説明

ヘッドホン

【課題】一方の筐体部が有するスピーカユニットの振動がヘッドバンドを介して他方の筐体部に伝わるのを抑止する。
【解決手段】ヘッドホンは、蓋部10と、蓋部10に連結する筐体部20と、蓋部10と筐体部20との間に配置されるスピーカユニット30とを備えている。蓋部10は、音響調整部材40を介してスピーカユニット30を支持しており、規定の質量と剛性を備える金属部材で構成される音響調整部材40は、スピーカユニット30を支持する底面部41と、底面部41の周囲に設けられ蓋部10に連結する連結部42とを備え、音響調整部材40と筐体部20との間には空間Tが設けられており、空間Tは音響調整部材40と筐体部20との間に連続する規定の間隙Sを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドホンは、スピーカユニットが取り付けられる筐体部を備えており、この筐体部にヘッドバンドが取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−218686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドホンにおけるスピーカユニットの磁気回路は、ボイスコイルの電磁気力の反作用により振動する。このため、スピーカユニットが取り付けられる筐体部に磁気回路が連結していると、磁気回路の振動によって筐体部に不要な振動が伝わる場合がある。この場合、一対の筐体部のうち、一方の筐体部に生じた振動が筐体部に取り付けられるヘッドバンドを介して他方の筐体部に伝わって音響特性を低下させる場合がある。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、一対の筐体部にヘッドバンドが取り付けられたヘッドホンにおいて、一方の筐体部が有するスピーカユニットから生じる不要な振動がヘッドバンドを介して他方の筐体部に伝わるのを抑止すること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明によるヘッドホンは、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0007】
蓋部と、該蓋部に連結する筐体部と、当該蓋部と当該筐体部との間に配置されるスピーカユニットとを備え、前記蓋部は、音響調整部材を介して前記スピーカユニットを支持しており、規定の質量と剛性を備える金属部材で構成される前記音響調整部材は、前記スピーカユニットを支持する底面部と、該底面部の周囲に設けられ前記蓋部に連結する連結部とを備え、前記音響調整部材と前記筐体部との間には空間が設けられており、前記空間は前記音響調整部材と前記筐体部との間に連続する規定の間隙を設けることを特徴とするヘッドホン。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドホンの主要部を示した部分断面斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るヘッドホンの蓋部を示した説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るヘッドホンの音響調整部材を示した説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るヘッドホンの筐体部を示した説明図である。
【図5】本発明の実施形態における蓋部に対する筐体部と音響調整部材の取付構造を示した説明図である。
【図6】本発明の実施形態における蓋部に対する筐体部と音響調整部材の取付構造を示した説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係るヘッドホンの全体構成を示した側面図である。
【図8】本発明の実施形態における接続部を示した側面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るヘッドホンの制振構造を示した説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係るヘッドホンの制振構造を示した説明図である。
