説明

ヘッド−媒体の接触を検出するための装置および方法

【課題】ヘッドトランスデューサの温度センサは、近接点近くでまたは近接点で温度を測定する。
【解決手段】測定される温度は、ヘッドトランスデューサと磁気記録媒体との間の間隔の変化に応じて変化する。検出器は温度センサに結合され、ヘッドトランスデューサと媒体との間の接触の開始を示す、測定される温度のDC成分の変化を検出するように構成される。別のヘッドトランスデューサ構成は、媒体の凹凸と相互作用する、抵抗温度係数が高い検知要素を有するセンサを含む。導電性リードは検知要素に接続され、検知要素に対して抵抗温度係数が低く、リードのそのような熱的に誘導される抵抗の変化の、凹凸との接触への検知要素の応答に対する影響は、無視できる程度である。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0001】
関連の特許文献
この出願は、両者ともが2010年11月17日に出願された仮特許出願連続番号第61/414,733号および第61/414,734号の利益を主張し、米国特許法第119条(e)に従ってその優先権を主張し、それぞれの全体がここに引用により援用される。
【0002】
要約
開示の実施形態は、ヘッドトランスデューサと、ヘッドトランスデューサの近接点の近くにまたは近接点に位置決めされ、近接点の近くまたは近接点で温度を測定するように構成される温度センサとを含む、ヘッド−媒体の接触を検出するための装置に向けられている。測定される温度は、ヘッドトランスデューサと磁気記録媒体との間の間隔の変化に応じて変化する。検出器は温度センサに結合され、ヘッドトランスデューサと媒体との間の接触の開始を示す、測定される温度のDC成分の変化を検出するように構成される。
【0003】
他の実施形態に従うと、ヘッド−媒体の接触を検出するための方法は、磁気記録媒体がヘッドトランスデューサに対して移動すると、ヘッド−ディスクインターフェイスで温度を測定するステップに係り、測定される温度はヘッドトランスデューサと媒体との間の間隔の変化に応じて変化する。方法は、ヘッドトランスデューサと媒体との間の接触の開始を示す、測定される温度のDC成分の変化を検出するステップにも係る。
【0004】
さまざまな実施形態に従うと、装置は、ヘッドトランスデューサと、ヘッドトランスデューサ上に位置決めされて磁気記録媒体の凹凸と相互作用するセンサとを含む。センサは、抵抗温度係数が高い検知要素を含む。導電性リードが検知要素に接続される。リードは、検知要素に対して抵抗温度係数が低く、凹凸への検知要素の応答に対する、そのようなリードの熱的に誘導された抵抗の変化の影響は、無視できる程度である。
【0005】
さらなる実施形態に従うと、方法は、ヘッドトランスデューサに対して磁気記録媒体を移動させるステップと、検知要素に対して抵抗温度係数が低い導電性リードに結合される、抵抗温度係数が高い検知要素を備えるセンサを用いて媒体の凹凸を検知するステップとに係る。これにより、凹凸への検知要素の応答に対する、リードの熱的に誘導された抵抗の変化の影響は、無視できる程度である。
【0006】
さまざまな実施形態のこれらおよび他の特徴および局面を、以下の詳細な説明および添付の図面に鑑みて理解してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】さまざまな実施形態に従う温度センサを組入れる、ヒータで作動されるヘッドトランスデューサ配置の簡略化された側面図である。
【図2】図1に示す、ヒータで作動されるヘッドトランスデューサ配置の正面図である。
【図3】予め作動された構成および作動された構成の、図1および図2の、ヒータで作動されるヘッドトランスデューサ配置を示す図である。
【図4A】ヘッドトランスデューサと磁気記録ディスクの表面との間の接触の前、その間、および後の、図1−図3に示される種類の、ヒータで作動される記録ヘッドトランスデューサの代表的な温度プロファイルを図示する図である。
【図4B】ヘッドトランスデューサと磁気記録ディスクの表面との間の接触の前、その間、および後の、非熱作動可能記録ヘッドトランスデューサの代表的な温度プロファイルを図示する図である。
【図5】さまざまな実施形態に従うヘッド−媒体接触方法論のさまざまなプロセスを図示する図である。
【図6】他の実施形態に従うヘッド−媒体接触方法論のさまざまなプロセスを示す図である。
【図7】さまざまな実施形態に従うヘッド−媒体の接触を検出するための装置の図解を示す図である。
