、本発明により使用すべき反応帯域A、Bに、各個の温度に保たれる他の反応帯域を接続することができる)。
【0053】
本発明による方法の第1反応工程は、使用技術的に有利に、他の反応帯域を包含しない。即ち、塩浴Bは、有利に、プロペンの酸化的最終変換(1回の通過で)が、変換率≧92モル%又は≧94モル%又はそれ以上まで成し遂げる管部分の囲りを流れる。
【0054】
反応帯域Bの開始は、通例、反応帯域Aの最高熱点の後である。反応帯域Bの最高熱点は、通例、反応帯域Aの最高熱点温度を下まわる。
【0055】
2つの塩浴A、Bは、本発明により、反応帯域の周囲を囲む空間を通って、反応管を流通する反応ガス混合物の流れ方向に対して、順流又は向流で流れることができる。もちろん、本発明により、反応帯域A中で順流が使用され、反応帯域B中で向流が使用される(又は逆に)こともできる。
【0056】
勿論、前記の全ての事例態様において、反応管に相対的に生じる塩溶融物の平行流の各反応帯域内部で、更に1つの横断流を重ねることができ、従って、個々の反応帯域は、例えば、欧州特許(EP−A)第700714号明細書又は欧州特許(EP−A)第700893号明細書に記載されたような管束反応器に相応し、総合的に接触管束を通る縦断面で、熱交換剤の蛇行形の流れが生じる。
【0057】
反応ガス出発混合物1は、有利に、反応温度に予備加熱されて触媒装填1に供給される。
【0058】
前記の管束反応器において、通例、接触管はフェライト鋼製であり、典型的に、壁厚1〜3mmを有する。その内径は、通例20〜30mm、しばしば22〜26mmである。管束容器中に納められた接触管の数は、使用技術的に有利に、少なくとも5000、有利に少なくとも10000に達する。反応容器中に納められた接触管の数は、しばしば15000〜30000である。40000以上の接触管の数を有する管束反応器は、むしろ例外である。接触管は、通例、容器の内部で均一に分配されて配置していて、この際、分配は、有利に、相互に隣接している接触管からの中心的内軸の距離(いわゆる、接触管分配)が、35〜45mmであるように選択される(例えば、EP−B468290参照)。
【0059】
熱交換剤として、殊に、液体の調温媒体が好適である。塩、例えば硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム及び/又は硝酸ナトリウムの溶融物又は低溶融金属、例えばナトリウム、水銀及び異なる金属の合金の使用が特に好適である。
【0060】
2帯域管束反応器中の流れの前記の全態様において、流速は、通例、双方の必要な熱交換剤循環内で、熱交換剤の温度が、反応帯域への進入箇所から、反応帯域からの排出箇所まで約0〜15℃上昇するように選択される。即ち、前記の△Tは、本発明により1〜10℃又は2〜8℃又は3〜6℃であってよい。
【0061】
反応帯域Aへの熱交換剤の進入温度は、本発明により、通例、300〜390℃又は〜350℃である。反応帯域Bへの熱交換剤の進入温度は、本発明により、通例、一方で、305〜420℃又は〜380℃であり、他方で、反応帯域A中に進入する熱交換剤の進入温度の少なくとも5℃上でまわる。
【0062】
反応帯域B中への熱交換剤の進入温度は、有利に、反応帯域A中に進入する熱交換剤の進入温度の少なくとも10℃上でまわる。従って、反応帯域A又はB中への進入温度の間の差は、本発明により、20℃まで、25℃まで、30℃まで、40℃まで、45℃まで又は50℃までであってよい。しかし、前記の温度差は、通例50℃以上ではない。本発明による方法で、触媒床1のプロペン負荷が高く選択されればされる程、反応帯域A中への熱交換剤の進入温度と反応帯域B中への熱交換剤の進入温度との差が大きくなる。
【0063】
反応帯域B中への熱交換剤の進入温度は、本発明により、有利に、305〜365℃又は340℃及び特に有利に310〜330℃である。
【0064】
当然、本発明による方法では、2つの帯域A、Bは、空間的に相互に別々の管束反応器で実現することができる。必要な場合には、2つの反応帯域A、Bの間に、熱交換体が設置されていてもよい。2つの帯域A、Bは、明らかに、渦動床として形成されていてもよい。
【0065】
更に、本発明による方法では、その体積比活性が反応ガス出発混合物1の流れ方向で、連続的に、中断的に又は段階的に増加する触媒床1を使用することもできる(これは、例えば、WO98/24746又はJP−A91/294239に記載され、又は不活性物質での希釈によって作用されることもできる)。同様に、前記の2帯域法のために、欧州特許(EP−A)第293224号明細書及び欧州特許(EP−B)第257565号明細書で推奨された不活性希釈ガス(例えば、プロパンだけ、又はメタンだけ等)を使用することもできる。後者は、必要な場合には、反応ガス混合物の流れ方向で増加する触媒床の体積比活性とも組み合わされる。
【0066】
ここで、本発明による方法の反応工程1の実施のために、もう1度、西ドイツ国特許(DE−AS)第2201528号明細書に記載された2帯域管束反応器型を使用することができることについて言及するが、この反応器は、場合により冷たい反応ガス出発混合物又は冷たい循環ガスの加熱を惹起させるために、反応帯域Bのより熱い熱交換剤からの部分量が、反応帯域Aへ送られるという可能性が包含されている。更に、各個の反応帯域内の管束の特徴は、欧州特許(EP−A)第382098号明細書に記載されているように形成されていてもよい。
【0067】
本発明により、第1反応工程を出る生成ガス混合物は、第1反応工程中で生成するアクロレイン成分の後完全燃焼を抑制するために、第2反応工程に入る前に冷却されることが有利であると実証された。そのために、通例、2つの反応工程の間で後冷却器を接続させる。これは、最も簡単な場合には、間接的管束熱伝導体であってよい。この際、生成ガス混合物は、通例、管を通過し、管の囲りを熱交換媒体が走り、その種類は、管束反応器のために推奨される熱交換媒体に相応し得る。管内部は、有利に、不活性充填体(例えば、精鋼製の螺旋、ステアタイト製の環状物、ステアタイト製の球状物等)で充填されている。これらは熱交換を改善し、場合により第1反応工程の固床触媒床から昇華する三酸化モリブデンを、第2反応工程へのその進入の前に捕捉する。後冷却器が、珪酸亜鉛−塗料で塗布された不錆鋼製である場合が有利である。
【0068】
第1反応工程の生成ガス混合物は、使用技術的に有利に、前記の後冷却器中で、210〜290℃、しばしば220〜260℃又は225〜245℃の温度に冷却される。即ち、第1反応工程の生成ガス混合物の冷却は、終始、反応帯域Cの温度以下にある温度で行なわれる。しかし、前記の後冷却は、決して強制的ではなく、殊に、第1反応工程から第2反応工程への生成ガス混合物の通路が短く保たれている場合には、全般に省略することができる。更に、本発明による方法は、通例、第2反応工程での酸素要求を、既に、反応ガス出発混合物1の相応に高い酸素含量によって補うのではなく、必要な酸素を第1及び第2反応工程の間で供給するようにして実現される。これは、前、間、後及び/又は冷却のために行なうことができる。第2反応工程で必要な分子状酸素の給源は、純粋な酸素も、酸素及び不活性ガスからの混合物、例えば空気又は分子状窒素の少ない空気(例えば、O≧90体積%、N≦10体積%)もこれに該当する。酸素給源の添加は、通例、反応圧に圧縮された形で行なわれる。