【図11】本発明の実施形態に係るヘッドホンの制振構造を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るヘッドホンの主要部を示した部分断面斜視図である。図2は本発明の実施形態に係るヘッドホンの蓋部を示した説明図である。図3は本発明の実施形態に係るヘッドホンの音響調整部材を示した説明図である。図4は本発明の一実施形態に係るヘッドホンの筐体部を示した説明図である。
【0010】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るヘッドホンは、蓋部10、筐体部20、スピーカユニット30を備えている。蓋部10はスピーカユニット30に対して音響放射側(図示Z方向側)に配置されており、筐体部20は蓋部10に連結されている。また、スピーカユニット30は蓋部10と筐体部20との間に配置されている。
【0011】
スピーカユニット30は、静止部31と、静止部31にエッジ33を介して支持される振動板32と、振動板32に支持されるボイスコイル34と、静止部31に支持される磁気回路35とを備える。静止部31は、磁気回路35を支持する底面部31Aと、蓋部10と連結する外周筒状部31Bとを備える。図示の例では、磁気回路35は、ヨーク35Aと磁石35Bとプレート35Cを備えており、ヨーク35Aとプレート35Cとの間に磁気ギャップを備える。ボイスコイル34は磁気ギャップ内に配置されている。ボイスコイル34は直接又はボイスコイル支持部34Aを介して振動板に支持されている。
【0012】
スピーカユニット30は、ボイスコイル34に音声信号を入力することでボイスコイル34を振動させ、これによって振動板32を振動させて音波を音響放射方向(Z方向)に放出する。一方、スピーカユニット30の駆動時には、ボイスコイル34の振動の反力を磁気回路35が受けるので、磁気回路35が振動することにもなる。
【0013】
これに対して、本発明の実施形態に係るヘッドホンは、蓋部10が、音響調整部材40を介してスピーカユニット30を支持している。音響調整部材40の構造の詳細は後述するが、音響調整部材40は、スピーカユニット30を支持する底面部41と、底面部41の周囲に設けられる蓋部10に連結する連結部42とを備えている。音響調整部材40は規定の質量と剛性を備える金属部材で構成される。金属部材の材料としては、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、合金などが挙げられる。図示の例では、スピーカユニット30の磁気回路35を支持する静止部31の底面部31Aが音響調整部材40の底面部41上に載置されている。
【0014】
音響調整部材40と筐体部20との間には空間Tが設けられており、空間Tは音響調整部材40と筐体部20との間に連続する規定の間隙Sを設ける。言い換えれば、音響調整部材40は、音響調整部材40と筐体部20とで構成される空間Tによって取り囲まれている。また、音響調整部材40は、筐体部20に対して間隙Sだけ離れて接触しない状態で、蓋部10に支持されていても構わない。
【0015】
このようなヘッドホンの構造によると、スピーカユニット30が音響調整部材40を介して蓋部10に支持されるので、スピーカユニット30の駆動によって発生する磁気回路35の振動を、音響調整部材40と蓋部10によって減衰させることができる。すなわち、スピーカユニット30の駆動によって生じる磁気回路35の振動は、スピーカユニット30を直接支持する音響調整部材40が所定の質量と剛性を備えることである程度減衰し、また、音響調整部材40が連結する蓋部10が規定の制振特性を有することで、更に減衰することになる。ここでいう制振特性とは、蓋部10の構成部材が所定の剛性(ヤング率)又は内部損失を備えることで発現される特性である。特に構成部材が剛性を備える場合には、振動を蓋部10に与えた際に生じる蓋部10の振幅は時間の経過とともに減衰するが、規定の振幅に減衰する時間が短くなる。また、構成部材が所定の内部損失を備える場合には、振動を蓋部10に与えた場合に生じる蓋部10の振幅を比較的小さくすることができ、内部損失が比較的大きければ、振動を与えた際に生じる蓋部10の振幅も比較的小さくなる。
