説明

ヘッド収容装置

【課題】 メニスカスの破壊等を防止しつつ、高機能の大気開放弁やキャップ荷重の厳しい制約を要することのないヘッド収容装置を提供する。
【解決手段】 ヘッド収容装置30は、ノズル孔25を内包するようにノズル面25aを覆って空間38を形成するキャップ37と、インク吸収体57を収容すると共に大気連通口53を有する廃液部58と、キャップ37及び廃液部58の間を連通する第1通路49とを備え、ノズル孔25は、キャップ37内の空間38、第1通路49、廃液部58内の液体吸収体57、及び大気連通口53を通じて、大気開放されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニット及びタンクユニットを収容するヘッド収容装置に関し、特に、インクジェットプリンタ装置などの液体吐出装置のヘッドユニット等を収容する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体吐出装置であるインクジェット式のプリンタ装置では、ノズル面に形成された複数のノズル孔へ至る流路(チャネル)が形成されたヘッドユニットと、交換可能な大容量タンクからの液体をヘッドユニットへ供給すべく貯留するタンクユニットとが備えられている。そして一般に、これらヘッドユニット及びタンクユニットは、プリンタ装置に搭載される前の保管又は搬送状態においては、互いに接続された状態で且つ両者共に液体が充填された状態で、所定のケーシングに収容される。
【0003】
従来、このようにヘッドユニット及びタンクユニットがケーシングに収容されて成るヘッド収容装置では、ノズル孔での液体の乾燥を防止するため、ノズル面に対してこれを覆うようにして可撓性のキャップを被せる一方、温度環境の変化等により液体内のエアが膨張した場合に液体が漏出するのを防止するため、タンクユニットが有する液体供給口(即ち、大容量タンクとの連通口)は開放させておくものがある。
【0004】
更に、ノズル面を可撓性のキャップで覆う際に、該キャップの変形によって内部空間が一時的に高圧になり、ノズル孔内の液体を流路奥側へと押し込んでしまう可能性がある。これに対して特許文献1では、キャップに弁を設け、この弁を通じてキャップ内から外部へ空気が抜けさせることができるようにし、キャップ内空間が高圧になるのを抑制しようとする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−234882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ノズル面を完全に密閉してしまうと、上述したようにノズル孔内の液体を流路奥側へ押し込んでしまうことになる他、ノズル孔内の液体が形成するメニスカスが破壊されてしまう可能性がある。一方、特許文献1のようにキャップに一方向弁を設ける場合であっても、圧力差に応じて該弁を適切に動作させるのは困難であり、これを実現しようとすると弁を高機能化しなければならず、コスト面での実現性に乏しい。また、ノズル面を覆う際にキャップに加える荷重の制約も厳しくなってしまう。
【0007】
なお、このような事情は、インクジェット式プリンタ装置用のヘッド収容装置に限らず、同様の構成を有するヘッドユニット及びタンクユニットを収容するヘッド収容装置の全般においても同様である。
【0008】
そこで本発明は、メニスカスの破壊等、ノズル孔内の液体に及ぼす上記のような作用を防止しつつ、高機能の大気開放弁やキャップ荷重の厳しい制約を要することのないヘッド収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るヘッド収容装置は、ノズル面に形成されたノズル孔へ至る流路を有するヘッドユニットと、該ヘッドユニットに接続されて前記流路へ液体を供給するタンクユニットとを、互いが接続されて共に液体が充填された状態でケーシング内に収容するヘッド収容装置であって、前記ノズル孔を内包するように前記ノズル面を覆って該ノズル面との間に空間を形成するキャップと、液体吸収体を収容すると共に大気連通口を有する廃液部と、前記キャップ及び前記廃液部の間を連通する第1通路とを備え、前記ノズル孔は、前記キャップ内の空間、前記第1通路、前記廃液部内の前記液体吸収体、及び前記大気連通口を通じて、大気開放されるように構成されている。
【0010】