【0069】
こうして製造された反応ガス出発混合物2中のアクロレイン含量は、本発明により、例えば3〜15体積%、しばしば4〜10体積%又は5〜8体積%の値であってよい(各々、総体積に対して)。
【0070】
本発明により、反応ガス出発混合物2中のO:アクロレインのモル比は≧0.5であるべきである。しばしば、この比率は≧1である。この比率は、通例、≦3の値である。しばしば、反応ガス出発混合物2中のO:アクロレインのモル比は、本発明により、1〜2又は1〜1.5である。本発明による方法を、しばしば、反応ガス出発混合物2中に存在するアクロレイン:酸素:水蒸気:不活性ガス−体積比(NL)1:(0.5又は1〜3):(0〜20):(3〜30)、有利に1:(1〜3):(0.5〜10):(7〜10)で実施する。
【0071】
操作圧は、第2反応工程では、標準圧(例えば、0.5バールまで)以下であっても、標準圧以上であってもよい。第2反応工程における操作圧は、本発明により、典型的には、1〜5バール、しばしば1〜3バールである。第2反応工程での反応圧は、通例、100バールを越えない。
【0072】
反応帯域Cは、有利に、アクロレイン変換率65〜80モル%まで延長する。更に、反応帯域Cの温度は、有利に、245〜260℃である。反応帯域Dの温度は、有利に、反応帯域Cの温度の少なくとも20℃以上であり、有利に265〜285℃である。
【0073】
本発明による方法で触媒床2のアクロレイン負荷を高く選択すればするほど、反応帯域Cの温度と反応帯域Dの温度との間の差を大きく選択すべきである。しかし、本発明による方法での前記の温度差は、通例、40℃以上ではない。即ち、反応帯域Cの温度と反応帯域Dの温度との間の差は、本発明によれば、10℃まで、15℃まで、25℃まで、30℃まで、35℃まで又は40℃までであってよい。
【0074】
その他の点では、本発明による方法で、第2反応工程の1回の通過に対するアクロレイン変換率は、≧92モル%、又は≧94モル%、又は≧96モル%、又は≧98モル%であり、しばしば≧99モル%であってもよい。この際、変換されたアクロレインに対して、アクリル酸生成の選択率は、通例、≧92モル%、又は≧94モル%、しばしば≧95モル%、又は≧96モル%又は≧97モル%である。
【0075】
意外にも、前記のことは、触媒床2のアクロレイン負荷≧140NL/L・h又は≧150NL/L・h又は≧160NL/L・h又は≧170NL/L・h又は≧175NL/L・h又は≧180NL/L・hでばかりでなく、触媒床のアクロレイン負荷≧185NL/L・h又は≧190NL/L・h又は≧200NL/L・h又は≧210NL/L・hでも、及び負荷値≧220NL/L・h又は≧230NL/L・h又は≧240NL/L・h又は≧250NL/L・hでも当てはまる。
【0076】
この際、前記の値は、第2反応工程で本発明により使用される不活性ガスが、≧30体積%、又は≧40体積%、又は≧50体積%、又は≧60体積%、又は≧70体積%、又は≧80体積%、又は≧90体積%、又は≧95体積%の分子状窒素から成る場合でさえも達成可能であることは驚異的である。
【0077】
本発明の方法における不活性希釈ガスは、第2反応工程において、有利に、5〜20質量%がHOから、70〜90体積%がNから成り立つ。
【0078】
反応ガス出発混合物2は、本明細書に挙げた成分の他に、通例、実際に他の成分を含有しない。
【0079】
250NL/L・h以上の第2触媒床のアクロレイン負荷で、反応ガス出発混合物2のために、不活性希釈ガス、例えばプロパン、エタン、メタン、ブタン、ペンタン、CO、CO、水蒸気及び/又は希ガスの併用が推奨される。しかし当然、このガスは、より少ないアクロレイン負荷で既に併用することもできる。本発明による方法を、2つの反応帯域C、Dに関して考慮される均一の、即ち化学的に単一の触媒床を用いて、変換率及び/又は選択率損失を、言うに値する程の範囲で受けることなく実施することができることは驚異的である。
【0080】
本発明による方法では、第2触媒床のアクロレイン負荷を、通例、600NL/L・hの値を越えさせない。本発明による方法では、第2触媒床のアクロレイン負荷は、変換率及び選択率の言うに値する程の損失なしに、典型的に、≦300NL/L・h、しばしば≦250NL/L・hの値である。
【0081】
本発明による方法では、第2触媒床のアクロレイン負荷は、通例、第1触媒床のプロペン負荷の約10NL/L・h、しばしば約20又は25NL/L・h以下である。これは、先ず、第1反応工程では、変換率も、選択率も、通例100%を達成しないことに帰する。更に、第2反応工程の酸素要求は、通例、空気によって補われる。
【0082】
注目に値することに、本発明による方法では、2つの反応工程を通じて平均されるアクリル酸生成の選択率は、変換されるプロペンに対して、最高のプロペン−及びアクロレイン負荷ですら、通例≧83モル%、しばしば≧85モル%又は≧88モル%、たびたび≧90モル%又は>93モル%の値である。
【0083】
第2反応工程における気相触媒的アクロレイン酸化のために、固床触媒2として、その活性物質が少なくとも1種のMo及びVを含有する多種金属酸化物である全てのものがこれに該当する。
【0084】
このように、好適な多種金属酸化物触媒は、例えば米国特許(US−A)第3775474号明細書、米国特許(US−A)第3954855号明細書、米国特許(US−A)第3893951号明細書及び米国特許(US−A)第4339355号明細書から引用することができる。更に、特別な方法で、欧州特許(EP−A)第427508号明細書、西ドイツ国特許(DE−A)第2909671号明細書、西ドイツ国特許(DE−C)第3151805号明細書、西ドイツ国特許(DE−AS)第2626887号明細書、西ドイツ国特許(DE−A)第4302991号明細書、欧州特許(EP−A)第700893号明細書、欧州特許(EP−A)第714700号明細書及び西ドイツ国特許(DE−A)第19736105号明細書の多種金属酸化物物質が好適である。これに関連して、欧州特許(EP−A)第714700号明細書及び西ドイツ国特許(DE−A)第19736105号明細書の例証の実施態様が特に有利である。
【0085】
多数の固床触媒2として好適な多種金属酸化物物質は、一般式IV:
【化4】

[式中、変数は、次のものを表わす:
=W、Nb、Ta、Cr及び/又はCe、
=Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/又はZn、
=Sb及び/又はBi、
=1種以上のアルカリ金属、
=1種以上のアルカリ土類金属、
=Si、Al、Ti及び/又はZr、
a=1〜6、
b=0.2〜4、
c=0.5〜18、
d=0〜40、
e=0〜2、
f=0〜4、
g=0〜40及び
