説明

ヘッドランプの放熱システム

【課題】 クーリングファンを動作させるためのファンモーターが正常に作動するか否かを運転者に知らせることで、ヘッドランプの過熱を防止するヘッドランプの放熱システムを提供する。
【解決手段】 ヘッドランプと、ヘッドランプの作動の時にヘッドランプ周辺の空気を流動させるためのクーリングファンを回転させるファンモーターと、ヘッドランプの作動の時にファンモーターの動作を感知して、ヘッドランプが作動した状態でファンモーターが停止した時に故障信号を発生させる駆動素子(Driver IC)と、車のクラスタに装着されてファンモーターの故障の有無を運転者に知らせるための警告灯と、駆動素子から故障信号の伝達を受けて警告灯を作動させる電子制御装置(ECU)とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドランプの放熱システムに係り、より詳細にはヘッドランプを放熱させるヘッドランプの放熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動車の灯火装置は、対象物を見ることを目的にする照明機能と、外の自動車やその他の道路利用者に自分の自動車の走行状態を知らせることを目的にする指示機能、信号機能、警告機能、飾り機能などを有するものとして使用される。特にヘッドランプは、自動車のバッテリーに接続された配線を通じて電気が印加され、夜間走行時の運転者の視野を確保することができるように車体前方部位に車幅方向の両側に設置されている。
通常ヘッドランプやリアーコンビネーションランプなどは、光源としてバルブ(Bulb)が用いられているが、バルブは使用の寿命が短く、耐衝撃性も落ちるので、近来になって使用の寿命が長く、耐衝撃性がすぐれた高輝度の発光ダイオード(LED)が光源に用いられる傾向にある。
【0003】
このような高輝度のLEDが適用されるヘッドランプは、LED点灯の時に非常に高い熱が発生し、LED周囲の部品が熱変形を起し、ヘッドランプの耐久性が低下するという問題点がある。このため、LEDで発生した高熱を外部に放出することができる放熱装置の必要性が高まってきている。
LEDで発生する高熱を外部へ放出させる方法としては、LEDの熱を熱伝導により放出するための放熱ピンを装着する方法と、クーリングファンを利用してLED周辺の空気を流動させる方法などがある。放熱ピンを装着する方法は、放熱ピンをLEDと直接または間接的に接触させる必要があり、LEDランプの構造が複雑になり製造が難しくなるばかりではなく、放熱の效果があまり大きくないという短所がある。このため、最近はクーリングファンを利用する方法について研究及び開発がなされる傾向にある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
クーリングファンを利用する方法の問題点は、ヘッドランプに適用されるLEDの寿命が通常的に10,000時間以上であるのに対し、クーリングファンを回転させるためのファンモーターの耐久寿命は10,000時間以上を維持しにくいことである。このため、LEDは正常に光を発光しているにもかかわらず、クーリングファンが駆動しない状況が起こる可能性がある。このようにクーリングファンが駆動せずにLEDだけ発光した場合には、LEDは非常に高温となり、LEDの寿命が急激に減少するだけでなく、周辺装置まで熱損傷を起こす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−47522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、クーリングファンを動作させるためのファンモーターが正常に作動するか否かを運転者に知らせることで、ヘッドランプの過熱を防止するヘッドランプの放熱システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような目的を果たすための本発明によるヘッドランプの放熱システムは、ヘッドランプと、前記ヘッドランプの作動の時に前記ヘッドランプ周辺の空気を流動させるためのクーリングファンを回転させるファンモーターと、前記ヘッドランプの作動の時に前記ファンモーターの動作を感知して、前記ヘッドランプが作動した状態で前記ファンモーターが停止した時に故障信号を発生させる駆動素子(Driver IC)と、車のクラスタに装着されて前記ファンモーターの故障の有無を運転者に知らせるための警告灯と、前記駆動素子から故障信号の伝達を受けて前記警告灯を作動させる電子制御装置(ECU)とを備える。
【0008】
前記駆動素子は、前記ファンモーターが作動している時にはロー(Low)信号を出力し、前記ファンモーターが停止した時にはハイ(High)信号を出力するように構成されて、前記駆動素子から出力された信号の伝達を受けて前記電子制御装置に信号を出力するように構成され、前記駆動素子からロー信号の伝達を受けた時には前記電子制御装置にハイ信号を出力し、前記駆動素子からハイ信号の伝達を受けた時には前記電子制御装置にロー信号を出力するように構成されるトランジスターをさらに備える。
前記のヘッドランプは、発光ダイオード(LED)ランプで適用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヘッドランプの放熱システムによると、クーリングファンを作動させるためのファンモーターが故障の時、これを運転者に認知させてファンモーターを直ちに交換することができるため、過熱によるヘッドランプの寿命の低下を防止し、高熱による周辺装置の損傷も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるヘッドランプの放熱システムのブロック図である。