【0016】
また、音響調整部材40と筐体部20との間に間隙Sが連続して設けられるので、蓋部10とスピーカユニット30(静止部31)と音響調整部材40は、実質的に閉じた振動伝播経路を構成することになり、スピーカユニット30の駆動によって生じる磁気回路35の振動が直接筐体部20に伝わることを抑止することができる。これによって、磁気回路35の振動によって筐体部20が振動して、使用者の頭部に振動が伝播することを抑止できる。
【0017】
図1及び図2によって蓋部10を詳細に説明する。蓋部10は、比較的大きい内部損失とヤング率を備える樹脂材料、例えばポリフェニレン・エーテル樹脂(PPE樹脂)又はアクリルニトリルスチレンアクリレート樹脂(ASA樹脂)で構成することができる。また、静止部31の樹脂材料に対して比較的大きい内部損失およびヤング率を有する樹脂材料で、蓋部10を構成することができる。比較的大きい内部損失およびヤング率を備える樹脂材料で蓋部10を構成することで、蓋部10が所望の制振特性を有することができる。このため、磁気回路35の振動が蓋部10を介して筐体部20に伝播することを抑止することができる。筐体部20又は静止部31を樹脂材料で構成する場合には、蓋部10を構成する樹脂材料の内部損失は、筐体部20又は静止部31を構成する樹脂材料の内部損失に対して大きいことが望ましい。
【0018】
蓋部10は、音響調整部材40を介してスピーカユニット30を支持する板状のスピーカユニット支持部11と、スピーカユニット支持部11の周囲に設けられる外周縁部12と、スピーカユニット支持部11と外周縁部12の間に配置される屈曲部13とを備えている。スピーカユニット支持部11は放音孔部11Pを備えており、放音孔部11Pからスピーカユニット30が発生する音が放出される。スピーカユニット支持部11の放音孔部11Pが存在しない箇所の背面側(図示Z方向と逆側)に音響調整部材40を支持する支持部11Aが設けられている。スピーカユニット支持部11の放音孔部11Pは、後述するスピーカユニット30の振動板32に対応する開口部11P1が中央に設けられ、また、開口部11P1の周囲に長孔状の開口部11P2が配置されている。図示の例では、開口部11P1には仕切り11P3が設けられ、開口部11P1の周囲には背面側に突出する突起部11P4が設けられている。
【0019】
蓋部10の外周縁部12は、筐体部20に連結する連結部12Aを備えている。また、外周縁部12は、スピーカユニット支持部11から屈曲した内側側面12Bを有すると共に、内側側面12Bの傾斜角度が部分的に異なる立設部12Cを備える。外周縁部12の内側側面12Bは、スピーカユニット支持部に対して第1の傾斜角度で傾斜する面12B1と、第1の傾斜角度とは異なる第2の傾斜角度で傾斜する面12B2を備えており、立設部12Cは第2の傾斜角度で傾斜する面12B2で構成されている。
【0020】
前述した第2の傾斜角度で傾斜する面12B2は、第1の傾斜角度で傾斜する面12B1に対して、外周縁部12からスピーカユニット支持部11に向かって凸状、又はスピーカユニット支持部11から外周縁部12に向かって凸状に設けられる。すなわち、立設部12Cは屈曲部13に対して図示の例では凹状に設けられているが、立設部12Cを屈曲部13に対して凸状に設けることもできる。この立設部12Cは屈曲部13の周方向に複数設けられている。そして、蓋部10は、音響調整部材40を支持する複数の支持部11Aを備えている。蓋部10が音響調整部材40を支持する位置(支持部11Aの位置)は、周方向における複数の立設部12Cの間に設けられている。図示の例では、立設部12Cの凹状部内に蓋部10と筐体部20とを連結する連結部12Aが配置されている。
【0021】
蓋部10の屈曲部13は、板状のスピーカユニット支持部11の一部分と、板状のスピーカユニット支持部11の一部分から所定の傾斜角度で立ち上がる外周縁部12の内側側面12Bとが交差することで形成される。この屈曲部13が設けられることで、スピーカユニット支持部11と外周縁部12の周縁部12Dとの間に段部が形成される。屈曲部13による段部によって蓋部10は曲げ剛性が高められており、また、外周縁部12の一部に立設部12Cを設けることで、更に蓋部10の曲げ剛性を高めることができる。
