説明

プロモーターおよびその活性化方法

【課題】放線菌においてタンパク質の発現量を増加させる方法を提供する。
【解決手段】プロモーターが挿入されているベクターが組み込まれた組換え微生物を、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む培地中で培養する工程を含む、プロモーターを活性化する方法。プロモーターの活性化とは、プロモーターによって、組換え微生物におけるタンパク質の発現量が増加させることである。この方法において、プロモーターは、特定な配列からなる塩基配列における配列番号の1位から427位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつ該塩基配列と同等またはそれ以上の活性を発揮し得る塩基配列からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放線菌由来のプロモーターおよび該プロモーターを活性化させる方法に関する。より詳細には、プロモーターを活性化させて、タンパク質の発現量を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレプトマイセス属(Streptomyces)放線菌は、抗生物質および農薬のような有用物質の生産において、非常に重要な微生物である。これらの微生物はまた、産業上有用な種々の酵素を生産するため、酵素およびその生産について広く研究されている。
【0003】
例えば、アミノペプチダーゼは、調味料の製造時の反応の触媒(特許文献1〜3)、タンパク質の配列決定における分子ツール、エンドペプチダーゼのtwo−stageアッセイにおける添加剤(非特許文献1)、組換えタンパク質および融合産物のプロセシングにおけるキュアリング試薬(非特許文献2)、および光学活性アミノ酸製造(非特許文献3)として用いられている。しかし、従来用いられているアミノペプチダーゼは、安定性、反応性、補因子の要求性、基質特異性などの点から、使用条件が限定される場合があった。これに対して、ストレプトマイセス・セプタタス(Streptomyces septatus)TH−2株が、十分に高い熱安定性および至適反応温度を有し、そして適切な反応性、補因子要求性、および基質特異性を示す、新規なアミノペプチダーゼ(SSAP)を生産することが見い出された(特許文献4)。
【0004】
一方、上記ストレプトマイセス・セプタタスTH−2株は、無機リン酸および炭素源の存在下で大量のメタロエンドペプチダーゼ(SSMP)を分泌することも見い出されている(特許文献5)。すなわち、ストレプトマイセス・セプタタスTH−2は、無機リン酸およびグルコースリッチな培地中でSSMPを0.3g/lという高濃度で分泌する。
【0005】
ところで、放線菌における大量発現系が求められている。例えば、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)由来のH−ニトリルヒドラターゼ遺伝子クラスターを含むDNA構築物が、ストレプトマイセス属微生物において機能することが見い出されている(特許文献6)。また、ストレプトマイセス・グリセウス(S.griseus)由来のL11タンパク質遺伝子プロモーターを含む発現ベクターが、放線菌増殖期において異種遺伝子を高発現することも知られている(特許文献7)。
【特許文献1】特開2002−355047号公報
【特許文献2】特開2000−325090号公報
【特許文献3】特開2000−232885号公報
【特許文献4】特開2005−218319号公報
【特許文献5】特開2006−197802号公報
【特許文献6】特開2005−237223号公報
【特許文献7】特開2005−21031号公報
【非特許文献1】オロウスキー(Orlowski,M.)ら,バイオケミストリー(Biochemistry),18巻,4942−4950頁(1981年)
【非特許文献2】ベン−バサット(Ben−Bassat,A.)ら,ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J.Bacteriol.),169巻,751−757頁(1987年)
【非特許文献3】ヤムスコフ(I.A.Yamskov)ら、エンザイム・アンド・マイクロバイアル・テクノロジー(Enzyme Microb.Technol.),3巻,137−140頁(1981年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、放線菌においてタンパク質の発現量を増加させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プロモーターを活性化する方法を提供し、該プロモーターは、配列表の配列番号1の1位から427位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつ該塩基配列と同等またはそれ以上の活性を発揮し得る塩基配列からなり、該方法は、
該プロモーターが挿入されているベクターが組み込まれた組換え微生物を、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む培地中で培養する工程であって、該プロモーターが、タンパク質遺伝子の上流側に結合されている、工程を含み、
該プロモーターの活性化は、該プロモーターによって、該組換え微生物における該タンパク質の発現量が増加することである。
【0008】
本発明はまた、組換え微生物におけるタンパク質の発現量を増加させる方法を提供し、該方法は、該組換え微生物を培地中で培養する工程を含み、
