ヘッドホン装置、端末装置、情報送信方法、プログラム、ヘッドホンシステム
【課題】ヘッドホン装置のノイズキャンセル処理においてパラメータ制御の処理負担を軽減する。
【解決手段】
ヘッドホン装置と通信可能な端末装置において、外来ノイズの解析や位置情報に基づいて、ノイズキャンセル処理に適したパラメータ判定を行い、ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成する。これをヘッドホン装置側に送信する。ヘッドホン装置では指示情報に応じてノイズキャンセル処理の処理パラメータ設定を行う。これによりヘッドホン装置側でのノイズキャンセル処理の最適化パラメータの判定処理を不要とする。
【解決手段】
ヘッドホン装置と通信可能な端末装置において、外来ノイズの解析や位置情報に基づいて、ノイズキャンセル処理に適したパラメータ判定を行い、ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成する。これをヘッドホン装置側に送信する。ヘッドホン装置では指示情報に応じてノイズキャンセル処理の処理パラメータ設定を行う。これによりヘッドホン装置側でのノイズキャンセル処理の最適化パラメータの判定処理を不要とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドホン装置と端末装置、及びこれらを有するヘッドホンシステム、さらには端末装置の情報送信方法と端末装置における演算処理装置の処理を実行させるプログラムに関する。特にはヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理のパラメータ設定に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−122729号公報
【特許文献2】特開2008−116782号公報
【特許文献3】特開2008−250270号公報
【背景技術】
【0003】
上記特許文献1,2,3にも開示されているように、携帯型のオーディオプレーヤ等に用いるヘッドホンにおいて外部環境のノイズ(騒音)を低減して、リスナに対して、外部ノイズを低減した良好な再生音場空間を提供するようにしたノイズキャンセルシステムが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のノイズキャンセルシステムの一例は、アクティブなノイズ低減を行なうアクティブ方式のノイズ低減システムで、基本的には、次のような構成を備える。
すなわち、音響−電気変換手段としてのマイクロホンで外部ノイズ(騒音)を収音し、その収音したノイズの音声信号から、ノイズとは音響的に逆相のノイズキャンセル信号を生成する。このノイズキャンセル信号を、音楽等の本来の聴取目的たる音声信号と合成してスピーカで音響再生する。これにより外来ノイズが音響的に相殺されるようにしてノイズを低減するものである。
【0005】
ここで、ノイズキャンセル信号を生成するためにはデジタルフィルタ処理が用いられるが、そのフィルタ特性は周囲環境に応じて変化させることで、周囲のノイズ状況に応じたノイズキャンセルの最適化を図ることができる。
【0006】
ところがこのためには、周囲のノイズ状況を解析し、その特性に適したフィルタ特性(例えば係数パラメータ)を求めなければならず、処理負担の大きな演算を要する。このため、ヘッドホン装置に高い演算能力が要求されたり、消費電力の増大により、通常電池駆動されるヘッドホン装置の稼働時間が減少してしまうという問題が生ずる。
【0007】
そこで本開示では、ヘッドホン装置の処理負担を軽減しつつ、ノイズキャンセル処理の最適化を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のヘッドホン装置は、音声出力を行うドライバユニットと、少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、上記マイクロホンによる収音音声信号についてフィルタ処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、該ノイズキャンセル信号と入力音声信号を合成して出力音声信号を得、該出力音声信号を上記ドライバユニットに供給するノイズキャンセル処理部と、外部の端末装置との間で通信を行う通信部と、上記端末装置から送信され、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う制御部とを備える。
【0009】
本開示の端末装置は、少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、外部の上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、上記マイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行い、ノイズ解析結果から上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部とを備える。
また本開示の端末装置の情報送信方法は、 少なくとも外来音を収音するマイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行い、上記ノイズ解析の結果から外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する。
本開示のプログラムは、少なくとも外来音を収音するマイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行う処理と、ノイズ解析結果から外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成する処理と、上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する処理とを端末装置における演算処理装置に実行させるプログラムである。
【0010】
また本開示の端末装置は、現在位置情報を検出する位置検出部と、外部の上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、上記位置検出部で検出された現在位置情報に基づいて、上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部とを備える。
また本開示の端末装置の情報送信方法は、現在位置情報を検出する位置検出部から現在位置情報を取得し、上記現在位置情報に基づいて、外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する。
本開示のプログラムは、現在位置情報を検出する位置検出部から現在位置情報を取得する処理と、上記現在位置情報に基づいて、外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成する処理と、上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する処理とを、端末装置における演算処理装置に実行させるプログラムである。
【0011】
本開示のヘッドホンシステムは、上記のヘッドホン装置と、上記の端末装置を有して成る。
【0012】
これらの本開示の技術は、ヘッドホン装置の稼動時間を改善するために、ノイズ解析や位置情報に基づくノイズキャンセル処理用のパラメータ判定処理を端末装置側で実行するものである。
即ち端末装置側で、ノイズ解析結果や現在位置情報に基づいて、ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報をヘッドホン装置へ送信する。ヘッドホン装置では、受信した指示情報に基づいて、ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う。これによってヘッドホン装置側の処理リソースの負担を減らす。
【発明の効果】
【0013】
本開示によればヘッドホン装置側の処理リソース負担を軽減でき、これによってノイズキャンセル処理の自動的な最適化を行う場合に処理能力の高い演算機能が要求されることを解消でき、また消費電力の削減という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の実施の形態のヘッドホンシステムの説明図である。
【図2】第1の実施の形態のヘッドホン装置のブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の携帯端末のブロック図である。
【図4】第1の実施の形態のパラメータ設定処理のフローチャートである。
【図5】実施の形態のノイズ解析及び最適NC判定処理の説明図である。
【図6】実施の形態のノイズ解析及び最適NC判定処理のフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態の変形例のヘッドホン装置のブロック図である。
【図8】第1の実施の形態の変形例のヘッドホン装置のブロック図である。
【図9】第2の実施の形態のパラメータ設定処理のフローチャートである。
【図10】第3の実施の形態のヘッドホン装置のブロック図である。
【図11】第3の実施の形態の携帯端末のブロック図である。
【図12】第4の実施の形態の携帯端末のブロック図である。
【図13】第4の実施の形態のパラメータ設定処理のフローチャートである。
【図14】第4の実施の形態のルート設定の説明図である。
【図15】第5の実施の形態の携帯端末の構成例のブロック図である。
【図16】第5の実施の形態の携帯端末の構成例のブロック図である。
【図17】第5の実施の形態の携帯端末の構成例のブロック図である。
【図18】実施の形態のアップロードシステムの説明図である。
【図19】フィードバック方式のノイズキャンセルシステムの説明図である。
【図20】フィードバック方式の伝達関数の説明図である。
【図21】フィードフォワード方式のノイズキャンセルシステムの説明図である。
【図22】フィードフォワード方式の伝達関数の説明図である。
【図23】複合方式のノイズキャンセルシステムの説明図である。
【図24】フィルタ係数最適化を行うノイズキャンセルシステムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を次の順序で説明する。
<1.ノイズキャンセリング技術の説明>
[1−1 フィードバック方式]
[1−2 フィードフォワード方式]
[1−3 複合方式]
[1−4 フィルタ係数最適化]
<2.実施の形態のヘッドホンシステム>
<3.第1の実施の形態(ノイズ解析)>
<4.第2の実施の形態(ノイズ解析)>
<5.第3の実施の形態(ストリーム送信)>
<6.第4の実施の形態(位置検出)>
<7.第5の実施の形態(各種複合検出例)>
<8.アップロードシステム>
<9.プログラム>
<10.変形例>
なお、実施の形態の記載及び請求項でいう「ヘッドホン」とは、ユーザが耳に装着して聴音する装置の総称とし、頭部に装着するヘッドセット型のほか、いわゆる「イヤホン」と呼ばれる耳介或いは耳孔に装着するようなタイプも含むものとする。
また以下では説明上、「ノイズキャンセル」については「NC」と略記することもある。
【0016】
<1.ノイズキャンセリング技術の説明>
まず、実施の形態の説明に先立って、図19〜図24を参照してヘッドホン装置に適用されるノイズキャンセル(NC)システムについて説明する。
アクティブなノイズ低減を行なうシステムとしては、フィードバック方式(FB方式)と、フィードフォワード方式(FF方式)がある。
また、ノイズ環境に応じたノイズキャンセル特性を変更する方式は、ユーザの選択指示に応じて行なう手動選択方式と、ノイズ環境に応じて特性を自動的に変更する自動変更方式の2通りがある。
以下では、それぞれについて説明していく。
【0017】
[1−1 フィードバック方式]
まずフィードバック方式のNCシステムについて説明する。図19はNCシステムを適用したヘッドホンの構成例を示すブロック図である。
なお図1においては、説明の簡単のため、ヘッドホン装置のリスナ(聴取者)301の右耳側の部分のみについての構成を示している。これは、後述する図21,図23,図24、及び後述する実施の形態の説明でも同様とする。なお、左耳側の部分も同様に構成されることは言うまでもない。
【0018】
図19では、リスナ301がヘッドホン装置を装着したことにより、リスナ301の右耳が右耳用ヘッドホン筐体(ハウジング部)302により覆われている状態を示している。ヘッドホン筐体302の内側には、電気信号である音声信号を音響再生する電気−音響変換手段としてのヘッドホンドライバユニット(以下、単にドライバユニットという)311が設けられている。
そして、音声信号入力端312を通じた入力音声信号S(例えば音楽信号)がイコライザ313および加算器314を通じて出力音声信号としてパワーアンプ315に供給される。このパワーアンプ315を通じた音声信号がドライバユニット311に供給されて、音響再生され、リスナ301の右耳に対して再生音が放音される。
【0019】
音声信号入力端312は、例えば携帯型音楽再生装置のヘッドホンジャックに差し込まれるヘッドホンプラグから構成される。
この音声信号入力端312と、左右の耳用のドライバユニット311との間の音声信号伝送路中には、イコライザ313、加算器314、パワーアンプ315の他、図示のようにマイクロホン321、マイクロホンアンプ(以下、単にマイクアンプという)322、ノイズキャンセル用のFB(Feedback)フィルタ回路323、メモリ324、メモリコントローラ325、操作部326などを備えるノイズキャンセル回路部が設けられる構成とされている。
この図19の構成では、リスナ301の音楽聴取環境において、ヘッドホン筐体302の外部のノイズNZのうち、ヘッドホン筐体302内のリスナ301の音楽聴取位置に入り込むノイズNZ’をフィードバック方式で低減して、音楽を良好な環境で聴取することができるようにする。
【0020】
フィードバック方式のNCシステムにおいては、リスナ301の音楽聴取位置であるところの、ノイズと音声信号の音響再生音とを合成する音響合成位置(ノイズキャンセルポイントPc)でのノイズを収音する。
したがって、ノイズ収音用のマイクロホン321は、ヘッドホン筐体(ハウジング部)302の内側となるノイズキャンセルポイントPcに設けられる。このマイクロホン321の位置の音が制御点となるため、ノイズ減衰効果を考慮し、ノイズキャンセルポイントPcは、通常耳に近い位置、つまりドライバユニット311の振動板前面とされ、この位置に、マイクロホン321が設けられる。
そして、そのマイクロホン321で収音したノイズNZ’の逆相成分を、FBフィルタ回路323で、ノイズキャンセル信号として生成し、その生成したノイズキャンセル信号をドライバユニット311に供給して音響再生することで、外部からヘッドホン筐体302内に入ってきたノイズNZ’を低減させるものである。
【0021】
ノイズキャンセル信号を生成するFBフィルタ回路323は、DSP(Digital Signal Processor)432と、その前段に設けられるA/D変換回路431と、その後段に設けられるD/A変換回路433とで構成される。
マイクロホン321で収音されたアナログ音声信号は、マイクアンプ322を通じてFBフィルタ回路323に供給され、A/D変換回路431によりデジタル音声信号に変換される。そして、そのデジタル音声信号がDSP432に供給される。
DSP432には、フィードバック方式のデジタルノイズキャンセル信号を生成するためのデジタルフィルタが構成される。このデジタルフィルタは、これに入力されるデジタル音声信号から、これに設定されるパラメータとしてのフィルタ係数に応じた特性のデジタルノイズキャンセル信号を生成する。DSP432のデジタルフィルタに設定されるフィルタ係数は、この例の場合では、メモリ324からメモリコントローラ325を通じて供給される。
【0022】
メモリ324には、種々の異なる複数のノイズ環境におけるノイズを、DSP432のデジタルフィルタで生成するノイズキャンセル信号により低減することができるようにするために、後述するような複数個(複数セット)のパラメータとしてのフィルタ係数が記憶されている。
メモリコントローラ325は、メモリ324から、特定の1個(1セット)のフィルタ係数を読み出して、DSP432のデジタルフィルタに設定する。
そして、この構成例の場合、メモリコントローラ325に対しては、操作部326の操作出力信号が供給されている。メモリコントローラ325は、この操作部326からの操作出力信号に応じて、メモリ324から特定の1個(1セット)のフィルタ係数を選択して読み出し、DSP432のデジタルフィルタに設定する。
【0023】
DSP432のデジタルフィルタでは、以上のようにメモリコントローラ325を介してメモリ324から選択的に読み出されて設定されたフィルタ係数に応じたデジタルノイズキャンセル信号を生成する。
そして、生成されたデジタルノイズキャンセル信号は、D/A変換回路433においてアナログノイズキャンセル信号に変換される。そして、このアナログノイズキャンセル信号が、FBフィルタ回路323の出力信号として加算器314に供給される。
【0024】
上述のように加算器314には、リスナ301が聴取したいとされる入力音声信号(音楽信号など)Sが、音声信号入力端12を通じ、イコライザ313を通じて供給される。イコライザ313は、入力音声信号の音質補正を行なう。
このイコライザ313の出力と、FBフィルタ回路323からのノイズキャンセル信号が加算器314で合成され、出力音声信号として、パワーアンプ315を通じてドライバユニット311に供給されて音響再生される。
この再生音声にはFBフィルタ回路323において生成されたノイズキャンセル信号による音響再生成分が含まれる。このノイズキャンセル信号による音響再生成分とノイズNZ’とが、音響合成されることにより、ノイズキャンセルポイントPcでは、ノイズNZ’が低減(キャンセル)される。
【0025】
以上のフィードバック方式のノイズキャンセル動作について、伝達関数を用いて、図20を参照しながら説明する。
図20は、図19に示した各部をその伝達関数を用いて表したブロック図として示している。この図20において、「A」はパワーアンプ315の伝達関数、「D」はドライバユニット311の伝達関数、「M」はマイクロホン321およびマイクアンプ322の部分に対応する伝達関数、「−β」はフィードバックのために設計されたフィルタの伝達関数である。また、「H」はドライバユニット311からマイクロホン321までの空間の伝達関数、「E」は聴取目的の音声信号Sにかけられるイコライザ313の伝達関数である。上記の各伝達関数は複素表現されているものとする。
【0026】
また、図20において、「N」は外部のノイズ源からヘッドホン筐体302内のマイクロホン321位置近辺に侵入してきたノイズであり、「P」はリスナ301の耳に届く音圧である。なお、外部ノイズがヘッドホン筐体302内に伝わってくる原因としては、例えばイヤーパッド部の隙間から音圧として漏れてくる場合や、ヘッドホン筐体302が音圧を受けて振動した結果としてヘッドホン筐体2内部に音が伝わる場合などが考えられる。
【0027】
この図20の伝達関数ブロックは、次の(式1)で表現することができる。
P={1/(1+ADHMβ)}・N+{AHD/(1+ADHMβ)}・ES
・・・(式1)
【0028】
そして、この(式1)において、ノイズNに着目すると、ノイズNは、1/(1+ADHMβ)に減衰していることが分かる。ただし(式1)の系がノイズ低減対象周波数帯域にて、ノイズキャンセリング機構として安定して動作するためには、次の(式2)が成立している必要がある。
|1/(1+ADHMβ)|<1 ・・・(式2)
【0029】
次に、上記ノイズ低減機能に加え、必要な音をヘッドホンのドライバユニットから再生する場合について説明する。
なお図20における、聴取対象の音声信号Sは、実際には音楽信号以外にも、筐体外部のマイクの音(補聴機能として使う)や、通信を介した音声信号(ヘッドセットとして使う)など、本来、ヘッドホンのドライバユニットで再生すべきものの信号総称である。
【0030】
上記(式1)のうち、信号Sに着目すると、(式3)のように、イコライザEを設定すれば、音圧Pは(式4)のように表現される。
E=(1+ADHMβ) ・・・(式3)
P={1/(1+ADHMβ)}・N+ADHS ・・・(式4)
【0031】
したがって、マイクロホン321の位置が耳位置に非常に近いとすると、Hがドライバユニット311からマイクロホン321(耳)までの伝達関数、AやDがそれぞれパワーアンプ315、ドライバユニット311の特性の伝達関数であるので、通常のノイズ低減機能を持たないヘッドホンと同様の特性が得られることがわかる。なお、このとき、イコライザ313の伝達特性Eは、周波数軸でみたオープンループ特性とほぼ同等の特性になっている。
【0032】
以上から理解されるように図19の構成のヘッドホン装置では、ノイズを低減しながら、聴取対象の音声信号を、何等支障なく聴取することができる。ただし、この場合に、十分なノイズ低減効果を得るためには、DSP432で構成されるデジタルフィルタには、外部ノイズNZがヘッドホン筐体302内に伝達されたノイズの特性に応じたフィルタ係数が設定される必要がある。
前述したように、ノイズが発生しているノイズ環境には、種々存在し、そのノイズの周波数特性や位相特性は、それぞれのノイズ環境に応じたものとなっている。このため、単一のフィルタ係数では、すべてのノイズ環境において、十分なノイズ低減効果を得ることができることは期待できない。
【0033】
そこで例えばメモリ324に、種々のノイズ環境に応じた複数個(複数セット)のフィルタ係数を、予め記憶して用意しておき、その複数個のフィルタ係数から、適切と考えられるものを、選択して読み出し、FBフィルタ回路323のDSP432において構成されているデジタルフィルタに設定するようにする。
【0034】
デジタルフィルタに設定するフィルタ係数は、種々様々なノイズ環境のそれぞれにおいてノイズを収音して、そのノイズを低減(キャンセル)することができる、適切なものを、予め、算出して、メモリ324に記憶しておくようにすることが望ましい。例えば、駅のプラットフォーム、飛行場、飛行機の中、地上を走る電車の中、地下鉄の電車の中、バスの中、町の雑踏、大型店舗内など、種々のノイズ環境におけるノイズを、収音して、そのノイズを低減することができる適切なものを、予め算出して、メモリ324に記憶しておく。
そしてメモリコントローラ325は、メモリ324に記憶されている複数個(複数セット)のフィルタ係数からの適切なフィルタ係数の選択を、ユーザの操作部326を用いた操作に応じて行なう。
例えば各フィルタ係数のセットをそれぞれ、地下鉄モード、飛行機モード、バスモード、雑踏モード(説明上、これらを総称して「NCモード」ということとする)などし、ユーザが操作によってモード選択できるようにする。従ってユーザは、現在の騒音環境に応じて最適なフィルタ係数を指示できる。例えば地下鉄に乗っている場合にはNCモードとして地下鉄モードを指示する。これによってDSP432において構成されているデジタルフィルタに地下鉄モードのフィルタ係数が設定され、地下鉄内でのノイズキャンセル効果を最適化できる。
【0035】
[1−2 フィードフォワード方式]
次に図21,図22でフィードフォワード方式のノイズキャンセルを行うヘッドホン装置を説明する。なお図19と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
この場合、リスナ301の音楽聴取環境において、ヘッドホン筐体302の外のノイズNZから、ヘッドホン筐体302内のリスナ301の音楽聴取位置に入り込むノイズをフィードフォワード方式で低減して、音楽を良好な環境で聴取することができるようにする。
フィードフォワード方式のノイズキャンセルシステムは、基本的には、ヘッドホン筐体302の外部にマイクロホン331が設置されており、このマイクロホン331で、収音したノイズNZに対して適切なフィルタリング処理をしてノイズキャンセル信号を生成する。この生成したノイズキャンセル信号を、ドライバユニット311にて音響再生し、リスナ301の耳に近いところで、ノイズNZ’をキャンセルする。
【0036】
マイクロホン331で収音されるノイズNZと、ヘッドホン筐体302内のノイズNZ’は、両者の空間的位置の違い(ヘッドホン筐体2の外と内の違いを含む)に応じた異なる特性となる。したがって、フィードフォワード方式では、マイクロホン331で収音したノイズNZと、ノイズキャンセルポイントPcにおけるノイズNZ’との空間伝達関数の違いを見込んで、ノイズキャンセル信号を生成するようにする。
【0037】
このフィードフォワード方式のノイズキャンセル信号の生成はFF(Feedforward)フィルタ回路333で行う。
FFフィルタ回路333は、上述のFBフィルタ回路323と同様に、DSP442と、その前段に設けられるA/D変換回路441と、その後段に設けられるD/A変換回路443とで構成される。
そして、マイクロホン331で収音されて得られたアナログ音声信号は、マイクアンプ332を通じてFFフィルタ回路333に供給され、A/D変換回路441によりデジタル音声信号に変換される。そして、そのデジタル音声信号がDSP442に供給される。
【0038】
DSP442には、フィードフォワード方式のデジタルノイズキャンセル信号を生成するためのデジタルフィルタが構成される。このデジタルフィルタは、入力されるデジタル音声信号から、設定されるパラメータとしてのフィルタ係数に応じた特性のデジタルノイズキャンセル信号を生成する。DSP442のデジタルフィルタに設定されるフィルタ係数は、先の図19の例と同様に、例えばメモリ324からメモリコントローラ325を通じて供給されればよい。
例えばユーザ操作に応じて選択されたNCモード(地下鉄モード等)のフィルタ係数が設定される。
【0039】
DSP442で生成されたデジタルノイズキャンセル信号は、D/A変換回路443においてアナログノイズキャンセル信号に変換される。そして、このアナログノイズキャンセル信号が、FFフィルタ回路333の出力信号として加算器314に供給される。
加算器314では、ノイズキャンセル信号と、音声信号入力端312、イコライザ313を介した音声信号Sとが合成され、パワーアンプ315に供給される。そしてドライバユニット311から音響再生される。
この再生される音声には、FFフィルタ333で生成されたノイズキャンセル信号による音響再生成分が含まれる。このノイズキャンセル信号による音響再生成分とノイズNZ’とが、音響合成されることにより、ノイズキャンセルポイントPcでは、ノイズNZ’が低減(キャンセル)される。
以上によりフィードフォワード方式ノイズキャンセル動作が実現される。
