説明

ヘッドフォン装置、信号処理方法、音響再生システム

【課題】ノイズキャンセリングシステムにおいて、ヘッドフォンに接続するイヤーパッドを自由に変更できるようにする。
【解決手段】イヤーパッド側に対して、そのイヤーパッドの所定の種別ごとに異なる内容となる情報を記憶させておく。ヘッドフォン或いはヘッドフォンと接続される信号処理装置側では、イヤーパッドが接続されたときに、イヤーパッド側記憶情報を読み出し、該イヤーパッド側記憶情報に基づき、信号処理手段の信号処理特性を設定させる。これにより、ユーザ操作によらずイヤーパッドの別に応じた情報を自動的に取得することができ、該取得した情報に基づいて、接続されたイヤーパッドに対応する信号処理特性を設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の耳部分と接する接触部を着脱可能に構成されたヘッドフォン装置に関する。また、上記ヘッドフォン装置によって出力されるべき信号に上記接触部の別に応じた特性による信号処理を施すための信号処理方法に関する。さらには、上記ヘッドフォン装置と信号処理装置とを備えて構成される音響再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平3−214892号公報
【特許文献2】特開平3−96199号公報
【0003】
ヘッドフォン装置により楽曲などのコンテンツの音声を再生しているときに聴こえてくる外部のノイズをアクティブにキャンセルするようにされた、ヘッドフォン装置対応のいわゆるノイズキャンセリングシステムが知られ、また、実用化されている。このようなノイズキャンセリングシステムとしては、大別してフィードバック方式とフィードフォワード方式との2つの方式が知られている。
【0004】
例えば、上記特許文献1には、ユーザの耳に装着される音響管内においてイヤホン(ヘッドフォン)ユニットの近傍に設けたマイクロフォンユニットにより収音した音響管内部の騒音(ノイズ)を位相反転させた音声信号を生成し、これをイヤホンユニットから音として出力させることにより、外部ノイズを低減させるようにした構成、つまり、フィードバック方式に対応したノイズキャンセリングシステムの構成が記載されている。
また、上記特許文献2には、その基本構成として、ヘッドフォン装置外筐に取り付けたマイクロフォンにより収音して得た音声信号について所定の伝達関数による特性を与えてヘッドフォン装置から出力させるようにした構成、つまりフィードフォワード方式に対応したノイズキャンセリングシステムの構成が記載されている。
【0005】
これらフィードフォワード方式、フィードバック方式の何れを採用する場合にも、ノイズキャンセリングのために設定されるフィルタ特性は、例えば外部のノイズ源からの音声がユーザの耳位置(ノイズキャンセル点)に到達するまでの空間伝達関数や、マイクアンプ・ヘッドフォンアンプの特性などの各種の伝達関数に基づき、ユーザ耳位置でノイズがキャンセルされるようにして設定されるものとなる。
このとき、上記空間伝達関数としては、ヘッドフォン装置の音響管(ハウジング部)の構造などにより大きく左右されるものとなることから、ノイズキャンセリングのためのフィルタ特性は、同一構造を有する1種類のヘッドフォン構造を想定して設定するものとなる。換言すれば、ノイズキャンセリングシステムにおいて、フィルタ特性は、想定される1種のヘッドフォン構造に対して1対1の関係で設定されるべきものとなっている。
【0006】
現状において、ノイズキャンセリングのためのフィルタはアナログ回路により構成されている。このため、現状のノイズキャンセリングシステムにおいては、フィルタ(信号処理装置)とヘッドフォン構造とは予め想定される1対1の組み合わせでしか用いることができないものとなっている。
確認のために述べておくと、フィルタをアナログ回路で構成する場合には、フィルタ特性の変更にあたりそれぞれ別々のフィルタ特性を有するフィルタ回路を複数設けておき、それらをスイッチングしてフィルタ特性の変更を行うことになる。しかしながら、そのような構成は回路実装面積の点などから非現実的であり、結果として現状においては、信号処理装置とヘッドフォン装置は想定される1対1の組み合わせでしか使用できないものとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、例えばヘッドフォン装置として、使用者の耳部分と接するイヤーパッド部分(インナータイプのヘッドフォン(イヤフォン)におけるイヤーピースも含む)を着脱可能に構成されたものを想定してみる。そしてこのとき、イヤーパッドとしては、複数種の異なるものを着脱可能とされているとする。
【0008】
このように複数種のイヤーパッドを着脱可能とされる場合において、イヤーパッドを交換した場合には、当然のことながらユーザ耳位置への空間伝達関数も異なることになる。つまり、この場合において、ノイズキャンセリング効果が適正に得られるようにするためには、装着されたイヤーパッド(伝達関数)に応じたフィルタ特性を変更設定する必要性が出てくる。
【0009】
フィルタ特性を可変的に設定するための構成として、先に本出願人は、ノイズキャンセリングフィルタをデジタル回路で実現する構成を提案している。すなわち、ノイズキャンセリングフィルタを例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタなどのデジタルフィルタで実現するものである。このようなデジタルフィルタを用いたノイズキャンセリングシステムとすることで、フィルタ特性の変更はフィルタ構成やフィルタ係数の変更を行うことで実現することができ、アナログ回路で構成する場合よりも簡易な構成とすることができる。
【0010】
ここで、使用するイヤーパッドに応じてフィルタ特性を可変的に設定するとしたときには、当然のことながら実際に使用されるイヤーパッドの機種(種類)が何れに該当するかを識別する必要がある。
このような識別にあたっては、例えば使用するイヤーパッドの別の情報をユーザ操作に基づき取得することが考えられる。しかしながら、ユーザの入力情報に基づく識別を行う場合には、必然的にユーザに操作負担を強いるものとなり、利便性に欠けるシステムとなってしまう。
また、このようにユーザの操作入力に基づく識別を行う場合には、ユーザの勘違い等で実際に使用されるイヤーパッドとは別のイヤーパッドが選択されてしまう可能性もあり、その場合、適正なノイズキャンセリング効果を得ることができなくなってしまうといった問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明は上記した課題を考慮して、ヘッドフォン装置として以下のように構成することとした。
つまり、本発明のヘッドフォン装置は、使用者の耳部分と接する接触部を着脱可能に構成されたヘッドフォン装置であって、振動板を備え音声出力を行う音声出力手段を備える。
また、上記音声出力手段に対して供給される信号に所要の信号特性を与えるようにして信号処理を行う信号処理手段を備える。
また、上記接触部に記憶され、上記接触部の所定の種別ごとに異なる情報内容となるようにされた接触部側記憶情報を読み取る情報読取手段を備える。
また、上記情報読取手段が読み取った上記接触部側記憶情報に基づき上記信号処理手段の信号処理特性が設定されるように制御を行う制御手段を備えるものである。
【0012】
また、本発明では、ヘッドフォン装置と信号処理装置とを備えて構成される音響再生システムとして以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の音響再生システムは、使用者の耳部分と接する接触部を着脱可能に構成されたヘッドフォン装置と、上記ヘッドフォン装置が音声出力を行うにあって入力する信号を生成する信号処理装置とを備えて構成される音響再生システムであって、上記信号処理装置に備えられ、上記ヘッドフォン装置に対して供給される信号に所要の信号特性を与えるようにして信号処理を行う信号処理手段を備える。
また、上記接触部に記憶され、上記接触部の所定の種別ごとに異なる情報内容となるようにされた接触部側記憶情報を読み取る情報読取手段を備える。
また、上記信号処理装置に備えられ、上記情報読取手段が読み取った上記接触部側記憶情報に基づき上記信号処理手段の信号処理特性が設定されるように制御を行う制御手段を備えるものである。
【0013】
上記構成によれば、ヘッドフォン装置に対して接触部(イヤーパッド)が接続されることに応じて、該接触部に記憶された接触部側記憶情報を本体側(信号処理手段を備えたヘッドフォン装置、或いは信号処理装置)が自動的に取得することになる。すなわち、ユーザ操作によらず接触部ごとの情報を自動で取得することができる。
そして、このように取得した接触部側記憶情報に基づき、信号処理手段の信号処理特性を、接続された接触部に応じた特性に設定(変更)するようにしている。これにより、使用する接触部の別に応じた適切な信号処理特性を本体側で自動的に設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接触部(イヤーパッド)ごとの記憶情報をユーザ操作によらず自動的に取得することができる。そして、このように取得した接触部側記憶情報に基づき、信号処理手段の信号処理特性を、接続された接触部に応じて定められた特性に設定(変更)することができる。
つまり本発明によれば、使用するイヤーパッドの別に応じた適切な信号処理特性を本体側で自動的に設定することができ、これによってユーザに操作負担を負わせることのない優れたシステムの実現が図られる。また、これと共に、ユーザの操作入力ミスなどにより誤った信号処理特性が設定されてしまい、適正な音響再生を行うことができなくなってしまうといった事態の発生も効果的に防止することができる。
【0015】
また、本発明をノイズキャンセリングシステムに適用すれば、イヤーパッドを自由に変更することのできる優れたノイズキャンセリングシステムの実現を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明していく。
実施の形態では、ヘッドフォン装置を備えて構成される音響再生システムとして、ノイズキャンセリングシステムを例に挙げる。そこで、以下では先ず、本実施の形態としてのシステムの構成を説明するのに先立ち、ノイズキャンセリングシステムの基本概念について説明を行っておく。
【0017】
<ノイズキャンセリングシステムの基本概念>