該組換え微生物は、該タンパク質遺伝子の上流側に結合されたプロモーターが挿入されているベクターが組み込まれており、
該プロモーターは、配列表の配列番号1の1位から427位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつ該塩基配列と同等またはそれ以上の活性を発揮し得る塩基配列からなり、そして
該培地は、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む。
【0009】
本発明はさらに、タンパク質の製造方法を提供し、該方法は、
該タンパク質遺伝子の上流側に結合されたプロモーターが挿入されているベクターが組み込まれた組換え微生物を培地中で培養する工程、および
得られた培養物から、該タンパク質を回収する工程
を含み、
該プロモーターは、配列表の配列番号1の1位から427位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつ該塩基配列と同等またはそれ以上の活性を発揮し得る塩基配列からなり、そして
該培地は、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む。
【0010】
上記の方法において1つの実施態様では、上記ベクターは、上記タンパク質遺伝子の下流側にパリンドローム配列を含み、該パリンドローム配列は、配列表の配列番号2の1位から537位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつパリンドローム構造をとり得る塩基配列からなる。
【0011】
上記の方法においてある実施態様では、上記組換え微生物は放線菌である。
【0012】
上記の方法においてさらなる実施態様では、上記放線菌は、ストレプトマイセス・リビダンスである。
【0013】
本発明はまた、配列表の配列番号1の1位から427位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつ該塩基配列と同等またはそれ以上の活性を発揮し得る塩基配列からなる、プロモーターを提供し、該プロモーターは、タンパク質遺伝子の上流側に結合されることによって、宿主菌体内において該タンパク質の発現量を増加させる活性を発揮し得る。
【0014】
1つの実施態様では、上記宿主菌は、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む培地中で培養される。
【0015】
本発明はさらに、上記のプロモーターを含む、ベクターを提供する。
【0016】
ある実施態様では、上記ベクターは、上記プロモーターの下流側に、配列表の配列番号2の1位から537位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつパリンドローム構造をとり得る塩基配列からなるパリンドローム配列を含む。
【0017】
1つの実施態様では、上記ベクターは、上記プロモーターの下流側にタンパク質遺伝子が挿入されている。
【0018】
本発明はさらに、上記のベクターが宿主菌体内に組み込まれている、組換え微生物を提供する。
【0019】
1つの実施態様では、上記宿主菌は放線菌である。
【0020】
さらなる実施態様では、上記放線菌は、ストレプトマイセス・リビダンスである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、宿主菌、特に放線菌において有用なプロモーターが提供され、このプロモーターを活性化することによって、タンパク質の発現量を増加させることができる。プロモーターの活性化は、該プロモーターを有する菌体をマグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む培地中で培養するという、非常に簡単な手段によって行われ得る。したがって、本発明のプロモーターを用いることにより、所望のタンパク質を大量に発現させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のプロモーターは、宿主菌体内においてタンパク質の発現量を増加させる活性を発揮し得る。このプロモーターは、好ましくは、ストレプトマイセス・セプタタス(S.septatus)のメタロエンドペプチダーゼ(SSMP)遺伝子のプロモーター(以下、SSMPプロモーターという場合がある)に由来する。具体的には、配列表の配列番号1の1位から427位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつSSMPプロモーターと同等またはそれ以上のプロモーター活性を発揮し得る塩基配列からなる。
【0023】
本明細書において、「欠失、置換もしくは付加され」た塩基配列とは、天然由来の変異を有する塩基配列であってもよく、人為的な変異を導入された塩基配列であってもよい。「塩基配列の置換、欠失、付加又は挿入」は、当該技術分野で通常用いられる部位特異的変異導入法などにより、塩基配列からなる核酸に対して生じさせ得る。得られた塩基配列が、元の塩基配列と同等またはそれ以上の活性を示せばよい。
【0024】
本発明のプロモーターは、例えば、SSMPプロモーターを保有する菌体から、制限酵素を用いて切り出すことが可能である。この場合、適切な制限酵素認識部位を設けたプライマーを用い、PCRで所望のプロモーター領域を増幅することにより、このプロモーター領域のDNA断片を得ることができる。あるいは、配列番号1に示す塩基配列情報をもとに、所望のプロモーター領域を化学合成することもできる。
【0025】