【0022】
このような蓋部10の構造によると、蓋部10が屈曲部13或いは立設部12Cを備えることで曲げ剛性が比較的大きくなっており、スピーカユニット30の駆動によって生じる磁気回路35の振動により、蓋部10が振動することを抑止することができる。これによって、蓋部10に連結される筐体部20に不要な振動が伝播することを抑止することができる。
【0023】
また、蓋部10の立設部12Cが周方向に複数設けられ、蓋部10と音響調整部材40とが連結する位置が、周方向における複数の立設部12Cの間にあるので、立設部12Cに蓋部10と筐体部20とを連結する連結部12Aを設けることで、スピーカユニット30の駆動によって生じる磁気回路35の振動が音響調整部材40を介して蓋部10に伝播しても、この振動が直接筐体部20に伝わることを抑止できる。このように、周方向において、蓋部10と筐体部20とを連結する立設部12Cの位置と、蓋部10と音響調整部材40との連結位置を異ならせることで、スピーカユニット30の駆動によって生じる磁気回路35の振動が筐体部20に伝わるのを抑止することができる。
【0024】
図1及び図3によって音響調整部材40の構造を詳細に説明する。音響調整部材40は、規定の質量と剛性を備えるものであり、この音響調整部材40がスピーカユニット30の磁気回路35を支持する構成にすることで、磁気回路35に重りを付与したものと同等の機能が得られる。音響調整部材40が磁気回路35に対する重りとなることで、ボイスコイル34の振動に伴って、磁気回路35に共振が生じることを抑止することができる。特に磁気回路35および音響調整部材40の構成部材が互いに異なる場合には、各構成部材の共振周波数が異なるので、磁気回路35に共振が生じにくくなる。また、音響調整部材40が剛性を備えることで、ボイスコイル34の振動に伴って、磁気回路35に生じる振動の振幅を比較的小さくできる。よって、ボイスコイル34の振動に伴う反力を受けても磁気回路35自体が振動し難くなる。
【0025】
また、音響調整部材40は、底面部41の周囲に連結部42を配置するフランジ部43と、底面部41とフランジ部43とを連結する架橋部44とを備えている。架橋部44は底面部41に支持されるスピーカユニット30の周囲に配置され、スピーカユニット30の振動板の振動方向に沿って、スピーカユニット30の中心軸に対して所定の角度で設けられる。環状に構成された底面部41は、凹部41Aを備える。
【0026】
このような音響調整部材40によると、底面部41とフランジ部43とを連結する架橋部44がスピーカユニット30の振動板の振動方向に沿って設けられるので、音響調整部材40がスピーカユニット30の駆動(ボイスコイル34の振動)によって生じる振動の方向に対して剛性を備える。音響調整部材40が剛性を備えることで、スピーカユニット30の駆動によって生じる磁気回路35の振動が蓋部10に伝播するのを音響調整部材40は抑止できる。
【0027】
また、磁気回路35のヨーク35Aを支持する静止部31の底面部31A(スピーカユニット30の底部)に凸部31Cを設けることで、音響調整部材40とスピーカユニット30の底部との接触面積を比較的小さくすることができる。これによっても、スピーカユニット30の駆動によって生じる磁気回路35の振動が蓋部10に伝播するのを音響調整部材40は抑止できる。また、音響調整部材40の底面部41に凹部41Aを設けることで、音響調整部材40とスピーカユニット30の底部(磁気回路35のヨーク35Aを支持する静止部31の底面部31A)との接触面積を比較的小さくしても構わない。
【0028】
図1及び図4によって筐体部20を詳細に説明する。筐体部20は、環状の底部21とその外周側に設けられる外周枠部22とを備えている。音響調整部材40は、筐体部20の底部21の内側に配置される。筐体部20の外周枠部22は、環状の外周部22Aと、外周部22Aと底部21とを連結する架橋部22Bとを備える。
【0029】