ノイズキャンセリングシステムの基本的な方式としては、フィードバック(FeedBack:FB)方式によりサーボ制御を行うようにされたものとフィードフォワード(FeedForward:FF)方式がそれぞれ知られている。先ず、図1により、FB方式について説明する。
【0018】
図1(a)には、ヘッドフォン装着者(ユーザ)の右耳(L(左),R(右)による2チャンネルステレオにおけるRチャンネル)側における、FB方式によるノイズキャンセリングシステムのモデル例を模式的に示している。
ここでのヘッドフォン装置のRチャンネル側の構造としては、先ず、右耳に対応するハウジング部201内において、ヘッドフォン装置を装着したユーザ500の右耳に対応する位置にドライバ202を設けるようにされる。ドライバ202は振動板を備えたいわゆるスピーカと同義のものであり、音声信号の増幅出力により駆動(ドライブ)されることで音声を空間に放出するようにして出力するものである。
このとき、ハウジング部201に対しては、図のように当該ハウジング部201とユーザ500の耳部分(耳を覆う部分も含む)との間に挿入されるようにしてイヤーパッド201aが設けられる。
【0019】
この図に示されるFB方式としては、上記ハウジング部201内において、ユーザ500の右耳に近いとされる位置に対してマイクロフォン203を設けるようにされる。このようにして設けられるマイクロフォン203によっては、ドライバ202から出力される音声と、外部のノイズ音源301からハウジング部201内に侵入して右耳に到達しようとする音声、つまり右耳にて聴き取られる外部音声であるハウジング内ノイズ302とが収音されることになる。なお、ハウジング内ノイズ302が発生する原因としては、ノイズ音源301が例えばイヤーパッド201aなどの隙間から音圧として漏れてきたり、ヘッドフォン装置の筐体がノイズ音源301の音圧を受けて振動し、これがハウジング部201内に伝達されてくることなどを挙げることができる。
そして、マイクロフォン203によって収音して得られた音声信号から、例えば外部音声の音声信号成分に対して逆特性となる信号など、ハウジング内ノイズ302がキャンセル(減衰、低減)されるようにするための信号(キャンセル用オーディオ信号)を生成し、この信号について、ドライバ202を駆動する必要音の音声信号(オーディオ音源)に合成させるようにして帰還させる。これによりハウジング部201内における右耳に対応するとされる位置に設定されたノイズキャンセル点400においては、ドライバ202からの出力音声と外部音声の成分とが合成されることによって外部音声がキャンセルされた音が得られ、ユーザの右耳では、この音を聴き取ることになる。そして、このような構成を、Lチャンネル(左耳)側においても与えることで、通常のL,R2チャンネルステレオに対応するヘッドフォン装置としてのノイズキャンセリングシステムが得られることになる。
【0020】
図1(b)のブロック図は、FB方式によるノイズキャンセリングシステムの基本的なモデル構成例を示している。なお、この図1(b)にあっては、図1(a)と同様にして、Rチャンネル(右耳)側のみに対応した構成が示されているものであり、また、Lチャンネル(左耳)側に対応しても同様のシステム構成が備えられるものである。また、この図において示されるブロックは、FB方式によるノイズキャンセリングシステムの系における特定の回路部位、回路系などに対応する1つの特定の伝達関数を示すもので、ここでは伝達関数ブロックと呼ぶことにする。各伝達関数ブロックにおいて示されている文字が、その伝達関数ブロックの伝達関数を表しているものであり、音声信号(若しくは音声)は、伝達関数ブロックを経由するごとに、そこに示される伝達関数が与えられることになる。
【0021】
先ず、ハウジング部201内に設けられるマイクロフォン203により収音される音声は、このマイクロフォン203と、マイクロフォン203にて得られた電気信号を増幅して音声信号を出力するマイクロフォンアンプに対応する伝達関数ブロック101(伝達関数M)を介した音声信号として得られることになる。この伝達関数ブロック101を経由した音声信号は、FB(FeedBack)フィルタ回路に対応する伝達関数ブロック102(伝達関数−β)を介して合成器103に入力される。FBフィルタ回路は、マイクロフォン203により収音して得られた音声信号から、上述のキャンセル用オーディオ信号を生成するための特性が設定されたフィルタ回路であり、その伝達関数が−βとして表されているものである。
【0022】
また、楽曲などのコンテンツとされるオーディオ音源の音声信号Sは、ここでは、イコライザによるイコライジングが施されるものとしており、このイコライザに対応する伝達関数ブロック107(伝達関数E)を介して合成器13に入力される。
なお、このように音声信号Sにイコライジングを施すのは、FB方式では、ノイズ収音用のマイクロフォン203がハウジング部201内に設けられ、ノイズ音のみでなくドライバ202からの出力音声も収音されることに由来する。すなわち、このようにマイクロフォン203が音声信号Sの成分も収音することで、FB方式では音声信号Sに対しても伝達関数−βが与えられるものとなっており、このことで音声信号Sの音質劣化を招くこと虞がある。そこで、予め伝達関数−βによる音質劣化を抑制するために、イコライジングにより音声信号Sに所要の信号特性を与えるようにしているものである。
【0023】
合成器103では、上記の2つの信号を加算により合成する。このようにして合成された音声信号は、パワーアンプにより増幅され、ドライバ202に駆動信号として出力されることで、ドライバ202から音声として出力される。つまり、合成器103からの音声信号は、パワーアンプに対応する伝達関数ブロック104(伝達関数A)を経由し、さらにドライバ202に対応する伝達関数ブロック105(伝達関数D)を経由して音声として空間内に放出される。なお、ドライバ202の伝達関数Dは、例えばドライバ202の構造などにより決まる。
【0024】
そして、ドライバ202にて出力された音声は、ドライバ202からノイズキャンセル点400までの空間経路(空間伝達関数)に対応する伝達関数ブロック106(伝達関数H)を経由するようにしてノイズキャンセル点400に到達し、その空間にてハウジング内ノイズ302と合成されることになる。そして、ノイズキャンセル点400から例えば右耳に到達するものとされる出力音の音圧Pとしては、ハウジング部201の外部から侵入してくるノイズ音源301の音がキャンセルされるものとなる。
なお確認のために述べておくと、上記伝達関数Hは、ハウジング部201やイヤーパッド201aの構造(材質や形状、組み立て手法など)によって決定づけられるものである。すなわち、イヤーパッド201aを変更可能とする場合、この伝達関数Hも変化するものである。
【0025】
ここで、この図1(b)に示されるノイズキャンセリングシステムのモデルの系にあって、上記出力音の音圧Pは、ハウジング内ノイズ302をN、オーディオ音源の音声信号をSとしたうえで、各伝達関数ブロックにおいて示される伝達関数「M、−β、E、A、D、H」を利用して、次の[式1]のようにして表されるものとなる。

【数1】

この[式1]において、ハウジング内ノイズ302であるNに着目すると、Nは、1 /(1+ADHMβ)で表される係数により減衰されることがわかる。
【0026】
ただし、[式1]の系がノイズ低減対象の周波数帯域にて発振することなく、安定して動作するためには、次の[式2]が成立していることが必要となる。

【数2】

【0027】
一般的なこととして、FB方式によるノイズキャンセリングシステムにおける各伝達関数の積の絶対値が、

1<<|ADHMβ|

で表されることとと、古典制御理論におけるNyquistの安定性判別と合わせると、[式2]については下記のように解釈できる。
ここでは、図1(b)に示されるノイズキャンセリングシステムの系において、ハウジング内ノイズ302であるNに関わるループ部分を一箇所切断して得られる、(−ADHMβ)で表される系を考える。この系を、ここでは「オープンループ」ということにする。一例として、マイクロフォン及びマイクロフォンアンプに対応する伝達関数ブロック101と、FBフィルタ回路に対応する伝達関数ブロック102との間を切断すべき箇所とすれば、上記のオープンループを形成できる。
【0028】
上記のオープンループは、例えば図2のボード線図により示される特性を持つものとされる。このボード線図においては、横軸に周波数が示され、縦軸においては、下半分にゲインが示され、上半分に位相が示される。
このオープンループを対象とした場合、Nyquistの安定性判別に基づき、[式2]を満足するためには、下記の2つの条件を満たす必要がある。
条件1:位相0deg.(0 度)の点を通過するとき、ゲインは0dBより小さくなくてはならない。
条件2:ゲインが0dB以上であるとき、位相0deg.の点を含んではいけない。
【0029】
上記2つの条件1、2を満たさない場合、ループには正帰還がかかることとなって、発振(ハウリング)を生じさせる。図2においては、上記の条件1に対応する位相余裕Pa、Pbと、条件2に対応するゲイン余裕Ga、Gbが示されている。これらの余裕が小さいと、ノイズキャンセリングシステムを適用したヘッドフォン装置を使用するユーザの各種の個人差やヘッドフォン装置を装着したときの状態のばらつきなどにより、発振の可能性が増加することになる。
例えば図2にあっては、位相0deg.の点を通過するときのゲインとしては0dBより小さくなっており、これに応じてゲイン余裕Ga 、Gbが得られている。しかしながら、例えば仮に位相0deg.の点を通過するときのゲインが0dB以上となってゲイン余裕Ga 、Gbが無くなる、あるいは位相0deg.の点を通過するときのゲインが0dB未満であるものの、0dBに近く、ゲイン余裕Ga 、Gbが小さくなるような状態となると、発振を生じる、あるいは発振の可能性が増加することになる。
同様にして、図2にあっては、ゲインが0dB以上であるときには位相0deg.の点を通過しないようにされており、位相余裕Pa、Pbが得られている。しかしながら、例えばゲインが0dB以上であるときに位相0deg.の点を通過してしまっている。或いは、位相0deg.に近くなり位相余裕Pa、Pbが小さくなるような状態となると、発振を生じる、あるいは発振の可能性が増加することになる。
【0030】
次に、図1(b)に示したFB方式のノイズキャンセリングシステムの構成において、上述の外部音声(ノイズ)のキャンセル(低減)機能に加えて、必要な音(必要音)をヘッドフォン装置により再生出力する場合について説明する。
ここでは、必要音として、例えば楽曲などのコンテンツとしてのオーディオ音源の音声信号Sが示されている。
なお、この音声信号Sとしては、音楽的、又はこれに準ずる内容のもののほかにも考えられる。例えば、ノイズキャンセリングシステムを補聴器などに適用することとした場合には、周囲の必要音を収音するために筐体外部に設けられるマイクロフォン(ノイズキャンセルの系に備えられるマイクロフォン203とは異なる)により収音して得られた音声信号となる。また、いわゆるヘッドセットといわれるものに適用する場合には、電話通信などの通信により受信した相手方の話し声などの音声信号となる。つまり、音声信号Sとは、ヘッドフォン装置の用途などに応じて再生出力すべきことが必要となる音声一般に対応したものである。
【0031】
先ず、先の[式1]において、オーディオ音源の音声信号Sに着目する。そして、イコライザに対応する伝達関数Eとして、次の[式3]により表される特性を有するものとして設定したこととする。

【数3】

なお、この伝達特性Eは、周波数軸でみた場合に、上記オープンループに対してほぼ逆特性(1+オープンループ特性)となっている。そして、この[式3]により示される伝達関数Eの式を、[式1]に代入すると、図1(b)に示されるノイズキャンセリングシステムのモデルにおける出力音の音圧Pについては、次の[式4]のようにして表すことができる。

【数4】

[式4]におけるADHSの項において示される伝達関数A、D、Hのうち、伝達関数Aはパワーアンプに対応し、伝達関数Dはドライバ202に対応し、伝達関数Hはドライバ202からノイズキャンセル点400までの経路の空間伝達関数に対応するので、ハウジング部201内のマイクロフォン203の位置が耳に対して近接した位置にあるとすれば、音声信号Sについては、ノイズキャンセル機能を有さないようにした通常のヘッドフォンと同等の特性が得られることがわかる。
【0032】
次に、FF方式によるノイズキャンセリングシステムについて説明する。
図3(a)は、FF方式によるノイズキャンセリングシステムのモデル例として、先の図1(a)と同様にRチャンネルに対応する側の構成を示している。
FF方式では、ハウジング部201の外側に対して、ノイズ音源301から到達してくるとされる音声が収音できるようにしてマイクロフォン203を設けるようにされる。そして、このマイクロフォン203により収音した外部音声、つまりノイズ音源301から到達してきたとされる音声を収音して音声信号を得て、この音声信号について適切なフィルタリング処理を施して、キャンセル用オーディオ信号を生成するようにされる。そして、このキャンセル用オーディオ信号を、必要音の音声信号と合成する。つまり、マイクロフォン203の位置からドライバ202の位置までの音響特性を電気的に模擬したキャンセル用オーディオ信号を必要音の音声信号に対して合成するものである。
そして、このようにしてキャンセル用オーディオ信号と必要音の音声信号とが合成された音声信号をドライバ202から出力させることで、ノイズキャンセル点400において得られる音としては、ノイズ音源301からハウジング部201内に侵入してきた音がキャンセルされたものが聴こえるようになる。
【0033】
図3(b)は、FF方式によるノイズキャンセリングシステムの基本的なモデル構成例として、一方のチャンネル(Rチャンネル)に対応した側の構成を示している。
先ず、ハウジング部201の外側に設けられるマイクロフォン203により収音される音は、マイクロフォン203及びマイクロフォンアンプに対応する伝達関数Mを有する伝達関数ブロック101を介した音声信号として得られる。
次に、上記伝達関数ブロック101を経由した音声信号は、FF(FeedForward)フィルタ回路に対応する伝達関数ブロック102(伝達関数−α)を介して合成器103に入力される。FFフィルタ回路102は、マイクロフォン203により収音して得られた音声信号から、上記したキャンセル用オーディオ信号を生成するための特性が設定されたフィルタ回路であり、その伝達関数が−αとして表されているものである。
【0034】
また、ここでのオーディオ音源の音声信号Sは、直接、合成器103に入力するものとしている。
合成器103により合成された音声信号は、パワーアンプにより増幅され、ドライバ202に駆動信号として出力されることで、ドライバ202から音声として出力されることになる。つまり、この場合にも、合成器103からの音声信号は、パワーアンプに対応する伝達関数ブロック104(伝達関数A)を経由し、さらにドライバ202に対応する伝達関数ブロック105(伝達関数D)を経由して音声として空間内に放出される。
そして、ドライバ202にて出力された音声は、ドライバ202からノイズキャンセル点400までの空間経路(空間伝達関数)に対応する伝達関数ブロック106(伝達関数H)を経由してノイズキャンセル点400に到達し、ここでハウジング内ノイズ302と空間で合成されることになる。
【0035】
また、ノイズ音源301から発せられた音がハウジング部201内に侵入してノイズキャンセル点400に到達するまでには、伝達関数ブロック110として示すように、ノイズ音源301からノイズキャンセル点400までの経路に対応する伝達関数(空間伝達関数F)が与えられる。その一方で、マイクロフォン203では、外部音声であるノイズ音源301から到達してくるとされる音声を収音することになるが、このとき、ノイズ音源301から発せられた音(ノイズ)がマイクロフォン203に到達するまでには、伝達関数ブロック111として示すように、ノイズ音源301からマイクロフォン203までの経路に対応する伝達関数(空間伝達関数G)が与えられることになる。伝達関数ブロック102に対応するFFフィルタ回路としては、上記の空間伝達関数F,Gも考慮した上での伝達関数−αが設定されるものである。
これにより、ノイズキャンセル点400から例えば右耳に到達するものとされる出力音の音圧Pとしては、ハウジング部201の外部から侵入してくるノイズ音源301の音がキャンセルされるものとなる。
【0036】
なお、FF方式の場合、イヤーパッド201aが変更されることによっては、伝達関数Hと共に、上記伝達関数F(ノイズ音源301からノイズキャンセル点400)も変化することになる。
【0037】
図3(b)に示したFF方式によるノイズキャンセリングシステムのモデルの系にあって、上記出力音の音圧Pは、ノイズ音源301において発せられるノイズをN、オーディオ音源の音声信号をSとしたうえで、各伝達関数ブロックにおいて示される伝達関数「M、−α、E、A、D、H」を利用して、次の[式5]で表されるものとなる。