【図8A】さまざまな実施形態に従う抵抗温度センサを図示する図である。
【図8B】さまざまな実施形態に従う抵抗温度センサを図示する図である。
【図8C】図8Aおよび図8Bに示されるセンサ要素の分解図である。
【図9】さまざまな実施形態に従う、凹凸検出忠実度が向上した抵抗温度センサを平面図である。
【図10】さまざまな実施形態に従う抵抗温度センサの検知要素での使用に好適な特定的な抵抗温度係数材料の実効を実証するデータおよびプロットを提供する図である。
【図11】さまざまな実施形態に従う抵抗温度センサの検知要素での使用に好適な特定的な抵抗温度係数材料の実効を実証するデータおよびプロットを提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
データ記憶システムは一般的に、記録媒体に情報を読出すおよび書込む1つ以上の記録ヘッドを含む。しばしば、記録ヘッドとその関連の媒体との間に比較的小さな距離または間隔を有することが望ましい。この距離または間隔は「フライハイト」または「ヘッド−媒体の間隔」として公知である。ヘッド−媒体の間隔を小さくすることにより、記録ヘッドは典型的に、媒体にデータを書込むおよび媒体からデータを読出すことの双方がよりうまくできるようになる。ヘッド−媒体の間隔を小さくすると、記録媒体表面の凹凸および他の特徴を検出するためなど、記録媒体トポグラフィの調査も可能になる。
【0009】
記録ヘッドトランスデューサは典型的に、最も高い記録密度を達成するために、媒体から最小の確実な間隔に設定されている。ヘッド−媒体の接触の検出は、そのような小さなヘッド−媒体の間隔の設定においては極めて重要である。いくつかの従来のシステムは、ヘッド−媒体の接触を測定するのに、大きなスキュー角での接触摩擦によるヘッドオフトラック運動を用いる。そのようなシステムは媒体表面の内半径および外半径でしか働かず、媒体表面のすべての場所でヘッド−媒体の接触を測定できるわけではない。
【0010】
他の従来の方策は、ヘッドトランスデューサ上のリーダまたは熱センサなどの付加的なセンサを用いることによって接触を検出するのにヘッド−ディスク変調を用いる。しかしながら、変調はデータ記録システムを劣化させ、将来の記録システムは、より小さな磁気的間隔およびより高い面密度を達成するには、変調を排除しなければならなくなる。現在、ドライブの媒体表面全体にわたって非変調インターフェイスのヘッド−媒体の接触を検出することができる従来型システムはない。
【0011】
開示の実施形態は、ヘッドトランスデューサの近接点にまたは近接点の近くに位置決めされる温度センサを備えるヘッドトランスデューサに向けられている。近接点は、一般的に、ヘッドトランスデューサと磁気記録媒体との間の最も近い接点であると理解されている。実施形態は、記録媒体よりも実質的に熱くなるように温度センサを加熱する(たとえば、約100℃から300℃より熱い、好ましい範囲は約150℃から250℃より熱い、またより好ましい範囲は約150℃から200℃より熱い)、温度センサバイアスパワーおよび/または熱アクチュエータパワーを用いる実現例に向けられている。実施形態は、ヘッド−媒体の接触の開始時に、媒体の冷却を用いて、接触事象から生じる熱伝導率の突然の変化による温度の逸脱を生成する。温度センサが測定する温度逸脱は、媒体の任意の場所で(すなわち内半径および外半径に限定されない)ヘッド−媒体の接触を検出するのに用いられる。
【0012】
さまざまな実施形態に従うと、ヘッド−ディスクインターフェイス(HDI)は、ヘッド−媒体の接触の間に変調を有しないように実現される。インターフェイスでのヘッドトランスデューサ表面温度は好ましくは、ヘッドトランスデューサ中の抵抗温度センサおよび/または熱アクチュエータへのバイアスパワーを用いることによって媒体の温度よりも実質的に高くなるように上げられる。媒体は、ヘッド−媒体の接触の開始時にヘッドトランスデューサを冷却してヘッドトランスデューサ温度にDCシフトを生成するヒートシンクとして用いられる。他の実施形態に従うと、インターフェイスでのヘッドトランスデューサ表面温度は、抵抗温度センサへのバイアスパワーを低下させることおよび/またはヘッドトランスデューサ中の非熱アクチュエータを用いることによって、媒体温度よりも実質的に低くなるように下げることができる。この方策は向上した摩擦加熱検出を提供し得、これを用いてヘッド−媒体の接触を明言することができる。ヘッドトランスデューサの近接点にある抵抗温度センサがDC温度変化を測定する。というのも、非変調インターフェイスは主にDC信号を生成するからである。