本発明のプロモーターは、このプロモーターが組み込まれている宿主菌を、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む培地中で培養することによって活性化され、このプロモーターの下流にあるタンパク質をコードする塩基配列(タンパク質遺伝子)からのタンパク質の発現量が増加する。
【0026】
本発明において、「プロモーターの活性化」とは、タンパク質遺伝子の上流側に結合されたプロモーターによって、宿主菌体内におけるタンパク質の発現量が増加することをいう。言い換えれば、プロモーターの下流側にあるタンパク質遺伝子の転写がより促進されることをいう。一方、「プロモーター活性」とは、プロモーター領域に転写因子が結合し、転写を惹起する活性をいう。なお、下流側とは、転写されるポリヌクレオチド鎖の3’側のことであり、上流側とは、転写されるポリヌクレオチド鎖の5’側のことである。
【0027】
上記プロモーターは、好ましくは、宿主菌への導入に適したベクターに挿入されている。このようなベクターは、組換えDNAの使用目的に応じて適当なベクターを選択すればよく、プラスミドベクター、ファージベクターなどが挙げられる。放線菌と大腸菌との両方で増幅可能なベクターは、大腸菌−放線菌シャトルベクターとして利用することができる。
【0028】
例えば、放線菌に適したベクターには、放線菌で増幅するための複製起点(ori)が含まれている。さらに大腸菌で増幅するための複製起点を有していてもよい。放線菌で増幅するための複製起点(ori)は、低コピー型であっても多コピー型であってもよい。低コピープラスミドとは、放線菌内で1から10コピー程度のプラスミド増幅をもたらすプラスミドをいい、多コピープラスミドとはそれ以上、具体的には40コピーから400コピー程度またはそれ以上のコピー数をもたらすプラスミドをいう。低コピーのoriを例示すれば、例えば SCP2* ori(Lydiate, D.J.ら、Gene、35巻3号、223-235頁、1985年)が挙げられる。高コピーのoriとしては、例えば pIJ101 ori(Katz, E.ら、J. Gen. Microbiol.、129巻、2703-2714頁、1983年)が挙げられる。
【0029】
放線菌に適したベクターとしては、例えば、pIJ486(Mol. Gen. Genet.、203巻、468-478頁、1986年)、pKC1064(Gene、103巻、97-99頁、1991年)、pUWL−KS(Gene、165巻、149-150頁、1995年)、pIJ702(Katz, E.ら、J. Gen. Microbiol.、129巻、2703-2714頁、1983年)、およびpIJ8600(Sun, J.ら、Microbiology、145巻、2221-2227頁、1999年)が挙げられる。大腸菌に適したベクターとしては、例えば、pET22b、pTrc99A、pQE32、pIJ702(モルナー(Molnar)ら、J. Ferment. Bioeng.、72巻、368-372頁、1991年)などが挙げられる。
【0030】
このようなベクターは、ゲノム組み込み型ベクターであってもよい。ゲノム組み込み型ベクターとは、例えば、放線菌に導入されたときに、放線菌ゲノムに組み込まれて、ゲノムから組み込んだ遺伝子を発現できるベクターである。このベクターは、放線菌に導入する前に、プラスミドの形態で調製することもできる。ゲノム組み込み型ベクターの作成においては、放線菌ファージが有する、宿主ゲノムへのファージDNAの組み込みに必要な組み換え配列を利用することができる。具体的には、例えば、φ31ファージのint遺伝子とattPとをベクターに挿入すればよい(Bierman, M.ら、Gene、116巻、43-49頁、1992年)。プラスミドを宿主菌体内で保持させ続けるには、通常、プラスミドに組み込んだ薬剤耐性遺伝子に対応する薬剤により選択し続ける必要があるが、ゲノム組み込み型の発現ベクターは安定であるため、一度組み換え宿主菌を得ると、薬剤選択の必要がない点で優れている。
【0031】
ベクターは、上記プロモーター以外に、誘導可能なプロモーター、選択用マーカー遺伝子、ターミネーターなどの転写エレメントを適宜有していてもよい。
【0032】
ターミネーターは、宿主菌中で活性を発揮し得るものであればいずれの遺伝子に由来するターミネーターを用いてもよい。ターミネーターは、通常、発現させるタンパク質の翻訳を停止するためのパリンドローム配列を有する。例えば、TH−3 collターミネーター、PLDターミネーター、fdファージのターミネーター(fd−ter)、T4ターミネーター(T4−ter)などを用いることができる。本発明においては、パリンドローム配列は、好ましくは、配列表の配列番号2の1位から537位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつパリンドローム構造をとり得る塩基配列からなる。
【0033】
また、ベクターは、これを保持した宿主を選択できるように、適切な薬剤耐性遺伝子または代謝酵素などの選択用マーカー遺伝子を含むことが好ましい。このような選択用マーカー遺伝子は、例えば、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、チオストレプトン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、アプラマイシン耐性遺伝子などが含まれ、これらはいずれも当業者には周知である。
【0034】