【数5】

また、理想的には、ノイズ音源301からキャンセルポイント400までの経路の伝達関数Fは、次の[式6]のようにして表すことができる。

【数6】

次に、[式6]を[式5]に代入すると、右辺の第1項と第2項とが相殺されることとなる。この結果から、出力音の音圧Pは、以下の[式7]のようにして表すことができる。

【数7】

【0038】
このようにして、ノイズ音源301から到達してくるとされる音はキャンセルされ、オーディオ音源の音声信号だけが音声として得られることが示される。つまり、理論上、ユーザの右耳においては、ノイズがキャンセルされた音声が聴こえることになる。ただし、現実には、[式6]が完全に成立するような伝達関数を与えることのできる、完全なFFフィルタ回路を構成することは非常に困難である。また、人による耳の形状であるとか、ヘッドフォン装置の装着の仕方についての個人差が比較的大きく、ノイズの発生位置とマイク位置との関係の変化などは、特に中高域の周波数帯域についてのノイズ低減効果に影響を与えることが知られている。このために、中高域に関しては、アクティブなノイズ低減処理を控え、主として、ヘッドフォン装置の筐体の構造などに依存したパッシブな遮音をすることがしばしば行われる。
また、確認のために述べておくと、[式6]は、ノイズ音源301から耳までの経路の伝達関数を、伝達関数−αを含めた電気回路にて模倣することを意味している。
【0039】
また、図3(a)に示したFF方式のノイズキャンセリングシステムでは、マイクロフォン203をハウジングの外側に設けることから、キャンセルポイント400については、図1(a)のFB方式のノイズキャンセリングシステムと異なり、聴取者の耳位置に対応させるようにしてハウジング部201にて任意に設定できる。しかし通常、伝達関数−αは固定的であり、設計段階においては、何らかのターゲット特性を対象とした決めうちになる。その一方で、聴取者によって耳の形状などは異なる。このために、十分なノイズキャンセル効果が得られなかったり、ノイズ成分を非逆相で加算してしまって異音を生じさせたりするなどの現象が発生する可能性もある。
このようなことから、一般的にFF方式は、発振する可能性が低く安定度は高いが、十分なノイズ減衰量(キャンセル量)を得るのは困難であるとされている。一方、FB方式は大きなノイズ減衰量が期待できる代わりに、系の安定性に注意が必要であるとされている。このように、FB方式とFF方式とでは、それぞれに特徴を有するものである。
【0040】
<実施の形態のヘッドフォン装置>
[ヘッドフォン装置の内部構成]

図4は、本発明のヘッドフォン装置の一実施形態としての、ヘッドフォン1の内部構成を示したブロック図である。
このヘッドフォン1は、後述するイヤーパッド15として、種々のタイプのイヤーパッドを着脱可能に構成されている。ここで、本例のヘッドフォン1が対応するイヤーパッドのタイプについて、次の図5に示しておく。
【0041】
この図5に示されるように、本例のヘッドフォン1は、(1)超低反発・極厚タイプのイヤーパッド、(2)ヒーター内蔵タイプのイヤーパッド、(3)保湿・保温タイプのイヤーパッド、(4)高放熱タイプのイヤーパッド、(5)装飾タイプのイヤーパッド、のそれぞれ異なる構造を有するイヤーパッドに対応可能とされている。
これらのうち、(2)のヒータ内蔵タイプのイヤーパッド15は、ヘッドフォン1と接続されたときにヒーターへの電力供給が為されるように構成されている。
また、(4)の高放熱タイプのイヤーパッド15としては、例えばペルチェ素子などの冷却素子を備えたものとすることができ、その場合、ヘッドフォン1と接続されたときに冷却素子への電力供給が為されるように構成される。
なお、以下の説明では、これら電力供給のためのヘッドフォン1側・イヤーパッド15側の構成についての図示による説明は省略するが、具体的な構成としては、ヘッドフォン1側の所定位置に電力供給のための供給端子を設け、イヤーパッド15側には、ヘッドフォン1と接続されたときに上記供給端子と接する位置に、電力供給を受けるための入力端子を備えるようにすればよい。
【0042】
ここで、本実施の形態の場合、ヘッドフォン1が対応可能なイヤーパッド15に対しては、そのイヤーパッドのタイプ(機種)を識別するためのID情報が予め定められており、図のように(1)のタイプのイヤーパッド15にはID:0が、(2)のタイプのイヤーパッド15にはID:1が、(3)のタイプのイヤーパッド15にはID:2が、(4)のタイプのイヤーパッド15にはID:3が、(5)のタイプのイヤーパッド15にはID:4がそれぞれ割り与えられている。
【0043】
なお、この図5においては、ヘッドフォン1がいわゆる耳覆いタイプ又は耳載せタイプとされる場合を例示し、聴取者の耳部分と接する接触部について「イヤーパッド」という表現を用いているが、本実施の形態において、「ヘッドフォン」は、いわゆるインナータイプ(イヤーフォン)と呼ばれるタイプのものも含むものであり、「接触部」としては、このようなインナータイプのヘッドフォンにおいて聴取者の耳孔に対して挿入されるいわゆるイヤーピースの類も含むものである。
また、先にも触れたように、「耳部分」とは、耳自体のみならず耳を覆う部分(耳の周囲)も含むものであるとする。
【0044】
説明を図4に戻す。
図4において、ヘッドフォン1には、ノイズキャンセリングシステムに対応する構成として、マイクロフォンMICが設けられる。マイクロフォンMICによる収音信号は、マイクアンプ2で増幅された後、A/D変換器3にてデジタル信号に変換されてDSP(Digital Signal Processor)5に供給される。
【0045】
上記マイクロフォンMICの設置位置については、図6に示されるようにして、ヘッドフォン1がFF方式に対応するヘッドフォン装置とされるか、FB方式に対応するヘッドフォン装置であるかによって異なる。
図6(a)は、FF方式対応のヘッドフォン装置とされる場合、図6(b)はFB方式対応のヘッドフォン装置とされる場合のヘッドフォン1の構造について模式的に示している。
これらの図に示されるように、ヘッドフォン1としては、Lchハウジング部1L、Rchハウジング部1Rとを有する。そしてFF方式、FB方式の場合も共に、LchのドライバDRV-LはLchハウジング部1L内に設けられ、またRchのドライバDRV-RはRchハウジング部1R内に設けられる。
【0046】
そして、図6(a)のFF方式の場合、LchのマイクロフォンMIC-Lは、Lchハウジング部1Lにおいて外向きに設けられる。すなわち、ハウジング部1Lの外界で生じる音を収音するようにして設けられる。同様にRchのマイクロフォンMIC-RとしてもRchハウジング部1Rにおいて外向きに設けられる。
【0047】
一方、図6(b)のFB方式の場合、LchのマイクロフォンMIC-LはLchハウジング部1Lにおいて内向きに設けられる。つまりハウジング部1L内における音、具体的には聴取者の右耳で聴取される音を収音するようにして設けられる。同様にしてRchのマイクロフォンMIC-RとしてもRchハウジング部1Rにて内向きに設けられる。
【0048】
ここで、図4においては図示の都合上、オーディオ信号のch(チャンネル)数を1chとしているが、図6の説明からも理解されるように、実際においてヘッドフォン1は、LchとRchの2chのオーディオ信号について扱うものとなる。すなわち、図4において、先に説明したマイクロフォンMIC、マイクアンプ2、A/D変換器3としては、実際にはLch用、Rch用のそれぞれ2つが設けられるものとなる。同様にして、以降において説明するオーディオ入力端子TAin、A/D変換器4としてもLch用、Rch用のそれぞれ2つが設けられる。さらには、DSP5における各部(NCフィルタ5a、イコライザ(EQ)5b、加算器5c)、及びD/A変換器6、パワーアンプ7、ドライバDRVとしてもLch用、Rch用のそれぞれ2つが設けられることになる。
【0049】
図4において、オーディオ入力端子TAinは、例えば外部のオーディオプレイヤなどにより再生されたオーディオ信号を入力するために設けられる。このオーディオ入力端子TAinを介して入力されたオーディオ信号は、A/D変換器4にてデジタル信号に変換された後、DSP5に対して供給される。
【0050】
DSP5は、例えば図中のメモリ10に格納されるプログラム(図示せず)に基づくデジタル信号処理を実行することで、図中に示される各機能ブロックとしての動作を実現する。
具体的に、DSP5は、図中のイコライザ(EQ)5bとして示す機能動作として、上記A/D変換器4から供給されるオーディオ信号(オーディオデータ)についてイコライジング処理を施す。例えばイコライザ5bは、FIR(Finite Impulse Response)フィルタなどで実現することができる。
また、図中のNC(ノイズキャンセリング)フィルタ5aとして示す機能動作として、上記マイクロフォンMICにより検出されマイクアンプ2→A/D変換器3を介して入力される収音信号(収音データ)に対し、ノイズキャンセリングのための信号特性を与える。このNCフィルタ5aとしても、例えばFIRフィルタなどで構成することができる。
さらに、図中の加算器5cとして示す機能動作として、上述したイコライザ5bにより処理されたオーディオデータと、上記NCフィルタ5aにより処理された収音データとを加算する。この加算器5cとしての加算処理により得られるデータを加算データと呼ぶ。該加算データは、上記NCフィルタ5aによりノイズキャンセリングのための特性が与えられた収音データが加算されたものとなる。従って、該加算データに基づく音声出力(音響再生)がドライバDRVにより行われることで、ヘッドフォン1を装着したユーザに、ノイズ成分がキャンセルされたものとして知覚させることができる。
【0051】
なお、本実施の形態の場合、DSP5は、後述するようにしてマイクロコンピュータ8から指示されたID情報に基づいてNCフィルタ5aのフィルタ特性を可変的に設定する処理も行うものとなるが、このようなフィルタ特性の設定処理を行う機能ブロックについては図示を省略している。
【0052】
また、上記DSP5におけるイコライザ5bは、FB方式に対応するヘッドフォン1とされる際には、オーディオデータに対して音質劣化抑制のための特性を与えるためのフィルタ(図1のイコライザ107)として機能するものとなる。
なお、先の説明によれば、FF方式の場合にはオーディオデータに対するイコライジングは必須とはならないが、FF方式に対応するヘッドフォン1とされる場合、上記イコライザ5bとしては、例えば単に所要のイコライジング処理を行うものとして機能するものと考えればよい。
【0053】
上記のようにしてDSP5で得られる加算データは、D/A変換器6にてアナログ信号に変換された後、パワーアンプ7で増幅されてドライバDRVによって出力される。すなわち、上記加算データとしてのオーディオ信号に応じた音響再生が行われることになる。
【0054】
また、ヘッドフォン1には、マイクロコンピュータ8が設けられる。
マイクロコンピュータ8は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)などを備えて構成され、例えば上記ROM、又はメモリ10等の記憶手段に記憶されるプログラムに基づく各種の制御処理や演算を行うことで、ヘッドフォン1の全体制御を行う。
【0055】
このマイクロコンピュータ8に対しては、図示するパッド接続有無検出部9からの検出信号が入力される。
図示による説明は省略するが、上記パッド接続有無検出部9は、イヤーパッド15が接続されたことに応じ、上記イヤーパッド15に形成された例えば凸部によって押圧されるようにして設けられたメカスイッチを備えて構成される。このパッド接続有無検出部9は、上記イヤーパッド15が接続されたときにONとなり、上記イヤーパッド15が取り外された(接続が解除された)ときはOFFとなる。マイクロコンピュータ8は、このようなメカスイッチのON/OFFに応じて上記接続有無検出部9が出力するON/OFF信号に基づき、イヤーパッド15の接続の有無を判定する。
【0056】
また、特に本実施の形態の場合、マイクロコンピュータ8は、上述したID情報の記憶のためにイヤーパッド15に与えられた物理的な構造パターンに応じた電気信号を得るように構成された構造パターン検出部11と接続される。
マイクロコンピュータ8は、該構造パターン検出部11からの検出信号を入力し、上記IDを取得するための処理を実行するものとなるが、これについては後述する。
【0057】
ここで、マイクロコンピュータ8による読み出しが可能なメモリ10には、ID−フィルタ特性対応情報10aが格納されている。
このID−フィルタ特性対応情報10aは、図7に示されるように、先の図5にて提示した、ヘッドフォン1が対応可能とされる各タイプのイヤーパッド15ごとに付されるIDの情報と、そのIDにより特定されるタイプのイヤーパッド15が接続された場合にNCフィルタ5aにて設定されるべきとして定められたフィルタ特性の情報とが対応づけられた情報とされる。
図7に示されるように、ID:0に対してはtype0としてのフィルタ特性情報が対応づけられる。以下同様に、ID:1に対してはtype1、ID:2に対してはtype2、ID:3に対してはtype3、ID:4に対してはtype4としてのフィルタ特性情報が対応づけられている。
なお、確認のために述べておくと、フィルタ特性は、NCフィルタ5aとしての例えばFIRフィルタの構成(段数など)や、フィルタ係数によって定まるものである。上記フィルタ特性情報としては、これらフィルタ構成やフィルタ係数についてのパラメータ情報が格納されることになる。
【0058】
[イヤーパッド識別のための構成]

