説明

ヘッドサスペンションアッセンブリ

【課題】ディスク装置に使用するヘッドサスペンションアッセンブリをキャリッジアームにカシメ固定する際に生じる変形がヘッドスライダに及ばないようにする。
【解決手段】磁気ヘッドを持つスライダ1が取り付けられたロードビーム30が固着されるベースプレート20を備え、ベースプレートがキャリッジアーム56にカシメ固定されるヘッドサスペンションアッセンブリ10において、ロードビームのベースプレート側の端部をベースプレートのカシメ孔22のある領域を超えた領域まで延長し、ベースプレートのスライダ側の端部はロードビームに対向する面を先端部26から所定長さ切り欠いて切欠部24を形成し、ロードビームのベースプレート側の端部は、カシメ孔の近傍で溶接してベースプレートに固着した。この結果、ベースプレートをキャリッジアームにカシメ接合した時に変形したベースプレートの先端部がロードビ−ムに影響を与えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願はヘッドサスペンションアッセンブリに関する。特に、情報記録媒体としてディスクを用いるハードディスク装置等のディスク装置において、ディスクに対して情報を読み書きするヘッドをディスク上で移動させるヘッドアクチュエータのサスペンションアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器としてのコンピュータの外部記憶装置としては半導体メモリ、光ディスク、及び磁気ディスク装置等が用いられるが、記憶容量が大きいことから、磁気ディスク装置、特にハードディスク装置が普及している。ハードディスク装置は、磁性体を塗布したデータ記憶用の磁気ディスクと、磁気ディスクに対してデータを読み書きする磁気ヘッドを備えたヘッドアクチュエータ、及びディスクに書き込む信号を処理する信号処理回路から構成される。
【0003】
磁気ディスクは、磁性体を塗布したアルミニウムやガラスのディスクを1枚、或いは複数枚重ねあわせた構造になっており、スピンドルモータによって回転させられる。ヘッドアクチュエータは、磁気ヘッドを保持するヘッドサスペンションアッセンブリ、ヘッドサスペンションアッセンブリを取り付けるキャリッジアームを備えたスイングアーム、及びスイングアームを揺動させるボイスコイルモータ(VCM)から構成される。そして、磁気ディスクがスピンドルモータによって高速に回転させられると、磁気ディスク上に位置するスライダが磁気ディスクから浮上し、スライダに取り付けられた磁気ヘッドによって磁気ディスクに対してデータが読み書きされる。
【0004】
ここで、スイングアームの先端部に取り付けられる従来のヘッドサスペンションアッセンブリの構造について説明する。ヘッドサスペンションアッセンブリは、磁気ヘッドが設けられたスライダを取り付けるためのフレキシャ、フレキシャが先端部側に取り付けられるロードビーム、及びロードビームに接続するベースプレートから構成される。フレキシャはばね性を備えた薄い金属板であり、先端部にスライダが取り付けられ、後端部がスポット溶接によってロードビームに取り付けられる。スライダの中央部に重なる位置にあるロードビームにはドーム状の突起であるディンプルが設けられており、このディンプルによってフレキシャの先端部はロードビームから離間している。
【0005】
ロードビームは金属製の板であり、フレキシャが取り付けられた側と反対側の端部が、スポット溶接によってベースプレートに取り付けられる。ベースプレートは肉厚の大きな金属製の板であり、ベースプレートが取り付けられた側とは反対側の端部近傍には、このベースプレートをスイングアームのキャリッジアーム先端部に接合するための取付孔と、この取付孔の周囲に突設されたボスがある。ボスはベースプレートのキャリッジアームへの取付側に突出している。
【0006】
ベースプレートが取り付けられるキャリッジアームの先端部には、ベースプレートのボスを受け入れるための貫通孔が設けられている。ベースプレートをキャリッジアームの両面に接合する場合は、2つのベースプレートのボスを、キャリッジアームの貫通孔に両側から挿入して仮止めし、この状態でボスの孔にカシメボールを通すことによってボスの外径を膨らませてカシメ接合する。このようなカシメによりベースプレートをキャリッジアームに接合する構造は、特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−215511号公報