n=IV中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数]に包含することができる。
【0086】
活性金属酸化物IVの範囲内での有利な実施態様は、一般式IVの次の意味の変数で認識されるものである:
=W、Nb及び/又はCr、
=Cu、Ni、Co、及び/又はFe、
=Sb、
=Na及び/又はK、
=Ca、Sr及び/又はBa、
=Si、Al、及び/又はTi、
a=1.5〜5、
b=0.5〜2、
c=0.5〜3、
d=0〜2、
e=0〜0.2、
f=0〜1及び
n=IV中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数。
【0087】
しかし、極めて特に有利な多種金属酸化物IVは、一般式V:
【化5】

[式中、
=W及び/又はNb、
=Cu及び/又はNi、
=Ca及び/又はSr、
=Si及び/又はAl、
a’=2〜4、
b’=1〜1.5、
c’=1〜3、
f’=0〜0.5、
g’=0〜8及び
n’=IV中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数]のそれである。
【0088】
本発明により好適な多種金属酸化物物質(IV)は、例えば西ドイツ国特許(DE−A)第4335973号明細書、又は欧州特許(EP−A)第714700号明細書で公開された自体公知の方法で得ることができる。
【0089】
本発明により固床触媒2として好適な多種金属酸化物物質、殊に、一般式IVのものは、原則的に、簡単な方法で、その元素成分の好適な給源から、できるだけ緊密に混和された、有利に微粉砕の、その化学量論的に相応する組成の乾燥混合物を製造し、これを350〜600℃での温度でか焼することによって製造することができる。か焼は、不活性ガス下でも、酸化的雰囲気、例えば空気(不活性ガス及び酸素から成る混合物)下でも、及び還元的雰囲気(例えば、不活性ガス及び還元的ガス、例えばH、NH、CO、メタン及び/又はアクロレイン又は前記の還元作用を有するガス自体)下でも実施することができる。か焼時間は、数分から数時間であってよく、通例、温度と共に減少する。多種金属酸化物物質IVの元素成分のための給源として、既に酸化物であるもの及び/又は少なくとも酸素の存在で、加熱によって酸化物に変換可能である化合物がこれに該当する。
【0090】
多種金属酸化物物質IVの製造のための出発化合物の緊密な混和は、乾式又は湿式で行なうことができる。乾式で行なう場合には、出発化合物を有利に微粉末として使用し、混合及び場合により圧縮後に、か焼させる。しかし、緊密な混和は、有利に湿式で行なわれる。
【0091】
この際、出発化合物を、通例、水溶液及び/又は水性懸濁液の形で相互に混合させる。特に乾燥緊密混和は、前記の混合方法で、排他的に溶解形で存在する元素成分の給源から出発する場合に得られる。溶剤として水を使用することが有利である。引き続き、得られた水性物質を乾燥させ、この際、乾燥過程は、有利に水性混合物の噴霧乾燥によって、排出温度100〜150℃で行なわれる。
【0092】
本発明により固床触媒2として好適な多種金属酸化物物質、殊に一般式IVのそれは、本発明による方法のために、粉末形でも、一定の触媒形状に成形しても使用することができ、この際、成形は、最終のか焼前その後に行なうことができる。例えば、活性物質又はその未か焼前駆物質の粉末形から、所望の触媒形状への圧縮によって(例えば、錠剤化、押出又は射出成形によって)完全触媒を製造することができ、この際、場合により、助剤、例えば、滑剤としてグラファイト又はステアリン酸及び/又は成形助剤及び強化剤、例えばガラス、石綿、炭化珪素又はチタン酸カリウムから成るミクロ繊維を添加することができる。好適な完全触媒形状は、例えば、外径及び長さ2〜10mmを有する完全筒又は中空筒である。中空筒の場合には、壁厚1〜3mmが有利である。勿論、完全触媒は、球状の形を有することもでき、この際、球径は2〜10mmであってよい。
【0093】
勿論、粉末状の活性物質又はその粉末状で未か焼の前駆物質の成形は、予備成形された不活性触媒担体上への被覆によって行なうこともできる。シェル型触媒の製造のための担体本体の被覆は、通例、例えば西ドイツ国特許(DE−A)第2909671号明細書、欧州特許(EP−A)第293859号明細書、又は欧州特許(EP−A)第714700号明細書から公知である好適な回転可能な容器中で実施される。
【0094】
担体本体の被覆のために、被覆すべき粉末物質を有利に湿潤させ、被覆後に、例えば熱気によって、再び乾燥させる。担体本体上に被覆させた粉末物質の層厚は、10〜1000μm、有利に50〜500μm、特に有利に150〜250μmの範囲で有利に選択される。
【0095】
この際、担体材料として、慣用の多孔性又は非孔性の酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化トリウム、二酸化ジルコン、炭化珪素又は珪酸塩、例えば珪酸マグネシウム又は珪酸アルミニウムを使用することができる。担体本体は、規則的又は不規則的に形成されていてよく、この際、明らかに形成された表面粗性を有する規則的に成形された担体本体、例えば球状物又は中空筒が有利である。実際に、その直径が1〜8mm、有利に4〜5mmである非孔性の表面粗性の球状のステアタイト製担体が好適である。しかし、担体本体として、その長さが2〜10mm、その外径が4〜10mmである筒状物の使用も好適である。更に、担体本体として、本発明により好適な環状物の場合には、層厚が通例1〜4mmである。本発明により有利に使用すべき環状の担体本体は、長さ3〜6mm、外径4〜8mm、層厚1〜2mmを有する。本発明により、特に7mm×3mm×4mm×(外径×長さ×内径)の形状の環状物も担体本体として好適である。担体本体の表面上に被覆すべき触媒活性酸化物物質の微細度は、当然、所望のシェル厚に適合される(EP−A714700参照)。
【0096】
更に、有利に本発明により固床触媒2として使用すべき多種金属酸化物物質は、一般式VI:
[D][E] (VI)
[式中、変数は次のものを表わす:
D=Mo12a″b″c″d″e″f″g″x″
E:=Z12Cuh″i″y″
=W、Nb、Ta、Cr及び/又はCe、
=Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/又はZn、
=Sb及び/又はBi、
=Li、Na、K、Rb、Cs及び/又はH、
=Mg、Ca、Sr及び/又はBa、
=Si、Al、Ti及び/又はZr、
=Mo、W、V、Nb及び/又はTa、
a"=1〜8、
b"=0.2〜5、
c"=0〜23、
d"=0〜50、
e"=0〜2、
f"=0〜5、
g"=0〜50、
h"=4〜30、
i"=0〜20及び
x"、y"=VI中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数及び
p、q=その比率p/qが160:1〜1:1である、ゼロと異なる数]の物質であり、
これは、多種金属酸化物物質E:
12Cuh″i″y″ (E)