このような構成とすることにより、ノズル面をキャップで覆うことによりノズル孔内に液体の乾燥を防止しつつ、ノズル孔から漏出した液体は廃液部にて吸収することができる。また、ノズル面は大気連通口を通じて大気開放されているため、簡単な構成により、キャップを被せる際に内部空間が高圧になるのを抑制し、メニスカスの破壊等を防止することもできる。また、液体吸収体にて液体が吸収されるため、この液体の存在により、キャップ内空間の湿度が適度に高く保たれ、ノズル孔内の液体の乾燥がより一層防止される。更には、この液体吸収体とキャップ内の空間とが第1通路によって連通される構成としているため、キャップ内空間から液体吸収体へ向かう液体は早期に気化することなく液体状態を長く維持できるため、この点からもキャップ内空間の湿度を長期的に高く維持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メニスカスの破壊等を防止しつつ、高機能の大気開放弁やキャップ荷重の厳しい制約を要することのないヘッド収容装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】液体吐出装置たるプリンタ装置の要部を示す模式的平面図である。
【図2】インク供給ユニットの分解側面図である。
【図3】ヘッドユニットが有する流路ユニットの構成を示す図面であり、流路ユニットをY−Z平面で切断したときの一部の断面形状を示している。
【図4】ヘッド収容装置の構成を示す図面であり、X−Z平面で切断したときの側面断面図である。
【図5】他の構成を備えるヘッド収容装置を示す図面であり、X−Z平面で切断したときの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るヘッド収容装置について、液体吐出装置の一例であるインクジェットプリンタ装置(以下、「プリンタ装置」と称する)に適用したとき場合を例にとり、図面を参照しつつ説明する。但し、本発明はプリンタ装置への適用に限定されるものではなく、インク以外の液体を吐出するヘッドユニットとタンクユニットとを収容するヘッド収容装置全般に対しても適用できることを付言しておく。
【0014】
[プリンタ装置の構成]
図1は、液体吐出装置たるプリンタ装置1の要部を示す模式的平面図である。図1に示すように、プリンタ装置1は、左右方向へ延びる一対のガイドレール2,3が略平行に配設されており、このガイドレール2,3にインク供給ユニット4が走査方向にスライド可能に支持されている。即ち、ガイドレール3の左右の端部付近には一対のプーリ5,6が設けられ、インク供給ユニット4は、このプーリ5,6に巻き掛けられたタイミングベルト7に接合されている。一方のプーリ6には正逆回転駆動するモータ(図示せず)が設けられ、このプーリ6が正逆回転駆動することでタイミングベルト7が左方向及び右方向へと往復移動し、これに伴ってインク供給ユニット4がガイドレール2,3に沿って左右方向へ往復走査される。また、インク供給ユニット4の下方では記録用紙が走査方向に直交する方向へと搬送されるようになっている。
【0015】
以下の説明において用いる方向の概念として、記録用紙の搬送される方向には「搬送方向X」、インク供給ユニット4の走査方向には「走査方向Y」、両者に直交する方向として「鉛直方向Z」を適宜用いることとする。
【0016】
図2は、インク供給ユニット4の分解側面図である。図2に示すように、インク供給ユニット4は上方に開口したボックス状のケーシング4aを備え、該ケーシング4aの下部にはヘッドユニット10が支持され、且つケーシング4a内にはタンクユニット11が収容されている。また、ケーシング4aに支持又は収容された状態で、ヘッドユニット10及びタンクユニット11は、インクの通流が可能なように互いに接続される。一方、図1に示すように、プリンタ装置1には4つの大容量のインクカートリッジ8が交換のために挿脱可能にして装着されている。そして、タンクユニット11には、これらのインクカートリッジ8から4色の有色インク(例えば、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)を夫々供給すべく、可撓性を有する4本のインク供給チューブ9が接続されるチューブ接続口12を有している。そして、インクカートリッジ8からインク供給チューブ9及びチューブ接続口12を通じて供給されたインクは、図2に示すようにタンクユニット11内に形成された所定のルート11aを経由してヘッドユニット10へと供給される。