なお、FFフィルタ回路333の構成は図19で示したFBフィルタ回路323と同様であるが、DSP432,DSP442で構成されるデジタルフィルタに供給するフィルタ係数が、フィードバック方式のものか、フィードフォワード方式のものかという点で異なる。
【0040】
図22は、フィードフォワード方式のノイズ低減動作について、図21に対応した伝達関数を用いて示したものである。
図中の「A」(パワーアンプ315の伝達関数)、「D」(ドライバユニット311の伝達関数)、「H」(ドライバユニット311からキャンセルポイントPcまでの空間の伝達関数)、「E」(聴取目的の音声信号Sにかけられるイコライザ313の伝達関数)、「P」(リスナ301の耳に届く音圧)は、先に図20に示したものと同様である。
そして「M」はマイクロホン331およびマイクアンプ332の部分に対応する伝達関数、「−α」はフィードフォワードのために設計されたフィルタの伝達関数である。また、「F」は外部のノイズ源3のノイズNの位置からリスナの耳のキャンセルポイントPcの位置に至るまでの伝達関数、「F’」はノイズ源からマイクロホン331の位置までの伝達関数である。各伝達関数は複素表現されているものとする。
【0041】
この図22の伝達関数ブロックは、次の(式5)で表現することができる。
P=−F’ADHMαN+FN+ADHS ・・・(式5)
【0042】
ここで理想的な状態を考え、伝達関数Fが
F=−F’ADHMα ・・・(式6)
のように表せるとすると、上記(式5)は、
P=ADHS ・・・(式7)
で表すことができる。つまり、ノイズNはキャンセルされ、音楽信号(または聴取する目的とする音楽信号等)Sだけが残り、通常のヘッドホン動作と同様の音を聴取することができることが分かる。
なお(式6)は、その式から自明であるが、ノイズ源から耳位置までの伝達関数を、デジタルフィルタの伝達関数αを含めた電気回路にて模倣することを意味している。
【0043】
ただし実際は、上記(式6)が完全に成立するような伝達関数を持つ完全なフィルタの構成は困難である。特に中高域に関しては、ヘッドホン装着状態や耳形状により個人差が大きいことや、ノイズの位置やマイクロホン位置などにより特性が変化することがある。そのため通常は中高域に関しては、以上のアクティブなノイズ低減処理を行わず、ヘッドホン筐体302でパッシブな遮音をすることが多い。
【0044】
[1−3 複合方式]
図23は、フィードバック系とフィードフォワード系の両方を搭載したNCシステムの構成例を示している。説明上、フィードフォワード方式とフィードフォワード方式の両方を用いる場合を複合方式ということとする。なお図23において図19、図21と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0045】
図23Aに示すように、この場合、マイクロホン321,マイクアンプ322、A/D変換回路344はフィードバック系の構成となり、マイクロホン331,マイクアンプ332、A/D変換回路451はフィードフォワード系の構成となる。
ノイズキャンセル信号を生成するフィルタ回路に関しては、フィードバック系とフィードフォワード系でそれぞれ独立に設けてもよいが、ここでは両系統の処理を行うフィルタ回路340を用いる例としている。
フィルタ回路340は、A/D変換回路451、DSP452、D/A変換回路453から成る。この場合、DSP452は、上述のFBフィルタ回路323のデジタルフィルタ(−β)と、FFフィルタ回路333のデジタルフィルタ(−α)、さらにイコライザ313、加算器314としての信号処理を行うものとしている。
【0046】
すなわち図23BにDSP452で実現される構成を詳しく示しているが、デジタルフィルタ回路521としてフィードバック方式のフィルタ処理が行われてノイズキャンセル信号が生成される。またデジタルフィルタ回路522としてフィードフォワード方式のフィルタ処理が行われてノイズキャンセル信号が生成される。さらに入力音声信号SはA/D変換回路337でデジタルデータとされてDSP452のデジタルイコライザ回路523でイコライジング処理される。
そしてデジタルフィルタ回路521で生成されるフィードバック方式のノイズキャンセル信号と、デジタルフィルタ回路522で生成されるフィードフォワード方式のノイズキャンセル信号と、デジタルイコライザ回路523でイコライジング処理された入力音声信号が、加算器524で加算され、D/A変換回路453でアナログ信号とされてパワーアンプ315に供給される。そしてドライバユニット311から音響出力されるが、この場合、再生音響には、両方式のノイズキャンセル信号成分が含まれており、ノイズキャンセルポイントPcでノイズNZ’が低減される。
【0047】
この場合も、デジタルフィルタ回路521,522におけるフィルタ係数としては、各種の環境に応じたフィルタ係数セットをメモリ324に記憶しておき、操作部326を用いたユーザ操作に応じてフィルタ係数を設定することで、ノイズ環境に適したノイズ低減処理が実現される。
【0048】
[1−4 フィルタ係数最適化]
ここまでフィードバック方式、フィードフォワード方式、複合方式の説明をしたが、それぞれフィルタ係数の設定はユーザの操作に応じて実行するものとしたが、自動的にノイズ環境を判定し、フィルタ係数設定を行うようにすれば、ユーザの操作負担をなくしつつ、常時、ノイズキャンセル動作を最適化できる。
例えば図24は、図21のフィードフォワード方式の構成において、操作部326に代えて、以下に説明するような自動選択手法を採用した場合を示している。図21と同一部分は同一符号としている。
【0049】
この場合、FFフィルタ回路333のDSP442には、フィードフォワード方式対応のデジタルフィルタ回路621だけでなく、ノイズ分析部622および最適特性評価部623が構成される。
そして、ノイズ分析部622は、マイクロホン331で収音したノイズの特性を分析し、その分析結果を最適フィルタ係数評価部623に供給する。例えば最適フィルタ係数評価部623は、ノイズ分析部622からの分析結果に基づくノイズ特性カーブと逆特性のカーブに最も近いノイズ低減カーブ特性となるフィルタ係数を、メモリ324に記憶されているフィルタ係数のうちから選定し、最適な1セットのフィルタ係数を決定する。そしてその決定結果をメモリコントローラ325に伝える。
メモリコントローラ325は、決定結果に応じてメモリ324から最適とされるフィルタ係数セットを読み出し、デジタルフィルタ回路621に設定する。
【0050】
なお、このような自動的な最適フィルタ係数の選択及び設定処理は、入力音声信号Sの無音期間に行うようにするとよい。このため起動制御部350を設け、起動制御部350は入力音声信号Sについて無音期間検出を行う。
無音期間を検出したら、起動制御部350は、ノイズ分析部622、最適フィルタ係数評価部623およびメモリコントローラ325に起動制御信号を送って、最適フィルタ係数の自動選択処理動作の起動をかけるようにする。
【0051】
例えばこのような最適フィルタ係数自動判定は、図24のフィードフォワード方式のNCシステムだけでなく、フィードバック方式や複合方式のNCシステムでも適用できる。そしてこれによっては、NCシステムにおけるノイズ低減効果を、ユーザが操作負担無く有効に享受できるようになる。
ところが、この最適フィルタ係数自動判定を行う場合、周囲のノイズ状況を解析するノイズ分析部622の処理や、その結果を用いた最適フィルタ係数評価部623の処理として、DSPやCPU等の演算処理装置として高い演算能力が要求されたり、消費電力の増大という問題が生ずる。
【0052】
そこで本実施の形態では、以下に説明していく各種手法で、ヘッドホン装置の処理負担を軽減しつつ、ノイズキャンセル処理の最適化を実現する。
【0053】
<2.実施の形態のヘッドホンシステム>
後述する第1〜第5の実施の形態に係るヘッドホンシステムの基本構成を図1に示す。
各実施の形態においては、図1に示すようにヘッドホン装置1と携帯端末2が相互に通信可能とされてヘッドホンシステムが形成される。
【0054】
ヘッドホン装置1は、ノイズキャンセル機能を有するヘッドホン(いわゆるイヤホン形態の場合も含む)であり、例えば音声信号入力用のプラグ1aを図示しない携帯型オーディオプレーヤ等に接続して音楽等の音声信号を入力し、当該ヘッドホン装置1を装着したリスナに対して音響出力する装置である。
なお、実施の形態において後述するが、プラグ1a(及びコード)は必ずしも必要ではなく、携帯用オーディオプレーヤ、或いは携帯端末2、或いは他の機器から、無線通信で音声信号を入力する形態でもよい。
【0055】
携帯端末2は、具体的には例えば携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯用情報処理装置、携帯用ゲーム機、或いは近年スマートフォン等の名称で呼ばれているPDA機能付き多機能携帯電話機などである。
この携帯端末2とヘッドホン装置1は、例えば近距離無線通信(Bluetooth,WiFi(wireless fidelity)等)により制御情報(指示情報)やストリーム信号等の各種信号の通信が可能とされる。
【0056】
本実施の形態の場合、ヘッドホン装置1内に設けられるノイズキャンセルシステムは、上述のフィードバック方式、フィードフォワード方式、複合方式のいずれでもよい。そして特にそのノイズキャンセルシステムでは、最適フィルタ係数を内部的に自動設定する機能を持つ。但し、実施の形態の場合、最適フィルタ係数を判定する機能は持たせないようにしている。
一方で、携帯端末2では、周囲騒音の解析や位置検出等の機能、さらにはそれらに応じて最適なノイズキャンセル信号生成用のフィルタ係数判定機能を備えるものとする。
そして携帯端末2側で生成した、フィルタ係数判定に係る指示情報を、ヘッドホン装置1に送信する。ヘッドホン装置1は、受信した指示情報に応じてNCシステムにおけるフィルタ係数設定を行うことで、リスナに対し、最適化されたノイズ低減効果の下での聴取状態を提供する。
つまり、通常ユーザがヘッドホン装置1とともに携帯している携帯端末2を利用して、ヘッドホン装置1における処理のリソース削減、消費電力低減を図るものである。
特に近年、携帯端末2は汎用的なUI(User Interface)と豊富なアプリケーションを実行可能とされ、また様々なセンサ類を備えている。また基本的に、ユーザは携帯端末2を常時持ち歩いているという使用状況がある。これらを考え、携帯端末2をヘッドホン装置1の使用時に有効利用できるようにするものとも言える。
【0057】
<3.第1の実施の形態(ノイズ解析)>
第1の実施の形態を図2から図6を参照して説明する。
図2はヘッドホン装置1の内部構成のブロック図である。なお、図示の都合及び説明の簡略化のため、ステレオ音声信号についての左右チャンネルの一方のみ(例えばユーザの右耳に対応する構成部分のみ)を示している。他方のチャンネル側も同様の構成をとれば良い。但しノイズキャンセルシステムの構成部位については、左右チャンネルで共用構成とすることも可能であることは自明である。
【0058】
この図2のヘッドホン装置1では、基本的には音楽等の入力音声信号を入力する部位として、デジタル入力部23とA/D変換器24を有する例を挙げている。
例えば接続されたオーディオプレーヤ等の音楽・音声ソース機器(図示せず)からは、その接続形態により、入力音声信号として、デジタル音声信号Adi又はアナログ音声信号Aaが供給される。なお、これらの一方のみが入力される構成でもよい。
【0059】
端子25から入力されるデジタル音声信号Adiは、デジタル入力部23で必要な処理が施され、デジタル音声信号としてマルチプレクサ22に供給される。例えばデジタル入力部23ではデジタル音声信号の送信フォーマット等に応じてのデコード処理等が行われ、例えばPCMリニアオーディオデータとしてのデジタル音声信号とされてマルチプレクサ22に供給される。
端子26から入力されるアナログ音声信号Aaは、A/D変換器24でデジタル音声信号、例えばPCMリニアオーディオデータとしてのデジタル音声信号に変換されてマルチプレクサ22に供給される。
【0060】
入力音声信号について信号処理を行う信号処理部としてDSP27内にイコライザ19が設けられている。
マルチプレクサ22は、デジタル入力部23、A/D変換器24のいずれか一方のデジタル音声信号(入力音声信号)を選択してDSP27において構成されているイコライザ19に出力する。イコライザ19では、入力音声信号に対し、音質補正、音質効果処理のためのイコライジング処理を行う。
【0061】
このヘッドホン装置1では、NCシステムとして、上述の複合方式を採用した例としている。
このため、フィードフォワード方式のためのノイズキャンセル信号生成処理系として、マイクロホン14FF、マイクアンプ15FF、A/D変換器16FF、FF−DNC(Feedforward - Digital Noise Canceling)フィルタ17FFを有する。
マイクロホン14FFは、図21で説明したようにヘッドホン筐体外部で外部環境ノイズNZを収音するように設けられている。このマイクロホン14FFで収音されマイクアンプ15FFで入力された音声信号は、A/D変換器16FFでデジタル音声信号とされてDSP27において構成されているFF−DNCフィルタ17FFに供給される。FF−DNCフィルタ17FFは、フィードフォワード方式のデジタルノイズキャンセル信号を生成するためのデジタルフィルタであり、上述した伝達関数「−α」に相当するフィルタリングを行う。
【0062】
またフィードバック方式のためのノイズキャンセル信号生成処理系として、マイクロホン14FB、マイクアンプ15FB、A/D変換器16FB、FB−DNC(Feedback - Digital Noise Canceling)フィルタ17FBを有する。
マイクロホン14FBは、図19で説明したようにヘッドホン筐体内部のノイズキャンセルポイントPcで、ヘッドホンハウジング内に到達した外部環境ノイズNZ’(及びドライバユニット出力音声)を収音するように設けられている。
このマイクロホン14FBで収音されマイクアンプ15FBで入力された音声信号は、A/D変換器16FBでデジタル音声信号とされてDSP27において構成されているFB−DNCフィルタ17FBに供給される。FB−DNCフィルタ17FBは、フィードバック方式のデジタルノイズキャンセル信号を生成するためのデジタルフィルタであり、上述した伝達関数「−β」に相当するフィルタリングを行う。
【0063】
DSP27においては、イコライザ19で処理された入力音声信号と、FF−DNCフィルタ17FFで生成されたノイズキャンセル信号と、FB−DNCフィルタ17FBで生成されたノイズキャンセル信号とを、加算器18で加算合成して出力音声信号とし、DAC/アンプ部20に供給する。
DAC/アンプ部20は、出力音声信号をD/A変換してアナログ音声信号とし、さらにパワーアンプ処理を行う。そして出力音声信号をドライバユニット21に供給し、ドライバユニット21から音響出力を実行させる。
先に図23を用いて説明した場合と同様、ドライバユニット21からの再生音響には、フィードバック方式及びフィードフォワード方式のノイズキャンセル信号成分が含まれており、図23に示したノイズキャンセルポイントPcでノイズNZ’が低減された状態で、音楽等の入力音声信号に係る再生音響が、リスナに聴取される状態となる。
【0064】
なお、この例はDAC/アンプ部20でD/A変換及びアナログパーアンプ処理を行うものとしたが、ドライバユニット21がいわゆるデジタルドライバである場合、デジタルアンプ処理を行う構成でもよい。
【0065】
本実施の形態のヘッドホン装置1では、さらに制御部11、メモリ部12、通信部13を備える。
制御部11は、DSP27におけるFF−DNCフィルタ17FFのフィルタ係数、FB−DNCフィルタ17FBのフィルタ係数、及びイコライザ19のフィルタ係数を設定する処理を行う。
メモリ部12は、処理パラメータとして、FF−DNCフィルタ17FFのフィルタ係数、FB−DNCフィルタ17FBのフィルタ係数、及びイコライザ19のフィルタ係数を記憶する。例えばNCモードとして、地下鉄モード、バスモード、飛行機モード、雑踏モードなどに対応して、周囲環境に応じた最適ノイズキャンセルを実現するための各種フィルタ係数セットを記憶している。
【0066】
通信部13は、例えばブルートゥース、WiFi等の無線通信で携帯端末2との間でデータ通信を行う。
特には、通信部13は携帯端末2から送信されてくるNCモードの指示情報を受信し、制御部11に伝える。 制御部11は、入力されたNCモードの指示情報に応じて、モード設定を行う。即ち指示されたNCモードに対応するフィルタ係数セットをメモリ部12から読み出し、そのフィルタ係数を、FF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、及びイコライザ19に設定する。
また制御部11は、通信部13による携帯端末2との間の通信確立のための制御処理や、各種データ送信の制御を行う。
【0067】
なお、図2の構成は一例である。例えばDSP27はFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19、加算器18の機能を有するものとしているが、これらの回路部の全部又は一部が独立したハードウエア回路として設けられても良い。或いはA/D変換器16FF、10FBの一方又は両方がDSP27内の構成要素とされてもよい。
【0068】
図3は携帯端末2の内部構成例を示している。なお携帯端末2としては上述のように携帯電話機、携帯型情報処理装置などが想定され、機器に応じて多様な構成となるが、ここでは本実施の形態の動作に関連する部分のみを示している。
【0069】
携帯端末2は、図示のように制御・演算部31、メモリ部32、通信部33、操作部34、A/D変換器35、マイクアンプ36、マイクロホン37、ネットワーク通信部39を備える。
【0070】
マイクロホン37は周囲の音声(周囲環境ノイズNZを含む)を収音する。このマイクロホン37は例えば携帯電話機能のための送話用マイクロホン等、本来的には他の目的で搭載されているマイクロホンであってもよいし、周囲ノイズ収音の専用のマイクロホンであってもよい。
マイクロホン37で収音された音声信号はマイクアンプ36で入力増幅され、A/D変換器35でデジタルデータとして制御・演算部31に供給される。
【0071】
メモリ部32はROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶部を包括的に示しており、各種情報を記憶したり、ワークエリアとして用いられる。本実施の形態の動作についていえば、制御・演算部31で起動するアプリケーションプログラムの記憶や、NCシステムデータベースの記憶などに用いられる。NCシステムデータベースとは、ヘッドホン装置1等の機種名、採用されているNC方式や各種NCモードに応じたフィルタ係数などがデータベース化されたものである。
なお、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスク、メモリカード等を、メモリ部32を形成する記憶媒体としてもよい。
【0072】
操作部34はユーザの操作入力情報を入力して制御・演算部31に通知する。具体的には操作部34は、携帯端末2の筐体上に形成される操作キーや、携帯端末2の表示画面上のタッチパネルなどとして実現される。
通信部33は、例えばブルートゥース、WiFi等の無線通信でヘッドホン装置1との間でデータ通信を行う。
【0073】
ネットワーク通信部39は、インターネット等のネットワークや公衆電話回線などを介して各種通信を行う。
例えばアプリケーションプログラムやデータベースのダウンロードや更新を、ネットワーク通信部39を介して行うことができる。例えば上記のNCシステムデータベースや、次に述べていくNC処理最適化プログラムとしてのアプリケーションソフトウエアは、ネットワーク通信部39により外部サーバ等からダウンロードできる。
【0074】
制御・演算部31は、CPUやDSP等によって成り、携帯端末2における各部の動作の制御や演算処理を行う。例えばアプリケーションプログラムに規定される処理が制御・演算部31において実行されることで、携帯電話機や情報処理装置としての各種機能を実行する。
本実施の形態の場合、ヘッドホン装置1に対する指示信号送信処理のためのアプリケーションプログラム(以下「NC処理最適化プログラム」という)が起動されることで、制御・演算部31には図示するシーケンス制御部31a、ノイズ解析部31b、最適NC判定部31cとしての機能ブロックがソフトウエア機能として実現される。
【0075】
シーケンス制御部31aは、NC処理最適化プログラムとしてのシーケンス制御を行う。具体的にはNC処理最適化プログラムの規定に従い、ノイズ解析処理や最適NC判定処理、通信処理等を制御する。
ノイズ解析部31bは、マイクロホン37で収音されるノイズNZの解析を行う。
最適NC判定部31cは、ノイズ解析結果から、ヘッドホン装置1のNCシステムにおける最適なNCモードを判定する。
【0076】
以上の図2,図3に示したヘッドホン装置1と携帯端末2におけるNC処理最適化のための処理を図4で説明する。
図4は携帯端末2において制御・演算部31でNC処理最適化プログラムにより実行される処理と、これに対応して行われるヘッドホン装置1の制御部11の処理を示している。
【0077】
携帯端末2の処理としてステップF100は、NC処理最適化プログラムの処理実行トリガの発生を示している。NC処理最適化プログラムは、例えば常時起動されていても良いし、定期的に起動されたり、ユーザ操作で起動されてもよい。
さらには自動検出処理で何らかの条件判定を行って起動してもよい。例えば周囲ノイズ状況の変化、現在位置変化、温度変化、気圧変化、高度変化、移動速度変化などを検出して起動してもよい。起動に関しての各種例は後述する。
【0078】
ステップF100で起動トリガが発生すると、携帯端末2の制御・演算部31はシーケンス制御部31a(NC処理最適化プログラム)の制御に従って、ステップF101以降の処理を行う。
まず制御・演算部31はステップF101で通信部33によるヘッドホン装置1との通信確立処理を行う。即ち通信部33からの通信要求送信を行い、ヘッドホン装置1の通信部13との間で通信接続状態を確立する。ヘッドホン装置1側では制御部11はステップF200で、携帯端末2からの通信要求に応じて通信部13による接続確立のための制御を行うことになる。
即ち、制御・演算部31と制御部11は、通信部33、13を介して、通信要求、アクナレッジ送受信、認証処理等を行って通信を確立する。また通信確立により、ヘッドホン装置1の機種名、NCシステム情報等を携帯端末2側に通知する処理も、制御・演算部31と制御部11の間で行われる。機種名、NCシステム情報等の通信は、制御・演算部31側が通信相手のヘッドホン装置1において実行可能なNCモードを把握するために行われる。
【0079】
続いて携帯端末2の制御・演算部31はステップF102として、ノイズ解析部31bとしての機能により、ノイズ解析処理を行う。
そしてステップF103では、最適NC判定部31cの機能により、ノイズ解析結果に基づいてヘッドホン装置1において選択すべき最適NCモードの判定処理を行う。
このステップF102,F103の具体的な処理例を図5,図6で説明する。
【0080】
図5Aは、例えばヘッドホン装置1側のメモリ部12において記憶されているFB−DNCフィルタ17FB用のフィルタ係数群を周波数軸上のカーブ(ノイズ低減カーブ)として示したものである。
例えば(1)低域重視カーブ、(2)低中域重視カーブ、(3)中域重視カーブ、(4)広帯域カーブとしての4種類のフィルタ係数セットを例示している。この4つのカーブは、4つのNCモードに対応するものとする。
ヘッドホン装置1側では、NCモードが指示されることに応じて、いずれかのカーブに相当するフィルタ係数セットを選択し、FB−DNCフィルタ17FBに設定する。
図示は省略するが、FF−DNCフィルタ17FF、及びイコライザ19のフィルタ係数セットも、例えば4つのモードに応じて記憶されており、制御部11は、NCモードの指示に応じて選択、設定を行う。
【0081】
このようなヘッドホン装置1側で選択可能なNCモード(NCモードに応じたフィルタ係数セット)の情報は、ステップF101,F200での通信確立時に、制御部31から制御・演算部31に通知するようにすればよい。或いは制御・演算部31は、ヘッドホン装置1の機種名を受信することで、メモリ部32に記憶したNCシステムデータベースから、通信相手のヘッドホン装置1において選択可能なNCモード(フィルタ係数セット)を把握するようにしてもよい。
【0082】
図5Bは、制御・演算部31におけるノイズ解析部31b、最適NC判定部31cとしての構成例を示している。
ノイズ解析部31bは、この例では6個のバンドパスフィルタ81,82,83,84,85,86と、この6個のバンドパスフィルタ81,82,83,84,85,86のそれぞれの出力のエネルギー値をdB値として算出して内蔵レジスタに格納する6個のエネルギー値算出格納部91,92,93,94,95,96とで構成される。
この例の場合、6個のバンドパスフィルタ81,82,83,84,85,86の通過中心周波数は、50Hz、100Hz、200Hz、400Hz、800Hz、1.6kHzとされている。
【0083】
そして、このノイズ解析部31bには、A/D変換回路35からの信号、つまりマイクロホン37で得られた周囲ノイズNZの音声信号が入力される。該音声信号(ノイズ波形)は、6個のバンドパスフィルタ81,82,83,84,85,86のそれぞれに入力される。そして、6個のバンドパスフィルタ81,82,83,84,85,86のそれぞれの出力が、エネルギー値算出格納部91,92,93,94,95,96に供給されて、各エネルギー値A(0),A(1),A(2),A(3),A(4),A(5)が算出され、それぞれが内蔵するレジスタに格納される。
【0084】
最適NC判定部31cは、図5Aに示した4種の各ノイズ低減カーブ(1)、(2)、(3)、(4)に対応する4セットのフィルタ係数を把握している。例えば制御・演算部31は、上述のようにヘッドホン装置1側から通知されたり、或いはNCシステムデータベースから読み出すことで4セットのフィルタ係数をワークメモリ上で記憶している。
また最適NC判定部31cは、各ノイズ低減カーブ(1)、(2)、(3)、(4)での、50Hz、100Hz、200Hz、400Hz、800Hz、1.6kHzにおける減衰量代表値(dB値)を、それぞれのフィルタ係数に対応してワークメモリ上で記憶している。
【0085】