【特許文献2】特開平7−211034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、カシメによりベースプレートをキャリッジアームに接合すると、カシメの影響によりキャリッジアーム先端部がカシメボールの挿入側に変形する。このため、キャリッジアームに接合されたベースプレートの部分もキャリッジアームの変形に伴って変形してしまうという課題がある。そして、キャリッジアームに接合されたベースプレートの部分が変形すると、ベースプレートの先端部、即ちロードビームとのスポット溶接点の高さが変化してしまう。すると、キャリッジアームの上側に取り付けられたスライダが磁気ディスクから遠ざかり、逆に、キャリッジアームの下側に取り付けられたスライダが磁気ディスクに近づいてしまう。この結果、サスペンションがスライダを磁気ディスクに押し付ける力(ばね圧)及びスライダに傾きを与える値が変化することになる。
【0009】
このように、サスペンションがスライダを磁気ディスクに押し付けるばね圧、及びスライダに傾きを与える値(PSA:Pitch Static Attitude)が変化すると、スライダの磁気ディスクからの浮上量が変化する。そして、スライダの磁気ディスクからの浮上量が少なくなった側で、スライダが磁気ディスクに接触し易くなり、ヘッドクラッシュといった障害が発生し易くなるという課題が生じてしまう。
【0010】
そこで、この出願は、ディスク装置のヘッドアクチュエータのベースプレートをカシメ接合によってキャリッジアームに取り付けた場合でも、スライダの磁気ディスクからの浮上距離を適正にできるヘッドサスペンションアッセンブリを提供することである。即ち、ベースプレートをカシメ接合によってキャリッジアームに取り付け、ベースプレートが変形しても、スライダの磁気ディスクからの浮上距離がディスクの両面において影響を受けないような構造のヘッドサスペンションアッセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成する本出願のヘッドサスペンションアッセンブリは、磁気ヘッドを備えたスライダが取り付けられたロードビームと、ロードビームが固着されるベースプレートを備え、ベースプレートがキャリッジアームにカシメ固定されるヘッドサスペンションアッセンブリにおいて、ロードビームのベースプレート側の端部をベースプレートのカシメ孔のある領域を超えた領域まで延長し、ベースプレートのスライダ側の端部は、ロードビームに対向する面を先端部から所定長さだけ切り欠いて切欠部を形成し、ロードビームのベースプレート側の端部は、ベースプレートのカシメ孔の近傍で溶接して前記ベースプレートに固着したことを特徴としている。
【0012】
切欠部は以下のように形成することができる。(1)切欠部をベースプレートのキャリッジアームへの取付面に平行に切り欠いて形成する。(2)切欠部をベースプレートのキャリッジアームへの取付面に平行にかつ先端部に向かって切欠量が多くなるように段階的に切り欠いて形成する。(3)切欠部をベースプレートのキャリッジアームへの取付面に対して次第に切欠量が多くなるテーパ状に切り欠いて形成する。また、切欠部のベースプレートの先端部におけるロードビームからの距離は、ベースプレートがキャリッジアームにカシメ接合された時に変形するベースプレートの先端部が、ロードビ−ムに接触しない距離とすれば良い。
【発明の効果】
【0013】
本出願によれば、ベースプレートをカシメ接合によってキャリッジアームの先端部に取り付け、ベースプレートが変形した場合でも、ベースプレートに設けた切欠部によって、スライダの磁気ディスクからの浮上距離がディスクの両面において影響を受けなくなる。この結果、磁気ヘッドの磁気ディスクとのクラッシュの可能性が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)はフレキシャが取り付けられたロードビームをベースプレートに接合する状態を示す組立図、(b)は(a)に示すベースプレートにロードビームをスポット溶接によって接合した状態を示す平面図、(c)は(b)の側面図である。
【図2】(a)は図1(c)に示すロードビームをキュリッジアームの先端部に取り付ける様子を示す組立側面図、(b)は(a)のようにしてキャリッジアームに取り付けられたロードビームをカシメボールによってカシメ接合する様子を示す側面図、(c)は(b)に示したカシメ接合によって、キャリッジアーム先端部とロードビームが変形した様子を示す側面図である。
【図3】(a)は図2(b)に示したカシメ接合の前のキャリッジアーム先端部とロードビームに変形が生じていない場合のヘッドサスペンションアッセンブリとディスクとの関係を示す部分拡大側面図、(b)は図2(b)に示したカシメ接合によりキャリッジアーム先端部とロードビームに変形が生じた場合のヘッドサスペンションアッセンブリとディスクとの関係を示す部分拡大側面図である。