ここで、本実施の形態では、ヘッドフォン1に対して接続されるイヤーパッド15として、複数種のイヤーパッド15に対応してそれぞれ適正なノイズキャンセリング効果が得られるようにすることを目的としている。
イヤーパッド15は、音響部品そのものであり、その材質や形状、組み立て手法が異なることによって外部からのノイズ音の遮蔽度合い、ドライバDRVから発生する音の吸収の度合い、ドライバDRVから見た音響インピーダンスの度合いなどに大きな影響を与えるものである。このため、使用するイヤーパッド15の種類を変更した場合には、先に述べたようにしてNCフィルタの特性を設定する上で前提とする各種の空間伝達関数(HやF)も変化し、結果として、使用するイヤーパッド15の種類を変更した場合には、NCフィルタ5aのフィルタ特性を変化させる必要がある。
【0059】
ここで、装着されるイヤーパッド15のタイプの別に応じてNCフィルタ5aに対してフィルタ特性を可変的に設定するとしたときには、当然のことながら実際に使用されるイヤーパッド15のタイプが何れのタイプに該当するかを識別する必要がある。
このような識別にあたっては、例えば使用するイヤーパッド15の別の情報をユーザ操作に基づき取得することが考えられるが、ユーザの入力情報に基づく識別を行う場合には、必然的にユーザに操作負担を強いるものとなり、利便性に欠けるシステムとなってしまう。
また、このようにユーザの操作入力に基づく識別を行う場合には、ユーザの勘違い等で実際に使用されるイヤーパッド15とは別のイヤーパッド15が選択されてしまう可能性もあり、その場合、適正なノイズキャンセリング効果を得ることができなくなってしまうといった問題が生じる。
【0060】
そこで、本実施の形態では、イヤーパッド15に対してイヤーパッド15ごとの情報を記憶させ、ヘッドフォン1側でこの記憶情報を読み取るという手法を採る。
このような手法として、先ず、以下で説明する実施例1〜実施例3では、イヤーパッド15側に対してそのタイプの別を表すIDの情報(図5に示したID:0〜ID:4)を物理的な構造パターンによって記憶させ、ヘッドフォン1側には、上記構造パターンの別を検出するための検出部(構造パターン検出部11)を設け、該検出部の検出結果に基づき上記IDの情報を取得するという手法を提案する。
【0061】
[実施例1]

図8は、実施例1としてのヘッドフォン1、イヤーパッド15の構成について説明するための図として、図8(a)ではヘッドフォン1におけるLchハウジング部1Lの構造とイヤーパッド15の構造と斜視図により示しており、図8(b)ではヘッドフォン1側における各電極に対する内部の配線状態について模式的に示している。
【0062】
この実施例1は、イヤーパッド15側の所定位置における導電部の有無によってID情報を記憶させ、それを読み取るものである。
先ず、この場合のLchハウジング部1Lには、イヤーパッド15と接続される面に対して、該イヤーパッド15を所定の位置関係により接続するための位置決め凸部Xh1,Xh2,Xh3が設けられる。そして、これに対応してイヤーパッド15側には、Lchハウジング部1Lと接続される面に対して、上記位置決め凸部Xh1,Xh2,Xh3を勘合する位置決め凹部Xp1,Xp2,Xp3が設けられる。すなわち、Xh1−Xp1、Xh2−Xp2、Xh3−Xp3の組でそれぞれが勘合することで、Lchハウジング部1Lに対しイヤーパッド15が、予め定められた所定の位置関係で接続されるようになっている。
【0063】
そして、この場合のイヤーパッド15においては、図8(a)に示すように、上記Lchハウジング部1L側と接続される面における所定位置に対し、第1導電部形成位置P1、第2導電部形成位置P2、第3導電部形成位置P3、第4導電部形成位置P4、第5導電部形成位置P5がそれぞれ設定される。そして、これら各形成位置P1、P2、P3、P4、P5における導電部の有無によって、ID情報が記憶されることになる。
この図の例では、第1導電部形成位置P1、第2導電部形成位置P2、第3導電部形成位置P3、第4導電部形成位置P4、第5導電部形成位置P5の全てに導電部が形成されている場合を示している。図のように第1導電部形成位置P1に形成されるのは第1導電部Ep1、第2導電部形成位置P2に形成されるのは第2導電部Ep2、第3導電部形成位置P3に形成されるのは第3導電部Ep3、第4導電部形成位置P4に形成されるのは第4導電部Ep4、第5導電部形成位置P5に形成されるのは第5導電部である。
この場合、各導電部Ep1、Ep2、Ep3、Ep4、Ep5は、導電性を有する金属板を貼り付けて形成している。
【0064】
これに対し、ヘッドフォン1側では、Lchハウジング部1Lにおける上記イヤーパッド15との接続面に対し、[第1電極Eh1a・Eh1b]の組、[第2電極Eh2a・Eh2b]の組、[第3電極Eh3a・Eh3b]の組、[第4電極Eh4a・Eh4b]の組、[第5電極Eh5a・Eh5b]の組が設けられる。
これら各電極Epとしては、上述した各位置決め凸部Xhと各位置決め凹部Xpとによりイヤーパッド15が所定の位置関係で接続された際に、上記[第1電極Eh1a・Eh1b]の組は上記第1導電部形成位置P1と接し、上記[第2電極Eh2a・Eh2b]の組は上記第2導電部形成位置P2と接し、上記[第3電極Eh3a・Eh3b]の組は上記第3導電部形成位置P3と接し、上記[第4電極Eh4a・Eh4b]の組は上記第4導電部形成位置P4と接し、上記[第5電極Eh5a・Eh5b]の組は上記第5導電部形成位置P5と接するようにして設けられる。
【0065】
ここで、図8(b)に示すように、上記[第1電極Eh1a,Eh1b][第2電極Eh2a,Eh2b][第3電極Eh3a,Eh3b][第4電極Eh4a・Eh4b][第5電極Eh5a・Eh5b]のうち、電極Eh1b、Eh2b、Eh3b、Eh4b、Eh5bについては、それぞれがアースに接地される。一方で、電極Eh1a、Eh2a、Eh3a、Eh4a、Eh5aは、それぞれ所定レベルによるバイアス電圧が与えられたラインを介してマイクロコンピュータ8と接続されている。
なお、図中「2.8V」の表記は、デジタルでH(High)として扱われる電圧レベルを表しているものである。
【0066】
上記のようなヘッドフォン1側の構成により、イヤーパッド15側における各導電部形成位置Pにおける導電部Epの有無を電気信号により検出するための、構造パターン検出部11が形成される。
この場合、或る導電部形成位置Pに導電部Epが形成されるときには、Lchハウジング部1L側の電極Eh1a、Eh2a、Eh3a、Eh4a、Eh5aのうちの対応する電極Ehと接続されたラインがL(Low)となり、逆に導電部Epが形成されないときは対応する電極Ehと接続されたラインがHとなる。マイクロコンピュータ8は、それぞれの電極Ehと接続されるラインで得られる電気信号のH/Lの別を判定することで、イヤーパッド15側における導電部Epの有無で記憶されたID情報を取得することができる。
【0067】
なお、ここでは導電部形成位置Pを5つとする場合を例示しているが、このことで、この場合は合計で25=32通りの表現が可能である。すなわち、最大で32種類のイヤーパッド15を識別することができる。
【0068】
ここで、上記による例では、各導電部Epとして金属板を貼り付けるものとしたが、例えば次の図9に示されるようにして、各導電部Epとしては、Lchハウジング部1Lとの接続面にそれぞれ独立した2つの電極を表出させ、これらの電極を内部で配線することで形成することもできる。
この場合においては、各導電部形成位置Pの表面上に形成された上記2つの電極について、それらを内部で配線(接続)する/しないことによって導電部Epの有無を表現することができる。図9の例では、全ての導電部形成位置Pにおける2つの電極が配線されている場合を示している。すなわち、各導電部形成位置Pに導電部Epが形成されている場合を例示している。
【0069】
このような導電部Epの構造とした場合も、ヘッドフォン1側の構造パターン検出部11としては、図9に示されているように、先の図8の場合と同様の構成のものを用いる。これによって図8の場合と同様にイヤーパッド15側に記憶されたID情報を読み取ることができる。
【0070】
上記により説明した実施例1としての構成により、ヘッドフォン1側においては、接続されたイヤーパッド15に記憶されたID情報を読み取ることができる。本例では、このようにして読み取ったID情報に基づき、接続されたイヤーパッド15の種類に応じて予め設定されるべきとして定められたフィルタ特性をNCフィルタ5aに設定させるための処理が行われることになる。
【0071】
次の図10のフローチャートを参照して、イヤーパッド15からのID情報の読み取りも含めた、このようなNCフィルタ5aのフィルタ特性の変更設定を実現するための処理動作について説明する。
なお、図10において、図中マイクロコンピュータとして示す処理動作は、図4に示したマイクロコンピュータ8が例えば上述したROMなどに記憶されるプログラムに基づいて実行するものである。また、DSPとして示す処理動作は、DSP5がメモリ10に格納されたプログラムに基づき実行するものである。
【0072】
先ず、マイクロコンピュータ8側において、図中のステップS101では、パッドが接続されるまで待機するようにされる。先に述べたようにして、イヤーパッド15の接続有無は、図4に示したパッド接続有無検出部9からのON/OFF信号に基づき判定することができる。
【0073】
パッドが接続されたことに応じては、ステップS102において、IDの読み取り処理を実行する。すなわち、マイクロコンピュータ8に対して接続された各電極Eh(Eh1a、Eh2a、Eh3a、Eh4a、Eh5a)ごとのラインにおける電気信号レベルがH/Lの何れであるかを判定した結果に基づき、イヤーパッド15側の導電部Epの有無で記憶されたIDの情報を取得する。
【0074】
続くステップS103では、取得したIDをDSP5に対して指示する。このステップS103の処理を実行すると、この図に示されるマイクロコンピュータ8側の処理動作は終了となる。
【0075】
DSP5側においては、図中のステップS201により、マイクロコンピュータ8側からのIDの指示を待機するようにされている。そして、IDの指示があった場合は、ステップS202において、指示されたIDと対応づけられたフィルタ特性情報に基づき、NCフィルタの特性を設定する処理を実行する。すなわち、ID−フィルタ特性対応情報9aにおいて、指示されたIDと合致するIDの情報と対応づけられたフィルタ特性情報に基づき、NCフィルタ5aのフィルタ特性を設定する処理を実行する。
ステップS202の処理を実行すると、この図に示すDSP5側の処理動作は終了となる。
【0076】
[実施例2]