図5に示されるように、音響調整部材40の架橋部44と筐体部20の架橋部22Bは、周方向にて互いに異なる位置に配置されている。具体的には、音響調整部材40の架橋部44は、周方向にて、筐体部20の架橋部22Bの間に配置されている。音響調整部材40の架橋部44と筐体部20の架橋部22Bが、周方向にて異なる位置に配置されることで、後述するヘッドホン本体1Aの捩れ剛性を向上させることができる。
【0030】
筐体部20の外周部22Aは、径方向に延在する補強部22A1を備える。筐体部20は、外周部22Aに補強部22A1を設けることで捩れ剛性を備える。筐体部20の外周部22A又は架橋部22Bは、蓋部10と連結する連結部23を備えている。図示の例では架橋部22Bに連結部23を設けているが、外周部22Aに連結部23を設けても良い。
【0031】
筐体部20の外周部22Aは筒状の側面22A2を備えている。筒状の側面22A2には接続孔22A3が左右一対設けられ、この接続孔22A3に後述する腕部が接続される。また、環状の底部21の開口21Aは外周枠部22に取り付けられる保護部24によって覆われる。
【0032】
図5及び図6は、蓋部に対する筐体部と音響調整部材の取付構造を示した説明図である(図5は音響放射側からみた分解斜視図であり、図6は音響放射側とは逆側からみた分解斜視図である)。蓋部10の連結部12Aと筐体部20の連結部23との連結は、蓋部10の音響放射側から連結部12Aの孔に挿入される連結部材(ねじ部材)14を筐体部20の連結部23の孔に連結する(ねじ込む)ことで行うことができる。一方、蓋部10の支持部11Aと音響調整部材40の連結部42との連結は、音響調整部材40の音響放射側に対して逆側(背面側)から連結部42の孔に挿入される連結部材(ねじ部材)を蓋部10の支持部11Aの孔に連結する(ねじ込む)ことによって行うことができる。蓋部10のスピーカ支持部11の音響放射方向に対して逆側には、開口部11P2を覆うようにフィルタ15が装着される。筐体部20の音響放射側と逆側には保護部24が取り付けられる。
【0033】
図7は、本発明の実施形態に係るヘッドホンの全体構成を示した側面図である。本発明の実施形態に係るヘッドホン1は、前述したスピーカユニット30を備える一対のヘッドホン本体1A,1A(筐体部20,20)と、ヘッドホン本体1A,1A(筐体部20,20)のそれぞれに取り付けられる腕部2,2と、腕部2を介して一対のヘッドホン本体1A,1A(筐体部20,20)に直接又は腕部2や接続部3を介して間接的に接続するヘッドバンド4と、一対の腕部2,2の間に架け渡される保持部5及び側圧付与部6とを備える。ヘッドバンド4,保持部5,側圧付与部6の各端部が接続部3に接続されており、腕部2とヘッドバンド4,保持部5,側圧付与部6とは接続部3を介して接続されている。
【0034】
ヘッドホン本体1Aは、前述した蓋部10,筐体部20,スピーカユニット30を備えている。スピーカユニット30には外部から音声信号をスピーカユニット30に供給するためのケーブル8が接続されている。また、蓋部10の音響放射側には密接部25が取り付けられている。
【0035】
図示の例では、ヘッドホン本体1Aの筐体部20,20のそれぞれに腕部2の両端部が取り付けられている。詳細には、筐体部20は、腕部2の両端に回転可能に取り付けられており、一対の筐体部20,20とヘッドバンド4は腕部2又は接続部3を介して接続されている。
【0036】
ヘッドバンド4は使用者の頭部に載せ置かれることで、使用者の耳に対するヘッドホン本体1A,1Aの位置決めを行う機能を有する。ヘッドバンド4の長さを調整することで、ヘッドホン本体1A,1Aの装着位置を使用者の耳の位置に合わせて調整することができる。一方、保持部5と側圧付与部6は、ヘッドバンド4に沿う形状を備えた湾曲状の弾性部材であり、一対のヘッドホン本体1A,1Aをユーザーの耳に向かう方向で側圧を付与する部位である。側圧付与部6の端部6Aは、接続部3に対して着脱可能に取り付けられている。
【0037】