【図4】(a)はこの出願のヘッドサスペンションアッセンブリに使用するベースプレートの第1の実施例の平面図、(b)は(a)に示すベースプレートの側面図、(c)はこの出願のヘッドサスペンションアッセンブリに使用する(a)、(b)に示したベースプレートに、この出願のヘッドサスペンションアッセンブリに使用するロードビームの一実施例を接合する状態を示す組立図である。
【図5】(a)は図4(b)に示すベースプレートにロードビームを載置し、スポット溶接によって接合した状態を示す平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は(b)に示すヘッドサスペンションアッセンブリをキャリッジアームの先端部に仮固定した状態を示す部分拡大側面図、(d)は(c)に示したキャリッジアームの先端部とベースプレートをカシメボールによって接合した状態を示す部分拡大側面図である。
【図6】(a)はこの出願のヘッドサスペンションアッセンブリに使用するベースプレートの第2の実施例の側面図、(b)はこの出願のヘッドサスペンションアッセンブリに使用するベースプレートの第3の実施例の側面図、(c)はこの出願のヘッドサスペンションアッセンブリに使用するベースプレートの第4の実施例に図4(c)に示したロードビームが取り付けられた状態を示す部分側面図、(d)は(c)に示したロードビームのベースプレートに対するスポット溶接点を示す部分平面図、(e)はこの出願のヘッドサスペンションアッセンブリに使用するベースプレートの第5の実施例に図4(c)に示したロードビームが取り付けられた状態を示す部分側面図である。
【図7】(a)は図5(a)に示すヘッドサスペンションアッセンブリのロードビームに錘を取り付けた実施例を示す平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は図6(c)に示すヘッドサスペンションアッセンブリのロードビームに錘を取り付けた実施例を示す側面図、(d)は(c)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を用いてこの出願のヘッドソサスペンションアッセンブリの実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、この出願の実施例を説明する前に、従来のヘッドサスペンションアッセンブリの構成、及び課題を図を用いて説明する。なお、ここでは、ヘッドアクチュエータは、ボイスコイルモータと、回転軸に取り付けられてボイスコイルモータによってスイングさせられるスイングアームとから構成されるものとする。また、スイングア−ムは、櫛歯状のキャリッジアームの先端部に、磁気ヘッドを保持するヘッドサスペンションアッセンブリが取り付けられて構成されるものとする。
【0016】
図1(a)は従来のヘッドサスペンションアッセンブリ9を組み立てる様子を示すものである。ヘッドサスペンションアッセンブリ9は、磁気ヘッドが設けられたスライダ1がフレキシャ2に取り付けられ、フレキシャ2がスポット溶接Wでロードビーム3に接合され、ロードビーム3がベースプレート5に取り付けられて構成される。また、フレキシブル回路4が磁気ヘッドに接続されており、ベースプレート5にはカシメ接合用のカシメ孔6が設けられている。
【0017】
図1(b)は図1(a)に示すベースプレート5にロードビーム3をスポット溶接Wによって接合した状態を示すものであり、図1(c)は図1(b)の側面図である。ロードビーム3は、ベースプレート5に複数の箇所でスポット溶接されてベースプレート5に固定される。ベースプレート5のロードビーム3が取り付けられる面と反対側の面には、カシメ孔6の周囲に、ロードビーム3をベースプレート5にカシメ接合させるためのボス5Bが設けられている。ボス5Bには前述のようにカシメ孔6がある。
【0018】
ここで、磁気ディスクが2枚設けられたハードディスク装置用のスイングアーム50の構成について図2を用いて説明する。図2(a)に示すように、磁気ディスクが2枚設けられたハードディスク装置用のスイングアーム50には、回転軸挿通孔51を有する本体52に、3枚の櫛歯状の取付部56を備えたキャリッジアーム53が設けられている。そして、前述のように構成されたヘッドサスペンションアッセンブリ9は、キャリッジアーム53の最も上側の取付部56にはその下面に、中央の取付部56にはその両面に、最も下側の取付部56にはその上面に取り付けられる。スイングアーム50のコイル部54は図示しないボイスコイルモータによって駆動される。