を微粉砕形で別々に予備生成させ(出発物質1)、引き続き、予備生成させた固体出発物質1を、元素Mo、V、Z、Z、Z、Z、Z、Zの給源の水溶液、水性懸濁液又は微粉砕乾燥混合物(これは、前記の元素を化学量論D:
Mo12a″b″c″d″e″f″g″ (D)
で含有する)(出発物質2)中に、所望の量比p:qで加入混合させ、この際、場合により得られる水性混合物を乾燥させ、そうして生じる乾燥前駆物質を、その乾燥前又はその後に、所望の触媒形状に、250〜600℃の温度でか焼させることによって得られる。
【0097】
予備生成させた固体出発物質1の水性出発物質2中への加入混合が、温度≦70℃で行なわれる多種金属酸化物物質VIが有利である。多種金属酸化物物質VI−触媒の製造の詳細な記載は、例えば欧州特許(EP−A)第668104号明細書、西ドイツ国特許(DE−A)第19736105号明細書及び西ドイツ国特許(DE−A)第19528646号明細書に含まれている。
【0098】
多種金属酸化物物質VI−触媒に関する成形については、多種金属酸化物物質IV−触媒で記載されたことが当てはまる。
【0099】
本発明による方法の第2反応工程の実施は、使用技術的に有利な方法で、2帯域管束反応器中で行なわれる。本発明により使用可能な2帯域管束反応器のための有利な1変法は、西ドイツ国特許(DE−C)第2830765号明細書に公開されている。しかし、西ドイツ国特許(DE−C)第2513405号明細書、米国特許(US−A)第3147084号明細書、西ドイツ国特許(DE−A)第2201528号明細書、欧州特許(EP−A)第383224号明細書及び西ドイツ国特許(DE−A)第2903582号明細書に公開された2帯域管束反応器も、本発明による方法の第2反応工程の実施に好適である。
【0100】
即ち、簡単な方法で、本発明により使用すべき固床触媒が、管束反応器の金属管中に存在し、金属管の囲りを2種の相互に実際に空間的に別々の調温媒体、通例、塩溶融物が流れている。各塩浴がその上を覆っている管部分は、本発明により反応帯域を表わす。
【0101】
即ち、簡単な方法で、塩浴Cは、アクロレインの酸化的変換(1回の通過で)が55〜85モル%の範囲の変換率の達成まで行なわれる管部分(反応帯域C)を循環流動し、塩浴Dは、アクロレインの酸化的連続変換(1回の通過で)が少なくとも90モル%の変換率の達成まで行なわれる管部分(反応帯域D)を循環流動する(必要の場合には、本発明により使用すべき反応帯域C、Dに、各個の温度に保たれる他の反応帯域が接続することができる)。
【0102】
本発明による方法の反応帯域2は、使用技術的に有利に、他の反応帯域を包含しない。即ち、塩浴Dは、アクロレインの酸化的連続変換(1回の通過で)が、≧92モル%、又は≧94モル%、又は≧96モル%、又は≧98モル%、及びしばしば≧99モル%又はそれ以上の変換率まで行なわれる管部分を有利に循環流動する。
【0103】
反応帯域Dの開始は、通例、反応帯域Cの最高熱点の後である。反応帯域Dの最高熱点(Heisspunktmaxmum)は、通例、反応帯域Cの最高熱点温度以下である。
【0104】
2つの塩浴C、Dは、本発明により、反応帯域の囲りを囲む空間を通って、反応管を通過する反応ガス混合物の流れ方向に相対的に、順流又は向流で流れてよい。もちろん、本発明により、反応帯域C中で順流が使用され、反応帯域D中で向流が使用される(又は逆に)こともできる。
【0105】
勿論、前記の全ての事例態様において、反応管に相対的に生じる塩溶融物の平行流の各反応帯域内部で、更に1つの横断流を重ねることができ、従って、個々の反応帯域は、例えば、欧州特許(EP−A)第700714号明細書又は欧州特許(EP−A)第700893号明細書に記載されたような管束反応器に相応し、総合的に接触管束を通る縦断面で、熱交換剤の蛇行形の流れが生じる。
【0106】
前記の管束反応器において、通例、接触管はフェライト鋼製であり、典型的な方法で、壁厚1〜3mmを有する。その内径は、通例20〜30mm、しばしば22〜26mmである。管束容器中に納められた接触管の数は、使用技術的に有利に、少なくとも5000、有利に少なくとも10000に達する。反応容器中に納められた接触管の数は、しばしば15000〜30000である。40000以上の接触管の数を有する管束反応器は、むしろ例外である。接触管は、通例、容器の内部で均一に分配されて配置していて、この際、分配は、有利に、相互に隣接している接触管の中心的内軸の距離(いわゆる、接触管分配)が、35〜45mmであるように選択される(例えば、EP−B468290参照)。
【0107】
熱交換剤として、殊に、液体の調温媒体が好適である。塩、例えば硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム及び/又は硝酸ナトリウムの溶融物、又は低溶融金属、例えばナトリウム、水銀及び異なる金属の合金の使用が特に好適である。
【0108】
2帯域管束反応器中の流通の前記の全態様において、流速は、通例、双方の必要な熱交換剤循環内で、熱交換剤の温度が、反応帯域への進入箇所から反応帯域からの排出箇所まで約0〜15℃上昇するように選択される。即ち、前記の△Tは、本発明により1〜10℃、又は2〜8℃又は3〜6℃であってよい。
【0109】
反応帯域C中の熱交換剤の進入温度は、本発明により、通例、230〜270℃である。反応帯域Dへの熱交換剤の進入温度は、本発明により、通例、一方で、250〜300℃であり、他方で、同時に、反応帯域C中に進入する熱交換剤の進入温度の少なくとも5℃、しばしば少なくとも10℃以上である。
【0110】
反応帯域D中への熱交換剤の進入温度は、有利に、反応帯域C中に進入する熱交換剤の進入温度の少なくとも20℃以上である。従って、反応帯域C又はD中への進入温度の間の差は、本発明により、15℃まで、25℃まで、30℃まで、35℃まで又は40℃までであってよい。しかし、前記の温度差は、通例、50℃以上ではない。本発明による方法で、触媒床2のアクロレイン負荷が高く選択されればされる程、反応帯域C中への熱交換剤の進入温度と反応帯域D中への熱交換剤の進入温度との差が大きくなる。反応帯域C中への進入温度は、有利に、245〜260℃であり、反応帯域D中への進入温度は265〜285℃である。
【0111】
当然、本発明による方法では、2つの帯域C、Dは、空間的に相互に別々の管束反応器で実現されていてもよい。必要な場合には、2つの反応帯域C、Dの間で、熱交換体が設置されていてもよい。2つの帯域C、Dは、明らかに、渦動床として形成されていてもよい。
【0112】
更に、本発明による方法では、その体積比活性が反応ガス出発混合物の流れ方向で連続的に、中断的に又は段階的に増加する触媒床2を使用することもできる(これは、例えば、不活性物質での希釈又は金属酸化物の活性の変化によって作用されることもできる)。
【0113】
同様に、前記の2帯域法のために、第2反応工程で、欧州特許(EP−A)第293224号明細書及び欧州特許(EP−B)第257565号明細書で推奨された不活性希釈ガス(例えば、プロパンだけ、又はメタンだけ等)を使用することもできる。後者は、必要な場合には、反応ガス混合物の流れ方向で減少する触媒床2の体積比活性とも組み合せる。