【0017】
ヘッドユニット10は、ノズル面25aに複数のノズル孔25(図3参照)が形成された流路ユニット13と、該流路ユニット13の上面に接合されるアクチュエータ14と、更に該アクチュエータ14の上面に接合されるフレキシブル基板15とから構成されている。図3は、このようなヘッドユニット10が有する流路ユニット13の構成を示す図面であり、流路ユニット13をY−Z平面で切断したときの一部の断面形状を示している。
【0018】
図3に示すように、流路ユニット13の内部には、インクを一時的に貯留する共通貯留室であるマニホールド21と、マニホールド21と流路ユニット13の下面であるノズル面25aに形成された複数のノズル孔25とを個別に連通する複数のチャンネルとが形成されている。このチャンネルは、各ノズル孔25に対応して設けられてインクを一時的に貯留する圧力室23、マニホールド21と圧力室23とを連通する絞り部22、及びノズル孔25と圧力室23とを連通するディセンダ孔24などの各空間で構成されている。そして、このようなチャンネルの下流側に位置するノズル孔25は、ノズル面13aの所定領域内に千鳥状に複数配設されている一方、チャンネルの上流側に位置するマニホールド21は、流路ユニット13に別途形成されたインク導入口(図示せず)を通じて、タンクユニット11の下部に形成されたインク排出口11b(図2参照)に連通するようになっている。従って、タンクユニット11から供給されたインクは、上流側から順にマニホールド21、絞り部22、圧力室23、及びディセンダ孔24を経て、ノズル孔25に至るようになっている。
【0019】
流路ユニット13の上面に接合されるアクチュエータ14については、種々の公知のものを採用することができるため、その構成に関する詳細な説明は省略するが、アクチュエータ14には各圧力室23に対して個別に活性部が備えられており、フレキシブル基板15を通じて入力された信号(電圧)に応じて各活性部が独立して変形駆動する。これにより、圧力室23内のインクに吐出圧力が付与され、この圧力によってチャンネル内のインクがノズル孔25を通じて記録用紙へ向けて吐出される。更に、上述したように記録用紙を搬送方向Xへ搬送し、且つインク供給ユニット4を走査方向Yへ移動させつつ、この間にノズル孔25からインクを吐出することによって、記録用紙に対して画像を形成できるようになっている。
【0020】
[ヘッド収容装置の構成(1)]
次に、上述したようなヘッドユニット10及びタンクユニット11を含むインク供給ユニット4を収容するヘッド収容装置30について説明する。このヘッド収容装置30は、プリンタ装置1に搭載する前の新品状態のインク供給ユニット4、又は使用後に交換のためにプリンタ装置1から取り外されたインク供給ユニット4を収容するものであり、ヘッドユニット10及びタンクユニット11の両方の内部にインクが充填された状態で搬送されることを前提とするものである。
【0021】
図4は、ヘッド収容装置30の構成を示す図面であり、X−Z平面で切断したときの側面断面図である。なお、この図4では、インク供給ユニット4が有するヘッドユニットヘッドユニット10及びタンクユニット11を太線で示している。図4に示す状態のタンクユニット11には、チューブ接続口12を覆うようにして上方から大気連通ケース16が接続されている。該大気連通ケース16の底壁部には各チューブ接続口12に連通する下部開口16aが形成され、各下部開口16aの周囲にはシールラバー17が設けられている。また、上壁部には大気連通ケース16の内外を連通する大気開放口16bが形成されており、大気連通ケース16内には、その上部に余剰空間を残し且つ各下部開口16aに近接するようにしてインク吸収体18が収容されている。このような大気連通ケース16は、底壁部に設けられた支持クリップ16cによりインク供給ユニット4に支持され、この状態で、チューブ接続口12に対し下部開口16aが連通し、且つこの連通箇所がシールラバー17により外部からシールされた状態となる。従って、タンクユニット11のチューブ接続口12は、大気連通ケース16が有する下部開口16a、インク吸収体18、及び大気開放口16bを通じて大気開放されるようになっている。
【0022】