例えば、低域重視カーブ(1)での50Hz、100Hz、200Hz、400Hz、800Hz、1.6kHzにおける減衰量代表値(dB値)は、B1(0),B1(1),B1(2)・・・B1(5)として対応するフィルタ係数と対応付けられて格納され、低中域重視カーブ(2)での50Hz、100Hz、200Hz、400Hz、800Hz、1.6kHzにおける減衰量代表値(dB値)は、B2(0),B2(1),B2(2)・・・B2(5)として対応するフィルタ係数と対応付けられて格納されるものである。
なお、図5Aでは、B1(0),B1(1)、B2(0),B2(1)を例示している。
【0086】
そして、最適NC判定部31cは、エネルギー算出格納部91〜96のそれぞれに格納された各エネルギー値A(0),A(1),A(2),A(3),A(4),A(5)と、メモリ24に格納されている各フィルタ係数によるノイズ低減カーブによる減衰量代表値との差分を検出し、差分の総和が最も小さいノイズ低減カーブに対応するフィルタ係数を、最適フィルタ係数として決定する。そしてこの最適フィルタ係数に相当するNCモードを最適NCモードとする。
すなわち、エネルギー値A(0),A(1),A(2),A(3),A(4),A(5
)と、各フィルタ係数によるノイズ低減カーブによる減衰量代表値との差分の総和は、入力ノイズに対する各ノイズ低減カーブによる減衰結果の残差に等しいものとなり、小さいものほど、ノイズが低減されていることを意味するからである。
【0087】
以上のノイズ解析部31b及び最適NC判定部31cの処理動作の流れの例を図6のフローチャートに示す。
まず、ノイズ解析部31bのバンドパスフィルタ81〜86の出力のエネルギー値A(0),A(1),A(2),A(3),A(4),A(5)を算出してレジスタに格納する(ステップF31)。
次に、最適NC判定部31cは、格納されたエネルギー値A(0)〜A(5)を読み出して、エネルギー→振幅換算の変換を行い、値の補正を行なう(ステップF32)。この補正は、各バンドパスフィルタ81〜86の総合選択度Qが一定の場合、例えば、周波数振幅値一定のホワイトノイズを流した時に、通過した波形のエネルギー値は一定にならず、低域が大きく出力されることから必要とされるものである。また、総合選択度Qのとり方によっても補正が必要な場合があり、これらをまとめて補正をする。
【0088】
次に、最適NC判定部31cは、まず、低域重視カーブ(1)の代表値B1(0)〜B1(5)を、エネルギー値A(0)〜A(5)の補正値からそれぞれ減算する(ステップF33)。
次に、最適NC判定部31cは、聴感上の特性カーブにて、減算値を補正し、値C1(0)〜C1(5)を得る(ステップF34)。
次に、最適NC判定部31cは、この値C1(0)〜C1(5)を、リニア値に直した合計値を算出する(ステップF35)。この合計値が一つのノイズ低減カーブについての評価スコアとなる。
ここで、聴感上の特性カーブというのは、いわゆるAカーブやCカーブのようなものでも構わないし、絶対音量を加味してラウドネスを換算したものでも良いし、独自に設定したものでも良い。
【0089】
そして、最適NC判定部31cは、上記ステップF33〜ステップF35の作業を、ノイズ低減カーブ(1)〜(4)のすべてについて実行して、各ノイズ低減カーブに対応する評価スコアを求める(ステップF36)。
最適NC判定部31cは、すべてのカーブに対応するスコア値が計算できたら、評価スコア値が最も小さい減衰カーブが、最もノイズ減衰効果を期待することができるものであると判定し、この減衰カーブに対応するフィルタ係数を最適フィルタ係数セットとして決定する(ステップF37)。これにより1つの最適NCモードが選定されたことになる。
なお、以上の処理例は最適NCモード判定の一例である。具体的なノイズ解析手法や最適フィルタ係数判定手法は他にも考えられる。
【0090】
図4のステップF102,F103では例えば以上の処理で最適NCモードを判定する。最適NCモードを判定したら制御・演算部31はステップF104で、ヘッドホン装置1側に対して最適NCモードを示す指示情報を送信する。即ち最適NCモードを示す指示情報を通信データとして生成し、通信部33から送信させる。
ヘッドホン装置1側の制御部11はステップF201で、通信部13によって受信された指示情報を取り込む。
そしてステップF105,及びステップF202で制御・演算部31と制御部11の間で、通信部33,13を介した通信を解除する処理を行う。
【0091】
ヘッドホン装置1側では制御部11はステップF203で、指示情報に示されたNCモードに基づいて、メモリ部12からフィルタ係数を読み出す。
そして制御部11はステップF204で、読み出したフィルタ係数をDSP27の各フィルタに設定する。
【0092】
以上の処理の具体例は次のようになる。例えばユーザが地下鉄に乗ったとする。その場合に携帯端末2側のノイズ解析処理、最適NC判定処理により、地下鉄モードのフィルタ係数セットが最適フィルタ係数と判定され、指示情報としてヘッドホン装置1側に「地下鉄モード」が指示される。
このように指示情報によりNCモードとして地下鉄モードが指示された場合、ヘッドホン装置1側の制御部11はメモリ部12から、地下鉄モードのフィルタ係数として、FF−DNCフィルタ17FF用係数セット、FB−DNCフィルタ17FB用係数セット、イコライザ19用係数セットを読み出し、それぞれをFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19に設定することとなる。
これにより、DSP27における各フィルタは、地下鉄モードのフィルタ処理を実行することとなる。結果、ヘッドホンユーザ(リスナ)にとって、地下鉄に乗っているという状況に応じた最適なNCシステム設定への切換が自動的に行われ、高いノイズキャンセル効果の状態で音楽等を聴取できる。
【0093】
以上の説明から理解されるように本実施の形態では、ユーザがヘッドホン装置1と無線通信可能なマイクロホン37付きの携帯端末2(例えばスマートフォン)を持っていることを前提とし、この携帯端末2のマイクロホン37及びDSP又はCPU(制御・演算部31)を使って、ノイズ解析処理・最適NC方法/パラメータ算定を行う。そしてその結果をヘッドホン装置1側に通知し、ヘッドホン装置1側で最適なNCモードでNCシステムが動作するようにするものである。
この場合、ノイズ解析や最適NCモード判定という、リソース負担の大きい処理を、比較的処理能力が高い携帯端末2側で実行させることで、ヘッドホン装置1側の処理負担は著しく軽減される上で、周囲環境ノイズ状況に応じて自動的に最適NCモードでのノイズ低減処理が実現されることとなる。さらにはヘッドホン装置1側でノイズ解析や最適NCモード判定を行わなくてよいことから、ヘッドホン装置1の消費電力の削減、ひいては稼働時間の長時間化を実現できる。
【0094】
なお、ユーザはヘッドホン装置1を装着して、かつ、携帯端末2を例えばズボンやシャツのポケット、或いは鞄等に入れているなどして携帯していることが通常想定される。
一般的な自然環境における騒音は、周波数特性的には低域成分が支配的であり、ポケット等に入れたときの遮音による特性影響を受けにくいため、携帯端末2側でノイズ収音を行うものとしても、ヘッドホン装置1のNCシステムにとって、ほぼ適切な最適NCモード判定が可能である。
また、場合によっては、マイクロホン37の特性が携帯端末2毎に大きく異なる場合もあるが、例えばこれは、携帯端末2上での収音/測定/解析を行うアプリケーション(NC処理最適化プログラム)が、その各機種の特性をデータベース上に保持(またはネットワークからダウンロードして更新)などしていれば、この情報を使って、特性を補正したのちに解析することも可能である。
【0095】
上記例では、携帯端末2側は最適NCモードを判定したら、それをヘッドホン装置1に通知するのみとしたが、携帯端末2の機能を活かすために、ノイズ測定結果や解析結果等を画面表示するなどすれば、よりユーザからみた利便性が向上する。
【0096】
携帯端末2は、いわゆる情報処理装置として、アプリケーションプログラムをインストールすることで各種の機能を実現できる。本例の場合、携帯端末2は、例えば上記の処理を行うNC処理最適化プログラムをインストールすることで実現できる。つまりユーザが通常使用している携帯端末について、NC処理最適化プログラムをインストールすれば、実施の形態の携帯端末2が実現され、本例のヘッドホンシステムを容易にユーザに提供できるものとなる。
特に、携帯電話機、スマートフォン、PDA等の携帯端末2では通話機能がある限り、マイクロホンは必ず内蔵されている。従って、そのマイクロホンを図3のマイクロホン37として使用して騒音の収音を行うことは、携帯端末2のデバイス負担を増やすものとはならない。同様に、近年の携帯端末2はブルートゥース方式等の通信機能を備えるものが多いため、通信部33としての構成も有することが多い。この点でも、ユーザが所有している携帯電話機、スマートフォン等を用いて本例の携帯端末2を実現できる。
つまり本例における携帯端末2は、ユーザが既に所有している携帯電話機等に対してNC処理最適化プログラムをインストールすれば実現できるということが殆どとなる。
【0097】
また例えば、1人のユーザが複数のヘッドホン装置1を所有している場合、従来であれば各ヘッドホン装置1にノイズ解析、最適NCモード判定機能を内蔵する必要があるが、本実施の形態の方式ではノイズ解析、最適NCモード判定のための処理部を1つの携帯端末2で備え、これを複数のヘッドホン装置1に対して共用できる。これによりUI共通化やスペースにおいて有利である。また実際上、ユーザが複数のヘッドホン装置1を持ち替えて使用するような場合にも、各ヘッドホン装置1が、1つの携帯端末2とのセットで、本例のヘッドホンシステムが実現でき、使用するヘッドホン装置1に応じて異なる携帯端末2が必要となるということもない。
【0098】
なお図4のステップF100での携帯端末2側の処理の起動トリガは、多様に考えられる。
定期的にNC処理最適化プログラムを起動する場合は、制御・演算部31は内部タイマで前回の実行時からの計時を行っており、所定時間経過を起動トリガとすればよい。例えば数秒おき、数10秒おき、1〜数分おき、10〜30分おきなど、所定時間おきに図4の処理を実行する。
また携帯端末2側では外来音の状況の検出を常時実行し、外部ノイズ状況の変動を検知したときに起動トリガ発生としてもよい。例えばノイズレベルの単位時間平均値の変化、あるいは周波数特性の大幅な変化等が検出されたら、起動トリガ発生として図4の処理を行う。あるいはノイズ解析部31bの処理を常時実行しておくようにし、周囲のノイズ状況に変化があったと判定したときに、起動トリガ発生としてもよい。
さらに位置センサ、温度センサ、気圧センサ、高度センサ、移動速度センサ等を携帯端末2が備えるようにし、それらの検出情報に応じて起動トリガ発生と判定するようにしてもよい。
以上のようなトリガ検知を行えば、ユーザが何ら操作を行わなくとも、自動的にNCシステムの最適化が実行されて好適である。
【0099】
但し、ユーザ操作として起動トリガを判定してもよい。ユーザ操作として携帯端末2の操作部34の操作により、ユーザがNC処理最適化プログラムの選択・起動操作を行ったら、起動トリガ発生として図4の処理を行う。
なお、変形例としてヘッドホン装置1側に操作部を設け、その操作部が操作された場合、ヘッドホン装置1の制御部11は、通信部13から携帯端末2に起動トリガ情報を送信し、これを受けた制御・演算部31が、起動トリガ発生と認識するようにしてもよい。
ユーザ操作によれば、ユーザが最適なNCモードと感じないような場合に、再設定できることになる。
【0100】
また、特に起動トリガ判断は逐次行わず、NC処理最適化プログラムが常時実行されていてもよい。
例えばステップF102、F103で説明したノイズ解析処理、最適NCモード判定処理が、携帯端末2側で常時実行されるようにする。そして、最適NCモードの判定結果が変化した場合に、ヘッドホン装置1との間で通信確立処理を行い、ヘッドホン装置1への指示情報送信が行われるようにする例である。
【0101】
ところで上述したように、ヘッドホン装置1では、FF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FBだけでなく、イコライザ19のフィルタ係数もNCモードに応じて設定することとした。
フィードバック方式のノイズ低減装置の場合には、デジタルフィルタのフィルタ係数を変更してノイズ低減カーブを変更したときには、外部入力される聴取対象の音声信号Sは、ノイズ低減効果の周波数カーブに対応した影響を受けるため、デジタルフィルタのフィルタ係数の変更に応じて、イコライザ特性の変更が必要になる。
そこで、例えばメモリ部12には、デジタルフィルタの複数個のフィルタ係数のそれぞれに対応させて、イコライザ19のイコライザ特性を変更するためのパラメータ(フィルタ係数)を記憶させておき、NCモードに応じてイコライザ特性を変更することが適切となる。
【0102】
なお、図2のヘッドホン装置1は、複合方式のNCシステムを搭載した例としたが、もちろんフィードバック方式のNCシステムを搭載したり、フィードフォワード方式のNCシステムを搭載する例も考えられる。
図7はフィードフォワード方式のNCシステムを搭載したヘッドホン装置1の構成のブロック図である。
また図8はフィードバック方式のNCシステムを搭載したヘッドホン装置1の構成のブロック図である。
【0103】
図7,図8のいずれも、図2と同一部分は同一符号を付して重複説明は避ける。
図示のとおり、図7は、マイクロホン14FF、マイクアンプ15FF、A/D変換器16FF、FF−DNCフィルタ17FFというフィードフォワード系回路でノイズキャンセル信号を生成して加算器18で入力音声信号と合成する構成例である。図19の構成と同様のノイズキャンセル効果を得ることができる。
図8はマイクロホン14FB、マイクアンプ15FB、A/D変換器16FB、FB−DNCフィルタ17FBというフィードバック系回路でノイズキャンセル信号を生成して加算器18で入力音声信号と合成する構成例である。図21の構成と同様のノイズキャンセル効果を得ることができる。
【0104】
図7,図8のいずれの場合もノイズキャンセル信号の生成のためのフィルタ係数やイコライザ19のフィルタ係数を、携帯端末2からの指示情報で示されるNCモードに応じて制御部11が設定するようにする。これにより、ヘッドホン装置1の処理負担の軽減、消費電力削減の効果を得ることができる。
【0105】
なお、上述のようにイコライザ19のフィルタ係数をNCモードに応じて変更するのは図8のフィードバック方の場合に重要となる。逆に図7のフィードフォワード方式の場合、イコライザ19は直接的にはNCモードに応じてパラメータ変更する必要は小さいが、NCモードに応じてイコライザ特性を調整することは、例えばNCモードに応じた積極的な音質設定などという点で有用である。もちろんフィードフォワード方式の場合、イコライザ19の特性は固定としてもよい。
【0106】
以上の図7,図8のようなフィードフォワード方式或いはフィードバック方式のNCシステムを搭載したヘッドホン装置1の構成例は、繰り返しての図示及び説明はしないが、後述する第2〜第5の実施の形態の場合も同様に想定されるものである。
【0107】
<4.第2の実施の形態(ノイズ解析)>
第2の実施の形態を図9で説明する。なお、ヘッドホン装置1及び携帯端末2の構成は図2,図3と同様とする。
但しこの第2の実施の形態の場合、ヘッドホン装置1ではメモリ部12にNCモードに応じたフィルタ係数セットを記憶しておかなくてもよい。
逆に、携帯端末2側では、各種のヘッドホン装置1に応じた各種NCモードについてのフィルタ係数セットをメモリ部32に記憶しておく。例えば上述のNCシステムデータベースとして保持していてもよい。
【0108】
図9に制御・演算部31及び制御部11の処理例を示す。
制御・演算部31はステップF110でNC処理最適化プログラムの起動トリガ発生と判断すると、ステップF111の通信確立処理を行う。対応してヘッドホン装置1の制御部11もステップF210で通信確立処理を行う。通信確立ができたら、必要な情報送信を行う。例えば制御部11は自己のヘッドホン装置1の機種名やNCシステム種別等を携帯端末2に通知する。
【0109】
携帯端末2の制御・演算部31はステップF112でノイズ解析処理を行い、ステップF113で最適NCモード判定を行う。例えば第1の実施の形態で説明した処理である。
そしてこの場合はステップF114で、判定した最適NCモードに係るフィルタ係数セットをメモリ部32から読み出し、当該フィルタ係数セットを含む送信データを生成する。
例えばヘッドホン装置1が図2の複合方式のNCシステムを有する構成の場合、FF−DNCフィルタ17FF用のフィルタ係数セット、FB−DNCフィルタ17FB用のフィルタ係数セット、及びイコライザ19用のフィルタ係数セットを含む指示情報を送信データとして生成することになる。
制御・演算部31は、この送信データ(指示情報)をステップF115において通信部33から送信させる。
【0110】
ヘッドホン装置1の制御部11はステップF211で、通信部13で受信したフィルタ係数セット自体を含む指示情報を取り込む。
ステップF116,及びステップF212では、制御・演算部31と制御部11の間で、通信部33,13を介した通信を解除する処理を行う。
そしてヘッドホン装置1側では制御部11はステップF213で、指示情報に含まれているフィルタ係数をDSP27の各フィルタに設定する。
【0111】
以上の処理の具体例は次のようになる。例えばユーザが地下鉄に乗ったとする。その場合に携帯端末2側のノイズ解析処理、最適NC判定処理により、地下鉄モードのフィルタ係数セットが最適フィルタ係数と判定され、指示情報に、実際のフィルタ係数が含まれてヘッドホン装置1側に送信される。
この指示情報を受信したヘッドホン装置1側の制御部11は、指示情報に含まれているFF−DNCフィルタ17FF用係数セット、FB−DNCフィルタ17FB用係数セット、イコライザ19用係数セットを取り込み、それぞれをFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19に設定する。
これにより、DSP27における各フィルタは、地下鉄モードのフィルタ処理を実行することとなる。結果、ヘッドホンユーザ(リスナ)にとって、地下鉄に乗っているという状況に応じた最適なNCシステム設定への切換が自動的に行われ、高いノイズキャンセル効果の状態で音楽等を聴取できる。
【0112】
そしてこの場合、第1の実施の形態と同様、ヘッドホン装置1のリソース負担の削減、低消費電力化の効果が得られる。
特にこの第2の実施の形態では、ヘッドホン装置1側ではフィルタ係数セットの記憶も不要となり、メモリリソースも節約できる。
また、特に限定的なNCモードに限られず、携帯端末2側から、NCシステムのフィルタ係数を多様に制御できることにもなり、携帯端末2のアプリケーションプログラムによっては、ヘッドホン装置1における多様なNCモードをフレキシブルに実現できることになる。例えば新たなフィルタ係数セットを携帯端末2側がダウンロードすることで、ヘッドホン装置1に、当該新たなフィルタ係数セットを設定するということも可能となり、結果的にヘッドホン装置1の性能の向上、多様化を実現できるものともなる。
【0113】
<5.第3の実施の形態(ストリーム送信)>
第3の実施の形態を図10,図11で説明する。これは、音楽等のストリームデータ、つまりユーザがヘッドホン装置1を用いて聴取する目的の音声信号を携帯端末2からヘッドホン装置1に送信するようにした例である。
【0114】
図10はヘッドホン装置1の構成例を示している。なお図2と同一部分は同一符号を付し説明を省略する。
この図10の場合、図2と比較してわかるように入力音声信号の入力経路(図2の端子25,26、デジタル入力部23、A/D変換器24、マルチプレクサ22)が設けられていない。
そして通信部13では、指示情報だけでなく、ストリーム音声データも受信している。携帯端末2から送信されてくるストリーム音声データは通信部13で受信され、入力音声信号としてイコライザ19に供給される。
他の構成は図2と同様となる。
【0115】
図11は携帯端末2の構成を示している。図3と同一部分は同一符号を付して説明を省略する。
この場合図3と比較してわかるように、コンテンツ格納部38が設けられている。例えばHDD、メモリカード、光ディスクなどにより構成される。このコンテンツ格納部38には、例えば音楽コンテンツとしてのストリームデータが格納されている。
制御・演算部31は、例えば操作部34からのユーザ操作に応じて、コンテンツ格納部38から音楽コンテンツを選択して読み出し、そのストリームデータを通信部33からヘッドホン装置1に送信させる制御を行う。
【0116】
この場合においてNCシステムに関する処理は、上記第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同様に行われる。即ち携帯端末2においてNC処理最適化プログラムが起動されることで、ノイズ解析及び最適NCモード判定(最適フィルタ係数判定)が行われ、指示情報がヘッドホン装置1に送信される。ヘッドホン装置1の制御部11は、指示情報に応じてFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19のフィルタ係数を設定する。
【0117】
このような第3の実施の形態の構成によれば、携帯端末2がヘッドホン装置1の音楽ソース(入力音声信号ソース)としても機能する。
即ちユーザは携帯端末2をオーディオプレーヤとして動作させる。すると当該再生音楽は、ストリーム音声データとしてヘッドホン装置1に送信され、イコライザ19、加算器18、DAC/アンプ部20を介してドライバユニット21から音響再生され、ユーザは聴取できることになる。
ユーザは携帯端末2とは別にオーディオプレーヤ等を所持しなくてもよい。
【0118】
なお、コンテンツ格納部38ではなく、ネットワーク通信部39で受信したストリーム音声データを、通信部33からヘッドホン装置1に送信するようにしてもよい。例えば所定のサーバから音楽等の送信を受けたり、いわゆるクラウド上に置かれた音楽データ等を、携帯端末2で受信し、それをヘッドホン装置1に送信してリスナに聴取させることもできる。
【0119】
また図10では、マイクアンプ15FFの出力を通信部13に供給できるように示している。マイクロホン14FFを、例えば送話用のマイクロホンとして使用する例である。
例えば携帯端末2が通話状態の場合、マイクロホン14FFでユーザの声を収音し、これをストリームデータとして通信部13から携帯端末2に送信する。携帯端末2は、通信部33で受信した音声信号を送話音声として電話送信するようにする。
【0120】
<6.第4の実施の形態(位置検出)>
続いて現在位置検出に基づくNCモード指示を行う例としての第4の実施の形態を説明する。
図12は第4の実施の形態における携帯端末2の構成例を示している。なお、ヘッドホン装置1の構成は図2と同様とする。
【0121】
図12において図3と同一部分は同一符号としている。但し制御・演算部31にはノイズ解析部31bは設けられず、検出情報取込部31dが設けられる。すなわちNC処理最適化プログラムによって、検出情報取込部31dの機能が制御・演算部31により実行される。
また、位置検出部40が設けられる。
位置検出部40は例えばGPS(Global Positioning System)受信機とされ、現在位置情報(緯度・経度)及び現在の速度情報を検出可能とされる。
制御・演算部31における検出情報取込部31dは、シーケンス制御部31aで規定される必要なタイミングで、位置検出部40で検出される現在位置情報を取り込む処理を行う。
【0122】
メモリ部32には、第1〜第3の実施の形態と同様、NC処理最適化プログラム等のアプリケーションソフトウエアや、NCシステムデータベースが格納される。加えてこの第4の実施の形態の場合、メモリ部32には地図データベースが格納される。制御・演算部31は地図データベースを参照することで、位置検出部40で検出される現在位置情報(緯度・経度)に対応した、実際の現在位置の地名、住所、番地、施設、交通機関などの周囲環境に関する情報を知ることができる。
なお例えば地図データベースは、ネットワーク通信部39によりネットワーク上のサーバからダウンロードされてもよいし、携帯端末2にメモリカードや光ディスクなどの可搬性メディアの再生部を備えていれば、それらの可搬性メディアから読み込んでメモリ部32に格納してもよい。
【0123】
第4の実施の形態におけるヘッドホン装置1と携帯端末2におけるNC処理最適化のための処理を図13で説明する。
図13は携帯端末2において制御・演算部31でNC処理最適化プログラムにより実行される処理と、これに対応して行われるヘッドホン装置1の制御部11の処理を示している。
【0124】
制御・演算部31は、ステップF100でNC処理最適化プログラムの処理実行トリガの発生を検知したら、シーケンス制御部31a(NC処理最適化プログラム)の制御に従って、ステップF101以降の処理を行う。
まず制御・演算部31はステップF101で通信部33によるヘッドホン装置1との通信確立処理を行う。対応してヘッドホン装置1の制御部11はステップF200で通信確立処理を行う。ここまでは図4で説明した処理と同様である。
【0125】
続いて携帯端末2の制御・演算部31はステップF102Aとして、検出情報取込部31dとしての機能により、位置検出部40から現在位置情報(緯度・経度)を取り込み、地図データベースを参照して現在位置の周囲ノイズ環境を判定する。
例えばユーザの居る現在位置についての周囲ノイズ環境として、市街地、電車内、地下鉄内、自動車(バス)内、航空機内などを判定する。
なお、位置情報だけでは周囲ノイズ環境判定が難しい場合がある。例えば現在位置情報から地図データベースを参照して或る道路上に居ることがわかっても、それはバス等に乗っているのか、あるいは歩いているのか等の判断が困難である。ここでGPS受信機の場合、位置情報とともに速度情報を得ることができる。そこで位置情報と速度情報を併用して、より正確にノイズ環境を判定してもよい。
【0126】
ノイズ環境を判定したら、ステップF103Aで制御・演算部31は、最適NC判定部31cの機能により、ノイズ環境に応じた最適NCモードを決定する。例えばノイズ環境が地下鉄内と判定したら地下鉄モードとする。なお判定したノイズ環境に直接的に対応するNCモードが存在しない場合は、現在のノイズ環境に比較的適切とされるNCモードを選択するようにすればよい。例えば電車モード、航空機モード、市街地モードが設けられている場合に、バス等の車両内と判定した場合、「電車モード」を選択するなどである。
【0127】
最適NCモードを判定したら制御・演算部31はステップF104で、ヘッドホン装置1側に対して最適NCモードを示す指示情報を送信する。即ち最適NCモードを示す指示情報を通信データとして生成し、通信部33から送信させる。