続いては、実施例2について説明する。
なお、以下の説明において、既にこれまでにおいて説明した部分と同様となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0077】
実施例2は、イヤーパッド15側の所定位置における凸部の有無によってID情報を記憶させ、これに対応しヘッドフォン1側に上記凸部の有無を検出するためのメカスイッチを設けて上記ID情報を読み取るものである。
図11は、実施例2の構成について説明するための図として、図11(a)はLchハウジング部1Lとイヤーパッド15の構造を示した斜視図であり、図11(b)はヘッドフォン1側における各メカスイッチに対する内部の配線状態について模式的に示した図である。
【0078】
先ず、図11(a)において、この場合のイヤーパッド15においては、Lchハウジング部1Lとの接続面における所定位置に対し、第1凸部形成位置P11、第2凸部形成位置P12、第3凸部形成位置P13、第4凸部形成位置P14、第5凸部形成位置P15が設定され、これら各形成位置P11、P12、P13、P14、P15における凸部Jの有無によってID情報が記憶される。この図の例では、全ての凸部形成位置Pに凸部Jが形成されている場合を示している。第1凸部形成位置P11に形成されるのは第1凸部J1、第2凸部形成位置P12に形成されるのは第2凸部J2、第3凸部形成位置P13に形成されるのは第3凸部J3、第4凸部形成位置P14に形成されるのは第4凸部J4、第5凸部形成位置P15に形成されるのは第5凸部J5である。
【0079】
これに対し、この場合のLchハウジング部1L側には、イヤーパッド15との接続面において第1メカスイッチMSW1、第2メカスイッチMSW2、第3メカスイッチMSW3、第4メカスイッチMSW4、第5メカスイッチMSW5が備えられている。
第1メカスイッチMSW1は、各位置決め部Xh・Xpによって位置決めされてイヤーパッド15が接続されたときに上記第1凸部形成位置P11と対向する位置に対して設けられる。同様に、第2メカスイッチMSW2は第2凸部形成位置12と対向する位置、第3メカスイッチMSW3は第3凸部形成位置13と対向する位置、第4メカスイッチMSW4は第4凸部形成位置14と対向する位置、第5メカスイッチMSW5は第5凸部形成位置15と対向する位置に対してそれぞれ設けられる。
さらに、上記メカスイッチMSW1〜MSW5のそれぞれは、イヤーパッド15が接続されたとき、対向する凸部形成位置Pに凸部Jが形成されている場合に、該凸部Jによって押圧されてON状態となり、また対向する凸部形成位置Pに凸部Jが形成されない場合、或いはイヤーパッド15が取り外された場合にはOFF状態となるようにして形成されている。
【0080】
その上で、この場合のヘッドフォン1内部では、図11(b)に示すように、各メカスイッチMSWの一方の端子はアース接地され、他方の端子は所定レベルによるバイアス電圧が与えられたラインを介してマイクロコンピュータ8と接続されている。
このような構成により、イヤーパッド15側における各凸部形成位置Pにおける凸部Jの有無を電気信号により検出するための、構造パターン検出部11が形成される。
具体的に、イヤーパッド15側における凸部形成位置Pに突起部Jが形成される場合には、対応するメカスイッチMSWと接続されたラインがLとなり、凸部Jが形成されない場合は対応するメカスイッチMSWと接続されたラインがHとなる。マイクロコンピュータ8は、それぞれのメカスイッチMSW(上記他方の端子)と接続されるラインで得られる電気信号のH/Lの別を判定することで、イヤーパッド15側における凸部Jの有無で記憶されたID情報を取得することができる。
【0081】
なお、図11では凸部Jの有無でIDを記憶させる場合を例示したが、凹部の有無でIDを記憶させることもできる。その場合、各メカスイッチMSWとしては、例えばLchハウジング部1Lにおけるイヤーパッド15との接続面から突出するようにして設け、それによって凹部が形成される場合に該凹部によって非押圧状態となるようにすればよい。換言すれば、この場合の各メカスイッチMSWは、対応する形成位置Pに凹部が形成されていない場合に、イヤーパッド15側の接続面によって押圧されてON状態となるように設けられるものである。
このような構成とした場合も、マイクロコンピュータ8は、各メカスイッチMSWと接続されたラインで得られる電気信号のH/Lの別を判定することでID情報を取得することができる。
【0082】
ここで、実施例2としても、取得したID情報に応じてNCフィルタ5aのフィルタ特性を変更設定するための処理が行われるものとなるが、その内容については先の図10にて説明したものと同様となるので改めての説明は省略する。
【0083】
[実施例3]

実施例3は、イヤーパッド15側の所定位置における導光材の有無によってID情報を記憶させ、それを読み取るものである。
図12は、実施例3の構成について説明するための図として、図12(a)はLchハウジング部1Lとイヤーパッド15の構造を示した斜視図であり、図12(b)はヘッドフォン1側の主にID情報の読み取りに係る部分の内部構成を抽出して示している。
【0084】
図12(a)において、この場合のイヤーパッド15におけるヘッドフォン1側との接続面においては、その所定位置に、第1導光部形成位置P21、第2導光部形成位置P22、第3導光部形成位置P23、第4導光部形成位置P24、第5導光部形成位置P25が設定され、これら各形成位置P21、P22、P23、P24、P25における導光部Opの有無によって、ID情報が記憶される。図のように第1導光部形成位置P21に形成されるのは第1導光部Op1、第2導光部形成位置P22に形成されるのは第2導光部Op2、第3導光部形成位置P23に形成されるのは第3導光部Op3、第4導光部形成位置P24に形成されるのは第4導光部Op4、第5導光部形成位置P25に形成されるのは第5導光部Op5である。
各導光部Op1、Op2、Op3、Op4、Op5は透過性を有し、例えば透明ガラスや透明樹脂などで構成する。
【0085】
一方、この場合のヘッドフォン1側には、イヤーパッド15が位置決めされて接続されたときに上記第1導光部形成位置P21と対向するようにして設けられた[第1発光部Oh-E1,第1光検出部Oh-D1]の組と、第2導光部形成位置P22と対向するようにして設けられた[第2発光部Oh-E2,第2光検出部Oh-D2]の組と、第3導光部形成位置P23と対向するようにして設けられた[第3発光部Oh-E3,第3光検出部Oh-D3]の組と、第4導光部形成位置P24と対向するようにして設けられた[第4発光部Oh-E4,第4光検出部Oh-D4]の組と、第5導光部形成位置P25と対向するようにして設けられた[第5発光部Oh-E5,第5光検出部Oh-D5]の組とが設けられる。
各発光部Oh-E1、Oh-E2、Oh-E3、Oh-E4、Oh-E5は、例えばLED(Light Emitting Diode)などの発光素子を備えて構成される。また各光検出部Oh-D1、Oh-D2、Oh-D3、Oh-D4、Oh-D5は例えばフォトトランジスタなどの光検出素子(光電変換素子)を備えて構成される。
【0086】
図12(b)に示すように、各発光部Oh-E1、Oh-E2、Oh-E3、Oh-E4、Oh-E5はマイクロコンピュータ8と接続される。また各光検出部Oh-D1、Oh-D2、Oh-D3、Oh-D4、Oh-D5としてもマイクロコンピュータ8と接続される。
この場合のマイクロコンピュータ8は、各発光部Oh-E1、Oh-E2、Oh-E3、Oh-E4、Oh-E5の発光動作のON/OFF制御を行う。また、各光検出部Oh-D1、Oh-D2、Oh-D3、Oh-D4、Oh-D5からの検出信号(電気信号)のレベル検出を行う。
【0087】
この場合、各発光部Oh-E1、Oh-E2、Oh-E3、Oh-E4、Oh-E5、及び各光検出部Oh-D1、Oh-D2、Oh-D3、Oh-D4、Oh-D5が、構造パターン検出部11として機能する。すなわち、イヤーパッド15側における各導光部形成位置Pにおける導光部Opの有無を電気信号により検出する部位として機能する。
イヤーパッド15側における導光部形成位置Pに導光部Opが形成される場合は、対応する発光部Oh-Eにより発せられた光によって上記導光部Opが点灯し、この点灯光が対応する光検出部Oh-Dによって検出される。すなわち、該対応する光検出部Oh-Dによる検出信号がHとなる。一方、導光部形成位置Pに導光部Opが形成されない場合には、点灯部が無いことより、対応する光検出部Oh-Dによる検出信号はLとなる。
このようにしてマイクロコンピュータ8は、各光検出部Oh-Dによる検出信号のH/Lの別を判定することで、イヤーパッド15側における導光部Opの有無で記憶されたID情報を取得することができる。
【0088】
なお、この図12では一例として、各導光部形成位置Pと対向する位置に対して発光部Oh-Eと光検出部Oh-Dの双方を設ける場合を例示したが、発光部Oh-Eについては、必ずしも各導光部形成位置P対応に1つずつ設ける必要はない。例えば、各導光部形成位置Pに対して共通となる発光部Oh-Eを1つのみ設けるといったこともできる。
【0089】
また、図12の例では、導光部Opとして例えば透明ガラスや透明樹脂などを設けるものとしたが、導光部Opとしては、例えば発光部Oh-Eからの光を反射する鏡面状の部材を用いることもできる。この場合の導光部Opとしては、図12に示したように光の入射方向に奥行きを持たせた構造とする必要はなく、例えば先の図8(a)における導電部Epのように薄板状の構造とし、これを所定位置に対して貼り付けてもよい。
なお、確認のために述べておくと、この場合における「導光」は、発光部Oh-Eにて発光された光を光検出部Oh-Dに対して導くという意で使用しているものである。
【0090】
また、図12の例では、導光部Opは形成位置Pの全面に表出させるものとしたが、例えば次の図13に示されるように、発光部Eh-Eからの光を入力する光入力部と、光検出部Oh-Dへの光を出力する光出力部とに分けて、それぞれを独立して表出させるようにすることもできる。
この場合の導光部Opの構造について、図13(b)では第1導光部Op1の構造を代表して示しているが、この場合の各導光部Opには2つの凸部が形成され、これら2つの凸部が接続面上に表出することで、それぞれ光入力部、光出力部として機能することになる。図13(a)(b)に示されるように、第1導光部Op1に形成されるのは第1光入力部Op1aと第1光出力部Op1bとする。同様に、図13(a)に示されているように第2導光部Op2に形成されるのは第2光入力部Op2aと第2光出力部Op2b、第3導光部Op3に形成されるのは第3光入力部Op3aと第3光出力部Op3b、第4導光部Op4に形成されるのは第4光入力部Op4aと第4光出力部Op4b、第5導光部Op5に形成されるのは第5光入力部Op5aと第5光出力部Op5bである。
なお、確認のために述べておくと、この場合のヘッドフォン1側において、各発光部Eh-Eは、イヤーパッド15が接続されたときに、対応する導光部Opの光入力部が形成されるべき位置と対向する位置に対して設けられる。同様に、光検出部Oh-Dとしては、対応する導光部Opの光出力部が形成されるべき位置と対向する位置に対して設けられることになる。
【0091】
ここで、実施例3としても、取得したID情報に応じてNCフィルタ5aのフィルタ特性を変更設定するための処理を行う。
図14のフローチャートは、実施例3において実行されるべきフィルタ特性の変更設定処理の内容を示しているが、この図14と先の図10とを比較してわかるように、この場合のマイクロコンピュータ8側の処理としては、先ず、ステップS101でパッドが接続されたとした場合に、ステップS301により各発光部Oh-EをONとするための処理を実行するようにされる。そして、続くステップS302においては、ID読み取り処理として、各光検出部Oh-Dによる検出信号のH/Lの判定を行った結果からID情報を取得する処理を実行し、さらに次のステップS303において各発光部Oh-EをOFFとするための処理を実行する。
なお、マイクロコンピュータ8側における以降の処理、及びDSP5側の処理については図10にて説明したものと同様となるので改めての説明は省略する(内容が同様となる処理については同一ステップ番号を付している)。
【0092】
[実施例4]