ところで、図4に示すように、ヘッド収容装置30は主に、インク供給ユニット4のほとんどを収容する中央ケース31と、該中央ケース31を上方から覆う上部ケース32と、中央ケース31の下部を覆う下部ケース33とを備えている。このうち中央ケース31は上方に大きく開口した有底のボックス形状を成しており、その内底部はインク供給ユニット4の外形に概ね整合するように、上側底部35及び下側底部36の二段形状になっている。
【0023】
下側底部36には合成樹脂等の可撓性を有する素材から成るキャップ37が配設されている。該キャップ37は平面視で略長方形状を成す底部37aと、該底部37aの周縁部の四辺から突設されたリップ37bとを有し、これら底部37a及びリップ37bによって内部空間38が画定されている。また、中央ケース31の下側底部36上面からは、キャップ37の周囲を取り囲むようにして支持突起39が突設されており、該支持突起39によってキャップ37は比較的正確に位置決めされている。そして、中央ケース31にインク供給ユニット4が収容された状態では、流路ユニット13のノズル面25aにキャップ37が有するリップ37bの上端部が当接すると共に、該上端部が若干撓んでノズル面25aに密着する。その結果、周回するリップ37b内に全てのノズル孔25が位置し、該ノズル孔25はキャップ37に内包されてその内部空間38に露出した状態となる。
【0024】
上部ケース32は、下部が大きく開口したボックス形状を成し、インク供給ユニット4を収容した状態の中央ケース31に対して外嵌するように上方から被せられる。上部ケース32の天井面32aからは複数の支持ポール40が垂設されており、該支持ポール40の下端には、鉛直方向Zに伸縮可能な付勢部材41が取り付けられている。そして、上部ケース32を中央ケース31に被せることにより、付勢部材41がインク供給ユニット4を下方へ所定の力で押圧する。また、この支持ポール40及び付勢部材41は、平面視した場合にキャップ37の中央部を中心にして略対称的に配置されており、周回するリップ37bの全周囲にわたって略均等な力でノズル面25aと当接するようになっている。
【0025】
下部ケース33は、上部が大きく開口したボックス形状を成し、中央ケース31の下側底部36に下方から接続される。下部ケース33の底部33a上面からは接続部43が突設されており、該接続部43は、外径寸法の大きい円柱状の基部43aと小さいプラグ部43bとから成る略段付き円柱状を成している。また、中央ケース31の下側底部36であって支持突起39に囲まれた領域の略中央部分と、キャップ37の底部37aであってリップ37bに囲まれた部分の略中央部分とには、軸芯が一致するようにして挿通孔42が形成されている。そして、下部ケース33が中央ケース31に接続された場合には、この挿通孔42に対して接続部43のプラグ部43bが下方から嵌入され、この状態で、挿通孔42の内周面とプラグ部43bの外周面とは気密的に接触する。
【0026】
この接続部43の軸芯位置には、鉛直方向Zに沿ってインク通路45が形成されており、該インク通路45の上端はプラグ部43bの上端部にて開口し、インク通路45の下端は下部ケース33の底部33a下面にて開口している。下部ケース33の底部33a下面には、インク通路45の下端から延びるインク溝46が形成されている。このインク溝46は、幾度も折返して走査方向Yの一方及び他方へと蛇行しつつ、搬送方向Xの一方へ向かって延設されている。搬送方向Xの一方端には、下部ケース33の底部33aを上下方向に貫通する第1貫通孔47が形成されている。これらインク通路45の下端開口とインク溝46と第1貫通孔47とは、底部33a下面に貼付されたフィルム48によって覆われ、外部から閉鎖された第1通路49を形成しており、該第1通路49を通じて、キャップ37の内部空間38は下部ケース33の内部空間51に連通している。更に、中央ケース31の下側底部36において支持突起39の外側の領域には、下側底部36を上下方向に貫通する第2貫通孔(大気連通口)53が形成されており、下部ケース33の内部空間51は、この第2貫通孔53を通じて中央ケース31及び上部ケース32によって画定される内部空間55に連通している。
【0027】
下部ケース33は、中央ケース31の下部に接続され、その内部空間51の下部にインク吸収体57が設けられることによって廃液部58を成している。このインク吸収体57は発泡体等で構成されており、高いインク吸収率を有すると共に、適度な空気の通流を可能とするものである。そして、第1貫通孔47の上側開口はこのインク吸収体57によって塞がれた状態となっている。