本発明のベクターには、マルチクローニングサイト(MCS)を導入することができる。MCSは、複数種類の制限酵素部位を有するDNA断片であり、発現の目的遺伝子をMCSに連結してベクターに挿入するために使用される。例えば、MCSは、NdeI、EcoRI、XbaI、HindIII、BglII、BamHIなどの制限酵素部位(少なくとも1個)を有する。
【0035】
発現させるべきタンパク質をコードする塩基配列(タンパク質遺伝子)は、上記ベクターにおいて上記プロモーターの下流に挿入される。本発明において、タンパク質は、宿主菌で発現可能なタンパク質であれば特に制限されない。タンパク質としては、所望の酵素、構造蛋白質、調節因子などであってよく、天然のタンパク質、変異タンパク質、人工的に作り出したタンパク質などであってもよい。例えば、分泌タンパク質を本発明のベクターを利用して発現させれば、このタンパク質を培養液中に大量に分泌させることができる。天然には分泌されないタンパク質であっても、分泌シグナルを付加した融合タンパク質として発現させることで、そのタンパク質を菌体外に分泌させることができる。本発明のベクターは、挿入するタンパク質遺伝子がコードするタンパク質を分泌するように、予めベクター中に分泌シグナル配列をコードしていてもよい。
【0036】
このようなベクターの調製に用いられる菌としては、例えば、当該技術分野で通常用いられる宿主菌が挙げられ、具体的には、例えば、放線菌、大腸菌などが挙げられる。より具体的には、放線菌としては、ストレプトマイセス・リビダンス1326、ストレプトマイセス・リビダンスTK−23など、そして大腸菌としては、BL21(DE3)、JM109などが挙げられる。これらの宿主菌のうち、精製の容易化、大量調製、安全性などの観点から、大腸菌BL21(DE3)、JM109が望ましい。
【0037】
所望のタンパク質遺伝子を有するベクターは、適切な宿主菌へ導入されて、宿主菌を形質転換して組換え微生物を作製する。形質転換法として、例えば、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法など、当業者に周知の方法が採用される。
【0038】
本発明に用いられる宿主菌としては、放線菌、大腸菌、バシラス属菌、シュードモナス属菌、サーマス属菌、アグロバクテリウム属菌などが挙げられる。中でも、本発明においては、放線菌が好適に用いられる。
【0039】
本発明において、放線菌とは、放線菌目(order Actinomycetales)に属する菌をいう。放線菌は、グラム陽性細菌に所属する一分類群であり、主に土壌などに生息する。原核生物であるが、多くの放線菌は分岐を伴う糸状の生育を示し、多様な形態を呈する。また、一般的に胞子を形成し、中には胞子嚢や運動性胞子を形成する種も存在する。また、放線菌からは種々の抗生物質および他の生物学的に重要な化合物が発見されている。放線菌目には、フランキア科(Frankiaceae)、ミクロモノスポラ科(Micromonosporaceae)、プロピオニバクトリウム科(Propionibacteriaceae)、シウドノカルジア科(Psuodonocardiaceae)、ストレプトマイセス科(Streptomyceae)、ストレプトスポランギウム科(Streptosporanguaceae)、テルモモノスポラ科(Thermomonosporaceae)、コリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)、マイコバクテリウム科(Mycobacteriuaceae)、およびノカジア科(Nocaudiaceae)が含まれる。本発明において放線菌とは、好ましくは、ストレプトマイセス科、より好ましくはストレプトマイセス属(Streptomyces)に属する菌である。ストレプトマイセス属に属する菌としては、例えば、ストレプトマイセス・セプタタス(S.septus)、ストレプトマイセス・リビダンス(S.lividans)、ストレプトマイセス・グリセウス(S.griseus)、ストレプトマイセス・ラベンデュラエ(S.lavendulae)、ストレプトマイセス・バージニア(S.virginia)、およびストレプトマイセス・コエリカラー(S.coelicolor)が挙げられる。本発明においては、宿主菌体として、特にストレプトマイセス・リビダンスが好適に用いられる。このようなストレプトマイセス属に属する放線菌やその他の放線菌は、種々のカタログに記載されており、当業者であれば容易に入手可能である。
【0040】
上記SSMPプロモーターおよび所望のタンパク質をコードする塩基配列を有するベクターで形質転換された本発明の組換え微生物は、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む培地中で培養される。このような培地は、当該技術分野で通常用いられる培地に、適切な濃度の金属塩を含む培地である。
【0041】
通常用いられる培地としては、宿主菌が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類などを含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地おおび合成培地のいずれを用いてもよい。液体培地または固体培地を使用することができる。炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、スクロース、ラフィノース、デンプンなどの炭水化物、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物が挙げられる。その他、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、各種アミノ酸などを含んでいてもよい。その他に、無機塩として、微量のカリウム、ナトリウム、鉄などのリン酸塩、塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩などを含んでいてもよい。また、必要に応じて植物油、界面活性剤、シリコンなどの消泡剤を添加してもよい。