ここで、これまでの説明では、イヤーパッド15側に形成した物理的な構造パターンによってイヤーパッド15の種類ごとに異なる情報を記憶させる場合について説明したが、実施例4は、イヤーパッド15側に設けたメモリ装置によってイヤーパッド15ごとの情報を記憶させるようにするものである。
【0093】
図15は、実施例4の構成について説明するための図として、図15(a)はLchハウジング部1Lとイヤーパッド15の構造を斜視図により示し、図15(b)は、この場合のヘッドフォン1側の内部構成とイヤーパッド15側の内部構成とを示している。
なお、図15(b)において、ヘッドフォン1側の内部構成については、主にイヤーパッド15側に記憶される情報の読み取りに係る部分の構成を抽出して示している。
【0094】
先ず、図15(a)において、この場合のイヤーパッド15には、ヘッドフォン1側との接続面における所定位置に対し、電力入力端子Tp-E、グランド端子Tp-GND、データ通信端子Tp-Dが設けられる。これに対し、この場合のLchハウジング部1Lには、イヤーパッド15との接続面において、イヤーパッド15が接続されたときに上記電力入力端子Tp-Eと接するようにして設けられた電力供給端子Th-E、上記グランド端子Tp-GNDと接するようにして設けられたグランド端子Th-E、上記データ通信端子Tp-Dと接するようにして設けられたグランド端子Th-GNDが備えられる。
【0095】
図15(b)に示されるように、この場合のイヤーパッド15内部には、不揮発性メモリ16が備えられている。この不揮発性メモリ16に対して、上記電力入力端子Tp-E、上記グランド端子Tp-GND、上記データ通信端子Tp-Dがそれぞれ接続されている。
一方、ヘッドフォン1側に対しては、電源部12が設けられ、該電源部12に対して上述した電力供給端子Th-E、グランド端子Th-GNDが接続されている。さらに、マイクロコンピュータ8に対しては上記データ通信端子Th-Dが接続される。
このような構成により、Lchハウジング部1Lに対してイヤーパッド15が接続されたとき、不揮発性メモリ16に電源部12からの電力供給が行われ、また上記データ通信端子Th-D,Tp-Dを介し、不揮発性メモリ16からのデータ読み出しを行うことが可能とされている。
【0096】
実施例4では、このようにイヤーパッド15側に不揮発性メモリ16を設け、ヘッドフォン1側で該不揮発性メモリ16からのデータ読み出しが可能となるように構成した上で、イヤーパッド15側に対して、ID情報ではなくフィルタ特性情報を直接記憶させるものとしている。つまり、図15(b)に示されているように、不揮発性メモリ16に対しては、そのイヤーパッド15に対応して設定されるべきフィルタ特性を実現するためのフィルタ特性情報16aを格納するものである。
【0097】
ここで、これまでに説明した各実施例のようにID情報を記憶させる場合には、ヘッドフォン1において、ID情報とフィルタ特性情報との対応関係を表すID−フィルタ特性対応情報10aが必須となる。
このようにID情報を記憶させる場合において、ヘッドフォン1に接続されたイヤーパッド15が未対応のものであるとき、すなわちヘッドフォン1側に該接続されたイヤーパッド15に対応したID情報及びフィルタ特性情報が記憶されていないときには、適正なノイズキャンセリング効果を得ることができなくなってしまうか、或いはID情報とフィルタ特性情報の追加を行う必要がある。これに対し、実施例4として、上記のようにイヤーパッド15側に対して直接的にフィルタ特性情報を記憶させる手法を採る場合には、ヘッドフォン1側では読み出したフィルタ特性情報に基づき直接的にNCフィルタ5aのフィルタ特性を設定できるので、そのような問題の発生を効果的に防止することができる。
【0098】
確認のために、実施例4としてのヘッドフォン1の内部構成を次の図16に示しておく。
この図16に示されるように、この場合のヘッドフォン1においては、先の図4の場合にメモリ10内に格納されていたID−フィルタ特性対応情報10aが省略されたものとなる。
なお、この図16においても先の図15(b)に示した電源部12、電力供給端子Th-E、グランド端子Th-GND、及びデータ通信端子Th-Dが示されている。
【0099】
図17は、実施例4におけるフィルタ特性の変更設定処理について示したフローチャートである。
なお、この図17において、図中マイクロコンピュータとして示す処理動作は、図16に示すマイクロコンピュータ8が例えば自らが備えるROMなどに記憶されるプログラムに基づいて実行するものである。また、DSPとして示す処理動作は、図16に示されるDSP5がメモリ10に格納されたプログラムに基づき実行するものである。
また、この図においても、既に説明した処理と同様となる処理については同一のステップ番号を付している。
【0100】
図17において、この場合のマイクロコンピュータ8側の処理動作としては、先ずステップS101においてパッドが接続されるまで待機し、パッドが接続されたことに応じては、ステップS401において、フィルタ特性情報の読み取り処理を実行する。すなわち、イヤーパッド15側の不揮発性メモリ16に格納されたフィルタ特性情報16aを読み出して取得する。
そして、続くステップS402において、読み取ったフィルタ特性情報をDSP5に対して転送する。このステップS402の処理を実行すると、この図に示されるマイクロコンピュータ8側の処理動作は終了となる。
【0101】
DSP5側においては、ステップS501の処理により、マイクロコンピュータ8側からフィルタ特性情報が転送されるまで待機するようにされている。そして、フィルタ特性情報が転送されてきた場合は、ステップS502において、転送されたフィルタ特性情報に基づき、NCフィルタ5aの特性を設定する処理を実行する。
このステップS502の処理を実行すると、この図に示すDSP5側の処理動作は終了となる。
【0102】
[まとめ]

以上で説明してきたように、本実施の形態によれば、接続されるイヤーパッド15の種別に応じて、そのイヤーパッド15に対応して設定されるべきNCフィルタ5aのフィルタ特性を可変的に設定することができる。
これにより、ノイズキャンセリング機能を有する音響再生システムとして、使用するイヤーパッド15を自由に変更可能な優れたシステムを実現することができる。
【0103】
そして、本実施の形態によれば、使用するイヤーパッド15に応じたフィルタ特性の可変設定は、イヤーパッド15側に記憶させた情報に基づき自動的に行うことができる。このことで、例えばユーザ操作に基づき使用するイヤーパッド15の別を選択させる場合と比較して、ユーザの操作負担を軽減した利便性の高いシステムを実現することができる。また、これと共に、ユーザの勘違い等で実際に使用されるイヤーパッド15とは別のイヤーパッド15が選択されて、適正なノイズキャンセリング効果を得ることができなくなってしまうといった事態の発生を効果的に防止することができる。
【0104】
[変形例]