【0028】
なお、上述した接続部43において、下側の基部43aと上側のプラグ部43bとによって段差が形成される肩部分には、可撓性の合成樹脂から成るオーリング59が、プラグ部43bに外嵌するようにして設けられている。このオーリング59により、下部ケース33を中央ケース31に下方から接続するに際し、プラグ部43bが挿通孔42を通じて必要以上に上方へ侵入してノズル面25aに接触するようなことがないようにしている。
【0029】
以上に説明したようなヘッド収容装置30によれば、ノズル孔25はキャップ37の内部空間38に露出しており、該内部空間38は、第1通路49とインク吸収体57と第2貫通孔53とを通じて、中央ケース31及び上部ケース32により画定される内部空間55に大気開放されている。従って、ノズル面25aにキャップ37を被せる際に内部空間38が高圧になるのを抑制し、ノズル孔25内のインクが形成するメニスカスの破壊を防止することができる。また、ノズル孔25からインクが漏れ出た場合には、インク吸収体57によりこれを吸収し、インク供給ユニット4がインクで汚れることがない。また、ノズル面25aは大気開放されているものの、大気開放に至る途中にインク吸収体57が介在しているため、ノズル孔25内のインクの乾燥を抑制することもできる。
【0030】
また、キャップ37の内部空間38からインク吸収体57に至る第1通路49は、蛇行するインク溝46などによって構成され、通路長が長く確保されている。従って、ノズル孔25から漏れ出たインクはすぐさまインク吸収体57に到達せずに、第1通路49に長期間残存するため、キャップ37の内部空間38を実質的に気密状態とすることができ、湿度を適度に保つことができる。
【0031】
[ヘッド収容装置の構成(2)]
図5は、他の構成を備えるヘッド収容装置60を示す図面であり、X−Z平面で切断したときの側面断面図である。図5に示すように、ヘッド収容装置60は主に、インク供給ユニット4のほとんどを収容する中央ケース61と、該中央ケース61を上方から覆う上部ケース62と、中央ケース61の下部を覆う下部ケース63とを備えている。このうち中央ケース61は上方に大きく開口した有底のボックス形状を成しており、その底部65上面には、図4に示したものと同様のキャップ37が支持突起39により支持されつつ配設されている。なお、図5に示す構成において図4に示したものと同様の構成を備えるものについては、同一符号を付すこととしてその説明は省略する。
【0032】
中央ケース61の底部65及びキャップ37に形成された挿通孔42には筒状の接続継手67が嵌挿されている。この接続継手67は、キャップ37の底部37a内面からは突出しないように略面一を成す一方、中央ケース61の底部65下面からは下方へ所定寸法だけ突出しており、この突出部分に第1通路70Aを成すチューブ68の一端が接続されている。
【0033】
一方、中央ケース61の底部65の下部には廃液部71が設けられている。該廃液部71は、中央ケース61の底部65下面から下方へ突設された周回壁部71aと、該周回壁部71aにより形成される下部開口を塞ぐ廃液蓋72とを備え、これらによって形成される内部空間73にインク吸収体74を収容している。周回壁部71aからは筒状を成す接続継手75が突設されており、該接続継手75に上述したチューブ68の他端が接続されている。また、中央ケース61の底部65において、廃液部71の内部空間73の上部を画定する部分には貫通孔(大気連通口)77が形成され、廃液部71の内部空間73と、中央ケース61及び上部ケース62により画定される内部空間55とを連通している。また、インク吸収体74において、接続継手75に対向する部分は切り欠かれた構成となっている。
【0034】
上記チューブ68は途中で分岐しており、分岐チューブ69の先端部は、中央ケース61の底部65の下面に取り付けられたコネクタ80に接続されている。また、タンクユニット11が有する4つのチューブ接続口12(図2参照)には、アダプタ81を介して4本のインクチューブ82の一端部が接続されており、これらの他端部は、中央ケース61の底部65に形成された開口65aを通じてコネクタ80に接続されている。これらインクチューブ82及び分岐チューブ69は第2通路70Bを成し、この第2通路70Bを通じて、タンクユニット11のチューブ接続口12は第1通路70Aに連通し、更にインク吸収体74にも連通している。