【0114】
ここで、本発明による方法の第2反応工程での実施のために、もう1度、殊に、西ドイツ国特許(DE−AS)第2201528号明細書に記載された2帯域管束反応器型を使用することができることについて言及するが、この反応器型は、場合により冷たい反応ガス出発混合物2又は冷たい循環ガスの加熱を惹起させるために、反応帯域Dのより熱い熱交換剤からの部分量が反応帯域Cに送られるという可能性が包含されている。更に、各個の反応帯域内の管束の特徴は、欧州特許(EP−A)第382098号明細書に記載されているように形成することができる。
【0115】
本発明による方法は、殊に、連続的実施に好適である。有価生成物生成の選択率を同時に言うに値するほど損なうことなく、有価生成物生成の高められた空−時−収率を1回の通過で可能にすることは驚異的である。むしろ、通例、意図的に、価値生成物生成の高められた選択率が更に認められる。後者は、恐らく、本発明による方法が高められたプロペン−又はアクロレイン変換率の範囲で存在する高められた温度に基づき、固床触媒での生成されたアクロレイン/アクリル酸のより少ない再吸収を条件付けることに帰着する。
【0116】
更に、本発明による方法における触媒寿命が、成分での極端な触媒負荷にも拘らず、全範囲で満足させることができることは重要である。
【0117】
本発明による方法では、純粋なアクリル酸ではなく、混合物が得られ、その副生成物からアクリル酸を自体公知の方法で(例えば、精留及び/又は結晶化的に)分離することができる。非変換のアクロレイン、プロペン及び使用された及び/又は反応の経過中に生じた不活性希釈ガスは、気相酸化に戻すことができる。本発明による2段階の、プロペンから出発する気相酸化では、有利な方法で第1酸化段階への還流が行なわれる。当然、本発明による方法は、必要の場合には、慣用のプロペン負荷の場合にも使用することができる。
【0118】
更に、本明細書において、変換率、選択率及び滞留時間は、他の記載のない限り、次のように定義される:

【実施例】
【0119】
例及び比較例
a)固床触媒1の製造
1.出発物質1の製造
硝酸酸性の硝酸ビスマス水溶液(Bi112.2質量%、遊離の硝酸3〜5質量%;比重:1.22〜1.27g/ml)775kg中に、タングステン酸(W72.94質量%)209.3kgを少量づつ25℃で撹拌加入させた。得られた水性混合物を、引き続き更に2時間25℃で撹拌し、引き続き噴霧乾燥させた。
【0120】
噴霧乾燥は、回転盤噴霧塔中で、向流で、ガス進入温度300±10℃及びガス排出温度100±10℃で行なった。得られた噴霧粉末を、引き続き、780〜810℃の範囲の温度でか焼した(通気回転管炉(内体積1.54m、空気200Nm/h)中で)。か焼温度の正確な調整の際に、それを、か焼生成物の目的の相組成に適合させて行なわれるべきであることが重要である。相WO(単斜晶系)及びBiは所望であり、γ−BiWO(ルセライト)の存在は不所望である。従って、か焼後に、なお、化合物γ−BiWOが、粉末レントゲン回折図中で、反射角2θ=28.4°(CuKα−線)で検出可能である場合には、反射の消滅が達成されるまで、精製を繰り返し、か焼温度を前記の温度範囲内で高めるべきである。そうして得られる予備生成されたか焼混合酸化物を、得られる粒度のX50−値(Ullmann′s Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th Edition(1998)Electonic Release,Kapitel 3.1.4又はDIN 66141参照)が5μmとなるように粉砕した。次いで、粉砕物を、微粉末のSiO1質量%(粉砕物に対して)と(嵩密度150g/l;SiO−粒子のX50−値は10μmであり、BET−表面積は100m/gであった)混合した。
【0121】
2.出発物質2の製造
水600L中に7モリブデン酸アンモニウム213kgを60℃で撹拌下で溶かすことによって溶液Aを製造し、生じる溶液に、60℃及び撹拌を保持しながら、20℃の水酸化カリウム水溶液(KOH46.8質量%)0.97kgを加えた。
【0122】
硝酸コバルト水溶液(Co12.4質量%)262.9kg中に硝酸鉄水溶液(Fe14.2質量%)116.25kgを60℃で装入することによって溶液Bを製造した。引き続き、60℃の保持下に、溶液Bを、30分間に渡って連続的に、前以て入れておいた溶液A中にポンプで入れた。引き続き60℃で15分間撹拌した。次いで、生じた水性混合物に、珪酸ゲル(SiO46.80質量%、比重:1.36〜1.42g/ml、pH8.5〜9.5、アルカリ含量最高0.5質量%)19.16kgを加え、次いで更になお15分間60℃で撹拌した。
【0123】
引き続き、回転盤噴霧塔中で、向流で、噴霧乾燥させた(ガス進入温度:400±10℃、ガス排出温度:140±5℃)。生じた噴霧粉末は、熱損失約30質量%を示した(3時間600℃で灼熱)。
【0124】
3.多種金属酸化物物質の製造
出発物質1に、化学量論の多種金属酸化物物質:
【化6】

を得るために必要な量の出発物質2を均一に混合させた。前記の総物質に対して、付加的に、微粉末のグラファイト(篩分析:<24μm最小50質量%、>24μm及び<48μm最高10質量%、>48μm最高5質量%、BET−表面積:6〜13m/g)1.5質量%を均一に加入混合させた。生じた乾燥混合物を、長さ3mm、外径5mm及び壁厚1.5mmの中空筒に圧縮し、引き続き、次のように熱処理した。
【0125】
空気が流通するマッフル炉(内体積60L、活性物質前駆物質1g当たり空気1L/h)中で、加熱率180℃/hで、先ず室温(25℃)から190℃まで加熱した。この温度を1時間保持し、次いで、加熱率60℃/hで210℃まで高めた。この210℃を再び1時間保持し、その後に、これを加熱率60℃/hで230℃まで高めた。この温度を同様に1時間保持し、その後に、これを再び加熱率60℃/hで265℃まで高めた。この265℃を引き続き同様に1時間保持した。その後に、先ず室温まで冷却し、そうして分解相を実際に終了した。次いで、加熱率180℃/hで465℃まで加熱し、このか焼温度を4時間保持した。生成した完全触媒環状物から成る床は、固床触媒1を形成した。
【0126】
b)固床触媒2の製造
1.触媒活性酸化物物質Mo121.2Cu2.4の製造
酢酸銅(II)1水和物190gを、水2700g中に入れ、溶液Iにした。水5500g中に、順次に、7モリブデン酸アンモニウム4水和物860g、メタバナジウム酸アンモニウム143g及びパラタングステン酸アンモニウム7水和物126gを95℃で溶かし、溶液IIにした。引き続き、溶液Iを、1度に、溶液IIに装入し、引き続き、再び溶液が生じるまでの量の、25質量%のNH水溶液を添加した。110℃の排出温度で、これを噴霧乾燥させた。生じた噴霧粉末を、粉末1kg当たり、30質量%の酢酸水溶液0.25kgと共に、ベェルナー&フライダラー社(Fa.Werner & Pfleiderer)製のTyp ZS1-80の捏和機で捏ね、引き続き、乾燥箱中で10時間110℃の温度で乾燥させた。