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した具体例に限定されるべきものではない。
これまでの説明では、NCフィルタ5aとしてのフィルタ処理を行う信号処理部がヘッドフォン装置に対して設けられる場合に対応して、イヤーパッド15に記憶される情報の読み取り、及びフィルタ特性の変更設定を行うための構成がヘッドフォン装置に対して設けられる場合を例示した。
しかしながら、本発明としては、フィルタ処理を行う信号処理部がヘッドフォン装置ではなく、ヘッドフォン装置に対するオーディオ信号の供給を行うオーディオプレイヤなどの信号処理装置側に備えられる場合にも好適に適用することができる。
以下、このように信号処理部が備えられた信号処理装置とヘッドフォン装置とを備えて構成される音響再生システムの構成を、これまでで説明した各実施例ごとの対応で、各変形例として説明する。なお、各変形例において、イヤーパッド15の構成は、各実施例で説明したものと同様とすればよいことから改めての図示による説明は省略する。
【0105】
図18は、実施例1の手法を採る場合に対応した、実施例1の変形例としての音響再生システム構成について示した図である。以下の説明において、既に説明した部分と同様となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
先ず、この場合、音響再生システムとしては、オーディオデータの再生を行うオーディオプレイヤ20と、ヘッドフォン30とを備えて構成されるものとする。
オーディオプレイヤ20には、各実施例として説明したヘッドフォン1側に備えられていたノイズキャンセリングのための構成、すなわちマイクアンプ2、A/D変換器3、DSP5、D/A変換器6、パワーアンプ7、メモリ10が備えられている。また、上記マイクアンプ2に対して供給されるべき収音信号を入力するためのマイク入力端子TMin、及び上記パワーアンプ2から出力されるオーディオ信号を出力するためのオーディオ出力端子TAoutが備えられる。
一方で、ヘッドフォン30には、マイクロフォンMIC、ドライバDRVが備えられると共に、上記マイクロフォンMICと接続され収音信号をオーディオプレイヤ20側に供給するためのマイク出力端子TMout、及び上記ドライバDRVと接続された上で、オーディオプレイヤ20側の上記オーディオ出力端子TAoutからのオーディオ信号の供給を受けるオーディオ入力端子Tinが設けられている。
【0106】
また、ヘッドフォン30には、パッド接続有無検出部9が設けられる。この場合、該パッド接続有無検出部9によるON/OFF信号は、オーディオプレイヤ20側に供給することになる。このため、ヘッドフォン30には、上記パッド接続有無検出部9と接続された端子Th−cが設けられている。
また、この場合のヘッドフォン30には、実施例1に対応する構成として、電極Eha、電極Ehbが設けられている。ここでは電極Ehの個数(つまり導電部Epの個数)については限定せず、1組のみを代表的に示している。この場合、電極Ehaと接続されるラインは中継端子Th-Maと接続され、また電極Ehbと接続されるラインは中継端子Th-Mbと接続される。
【0107】
オーディオプレイヤ20側の構成について具体的に見ていく。
オーディオプレイヤ20には、上述したノイズキャンセリングのための構成及び各端子TMin,TAoutに加え、図示するようにストレージ部21、再生処理部22、外部通信インタフェース23、表示部24、システムコントローラ25が備えられる。
上述したマイク入力端子TMinを介して入力された収音信号はマイクアンプ2→A/D変換器3を介してDSP5に供給される。この場合もDSP5は、図中NCフィルタ5aとして、このように供給された収音信号(収音データ)についてノイズキャンセリングのためのフィルタ処理を行う。またDSP5は、後述するようにして再生されるオーディオデータを入力し、イコライザ5bとしての機能動作により、該オーディオデータに対してイコライジング処理を行う。またDSP5は、図中の加算器5cとしての機能動作により、該イコライジング処理を施したオーディオデータと上記ノイズキャンセリングのためのフィルタ処理を施した収音データとを加算し、その結果得られる加算データをD/A変換器6に供給する。加算データは、該D/A変換器6→パワーアンプ7を介して上述のオーディオ出力端子TAoutに供給される。
【0108】
ストレージ部21は、オーディオデータを始めとした各種データの保存に用いられる。
具体的な構成としては、例えばフラッシュメモリなどの固体メモリに対するデータの書き込み(記録)/読み出しを行うように構成されても良いし、例えばHDD(Hard Disk Drive)により構成されてもよい。
また内蔵の記録媒体ではなく、可搬性を有する記録媒体、例えば固体メモリを内蔵したメモリカード、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光ディスク、光磁気ディスク、ホログラムメモリなどの記録媒体に対応するドライブ装置などとして構成することもできる。
もちろん、固体メモリやHDD等の内蔵タイプのメモリと、可搬性記録媒体に対するドライブ装置の両方が搭載されてもよい。
このストレージ部21は、システムコントローラ25の制御に基づいてオーディオデータその他の各種データについての書き込み/読み出しを行う。
【0109】
ここで、上記ストレージ部21においては、オーディオデータが所定の音声圧縮符号化方式により圧縮符号化された状態で記憶されているとする。ストレージ部21で読み出された圧縮オーディオデータは、再生処理部22に供給される。再生処理部22はシステムコントローラ25の制御に基づき、供給される圧縮オーディオデータについての伸張処理などの所定の再生処理(デコード処理)を施す。
再生処理部22で再生処理されたオーディオデータは、DSP5(イコライザ5b)に供給される。
【0110】
システムコントローラ25は、例えばROM、RAM、CPUなどを備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM、又はメモリ10等の記憶手段に記憶されるプログラムに基づく各種の制御処理や演算を行うことで、オーディオプレイヤ20の全体制御を行う。
例えば、ストレージ部21に対するデータの書き込み/読み出し制御を行う。また、ストレージ部21、再生処理部22を制御してオーディオデータの再生開始/停止制御なども行う。
【0111】
また、システムコントローラ25は、ヘッドフォン30に備えられるパッド接続有無検出部9のON/OFF信号に基づき、ヘッドフォン30にイヤーパッド15が接続されたか否かを判別(判定)する処理も行う。
図示するようにして、システムコントローラ25に対しては、端子Ts−cが接続されている。該端子Ts−cは、オーディオプレイヤ20とヘッドフォン30とが接続されたときに、上述したヘッドフォン30側の端子Th−cと接するようにして設けられている。これによりシステムコントローラ25には、ヘッドフォン30が備えるパッド接続有無検出部9からのON/OFF信号が供給されるようになっている。
【0112】
また、システムコントローラ25に対しては、外部通信インタフェース23が接続される。この外部通信インタフェース23は、例えばUSB(Universal Serial Bus)方式など所要のデータ通信方式に従って外部機器との間でデータ通信を行うように構成された通信インタフェース部であり、システムコントローラ25の指示に基づき図示する端子TI/Fを介して接続された外部機器(例えばパーソナルコンピュータなどの情報処理装置)との間でデータ通信を行う。
システムコントローラ25は、当該外部通信インタフェース23を介して得られた外部機器からの転送データを、ストレージ部21やメモリ10に対して記録させる。これにより、外部の例えばパーソナルコンピュータなどに格納されたオーディオデータをストレージ部21などに記録したり、或いはパーソナルコンピュータがネットワーク上からダウンロードした、オーディオプレイヤ20についてのアップロードプログラムなどのデータをメモリ10などに記録することが可能とされている。
【0113】
また、システムコントローラ25に対しては、表示部24が接続される。表示部24は例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示デバイスとされ、システムコントローラ25からの指示に応じて所要の情報表示を行う。
【0114】
また、オーディオプレイヤ20には、ヘッドフォン30と接続されたときに、上述した中継端子Th-Maと接するようにして設けられた中継端子Ts-Maと、中継端子Th-Mbと接するようにして設けられた中継端子Ts-Mbとが備えられている。
図示するように、中継端子Ts-Mbはアースに接地され、中継端子Th-Maは、所定レベルによるバイアス電圧が与えられたラインを介してシステムコントローラ25と接続されている。
【0115】
ここで、この場合の音響再生システムにおいては、図中の一点鎖線により囲った部分(電極Eha,Ehb、中継端子Th-Ma,Th-Mb、中継端子Ts-Ma,Ts-Mb、アースライン、及び中継端子Th-Maにバイアス電圧を与える回路部)が構造パターン検出部として機能するものとなる。つまりこの場合は、構造パターン検出部がヘッドフォン30とオーディオプレイヤ20とに跨って形成されることになる。
【0116】
なお、この変形例において、イヤーパッド15に記憶されたID情報の読み取りを含めたフィルタ特性の変更設定処理は、システムコントローラ25が行うことになるが、その処理内容としては先の図10にて説明したものと同様とされればよい。また、DSP5側の処理としても図10で説明したものと同様でよい。
【0117】
或いは、このような変形例とする場合には、オーディオプレイヤ20側に設けられた表示部24を利用した情報表示を行うことが可能であるため、接続されたイヤーパッド15が未対応品である場合に、その旨の通知を行ったり、新たなID情報・フィルタ特性情報のダウンロードを促すようにしてもよい。
【0118】
図19は、このような未対応通知を行う場合に対応して実行されるべき処理動作について示したフローチャートである。この図に示される処理動作は、図18に示されるシステムコントローラ25が例えば上述したROM等に格納されるプログラムに基づいて実行するものである。
なお、この図ではシステムコントローラ25側の処理のみを示すが、DSP5側の処理内容は図10で説明したものと同様となるので図示は省略した。
また、この図においても既に説明した処理と同様の内容となる処理については同一のステップ番号を付している。
【0119】
先ず、システムコントローラ25は、ステップS101でパッドが接続されるまで待機する処理を実行する。確認のために述べておくと、この場合、イヤーパッド15の接続の有無はヘッドフォン30に設けられたパッド接続有無検出部9からの信号に基づき判定するものである。
そして、上記ステップS101でパッドが接続されたとした場合は、ステップS102においてIDの読み取り処理を実行した後、ステップS601において、対応情報に合致するIDがあるか否かについて判別処理を行う。つまり、メモリ10内に格納されたID−フィルタ特性対応情報10aにおいて、上記ステップS102で読み取ったIDと合致するIDが存在するか否かを判別する。
このステップS601において、対応情報に合致するIDがないとして否定結果が得られた場合は、ステップS602に進んで未対応通知処理を実行する。すなわち、表示部24に、ヘッドフォン30に接続されたイヤーパッド15が未対応である旨を表す情報表示を実行させる。或いは、このように未対応である旨を表す情報と共に、外部の例えばパーソナルコンピュータなどのネットワーク接続が可能な情報処理装置に接続して、ID−フィルタ特性対応情報10aに追加すべきID情報・フィルタ特性情報のダウンロードを指示するための情報を表示させる。一方、上記ステップS601において、対応情報に合致するIDが存在するとして肯定結果が得られた場合は、ステップS603に進んでIDをDSP5に対して指示する。
上記ステップS602、又は上記ステップS603の処理を実行すると、この図に示すシステムコントローラ25の処理動作は終了となる。
【0120】
また、図20は、実施例2の手法を採る場合に対応した変形例のシステム構成について示している。
先の図18と比較して分かるように、この場合はヘッドフォン30側に設けられていた電極Eha,Ehbに代えて、メカスイッチMSWが設けられる点が異なる。具体的に、メカスイッチMSWの一方の端子が中継端子Th-Maと接続され、他方の端子が中継端子Th-Mbと接続されている。
この場合としても、図中の一点鎖線で囲った部分(メカスイッチMSW、中継端子Th-Ma,Th-Mb、中継端子Ts-Ma,Ts-Mb、アースライン、及び中継端子Th-Maにバイアス電圧を与える回路部)が構造パターン検出部として機能する。
【0121】
なお、この実施例2に対応した変形例の場合も、図10に示したものと同様の処理によってID情報に応じたフィルタ特性の変更設定を行うものとすればよい。
或いは、図19に示した処理動作によって未対応通知が可能となるようにすることもできる。
【0122】
また、図21は、実施例3の手法を採る場合に対応した変形例のシステム構成について示している。
この場合は、先の図18の構成と比較して、ヘッドフォン30における中継端子Th-Maに対して発光部Oh-Eが接続され、中継端子Th-Mbには光検出部Oh-Dが接続される点が異なる。また、オーディオプレイヤ20側において、中継端子Ts-Maのラインに対するバイアス電圧が省略され、中継端子Ts-Mbがシステムコントローラ25に対して接続される点が異なる。
図中の一点鎖線で囲うように、この場合は発光部Oh-E、光検出部Oh-Dが構造パターン検出部として機能することになる。
【0123】
なお、この実施例3に対応した変形例の場合は、先の図14に示したものと同様の処理によってID情報に応じたフィルタ特性の変更設定を行うものとすればよい。或いは、図14に示した処理動作に対し図19に示したステップS601、S602の処理を組み込むことで、未対応通知が可能となるようにすることもできる。
【0124】
また、図22は、実施例4の手法を採る場合に対応した変形例のシステム構成について示している。
先ず、この場合は、オーディオプレイヤ20側において、イヤーパッド15に備えられる不揮発性メモリ16に対して電力供給を行うための電源部26が設けられる。また、この場合、メモリ10内のID−フィルタ特性対応情報10aは省略されるものとなる。
【0125】
その上で、この場合の音響再生システムでは、先の図18、図20、図21に示したような構造パターン検出部は設けられず、オーディオプレイヤ20側には上記電源部26と接続された電力供給端子Ts-E、グランド端子Ts-GND、及びシステムコントローラ25と接続されたデータ通信端子Ts-Dが設けられる。
また、ヘッドフォン30側には、上記オーディオプレイヤ20と接続されたときに上記電力供給端子Ts-Eと接するようにして設けられた中継端子ThM-E、及び上記グランド端子Ts-GNDと接するようにして設けられた中継端子ThM-GND、及び上記データ通信端子Ts-Dと接するようにして設けられた中継端子ThM-Dが備えられる。また、ヘッドフォン30には、実施例4としてのイヤーパッド15が接続されたときに、該イヤーパッド15に形成された電力入力端子Tp-E、グランド端子Tp-GND、データ通信端子Tp-Dとそれぞれ接するようにされた、先の図15(a)で説明したものと同様の電力供給端子Th-E、グランド端子Th-GND、及びデータ通信端子Th-Dが設けられる。
【0126】
このような構成により、オーディオプレイヤ20と接続されたヘッドフォン30に対してイヤーパッド15が接続されたときに、システムコントローラ25によって上記イヤーパッド15内の不揮発性メモリ16に格納されるフィルタ特性情報16aを読み出すことができるようにされている。
【0127】
なお、この変形例4に対応する変形例の構成とした場合は、システムコントローラ25、DSP5によって先の図17にて説明したものと同様の処理動作を実行するものとすればよい。
確認のために述べておくと、この場合はイヤーパッド15側にフィルタ特性情報16aが格納されているので、未対応通知のための処理は特に不要である。
【0128】