【図2】本発明によるヘッドランプの放熱システムの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明によるヘッドランプの放熱システムのブロック図である。
図1に示すとおり、本発明によるヘッドランプの放熱システムは、車の前方に光を照射するヘッドランプ200と、ヘッドランプ200の点灯時にヘッドランプ200辺りの空気を流動させるためのクーリングファンを回転させるファンモーター300と、ヘッドランプ200の点灯時にファンモーター300の動作を感知し、ヘッドランプ200の点灯時にファンモーター300が停止した時または作動しない時には故障信号を発生させる駆動素子500(Driver IC)と、車のクラスタに装着されてファンモーター300の故障を運転者に知らせるための警告灯800と、駆動素子500から故障信号の伝達を受けて警告灯800を点灯させる電子制御装置700(ECU)を備えて構成される。
【0012】
ヘッドランプ200とファンモーター300と駆動素子500は、電源部100から電力の供給を受けて作動する。本発明によるヘッドランプの放熱システムは、電源部100から供給される電力を駆動素子500に適合した電圧に調節するためのレギュレーター400を追加的に具備することができる。また、本発明によるヘッドランプの放熱システムは、駆動素子500と電子制御装置700の間に駆動素子500から出力される信号をスイチングさせて電子制御装置700に伝達するトランジスター600を追加的に具備することができる。トランジスター600の詳細な構成及び動作については図2を参照して後述する。
【0013】
また、駆動素子500は、無接触の変位検出が可能になるようにホール素子(Hall IC)を内蔵するように構成される。ホール素子は、駆動モーターの磁石の極性変化を感知することで駆動モーターの作動の有無を判断することができる。このようにモーターの作動の有無を判断するホール素子は、モーターが備えられた各種の電子装置に広く利用されている周知技術であるので、詳細な説明は省略する。
【0014】
本発明によるヘッドランプの放熱システムは、クーリングファンを利用してヘッドランプ200周辺の空気を流動させることでヘッドランプ200から発生する熱を放熱させるため、ヘッドランプ200の放熱效果が非常に優れるだけでなく、ファンモーター300の故障によってクーリングファンが作動しなくなった時には、即座に運転者に対し警告を発するので、クーリングファンが作動しない状態で(もっと明確に言えばヘッドランプ200周辺の空気が流動していない状態で)ヘッドランプ200だけが点灯された状態が持続することがなくなり、ヘッドランプ200の過熱によって周辺装置は損傷される事態を回避することができる。
【0015】
また、バルブ(Bulb)型ランプに比べ、LEDランプの発熱量が大きくなるため、LEDランプで構成されたヘッドランプにおいて、ヘッドランプ200のクーリングファン及びファンモーター300の必要性は、より増大する。したがって本発明によるヘッドランプの放熱システムは、ヘッドランプ200がLEDランプで製作される場合に適用されると、特に有効である。
【0016】
一方、本発明によるヘッドランプの放熱システムは、クーリングファンが回転せず、ヘッドランプ200だけが点灯する時はアブノーマル状態なので、状況に合わせてヘッドランプ200を消灯または減光などを行なって過熱を防止することができる。高温の状態でヘッドランプ200の点灯が続くと、LED素子に甚大な熱損傷を与えることになるため、LED素子に連結した過熱防止回路(図示しない)が、LEDジャンクションの温度が一定以上に過熱されないようにLED素子に流れる電流値を調整してLED素子が焼損されることを防止する。例えば、過熱防止回路は駆動素子500から故障信号が発生された初期には、ヘッドランプ200の光量を減らして、続いてヘッドランプ200の過熱が持続する場合、すなわち、ヘッドランプ200の光量を減らした状態での点灯が設定時間以上に持続する場合には、ヘッドランプ200を消灯するように構成することができる。このように電流値の調整を優先する理由は、夜間にヘッドランプ200が急に消灯された場合に運転者が視野を確保することができなくなることで事故発生の憂慮があるからである。過熱防止回路は、特定の信号の発生時に電流値を制御する自動制御システムで、すでに常用化されている回路なので、これに対する詳細な構成及び作動原理に対する説明は略する。
【0017】
本発明によるヘッドランプの放熱システムを利用すれば、ヘッドランプ200の過熱によるヘッドランプ200の損傷や、ヘッドランプ200周辺の各種の器機が損傷される現象を防止することができる。また、本発明によるヘッドランプの放熱システムは、ファンモーター300が正常に回転しても、クーリングファンの破損や変形等によりファンモーター300が正常に回転しない場合にも、警告灯800が点灯されて運転者に異常を知らせるところから、ファンモーター300の過負荷による発火などの事故を防止することができる。
【0018】
警告灯800は、ファンモーター300が停止した時に点灯した状態を維持してもよく、また、運転者により目立つように点滅するように構成してもよい。更に、最近の薄膜トランジスター液晶ディスプレイ(TFT LCD)などの技術を利用して、運転者に力強い警告画面等を見せるように構成することもできる。クーリングファンとファンモーター300は、異常の発生時に容易に取り替えることができるように、着脱可能な構造で車に装着されることが好ましい。
【0019】
図2は本発明によるヘッドランプの放熱システムの回路図である。