ヘッドホン装置1側の制御部11はステップF201で、通信部13によって受信された指示情報を取り込む。
そしてステップF105,及びステップF202で制御・演算部31と制御部11の間で、通信部33,13を介した通信を解除する処理を行う。
ヘッドホン装置1側では制御部11はステップF203で、指示情報に示されたNCモードに基づいて、メモリ部12からフィルタ係数を読み出す。
そして制御部11はステップF204で、読み出したフィルタ係数をDSP27の各フィルタに設定する。
【0128】
以上の処理の具体例は次のようになる。例えばユーザが地下鉄に乗ったとする。その場合に携帯端末2側の位置検出、ノイズ環境判定によって地下鉄車内であることが判定され、地下鉄モードが最適として、指示情報としてヘッドホン装置1側に「地下鉄モード」が指示される。
この指示情報に応じてヘッドホン装置1側の制御部11は、メモリ部12から、地下鉄モードのフィルタ係数として、FF−DNCフィルタ17FF用係数セット、FB−DNCフィルタ17FB用係数セット、イコライザ19用係数セットを読み出し、それぞれをFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19に設定する。
これにより、DSP27における各フィルタは、地下鉄モードのフィルタ処理を実行することとなる。結果、ヘッドホンユーザ(リスナ)にとって、地下鉄に乗っているという状況に応じた最適なNCシステム設定への切換が自動的に行われ、高いノイズキャンセル効果の状態で音楽等を聴取できる。
【0129】
なお、この第4の実施の形態の動作において、上述の第2の実施の形態の考え方を適用して、NCモードを示す指示情報ではなく、フィルタ係数を直接指定する指示情報を携帯端末2からヘッドホン装置1に送信するようにしてもよい。
例えばユーザが地下鉄に乗った場合に、携帯端末2側の位置検出、ノイズ環境判定によって地下鉄車内であることが判定され、地下鉄モードが最適とされる。この場合に地下鉄モードのフィルタ係数セットが指示情報に含まれてヘッドホン装置1側に送信されるようにする。
この指示情報を受信したヘッドホン装置1側の制御部11は、指示情報に含まれているFF−DNCフィルタ17FF用係数セット、FB−DNCフィルタ17FB用係数セット、イコライザ19用係数セットを取り込み、それぞれをFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19に設定する。
このようにしても、同様の高性能なノイズキャンセル効果が得られる。
また第3の実施の形態の考え方を適用して、音楽等のストリームデータも携帯端末2からヘッドホン装置1に送信する構成例も可能である。
【0130】
以上の第4の実施の形態によれば、第1〜第3の実施の形態と同様、ヘッドホン装置1の処理リソース負担の削減や消費電力削減の効果等、先に述べた各種効果が得られることは言うまでもない。
加えて以下の効果が得られる。
【0131】
例えば第1の実施の形態のようにマイクロホン37で収音したノイズを解析する方式の場合で、常時ノイズ状況を判定している場合、その場の突発的な騒音などがあることで過敏に反応してしまうこともあり、むやみにフィルタ係数設定が変更されてしまうことも想定される。
本例では音声情報を使わず、現在位置検出(及び現在の移動速度)からユーザの現在地場所(ノイズ環境)の推定を行うことで、突発的な騒音には反応しないようにできる。
その上で、ノイズ環境を的確に判定でき、容易にノイズ環境種別に応じて最適なNCモード判定も可能となる。
またノイズ解析処理負担がなく、制御・演算部31は位置情報取込、地図データベース参照という簡単な処理で最適NCモード判定ができるため、携帯端末2側の処理負担も小さくできる。
従って、マイクロホンが装備されていない装置(例えばPDA等の場合)であったり、処理リソースの小さい簡易型の携帯機器の場合でも、本例の携帯端末2として実現可能である。
【0132】
なお図13のステップF100での携帯端末2側の処理の起動トリガは、第1の実施の形態の図4に関して説明した場合と同様に、多様に考えられる。すなわち図13の処理について、所定時間ごとに定期的に行ったり、位置センサ、温度センサ、気圧センサ、高度センサ、移動速度センサの検出情報に応じて実行したり、あるいはユーザ操作をトリガとすることなどが考えられる。
特に第4の実施の形態の構成上、GPS受信機として位置検出部40(速度検出部を兼ねる)を備えることから、常時位置検出や速度検出を行っておき、位置や速度の変化が所定以上となった場合に図13の処理を実行することも好適である。
【0133】
また、特に起動トリガ判断は逐次行わず、NC処理最適化プログラムが常時実行されていてもよい。
例えばステップF102A、F103Aで説明した位置検出処理、最適NCモード判定処理が、携帯端末2側で常時実行されるようにする。そして、最適NCモードの判定結果が変化した場合に、ヘッドホン装置1との間で通信確立処理を行い、ヘッドホン装置1への指示情報送信が行われるようにする例である。
【0134】
なお、上記説明では、メモリ部32に地図データベースを格納しているとしたが、必ずしも地図データベースを携帯端末2内に備えなくてもよい。
例えば制御・演算部31は、現在位置情報を取得したら、その現在位置情報をネットワーク通信部39により外部サーバに送信する。外部サーバにおいては送信されてきた現在位置情報について地図データベースを参照し、ノイズ環境を判定して携帯端末2に送信する。携帯端末2は、これを受信することで地図データベースを記憶していなくとも、ノイズ環境判定が可能となる。
【0135】
さらには、最適なNCモード判定の機能も外部サーバに実行させ、携帯端末2は、外部サーバから最適NCモードの情報(あるいはさらには具体的なフィルタ係数の情報)を受信するようにしてもよい。その意味では携帯端末2において最適NCモード判定の機能はなくてもよい。
即ち、いわゆるクラウドコンピューティングの手法で、結果的に最適NCモード(第2の実施の形態の考え方を適用する場合は最適なフィルタ係数自体)が得られるようにし、それをヘッドホン装置1に送信するものとしてもよい。
【0136】
位置検出部40及び地図データベースを使用する場合の応用例として以下のような処理例も考えられる。
例えば図14に示すように、携帯端末2において地図表示を実行し、ユーザが通学・通勤経路をあらかじめインプットしておく。
出発・活用前に通学・通勤経路上で、移動交通区間や徒歩区間などの自動決定が可能であり、実際の通学・通勤時にGPSにてユーザ自身の位置をトレースすることで、周囲環境に応じた最適NCを、ヘッドホン本体側に提供することができるようになる。
【0137】
例えばユーザが図14に示す地点Aから地点Bを入力したとする。この場合に制御・演算部31は、地図データベースを参照すれば、区間RAは徒歩ルート、区間RBはバスルート、区間RCは地下鉄ルート、区間RDは徒歩ルート等として自動設定できる。あるいは徒歩、バス等の別をユーザが入力してもよい。
NCモードとして、徒歩(市街地)モード、バスモード、地下鉄モード等が用意されているのであれば、現在位置に応じたNCモード制御が適切に可能となる。つまり現在位置が区間RA内と判定されるときは徒歩モード、現在位置が区間RB内と判定されるときはバスモード、現在位置が区間RC内と判定されるときは地下鉄モード、現在位置が区間RD内と判定されるときは徒歩モードというように、自動的な判定が携帯端末2で実行され、ヘッドホン装置1側でNCモード設定が行われる。ユーザは通学・通勤経路で常時最適なNCモードでの音楽聴取等が可能となる。
【0138】
なお、NCモードを数多く準備し、その中から選択するのであれば、この経路上の各区間で自動的に対応するNCモードを設定することが好ましいが、区間設定や区間内での移動手段推定は必ずしも自動でなく、ユーザ自身のマニュアルで指定しても構わない。例えばバス利用と自動判定される区間を、ユーザによっては歩くかもしれない。従ってユーザによって徒歩、バス、電車等を指定できるようにしておくことでユーザ個人にあわせた最適なNCモード選択が可能となる。
また例えば、ユーザの使用感・感想である「この区間は〜のNCモードの方が良かった」などと、ユーザ共通のデータベースにフィードバックし、新しいNC手法開発・改善に向かわせることも可能である。
【0139】
<7.第5の実施の形態(各種複合検出例)>
ここまで、携帯端末2とヘッドホン装置1の連携として、携帯端末2側に内蔵するセンサデバイス(マイクロホン37、或いは位置検出部40(GPS受信機))を個別に使用した例を示した。しかしさらに、マイクロホン37よる騒音信号の収音解析と、位置検出部40/地図データベース活用の両面から現在地及び現在の乗り物を解析し、両情報をあわせることで、高精度な状況推定が可能となる。
さらに、スマートフォン等の携帯端末2では温度センサ、気圧センサを備えたものもあることに鑑みれば、これらの情報を同時に反映することで、さらに高精度化が図れると考えられる。
そこで第5の実施の形態として、各種複合的な検出を行う例を挙げていく。
【0140】
図15はノイズ解析と位置検出を併用する構成例である。即ち携帯端末2ではマイクロホン37、マイクアンプ36、A/D変換器35を備え、制御・演算部31にはノイズ解析部31bを有する。加えて位置検出部40を備え、制御・演算部31には検出情報取込部31dを有する。メモリ部32にはNCシステムデータベースや地図データベースが格納される。
【0141】
このような構成により、位置検出結果から、ノイズ環境を推定し、実際のノイズ解析結果により、ノイズ環境推定の正確性を判断して最適なNCモードを判定するといったことが可能となる。
またノイズ解析結果から導かれる最適NCモードや最適フィルタ係数について、位置情報から推定されるノイズ環境を加味して修正するといったことも可能である。
【0142】
次に図16は、上述の第4の実施の形態の携帯端末2の構成に、温度検出部42、気圧検出部43、高度検出部44を追加した構成例である。
温度検出部42で温度検出を行うことで、位置情報から推定されるノイズ環境に応じたフィルタ係数の修正を行うことが可能である。
気圧検出部43で気圧検出を行うことで、航空機内などのノイズ環境判断を正確化できる。さらにはユーザの聴覚は気圧によって大きく変化する。そのため、気圧に応じてフィルタ係数を調整するといったことも可能となる。
高度検出部44で高度検出を行うことで、航空機内などのノイズ環境判断を正確化できる。また高度に応じた気圧変化に鑑み、高度に応じてフィルタ係数を調整するといったことも可能となる。
また図17は、上述の第1の実施の形態の携帯端末2の構成に、温度検出部42、気圧検出部43、高度検出部44を追加した構成例である。図16の場合と同様に、各検出部の検出情報を利用できる。
【0143】
即ち、携帯端末2は、現在の温度情報を検出する温度検出部42、現在の気圧情報を検出する気圧検出部43、現在の高度情報を検出する高度検出部44の一部又は全部を備えるようにする。これにより、制御・演算部31は、ノイズ解析結果或いは位置によるノイズ環境判定結果に加え、温度情報、気圧情報、又は高度情報のいずれかを用いてより適切な指示情報を生成することができる。
【0144】
<8.アップロードシステム>
続いて、携帯端末2やヘッドホン装置1から情報をアップロードするシステムを説明する。図18は、携帯端末2、もしくは位置検出機能やアップロードのための通信機能を備えたヘッドホン装置1が、情報をネットワーク(クラウド)上のデータベース4にアップロードする状況を示している。
【0145】
各ユーザの携帯端末2或いはヘッドホン装置1から、現在位置情報、実際に観測した周囲騒音の解析情報、機種情報(マイクロホン37の特性感度補正用)、ユーザコメント(例えば最適NCモードを使用してどうだったかのコメント)などをアプリケーション経由でクラウド上のデータベース4側へ送信するような仕組みを構成している。
【0146】
先にも述べたが、携帯端末2から現在位置情報をアップロードする場合、サーバ側でノイズ環境情報、或いは最適NCモード、或いは最適フィルタ係数の判定処理を行ってもらい、単にその結果を受信するという処理も可能となる。この場合、内部の計算リソースが少ない携帯端末2でも、このようなクラウドからの情報を利用することで、詳細解析をすることなく適切なNCモードをヘッドホン装置1に実行させることが可能となる。
【0147】
また、上記各情報を携帯端末2やヘッドホン装置1からデータベース4にアップロードすることで、管理・開発組織5におけるNCモードにおけるフィルタ係数の更新、新たなNCモードの開発や、それらの成果のユーザへのフィードバックということも可能となる。
【0148】
例えば周囲騒音の解析情報やユーザコメントがデータベース4にクラウド上にデータとして集積されていれば、これを見た管理・開発組織5のNCシステム開発者(主としてメーカーのエンジニア)が、この情報を元に、新しいNCモードを開発設計し、これを提供することが可能となる。新たに作られたNCモード(フィルタ係数)は、携帯端末2を介してヘッドホン装置1に流れる。
この時、携帯端末2側はブルートゥース/WiFiなどでヘッドホン装置1と接続されているため、接続されたヘッドホン装置1の機種名などを知ることができる。この機種名を使ってクラウド側に問い合わせが可能である。携帯端末2からは、ヘッドホン装置1内に、複数のNCモード(デジタルフィルタ)がプリセットされていれば、そのインデックスを指定し、また新規のNCモードであれば、そのフィルタ実体(係数値、及び、構成手法)を送り込むことで、過去に使っていない新規のフィルタを使うことが可能となる。
【0149】
<9.プログラム>
実施の形態のプログラムは、上述の第1〜第4の実施の形態で説明したNC処理最適化プログラムである。
【0150】
例えば第1〜第3の実施の形態で説明したNC処理最適化プログラムは、少なくとも外来音を収音するマイクロホン37による収音音声信号についてノイズ解析を行う処理と、ノイズ解析結果から外部のヘッドホン装置1におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報(NCモード又はNCモードにおけるフィルタ係数自体を指示する指示情報)を生成する処理と、指示情報をヘッドホン装置1に対して送信する処理とを、携帯端末2の演算処理装置(制御・演算部31としてのDSP又はCPU)に実行させるプログラムである。
【0151】
また第4の実施の形態で説明したNC処理最適化プログラムは、現在位置情報を検出する位置検出部40から現在位置情報を取得する処理と、現在位置情報に基づいて、外部のヘッドホン装置1におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報(NCモード又はNCモードにおけるフィルタ係数自体を指示する指示情報)を生成する処理と、指示情報をヘッドホン装置1に対して送信する処理とを、携帯端末2の演算処理装置(制御・演算部31としてのDSP又はCPU)に実行させるプログラムである。
【0152】
このようなプログラムは、携帯端末2に内蔵されている記録媒体としてのフラッシュメモリ、ROM、HDDや、マイクロコンピュータ内のROM等に予め記録しておくことができる。
あるいはまた、プログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magnet optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
また、プログラムは、リムーバブル記録媒体からインストールする他、ダウンロードサイトから、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。
このようなプログラムのインストールによって、例えば汎用の携帯端末機器を実施の形態の携帯端末2として機能させることも可能となる。
そしてこのようなプログラムにより、実施の形態の携帯端末2を広くユーザに提供でき、各実施の形態のヘッドホンシステムの効果をユーザが容易に享受できる。
【0153】
<10.変形例>
以上、各種の実施の形態を説明してきたが、本開示の技術はさらに多様に変形例が考えられる。
【0154】
携帯端末2とヘッドホン装置1は無線通信を行う例を挙げたが、有線通信を行うようにしてもよい。
またヘッドホン装置1は、説明上、ステレオヘッドホンであると言及したが、NCシステムを有するモノラルヘッドホンであってもよい。
携帯端末2からヘッドホン装置1に対しては、指示情報としてNCモード又はフィルタ係数自体を送信するものとしたが、これ以外の各種の指示情報(制御情報)を送信することも考えられる。
例えばノイズ解析結果や現在位置から判定されるノイズ環境に応じた音量制御であったり、NCモードとは直接関係ない音質補正(イコライジングのフィルタ係数)や音響効果処理の制御信号などを送信してもよい。
さらには、例えば複合方式の構成を備える場合に、複合方式、フィードバック方式、フィードフォワード方式を選択可能とすることも考えられ、当該選択制御情報を指示情報として送信してもよい。
【0155】
携帯端末2は「携帯型」の機器を前提としたが、必ずしも携帯型に限定されるものではない。例えば固定的な端末装置であって、実施の形態で説明した処理を行う装置を各所に配置する。そして、通信可能なヘッドホン装置1(近づいてきたユーザが所有するヘッドホン装置1)に対して、通信を行い、NCモード又はフィルタ係数自体の指示情報を送信するといったことも可能である。
【0156】
なお本技術のヘッドホン装置は以下のような構成も採ることができる。
(1)音声出力を行うドライバユニットと、
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてフィルタ処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、該ノイズキャンセル信号と入力音声信号を合成して出力音声信号を得、該出力音声信号を上記ドライバユニットに供給するノイズキャンセル処理部と、
外部の端末装置との間で通信を行う通信部と、
上記端末装置から送信され、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う制御部と、
を備えたヘッドホン装置。
(2)上記入力音声信号について信号処理を行う信号処理部を備え、
上記制御部は、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記信号処理部の処理パラメータの設定処理を行う上記(1)に記載のヘッドホン装置。
(3)上記処理パラメータを記憶する記憶部を備え、
上記制御部は、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記記憶部から処理パラメータを読み出して上記設定処理を行う上記(1)又は(2)に記載のヘッドホン装置。
(4)上記通信部では上記指示情報として処理パラメータを受信し、
上記制御部は、上記通信部で受信した処理パラメータを用いて上記設定処理を行う上記(1)又は(2)に記載のヘッドホン装置。
(5)上記通信部では音声信号も受信し、当該音声信号が上記入力音声信号とされる上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のヘッドホン装置。
【符号の説明】
【0157】
1 ヘッドホン装置、2 携帯端末、11 制御部、12 メモリ部、13 通信部、14FF,14FB,37 マイクロホン、17FF FF−DNCフィルタ、17FB FB−DNCフィルタ、19 イコライザ、21 ドライバユニット、27 DSP、31 制御・演算部、31a シーケンス制御部、31b ノイズ解析部、31c 最適NC判定部、31d 検出情報取込部、32 メモリ部、33 通信部、40 位置検出部
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドホン装置と端末装置、及びこれらを有するヘッドホンシステム、さらには端末装置の情報送信方法と端末装置における演算処理装置の処理を実行させるプログラムに関する。特にはヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理のパラメータ設定に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−122729号公報
【特許文献2】特開2008−116782号公報
【特許文献3】特開2008−250270号公報
【背景技術】
【0003】
上記特許文献1,2,3にも開示されているように、携帯型のオーディオプレーヤ等に用いるヘッドホンにおいて外部環境のノイズ(騒音)を低減して、リスナに対して、外部ノイズを低減した良好な再生音場空間を提供するようにしたノイズキャンセルシステムが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のノイズキャンセルシステムの一例は、アクティブなノイズ低減を行なうアクティブ方式のノイズ低減システムで、基本的には、次のような構成を備える。
すなわち、音響−電気変換手段としてのマイクロホンで外部ノイズ(騒音)を収音し、その収音したノイズの音声信号から、ノイズとは音響的に逆相のノイズキャンセル信号を生成する。このノイズキャンセル信号を、音楽等の本来の聴取目的たる音声信号と合成してスピーカで音響再生する。これにより外来ノイズが音響的に相殺されるようにしてノイズを低減するものである。
【0005】
ここで、ノイズキャンセル信号を生成するためにはデジタルフィルタ処理が用いられるが、そのフィルタ特性は周囲環境に応じて変化させることで、周囲のノイズ状況に応じたノイズキャンセルの最適化を図ることができる。
【0006】
ところがこのためには、周囲のノイズ状況を解析し、その特性に適したフィルタ特性(例えば係数パラメータ)を求めなければならず、処理負担の大きな演算を要する。このため、ヘッドホン装置に高い演算能力が要求されたり、消費電力の増大により、通常電池駆動されるヘッドホン装置の稼働時間が減少してしまうという問題が生ずる。
【0007】
そこで本開示では、ヘッドホン装置の処理負担を軽減しつつ、ノイズキャンセル処理の最適化を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のヘッドホン装置は、音声出力を行うドライバユニットと、少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、上記マイクロホンによる収音音声信号についてフィルタ処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、該ノイズキャンセル信号と入力音声信号を合成して出力音声信号を得、該出力音声信号を上記ドライバユニットに供給するノイズキャンセル処理部と、外部の端末装置との間で通信を行う通信部と、上記端末装置から送信され、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う制御部とを備える。
【0009】
本開示の端末装置は、少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、外部の上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、上記マイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行い、ノイズ解析結果から上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部とを備える。
また本開示の端末装置の情報送信方法は、 少なくとも外来音を収音するマイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行い、上記ノイズ解析の結果から外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する。
本開示のプログラムは、少なくとも外来音を収音するマイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行う処理と、ノイズ解析結果から外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成する処理と、上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する処理とを端末装置における演算処理装置に実行させるプログラムである。
【0010】
また本開示の端末装置は、現在位置情報を検出する位置検出部と、外部の上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、上記位置検出部で検出された現在位置情報に基づいて、上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部とを備える。
また本開示の端末装置の情報送信方法は、現在位置情報を検出する位置検出部から現在位置情報を取得し、上記現在位置情報に基づいて、外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する。
本開示のプログラムは、現在位置情報を検出する位置検出部から現在位置情報を取得する処理と、上記現在位置情報に基づいて、外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成する処理と、上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する処理とを、端末装置における演算処理装置に実行させるプログラムである。
【0011】
本開示のヘッドホンシステムは、上記のヘッドホン装置と、上記の端末装置を有して成る。
【0012】
これらの本開示の技術は、ヘッドホン装置の稼動時間を改善するために、ノイズ解析や位置情報に基づくノイズキャンセル処理用のパラメータ判定処理を端末装置側で実行するものである。
即ち端末装置側で、ノイズ解析結果や現在位置情報に基づいて、ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報をヘッドホン装置へ送信する。ヘッドホン装置では、受信した指示情報に基づいて、ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う。これによってヘッドホン装置側の処理リソースの負担を減らす。
【発明の効果】
【0013】
本開示によればヘッドホン装置側の処理リソース負担を軽減でき、これによってノイズキャンセル処理の自動的な最適化を行う場合に処理能力の高い演算機能が要求されることを解消でき、また消費電力の削減という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の実施の形態のヘッドホンシステムの説明図である。