【0042】
このような培地に含まれる上記マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩としては、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらの金属塩の濃度は、宿主菌の種類や濃度、培地の種類など依存して変動する。これらの金属塩は、培地中に、通常は少なくとも0.005w/v%、好ましくは少なくとも0.01w/v%、より好ましくは少なくとも0.02w/v%含まれ、通常は多くとも2.0w/v%、好ましくは多くとも1.0w/v%、より好ましくは多くとも0.5w/v%含まれる。
【0043】
培養条件は、培地の種類、培養方法などにより適宜選択すればよく、宿主菌が増殖し、目的のタンパク質を産生できる条件であれば特に制限はない。通常、液体培地中で振盪培養または通気攪拌培養などの好気的条件下で、10℃〜40℃、好ましくは28℃で12〜120時間行われる。pHは、4から10、好ましくは6から8に調節される。pHの調整は、無機酸または有機酸、アルカリ溶液などを用いて行う。
【0044】
このように、本発明の組換え微生物を培養することにより、組み込まれているタンパク質遺伝子が発現し、培養物からタンパク質を得ることができる。特に、上記組換え微生物をマグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む培地中で培養することにより、SSMPプロモーターが活性化され、タンパク質遺伝子の転写を促進し、その結果、マグネシウム、カルシウム、またはマンガンを含まない培地で培養した場合と比較して、タンパク質の発現量がより増大する。したがって、目的のタンパク質を、効率よく製造することができる。
【0045】
タンパク質が宿主菌体内に蓄積する場合には、培養終了後、遠心分離によって形質転換細胞を回収し、得られた菌体を超音波処理などによって破砕した後、遠心分離などによって無細胞抽出液を得る。これを出発材料とし、塩析法や、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィーなどの一般的なタンパク質精製法により精製することができる。発現したタンパク質が細胞外に分泌される場合には、培養上清から同様に精製することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例により限定されるものではない。特に明記しない限り、各種操作は、モレキュラークローニング ア ラボラトリー マニュアル(Molecular Cloning A Laboratory Manual)第2版(ザンブルーク(Sambrook, J)ら、1989年)に従って行った。なお、実施例において、%は、特に明記しない限り、w/v%を表す。
【0047】
実施例1:発現ベクターpTONA5の作製
pBluescript II KS (-)(TOYOBO)を鋳型に大腸菌JM109のori(0.6kb)の部分をプライマー1および2(配列番号3および4)を用いてPCRで増幅した。PCRの条件は、94℃で2分の後、94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で1分を30サイクル繰り返し、その後4℃に冷却した。PCRには、KOD plus DNAポリメラーゼ(TOYOBO)を用いた。次いで、pTYM18(オナカ(Onaka,H.)ら、J. Antibiotics、56巻、950-956頁、2003年)を鋳型に、aphII(大腸菌−放線菌カナマイシン耐性遺伝子:1.3kb)を、プライマー3および4(配列番号5および6)を用いて上記と同様にPCRで増幅した。
【0048】
得られた2つの断片をそれぞれ制限酵素SspIおよびPstIで処理し、2つの断片を互いにライゲーションした後、大腸菌に導入した。大腸菌を、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地(1%NaCl、1%ポリペプトン、および0.5%酵母エキス)中37℃にてカナマイシンを選択マーカーにして、ライゲーションした断片を含むプラスミドpBSaphIIを得た。pIJ702(モルナー(Molnar)ら、J. Ferment. Bioeng.、72巻、368-372頁、1991年)および得られたpBSaphIIをそれぞれ制限酵素PstIで処理し、2つの断片をライゲーションした後、大腸菌に導入した。カナマイシンを選択マーカーにして、プラスミドpIJE702を得た。
【0049】
次に、pTYM18を鋳型にoriT(0.8kb)をプライマー5および6(配列番号7および8)を用いて上記と同様にPCRで増幅した。得られた断片を制限酵素HincIIおよびSmaIで処理し、そしてpIJE702を制限酵素SspIで処理した。得られた2つの断片をライゲーションした後、大腸菌に導入した。カナマイシンを選択マーカーにして、プラスミドpIJEC702を得た。次いで、pIJEC702のNdeI部位を、QuikChange II Kit(Stratagene)ならびにプライマー7および8(配列番号9および10)を用いてサイレント変異によって欠失させ、pIJEC’702を得た。
【0050】
