説明

ヘテロ環置換チオフェノール化合物の製造中間体および製造法

【課題】除草剤の製造中間体並びにその製造法の提供。
【解決手段】下記化合物(4)を(5)から製造する。


(式中、Rは、C1−4アルキル基を表し、Rは、水素原子またはC1−4アルキル基を表し、Rは、水素原子,シアノ基,アミド基,C1−4アルキルカルボニル基またはC1−4アルコキシカルボニル基を表し、Rは、水素原子,シアノ基,C1−4アルキルカルボニル基またはC1−4アルコキシカルボニル基を表し、Qはイソオキサゾリル基等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬特に除草剤の製造中間体として有用な新規ヘテロ環置換チオフェノール化合物の製造中間体、並びに製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明化合物であるヘテロ環置換チオフェノール化合物の中間体は、例えば、WO96/26206号、WO97/41118号及びWO97/46530号公報等に記載の除草活性ベンゾイルピラゾール化合物の製造中間体として重要である。
【0003】
本発明化合物であるシクロヘキセノン化合物の製造法に類似の、エノールラクトンからシクロヘキセノン誘導体を合成する反応に関しては、例えば、エノールラクトンと、酢酸エステルのリチウム塩との反応(下記反応式A)が、Tetrahedron Letters 31,3421(1990)に、又エノールラクトンとグリニャ試薬との反応(下記反応式B)が、J.Org.Chem.54,4704(1989))に記載されている。
【0004】


【0005】
しかしながら、エノールラクトンとイソオキサゾールなどの含窒素ヘテロ環化合物との直接反応に関しての報告はない。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、農薬・医薬等、特に除草活性を有する化合物の製造中間体として有用な新規ヘテロ環置換チオフェノール化合物製造中間体並びに、多段階にわたる工程が必要なヘテロ環置換チオフェノール化合物を、より簡便かつ経済的に有利に製造することのできる方法を提供することを目的とする。
本発明は、1.一般式(4)
【0007】



(式中、は、C1−4アルキル基を表し、 Rは、水素原子またはC1−4アルキル基を表し、 Rは、水素原子,シアノ基,アミド基,C1−4アルキルカルボニル基またはC1−4アルコキシカルボニル基を表し、は、水素原子,シアノ基,C1−4アルキルカルボニル基またはC1−4アルコキシカルボニル基を表し、Qは、次のQ1,Q2またはQ3
【0008】

(ここで、r〜rは、それぞれ独立して、水素原子もしくはC1−4アルキル基を表すか,またはrとrは一緒になって結合を形成してもよい)のいずれかの基を表す。)で表される化合物。
2.一般式(5)
【0009】

(式中、R〜Rは、前記と同じ意味を表す。)で表されるエノールラクトンと、一般式 Q−CH(式中、Q,Rは、前記と同じ意味を表す。)で表される化合物を反応させることを特徴とする、一般式(4)
【0010】

(式中、R〜RおよびQは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物の製造法関するものである。
【0011】
本発明の概要は下記の反応式で示すことができる。
【0012】

(式中、R〜R,n及びQは、前記と同じ意味を表す。)
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
前記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)および一般式(5)で表される化合物の定義において、 Rは、メチル,エチル,プロピル,イソプロピル,n−ブチル,イソブチル,s−ブチル,t−ブチル等のC1−4アルキル基を、 Rは、水素原子、又はメチル,エチル,プロピル,イソプロピル,n−ブチル,イソブチル,s−ブチル,t−ブチル等のC1−4アルキル基を、 Rは、水素原子、シアノ基、アミド基、 アセチル,プロピオニル,ブチリル,イソブチリル,バレリル,イソバレリル,ピバロイルなどのC1−4アルキルカルボニル基、 メトキシカルボニル,エトキシカルボニル,プロポキシカルボニル,イソプロポキシカルボニル,ブトキシカルボニル,イソブトキシカルボニル,s−ブトキシカルボニル,t−ブトキシカルボニルなどのC1−4アルコキシカルボニル基を、 Rは、メチル,エチル,プロピル,イソプロピル,n−ブチル,イソブチル,s−ブチル,t−ブチル等のC1−4アルキル基を、 Qは、次のQ1,Q2又はQ3のいずれかの基を表す。
【0014】