【0127】
そうして得られた触媒前駆物質700gを、回転管炉(長さ50cm、内径12cm)中で、空気/窒素混合物[(N200L/空気15L)/h]中で、か焼させた。か焼の範囲で、捏和物を先ず1時間かかって室温(約25℃)から連続的に325℃まで加熱した。引き続き、4時間、この温度に保った。次いで、15分間かかって400℃まで加熱し、この温度で1時間保持し、次いで室温まで冷却させた。
【0128】
か焼された触媒活性物質を、微粉末に粉砕し、その粉末粒子の50%をメッシュ幅1〜10μmの篩に通すと、50μm以上の最長を有するその粒子成分は、1%よりも少なかった。
【0129】
2.シェル型触媒製造
環状の担体本体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm、ステアタイト、EP−B714700による表面粗性Rz45μm及び担体本体の体積に対する孔総体積≦1体積%を有する、製造社:Caramtec DE)28kgを、内体積200Lの糖衣釜(傾斜角90°;Fa.Loedige,DEのHicoater)中に充填した。引き続き、糖衣釜を16U/分で回転させた。HO75質量%及びグリセリン25質量%から成る水溶液2000gを、ノズルを経て、担体本体上に25分間かけて噴霧した。同時に、同じ時間で、a)からの触媒活性酸化物粉末7kgを、噴霧ノズルの噴霧円錐体の外側の床溝を介して連続的に供給した。被覆の間に、供給された粉末は完全に担体本体の表面上に取り込まれ、微粉末の酸化物活性物質の凝集は認められなかった。粉末及び水溶液の供給の終了後に、回転速度2回転/分で、20分間110℃の熱気を糖衣釜中に吹き込んだ。引き続き、更に2時間250℃で、静止床(床板炉)中で空気下で乾燥させた。その酸化物活性物質の成分が、総物質に対して、20質量%である環状のシェル型触媒を得た。シェル厚は、230±25μmで担体本体の表面及び異なる担体本体の表面を覆っていた。生成したシェル型触媒環状物からの床は、固床触媒2を形成した。
【0130】
c)プロペンからアクリル酸への気相触媒的酸化
1.第1反応工程
第1反応管(V2A鋼鉄;外径30mm;壁厚2mm;内径26mm、長さ:439cm、及び反応管中の温度を測定することができる熱電対の収容のための反応管中央に中心を有する熱管(外径4mm))に、下から上に、接触台(長さ44cm)上で、先ず、粗面を有するステアタイト球(直径4〜5mm;反応ガス出発混合物1の加熱のための不活性物質)を30cmの長さに、及び引き続きa)で製造した完全触媒環状物を300cmの長さに装填し、その後に、装填物を後床として30cmの長さで前記のステアタイト球で密閉した。残った35cmの接触管を空のままで残した。
【0131】
固形物を装填した第1反応管部分を、管の囲りに鋳て付けれた各30cm長さの筒状の12個の、電気加熱テープによって加熱されるアルミニウム−ブロックを用いて恒温保持した(窒素で泡立てた塩浴を用いて相応した加熱された反応管を用いる比較実験は、アルミニウムブロック−恒温保持が塩浴−恒温保持をシュミレートすることができることを示した)。流れ方向での最初の6個のアルミニウムブロックが、反応帯域Aを定義し、残ったアルミニウムブロックが反応帯域Bを定義した。固形物のない反応管末端を、高められた圧力下で存在する水蒸気で220℃に保持した。
【0132】
2.第2反応工程
第2反応管(V2A鋼鉄;外径30mm;壁厚2mm;内径26mm、長さ:439cm、及び反応管中の温度を測定することができる熱電対の収容のための反応管中央に中心を有する熱管(外径4mm))に、下から上に、接触台(長さ44cm)上で、先ず、粗面を有するステアタイト球(直径4〜5mm;反応ガス出発混合物2の加熱のための不活性物質)を30cmの長さに、及び引き続きb)で製造されたシェル型触媒環状物を300cmの長さに装填し、その後に、装填物を後床として30cmの長さで前記のステアタイト球で密閉した。残った35cmの接触管を空のままで残した。
【0133】
固形物を装填した第2反応管部分を、管の囲りに鋳て付けられた各30cm長さの筒状の12個のアルミニウム−ブロックを用いて恒温保持した(窒素で泡立てた塩浴を用いて相応して加熱された反応管を用いる比較実験は、アルミニウムブロック−恒温保持が塩浴−恒温保持をシュミレートすることができることを示した)。流れ方向での最初の6個のアルミニウムブロックが、反応帯域Cを定義し、残った6個のアルミニウムブロックが反応帯域Dを定義した。固形物のない反応管末端を、圧力下に存在する水蒸気で220℃に保持した。
【0134】
3.気相酸化
前記の第1反応管に、次の組成の反応ガス出発混合物を連続的に装填し、この際、第1反応管の負荷及び恒温保持を変化させた:
プロペン6〜6.5体積%、
O3〜3.5体積%、
CO0.3〜0.5体積%、
CO0.8〜1.2体積%、
アクロレイン0.025〜0.04体積%、
10.4〜10.7体積%及び
100%までの残量として分子状窒素。
【0135】
第1反応工程の生成混合物から、第1反応管の入口で、ガスクロマトグラフィー分析のための少量の試料を取り出した。その他は、生成ガス混合物を、25℃の温度を有する空気のノズル供給下に、次のアクロレイン酸化工程(アクリル酸への)に直接送り込んだ(反応工程2)。アクロレイン酸化工程の生成ガス混合物から、同様にガスクロマトグラフィー分析のための少量の試料を取り出した。その他は、アクリル酸を第2反応工程の生成ガス混合物から自体公知の方法で分離し、残った残留ガス部分を、プロペン酸化工程の装填のために再度使用した(いわゆる循環ガスとして)が、これは、前記の装填ガスのアクロレイン含量及び供給組成の僅かな変化を説明している。
【0136】
第1反応管の入口での圧力は、選択されたプロペン負荷に依存して3.0〜0.9バールの範囲で変化した。反応帯域A、Cの端部に、同様に、分析箇所があった。第2反応管の入口での圧力は、アクロレイン負荷に依存して2〜0.5バールの範囲で変化した。
【0137】
選択された負荷及び選択されたアルミニウム−恒温保持及び実施された空気供給(第1反応工程後)に依存して達成された結果を、次の表に示す。
【0138】
、T、T、Tは、反応帯域A、B、C及びD中のアルミニウムブロックの温度を表わす。
【0139】
PAは、反応帯域Aの端部でのプロペン変換率である。
【0140】
PBは、反応帯域Bの端部でのプロペン変換率である。
【0141】
WPは、第1反応工程後の全体として見たアクロレイン生成及びアクリル酸副生成物生成の、変換されたプロペンに対する選択率である。
【0142】
ACは、反応帯域Cの端部でのアクロレイン変換率である。
【0143】
ADは、反応帯域Dの端部でのアクロレイン変換率である。
【0144】
PDは、反応帯域Dの端部でのプロペン変換率である。
【0145】
ASは、第2反応工程後のアクリル酸生成の、変換されたプロペンに対する選択率である。
【0146】