【0013】
ヘッドトランスデューサが媒体と接触すると、熱伝導率は、ヘッドトランスデューサおよび媒体の高熱伝導率材料の直接の接触により、突然上昇する。ヘッド−媒体の接触の開始時の熱伝導率の突然の変化は、ヘッド−ディスクインターフェイスでのヘッドトランスデューサ温度の逸脱を生じさせる。このDC温度逸脱をヘッド−媒体の接触を検出するのに用いる。
【0014】
さまざまな実施形態に従ってかつ図1−図3を参照して、回転する磁気記憶媒体160に非常に近接する、サスペンション101によって支持されるスライダ100が示される。スライダ100は、記録ヘッドトランスデューサ103と、ヘッドトランスデューサ103に熱的に結合されるヒータ102とを支持する。ヒータ102は、電流がヒータ102を通ると熱を生成する抵抗ヒータであってもよい。ヒータ102は抵抗ヒータに限定されるわけではなく、任意の種類の加熱源を含んでもよい。ヒータ102が生成する熱エネルギはヘッドトランスデューサ103の熱膨張を生じる。この熱膨張を、データ記憶システム中のヘッド−媒体の間隔107を小さくするのに用いることができる。いくつかの実施形態では、ヘッド−媒体の間隔107を小さくするのに非熱アクチュエータを使用できることが注記される。
【0015】
近接点または近接点の近くにヘッドトランスデューサ103上に位置決めされる温度センサ105が示される。前に論じたように、ヘッドトランスデューサ103の作動は、ヒータ102などの熱アクチュエータまたは他のアクチュエータ(たとえばライター)によって実現することができる。バイアスパワーは、磁気記録媒体160の温度よりも実質的に高くなるようにセンサ105およびヘッドトランスデューサ103の隣接する部分の表面温度を上げるように温度センサ105に印加される。
【0016】
温度センサ105は好ましくは、ヘッド−媒体の接触の開始を検出するため、熱の流れの変化を検知するように構成される。開示のさまざまな実施形態に従うヘッド−媒体の間隔および接触の判断に関する詳細は、2010年11月8日に出願され、ここに引用により援用される同一人に所有される米国特許出願連続番号第12/941,461号に提供されている。
【0017】
図3に示されるように、ヘッド−媒体の接触の前には、熱いヘッド表面と比較的冷たいディスク160との間にエアーギャップ107が規定される。ヘッドトランスデューサ103、エアーギャップ107、および磁気記録ディスク160は1つのレベルの熱伝導率を規定する。ヘッドトランスデューサ103が熱アクチュエータまたはヒータ102の活性化の後などにディスク160に接すると、ヘッドトランスデューサ103の高熱伝導率材料とディスク160との間の直接の接触は熱伝導率を大幅に上昇させる。このように、ヘッドトランスデューサ103上の温度センサ105は、温度の降下または温度軌跡の逸脱を検知して、ヘッド−媒体の接触の検出を可能にする。
【0018】
図4Aは、ヘッドトランスデューサ103と磁気記録ディスク160の表面との間の接触の前、その間、および後の、図1−図3に示される種類の記録ヘッドトランスデューサ103についての代表的な温度プロファイルを図示する。この図示例では、温度プロファイルは、低変調または無変調ヘッド−ディスクインターフェイスによる定常状態DC信号として表わされる。ヘッドトランスデューサ103が熱アクチュエータ102によって作動されると、ヘッドトランスデューサ表面温度は、熱アクチュエータ102が生成する熱による作動とともに上昇する。ヘッドトランスデューサの温度は、ディスク160の温度よりも高くなる。このように、ディスク160はこのシナリオではヒートシンクとして働く。ヘッドトランスデューサ103がディスク160に接触すると、ヘッドトランスデューサ表面温度は、接触から生じる熱伝導率の変化により降下する。ヘッドトランスデューサ表面温度は、熱アクチュエータの加熱および摩擦加熱により上昇し続ける。温度の変化または温度軌跡の逸脱を用いて、ヘッド−媒体の接触を明言することができる。
【0019】
図4Bは、非熱アクチュエータによって作動される記録ヘッドトランスデューサ103についての代表的な温度プロファイルを図示する。この図示例では、温度センサ105バイアスパワーは温度センサ105を自己発熱させて、ヘッド−ディスクインターフェイスでの温度の上昇がディスク160の温度よりも実質的に高くなるようにする。ディスク160はこのシナリオではヒートシンクとして働く。ヘッドトランスデューサ103がディスク160に向けて下方に作動されると、熱伝導率は徐々に上昇し、センサ105の温度を徐々に低下させる。ヘッドトランスデューサ103がディスク160と接触すると、熱伝導率が変化し、ヘッドトランスデュ動が起こると、温度は最終的に摩擦加熱によって上昇する。