ここで、r〜rは、それぞれ独立して、水素原子,メチル,エチル,プロピル,イソプロピル,n−ブチル,イソブチル,s−ブチル,t−ブチル等のC1−4アルキル基を表す。またrとrは一緒になって結合を形成せいしてもよい。これらの内、r〜rは、水素原子,メチル又はエチル基であるのがより好ましい。
より好ましいQで表されるヘテロ環としては、イソオキサゾール−3−イル、4−メチル−イソオキサゾール−3−イル、5−メチル−イソオキサゾール−3−イル、4,5−ジメチルイソオサゾール−3−イル、4−エチル−イソオキサゾール−3−イル、5−エチル−イソオキサゾール−3−イル、4,5−ジエチルイソオサゾール−3−イル、イソオキサゾール−5−イル、3−メチル−イソオキサゾール−5−イル、4−メチル−イソオキサゾール−5−イル、3,4−ジメチルイソオサゾール−5−イル、3−エチル−イソオキサゾール−5−イル、4−エチル−イソオキサゾール−5−イル、3,4−ジエチルイソオサゾール−5−イル等のイソオキサゾリル基、 イソオキサゾリン−3−イル、4−メチル−イソオキサゾリン−3−イル、5−メチル−イソオキサゾリン−3−イル、4−エチル−イソオキサゾリン−3−イル、5−エチル−イソオキサゾリン−3−イル等のイソオキサゾリン基 ピラゾール−3−イル、1−メチルピラゾール−3−イル、1−エチルピラゾール−3−イル、1−プロピルピラゾール−3−イル、1,5−ジメチルピラゾール−3−イル等のピラゾリル基等を挙げることができる。
本発明化合物は、次の方法によって製造することができる。
(製造法)一般式(5)で表されるエノールラクトン化合物から一般式(4)で表される化合物を製造する方法。
【0015】

(式中、R〜R,R,Qは、前記と同じ意味を表す。)
エノールラクトン(5)とヘテロ環誘導体(6)とを不活性溶媒中、0℃から用いられる溶媒の沸点までの間の温度で、塩基の存在下に反応させることにより、本発明化合物(4)を製造することができる。
【0016】
上記化合物(4)を得る反応において用いられる溶媒としては、n−ヘキサン,ベンゼン,トルエンなどの炭化水素類、ジクロロメタン,クロロホルム,モノクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、THF,ジエチルエーテル,ジメトキシエタンなどのエーテル類、t−ブタノール,イソペンチルアルコールなどのアルコール類、DMF,N−メチルピロリドン,N,N−ジメチルイミダゾリ−2−オン(DMI)などのアミド類、DMSOなどの含イオウエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。これらは、単独あるいは2種類以上の混合溶媒としても用いることができる。
【0017】
またこの反応に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム,水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、炭酸カリウム,炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸カルシウム,炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩、ナトリウムメチラート,カリウムt−ブトキシドなどの金属アルコラート類、水素化ナトリウムなどの金属ヒドリド類、トリエチルアミン,ジイソプロピルエチルアミン,ピリジン,1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)などの有機塩基類などが挙げられる。用いられる塩基の量は、反応基質に対し、0.1から5倍モルであるのが好ましい。
【0018】
また、この反応において、トリエチルベンジルアンモニウムクロリドなどの第四アンモニウム塩類、18−クラウン−6などのクラウンエーテル類の添加により、反応をより円滑かつ短時間で終了させることができる。
【0019】
一般式(5)で表されるエノールラクトン類は、例えば、J.Org.Chem.50,4105−4107(1985)に記載のように、ベンゼン中、ケトカルボン酸と塩化チオニルとの反応により、あるいはJ.Org,Chem.55,157−172(1990)に記載のように、ケトカルボン酸の酸クロリドと炭酸水素ナトリウムとの反応等により合成することができる。
【0020】
本発明化合物は、反応終了後、通常の後処理を行うことにより得ることができる。
【0021】
また、本発明化合物の構造は、IR,NMRおよびMSなどから決定した。
次に実施例、参考例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0022】
3−メチルイソオキサゾール−5−イル−2,4,8−ノナントリオン(化合物(3)−1)の製造
【0023】