【0019】
ヘッドサスペンションアッセンブリ9は、そのボス5Bがキャリッジアーム53の取付部56に設けられたボス受入孔55にはめ込まれて仮固定させる。この後、図2(b)に示すように、カシメボール7をカシメ孔を挿通させと、このカシメボール7によってボス5Bの外径が膨らみ、ヘッドサスペンションアッセンブリ9がキャリッジアーム53に強固に接合される。
【0020】
ところが、カシメボール7によってヘッドサスペンションアッセンブリ9をキャリッジアーム53にカシメによって接合すると、カシメ力の影響により、図2(c)の破線部に示すように、キャリッジアーム53の取付部56とベースプレート5が変形する。これを図3を用いて詳細に説明する。なお、図3では、図2に示したキャリッジアーム53の中央の取付部56のみを取り出し、ヘッドサスペンションアッセンブリ9と磁気ディスク8との関係も示した。
【0021】
図3(a)は、図2(b)に示したカシメ接合の前のキャリッジアーム53の取付部56とロードビーム5に、変形が生じていない場合のヘッドサスペンションアッセンブリ9と磁気ディスク8との関係を示すものである。ベースプレート5の取付部56側の面(ベースプレート5の取付部56側の先端部)とスライダ1の浮上面までの距離ZHは、ハードディスク装置を組み立てる際の重要な寸法である。
【0022】
ここでは、キャリッジアーム53の取付部56の下側の面に取り付けられたヘッドサスペンションアッセンブリ9について説明する。ヘッドサスペンションアッセンブリ9をキャリッジアーム53にカシメ接合すると、カシメ力の影響により、図3(b)に示すように、キャリッジアーム53の取付部56とベースプレート5が変形する。この変形により、ベースプレート5の取付部56側の先端部とスライダ1の浮上面までの距離ZHは、ΔZHだけ大きくなる。この変形により、サスペンションがスライダ1を磁気ディスク8に押し付けるばね圧S、及びスライダ1に傾きを与える力(以後PSAと言う)が変化してしまう。
【0023】
例えば、正常状態のばね圧Sが3.0g、PSAが1.0deg.の磁気ヘッドがカシメによってΔZHが50μm変化した場合、ばね定数が1.8g/mm、ロードビーム長が8.5mmの時に、ぱね圧が0.09g、PSAが0.34deg.変化してしまう。このようなばね圧とPSEの変化は、磁気ディスク8の上をスライダ1が浮上する浮上量に影響する。上記変化では、スライダ1の浮上姿勢(浮上ピッチ)が高くなり、磁気情報を読み書きする素子位置のスライダ1の浮上量が低くなる。そして、スライダ1の浮上量が低くなれば、スライダ1が磁気ディスク8と接触しやすくなり、ヘッドクラッシュといった障害が発生する可能性が出てくるのである。
【0024】
この出願は以上のような課題を解消するものであり、ヘッドサスペンションアッセンブリ9をキャリッジアーム53にカシメ接合した場合の、カシメによる変形に高さZHが左右されないようにしたヘッドサスペンションアッセンブリの構造を提供する。
【0025】
図4(a)、(b)は、この出願のヘッドサスペンションアッセンブリ10に使用するベースプレート20の第1の実施例の構成を示すものである。この実施例のベースプレート20は、その板状の本体21の一方の端部の近傍に前述のカシメボールを挿通するためのカシメ孔22が設けられている。そして、ベースプレート20のキャリッジアームへの取付面(底面)には、カシメ孔22の周囲にボス23が突設されている。カシメ孔22とボス23の構造は従来と同じである。一方、ベースプレート20のカシメ孔22と反対側の端部で、底面と反対側の面は、この実施例では底面に平行に切りかかれて切欠部24が形成されている。25は従来からあるベースプレート20を軽量化するための孔である。
【0026】
切欠部24の深さは、ベースプレート20をキャリッジアームにカシメ接合した時に、切欠部24のないベースプレート20の先端部の変形高さを測定して決定することができる。例えば、切欠部24のないベースプレート20のカシメ孔22の中心から先端部までの長さが6.5mmあり、これをキャリッジアームにカシメ接合した時の先端部の変形高さが30μmであった場合は、切欠部24の深さを30μm以上とすれば良い。
【0027】
図4(c)は図4(a)、(b)に示したベースプレート20に、この出願のヘッドサスペンションアッセンブリ10に使用するロードビーム30の一実施例を接合する状態を示すものである。この出願に使用するロードビーム30に取り付けるスライダ1、フレキシャ2、及びフレキシブル回路4の構成は従来と同じであるので、従来と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0028】