【図2】第1の実施の形態のヘッドホン装置のブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の携帯端末のブロック図である。
【図4】第1の実施の形態のパラメータ設定処理のフローチャートである。
【図5】実施の形態のノイズ解析及び最適NC判定処理の説明図である。
【図6】実施の形態のノイズ解析及び最適NC判定処理のフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態の変形例のヘッドホン装置のブロック図である。
【図8】第1の実施の形態の変形例のヘッドホン装置のブロック図である。
【図9】第2の実施の形態のパラメータ設定処理のフローチャートである。
【図10】第3の実施の形態のヘッドホン装置のブロック図である。
【図11】第3の実施の形態の携帯端末のブロック図である。
【図12】第4の実施の形態の携帯端末のブロック図である。
【図13】第4の実施の形態のパラメータ設定処理のフローチャートである。
【図14】第4の実施の形態のルート設定の説明図である。
【図15】第5の実施の形態の携帯端末の構成例のブロック図である。
【図16】第5の実施の形態の携帯端末の構成例のブロック図である。
【図17】第5の実施の形態の携帯端末の構成例のブロック図である。
【図18】実施の形態のアップロードシステムの説明図である。
【図19】フィードバック方式のノイズキャンセルシステムの説明図である。
【図20】フィードバック方式の伝達関数の説明図である。
【図21】フィードフォワード方式のノイズキャンセルシステムの説明図である。
【図22】フィードフォワード方式の伝達関数の説明図である。
【図23】複合方式のノイズキャンセルシステムの説明図である。
【図24】フィルタ係数最適化を行うノイズキャンセルシステムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を次の順序で説明する。
<1.ノイズキャンセリング技術の説明>
[1−1 フィードバック方式]
[1−2 フィードフォワード方式]
[1−3 複合方式]
[1−4 フィルタ係数最適化]
<2.実施の形態のヘッドホンシステム>
<3.第1の実施の形態(ノイズ解析)>
<4.第2の実施の形態(ノイズ解析)>
<5.第3の実施の形態(ストリーム送信)>
<6.第4の実施の形態(位置検出)>
<7.第5の実施の形態(各種複合検出例)>
<8.アップロードシステム>
<9.プログラム>
<10.変形例>
なお、実施の形態の記載及び請求項でいう「ヘッドホン」とは、ユーザが耳に装着して聴音する装置の総称とし、頭部に装着するヘッドセット型のほか、いわゆる「イヤホン」と呼ばれる耳介或いは耳孔に装着するようなタイプも含むものとする。
また以下では説明上、「ノイズキャンセル」については「NC」と略記することもある。
【0016】
<1.ノイズキャンセリング技術の説明>
まず、実施の形態の説明に先立って、図19〜図24を参照してヘッドホン装置に適用されるノイズキャンセル(NC)システムについて説明する。
アクティブなノイズ低減を行なうシステムとしては、フィードバック方式(FB方式)と、フィードフォワード方式(FF方式)がある。
また、ノイズ環境に応じたノイズキャンセル特性を変更する方式は、ユーザの選択指示に応じて行なう手動選択方式と、ノイズ環境に応じて特性を自動的に変更する自動変更方式の2通りがある。
以下では、それぞれについて説明していく。
【0017】
[1−1 フィードバック方式]
まずフィードバック方式のNCシステムについて説明する。図19はNCシステムを適用したヘッドホンの構成例を示すブロック図である。
なお図1においては、説明の簡単のため、ヘッドホン装置のリスナ(聴取者)301の右耳側の部分のみについての構成を示している。これは、後述する図21,図23,図24、及び後述する実施の形態の説明でも同様とする。なお、左耳側の部分も同様に構成されることは言うまでもない。
【0018】
図19では、リスナ301がヘッドホン装置を装着したことにより、リスナ301の右耳が右耳用ヘッドホン筐体(ハウジング部)302により覆われている状態を示している。ヘッドホン筐体302の内側には、電気信号である音声信号を音響再生する電気−音響変換手段としてのヘッドホンドライバユニット(以下、単にドライバユニットという)311が設けられている。
そして、音声信号入力端312を通じた入力音声信号S(例えば音楽信号)がイコライザ313および加算器314を通じて出力音声信号としてパワーアンプ315に供給される。このパワーアンプ315を通じた音声信号がドライバユニット311に供給されて、音響再生され、リスナ301の右耳に対して再生音が放音される。
【0019】
音声信号入力端312は、例えば携帯型音楽再生装置のヘッドホンジャックに差し込まれるヘッドホンプラグから構成される。
この音声信号入力端312と、左右の耳用のドライバユニット311との間の音声信号伝送路中には、イコライザ313、加算器314、パワーアンプ315の他、図示のようにマイクロホン321、マイクロホンアンプ(以下、単にマイクアンプという)322、ノイズキャンセル用のFB(Feedback)フィルタ回路323、メモリ324、メモリコントローラ325、操作部326などを備えるノイズキャンセル回路部が設けられる構成とされている。
この図19の構成では、リスナ301の音楽聴取環境において、ヘッドホン筐体302の外部のノイズNZのうち、ヘッドホン筐体302内のリスナ301の音楽聴取位置に入り込むノイズNZ’をフィードバック方式で低減して、音楽を良好な環境で聴取することができるようにする。
【0020】
フィードバック方式のNCシステムにおいては、リスナ301の音楽聴取位置であるところの、ノイズと音声信号の音響再生音とを合成する音響合成位置(ノイズキャンセルポイントPc)でのノイズを収音する。
したがって、ノイズ収音用のマイクロホン321は、ヘッドホン筐体(ハウジング部)302の内側となるノイズキャンセルポイントPcに設けられる。このマイクロホン321の位置の音が制御点となるため、ノイズ減衰効果を考慮し、ノイズキャンセルポイントPcは、通常耳に近い位置、つまりドライバユニット311の振動板前面とされ、この位置に、マイクロホン321が設けられる。
そして、そのマイクロホン321で収音したノイズNZ’の逆相成分を、FBフィルタ回路323で、ノイズキャンセル信号として生成し、その生成したノイズキャンセル信号をドライバユニット311に供給して音響再生することで、外部からヘッドホン筐体302内に入ってきたノイズNZ’を低減させるものである。
【0021】
ノイズキャンセル信号を生成するFBフィルタ回路323は、DSP(Digital Signal Processor)432と、その前段に設けられるA/D変換回路431と、その後段に設けられるD/A変換回路433とで構成される。
マイクロホン321で収音されたアナログ音声信号は、マイクアンプ322を通じてFBフィルタ回路323に供給され、A/D変換回路431によりデジタル音声信号に変換される。そして、そのデジタル音声信号がDSP432に供給される。
DSP432には、フィードバック方式のデジタルノイズキャンセル信号を生成するためのデジタルフィルタが構成される。このデジタルフィルタは、これに入力されるデジタル音声信号から、これに設定されるパラメータとしてのフィルタ係数に応じた特性のデジタルノイズキャンセル信号を生成する。DSP432のデジタルフィルタに設定されるフィルタ係数は、この例の場合では、メモリ324からメモリコントローラ325を通じて供給される。
【0022】
メモリ324には、種々の異なる複数のノイズ環境におけるノイズを、DSP432のデジタルフィルタで生成するノイズキャンセル信号により低減することができるようにするために、後述するような複数個(複数セット)のパラメータとしてのフィルタ係数が記憶されている。
メモリコントローラ325は、メモリ324から、特定の1個(1セット)のフィルタ係数を読み出して、DSP432のデジタルフィルタに設定する。
そして、この構成例の場合、メモリコントローラ325に対しては、操作部326の操作出力信号が供給されている。メモリコントローラ325は、この操作部326からの操作出力信号に応じて、メモリ324から特定の1個(1セット)のフィルタ係数を選択して読み出し、DSP432のデジタルフィルタに設定する。
【0023】
DSP432のデジタルフィルタでは、以上のようにメモリコントローラ325を介してメモリ324から選択的に読み出されて設定されたフィルタ係数に応じたデジタルノイズキャンセル信号を生成する。
そして、生成されたデジタルノイズキャンセル信号は、D/A変換回路433においてアナログノイズキャンセル信号に変換される。そして、このアナログノイズキャンセル信号が、FBフィルタ回路323の出力信号として加算器314に供給される。
【0024】
上述のように加算器314には、リスナ301が聴取したいとされる入力音声信号(音楽信号など)Sが、音声信号入力端12を通じ、イコライザ313を通じて供給される。イコライザ313は、入力音声信号の音質補正を行なう。
このイコライザ313の出力と、FBフィルタ回路323からのノイズキャンセル信号が加算器314で合成され、出力音声信号として、パワーアンプ315を通じてドライバユニット311に供給されて音響再生される。
この再生音声にはFBフィルタ回路323において生成されたノイズキャンセル信号による音響再生成分が含まれる。このノイズキャンセル信号による音響再生成分とノイズNZ’とが、音響合成されることにより、ノイズキャンセルポイントPcでは、ノイズNZ’が低減(キャンセル)される。
【0025】
以上のフィードバック方式のノイズキャンセル動作について、伝達関数を用いて、図20を参照しながら説明する。
図20は、図19に示した各部をその伝達関数を用いて表したブロック図として示している。この図20において、「A」はパワーアンプ315の伝達関数、「D」はドライバユニット311の伝達関数、「M」はマイクロホン321およびマイクアンプ322の部分に対応する伝達関数、「−β」はフィードバックのために設計されたフィルタの伝達関数である。また、「H」はドライバユニット311からマイクロホン321までの空間の伝達関数、「E」は聴取目的の音声信号Sにかけられるイコライザ313の伝達関数である。上記の各伝達関数は複素表現されているものとする。
【0026】
また、図20において、「N」は外部のノイズ源からヘッドホン筐体302内のマイクロホン321位置近辺に侵入してきたノイズであり、「P」はリスナ301の耳に届く音圧である。なお、外部ノイズがヘッドホン筐体302内に伝わってくる原因としては、例えばイヤーパッド部の隙間から音圧として漏れてくる場合や、ヘッドホン筐体302が音圧を受けて振動した結果としてヘッドホン筐体2内部に音が伝わる場合などが考えられる。
【0027】
この図20の伝達関数ブロックは、次の(式1)で表現することができる。
P={1/(1+ADHMβ)}・N+{AHD/(1+ADHMβ)}・ES
・・・(式1)
【0028】
そして、この(式1)において、ノイズNに着目すると、ノイズNは、1/(1+ADHMβ)に減衰していることが分かる。ただし(式1)の系がノイズ低減対象周波数帯域にて、ノイズキャンセリング機構として安定して動作するためには、次の(式2)が成立している必要がある。
|1/(1+ADHMβ)|<1 ・・・(式2)
【0029】
次に、上記ノイズ低減機能に加え、必要な音をヘッドホンのドライバユニットから再生する場合について説明する。
なお図20における、聴取対象の音声信号Sは、実際には音楽信号以外にも、筐体外部のマイクの音(補聴機能として使う)や、通信を介した音声信号(ヘッドセットとして使う)など、本来、ヘッドホンのドライバユニットで再生すべきものの信号総称である。
【0030】
上記(式1)のうち、信号Sに着目すると、(式3)のように、イコライザEを設定すれば、音圧Pは(式4)のように表現される。
E=(1+ADHMβ) ・・・(式3)
P={1/(1+ADHMβ)}・N+ADHS ・・・(式4)
【0031】
したがって、マイクロホン321の位置が耳位置に非常に近いとすると、Hがドライバユニット311からマイクロホン321(耳)までの伝達関数、AやDがそれぞれパワーアンプ315、ドライバユニット311の特性の伝達関数であるので、通常のノイズ低減機能を持たないヘッドホンと同様の特性が得られることがわかる。なお、このとき、イコライザ313の伝達特性Eは、周波数軸でみたオープンループ特性とほぼ同等の特性になっている。
【0032】
以上から理解されるように図19の構成のヘッドホン装置では、ノイズを低減しながら、聴取対象の音声信号を、何等支障なく聴取することができる。ただし、この場合に、十分なノイズ低減効果を得るためには、DSP432で構成されるデジタルフィルタには、外部ノイズNZがヘッドホン筐体302内に伝達されたノイズの特性に応じたフィルタ係数が設定される必要がある。
前述したように、ノイズが発生しているノイズ環境には、種々存在し、そのノイズの周波数特性や位相特性は、それぞれのノイズ環境に応じたものとなっている。このため、単一のフィルタ係数では、すべてのノイズ環境において、十分なノイズ低減効果を得ることができることは期待できない。
【0033】
そこで例えばメモリ324に、種々のノイズ環境に応じた複数個(複数セット)のフィルタ係数を、予め記憶して用意しておき、その複数個のフィルタ係数から、適切と考えられるものを、選択して読み出し、FBフィルタ回路323のDSP432において構成されているデジタルフィルタに設定するようにする。
【0034】
デジタルフィルタに設定するフィルタ係数は、種々様々なノイズ環境のそれぞれにおいてノイズを収音して、そのノイズを低減(キャンセル)することができる、適切なものを、予め、算出して、メモリ324に記憶しておくようにすることが望ましい。例えば、駅のプラットフォーム、飛行場、飛行機の中、地上を走る電車の中、地下鉄の電車の中、バスの中、町の雑踏、大型店舗内など、種々のノイズ環境におけるノイズを、収音して、そのノイズを低減することができる適切なものを、予め算出して、メモリ324に記憶しておく。
そしてメモリコントローラ325は、メモリ324に記憶されている複数個(複数セット)のフィルタ係数からの適切なフィルタ係数の選択を、ユーザの操作部326を用いた操作に応じて行なう。
例えば各フィルタ係数のセットをそれぞれ、地下鉄モード、飛行機モード、バスモード、雑踏モード(説明上、これらを総称して「NCモード」ということとする)などし、ユーザが操作によってモード選択できるようにする。従ってユーザは、現在の騒音環境に応じて最適なフィルタ係数を指示できる。例えば地下鉄に乗っている場合にはNCモードとして地下鉄モードを指示する。これによってDSP432において構成されているデジタルフィルタに地下鉄モードのフィルタ係数が設定され、地下鉄内でのノイズキャンセル効果を最適化できる。
【0035】
[1−2 フィードフォワード方式]
次に図21,図22でフィードフォワード方式のノイズキャンセルを行うヘッドホン装置を説明する。なお図19と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
この場合、リスナ301の音楽聴取環境において、ヘッドホン筐体302の外のノイズNZから、ヘッドホン筐体302内のリスナ301の音楽聴取位置に入り込むノイズをフィードフォワード方式で低減して、音楽を良好な環境で聴取することができるようにする。
フィードフォワード方式のノイズキャンセルシステムは、基本的には、ヘッドホン筐体302の外部にマイクロホン331が設置されており、このマイクロホン331で、収音したノイズNZに対して適切なフィルタリング処理をしてノイズキャンセル信号を生成する。この生成したノイズキャンセル信号を、ドライバユニット311にて音響再生し、リスナ301の耳に近いところで、ノイズNZ’をキャンセルする。
【0036】
マイクロホン331で収音されるノイズNZと、ヘッドホン筐体302内のノイズNZ’は、両者の空間的位置の違い(ヘッドホン筐体2の外と内の違いを含む)に応じた異なる特性となる。したがって、フィードフォワード方式では、マイクロホン331で収音したノイズNZと、ノイズキャンセルポイントPcにおけるノイズNZ’との空間伝達関数の違いを見込んで、ノイズキャンセル信号を生成するようにする。
【0037】
このフィードフォワード方式のノイズキャンセル信号の生成はFF(Feedforward)フィルタ回路333で行う。
FFフィルタ回路333は、上述のFBフィルタ回路323と同様に、DSP442と、その前段に設けられるA/D変換回路441と、その後段に設けられるD/A変換回路443とで構成される。
そして、マイクロホン331で収音されて得られたアナログ音声信号は、マイクアンプ332を通じてFFフィルタ回路333に供給され、A/D変換回路441によりデジタル音声信号に変換される。そして、そのデジタル音声信号がDSP442に供給される。
【0038】
DSP442には、フィードフォワード方式のデジタルノイズキャンセル信号を生成するためのデジタルフィルタが構成される。このデジタルフィルタは、入力されるデジタル音声信号から、設定されるパラメータとしてのフィルタ係数に応じた特性のデジタルノイズキャンセル信号を生成する。DSP442のデジタルフィルタに設定されるフィルタ係数は、先の図19の例と同様に、例えばメモリ324からメモリコントローラ325を通じて供給されればよい。
例えばユーザ操作に応じて選択されたNCモード(地下鉄モード等)のフィルタ係数が設定される。
【0039】
DSP442で生成されたデジタルノイズキャンセル信号は、D/A変換回路443においてアナログノイズキャンセル信号に変換される。そして、このアナログノイズキャンセル信号が、FFフィルタ回路333の出力信号として加算器314に供給される。
加算器314では、ノイズキャンセル信号と、音声信号入力端312、イコライザ313を介した音声信号Sとが合成され、パワーアンプ315に供給される。そしてドライバユニット311から音響再生される。
この再生される音声には、FFフィルタ333で生成されたノイズキャンセル信号による音響再生成分が含まれる。このノイズキャンセル信号による音響再生成分とノイズNZ’とが、音響合成されることにより、ノイズキャンセルポイントPcでは、ノイズNZ’が低減(キャンセル)される。
以上によりフィードフォワード方式ノイズキャンセル動作が実現される。
なお、FFフィルタ回路333の構成は図19で示したFBフィルタ回路323と同様であるが、DSP432,DSP442で構成されるデジタルフィルタに供給するフィルタ係数が、フィードバック方式のものか、フィードフォワード方式のものかという点で異なる。
【0040】
図22は、フィードフォワード方式のノイズ低減動作について、図21に対応した伝達関数を用いて示したものである。
図中の「A」(パワーアンプ315の伝達関数)、「D」(ドライバユニット311の伝達関数)、「H」(ドライバユニット311からキャンセルポイントPcまでの空間の伝達関数)、「E」(聴取目的の音声信号Sにかけられるイコライザ313の伝達関数)、「P」(リスナ301の耳に届く音圧)は、先に図20に示したものと同様である。
そして「M」はマイクロホン331およびマイクアンプ332の部分に対応する伝達関数、「−α」はフィードフォワードのために設計されたフィルタの伝達関数である。また、「F」は外部のノイズ源3のノイズNの位置からリスナの耳のキャンセルポイントPcの位置に至るまでの伝達関数、「F’」はノイズ源からマイクロホン331の位置までの伝達関数である。各伝達関数は複素表現されているものとする。
【0041】
この図22の伝達関数ブロックは、次の(式5)で表現することができる。
P=−F’ADHMαN+FN+ADHS ・・・(式5)
【0042】
ここで理想的な状態を考え、伝達関数Fが
F=−F’ADHMα ・・・(式6)
のように表せるとすると、上記(式5)は、
P=ADHS ・・・(式7)
で表すことができる。つまり、ノイズNはキャンセルされ、音楽信号(または聴取する目的とする音楽信号等)Sだけが残り、通常のヘッドホン動作と同様の音を聴取することができることが分かる。
なお(式6)は、その式から自明であるが、ノイズ源から耳位置までの伝達関数を、デジタルフィルタの伝達関数αを含めた電気回路にて模倣することを意味している。
【0043】
ただし実際は、上記(式6)が完全に成立するような伝達関数を持つ完全なフィルタの構成は困難である。特に中高域に関しては、ヘッドホン装着状態や耳形状により個人差が大きいことや、ノイズの位置やマイクロホン位置などにより特性が変化することがある。そのため通常は中高域に関しては、以上のアクティブなノイズ低減処理を行わず、ヘッドホン筐体302でパッシブな遮音をすることが多い。
【0044】
[1−3 複合方式]
図23は、フィードバック系とフィードフォワード系の両方を搭載したNCシステムの構成例を示している。説明上、フィードフォワード方式とフィードフォワード方式の両方を用いる場合を複合方式ということとする。なお図23において図19、図21と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0045】
図23Aに示すように、この場合、マイクロホン321,マイクアンプ322、A/D変換回路344はフィードバック系の構成となり、マイクロホン331,マイクアンプ332、A/D変換回路451はフィードフォワード系の構成となる。
ノイズキャンセル信号を生成するフィルタ回路に関しては、フィードバック系とフィードフォワード系でそれぞれ独立に設けてもよいが、ここでは両系統の処理を行うフィルタ回路340を用いる例としている。
フィルタ回路340は、A/D変換回路451、DSP452、D/A変換回路453から成る。この場合、DSP452は、上述のFBフィルタ回路323のデジタルフィルタ(−β)と、FFフィルタ回路333のデジタルフィルタ(−α)、さらにイコライザ313、加算器314としての信号処理を行うものとしている。
【0046】
すなわち図23BにDSP452で実現される構成を詳しく示しているが、デジタルフィルタ回路521としてフィードバック方式のフィルタ処理が行われてノイズキャンセル信号が生成される。またデジタルフィルタ回路522としてフィードフォワード方式のフィルタ処理が行われてノイズキャンセル信号が生成される。さらに入力音声信号SはA/D変換回路337でデジタルデータとされてDSP452のデジタルイコライザ回路523でイコライジング処理される。
そしてデジタルフィルタ回路521で生成されるフィードバック方式のノイズキャンセル信号と、デジタルフィルタ回路522で生成されるフィードフォワード方式のノイズキャンセル信号と、デジタルイコライザ回路523でイコライジング処理された入力音声信号が、加算器524で加算され、D/A変換回路453でアナログ信号とされてパワーアンプ315に供給される。そしてドライバユニット311から音響出力されるが、この場合、再生音響には、両方式のノイズキャンセル信号成分が含まれており、ノイズキャンセルポイントPcでノイズNZ’が低減される。
【0047】
この場合も、デジタルフィルタ回路521,522におけるフィルタ係数としては、各種の環境に応じたフィルタ係数セットをメモリ324に記憶しておき、操作部326を用いたユーザ操作に応じてフィルタ係数を設定することで、ノイズ環境に適したノイズ低減処理が実現される。
【0048】
[1−4 フィルタ係数最適化]
ここまでフィードバック方式、フィードフォワード方式、複合方式の説明をしたが、それぞれフィルタ係数の設定はユーザの操作に応じて実行するものとしたが、自動的にノイズ環境を判定し、フィルタ係数設定を行うようにすれば、ユーザの操作負担をなくしつつ、常時、ノイズキャンセル動作を最適化できる。
例えば図24は、図21のフィードフォワード方式の構成において、操作部326に代えて、以下に説明するような自動選択手法を採用した場合を示している。図21と同一部分は同一符号としている。
【0049】
この場合、FFフィルタ回路333のDSP442には、フィードフォワード方式対応のデジタルフィルタ回路621だけでなく、ノイズ分析部622および最適特性評価部623が構成される。
そして、ノイズ分析部622は、マイクロホン331で収音したノイズの特性を分析し、その分析結果を最適フィルタ係数評価部623に供給する。例えば最適フィルタ係数評価部623は、ノイズ分析部622からの分析結果に基づくノイズ特性カーブと逆特性のカーブに最も近いノイズ低減カーブ特性となるフィルタ係数を、メモリ324に記憶されているフィルタ係数のうちから選定し、最適な1セットのフィルタ係数を決定する。そしてその決定結果をメモリコントローラ325に伝える。
メモリコントローラ325は、決定結果に応じてメモリ324から最適とされるフィルタ係数セットを読み出し、デジタルフィルタ回路621に設定する。
【0050】
なお、このような自動的な最適フィルタ係数の選択及び設定処理は、入力音声信号Sの無音期間に行うようにするとよい。このため起動制御部350を設け、起動制御部350は入力音声信号Sについて無音期間検出を行う。
無音期間を検出したら、起動制御部350は、ノイズ分析部622、最適フィルタ係数評価部623およびメモリコントローラ325に起動制御信号を送って、最適フィルタ係数の自動選択処理動作の起動をかけるようにする。
【0051】
例えばこのような最適フィルタ係数自動判定は、図24のフィードフォワード方式のNCシステムだけでなく、フィードバック方式や複合方式のNCシステムでも適用できる。そしてこれによっては、NCシステムにおけるノイズ低減効果を、ユーザが操作負担無く有効に享受できるようになる。
ところが、この最適フィルタ係数自動判定を行う場合、周囲のノイズ状況を解析するノイズ分析部622の処理や、その結果を用いた最適フィルタ係数評価部623の処理として、DSPやCPU等の演算処理装置として高い演算能力が要求されたり、消費電力の増大という問題が生ずる。
【0052】
そこで本実施の形態では、以下に説明していく各種手法で、ヘッドホン装置の処理負担を軽減しつつ、ノイズキャンセル処理の最適化を実現する。
【0053】
<2.実施の形態のヘッドホンシステム>
後述する第1〜第5の実施の形態に係るヘッドホンシステムの基本構成を図1に示す。
各実施の形態においては、図1に示すようにヘッドホン装置1と携帯端末2が相互に通信可能とされてヘッドホンシステムが形成される。
【0054】
ヘッドホン装置1は、ノイズキャンセル機能を有するヘッドホン(いわゆるイヤホン形態の場合も含む)であり、例えば音声信号入力用のプラグ1aを図示しない携帯型オーディオプレーヤ等に接続して音楽等の音声信号を入力し、当該ヘッドホン装置1を装着したリスナに対して音響出力する装置である。