電源部100より印加された13.5Vの電圧は、逆電圧の防止用ダイオード(DI)を通じて約0.7Vダウンした後、R1(1.5KΩ)の段階によって9.5Vに出力されて駆動素子500の電源端子(Vdd端子)に供給される。電源部100より印加された電圧が変圧されることは、駆動素子500の特性によって多様に設計されることができる。
【0020】
駆動素子500は、出力端子(Out 端子)を通じてコイル(L1)に電流を供給してファンモーター300が駆動されるようにして、ファンモーター300が駆動する時にはロー(LOW)信号(出力ビート‘0’)を出力し、ファンモーター300を止める時にはハイ(High)信号(出力ビート‘1’)を出力する。
【0021】
駆動素子500で発生させたロー信号が、トランジスター600のベースに伝達すれば、トランジスター600のエミッタ(本実施例では接地端で構成)側が遮られるので、電子制御装置700では、電源部100の電源が印加された状態が維持される。すなわち、電子制御装置700にはハイ信号が印加された状態をそのまま維持するようになる。
【0022】
反対に、駆動素子500で発生させたハイ信号が、トランジスター600のベースに伝達すれば、トランジスター600のエミッタ側が開通するので、電源部100の電源は、トランジスター600のエミッタ側を通じてアースされて、これによって電子制御装置700にはロー信号が印加された状態になる。
【0023】
このようにトランジスター600を利用すれば、ファンモーター300が停止した時に、電子制御装置700に印加される信号を自由に変えることができるので、電子制御装置700及びここに繋がれた回路の設計が、より自由になるという長所がある。
前記のようにトランジスター600を利用して入力される信号を、スイチングして出力する技術は回路の設計の分野で公知な技術であるため、これに対する詳細な説明は略する。また、駆動素子500で発生した信号をスイチングして電子制御装置700に伝達する回路の構成は、本実施例に図示した回路の構成以外にも多様に変更することができる。
【0024】
したがって、電子制御装置700は、ファンモーター300が正常に作動している間はハイ信号の伝達を受け、ファンモーター300が停止した時にはロー信号の伝達を受けて、ロー信号が印加された時に、警告灯800が点灯するように警告灯800に点灯信号を伝達する。運転者は、警告灯800の点灯を確認して、ファンモーター300が故障した時にこれを即座に取り換えることができるので、ヘッドランプ200の寿命の短縮を防止することができる。
【0025】
以上、本発明を好ましい実施例を使って詳しく説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるのではなく、特許請求の範囲によって解釈されなければならない。また、この技術分野で通常の知識を習得した者なら、本発明の技術的範囲内で多くの修正と変形ができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
100: 電源部
200: ヘッドランプ
300: ファンモーター
400: レギュレーター
500: 駆動素子
600: トランジスター
700: 電子制御装置
800: 警告灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプと、前記ヘッドランプの作動の時に前記ヘッドランプ周辺の空気を流動させるためのクーリングファンを回転させるファンモーターと、前記ヘッドランプの作動の時に前記ファンモーターの動作を感知して、前記ヘッドランプが作動した状態で前記ファンモーターが停止した時に故障信号を発生させる駆動素子(Driver IC)と、車のクラスタに装着されて前記ファンモーターの故障の有無を運転者に知らせるための警告灯と、前記駆動素子から故障信号の伝達を受けて前記警告灯を作動させる電子制御装置(ECU)と、を備えることを特徴とするヘッドランプの放熱システム。
【請求項2】
前記駆動素子は、前記ファンモーターが作動している時にはロー(Low)信号を出力し、前記ファンモーターが停止した時にはハイ(High)信号を出力するように構成されて、前記駆動素子から出力された信号の伝達を受けて前記電子制御装置に信号を出力するように構成され、前記駆動素子からロー信号の伝達を受けた時には前記電子制御装置にハイ信号を出力し、前記駆動素子からハイ信号の伝達を受けた時には前記電子制御装置にロー信号を出力するように構成されるトランジスターをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のヘッドランプの放熱システム。
【請求項3】
前記ヘッドランプは、前記駆動素子で故障信号が発生された時、消灯または減光されることを特徴とする請求項1に記載のヘッドランプの放熱システム。
【請求項4】
前記駆動素子で故障信号が発生された時に、前記ヘッドランプの光量を減らすかまたは前記ヘッドランプを消灯するように、前記ヘッドランプに印加される電流値を調整する過熱防止回路をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドランプの放熱システム。
【請求項5】
前記ヘッドランプは、発光ダイオード(LED)ランプであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のヘッドランプの放熱システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−29145(P2011−29145A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46661(P2010−46661)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】