この実施例のロードビーム30は、ロードビーム30のベースプレート20側の端部を、ベースプレート20のカシメ孔22のある領域を超えた領域まで延長した延長部31を備えている。この延長部31の外形はロードビーム30の外形と略同じにすれば良い。そして、この延長部31には、延長部31をロードビーム30に重ね合わせた時にカシメ孔22に重なる部分にカシメボールの挿通孔32が設けられている。
【0029】
図5(a)、(b)は、図4(c)で説明したようにベースプレート20にロードビーム30を載置し、スポット溶接Wによってベースプレート20にロードビーム30を接合した状態を上方からと側面から見たものである。ロードビーム30の延長部31は、ベースプレート20の本体21の部分にスポット溶接Wによって接合される。このとき、ベースプレート20の先端部26とロードビーム30の間には、切欠部24の存在により所定のスペースがある。
【0030】
図5(c)は図5(b)に示すヘッドサスペンションアッセンブリ10をキャリッジアームの取付部56に仮固定した状態を示すものである。この状態から、図5(d)に示すように、キャリッジアームの取付部56とベースプレート20を、カシメボール7をカシメ孔22に挿通することによって接合すると、前述のように取付部56とベースプレート20が変形する。この変形により、上側のベースプレート20の先端部26はロードビーム30に近づき、下側のベースプレート20の先端部26はロードビーム30から離れる。
【0031】
ところが、前述のように深さを決定した切欠部24の存在により、キャリッジアームの取付部56の上側の面に接合されたベースプレート20の先端部26は、変形してもロードビーム30まで届かない。このため、ロードビーム30が、ベースプレート20をキャリッジアームの取付部56にカシメ接合した時の、ベースプレート20の変形の影響を受けなくなる。
【0032】
図6(a)は、この出願のヘッドサスペンションアッセンブリ10に使用するベースプレート20の第2の実施例を示すものである。第1の実施例では、切欠部24がベースプレート20の底面に平行に切り欠かれていた。一方、第2の実施例では、切欠部24Kがベースプレート20の底面に平行ではあるが、その深さがベースプレート20の先端部26に向かって切欠深さが深くなるように段階的に切り欠かれている点が異なる。先端部26における切欠部24Kの深さは第1の実施例と同じである。ベースプレート20のその他の構成は第1の実施例と同じであるので、その説明を省略する。
【0033】
図6(b)は、この出願のヘッドサスペンションアッセンブリ10に使用するベースプレート20の第3の実施例を示すものである。第1の実施例では、切欠部24がベースプレート20の底面に平行に切り欠かれていた。一方、第3の実施例では、切欠部24Tがベースプレート20の底面に対して、その深さが先端部26に向かって次第に大きくなるテーパ状に切り欠かれている点が異なる。先端部26における切欠部24Tの深さは第1の実施例と同じである。ベースプレート20のその他の構成は第1の実施例と同じであるので、その説明を省略する。
【0034】
図6(c)は、この出願のヘッドサスペンションアッセンブリ10に使用するベースプレート20の第4の実施例を示すものであり、図4(c)に示したロードビーム30が取り付けられた状態を示すものである。また、図6(d)は図6(c)を平面視したものであり、ロードビーム30のベースプレート20に対するスポット溶接Wの位置の一例を示すものである。スポット溶接Wは、ベースプレート20のカシメ孔22の周囲で実施されている。第4の実施例は、第1の実施例の切欠部24に対して、切欠部24Sの長さが短くなり、ベースプレート20が短くなっている。切欠部24Sがベースプレート20の底面に平行に切り欠かれている点は同じである。第4の実施例では、切欠部24Sを短くしたので、切欠部24Sの深さは第1の実施例に比べて浅くすることができる。ベースプレート20のその他の構成は第1の実施例と同じであるので、その説明を省略する。
【0035】
図6(e)は、この出願のヘッドサスペンションアッセンブリ10に使用するベースプレート20の第5の実施例を示すものであり、図4(c)に示したロードビーム30が取り付けられた状態を示すものである。第4の実施例では、切欠部24Sがベースプレート20の底面に平行に切り欠かれていた。一方、第5の実施例では、切欠部24STがベースプレート20の底面に対して、その深さが先端部26に向かって次第に大きくなるテーパ状に切り欠かれている点が異なる。先端部26における切欠部24STの深さは第4の実施例と同じである。ベースプレート20のその他の構成は第4の実施例と同じであるので、その説明を省略する。