なお、実施の形態において後述するが、プラグ1a(及びコード)は必ずしも必要ではなく、携帯用オーディオプレーヤ、或いは携帯端末2、或いは他の機器から、無線通信で音声信号を入力する形態でもよい。
【0055】
携帯端末2は、具体的には例えば携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯用情報処理装置、携帯用ゲーム機、或いは近年スマートフォン等の名称で呼ばれているPDA機能付き多機能携帯電話機などである。
この携帯端末2とヘッドホン装置1は、例えば近距離無線通信(Bluetooth,WiFi(wireless fidelity)等)により制御情報(指示情報)やストリーム信号等の各種信号の通信が可能とされる。
【0056】
本実施の形態の場合、ヘッドホン装置1内に設けられるノイズキャンセルシステムは、上述のフィードバック方式、フィードフォワード方式、複合方式のいずれでもよい。そして特にそのノイズキャンセルシステムでは、最適フィルタ係数を内部的に自動設定する機能を持つ。但し、実施の形態の場合、最適フィルタ係数を判定する機能は持たせないようにしている。
一方で、携帯端末2では、周囲騒音の解析や位置検出等の機能、さらにはそれらに応じて最適なノイズキャンセル信号生成用のフィルタ係数判定機能を備えるものとする。
そして携帯端末2側で生成した、フィルタ係数判定に係る指示情報を、ヘッドホン装置1に送信する。ヘッドホン装置1は、受信した指示情報に応じてNCシステムにおけるフィルタ係数設定を行うことで、リスナに対し、最適化されたノイズ低減効果の下での聴取状態を提供する。
つまり、通常ユーザがヘッドホン装置1とともに携帯している携帯端末2を利用して、ヘッドホン装置1における処理のリソース削減、消費電力低減を図るものである。
特に近年、携帯端末2は汎用的なUI(User Interface)と豊富なアプリケーションを実行可能とされ、また様々なセンサ類を備えている。また基本的に、ユーザは携帯端末2を常時持ち歩いているという使用状況がある。これらを考え、携帯端末2をヘッドホン装置1の使用時に有効利用できるようにするものとも言える。
【0057】
<3.第1の実施の形態(ノイズ解析)>
第1の実施の形態を図2から図6を参照して説明する。
図2はヘッドホン装置1の内部構成のブロック図である。なお、図示の都合及び説明の簡略化のため、ステレオ音声信号についての左右チャンネルの一方のみ(例えばユーザの右耳に対応する構成部分のみ)を示している。他方のチャンネル側も同様の構成をとれば良い。但しノイズキャンセルシステムの構成部位については、左右チャンネルで共用構成とすることも可能であることは自明である。
【0058】
この図2のヘッドホン装置1では、基本的には音楽等の入力音声信号を入力する部位として、デジタル入力部23とA/D変換器24を有する例を挙げている。
例えば接続されたオーディオプレーヤ等の音楽・音声ソース機器(図示せず)からは、その接続形態により、入力音声信号として、デジタル音声信号Adi又はアナログ音声信号Aaが供給される。なお、これらの一方のみが入力される構成でもよい。
【0059】
端子25から入力されるデジタル音声信号Adiは、デジタル入力部23で必要な処理が施され、デジタル音声信号としてマルチプレクサ22に供給される。例えばデジタル入力部23ではデジタル音声信号の送信フォーマット等に応じてのデコード処理等が行われ、例えばPCMリニアオーディオデータとしてのデジタル音声信号とされてマルチプレクサ22に供給される。
端子26から入力されるアナログ音声信号Aaは、A/D変換器24でデジタル音声信号、例えばPCMリニアオーディオデータとしてのデジタル音声信号に変換されてマルチプレクサ22に供給される。
【0060】
入力音声信号について信号処理を行う信号処理部としてDSP27内にイコライザ19が設けられている。
マルチプレクサ22は、デジタル入力部23、A/D変換器24のいずれか一方のデジタル音声信号(入力音声信号)を選択してDSP27において構成されているイコライザ19に出力する。イコライザ19では、入力音声信号に対し、音質補正、音質効果処理のためのイコライジング処理を行う。
【0061】
このヘッドホン装置1では、NCシステムとして、上述の複合方式を採用した例としている。
このため、フィードフォワード方式のためのノイズキャンセル信号生成処理系として、マイクロホン14FF、マイクアンプ15FF、A/D変換器16FF、FF−DNC(Feedforward - Digital Noise Canceling)フィルタ17FFを有する。
マイクロホン14FFは、図21で説明したようにヘッドホン筐体外部で外部環境ノイズNZを収音するように設けられている。このマイクロホン14FFで収音されマイクアンプ15FFで入力された音声信号は、A/D変換器16FFでデジタル音声信号とされてDSP27において構成されているFF−DNCフィルタ17FFに供給される。FF−DNCフィルタ17FFは、フィードフォワード方式のデジタルノイズキャンセル信号を生成するためのデジタルフィルタであり、上述した伝達関数「−α」に相当するフィルタリングを行う。
【0062】
またフィードバック方式のためのノイズキャンセル信号生成処理系として、マイクロホン14FB、マイクアンプ15FB、A/D変換器16FB、FB−DNC(Feedback - Digital Noise Canceling)フィルタ17FBを有する。
マイクロホン14FBは、図19で説明したようにヘッドホン筐体内部のノイズキャンセルポイントPcで、ヘッドホンハウジング内に到達した外部環境ノイズNZ’(及びドライバユニット出力音声)を収音するように設けられている。
このマイクロホン14FBで収音されマイクアンプ15FBで入力された音声信号は、A/D変換器16FBでデジタル音声信号とされてDSP27において構成されているFB−DNCフィルタ17FBに供給される。FB−DNCフィルタ17FBは、フィードバック方式のデジタルノイズキャンセル信号を生成するためのデジタルフィルタであり、上述した伝達関数「−β」に相当するフィルタリングを行う。
【0063】
DSP27においては、イコライザ19で処理された入力音声信号と、FF−DNCフィルタ17FFで生成されたノイズキャンセル信号と、FB−DNCフィルタ17FBで生成されたノイズキャンセル信号とを、加算器18で加算合成して出力音声信号とし、DAC/アンプ部20に供給する。
DAC/アンプ部20は、出力音声信号をD/A変換してアナログ音声信号とし、さらにパワーアンプ処理を行う。そして出力音声信号をドライバユニット21に供給し、ドライバユニット21から音響出力を実行させる。
先に図23を用いて説明した場合と同様、ドライバユニット21からの再生音響には、フィードバック方式及びフィードフォワード方式のノイズキャンセル信号成分が含まれており、図23に示したノイズキャンセルポイントPcでノイズNZ’が低減された状態で、音楽等の入力音声信号に係る再生音響が、リスナに聴取される状態となる。
【0064】
なお、この例はDAC/アンプ部20でD/A変換及びアナログパーアンプ処理を行うものとしたが、ドライバユニット21がいわゆるデジタルドライバである場合、デジタルアンプ処理を行う構成でもよい。
【0065】
本実施の形態のヘッドホン装置1では、さらに制御部11、メモリ部12、通信部13を備える。
制御部11は、DSP27におけるFF−DNCフィルタ17FFのフィルタ係数、FB−DNCフィルタ17FBのフィルタ係数、及びイコライザ19のフィルタ係数を設定する処理を行う。
メモリ部12は、処理パラメータとして、FF−DNCフィルタ17FFのフィルタ係数、FB−DNCフィルタ17FBのフィルタ係数、及びイコライザ19のフィルタ係数を記憶する。例えばNCモードとして、地下鉄モード、バスモード、飛行機モード、雑踏モードなどに対応して、周囲環境に応じた最適ノイズキャンセルを実現するための各種フィルタ係数セットを記憶している。
【0066】
通信部13は、例えばブルートゥース、WiFi等の無線通信で携帯端末2との間でデータ通信を行う。
特には、通信部13は携帯端末2から送信されてくるNCモードの指示情報を受信し、制御部11に伝える。 制御部11は、入力されたNCモードの指示情報に応じて、モード設定を行う。即ち指示されたNCモードに対応するフィルタ係数セットをメモリ部12から読み出し、そのフィルタ係数を、FF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、及びイコライザ19に設定する。
また制御部11は、通信部13による携帯端末2との間の通信確立のための制御処理や、各種データ送信の制御を行う。
【0067】
なお、図2の構成は一例である。例えばDSP27はFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19、加算器18の機能を有するものとしているが、これらの回路部の全部又は一部が独立したハードウエア回路として設けられても良い。或いはA/D変換器16FF、10FBの一方又は両方がDSP27内の構成要素とされてもよい。
【0068】
図3は携帯端末2の内部構成例を示している。なお携帯端末2としては上述のように携帯電話機、携帯型情報処理装置などが想定され、機器に応じて多様な構成となるが、ここでは本実施の形態の動作に関連する部分のみを示している。
【0069】
携帯端末2は、図示のように制御・演算部31、メモリ部32、通信部33、操作部34、A/D変換器35、マイクアンプ36、マイクロホン37、ネットワーク通信部39を備える。
【0070】
マイクロホン37は周囲の音声(周囲環境ノイズNZを含む)を収音する。このマイクロホン37は例えば携帯電話機能のための送話用マイクロホン等、本来的には他の目的で搭載されているマイクロホンであってもよいし、周囲ノイズ収音の専用のマイクロホンであってもよい。
マイクロホン37で収音された音声信号はマイクアンプ36で入力増幅され、A/D変換器35でデジタルデータとして制御・演算部31に供給される。
【0071】
メモリ部32はROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶部を包括的に示しており、各種情報を記憶したり、ワークエリアとして用いられる。本実施の形態の動作についていえば、制御・演算部31で起動するアプリケーションプログラムの記憶や、NCシステムデータベースの記憶などに用いられる。NCシステムデータベースとは、ヘッドホン装置1等の機種名、採用されているNC方式や各種NCモードに応じたフィルタ係数などがデータベース化されたものである。
なお、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスク、メモリカード等を、メモリ部32を形成する記憶媒体としてもよい。
【0072】
操作部34はユーザの操作入力情報を入力して制御・演算部31に通知する。具体的には操作部34は、携帯端末2の筐体上に形成される操作キーや、携帯端末2の表示画面上のタッチパネルなどとして実現される。
通信部33は、例えばブルートゥース、WiFi等の無線通信でヘッドホン装置1との間でデータ通信を行う。
【0073】
ネットワーク通信部39は、インターネット等のネットワークや公衆電話回線などを介して各種通信を行う。
例えばアプリケーションプログラムやデータベースのダウンロードや更新を、ネットワーク通信部39を介して行うことができる。例えば上記のNCシステムデータベースや、次に述べていくNC処理最適化プログラムとしてのアプリケーションソフトウエアは、ネットワーク通信部39により外部サーバ等からダウンロードできる。
【0074】
制御・演算部31は、CPUやDSP等によって成り、携帯端末2における各部の動作の制御や演算処理を行う。例えばアプリケーションプログラムに規定される処理が制御・演算部31において実行されることで、携帯電話機や情報処理装置としての各種機能を実行する。
本実施の形態の場合、ヘッドホン装置1に対する指示信号送信処理のためのアプリケーションプログラム(以下「NC処理最適化プログラム」という)が起動されることで、制御・演算部31には図示するシーケンス制御部31a、ノイズ解析部31b、最適NC判定部31cとしての機能ブロックがソフトウエア機能として実現される。
【0075】
シーケンス制御部31aは、NC処理最適化プログラムとしてのシーケンス制御を行う。具体的にはNC処理最適化プログラムの規定に従い、ノイズ解析処理や最適NC判定処理、通信処理等を制御する。
ノイズ解析部31bは、マイクロホン37で収音されるノイズNZの解析を行う。
最適NC判定部31cは、ノイズ解析結果から、ヘッドホン装置1のNCシステムにおける最適なNCモードを判定する。
【0076】
以上の図2,図3に示したヘッドホン装置1と携帯端末2におけるNC処理最適化のための処理を図4で説明する。
図4は携帯端末2において制御・演算部31でNC処理最適化プログラムにより実行される処理と、これに対応して行われるヘッドホン装置1の制御部11の処理を示している。
【0077】
携帯端末2の処理としてステップF100は、NC処理最適化プログラムの処理実行トリガの発生を示している。NC処理最適化プログラムは、例えば常時起動されていても良いし、定期的に起動されたり、ユーザ操作で起動されてもよい。
さらには自動検出処理で何らかの条件判定を行って起動してもよい。例えば周囲ノイズ状況の変化、現在位置変化、温度変化、気圧変化、高度変化、移動速度変化などを検出して起動してもよい。起動に関しての各種例は後述する。
【0078】
ステップF100で起動トリガが発生すると、携帯端末2の制御・演算部31はシーケンス制御部31a(NC処理最適化プログラム)の制御に従って、ステップF101以降の処理を行う。
まず制御・演算部31はステップF101で通信部33によるヘッドホン装置1との通信確立処理を行う。即ち通信部33からの通信要求送信を行い、ヘッドホン装置1の通信部13との間で通信接続状態を確立する。ヘッドホン装置1側では制御部11はステップF200で、携帯端末2からの通信要求に応じて通信部13による接続確立のための制御を行うことになる。
即ち、制御・演算部31と制御部11は、通信部33、13を介して、通信要求、アクナレッジ送受信、認証処理等を行って通信を確立する。また通信確立により、ヘッドホン装置1の機種名、NCシステム情報等を携帯端末2側に通知する処理も、制御・演算部31と制御部11の間で行われる。機種名、NCシステム情報等の通信は、制御・演算部31側が通信相手のヘッドホン装置1において実行可能なNCモードを把握するために行われる。
【0079】
続いて携帯端末2の制御・演算部31はステップF102として、ノイズ解析部31bとしての機能により、ノイズ解析処理を行う。
そしてステップF103では、最適NC判定部31cの機能により、ノイズ解析結果に基づいてヘッドホン装置1において選択すべき最適NCモードの判定処理を行う。
このステップF102,F103の具体的な処理例を図5,図6で説明する。
【0080】
図5Aは、例えばヘッドホン装置1側のメモリ部12において記憶されているFB−DNCフィルタ17FB用のフィルタ係数群を周波数軸上のカーブ(ノイズ低減カーブ)として示したものである。
例えば(1)低域重視カーブ、(2)低中域重視カーブ、(3)中域重視カーブ、(4)広帯域カーブとしての4種類のフィルタ係数セットを例示している。この4つのカーブは、4つのNCモードに対応するものとする。
ヘッドホン装置1側では、NCモードが指示されることに応じて、いずれかのカーブに相当するフィルタ係数セットを選択し、FB−DNCフィルタ17FBに設定する。
図示は省略するが、FF−DNCフィルタ17FF、及びイコライザ19のフィルタ係数セットも、例えば4つのモードに応じて記憶されており、制御部11は、NCモードの指示に応じて選択、設定を行う。
【0081】
このようなヘッドホン装置1側で選択可能なNCモード(NCモードに応じたフィルタ係数セット)の情報は、ステップF101,F200での通信確立時に、制御部31から制御・演算部31に通知するようにすればよい。或いは制御・演算部31は、ヘッドホン装置1の機種名を受信することで、メモリ部32に記憶したNCシステムデータベースから、通信相手のヘッドホン装置1において選択可能なNCモード(フィルタ係数セット)を把握するようにしてもよい。
【0082】
図5Bは、制御・演算部31におけるノイズ解析部31b、最適NC判定部31cとしての構成例を示している。
ノイズ解析部31bは、この例では6個のバンドパスフィルタ81,82,83,84,85,86と、この6個のバンドパスフィルタ81,82,83,84,85,86のそれぞれの出力のエネルギー値をdB値として算出して内蔵レジスタに格納する6個のエネルギー値算出格納部91,92,93,94,95,96とで構成される。
この例の場合、6個のバンドパスフィルタ81,82,83,84,85,86の通過中心周波数は、50Hz、100Hz、200Hz、400Hz、800Hz、1.6kHzとされている。
【0083】
そして、このノイズ解析部31bには、A/D変換回路35からの信号、つまりマイクロホン37で得られた周囲ノイズNZの音声信号が入力される。該音声信号(ノイズ波形)は、6個のバンドパスフィルタ81,82,83,84,85,86のそれぞれに入力される。そして、6個のバンドパスフィルタ81,82,83,84,85,86のそれぞれの出力が、エネルギー値算出格納部91,92,93,94,95,96に供給されて、各エネルギー値A(0),A(1),A(2),A(3),A(4),A(5)が算出され、それぞれが内蔵するレジスタに格納される。
【0084】
最適NC判定部31cは、図5Aに示した4種の各ノイズ低減カーブ(1)、(2)、(3)、(4)に対応する4セットのフィルタ係数を把握している。例えば制御・演算部31は、上述のようにヘッドホン装置1側から通知されたり、或いはNCシステムデータベースから読み出すことで4セットのフィルタ係数をワークメモリ上で記憶している。
また最適NC判定部31cは、各ノイズ低減カーブ(1)、(2)、(3)、(4)での、50Hz、100Hz、200Hz、400Hz、800Hz、1.6kHzにおける減衰量代表値(dB値)を、それぞれのフィルタ係数に対応してワークメモリ上で記憶している。
【0085】
例えば、低域重視カーブ(1)での50Hz、100Hz、200Hz、400Hz、800Hz、1.6kHzにおける減衰量代表値(dB値)は、B1(0),B1(1),B1(2)・・・B1(5)として対応するフィルタ係数と対応付けられて格納され、低中域重視カーブ(2)での50Hz、100Hz、200Hz、400Hz、800Hz、1.6kHzにおける減衰量代表値(dB値)は、B2(0),B2(1),B2(2)・・・B2(5)として対応するフィルタ係数と対応付けられて格納されるものである。
なお、図5Aでは、B1(0),B1(1)、B2(0),B2(1)を例示している。
【0086】
そして、最適NC判定部31cは、エネルギー算出格納部91〜96のそれぞれに格納された各エネルギー値A(0),A(1),A(2),A(3),A(4),A(5)と、メモリ24に格納されている各フィルタ係数によるノイズ低減カーブによる減衰量代表値との差分を検出し、差分の総和が最も小さいノイズ低減カーブに対応するフィルタ係数を、最適フィルタ係数として決定する。そしてこの最適フィルタ係数に相当するNCモードを最適NCモードとする。
すなわち、エネルギー値A(0),A(1),A(2),A(3),A(4),A(5
)と、各フィルタ係数によるノイズ低減カーブによる減衰量代表値との差分の総和は、入力ノイズに対する各ノイズ低減カーブによる減衰結果の残差に等しいものとなり、小さいものほど、ノイズが低減されていることを意味するからである。
【0087】
以上のノイズ解析部31b及び最適NC判定部31cの処理動作の流れの例を図6のフローチャートに示す。
まず、ノイズ解析部31bのバンドパスフィルタ81〜86の出力のエネルギー値A(0),A(1),A(2),A(3),A(4),A(5)を算出してレジスタに格納する(ステップF31)。
次に、最適NC判定部31cは、格納されたエネルギー値A(0)〜A(5)を読み出して、エネルギー→振幅換算の変換を行い、値の補正を行なう(ステップF32)。この補正は、各バンドパスフィルタ81〜86の総合選択度Qが一定の場合、例えば、周波数振幅値一定のホワイトノイズを流した時に、通過した波形のエネルギー値は一定にならず、低域が大きく出力されることから必要とされるものである。また、総合選択度Qのとり方によっても補正が必要な場合があり、これらをまとめて補正をする。
【0088】
次に、最適NC判定部31cは、まず、低域重視カーブ(1)の代表値B1(0)〜B1(5)を、エネルギー値A(0)〜A(5)の補正値からそれぞれ減算する(ステップF33)。
次に、最適NC判定部31cは、聴感上の特性カーブにて、減算値を補正し、値C1(0)〜C1(5)を得る(ステップF34)。
次に、最適NC判定部31cは、この値C1(0)〜C1(5)を、リニア値に直した合計値を算出する(ステップF35)。この合計値が一つのノイズ低減カーブについての評価スコアとなる。
ここで、聴感上の特性カーブというのは、いわゆるAカーブやCカーブのようなものでも構わないし、絶対音量を加味してラウドネスを換算したものでも良いし、独自に設定したものでも良い。
【0089】
そして、最適NC判定部31cは、上記ステップF33〜ステップF35の作業を、ノイズ低減カーブ(1)〜(4)のすべてについて実行して、各ノイズ低減カーブに対応する評価スコアを求める(ステップF36)。
最適NC判定部31cは、すべてのカーブに対応するスコア値が計算できたら、評価スコア値が最も小さい減衰カーブが、最もノイズ減衰効果を期待することができるものであると判定し、この減衰カーブに対応するフィルタ係数を最適フィルタ係数セットとして決定する(ステップF37)。これにより1つの最適NCモードが選定されたことになる。
なお、以上の処理例は最適NCモード判定の一例である。具体的なノイズ解析手法や最適フィルタ係数判定手法は他にも考えられる。
【0090】
図4のステップF102,F103では例えば以上の処理で最適NCモードを判定する。最適NCモードを判定したら制御・演算部31はステップF104で、ヘッドホン装置1側に対して最適NCモードを示す指示情報を送信する。即ち最適NCモードを示す指示情報を通信データとして生成し、通信部33から送信させる。
ヘッドホン装置1側の制御部11はステップF201で、通信部13によって受信された指示情報を取り込む。
そしてステップF105,及びステップF202で制御・演算部31と制御部11の間で、通信部33,13を介した通信を解除する処理を行う。
【0091】
ヘッドホン装置1側では制御部11はステップF203で、指示情報に示されたNCモードに基づいて、メモリ部12からフィルタ係数を読み出す。
そして制御部11はステップF204で、読み出したフィルタ係数をDSP27の各フィルタに設定する。
【0092】
以上の処理の具体例は次のようになる。例えばユーザが地下鉄に乗ったとする。その場合に携帯端末2側のノイズ解析処理、最適NC判定処理により、地下鉄モードのフィルタ係数セットが最適フィルタ係数と判定され、指示情報としてヘッドホン装置1側に「地下鉄モード」が指示される。
このように指示情報によりNCモードとして地下鉄モードが指示された場合、ヘッドホン装置1側の制御部11はメモリ部12から、地下鉄モードのフィルタ係数として、FF−DNCフィルタ17FF用係数セット、FB−DNCフィルタ17FB用係数セット、イコライザ19用係数セットを読み出し、それぞれをFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19に設定することとなる。
これにより、DSP27における各フィルタは、地下鉄モードのフィルタ処理を実行することとなる。結果、ヘッドホンユーザ(リスナ)にとって、地下鉄に乗っているという状況に応じた最適なNCシステム設定への切換が自動的に行われ、高いノイズキャンセル効果の状態で音楽等を聴取できる。
【0093】
以上の説明から理解されるように本実施の形態では、ユーザがヘッドホン装置1と無線通信可能なマイクロホン37付きの携帯端末2(例えばスマートフォン)を持っていることを前提とし、この携帯端末2のマイクロホン37及びDSP又はCPU(制御・演算部31)を使って、ノイズ解析処理・最適NC方法/パラメータ算定を行う。そしてその結果をヘッドホン装置1側に通知し、ヘッドホン装置1側で最適なNCモードでNCシステムが動作するようにするものである。
この場合、ノイズ解析や最適NCモード判定という、リソース負担の大きい処理を、比較的処理能力が高い携帯端末2側で実行させることで、ヘッドホン装置1側の処理負担は著しく軽減される上で、周囲環境ノイズ状況に応じて自動的に最適NCモードでのノイズ低減処理が実現されることとなる。さらにはヘッドホン装置1側でノイズ解析や最適NCモード判定を行わなくてよいことから、ヘッドホン装置1の消費電力の削減、ひいては稼働時間の長時間化を実現できる。
【0094】
なお、ユーザはヘッドホン装置1を装着して、かつ、携帯端末2を例えばズボンやシャツのポケット、或いは鞄等に入れているなどして携帯していることが通常想定される。
一般的な自然環境における騒音は、周波数特性的には低域成分が支配的であり、ポケット等に入れたときの遮音による特性影響を受けにくいため、携帯端末2側でノイズ収音を行うものとしても、ヘッドホン装置1のNCシステムにとって、ほぼ適切な最適NCモード判定が可能である。
また、場合によっては、マイクロホン37の特性が携帯端末2毎に大きく異なる場合もあるが、例えばこれは、携帯端末2上での収音/測定/解析を行うアプリケーション(NC処理最適化プログラム)が、その各機種の特性をデータベース上に保持(またはネットワークからダウンロードして更新)などしていれば、この情報を使って、特性を補正したのちに解析することも可能である。
【0095】
上記例では、携帯端末2側は最適NCモードを判定したら、それをヘッドホン装置1に通知するのみとしたが、携帯端末2の機能を活かすために、ノイズ測定結果や解析結果等を画面表示するなどすれば、よりユーザからみた利便性が向上する。
【0096】
携帯端末2は、いわゆる情報処理装置として、アプリケーションプログラムをインストールすることで各種の機能を実現できる。本例の場合、携帯端末2は、例えば上記の処理を行うNC処理最適化プログラムをインストールすることで実現できる。つまりユーザが通常使用している携帯端末について、NC処理最適化プログラムをインストールすれば、実施の形態の携帯端末2が実現され、本例のヘッドホンシステムを容易にユーザに提供できるものとなる。