図8によってヘッドホン1の接続部3を説明する。図示の例では、保持部5には、ヘッドバンド4の端部4Aがネジ4B1及び取付パット4B2、被取付パット4B3で構成される取付部材4Bを介して取り付けられている。取付部材4Bは、保持部5に対するヘッドバンド4の位置が変更可能となるように、保持部5に取り付けられている。また、保持部5はその端部が接続部3に取り付けられており、保持部5の一部が接続部3内に配置されている。取付部材4Bの位置を保持部5に沿って変更することで、保持部5に対するヘッドバンド4の位置が変更される。保持部5に対するヘッドバンド4の位置の変更に伴って、使用者の耳に対する一対のヘッドホン本体1Aの位置が変更される。また、同時に使用者の耳への側圧も変化する場合がある。このような側圧の変化は側圧付与部6を任意に選択することで調整できる。
【0038】
接続部3は、側圧付与部6の端部6Aが挿入される挿入孔部3Aを備えている。挿入孔部3Aに側圧付与部6の端部6Aを挿入することで、端部6Aが接続部3に着脱可能に取り付けられる。接続部3には、側圧付与部6の端部6Aを接続部3に対して取り外すための取り外しボタン3Bが設けられている。前述のように、保持部5に対するヘッドバンド4の位置の変更に伴って、使用者の耳に対する一対のヘッドホン本体1Aの位置が変更される。このとき、使用者の耳へのヘッドホン本体1Aの側圧が変化しても、使用者に対応する側圧付与部6を接続部3に取り付けることで、側圧を調整することができる。また、使用者に適した側圧付与部6を選択することでヘッドホン本体1Aと使用者の耳との密着性を良好に高めることができる。側圧付与部6の着脱を簡易に行うことができるので、側圧付与部6の付け替え操作の煩雑さを解消することができる。
【0039】
図9,図10及び図11は、本発明の実施形態に係るヘッドホンの制振構造を示した説明図である。ヘッドホン1は、保持部5と腕部2が金属部材で構成されている。ヘッドホン本体1Aの筐体部20は、例えばASA樹脂などの樹脂部材で構成される。そして、腕部2は、シリコーンゴムなどの樹脂材料で構成される樹脂部材7(第1の樹脂部材7A)を介して、筐体部20に取り付けられている。また、スピーカユニット30の音響放射側に対して逆側に配置される保護部24は、その外周部が外周枠部22の外周部22Aと内周部22Cとの間に設けられる溝部22Dに挿入されて、筐体部20に取り付けられている。保護部24は、複数の孔部を有する金属部材で構成されていても構わない。
【0040】
腕部2の両端部は、取付部材2Aを介して筐体部20に取り付けられている。取付部材2Aは、腕部2に固定されていても構わない。筐体部20は取付部材2Aが配置される接続孔22A3を備える。取付部材2Aの周囲を覆うようにシリコーンゴムなどの樹脂材料で構成される第1の樹脂部材7Aが設けられる。第1の樹脂部材7Aは取付部材2Aが挿入される孔を有する。この第1の樹脂部材7Aの孔に取付部材2Aが挿入されて第1の樹脂部材7Aが腕部2と筐体部20の間に介在されることで、スピーカユニット30から腕部2に伝播する振動を第1の樹脂部材7Aによって減衰できる。すなわち、スピーカユニット30に生じる振動が腕部2に伝わることを抑止できる。
【0041】
図11に示されるように、蓋部10の連結部12Aと筐体部20の連結部23との連結において、シリコーンゴムなどの樹脂材料で構成される第2の樹脂部材7Bは、蓋部10の連結部12A内に配置されている。この第2の樹脂部材7Bは、一対のフランジ部7B1、7B2、一対のフランジ部7B1、7B2の間に配置される筒状部7B3を備える。一対のフランジ部7B1,7B2は、蓋部10の連結部12Aの音響放射側および筐体部20の連結部23の保護部24側に配置されている。筒状部7B3内には、連結部12Aと連結部23の孔に挿入される連結部材(ねじ部材)14が挿入され、他の連結部材7C(ビス部材)を用いて、連結部12Aと連結部23とを連結する。このように、連結部12Aと連結部23とが第2の樹脂部材7Bを介して連結することで、スピーカユニット30から蓋部10を介して筐体部20へ伝播する振動を減衰できる。すなわち、スピーカユニット30に生じる振動が筐体部20に伝わり難くできる。
【0042】