【0035】
以上に説明したようなヘッド収容装置60によれば、ノズル孔25が露出されるキャップ37の内部空間38は、第1通路70Aとインク吸収体74と貫通孔77とを通じて、中央ケース61及び上部ケース62により画定される内部空間55に大気開放されている。従って、ヘッド収容装置30の場合と同様に、ノズル面25aにキャップ37を被せる際に内部空間38が高圧になるのを抑制し、ノズル孔25内のインクが形成するメニスカスの破壊を防止することができる。また、ノズル孔25からインクが漏れ出た場合には、インク吸収体74によりこれを吸収し、インク供給ユニット4がインクで汚れることがない。また、ノズル面25aは大気開放されているものの、大気開放に至る途中にインク吸収体74が介在しているため、ノズル孔25内のインクの乾燥を抑制することもできる。
【0036】
また、ヘッド収容装置60では、タンクユニット11のチューブ接続口12が第2通路70Bを介して廃液部71に連通している。従って、タンクユニット11のチューブ接続口12から仮にインクが漏れ出た場合には、このインクもインク吸収体74にて吸収することができる。また、この第2通路70Bは、廃液部71の上流側にて第1通路70Aに接続されており、換言すれば、第1通路70A及び第2通路70Bは、夫々独立的に廃液部71と接続されているのではなく、両者が合流して1本になった後に廃液部71に接続されている。従って、合流箇所から廃液部71に至る通路内には長期的にインクが滞留しやすくなっており、ノズル孔25内のインクの乾燥を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、メニスカスの破壊等を防止しつつ、高機能の大気開放弁やキャップ荷重の厳しい制約を要することのないヘッド収容装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 プリンタ装置
4 インク供給ユニット
10 ヘッドユニット
11 タンクユニット
12 チューブ接続口
13 流路ユニット
25 ノズル孔
25a ノズル面
30 ヘッド収容装置
37 キャップ
38 (キャップの)内部空間
49 第1通路
53 第2貫通孔(大気連通口)
57 インク吸収体
58 廃液部
70A 第1通路
70B 第2通路
71 廃液部
74 インク吸収体
77 貫通孔(大気連通口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル面に形成されたノズル孔へ至る流路を有するヘッドユニットと、該ヘッドユニットに接続されて前記流路へ液体を供給するタンクユニットとを、互いが接続されて共に液体が充填された状態でケーシング内に収容するヘッド収容装置であって、
前記ノズル孔を内包するように前記ノズル面を覆って該ノズル面との間に空間を形成するキャップと、液体吸収体を収容すると共に大気連通口を有する廃液部と、前記キャップ及び前記廃液部の間を連通する第1通路とを備え、
前記ノズル孔は、前記キャップ内の空間、前記第1通路、前記廃液部内の前記液体吸収体、及び前記大気連通口を通じて、大気開放されるように構成されていることを特徴とするヘッド収容装置。
【請求項2】
前記大気連通口は、前記ケーシング内へ向けて開口していることを特徴とする請求項1に記載のヘッド収容装置。
【請求項3】
前記タンクユニットは、別体の液体タンクから液体が供給される供給口を有し、
該供給口と前記液体吸収体とを前記タンクユニットの外部を通じて連通する第2通路を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッド収容装置。
【請求項4】
前記第2通路は、前記廃液部の上流側にて前記第1通路に連通接続されていることを特徴とする請求項3に記載のヘッド収容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−228101(P2010−228101A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74950(P2009−74950)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】