【0020】
ここで図5を参照して、さまざまな実施形態に従うヘッド−媒体接触方法論のさまざまなプロセスが図示される。ヘッドトランスデューサが磁気記録媒体に対して移動すると140、図5に図示される方法は、ヘッド−ディスクインターフェイスで温度を測定するステップ142に係り、測定される温度はヘッドトランスデューサと媒体との間の間隔の変化に応じて変化する。方法は、ヘッド−媒体の接触の開始を示す、測定される温度のDC成分の変化を検出するステップ144にも係る。
【0021】
図6は、他の実施形態に従うヘッド−媒体接触方法論のさまざまなプロセスを示す。ヘッドトランスデューサが磁気記録媒体に対して移動すると150、ヘッドトランスデューサが作動され152、トランスデューサを媒体に向けて移動させる。いくつかの実施形態では、ヘッドトランスデューサは熱アクチュエータを用いて作動される。他の実施形態では、非熱アクチュエータを用いてヘッドトランスデューサを作動させる。図6に示される方法は、媒体の温度よりも上にヘッド−ディスクインターフェイスを加熱するステップ154も含む。好ましくは、ヘッド−ディスクインターフェイスは、媒体の温度よりも約100℃から200℃など(以上で与えられた温度範囲も参照)、大幅に熱い。
【0022】
ヘッド−ディスクインターフェイスが加熱されると、ヘッド−ディスクインターフェイスで温度が測定され156、測定された温度のDC成分をモニタすることによってインターフェイス温度の変化が測定される。方法はさらに、ヘッド−媒体の接触の開始を示す、測定される温度のDC成分の変化を検出するステップ158に係る。いくつかの実施形態では、ヘッド−媒体の接触の開始は、測定される温度のDC成分の百分率での変化を測定することおよびこの百分率の変化をしきい値と比較することによって検出することができる。たとえば、約1%のDC成分の変化は、ヘッド−媒体の接触の開始を示すことができる(たとえば、85オームのデバイスについて1オームのシフトが典型的であり、これはDC成分の約1.2%の変化ということになる)。他の実施形態では、ヘッド−媒体の接触の開始は、測定される温度のDC成分の軌跡の逸脱を検出することによって検出することができる。たとえば、約1%超の軌跡のずれは、ヘッド−媒体の接触の開始が起こったことの指標となり得る。DC成分軌跡データの標準偏差を上回る予め定められた数のシグマを表わす変化を検出するなど、他の検出方策が企図される。
【0023】
図7は、さまざまな実施形態に従うヘッド−媒体の接触を検出するための装置500の図示を示す。図7に示されかつ図示される装置500の数多くの構成要素は簡略化の目的のために示されていないことが理解される。図7に示される装置500は、協働して動作して、本明細書中に記載されるさまざまなヘッド−媒体接触方法論を実現することができるさまざまな構成要素を示す。この図示では、任意の数のハードディスクドライブ504を備える大容量記憶デバイスに結合される制御システム502が示される。図7は、回転する磁気記憶媒体160の表面から離間した温度センサ105を備える記録ヘッドトランスデューサ103を支持する、図1に示されるスライダ100の再現である。制御システム502は、コントローラ514、検出器512、および電源510を含むように示される。コントローラ514は、装置500のさまざまな構成要素と協働して動作して、読出および書込動作の間などの媒体160の回転ならびにスライダ100の移動を制御するように構成される。電源510は、装置500のさまざまな構成要素に電力を与える。さまざまな実施形態の文脈では、電源510は、温度センサ105にバイアスパワーを、ヘッドトランスデューサアクチュエータのために作動パワーを与えるように構成される。たとえば、電源510は、ヘッドトランスデューサ103のための熱アクチュエータとして動作するヒータ102に電力を与える。
【0024】
温度センサ105はヘッドトランスデューサ103の近接点の近くにまたは近接点に位置決めされて、この場所で温度を測定する。温度センサ105は好ましくは、抵抗温度係数(TCR)を有するセンサである。温度センサ105は、正のTCRまたは負のTCRを有してもよい。たとえば熱電対またはサーミスタなどの他の種類の温度センサ105を用いてもよい。
【0025】