また、スピーカユニット30の背面側における、筐体部の底部21の外周部21B、外周枠部22の内周部22Cには、防塵部材26が取り付けられている。防塵部材26は、繊維等で構成される繊維系部材(織物、不織布など)で構成され、複数の孔部を有する。筐体部の底部21の外周部21Bと外周枠部22の内周部22Cとの間における開口を防塵部材26は塞いでいる。この防塵部材26を設けることで、ごみなどの異物がヘッドホン本体1A又はスピーカユニット30内に進入することを抑止することができる。
【0043】
スピーカユニット30の背面側(音響放射側と逆側)には保護部24が取り付けられる。スピーカユニット2の背面側(音響放射側に対して逆側)に配置される外周枠部22に設けられる連結部23に、保護部24を取り付ける。これによって、スピーカユニット30は、保護部24により保護される。
【0044】
このような制振構造を備えたヘッドホン1は、スピーカユニット30の駆動によって生じる振動がヘッドホン本体1Aや保持部5の金属部材に伝わって異音を発生する不具合を抑制することができる。また、スピーカユニット30の振動がヘッドホン本体1Aや保持部5を介して使用者に伝わる不具合を抑制することができる。このようなヘッドホン1を備えた電子機器は、電子機器が発生する音声信号をヘッドホン1が再生し、使用者は再生された音を快適に聞くことができる。電子機器として携帯用オーディオ機器や置型オーディオ機器、パソコン、テレビ等が挙げられる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。上述の各図で示した実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1:ヘッドホン,1A:ヘッドホン本体,2:腕部,2A:取付部材,
3:接続部,3A:挿入孔部,3B:取り外しボタン,4:ヘッドバンド,
4A:端部,4B:取付部材,5:保持部,6:側圧付与部,6A:端部,
7:樹脂部材(7A:第1の樹脂部材,7B:第2の樹脂部材),8:ケーブル,
10:蓋部、11:スピーカユニット支持部,
11A:支持部,11P:放音孔部,
11P1,11P2:開口部,11P3:仕切り,11P4:突起部,
12:外周縁部,12A:連結部,12B:内側側面,12C:立設部,
12D:周縁部,13:屈曲部,14:連結部材(ねじ部材),15:フィルタ,
20:筐体部,21:底部,21A:開口,21B:底部の外周部,
22:外周枠部,22A:外周部,22A1:補強部,22A2:側面,
22A3:接続孔,22B:架橋部,22C:内周部,
23:連結部,24:保護部,25:密接部,
26:防塵部材,
30:スピーカユニット,31:静止部,31A:底面部,
31B:外周筒状部,32:振動板,33:エッジ,34:ボイスコイル,
34A:ボイスコイル支持部,35:磁気回路,35A:ヨーク,
35B:磁石,35C:プレート,
40:音響調整部材
41:底面部,41A:凹部,42:連結部,43:フランジ部,
44:架橋部,45:連結部材,S:間隙,T:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋部と、該蓋部に連結する筐体部と、当該蓋部と当該筐体部との間に配置されるスピーカユニットとを備え、
前記蓋部は、音響調整部材を介して前記スピーカユニットを支持しており、
規定の質量と剛性を備える金属部材で構成される前記音響調整部材は、前記スピーカユニットを支持する底面部と、該底面部の周囲に設けられ前記蓋部に連結する連結部とを備え、
前記音響調整部材と前記筐体部との間には空間が設けられており、前記空間は前記音響調整部材と前記筐体部との間に連続する規定の間隙を設けることを特徴とするヘッドホン。
【請求項2】
前記蓋部は、前記音響調整部材を介して前記スピーカユニットを支持する板状のスピーカユニット支持部と、該スピーカユニット支持部の周囲に設けられる外周縁部と、当該スピーカユニット支持部と当該外周縁部の間に配置される屈曲部とを備え、
前記外周縁部は、立設部と、前記筐体部に連結する連結部とを備え、
前記外周縁部の内側側面は、前記スピーカユニット支持部に対して第1の傾斜角度で傾斜する面と、第1の傾斜角度とは異なる第2の傾斜角度で傾斜する面を備え、