【0036】
第4、第5の実施例のように、ベースプレート20の先端部26のカシメ孔22からの長さを第1から第3の実施例における6.5mmから短くする場合は、次の式、〔Asin(0.03/6.5)=0.264deg〕と、〔sin0.264×ベースプレート長(カシメ孔22の中心から先端部26までの長さ)〕とから、切欠部の先端部26における深さを決定することができる。つまり、ある長さのベースプレートを試作し、カシメによる先端変形を実測することにより変形角度を求めれば、カシメ孔22の中心から先端部26までの長さが変更になっても、上記式より切欠部の深さを求めることができる。
【0037】
なお、この出願では、従来のベースプレートに切欠部を設けている。このため、ベースプレートの質量が従来品に比べて軽量化される。よって、ベースプレートの軽量化によってヘッドアクチュエータの慣性質量が従来に比べて変化するので、ヘッドアクチュエータの駆動制御プログラムを変更する必要がある。なお、ヘッドアクチュエータの駆動制御プログラムを変更しないようにするためには、図7(a)から(d)に示すように、ロードビーム30の何れかの部位に、切欠部によって減った慣性質量に対応する錘11,12を付加すれば良い。
【0038】
また、別の手法として、図4(a)に示したベースプレート20に設けられている孔25を、ベースプレート20の材質を用いて狭めるか、或いは埋めることにより、切欠部によって減った慣性重量を増やして元に戻すことも可能である。
【0039】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本発明の容易な理解のために、本発明の具体的な形態を以下に付記する。
【0040】
(付記1) 磁気ヘッドを備えたスライダが取り付けられたロードビームと、該ロードビームが固着されるベースプレートを備え、該ベースプレートがキャリッジアームにカシメ固定されるヘッドサスペンションアッセンブリにおいて、
前記ロードビームの前記ベースプレート側の端部を、前記ベースプレートのカシメ孔のある領域を超えた領域まで延長し、
前記ベースプレートの前記スライダ側の端部は、前記ベースプレートの対向面を先端部から所定長さだけ切り欠いて切欠部を形成し、
前記ロードビームの前記ベースプレート側の端部は、前記ベースプレートのカシメ孔の近傍で溶接して前記ベースプレートに固着したことを特徴とするヘッドサスペンションアッセンブリ。
(付記2) 磁気ヘッドを備えたスライダが取り付けられたロードビームと、該ロードビームが固着されるベースプレートを備え、該ベースプレートがキャリッジアームにカシメ固定されるヘッドサスペンションアッセンブリにおいて、
前記ロードビームの前記ベースプレート側の端部を、前記ベースプレートのカシメ孔のある領域を超えた領域まで延長し、
前記ベースプレートの前記スライダ側の端部は、前記カシメ穴側に近づけるように短くすると共に、前記ベースプレートの対向面を先端部から所定長さだけ切り欠いて切欠部を形成し、
前記ロードビームの前記ベースプレート側の端部は、前記ベースプレートのカシメ孔の近傍で溶接して前記ベースプレートに固着したことを特徴とするヘッドサスペンションアッセンブリ。
(付記3) 前記切欠部は、前記ベースプレートの底面に平行に切り欠かれていることを特徴とする付記1又は2に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
(付記4) 前記切欠部は、前記ベースプレートの底面に平行に、かつ先端部に向かって切欠量が多くなるように段階的に切り欠かれていることを特徴とする付記1又は2に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
(付記5) 前記切欠部は、前記ベースプレートの底面に対して次第に切欠量が多くなるテーパ状に切り欠かれていることを特徴とする付記1又は2に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【0041】
(付記6) 前記切欠部の、前記ベースプレートの先端部における前記ロードビームからの距離は、前記ベースプレートがキャリッジアームにカシメ固定された時に変形する前記ベースプレートの先端部が、前記ロードビ−ムに接触しない距離であることを特徴とする付記1から5の何れかに記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