次に、S. septatus TH-2ゲノムDNAを、S. septatus TH-2[Streptomyces septatus TH-2と命名・表示され、受託番号:FERM P−17329(寄託日:1999年3月24日)として、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所、特許微生物寄託センター(現:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)(日本国茨城県つくば市東1丁目1−1)に寄託されている]から、サイトウ・ミウラ法(サイトウ(Saito,H.)ら、Biochem.Biophys.Acta.,72巻、619-629頁、1963年)により調製した。SSMPプロモーター(0.4kb)を、S. septatus TH-2ゲノムDNAを鋳型としてプライマー9および10(配列番号11および12)を用いて上記と同様にPCRで増幅した。また、S. aureofaciens TH-3ゲノムDNAをS. aureofaciens TH-3[Streptomyces aureofaciens TH-3と命名・表示され、受託番号:FERM P−21343(寄託日:2007年8月17日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1−1)に寄託されている]から上記と同様の方法により調製した。TH−3 collターミネーター(0.5kb)を、S. aureofaciens TH-3ゲノムDNAを鋳型としてプライマー11および12(それぞれ配列番号13および14)を用いて上記と同様にPCRで増幅した。SSMPプロモーター断片を、AseIおよびEcoRIで処理し、ターミネーター断片をEcoRIおよびBglIIで処理し、そしてpIJEC’702を制限酵素AseIおよびBglIIで処理した。得られた3つの断片をライゲーションした後、大腸菌JM109に導入した。カナマイシンを選択マーカーにして、プラスミドpTONA5を得た。プラスミドpTONA5の構成(制限酵素地図)を図1に示す。このプラスミドpTONA5には、SSMPプロモーター配列(配列番号1)およびTH−3 collターミネーター(配列番号2)が含まれている。
【0051】
実施例2:SSAP発現株(S.lividans)の構築
SSAP遺伝子を、上記S. septatus TH-2ゲノムDNAを鋳型としてプライマー13および14(配列番号15および16)を用いて上記と同様にPCRで増幅した。pTONA5を制限酵素NdeIおよびHindIIIで処理し、SSAP遺伝子断片をNdeIおよびHindIIIで処理し、得られた2つの断片をライゲーションした後、大腸菌JM109に導入した。カナマイシンを選択マーカーにして、プラスミドpTONA5−SSAPを得た。このプラスミドpTONA5−SSAPには、SSMPプロモーターの下流にSSAP遺伝子(配列番号17)が発現可能に配置されている。
【0052】
pTONA5−SSAPを接合性大腸菌S17−1に導入し、その形質転換された大腸菌から接合形質転換によりS. lividans 1326株を形質転換した。なお、接合形質転換法については、放線菌に関する遺伝子操作技術についての「Genetic Manupulation of Streptomyces」(ホップウッド(Hopwood,D.A.)ら、1985年、Genetic Manupulation of Streptomyces: a Laboratory Manual,the John Innes Foundation,Norwich)に記載の方法に従って行った。詳細には、以下のように行った。
【0053】
1)pTONA5−SSAPを保持する接合大腸菌(S17−1)をカナマイシン50μg/ml入りLB培地2〜5ml中で37℃にて終夜振とう培養した;
2)培養液1mlを遠心分離(8,000rpm、5分間、4℃)後、上清をデカンテーションで捨てた;
3)菌体ペレットをLB培地1mlに懸濁した後、上記操作2)と同様にして菌体を洗浄した。この操作を2回繰り返した;
4)洗浄した菌体ペレットを500μlのLB培地を添加し、ピペットで穏やかに懸濁させた;
5)上記操作4で得た大腸菌懸濁液から100μlを分取し、放線菌S. lividans 1326株の胞子懸濁液(1010個/ml)10μlとピペッティングで混合した;
6)ISP4培地平板培地(DifcoTM ISP Medium 4:3.7%)に混合液の全量を塗布し、30℃にて18時間培養した;そして
7)カナマイシン50μg/mlおよびナリジキシン酸ナトリウム67μg/mlを含むNBソフトアガー(DifcoTM Nutrient broth:0.8%、寒天:0.5%)3mlを重層し、30℃にて5日間培養して、形質転換株を得た。
【0054】
得られた形質転換株(SSAP発現株)は、SSMPプロモーターの下流に配列番号17に示すSSAP遺伝子配列を有する。
【0055】
実施例3:SSAP発現株(S.lividans)を用いた培養実験(SSMPプロモーターにおける2価金属塩の影響)
培養実験には、500ml容バッフル付三角フラスコに種々の培地25mlをそれぞれ分注し、121℃にて20分間の蒸気滅菌を行った培地を用いた(カナマイシンは滅菌後添加した)。基本培地の組成は、次のとおりであった:グルコース2%、KHPO 0.8%、ポリペプトン(日本製薬製)0.5%、イーストエキストラクト(Difco製)0.5%、カナマイシン50μg/mL、pH7.0。SSAP発現株を、28℃にて160rpmで72時間振とう培養した。SSAP発現株の生育量の目安として、660nmの吸光度を測定した。