前に論じたように、測定される温度は、ヘッドトランスデューサ103と磁気記録媒体160との間の間隔の変化に応じて変化する。検出器512は温度センサ105に結合され、ヘッドトランスデューサ103と媒体160との間の接触の開始を示す、測定される温度のDC成分の変化を検出するように構成される。ヘッド−ディスクインターフェイスは低変調または無変調インターフェイスであるので、温度センサ105が発生する温度信号にはヘッド−媒体の接触の間に変化する信号成分が実質的にない。より特定的には、温度信号にはヘッド−媒体の接触の間にAC成分が実質的にない。温度信号の小さなRMS成分が存在するかもしれないが、いずれのそのようなRMS成分も、ヘッド−ディスク変調に依拠する従来の接触検出方式の文脈では使用できない。
【0026】
いくつかの実施形態に従うと、電力は、電源510によって温度センサ105に供給されて媒体160の温度よりも上の温度にヘッド−ディスクインターフェイスを加熱する。他の実施形態では、電源510によって温度センサ105とヒータ102との両方に供給される電力はヘッド−ディスクインターフェイスへの加熱を与える。検出器512は、ヘッドトランスデューサ103と媒体160との間の接触の開始に応答して、加熱されたヘッド−ディスクインターフェイスから媒体160への上昇した熱伝導の率を示す、温度センサ105が発生する信号のDC成分の変化を検出するように構成される。
【0027】
磁気記録では、ヘッドと媒体との間の隙間の制御は、成功裡の読出および書込動作に重要である。増大する面密度は、ヘッド−媒体の隙間が小さくされることを要する。媒体の物理的な凹凸は、ヘッドを接触させることによって平均ヘッド−媒体間隔に対して下限を与えることができるが、これは、ヘッドトランスデューサ構造の磨損およびヘッドの電気的性能の劣化に繋がってしまう。
【0028】
凹凸は、典型的には炭化ケイ素材料を備え、ディスク基板に埋込まれる孤立したサブミクロンサイズの粒子である。凹凸はしばしば十分に大きいので、非常に高速でスライダ/トランスデューサアセンブリに衝撃することによって典型的なスライダ/トランスデューサアセンブリの飛行経路に干渉する。磁気記録媒体の表面から生じる凹凸は一般的に、高度にランダムな態様で分散し、ディスクおよび周囲温度の変化に応じて形状およびサイズが変化する。スライダ/トランスデューサアセンブリと凹凸との間の衝突はしばしば、凹凸の場所を情報の読出および書込の目的のために使用できなくしてしまう。さらに、スライダ/トランスデューサアセンブリと凹凸との間の繰返される接触は、スライダ/トランスデューサアセンブリに対して深刻度が異なる損傷を生じる虞がある。
【0029】
媒体の凹凸検出を用いて、媒体の凹凸をマッピングしてヘッド用制御アルゴリズムを与え、媒体上のこれらの部位を回避することによって、ヘッドの摩耗および劣化を最小限にすることができる。媒体の凹凸がヘッドと相互作用すると、それらはヘッド上の時間変化する温度分布を与える。この時間変化する温度のサインは、TCRセンサ要素を用いてデバイスの電気抵抗をモニタすることによって検出することができる。開示の実施形態は高忠実度媒体凹凸検出センサを提供する。開示の実施形態は、媒体の凹凸を検出してヘッド平均間隔(HMS)を低減しかつ面密度を増大させるための高忠実度TCR検知デバイスを提供する。
【0030】
さまざまな実施形態に従うと、抵抗温度センサは、ヘッドトランスデューサ上に位置決めされ、媒体の凹凸を検出するように構成されるセンサ要素を含む。センサ要素は好ましくは、抵抗温度係数が高い材料から形成される。検知要素への電気的接続は、センサ要素の抵抗温度係数に対して抵抗温度係数が低い材料を備える導電リードによって設けられる。導電リードは好ましくは抵抗温度係数がゼロに近い材料から形成される。他の利点のうち、本開示の抵抗温度センサは改良された接触検出を提供する。媒体の欠陥の走査の間、たとえば、ヘッド−媒体の隙間およびしたがってヒータのパワーは固定されるが、このことは、結果的に生じる熱背景が固定されることを意味する。しかしながら、接触の検出の間ヒータは傾いているので、本開示の低TCRリードは、接触検出適用例において特定的な有用性を見出す。
【0031】
図8Aおよび図8Bはさまざまな実施形態に従う抵抗温度センサ200を図示する。図8Aは抵抗温度センサ200の平面図を示す。図8Bは、図8Aに示される抵抗温度センサ200の対向面の図である。抵抗温度センサ200は、1対のリード204に接続されるセンサ要素202を含む。センサ要素202の表面203は、図8Aでは、ヘッドトランスデューサの対向面(ABS)205とほぼ平行に整列されて示され、ここで、ヘッドトランスデューサと磁気記録媒体との間の温度勾配が最大となる。したがって、センサ要素202のより大きな抵抗の変化は、はるかに多くのTCR材料がABS面から遮蔽されるスライダ本体の中に位置する従来の設計と比較して、ABS面の温度変化を伴う。