(付記7) 前記ロードビームの前記ベースプレートに接合する面に対向する面の反対側の面に、前記切欠部から除去した前記ベースプレートの慣性質量に対応する質量を取り付けたことを特徴とする付記1から6の何れかに記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
(付記8) 前記切欠部を有する前記ベースプレートの慣性質量が、前記切欠部のない前記ベースプレートの慣性質量と同じになるような材料で前記ベースプレートを形成したことを特徴とする付記1から5の何れかに記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
(付記9) 前記切欠部を有する前記ベースプレートの慣性質量が、前記切欠部のない前記ベースプレートの慣性質量と同じになるように、前記ベースプレートに形成されている重量調整用の孔を前記ベースプレートと同じ材料で埋めたことを特徴とする付記1から5の何れかに記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
(付記10) ボイスコイルモータと、該ボイスコイルモータによって駆動されるコイル部を回転軸の一方の側に備え、該回転軸の他方の側には、スライダを備えるヘッドサスペンションアッセンブリがキャリッジアームの先端部に取り付けられるスイングアームを備えるヘッドアクチュエータであって、
付記1から9の何れかに記載のヘッドサスペンションアッセンブリが、カシメ接合によって前記キャリッジアームの先端部に取り付けられることを特徴とするヘッドアクチュエータ。
【0042】
(付記11) 付記10に記載のヘッドアクチュエータを備えることを特徴とする磁気ディスク装置。
【符号の説明】
【0043】
1 スライダ
2 フレキシャ
3、30 ロードビーム
5、20 ベースプレート
7 カシメボール
9 従来のヘッドサスペンションアッセンブリ
10 本発明のヘッドサスペンションアッセンブリ
11、12 錘
22 カシメ孔
23 ボス
24 切欠部
25 孔
26 先端部
31 延長部
32 挿通孔
53 キャリッジアーム
55 ボス受け入れ孔
56 取付部
W 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドを備えたスライダが取り付けられたロードビームと、該ロードビームが固着されるベースプレートを備え、該ベースプレートがキャリッジアームにカシメ固定されるヘッドサスペンションアッセンブリにおいて、
前記ロードビームの前記ベースプレート側の端部を、前記ベースプレートのカシメ孔のある領域を超えた領域まで延長し、
前記ベースプレートの前記スライダ側の端部は、前記ロードビームに対向する面を先端部から所定長さだけ切り欠いて切欠部を形成し、
前記ロードビームの前記ベースプレート側の端部は、前記ベースプレートのカシメ孔の近傍で溶接して前記ベースプレートに固着したことを特徴とするヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項2】
前記切欠部は、前記ベースプレートの前記キャリッジアームへの取付面に平行に切り欠かれていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項3】
前記切欠部は、前記ベースプレートの前記キャリッジアームへの取付面に平行に、かつ先端部に向かって切欠量が多くなるように段階的に切り欠かれていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項4】
前記切欠部は、前記ベースプレートの前記キャリッジアームへの取付面に対して次第に切欠量が多くなるテーパ状に切り欠かれていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項5】
前記切欠部の、前記ベースプレートの先端部における前記ロードビームからの距離は、前記ベースプレートがキャリッジアームにカシメ固定された時に変形する前記ベースプレートの先端部が、前記ロードビ−ムに接触しない距離であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−176729(P2010−176729A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15764(P2009−15764)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】