【0056】
培養により発現したSSAPの活性の測定を、以下のように行った:まず、SSAPの基質であるL−ロイシル−p−ニトロアニリドの0.059gを正確に秤量し、2mMのCaCl・2HOを含む0.1MのTris−HCl(pH8.0)に溶解し、200mlにメスアップして、基質溶液を調製した。次いで、基質溶液2mlを37±0.5℃で5分間加温した後、試料溶液(脱塩水で希釈した培養液)0.05mlを加えて反応を開始した。正確に5分後、0.3mlの反応停止液(5%トリクロロ酢酸溶液)を加えた。水を対照として波長405nmにおける吸光度Aを測定した。ブランクとして、試料溶液の代わりに脱塩水を加えて同様に操作して吸光度Aを測定した。これとは別に、p−ニトロアニリンの検量線を予め作成しておいた。AおよびAにそれぞれ相当するp−ニトロアニリン濃度をp−ニトロアニリン検量線より求め、それぞれのp−ニトロアニリン濃度(μmol/ml)をNおよびNとした。酵素活性を、以下の式から求めた。
【0057】
酵素活性(U/gまたはU/ml)=(N−N)×(2.35/0.05)×(1/5)×(1/W)
−N:生成p−ニトロアニリン濃度(μmol/ml)
0.05:反応に使用する試料溶液の量(ml)
2.35:最終液量(ml)
5:反応時間(分)
W:試料溶液1ml中の試料の量(gまたはml)=希釈率
ここで、酵素活性の単位(U)は、この測定条件において、1分間に1μmolのp−ニトロアニリンを生成する酵素量を表す。
【0058】
種々の培地中でSSAP発現株を72時間培養した後の培養液中のSSAPの活性および660nmでの吸光度を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
2価の金属イオンのうち、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、またはマンガン(Mn)含む培地で培養した場合には、基本培地で培養した場合と比較して、培養液中のSSAP活性が非常に高かった。2価の金属イオンであっても、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、またはコバルト(Co)を含む培地では、基本培地で培養した場合と比較して、SSAP活性が低いかあるいは全く活性がなかった。しかし、OD660の測定値から、SSAP発現株の生育自体はこれらの金属による阻害を受けていないことが明らかである。一方、SSAP活性が高い場合(すなわち、Mg、Ca、またはMn含む培地で培養した場合)でも、SSAP発現株の生育量は、基本培地を用いた場合と同等または少し多い程度であったことから、培養液中での高いSSAP活性は、菌体数に依存しないことがわかる。
【0061】
SSAPの活性(酵素活性)は、金属イオンによって影響を受けないことが知られている(特許文献4)。そのため、上記の結果に示される高いSSAP活性は、培養液中のSSAP濃度が高いこと、すなわち、SSAPが多量に発現して分泌されたことに起因すると考えられる。したがって、SSAP発現株をMg、Ca、またはMn含む培地で培養することにより、SSAPの発現量が増加したことがわかる。このことから、SSMPプロモーターの制御下に連結されたSSAPが多量に発現したことがわかる。これは、SSMPプロモーターの制御下に連結されたタンパク質遺伝子の転写がより促進されることによって、言い換えれば、SSMPプロモーターが活性化されることによって、タンパク質の発現量が増加すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、宿主、特に放線菌において有用なプロモーターが提供され、このプロモーターを活性化することによって、タンパク質の発現量を増加させることができる。プロモーターの活性化は、該プロモーターを有する菌体をマグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む培地中で培養するという、非常に簡単な手段によって行われ得る。したがって、本発明のプロモーターを用いることにより、所望のタンパク質を大量に発現させることが可能になる。特に、放線菌は、有用な酵素の生産において非常に重要な微生物であるため、本発明の方法により、酵素などのタンパク質をより効率よく提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】プラスミドpTONA5の構成を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロモーターを活性化する方法であって、該プロモーターが、配列表の配列番号1の1位から427位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつ該塩基配列と同等またはそれ以上の活性を発揮し得る塩基配列からなり、
該プロモーターが挿入されているベクターが組み込まれた組換え微生物を、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む培地中で培養する工程であって、該プロモーターが、タンパク質遺伝子の上流側に結合されている、工程を含み、
該プロモーターの活性化が、該プロモーターによって、該組換え微生物における該タンパク質の発現量が増加することである、方法。
【請求項2】