【0032】
センサ要素202は、たとえば典型的なヘッド−媒体接触センサの検知面積に対して小さな検知面積にわたる熱の流れの変化に感度がある。応じて、センサ要素202は、磁気記録媒体の凹凸を検出するため、熱の流れの変化に対してより高い感度を有する。典型的なヘッド−媒体接触センサは、センサ要素202の検知面積に対して大きな検知面積にわたって熱の流れの変化に感度があることが注記される。
【0033】
図8Cは、図8Aおよび図8Bに示されるセンサ要素202の分解図である。図8Cで、センサ要素202は、トラック横断長さ(L)、スライダ本体中への奥行(D)、およびトラック下方への幅(W)を有するように示される。いくつかの実施形態に従うと、センサ要素202は、L=750nm;D=75nm;およびH=60nmという外形を有してもよい。他の実施形態では、センサ要素202は、L=750nm;D=85nm;およびH=40nmという外形を有してもよい。図8Cに示されるセンサ要素202の構成および外形は非限定的な図示の目的のためのものであることが理解される。比較的小さなセンサ要素202は、たとえば正確なトラックパディング(track padding)のための小さな凹凸の外形を定めることができる。
【0034】
図9は、さまざまな実施形態に従う、媒体欠陥検出忠実度が向上した抵抗温度センサ300の平面図である。図9に示される実施形態では、抵抗温度センサ300は、ヘッドトランスデューサの対向面310に平行なかなりの長さ寸法を有するセンサ配置301を含む。図9に示される抵抗温度センサ300のセンサ配置301は、対向面310上に位置決めされるかなりの量のTCR材料を有する。センサ配置301の相当の部分は、各々のリード304の表面306′に沿って延在する。センサ配置301は、センサ要素302を規定する2本のリード304の間の空隙に位置する比較的薄いセクションを有する。
【0035】
センサ要素302はほぼ「カモメ翼」形状を有し、センサ要素302はセンサ配置301の中央場所に位置する。センサ配置301は、センサ要素302の対向端に先細領域307を含む。センサ配置301の対向端の領域は、対向面310に平行なリード304の表面で終端する先細領域309を有する。図9のセンサ要素302のカモメ翼形状は、リードの材料が対向面に入らないようにすることができる。このことは、表面仕上げおよび/または腐食に対する耐性という観点から、ABSで受入れられないかもしれない材料を選べるようにする。ABSで露出する材料の数を限定すると、表面仕上げの磁極端突出に関する局面がより容易に管理されるようになる。
【0036】
さまざまな実施形態に従うと、図8A−図9に示されるセンサ要素202および302の温度は、図7に示される電源510を制御することによってなど、センサシステムのバイアスパワー(すなわち、電流、電力、または電圧)を変更することによって制御可能である。凹凸検出モードで動作する際、たとえば、比較的大きなバイアス電流を用いて、センサ要素202および302を周囲よりも上の(すなわちディスク温度よりも上の)温度に大きく加熱することができる。たとえば、センサ要素202および302は、ヘッドトランスデューサ温度をたとえば〜100℃上回る温度で動作するTCRワイヤまたは構造を備えてもよく、これは、良好な信号対ノイズ比(SNR)を与える。いくつかの実施形態では、センサ要素202および302のTCRワイヤまたは構造は、たとえばヘッドトランスデューサ温度を〜200℃まで上回る温度で動作することができる。センサ要素202および302のTCRワイヤまたは構造の動作温度は、用いられるTCR材料に基づいて、以上で与えたものとは異なり得ることが理解される。
【0037】
先に論じたように、リード204および304は好ましくは、リード204および304の熱的に誘導される抵抗の変化によるノイズを低減することによって向上した媒体欠陥検出忠実度を提供するTCRが低いまたはゼロに近い材料を備える。図8A−図9に示されるように、TCRベースの凹凸センサ要素202、302は好ましくは、媒体凹凸との最大の相互作用を与えるように、対向面205、310の最も近くに位置する。好適なセンサTCR材料は、比較的TCRが高いNiFe、Ni、Ru、Cr、および他の材料を含む。TCRベースのセンサ200、300のセンサ要素202、302に接続するリード204、304は、NiCu合金などの、TCRが比較的低いまたはゼロに近い材料を備える導電リードによって設けられる。