RZAASは、第2反応管の出口でのアクリル酸の空−時−収率である。
【0147】
Vは、反応ガス出発混合物2中の分子状酸素:アクロレインのモル比である。
【0148】
Mは、第1反応工程後にノズル供給された空気量である。
【0149】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペン5〜12体積%、ならびに分子状酸素及びその体積の少なくとも50%までが分子状窒素から成る少なくとも1種の不活性ガスを含有し、分子状酸素及びプロペンをモル比O:C≧1で含有する反応ガス出発混合物1を、先ず第1反応工程で、高めた温度で、その活性物質がモリブデン及び/又はタングステン、ならびにビスマス、テルル、アンチモン、錫及び銅からなる群より選択される1種以上を含有する多種金属酸化物である第1固床触媒上に、プロペン変換率が1回の通過で≧90モル%となり、それに伴うアクロレイン生成及びアクリル酸副生成物生成の選択率が総括的に≧90モル%となるように導びき、第1反応工程を出る生成ガス混合物の温度を、間接的及び/又は直接的冷却によって場合により低下させ、生成ガス混合物に場合により分子状酸素及び/又は不活性ガスを添加し、その後に、生成ガス混合物を、アクロレイン4〜10体積%、ならびに分子状酸素及びその体積の少なくとも40%までが分子状窒素から成る少なくとも1種の不活性ガスを含有し、分子状酸素及びアクロレインをモル比O:CO≧0.5で含有する反応ガス出発混合物2として、第2反応工程で、高めた温度で、その活性物質がモリブデン及びバナジウムを含有する少なくとも1種の多種金属酸化物である第2固床触媒上に、アクロレイン変換率が1回の通過で≧90モル%となり、双方の反応工程を経た平均のアクリル酸生成の選択率が、変換されたプロペンに対して、≧80モル%となるように導びくことよりなる、プロペンからアクリル酸への触媒的気相酸化法において、
a)反応ガス出発混合物1中に含有されるプロペンでの第1固床触媒の負荷が、プロペン160〜250NL/触媒床L・hであり、
b)第1固床触媒は、空間的に連続する2つの反応帯域A、B中に配置される触媒床から成り、この際、反応帯域Aの温度は300〜390℃であり、反応帯域Bの温度は、305〜420℃であると同時に、反応帯域Aの温度を少なくとも5℃上まわっており、かつ50℃上まわることはなく、
c)反応ガス出発混合物1は、反応帯域A、Bを、"最初にA"、"次にB"の時間的順序で流過し、
d)反応帯域Aは、プロペン変換率40〜80モル%まで延長し、
e)反応ガス出発混合物2中に含有されるアクロレインでの第2固床触媒の負荷は、アクロレイン140〜250NL/触媒床L・hであり、
f)第2固床触媒は、空間的に連続する2つの反応帯域C、D中に配置された触媒床から成り、この際、反応帯域Cの温度は230〜270℃であり、反応帯域Dの温度は、250〜300℃であると同時に、反応帯域Cの温度の少なくとも5℃上まわっており、かつ40℃上まわることはなく、
g)反応ガス出発混合物2は、反応帯域C、Dを、"最初にC"、"次にD"の時間的順序で流過し、かつ
h)反応帯域Cは、アクロレイン変換率55〜85モル%まで延長する
ことを特徴とする、プロペンからアクリル酸への触媒的気相酸化法。
【請求項2】
反応帯域Aは、プロペン変換率50〜70モル%まで延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応帯域Aは、プロペン変換率65〜75モル%まで延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応帯域Cは、アクロレイン変換率65〜80モル%まで延長する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反応帯域Bの温度は、反応帯域Aの温度の少なくとも10℃上まわっている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
反応帯域Dの温度は、反応帯域Cの温度の少なくとも20℃上まわっている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
反応帯域Bの温度は、305〜340℃である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応帯域Bの温度は、310〜330℃である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
反応帯域Cの温度は、245〜260℃である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
反応帯域Dの温度は、265〜285℃である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
プロペン変換率は、第1反応工程において、1回の通過で、≧94モル%である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アクロレイン生成及びアクリル酸副生成物生成の選択率は第1反応工程において、1回の通過で、総括的に≧94モル%である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アクロレイン変換率は、第2反応工程において、1回の通過で、≧94モル%である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
双方の反応工程を経た平均のアクリル酸生成の選択率は、変換されたプロペンに対して、≧85モル%である、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
第1固床触媒のプロペン負荷は、≧165NL/L・Lである、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
第1固床触媒のプロペン負荷は、≧170NL/L・Lである、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
反応ガス出発混合物1中に含有される少なくとも1種の不活性ガスは、≧60体積%が分子状窒素から成る、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
反応ガス出発混合物1中に含有される少なくとも1種の不活性ガスは、≧70体積%が分子状窒素から成る、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
反応ガス出発混合物1中に含有される少なくとも1種の不活性ガスは、水蒸気を包含する、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
反応ガス出発混合物1中に含有される少なくとも1種の不活性ガスは、CO及び/又はCOを包含する、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