特に、携帯電話機、スマートフォン、PDA等の携帯端末2では通話機能がある限り、マイクロホンは必ず内蔵されている。従って、そのマイクロホンを図3のマイクロホン37として使用して騒音の収音を行うことは、携帯端末2のデバイス負担を増やすものとはならない。同様に、近年の携帯端末2はブルートゥース方式等の通信機能を備えるものが多いため、通信部33としての構成も有することが多い。この点でも、ユーザが所有している携帯電話機、スマートフォン等を用いて本例の携帯端末2を実現できる。
つまり本例における携帯端末2は、ユーザが既に所有している携帯電話機等に対してNC処理最適化プログラムをインストールすれば実現できるということが殆どとなる。
【0097】
また例えば、1人のユーザが複数のヘッドホン装置1を所有している場合、従来であれば各ヘッドホン装置1にノイズ解析、最適NCモード判定機能を内蔵する必要があるが、本実施の形態の方式ではノイズ解析、最適NCモード判定のための処理部を1つの携帯端末2で備え、これを複数のヘッドホン装置1に対して共用できる。これによりUI共通化やスペースにおいて有利である。また実際上、ユーザが複数のヘッドホン装置1を持ち替えて使用するような場合にも、各ヘッドホン装置1が、1つの携帯端末2とのセットで、本例のヘッドホンシステムが実現でき、使用するヘッドホン装置1に応じて異なる携帯端末2が必要となるということもない。
【0098】
なお図4のステップF100での携帯端末2側の処理の起動トリガは、多様に考えられる。
定期的にNC処理最適化プログラムを起動する場合は、制御・演算部31は内部タイマで前回の実行時からの計時を行っており、所定時間経過を起動トリガとすればよい。例えば数秒おき、数10秒おき、1〜数分おき、10〜30分おきなど、所定時間おきに図4の処理を実行する。
また携帯端末2側では外来音の状況の検出を常時実行し、外部ノイズ状況の変動を検知したときに起動トリガ発生としてもよい。例えばノイズレベルの単位時間平均値の変化、あるいは周波数特性の大幅な変化等が検出されたら、起動トリガ発生として図4の処理を行う。あるいはノイズ解析部31bの処理を常時実行しておくようにし、周囲のノイズ状況に変化があったと判定したときに、起動トリガ発生としてもよい。
さらに位置センサ、温度センサ、気圧センサ、高度センサ、移動速度センサ等を携帯端末2が備えるようにし、それらの検出情報に応じて起動トリガ発生と判定するようにしてもよい。
以上のようなトリガ検知を行えば、ユーザが何ら操作を行わなくとも、自動的にNCシステムの最適化が実行されて好適である。
【0099】
但し、ユーザ操作として起動トリガを判定してもよい。ユーザ操作として携帯端末2の操作部34の操作により、ユーザがNC処理最適化プログラムの選択・起動操作を行ったら、起動トリガ発生として図4の処理を行う。
なお、変形例としてヘッドホン装置1側に操作部を設け、その操作部が操作された場合、ヘッドホン装置1の制御部11は、通信部13から携帯端末2に起動トリガ情報を送信し、これを受けた制御・演算部31が、起動トリガ発生と認識するようにしてもよい。
ユーザ操作によれば、ユーザが最適なNCモードと感じないような場合に、再設定できることになる。
【0100】
また、特に起動トリガ判断は逐次行わず、NC処理最適化プログラムが常時実行されていてもよい。
例えばステップF102、F103で説明したノイズ解析処理、最適NCモード判定処理が、携帯端末2側で常時実行されるようにする。そして、最適NCモードの判定結果が変化した場合に、ヘッドホン装置1との間で通信確立処理を行い、ヘッドホン装置1への指示情報送信が行われるようにする例である。
【0101】
ところで上述したように、ヘッドホン装置1では、FF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FBだけでなく、イコライザ19のフィルタ係数もNCモードに応じて設定することとした。
フィードバック方式のノイズ低減装置の場合には、デジタルフィルタのフィルタ係数を変更してノイズ低減カーブを変更したときには、外部入力される聴取対象の音声信号Sは、ノイズ低減効果の周波数カーブに対応した影響を受けるため、デジタルフィルタのフィルタ係数の変更に応じて、イコライザ特性の変更が必要になる。
そこで、例えばメモリ部12には、デジタルフィルタの複数個のフィルタ係数のそれぞれに対応させて、イコライザ19のイコライザ特性を変更するためのパラメータ(フィルタ係数)を記憶させておき、NCモードに応じてイコライザ特性を変更することが適切となる。
【0102】
なお、図2のヘッドホン装置1は、複合方式のNCシステムを搭載した例としたが、もちろんフィードバック方式のNCシステムを搭載したり、フィードフォワード方式のNCシステムを搭載する例も考えられる。
図7はフィードフォワード方式のNCシステムを搭載したヘッドホン装置1の構成のブロック図である。
また図8はフィードバック方式のNCシステムを搭載したヘッドホン装置1の構成のブロック図である。
【0103】
図7,図8のいずれも、図2と同一部分は同一符号を付して重複説明は避ける。
図示のとおり、図7は、マイクロホン14FF、マイクアンプ15FF、A/D変換器16FF、FF−DNCフィルタ17FFというフィードフォワード系回路でノイズキャンセル信号を生成して加算器18で入力音声信号と合成する構成例である。図19の構成と同様のノイズキャンセル効果を得ることができる。
図8はマイクロホン14FB、マイクアンプ15FB、A/D変換器16FB、FB−DNCフィルタ17FBというフィードバック系回路でノイズキャンセル信号を生成して加算器18で入力音声信号と合成する構成例である。図21の構成と同様のノイズキャンセル効果を得ることができる。
【0104】
図7,図8のいずれの場合もノイズキャンセル信号の生成のためのフィルタ係数やイコライザ19のフィルタ係数を、携帯端末2からの指示情報で示されるNCモードに応じて制御部11が設定するようにする。これにより、ヘッドホン装置1の処理負担の軽減、消費電力削減の効果を得ることができる。
【0105】
なお、上述のようにイコライザ19のフィルタ係数をNCモードに応じて変更するのは図8のフィードバック方の場合に重要となる。逆に図7のフィードフォワード方式の場合、イコライザ19は直接的にはNCモードに応じてパラメータ変更する必要は小さいが、NCモードに応じてイコライザ特性を調整することは、例えばNCモードに応じた積極的な音質設定などという点で有用である。もちろんフィードフォワード方式の場合、イコライザ19の特性は固定としてもよい。
【0106】
以上の図7,図8のようなフィードフォワード方式或いはフィードバック方式のNCシステムを搭載したヘッドホン装置1の構成例は、繰り返しての図示及び説明はしないが、後述する第2〜第5の実施の形態の場合も同様に想定されるものである。
【0107】
<4.第2の実施の形態(ノイズ解析)>
第2の実施の形態を図9で説明する。なお、ヘッドホン装置1及び携帯端末2の構成は図2,図3と同様とする。
但しこの第2の実施の形態の場合、ヘッドホン装置1ではメモリ部12にNCモードに応じたフィルタ係数セットを記憶しておかなくてもよい。
逆に、携帯端末2側では、各種のヘッドホン装置1に応じた各種NCモードについてのフィルタ係数セットをメモリ部32に記憶しておく。例えば上述のNCシステムデータベースとして保持していてもよい。
【0108】
図9に制御・演算部31及び制御部11の処理例を示す。
制御・演算部31はステップF110でNC処理最適化プログラムの起動トリガ発生と判断すると、ステップF111の通信確立処理を行う。対応してヘッドホン装置1の制御部11もステップF210で通信確立処理を行う。通信確立ができたら、必要な情報送信を行う。例えば制御部11は自己のヘッドホン装置1の機種名やNCシステム種別等を携帯端末2に通知する。
【0109】
携帯端末2の制御・演算部31はステップF112でノイズ解析処理を行い、ステップF113で最適NCモード判定を行う。例えば第1の実施の形態で説明した処理である。
そしてこの場合はステップF114で、判定した最適NCモードに係るフィルタ係数セットをメモリ部32から読み出し、当該フィルタ係数セットを含む送信データを生成する。
例えばヘッドホン装置1が図2の複合方式のNCシステムを有する構成の場合、FF−DNCフィルタ17FF用のフィルタ係数セット、FB−DNCフィルタ17FB用のフィルタ係数セット、及びイコライザ19用のフィルタ係数セットを含む指示情報を送信データとして生成することになる。
制御・演算部31は、この送信データ(指示情報)をステップF115において通信部33から送信させる。
【0110】
ヘッドホン装置1の制御部11はステップF211で、通信部13で受信したフィルタ係数セット自体を含む指示情報を取り込む。
ステップF116,及びステップF212では、制御・演算部31と制御部11の間で、通信部33,13を介した通信を解除する処理を行う。
そしてヘッドホン装置1側では制御部11はステップF213で、指示情報に含まれているフィルタ係数をDSP27の各フィルタに設定する。
【0111】
以上の処理の具体例は次のようになる。例えばユーザが地下鉄に乗ったとする。その場合に携帯端末2側のノイズ解析処理、最適NC判定処理により、地下鉄モードのフィルタ係数セットが最適フィルタ係数と判定され、指示情報に、実際のフィルタ係数が含まれてヘッドホン装置1側に送信される。
この指示情報を受信したヘッドホン装置1側の制御部11は、指示情報に含まれているFF−DNCフィルタ17FF用係数セット、FB−DNCフィルタ17FB用係数セット、イコライザ19用係数セットを取り込み、それぞれをFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19に設定する。
これにより、DSP27における各フィルタは、地下鉄モードのフィルタ処理を実行することとなる。結果、ヘッドホンユーザ(リスナ)にとって、地下鉄に乗っているという状況に応じた最適なNCシステム設定への切換が自動的に行われ、高いノイズキャンセル効果の状態で音楽等を聴取できる。
【0112】
そしてこの場合、第1の実施の形態と同様、ヘッドホン装置1のリソース負担の削減、低消費電力化の効果が得られる。
特にこの第2の実施の形態では、ヘッドホン装置1側ではフィルタ係数セットの記憶も不要となり、メモリリソースも節約できる。
また、特に限定的なNCモードに限られず、携帯端末2側から、NCシステムのフィルタ係数を多様に制御できることにもなり、携帯端末2のアプリケーションプログラムによっては、ヘッドホン装置1における多様なNCモードをフレキシブルに実現できることになる。例えば新たなフィルタ係数セットを携帯端末2側がダウンロードすることで、ヘッドホン装置1に、当該新たなフィルタ係数セットを設定するということも可能となり、結果的にヘッドホン装置1の性能の向上、多様化を実現できるものともなる。
【0113】
<5.第3の実施の形態(ストリーム送信)>
第3の実施の形態を図10,図11で説明する。これは、音楽等のストリームデータ、つまりユーザがヘッドホン装置1を用いて聴取する目的の音声信号を携帯端末2からヘッドホン装置1に送信するようにした例である。
【0114】
図10はヘッドホン装置1の構成例を示している。なお図2と同一部分は同一符号を付し説明を省略する。
この図10の場合、図2と比較してわかるように入力音声信号の入力経路(図2の端子25,26、デジタル入力部23、A/D変換器24、マルチプレクサ22)が設けられていない。
そして通信部13では、指示情報だけでなく、ストリーム音声データも受信している。携帯端末2から送信されてくるストリーム音声データは通信部13で受信され、入力音声信号としてイコライザ19に供給される。
他の構成は図2と同様となる。
【0115】
図11は携帯端末2の構成を示している。図3と同一部分は同一符号を付して説明を省略する。
この場合図3と比較してわかるように、コンテンツ格納部38が設けられている。例えばHDD、メモリカード、光ディスクなどにより構成される。このコンテンツ格納部38には、例えば音楽コンテンツとしてのストリームデータが格納されている。
制御・演算部31は、例えば操作部34からのユーザ操作に応じて、コンテンツ格納部38から音楽コンテンツを選択して読み出し、そのストリームデータを通信部33からヘッドホン装置1に送信させる制御を行う。
【0116】
この場合においてNCシステムに関する処理は、上記第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同様に行われる。即ち携帯端末2においてNC処理最適化プログラムが起動されることで、ノイズ解析及び最適NCモード判定(最適フィルタ係数判定)が行われ、指示情報がヘッドホン装置1に送信される。ヘッドホン装置1の制御部11は、指示情報に応じてFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19のフィルタ係数を設定する。
【0117】
このような第3の実施の形態の構成によれば、携帯端末2がヘッドホン装置1の音楽ソース(入力音声信号ソース)としても機能する。
即ちユーザは携帯端末2をオーディオプレーヤとして動作させる。すると当該再生音楽は、ストリーム音声データとしてヘッドホン装置1に送信され、イコライザ19、加算器18、DAC/アンプ部20を介してドライバユニット21から音響再生され、ユーザは聴取できることになる。
ユーザは携帯端末2とは別にオーディオプレーヤ等を所持しなくてもよい。
【0118】
なお、コンテンツ格納部38ではなく、ネットワーク通信部39で受信したストリーム音声データを、通信部33からヘッドホン装置1に送信するようにしてもよい。例えば所定のサーバから音楽等の送信を受けたり、いわゆるクラウド上に置かれた音楽データ等を、携帯端末2で受信し、それをヘッドホン装置1に送信してリスナに聴取させることもできる。
【0119】
また図10では、マイクアンプ15FFの出力を通信部13に供給できるように示している。マイクロホン14FFを、例えば送話用のマイクロホンとして使用する例である。
例えば携帯端末2が通話状態の場合、マイクロホン14FFでユーザの声を収音し、これをストリームデータとして通信部13から携帯端末2に送信する。携帯端末2は、通信部33で受信した音声信号を送話音声として電話送信するようにする。
【0120】
<6.第4の実施の形態(位置検出)>
続いて現在位置検出に基づくNCモード指示を行う例としての第4の実施の形態を説明する。
図12は第4の実施の形態における携帯端末2の構成例を示している。なお、ヘッドホン装置1の構成は図2と同様とする。
【0121】
図12において図3と同一部分は同一符号としている。但し制御・演算部31にはノイズ解析部31bは設けられず、検出情報取込部31dが設けられる。すなわちNC処理最適化プログラムによって、検出情報取込部31dの機能が制御・演算部31により実行される。
また、位置検出部40が設けられる。
位置検出部40は例えばGPS(Global Positioning System)受信機とされ、現在位置情報(緯度・経度)及び現在の速度情報を検出可能とされる。
制御・演算部31における検出情報取込部31dは、シーケンス制御部31aで規定される必要なタイミングで、位置検出部40で検出される現在位置情報を取り込む処理を行う。
【0122】
メモリ部32には、第1〜第3の実施の形態と同様、NC処理最適化プログラム等のアプリケーションソフトウエアや、NCシステムデータベースが格納される。加えてこの第4の実施の形態の場合、メモリ部32には地図データベースが格納される。制御・演算部31は地図データベースを参照することで、位置検出部40で検出される現在位置情報(緯度・経度)に対応した、実際の現在位置の地名、住所、番地、施設、交通機関などの周囲環境に関する情報を知ることができる。
なお例えば地図データベースは、ネットワーク通信部39によりネットワーク上のサーバからダウンロードされてもよいし、携帯端末2にメモリカードや光ディスクなどの可搬性メディアの再生部を備えていれば、それらの可搬性メディアから読み込んでメモリ部32に格納してもよい。
【0123】
第4の実施の形態におけるヘッドホン装置1と携帯端末2におけるNC処理最適化のための処理を図13で説明する。
図13は携帯端末2において制御・演算部31でNC処理最適化プログラムにより実行される処理と、これに対応して行われるヘッドホン装置1の制御部11の処理を示している。
【0124】
制御・演算部31は、ステップF100でNC処理最適化プログラムの処理実行トリガの発生を検知したら、シーケンス制御部31a(NC処理最適化プログラム)の制御に従って、ステップF101以降の処理を行う。
まず制御・演算部31はステップF101で通信部33によるヘッドホン装置1との通信確立処理を行う。対応してヘッドホン装置1の制御部11はステップF200で通信確立処理を行う。ここまでは図4で説明した処理と同様である。
【0125】
続いて携帯端末2の制御・演算部31はステップF102Aとして、検出情報取込部31dとしての機能により、位置検出部40から現在位置情報(緯度・経度)を取り込み、地図データベースを参照して現在位置の周囲ノイズ環境を判定する。
例えばユーザの居る現在位置についての周囲ノイズ環境として、市街地、電車内、地下鉄内、自動車(バス)内、航空機内などを判定する。
なお、位置情報だけでは周囲ノイズ環境判定が難しい場合がある。例えば現在位置情報から地図データベースを参照して或る道路上に居ることがわかっても、それはバス等に乗っているのか、あるいは歩いているのか等の判断が困難である。ここでGPS受信機の場合、位置情報とともに速度情報を得ることができる。そこで位置情報と速度情報を併用して、より正確にノイズ環境を判定してもよい。
【0126】
ノイズ環境を判定したら、ステップF103Aで制御・演算部31は、最適NC判定部31cの機能により、ノイズ環境に応じた最適NCモードを決定する。例えばノイズ環境が地下鉄内と判定したら地下鉄モードとする。なお判定したノイズ環境に直接的に対応するNCモードが存在しない場合は、現在のノイズ環境に比較的適切とされるNCモードを選択するようにすればよい。例えば電車モード、航空機モード、市街地モードが設けられている場合に、バス等の車両内と判定した場合、「電車モード」を選択するなどである。
【0127】
最適NCモードを判定したら制御・演算部31はステップF104で、ヘッドホン装置1側に対して最適NCモードを示す指示情報を送信する。即ち最適NCモードを示す指示情報を通信データとして生成し、通信部33から送信させる。
ヘッドホン装置1側の制御部11はステップF201で、通信部13によって受信された指示情報を取り込む。
そしてステップF105,及びステップF202で制御・演算部31と制御部11の間で、通信部33,13を介した通信を解除する処理を行う。
ヘッドホン装置1側では制御部11はステップF203で、指示情報に示されたNCモードに基づいて、メモリ部12からフィルタ係数を読み出す。
そして制御部11はステップF204で、読み出したフィルタ係数をDSP27の各フィルタに設定する。
【0128】
以上の処理の具体例は次のようになる。例えばユーザが地下鉄に乗ったとする。その場合に携帯端末2側の位置検出、ノイズ環境判定によって地下鉄車内であることが判定され、地下鉄モードが最適として、指示情報としてヘッドホン装置1側に「地下鉄モード」が指示される。
この指示情報に応じてヘッドホン装置1側の制御部11は、メモリ部12から、地下鉄モードのフィルタ係数として、FF−DNCフィルタ17FF用係数セット、FB−DNCフィルタ17FB用係数セット、イコライザ19用係数セットを読み出し、それぞれをFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19に設定する。
これにより、DSP27における各フィルタは、地下鉄モードのフィルタ処理を実行することとなる。結果、ヘッドホンユーザ(リスナ)にとって、地下鉄に乗っているという状況に応じた最適なNCシステム設定への切換が自動的に行われ、高いノイズキャンセル効果の状態で音楽等を聴取できる。
【0129】
なお、この第4の実施の形態の動作において、上述の第2の実施の形態の考え方を適用して、NCモードを示す指示情報ではなく、フィルタ係数を直接指定する指示情報を携帯端末2からヘッドホン装置1に送信するようにしてもよい。
例えばユーザが地下鉄に乗った場合に、携帯端末2側の位置検出、ノイズ環境判定によって地下鉄車内であることが判定され、地下鉄モードが最適とされる。この場合に地下鉄モードのフィルタ係数セットが指示情報に含まれてヘッドホン装置1側に送信されるようにする。
この指示情報を受信したヘッドホン装置1側の制御部11は、指示情報に含まれているFF−DNCフィルタ17FF用係数セット、FB−DNCフィルタ17FB用係数セット、イコライザ19用係数セットを取り込み、それぞれをFF−DNCフィルタ17FF、FB−DNCフィルタ17FB、イコライザ19に設定する。
このようにしても、同様の高性能なノイズキャンセル効果が得られる。
また第3の実施の形態の考え方を適用して、音楽等のストリームデータも携帯端末2からヘッドホン装置1に送信する構成例も可能である。
【0130】
以上の第4の実施の形態によれば、第1〜第3の実施の形態と同様、ヘッドホン装置1の処理リソース負担の削減や消費電力削減の効果等、先に述べた各種効果が得られることは言うまでもない。
加えて以下の効果が得られる。
【0131】
例えば第1の実施の形態のようにマイクロホン37で収音したノイズを解析する方式の場合で、常時ノイズ状況を判定している場合、その場の突発的な騒音などがあることで過敏に反応してしまうこともあり、むやみにフィルタ係数設定が変更されてしまうことも想定される。
本例では音声情報を使わず、現在位置検出(及び現在の移動速度)からユーザの現在地場所(ノイズ環境)の推定を行うことで、突発的な騒音には反応しないようにできる。
その上で、ノイズ環境を的確に判定でき、容易にノイズ環境種別に応じて最適なNCモード判定も可能となる。
またノイズ解析処理負担がなく、制御・演算部31は位置情報取込、地図データベース参照という簡単な処理で最適NCモード判定ができるため、携帯端末2側の処理負担も小さくできる。
従って、マイクロホンが装備されていない装置(例えばPDA等の場合)であったり、処理リソースの小さい簡易型の携帯機器の場合でも、本例の携帯端末2として実現可能である。
【0132】
なお図13のステップF100での携帯端末2側の処理の起動トリガは、第1の実施の形態の図4に関して説明した場合と同様に、多様に考えられる。すなわち図13の処理について、所定時間ごとに定期的に行ったり、位置センサ、温度センサ、気圧センサ、高度センサ、移動速度センサの検出情報に応じて実行したり、あるいはユーザ操作をトリガとすることなどが考えられる。
特に第4の実施の形態の構成上、GPS受信機として位置検出部40(速度検出部を兼ねる)を備えることから、常時位置検出や速度検出を行っておき、位置や速度の変化が所定以上となった場合に図13の処理を実行することも好適である。
【0133】
また、特に起動トリガ判断は逐次行わず、NC処理最適化プログラムが常時実行されていてもよい。
例えばステップF102A、F103Aで説明した位置検出処理、最適NCモード判定処理が、携帯端末2側で常時実行されるようにする。そして、最適NCモードの判定結果が変化した場合に、ヘッドホン装置1との間で通信確立処理を行い、ヘッドホン装置1への指示情報送信が行われるようにする例である。
【0134】
なお、上記説明では、メモリ部32に地図データベースを格納しているとしたが、必ずしも地図データベースを携帯端末2内に備えなくてもよい。
例えば制御・演算部31は、現在位置情報を取得したら、その現在位置情報をネットワーク通信部39により外部サーバに送信する。外部サーバにおいては送信されてきた現在位置情報について地図データベースを参照し、ノイズ環境を判定して携帯端末2に送信する。携帯端末2は、これを受信することで地図データベースを記憶していなくとも、ノイズ環境判定が可能となる。
【0135】
さらには、最適なNCモード判定の機能も外部サーバに実行させ、携帯端末2は、外部サーバから最適NCモードの情報(あるいはさらには具体的なフィルタ係数の情報)を受信するようにしてもよい。その意味では携帯端末2において最適NCモード判定の機能はなくてもよい。
即ち、いわゆるクラウドコンピューティングの手法で、結果的に最適NCモード(第2の実施の形態の考え方を適用する場合は最適なフィルタ係数自体)が得られるようにし、それをヘッドホン装置1に送信するものとしてもよい。
【0136】
位置検出部40及び地図データベースを使用する場合の応用例として以下のような処理例も考えられる。
例えば図14に示すように、携帯端末2において地図表示を実行し、ユーザが通学・通勤経路をあらかじめインプットしておく。
出発・活用前に通学・通勤経路上で、移動交通区間や徒歩区間などの自動決定が可能であり、実際の通学・通勤時にGPSにてユーザ自身の位置をトレースすることで、周囲環境に応じた最適NCを、ヘッドホン本体側に提供することができるようになる。
【0137】
例えばユーザが図14に示す地点Aから地点Bを入力したとする。この場合に制御・演算部31は、地図データベースを参照すれば、区間RAは徒歩ルート、区間RBはバスルート、区間RCは地下鉄ルート、区間RDは徒歩ルート等として自動設定できる。あるいは徒歩、バス等の別をユーザが入力してもよい。
NCモードとして、徒歩(市街地)モード、バスモード、地下鉄モード等が用意されているのであれば、現在位置に応じたNCモード制御が適切に可能となる。つまり現在位置が区間RA内と判定されるときは徒歩モード、現在位置が区間RB内と判定されるときはバスモード、現在位置が区間RC内と判定されるときは地下鉄モード、現在位置が区間RD内と判定されるときは徒歩モードというように、自動的な判定が携帯端末2で実行され、ヘッドホン装置1側でNCモード設定が行われる。ユーザは通学・通勤経路で常時最適なNCモードでの音楽聴取等が可能となる。
【0138】
なお、NCモードを数多く準備し、その中から選択するのであれば、この経路上の各区間で自動的に対応するNCモードを設定することが好ましいが、区間設定や区間内での移動手段推定は必ずしも自動でなく、ユーザ自身のマニュアルで指定しても構わない。例えばバス利用と自動判定される区間を、ユーザによっては歩くかもしれない。従ってユーザによって徒歩、バス、電車等を指定できるようにしておくことでユーザ個人にあわせた最適なNCモード選択が可能となる。
また例えば、ユーザの使用感・感想である「この区間は〜のNCモードの方が良かった」などと、ユーザ共通のデータベースにフィードバックし、新しいNC手法開発・改善に向かわせることも可能である。
【0139】
<7.第5の実施の形態(各種複合検出例)>