【0038】
高TCR検知要素202、302と低TCR接点204、304との組合せ構造は、リード204、304の、温度によって誘導される抵抗の変化によって乱されない媒体凹凸に対する応答を与える。リード204、304の、温度によって誘導される抵抗の変化は、付加的なノイズおよび凹凸検出SNRの低減を与える。低TCRリードまたはゼロに近いTCRのリードの材料は、媒体の凹凸を検出するより高忠実度の抵抗温度センサ200、300をもたらし、小さくされたヘッド平均間隔および増大した面密度能力を与える。
【0039】
図10および図11は、さまざまな実施形態に従うTCR検知要素202、302における使用に好適な特定的なTCR材料の実効を実証するデータおよびプロットを与える。図10および図11に示されるデータおよびプロットは、厚みが100nmのNiCu50%合金膜が、図8A−図9に示されるTCRベースのセンサ200、300のリード204、304を形成するのに用いるのに十分に適した低TCR材料またはゼロに近いTCRの材料であることを実証する。
【0040】
以上の説明では、さまざまな実施形態の構造および機能の詳細とともにさまざまな実施形態の数多くの特性を述べたが、この詳細な説明は例示の目的のみのためであり、添付の請求項が表現する用語の広い一般的な意味で示される限り、特に、さまざまな実施形態が図示する部分の構造および配置の事項において詳細に変更がなされてもよいことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0041】
102 ヒータ、103 ヘッドトランスデューサ、105 温度センサ、160 磁気記録媒体、500 装置、502 制御システム、200,300 抵抗温度センサ、202,302 センサ要素、204,304 リード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
ヘッドトランスデューサと、
前記ヘッドトランスデューサの近接点の近くにまたは近接点に位置決めされ、前記近接点の近くまたは前記近接点で温度を測定するように構成される温度センサとを備え、測定される前記温度は、前記ヘッドトランスデューサと磁気記録媒体との間の間隔の変化に応じて変化し、さらに
前記温度センサに結合され、前記ヘッドトランスデューサと前記媒体との間の接触の開始を示す、前記測定される温度のDC成分の変化を検出するように構成される検出器を備える、装置。
【請求項2】
前記温度センサは、ヘッド−媒体の接触の間、変調成分が実質的にない温度信号を発生する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記温度センサは、ヘッド−媒体の接触の間、AC成分が実質的にない温度信号を発生する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記温度センサは、抵抗温度センサ、熱電対、およびサーミスタのうち1つを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
ヘッド−媒体の接触の間は実質的に変調がないヘッド−ディスクインターフェイスを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ヘッドトランスデューサを作動させて前記温度センサを前記媒体に向けて移動させるように構成されるアクチュエータを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
ヘッド−ディスクインターフェイスを備え、
前記温度センサは、前記媒体の温度より上の温度に前記ヘッド−ディスクインターフェイスを加熱するように構成され、
前記検出器は、前記ヘッドトランスデューサと前記媒体との間の接触の開始に応答して、加熱された前記ヘッド−ディスクインターフェイスから前記媒体への上昇した熱伝導の率を示す前記DC成分の前記変化を検出するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記検出器は、前記DC成分の軌跡の逸脱を検出するように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
ヘッド−ディスクインターフェイスと、