前記立設部は、前記第2の傾斜角度で傾斜する面で構成されることを特徴とする請求項1に記載のヘッドホン。
【請求項3】
前記第2の傾斜角度で傾斜する面は、前記第1の傾斜角度で傾斜する面に対して、前記外周縁部から前記スピーカユニット支持部に向かって凸状、又は前記スピーカユニット支持部から前記外周縁部に向かって凸状に設けられることを特徴とする請求項2に記載のヘッドホン。
【請求項4】
前記立設部は周方向に複数設けられており、
前記蓋部は、前記音響調整部材を支持する複数の支持部を備え、
前記蓋部の支持部の位置は、周方向における前記立設部の間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のヘッドホン。
【請求項5】
前記スピーカユニット支持部は、放音孔部を備えることを特徴とする請求項4に記載のヘッドホン。
【請求項6】
前記音響調整部材は、前記底面部の周囲に当該音響調整部材の連結部を配置するフランジ部と、前記底面部と当該フランジ部とを連結する架橋部とを備え、
前記架橋部は、前記底面部に支持される前記スピーカユニットの周囲に配置され、前記スピーカユニットの振動板の振動方向に沿って設けられることを特徴とする請求項5に記載のヘッドホン。
【請求項7】
前記音響調整部材の底面部は、凹部を備えることを特徴とする請求項6に記載のヘッドホン。
【請求項8】
前記蓋部と前記スピーカユニットと前記音響調整部材は、実質的に閉じた振動伝播経路を構成することを特徴とする請求項7に記載のヘッドホン。
【請求項9】
前記スピーカユニットは、静止部と、当該静止部にエッジを介して支持される前記振動板と、当該振動板に支持されるボイスコイルと、当該静止部に支持される磁気回路とを備え、
前記静止部は、前記磁気回路を支持する底面部と、前記蓋部と連結する外周筒状部とを備え、
前記蓋部と前記静止部と前記音響調整部材は、前記振動伝播経路を構成することを特徴とする請求項8に記載のヘッドホン。
【請求項10】
前記筐体部は、環状の底部と当該底部の外周側に設けられる外周枠部とを備え、
前記音響調整部材は、前記筐体部の底部の内側に配置され、
前記筐体部の外周枠部は、環状の外周部と、当該外周部と前記底部とを連結する架橋部とを備え、
前記音響調整部材の架橋部と前記筐体部の架橋部は、周方向にて、互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項9に記載のヘッドホン。
【請求項11】
前記筐体部の外周部は、径方向に延在する複数の補強部を備え、
前記筐体部は、捩れ剛性を備えることを特徴とする請求項10に記載のヘッドホン。
【請求項12】
前記筐体部の外周部又は架橋部は、前記蓋部と連結する連結部を備えることを特徴とする請求項11に記載のヘッドホン。
【請求項13】
前記蓋部を構成する樹脂材料の内部損失は、前記筐体部又は静止部を構成する樹脂材料の内部損失に対して大きいことを特徴とする請求項12に記載のヘッドホン。
【請求項14】
前記蓋部は、アクリルニトリルスチレンアクリレート樹脂で構成されることを特徴とする請求項13に記載のヘッドホン。
【請求項15】
一対の前記筐体部と、当該筐体部のそれぞれに取り付けられる腕部と、該腕部を介して一対の前記筐体部に接続するヘッドバンドと、一対の前記腕部の間に架け渡される保持部及び側圧付与部とを備え、
前記保持部及び前記腕部は金属部材で構成されており、
前記腕部は、第1の樹脂部材を介して、前記筐体部に取り付けられていることを特徴とする請求項14に記載のヘッドホン。
【請求項16】
前記筐体部と前記蓋部は、第2の樹脂部材を介して連結されていることを特徴とする請求項15に記載のヘッドホン。
【請求項17】
請求項1に記載のヘッドホンを備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−244247(P2012−244247A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109770(P2011−109770)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】