ここまで、携帯端末2とヘッドホン装置1の連携として、携帯端末2側に内蔵するセンサデバイス(マイクロホン37、或いは位置検出部40(GPS受信機))を個別に使用した例を示した。しかしさらに、マイクロホン37よる騒音信号の収音解析と、位置検出部40/地図データベース活用の両面から現在地及び現在の乗り物を解析し、両情報をあわせることで、高精度な状況推定が可能となる。
さらに、スマートフォン等の携帯端末2では温度センサ、気圧センサを備えたものもあることに鑑みれば、これらの情報を同時に反映することで、さらに高精度化が図れると考えられる。
そこで第5の実施の形態として、各種複合的な検出を行う例を挙げていく。
【0140】
図15はノイズ解析と位置検出を併用する構成例である。即ち携帯端末2ではマイクロホン37、マイクアンプ36、A/D変換器35を備え、制御・演算部31にはノイズ解析部31bを有する。加えて位置検出部40を備え、制御・演算部31には検出情報取込部31dを有する。メモリ部32にはNCシステムデータベースや地図データベースが格納される。
【0141】
このような構成により、位置検出結果から、ノイズ環境を推定し、実際のノイズ解析結果により、ノイズ環境推定の正確性を判断して最適なNCモードを判定するといったことが可能となる。
またノイズ解析結果から導かれる最適NCモードや最適フィルタ係数について、位置情報から推定されるノイズ環境を加味して修正するといったことも可能である。
【0142】
次に図16は、上述の第4の実施の形態の携帯端末2の構成に、温度検出部42、気圧検出部43、高度検出部44を追加した構成例である。
温度検出部42で温度検出を行うことで、位置情報から推定されるノイズ環境に応じたフィルタ係数の修正を行うことが可能である。
気圧検出部43で気圧検出を行うことで、航空機内などのノイズ環境判断を正確化できる。さらにはユーザの聴覚は気圧によって大きく変化する。そのため、気圧に応じてフィルタ係数を調整するといったことも可能となる。
高度検出部44で高度検出を行うことで、航空機内などのノイズ環境判断を正確化できる。また高度に応じた気圧変化に鑑み、高度に応じてフィルタ係数を調整するといったことも可能となる。
また図17は、上述の第1の実施の形態の携帯端末2の構成に、温度検出部42、気圧検出部43、高度検出部44を追加した構成例である。図16の場合と同様に、各検出部の検出情報を利用できる。
【0143】
即ち、携帯端末2は、現在の温度情報を検出する温度検出部42、現在の気圧情報を検出する気圧検出部43、現在の高度情報を検出する高度検出部44の一部又は全部を備えるようにする。これにより、制御・演算部31は、ノイズ解析結果或いは位置によるノイズ環境判定結果に加え、温度情報、気圧情報、又は高度情報のいずれかを用いてより適切な指示情報を生成することができる。
【0144】
<8.アップロードシステム>
続いて、携帯端末2やヘッドホン装置1から情報をアップロードするシステムを説明する。図18は、携帯端末2、もしくは位置検出機能やアップロードのための通信機能を備えたヘッドホン装置1が、情報をネットワーク(クラウド)上のデータベース4にアップロードする状況を示している。
【0145】
各ユーザの携帯端末2或いはヘッドホン装置1から、現在位置情報、実際に観測した周囲騒音の解析情報、機種情報(マイクロホン37の特性感度補正用)、ユーザコメント(例えば最適NCモードを使用してどうだったかのコメント)などをアプリケーション経由でクラウド上のデータベース4側へ送信するような仕組みを構成している。
【0146】
先にも述べたが、携帯端末2から現在位置情報をアップロードする場合、サーバ側でノイズ環境情報、或いは最適NCモード、或いは最適フィルタ係数の判定処理を行ってもらい、単にその結果を受信するという処理も可能となる。この場合、内部の計算リソースが少ない携帯端末2でも、このようなクラウドからの情報を利用することで、詳細解析をすることなく適切なNCモードをヘッドホン装置1に実行させることが可能となる。
【0147】
また、上記各情報を携帯端末2やヘッドホン装置1からデータベース4にアップロードすることで、管理・開発組織5におけるNCモードにおけるフィルタ係数の更新、新たなNCモードの開発や、それらの成果のユーザへのフィードバックということも可能となる。
【0148】
例えば周囲騒音の解析情報やユーザコメントがデータベース4にクラウド上にデータとして集積されていれば、これを見た管理・開発組織5のNCシステム開発者(主としてメーカーのエンジニア)が、この情報を元に、新しいNCモードを開発設計し、これを提供することが可能となる。新たに作られたNCモード(フィルタ係数)は、携帯端末2を介してヘッドホン装置1に流れる。
この時、携帯端末2側はブルートゥース/WiFiなどでヘッドホン装置1と接続されているため、接続されたヘッドホン装置1の機種名などを知ることができる。この機種名を使ってクラウド側に問い合わせが可能である。携帯端末2からは、ヘッドホン装置1内に、複数のNCモード(デジタルフィルタ)がプリセットされていれば、そのインデックスを指定し、また新規のNCモードであれば、そのフィルタ実体(係数値、及び、構成手法)を送り込むことで、過去に使っていない新規のフィルタを使うことが可能となる。
【0149】
<9.プログラム>
実施の形態のプログラムは、上述の第1〜第4の実施の形態で説明したNC処理最適化プログラムである。
【0150】
例えば第1〜第3の実施の形態で説明したNC処理最適化プログラムは、少なくとも外来音を収音するマイクロホン37による収音音声信号についてノイズ解析を行う処理と、ノイズ解析結果から外部のヘッドホン装置1におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報(NCモード又はNCモードにおけるフィルタ係数自体を指示する指示情報)を生成する処理と、指示情報をヘッドホン装置1に対して送信する処理とを、携帯端末2の演算処理装置(制御・演算部31としてのDSP又はCPU)に実行させるプログラムである。
【0151】
また第4の実施の形態で説明したNC処理最適化プログラムは、現在位置情報を検出する位置検出部40から現在位置情報を取得する処理と、現在位置情報に基づいて、外部のヘッドホン装置1におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報(NCモード又はNCモードにおけるフィルタ係数自体を指示する指示情報)を生成する処理と、指示情報をヘッドホン装置1に対して送信する処理とを、携帯端末2の演算処理装置(制御・演算部31としてのDSP又はCPU)に実行させるプログラムである。
【0152】
このようなプログラムは、携帯端末2に内蔵されている記録媒体としてのフラッシュメモリ、ROM、HDDや、マイクロコンピュータ内のROM等に予め記録しておくことができる。
あるいはまた、プログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magnet optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
また、プログラムは、リムーバブル記録媒体からインストールする他、ダウンロードサイトから、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。
このようなプログラムのインストールによって、例えば汎用の携帯端末機器を実施の形態の携帯端末2として機能させることも可能となる。
そしてこのようなプログラムにより、実施の形態の携帯端末2を広くユーザに提供でき、各実施の形態のヘッドホンシステムの効果をユーザが容易に享受できる。
【0153】
<10.変形例>
以上、各種の実施の形態を説明してきたが、本開示の技術はさらに多様に変形例が考えられる。
【0154】
携帯端末2とヘッドホン装置1は無線通信を行う例を挙げたが、有線通信を行うようにしてもよい。
またヘッドホン装置1は、説明上、ステレオヘッドホンであると言及したが、NCシステムを有するモノラルヘッドホンであってもよい。
携帯端末2からヘッドホン装置1に対しては、指示情報としてNCモード又はフィルタ係数自体を送信するものとしたが、これ以外の各種の指示情報(制御情報)を送信することも考えられる。
例えばノイズ解析結果や現在位置から判定されるノイズ環境に応じた音量制御であったり、NCモードとは直接関係ない音質補正(イコライジングのフィルタ係数)や音響効果処理の制御信号などを送信してもよい。
さらには、例えば複合方式の構成を備える場合に、複合方式、フィードバック方式、フィードフォワード方式を選択可能とすることも考えられ、当該選択制御情報を指示情報として送信してもよい。
【0155】
携帯端末2は「携帯型」の機器を前提としたが、必ずしも携帯型に限定されるものではない。例えば固定的な端末装置であって、実施の形態で説明した処理を行う装置を各所に配置する。そして、通信可能なヘッドホン装置1(近づいてきたユーザが所有するヘッドホン装置1)に対して、通信を行い、NCモード又はフィルタ係数自体の指示情報を送信するといったことも可能である。
【0156】
なお本技術のヘッドホン装置は以下のような構成も採ることができる。
(1)音声出力を行うドライバユニットと、
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてフィルタ処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、該ノイズキャンセル信号と入力音声信号を合成して出力音声信号を得、該出力音声信号を上記ドライバユニットに供給するノイズキャンセル処理部と、
外部の端末装置との間で通信を行う通信部と、
上記端末装置から送信され、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う制御部と、
を備えたヘッドホン装置。
(2)上記入力音声信号について信号処理を行う信号処理部を備え、
上記制御部は、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記信号処理部の処理パラメータの設定処理を行う上記(1)に記載のヘッドホン装置。
(3)上記処理パラメータを記憶する記憶部を備え、
上記制御部は、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記記憶部から処理パラメータを読み出して上記設定処理を行う上記(1)又は(2)に記載のヘッドホン装置。
(4)上記通信部では上記指示情報として処理パラメータを受信し、
上記制御部は、上記通信部で受信した処理パラメータを用いて上記設定処理を行う上記(1)又は(2)に記載のヘッドホン装置。
(5)上記通信部では音声信号も受信し、当該音声信号が上記入力音声信号とされる上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のヘッドホン装置。
【符号の説明】
【0157】
1 ヘッドホン装置、2 携帯端末、11 制御部、12 メモリ部、13 通信部、14FF,14FB,37 マイクロホン、17FF FF−DNCフィルタ、17FB FB−DNCフィルタ、19 イコライザ、21 ドライバユニット、27 DSP、31 制御・演算部、31a シーケンス制御部、31b ノイズ解析部、31c 最適NC判定部、31d 検出情報取込部、32 メモリ部、33 通信部、40 位置検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声出力を行うドライバユニットと、
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてフィルタ処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、該ノイズキャンセル信号と入力音声信号を合成して出力音声信号を得、該出力音声信号を上記ドライバユニットに供給するノイズキャンセル処理部と、
外部の端末装置との間で通信を行う通信部と、
上記端末装置から送信され、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う制御部と、
を備えたヘッドホン装置。
【請求項2】
上記入力音声信号について信号処理を行う信号処理部を備え、
上記制御部は、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記信号処理部の処理パラメータの設定処理を行う請求項1に記載のヘッドホン装置。
【請求項3】
上記処理パラメータを記憶する記憶部を備え、
上記制御部は、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記記憶部から処理パラメータを読み出して上記設定処理を行う請求項1に記載のヘッドホン装置。
【請求項4】
上記通信部では上記指示情報として処理パラメータを受信し、
上記制御部は、上記通信部で受信した処理パラメータを用いて上記設定処理を行う請求項1に記載のヘッドホン装置。
【請求項5】
上記通信部では音声信号も受信し、当該音声信号が上記入力音声信号とされる請求項1に記載のヘッドホン装置。
【請求項6】
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
外部の上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行い、ノイズ解析結果から上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部と、
を備えた端末装置。
【請求項7】
さらに現在の温度情報を検出する温度検出部、現在の気圧情報を検出する気圧検出部、現在の高度情報を検出する高度検出部のいずれかを備え、
上記制御・演算部は、上記ノイズ解析結果に加え、上記温度情報、上記気圧情報、又は上記高度情報のいずれかを用いて上記指示情報を生成する請求項6に記載の端末装置。
【請求項8】
少なくとも外来音を収音するマイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行い、
上記ノイズ解析の結果から外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、
上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する、
端末装置の情報送信方法。
【請求項9】
少なくとも外来音を収音するマイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行う処理と、
ノイズ解析結果から外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成する処理と、
上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する処理とを、
端末装置における演算処理装置に実行させるプログラム。
【請求項10】
現在位置情報を検出する位置検出部と、
外部の上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、
上記位置検出部で検出された現在位置情報に基づいて、上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部と、
を備えた端末装置。
【請求項11】
さらに現在の温度情報を検出する温度検出部、現在の気圧情報を検出する気圧検出部、現在の高度情報を検出する高度検出部のいずれかを備え、
上記制御・演算部は、上記現在位置情報に加え、上記温度情報、上記気圧情報、又は上記高度情報のいずれかを用いて上記指示情報を生成する請求項10に記載の端末装置。
【請求項12】
現在位置情報を検出する位置検出部から現在位置情報を取得し、
上記現在位置情報に基づいて、外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、
上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する、
端末装置の情報送信方法。
【請求項13】
現在位置情報を検出する位置検出部から現在位置情報を取得する処理と、
上記現在位置情報に基づいて、外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成する処理と、
上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する処理とを、
端末装置における演算処理装置に実行させるプログラム。
【請求項14】
ヘッドホン装置と端末装置を有するヘッドホンシステムにおいて、
上記端末装置は、
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行い、ノイズ解析結果から上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部と、
を備え、
上記ヘッドホン装置は、
音声出力を行うドライバユニットと、
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてフィルタ処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、該ノイズキャンセル信号と入力音声信号を合成して出力音声信号を得、該出力音声信号を上記ドライバユニットに供給するノイズキャンセル処理部と、
上記端末装置との間で通信を行う通信部と、
上記端末装置から送信され、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う制御部と、
を備えたヘッドホンシステム。
【請求項15】
ヘッドホン装置と端末装置を有するヘッドホンシステムにおいて、
上記端末装置は、
現在位置情報を検出する位置検出部と、
上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、
上記位置検出部で検出された現在位置情報に基づいて、上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部と、
を備え、
上記ヘッドホン装置は、
音声出力を行うドライバユニットと、
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてフィルタ処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、該ノイズキャンセル信号と入力音声信号を合成して出力音声信号を得、該出力音声信号を上記ドライバユニットに供給するノイズキャンセル処理部と、
上記端末装置との間で通信を行う通信部と、
上記端末装置から送信され、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う制御部と、
を備えたヘッドホンシステム。
【請求項1】
音声出力を行うドライバユニットと、
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてフィルタ処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、該ノイズキャンセル信号と入力音声信号を合成して出力音声信号を得、該出力音声信号を上記ドライバユニットに供給するノイズキャンセル処理部と、
外部の端末装置との間で通信を行う通信部と、
上記端末装置から送信され、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う制御部と、
を備えたヘッドホン装置。
【請求項2】
上記入力音声信号について信号処理を行う信号処理部を備え、
上記制御部は、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記信号処理部の処理パラメータの設定処理を行う請求項1に記載のヘッドホン装置。
【請求項3】
上記処理パラメータを記憶する記憶部を備え、
上記制御部は、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記記憶部から処理パラメータを読み出して上記設定処理を行う請求項1に記載のヘッドホン装置。
【請求項4】
上記通信部では上記指示情報として処理パラメータを受信し、
上記制御部は、上記通信部で受信した処理パラメータを用いて上記設定処理を行う請求項1に記載のヘッドホン装置。
【請求項5】
上記通信部では音声信号も受信し、当該音声信号が上記入力音声信号とされる請求項1に記載のヘッドホン装置。
【請求項6】
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
外部の上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行い、ノイズ解析結果から上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部と、
を備えた端末装置。
【請求項7】
さらに現在の温度情報を検出する温度検出部、現在の気圧情報を検出する気圧検出部、現在の高度情報を検出する高度検出部のいずれかを備え、
上記制御・演算部は、上記ノイズ解析結果に加え、上記温度情報、上記気圧情報、又は上記高度情報のいずれかを用いて上記指示情報を生成する請求項6に記載の端末装置。
【請求項8】
少なくとも外来音を収音するマイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行い、
上記ノイズ解析の結果から外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、
上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する、
端末装置の情報送信方法。
【請求項9】
少なくとも外来音を収音するマイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行う処理と、
ノイズ解析結果から外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成する処理と、
上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する処理とを、
端末装置における演算処理装置に実行させるプログラム。
【請求項10】
現在位置情報を検出する位置検出部と、
外部の上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、
上記位置検出部で検出された現在位置情報に基づいて、上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部と、
を備えた端末装置。
【請求項11】
さらに現在の温度情報を検出する温度検出部、現在の気圧情報を検出する気圧検出部、現在の高度情報を検出する高度検出部のいずれかを備え、
上記制御・演算部は、上記現在位置情報に加え、上記温度情報、上記気圧情報、又は上記高度情報のいずれかを用いて上記指示情報を生成する請求項10に記載の端末装置。
【請求項12】
現在位置情報を検出する位置検出部から現在位置情報を取得し、
上記現在位置情報に基づいて、外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、
上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する、
端末装置の情報送信方法。
【請求項13】
現在位置情報を検出する位置検出部から現在位置情報を取得する処理と、
上記現在位置情報に基づいて、外部のヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成する処理と、
上記指示情報を上記ヘッドホン装置に対して送信する処理とを、
端末装置における演算処理装置に実行させるプログラム。
【請求項14】
ヘッドホン装置と端末装置を有するヘッドホンシステムにおいて、
上記端末装置は、
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてノイズ解析を行い、ノイズ解析結果から上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部と、
を備え、
上記ヘッドホン装置は、
音声出力を行うドライバユニットと、
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてフィルタ処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、該ノイズキャンセル信号と入力音声信号を合成して出力音声信号を得、該出力音声信号を上記ドライバユニットに供給するノイズキャンセル処理部と、
上記端末装置との間で通信を行う通信部と、
上記端末装置から送信され、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う制御部と、
を備えたヘッドホンシステム。
【請求項15】
ヘッドホン装置と端末装置を有するヘッドホンシステムにおいて、
上記端末装置は、
現在位置情報を検出する位置検出部と、
上記ヘッドホン装置との間で通信を行う通信部と、
上記位置検出部で検出された現在位置情報に基づいて、上記ヘッドホン装置におけるノイズキャンセル処理に係る処理パラメータを指示する指示情報を生成し、該指示情報を上記通信部から上記ヘッドホン装置へ送信させる処理を行う制御・演算部と、
を備え、
上記ヘッドホン装置は、
音声出力を行うドライバユニットと、
少なくとも外来音を収音するマイクロホンと、
上記マイクロホンによる収音音声信号についてフィルタ処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、該ノイズキャンセル信号と入力音声信号を合成して出力音声信号を得、該出力音声信号を上記ドライバユニットに供給するノイズキャンセル処理部と、
上記端末装置との間で通信を行う通信部と、
上記端末装置から送信され、上記通信部で受信した指示情報に基づいて、上記ノイズキャンセル処理部のフィルタ処理についての処理パラメータの設定処理を行う制御部と、
を備えたヘッドホンシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−102370(P2013−102370A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245372(P2011−245372)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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