前記ヘッドトランスデューサを作動させて前記温度センサを前記媒体に向けて移動させるように構成される熱アクチュエータとを備え、
前記温度センサおよび前記熱アクチュエータの一方または両方は、前記媒体の温度より上の温度に前記ヘッド−ディスクインターフェイスを加熱するように構成され、
前記検出器は、前記ヘッドトランスデューサと前記媒体との間の接触の開始に応答して、加熱された前記ヘッド−ディスクインターフェイスから前記媒体への上昇した熱伝導の率を示す前記DC成分の前記変化を検出するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
方法であって、
磁気記録媒体がヘッドトランスデューサに対して移動すると、
ヘッド−ディスクインターフェイスで温度を測定するステップを備え、測定される前記温度は、前記ヘッドトランスデューサと前記磁気記録媒体との間の間隔の変化に応じて変化し、さらに
前記ヘッドトランスデューサと前記媒体との間の接触の開始を示す、前記測定される温度のDC成分の変化を検出するステップを備える、方法。
【請求項11】
前記媒体の温度より上の温度に前記ヘッド−ディスクインターフェイスを加熱するステップと、
前記ヘッドトランスデューサと前記媒体との間の接触の開始に応答して、加熱された前記ヘッド−ディスクインターフェイスから前記媒体への上昇した熱伝導の率を示す前記DC成分の前記変化を検出するステップとをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヘッド−ディスクインターフェイスは、ヘッド−媒体の接触の間は実質的に変調しない、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ヘッドトランスデューサを作動させて前記ヘッドトランスデューサを前記媒体に向けて移動させるステップをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
装置であって、
ヘッドトランスデューサと、
前記ヘッドトランスデューサ上に位置決めされて磁気記録媒体の凹凸と相互作用するセンサとを備え、前記センサは、
高い抵抗温度係数を有する検知要素と、
前記検知要素に接続される導電性リードとを備え、前記リードは、前記検知要素に対して抵抗温度係数が低く、これにより、凹凸への前記検知要素の応答に対する、前記リードの熱的に誘導された抵抗の変化の影響は、無視できる程度である、装置。
【請求項15】
凹凸への前記検知要素の前記応答は、前記リードの、温度によって誘導される抵抗の変化によって乱されない、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記リードは、抵抗温度係数がゼロに近い材料から形成される、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記リードはNiCu合金膜を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記リードは、厚みが約100nmのNiCu50%合金膜を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記検知要素は、NiFe、Ni、Ru、またはCrを備える材料から形成される、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記センサに結合され、凹凸を検出するように構成される検出器をさらに備える、請求項14に記載の装置。
【請求項21】
ヘッドトランスデューサに対して磁気記録媒体を移動させるステップと、
検知要素に対して抵抗温度係数が低い導電性リードに結合される、抵抗温度係数が高い検知要素を備えるセンサを用いて前記媒体の凹凸を検知するステップとを備え、これにより、凹凸への前記検知要素の応答に対する、前記リードの熱的に誘導された抵抗の変化の影響は、無視できる程度である、方法
【請求項22】
リードは、抵抗温度係数がゼロに近い材料から形成される、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−109819(P2013−109819A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−249055(P2012−249055)
【出願日】平成24年11月13日(2012.11.13)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】