前記ベクターが、前記タンパク質遺伝子の下流側にパリンドローム配列を含み、該パリンドローム配列が、配列表の配列番号2の1位から537位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつパリンドローム構造をとり得る塩基配列からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組換え微生物が放線菌である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記放線菌が、ストレプトマイセス・リビダンスである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
組換え微生物におけるタンパク質の発現量を増加させる方法であって、
該組換え微生物を培地中で培養する工程を含み、
該組換え微生物は、該タンパク質遺伝子の上流側に結合されたプロモーターが挿入されているベクターが組み込まれており、
該プロモーターが、配列表の配列番号1の1位から427位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつ該塩基配列と同等またはそれ以上の活性を発揮し得る塩基配列からなり、そして
該培地が、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む、方法。
【請求項6】
前記ベクターが、前記タンパク質遺伝子の下流側にパリンドローム配列を含み、該パリンドローム配列が、配列表の配列番号2の1位から537位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつパリンドローム構造をとり得る塩基配列からなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組換え微生物が放線菌である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記放線菌が、ストレプトマイセス・リビダンスである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
タンパク質の製造方法であって、
該タンパク質遺伝子の上流側に結合されたプロモーターが挿入されているベクターが組み込まれた組換え微生物を培地中で培養する工程、および
得られた培養物から、該タンパク質を回収する工程
を含み、
該プロモーターが、配列表の配列番号1の1位から427位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつ該塩基配列と同等またはそれ以上の活性を発揮し得る塩基配列からなり、そして
該培地が、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む、方法。
【請求項10】
前記ベクターが、前記タンパク質遺伝子の下流側にパリンドローム配列を含み、該パリンドローム配列が、配列表の配列番号2の1位から537位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつパリンドローム構造をとり得る塩基配列からなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組換え微生物が放線菌である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記放線菌が、ストレプトマイセス・リビダンスである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
配列表の配列番号1の1位から427位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつ該塩基配列と同等またはそれ以上の活性を発揮し得る塩基配列からなる、プロモーターであって、
タンパク質遺伝子の上流側に結合されることによって、宿主菌体内において該タンパク質の発現量を増加させる活性を発揮し得る、プロモーター。
【請求項14】
前記宿主菌が、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンからなる群より選択される金属塩を含む培地中で培養される、請求項13に記載のプロモーター。
【請求項15】
請求項13または14に記載のプロモーターを含む、ベクター。
【請求項16】
前記プロモーターの下流側に、配列表の配列番号2の1位から537位までの塩基配列を有するか、または該塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されかつパリンドローム構造をとり得る塩基配列からなるパリンドローム配列を含む、請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
前記プロモーターの下流側にタンパク質遺伝子が挿入されている、請求項15または16に記載のベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターが宿主菌体内に組み込まれている、組換え微生物。
【請求項19】
前記宿主菌が放線菌である、請求項18に記載の組換え微生物。
【請求項20】
前記放線菌が、ストレプトマイセス・リビダンスである、請求項19に記載の組換え微生物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−65837(P2009−65837A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234352(P2007−234352)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【出願人】(591060980)岡山県 (96)
【Fターム(参考)】