反応ガス出発混合物1のプロペン含量は、5〜8体積%である、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
第1固床触媒の活性物質は、少なくとも1種の、一般式I:
【化1】

[式中、変数は、次のものを表わす:
=ニッケル及び/又はコバルト、
=タリウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、
=亜鉛、燐、砒素、硼素、アンチモン、錫、セリウム、鉛及び/又はタングステン、
=珪素、アルミニウム、チタン及び/又はジルコニウム、
a=0.5〜5、
b=0.01〜5、
c=0〜10、
d=0〜2、
e=0〜8、
f=0〜10及び
n=I中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数]の多種金属酸化物である、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
第1固床触媒の活性物質は、少なくとも1種の、一般式II:
【化2】

[式中、変数は、次のものを表わす:
=ビスマス、テルル、アンチモン、錫及び/又は銅、
=モリブデン及び/又はタングステン、
=アルカリ金属、タリウム及び/又はサマリウム、
=アルカリ土類金属、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、亜鉛、錫、カドミウム及び/又は水銀、
=鉄、クロム、セリウム及び/又はバナジウム、
=燐、砒素、硼素及び/又はアンチモン、
=希土類金属、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、レニウム、ルテニウム、ロジウム、銀、金、アルミニウム、ガリウム、インジウム、珪素、ゲルマニウム、鉛、トリウム及び/又はウラン、
a’=0.01〜8、
b’=0.1〜30、
c’=0〜4、
d’=0〜20、
e’=0〜20、
f’=0〜6、
g’=0〜15、
h’=8〜16、
x’、y’=II中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数、及び
p、q=その比率p/qが0.1〜10である数]の、3次元的に拡張された、その局所環境とは異なるその組成に基づくその局所環境によって限定され、その最大直径が1nm〜100μmである化学的組成 Ya′b′x′の範囲を含有する多種金属酸化物である、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
第1固床触媒は、環状及び/又は球状の触媒を包含する、請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
環状物形状は、次のとおり:
外径:2〜10mm、
長さ:2〜10mm、
壁厚:1〜3mm。
である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
球状触媒は、球形担体(直径1〜8mm)及びその上に被覆された活性物質シェル(厚さ10〜1000μm)から成るシェル型触媒である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
第1及び第2反応工程を、各々、2帯域管束反応器中で実施する、請求項1から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
第2固床触媒の活性物質は、少なくとも1種の、一般式IV:
【化3】

[式中、変数は、次のものを表わす:
=W、Nb、Ta、Cr及び/又はCe、
=Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/又はZn、
=Sb及び/又はBi、
=1種以上のアルカリ金属、
=1種以上のアルカリ土類金属、
=Si、Al、Ti及び/又はZr、
a=1〜6、
b=0.2〜4、
c=0.5〜18、
d=0〜40、
e=0〜2、
f=0〜4、
g=0〜40及び
n=IV中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数]の多種金属酸化物である、請求項1から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
第2固床触媒の活性物質は、少なくとも1種の、一般式VI:
[D][E] (VI)
[式中、変数は、次のものを表わす:
D=Mo12a″b″c″d″e″f″g″x″
E:=Z12Cui″y″
=W、Nb、Ta、Cr及び/又はCe、
=Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/又はZn、
=Sb及び/又はBi、
=Li、Na、K、Rb、Cs及び/又はH、
=Mg、Co、Sr及び/又はBa、
=Si、Al、Ti及び/又はZr、
=Mo、W、V、Nb及び/又はTa、
a"=1〜8、
b"=0.2〜5、
c"=0〜23、
d"=0〜50、
e"=0〜2、
f"=0〜5、
g"=0〜50、
h"=4〜30、
i"=0〜20及び
x"、y"=VI中の酸素とは異なる元素の原子価及び出現数によって決定される数、及び
p、q=その比率p/qが160:1〜1:1である、ゼロとは異なる数]の多種金属酸化物であり、これは、多種金属酸化物物質(E):
【化4】

を、微粉砕形で、別途に予備生成させ(出発物質1)、引き続き、予備生成させた固体出発物質1を、元素Mo、V、Z、Z、Z、Z、Z、Zの給源(この給源は、前記の元素を、化学量論D:
【化5】

で含有する)の水溶液、水性懸濁液又は微粉砕の乾燥混合物(出発物質2)に、所望の質量比p:qで加入混合させ、ここで場合により生じる水性混合物を乾燥させ、そうして得られる乾燥前駆物質を、その乾燥前又は乾燥後に、所望の触媒形状を得るために250〜600℃でか焼させることによって得られている、請求項1から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
第2固床触媒は、環形触媒を包含する、請求項1から29までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
第2固床触媒は、球形触媒を包含する、請求項1から29までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
第1反応工程において必要とされる分子状酸素の給源として、空気を使用する、請求項1から31までのいずれか1項記載の方法。

【公開番号】特開2011−63628(P2011−63628A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106(P2011−106)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【分割の表示】特願2000−603999(P2000−603999)の分割
【原出願日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】