なお、上記による説明においては、イヤーパッド15が取り外されたときの動作については特に言及しなかったが、イヤーパッド15が取り外されたことが検出された場合、オーディオデータを再生中であったときには、オーディオプレイヤ20側においてその再生を一時停止するようにすることもできる。
【0129】
また、イヤーパッド15が接続された際には、フィルタ特性の変更設定が行われるので、その間は再生を一時停止させることもできる。つまりその場合、システムコントローラ25は、パッド接続に応じてストレージ部21・再生処理部22を制御して再生を一時停止させた上で、各実施例において説明したフィルタ特性の変更設定処理を実行する。そして、DSP5からのフィルタ特性設定完了の通知に応じて、再生を再開させるようにする。
【0130】
また、これまでの全体説明を通して、情報読み取りのための構成は、Lchハウジング部1Lの方に備える場合を例示したが、逆にRchハウジング部1R側に情報読み取りのための構成を備えることもできる。
或いは、Lch側とRch側の双方に情報読み取りのための構成を備えることもできる。双方に備える場合、イヤーパッド15側で記憶できる情報量はさらに多くすることができる。
【0131】
また、実施例1〜3(及びその変形例)において、形成位置Pについては、最大で5箇所を設定する場合を例示したが、形成位置Pの設定数については特に限定されるものではない。
【0132】
ここで、形成位置Pの設定数を増やせば、より多くのビット数による情報を記憶させることができる。このように形成位置Pを増やした場合には、ID情報として、イヤーパッド15の種類(機種)の別を表す情報のみならず、例えばイヤーパッド15の個体ごとの特性バラツキを識別するための情報も含ませることもできる。具体的な例としては、例えば下位数ビットにはイヤーパッド15の機種の別を表す情報を、上位数ビットにはその機種に属するイヤーパッド15の個体ごとの特性の別を表す情報を格納するといったものである。
ここで、イヤーパッド15の個体ごとの特性の具体例としては、音漏れ特性、外部からの遮音特性、上述した周波数ゲイン特性などを挙げることができる。例えば、これらの特性について、大まかに数タイプ程度の区分を定義しておく。工場出荷前における所要のタイミングで、イヤーパッド15のこれらの特性についての測定を行っておき、イヤーパッド15の個体ごとに、各特性がどの区分に属するか分別しておく。この場合の各イヤーパッド15には、その機種の別の情報と共に、このような測定結果に基づく各特性の各区分の情報も含めた情報を、ID情報として物理的構造パターンにより記憶させる。
ヘッドフォン1側、又はオーディオプレイヤ20側では、ID−フィルタ特性対応情報10aとして、上記のように機種の別と共に各特性ごとの区分も含めて識別するためのID情報と、それらのID情報ごとに対応して設定されるべきフィルタ特性の情報とを対応づけた情報を格納しておく。
なお、この場合も取得したID情報に基づきNCフィルタ5aのフィルタ特性を変更設定する処理については、実施例1〜3で説明したものと同様とすればよい。
このようにすることで、同一機種のイヤーパッド15について、さらにその個体ごとのバラツキをも考慮したフィルタ特性の変更設定を行うことができる。
【0133】
或いは、ID情報としては、イヤーパッド15の個体ごとの周波数特性(周波数−振幅特性)の別も含めた情報とすることもできる。
このとき、周波数特性の別の情報に応じては、ヘッドフォン1又はオーディオプレイヤ20側でゲイン調整を行うようにしてもよい。このようなゲイン調整(補正)については、DSP5におけるデジタルゲイン調整、或いはアナログ信号に対するアナログゲイン調整の何れによっても実現できる。
【0134】
また、実施例4についても、同様にフィルタ特性情報16aのみでなく、これら各種の特性の別に関する情報を格納しておくようにすることもできる。或いは、特性の別に応じて設定されるべき補正値そのものを直接的に格納することもできる。
【0135】
また、実施例4においては、不揮発性メモリ16に対してフィルタ特性情報16aを記憶させるものとしたが、他の実施例と同様に、ID情報を記憶させることも勿論可能である。
【0136】
また、実施例1〜3においては、イヤーパッド15とヘッドフォン1(又は30)とで位置決め部Xを設ける場合を例示したが、各形成位置Pの配置について工夫することで、位置決め部Xは適宜不要とすることができる。例えば実施例1〜3において、各形成位置Pをそれぞれ独立したリング状で形成すれば、位置決め部Xは特に不要とすることができる。
また、実施例4においても同様に、例えば電力入力端子Tp-E、グランド端子Tp-GND、データ通信端子Tp-Dをそれぞれ独立したリング状で形成すれば、位置決め部Xは不要とすることができる。
【0137】
また、これまでの説明では、ノイズキャンセリングのための信号特性を与えるフィルタ(NCフィルタ)がデジタルフィルタで構成される場合を例示したが、NCフィルタはアナログフィルタで構成することもできる。
【0138】
また、これまでの説明では、イヤーパッド側に記憶された情報に基づいてノイズキャンセリングのためのフィルタ特性を変更するものとしたが、イヤーパッド側記憶情報に基づいてイコライザ5bにおけるイコライジング特性(フィルタ特性)を変更するなどといったこともできる。或いは、イコライジング特性以外にも、例えば残響効果など各種の音響効果を与えるフィルタの特性を可変設定することもできる。
このようにすることで、ノイズキャンセリングシステム以外の音響再生システムにおいても、使用するイヤーパッドに応じた最適な各種の音響効果を与えることができるシステムを実現することができる。
【0139】
また、これまでの説明では、本発明の信号処理装置がオーディオプレイヤとして構成される場合について例示したが、本発明の信号処理装置としては、例えばノイズキャンセリング機能を備えた携帯電話機など、他の装置形態として実施することもできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】フィードバック方式によるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムについてのモデル例を示す図である。
【図2】図1に示したノイズキャンセリングシステムについての特性を示すボード線図である。
【図3】フィードフォワード方式によるヘッドフォン装置のノイズキャンセリングシステムについてのモデル例を示す図である。
【図4】実施例1〜3のヘッドフォン装置の内部構成を示したブロック図である。
【図5】実施の形態のヘッドフォン装置が対応する接触部(イヤーパッド)の種類について説明するための図である。
【図6】実施の形態のヘッドフォン装置が有するドライバ(スピーカ)とマイクロフォンの配置関係について説明するための図である。
【図7】ID−フィルタ特性対応情報のデータ構造について示した図である。
【図8】実施例1としての構成について説明するための図である。
【図9】実施例1の他の例について説明するための図である。
【図10】実施例1としての動作を実現するために実行されるべき処理動作について示したフローチャートである。
【図11】実施例2の構成について説明するための図である。
【図12】実施例3の構成について説明するための図である。
【図13】実施例3の他の例について説明するための図である。
【図14】実施例3としての動作を実現するために実行されるべき処理動作について示したフローチャートである。
【図15】実施例4の構成について説明するための図である。
【図16】実施例4の場合のヘッドフォン装置の内部構成について示した図である。
【図17】実施例4としての動作を実現するために実行されるべき処理動作について示したフローチャートである。
【図18】実施例1の変形例の構成について示した図である。
【図19】未対応通知を実現するための処理動作について示したフローチャートである。
【図20】実施例2の変形例の構成について示した図である。
【図21】実施例3の変形例の構成について示した図である。
【図22】実施例4の変形例の構成について示した図である。
【符号の説明】
【0141】
1,30 ヘッドフォン、1L Lchハウジング部、1R Rchハウジング部、2 マイクアンプ、3,4 A/D変換器、5 DSP、5a NCフィルタ、5b イコライザ、5c 加算器、6 D/A変換器、7 パワーアンプ、8 マイクロコンピュータ、9 パッド接続有無検出部、10 メモリ、10a ID−フィルタ特性対応情報、11 構造パターン検出部、12,26 電源部、15 イヤーパッド、Eh1a〜Eh5a, Eh1b〜Eh5b 電極、P1〜P5 第1〜第5導電部形成位置、Ep1〜Ep5 第1〜第5導電部、MSW1〜MSW5 メカスイッチ、P11〜P15 第1〜第5凸部形成位置、J1〜J5 第1〜第5凸部、Oh-E1〜Oh-E5 第1〜第5発光部、Oh-D1〜Oh-D5 第1〜第5光検出部、P21〜P25 第1〜第5導光部形成位置、Op1〜Op5 第1〜第5導光部、Th-E 電力供給端子、Th-GND,Tp-GND グランド端子、Th-D,Tp-D データ通信端子、Xh1〜Xh3 位置決め凸部、Xp1〜Xp3 位置決め凹部、20 オーディオプレイヤ、21 ストレージ部、22 再生処理部、23 外部通信インタフェース、24 表示部、25 システムコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の耳部分と接する接触部を着脱可能に構成されたヘッドフォン装置であって、
振動板を備え音声出力を行う音声出力手段と、
上記音声出力手段に対して供給される信号に所要の信号特性を与えるようにして信号処理を行う信号処理手段と、
上記接触部に記憶され、上記接触部の所定の種別ごとに異なる情報内容となるようにされた接触部側記憶情報を読み取る情報読取手段と、
上記情報読取手段が読み取った上記接触部側記憶情報に基づき上記信号処理手段の信号処理特性が設定されるように制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とするヘッドフォン装置。
【請求項2】
上記接触部側記憶情報は、上記接触部の種別を識別するための識別情報とされ、
上記接触部に記憶される上記識別情報と、該識別情報により特定される接触部に対応して上記信号処理手段に設定されるべきとして予め定められた信号処理特性との対応関係を表す対応関係情報が記憶された記憶手段をさらに備えると共に、
上記制御手段は、
上記対応関係情報に基づき、上記情報読取手段が読み取った上記識別情報に対応する信号処理特性が上記信号処理手段に設定されるように制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドフォン装置。
【請求項3】
上記識別情報は、上記接触部における上記ヘッドフォン装置側との接続部分に形成された物理的な構造パターンによって記憶されており、
上記物理的な構造パターンに応じた電気信号が検出されるようにして構成された構造パターン検出部をさらに備えると共に、
上記情報読取手段は、
上記構造パターン検出部により検出した電気信号に基づいて上記識別情報を取得する、
ことを特徴とする請求項2に記載のヘッドフォン装置。
【請求項4】
上記識別情報は、上記接触部における上記接続部分の所定位置における導電部の有無としての物理的構造パターンにより記憶されており、
上記構造パターン検出部は、
上記接触部と接続されたときに双方が上記所定位置と接するようにして設けられた2つの電極を備えることで、上記構造パターンに応じた電気信号が検出されるように構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のヘッドフォン装置。
【請求項5】
上記識別情報は、上記接触部における上記接続部分の所定位置における凸部又は凹部の有無としての物理的構造パターンにより記憶されており、
上記構造パターン検出部は、
上記接触部と接続されたときに上記所定位置と対向する位置に対して設けられて上記凸部又は上記凹部に応じてON/OFFするようにされたスイッチを備えることで、上記構造パターンに応じた電気信号が検出されるように構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のヘッドフォン装置。
【請求項6】
上記識別情報は、上記接触部における上記接続部分の所定位置における導光材の有無としての物理的構造パターンにより記憶されており、
上記構造パターン検出部は、
上記接触部と接続されたときに上記所定位置と対向するようにして設けられた発光素子と受光素子とを備えることで、上記構造パターンに応じた電気信号が検出されるように構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のヘッドフォン装置。
【請求項7】
上記接触部はメモリ装置を備え、該メモリ装置に上記接触部側記憶情報を記憶しており、
上記情報読取手段は、
上記接触部と接続されたとき、上記メモリ装置に記憶された上記接触部側記憶情報を読み取る、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドフォン装置。
【請求項8】
上記接触部は、上記接触部側記憶情報として、上記接触部の所定の種別に応じて上記信号処理手段に設定されるべきとして予め定められたフィルタ特性情報を上記メモリ装置に記憶しており、
上記制御手段は、
上記情報読取手段が読み取った上記接触部側記憶情報としての上記フィルタ特性情報に基づき上記信号処理手段の信号処理特性が設定されるように制御を行う、
ことを特徴とする請求項7に記載のヘッドフォン装置。
【請求項9】
さらにマイクロフォンを備え、
上記信号処理手段は、上記マイクロフォンから供給される信号にノイズキャンセリングのための信号特性を与えるようにして信号処理を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドフォン装置。
【請求項10】
使用者の耳部分と接する接触部を着脱可能に構成されると共に、振動板を備え音声出力を行う音声出力手段と、上記音声出力手段に対して供給される信号に所要の信号特性を与えるようにして信号処理を行う信号処理手段とを備えたヘッドフォン装置における信号処理方法であって、
上記接触部に記憶され、上記接触部の所定の種別ごとに異なる情報内容となるようにされた接触部側記憶情報を読み取る情報読取ステップと、
上記情報読取ステップにより読み取った上記接触部側記憶情報に基づき上記信号処理手段の信号処理特性が設定されるように制御を行う制御ステップと、
を備えることを特徴とする信号処理方法。
【請求項11】
使用者の耳部分と接する接触部を着脱可能に構成されたヘッドフォン装置と、上記ヘッドフォン装置が音声出力を行うにあって入力する信号を生成する信号処理装置とを備えて構成される音響再生システムであって、
上記信号処理装置に備えられ、上記ヘッドフォン装置に対して供給される信号に所要の信号特性を与えるようにして信号処理を行う信号処理手段と、
上記接触部に記憶され、上記接触部の所定の種別ごとに異なる情報内容となるようにされた接触部側記憶情報を読み取る情報読取手段と、
上記信号処理装置に備えられ、上記情報読取手段が読み取った上記接触部側記憶情報に基づき上記信号処理手段の信号処理特性が設定されるように制御を行う制御手段とを備える、
ことを特徴とする音響再生システム。
【請求項12】
使用者の耳部分と接する接触部を着脱可能に構成されたヘッドフォン装置と、上記ヘッドフォン装置に対して供給される信号に所要の信号特性を与えるようにして信号処理を行う信号処理手段を備えた信号処理装置とを備えて構成される音響再生システムにおける信号処理方法であって、
上記接触部に記憶され、上記接触部の所定の種別ごとに異なる情報内容となるようにされた接触部側記憶情報を読み取る情報読取ステップと、
上記情報読取ステップにより読み取った上記接触部側記憶情報に基づき上記信号処理手段の信号処理特性が設定されるように制御を行う制御ステップと、
を備えることを特徴とする信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−212772(P2009−212772A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53210(P2008−53210)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】