5−アセトニル−3−メチルイソオキサゾール1.39g、3,4−ジヒドロ−6−メチル−2H−ピラン−2−オン1.68g及び炭酸セシウム3.42gをアセトニトリル20mlに添加し、3時間加熱還流した。反応液を室温に戻し、塩酸を加えた氷水100ml中にあけ、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、続いて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色粘稠な液体として、目的物2.03gを得た。
【0024】
H−NMR(CDCl,δppm):1.83(m,2H),2.01(s,3H),2.10(s,3H),2.28(t,2H),2.33(s,3H),2.44(t,2H),6.06(s,1H),16.98(s,1H)
【実施例2】
【0025】
2−アセチル−5,7−ジオキソ−6−(3−メチルイソオキサゾール−5−イル)オクタン酸エチルエステル(化合物(3)−2)の製造
【0026】

【0027】
5−アセトニル−3−メチルイソオキサゾール16.44gをアセトニトリル300mlに溶解し、そのものに、5−エトキシカルボニル−3,4−ジヒドロ−6−メチル−2H−2−オン28.30gのアセトニトリル30mlに溶液と炭酸セシウム40.47gを添加し、室温で2時間攪拌した。反応液に水を加え、2規定塩酸で酸性とした後、エーテルで抽出した。さらに、水層から酢酸エチルで抽出を行い、得られた有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色液体として、目的物29.80gを得た。
H−NMRデータ(CDCl,δppm):1.24(t,3H),2.03(s,3H),2.13(m,2H),2.24(m,4H),2.31(s,3H),2.34(t,1H),4.18(q,2H),6.07(s,1H),16.91(s,1H)
参考例1
5−アセトニル−3−メチルイソオキサゾールの製造
【0028】


【0029】
窒素置換した2lのフラスコに無水THF1000mlおよび1.6Mn−ブチルリチウムn−ヘキサン溶液500mlを仕込み、ドライアイス−アセトン浴を用いて、内温−70℃で、3,5−ジメチルイソオキサゾール68.0gをゆっくりと滴下した。同温度で30分間攪拌した後、120.0gのジメチルアセトアミドのTHF300ml溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、さらに−60℃〜−65℃で1時間攪拌した。反応液を塩酸酸性の氷水1lにあけ、有機層を分液後、さらに水層を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を合わせて減圧濃縮した。得られた濃縮物を酢酸エチル500mlに溶解し、水、次いで飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、残留物を減圧蒸留により精製して、無色の液体として目的物68.5g得た。沸点85℃/1.0mmHg
参考例2
5−アセトニル−3−メチルイソオキサゾールの製造
【0030】


【0031】
5−ヒドロキシ−3−メチル−4−(3−メチルイソオキサゾール−5−イル)イソオキサゾール9.70gを酢酸18mlおよびメタノール30mlの中に加え、60℃まで加温して溶解させた。この中に、電解鉄粉3.20gを加え、60℃で1時間攪拌した。さらに反応液に3規定塩酸20mlを加え、60℃で20分攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して、赤褐色液体として表記化合物6.00gを得た。
参考例3
5−アセトニル−3−メチルイソオキサゾールの製造
【0032】


【0033】
50%ヒドロキシアミン水溶液208g及び28%アンモニア水91mlを、水350mlに加え、そこへ、アセト酢酸メチル348gを、15℃以下で50分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を室温に戻し、6日間放置して、粗成5−ヒドロキシ−3−メチル−4−(3−メチルイソオキサゾール−5−イル)イソオキサゾールのアンモニウム塩水溶液900mlを得た。
【0034】
次に、6規定塩酸600mlとトルエン300mlを混合して、80℃に加熱して、電解鉄粉39.0gを添加した後、前記で得た粗成5−ヒドロキシ−3−メチル−4−(3−メチルイソオキサゾール−5−イル)イソオキサゾールのアンモニウム塩水溶液のうち300mlを、80℃で30分かけて滴下した。さらに同温度で30分間攪拌したのち、反応液を室温まで冷却した。トルエン層を分取し、水層をさらに酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせて、飽和食塩水で水洗、次いで重曹水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、減圧蒸留することにより、淡黄色液体の表記化合物28.0gを得た。
沸点:98℃/2mmHg
参考例4
5−エトキシカルボニル−3,4−ジヒドロ−6−メチル−2H−ピラン−2−オンの製造
【0035】

【0036】
2−アセチルグルタル酸モノエチルエステル55.2gを塩化メチレン500mlに溶解し、塩化オキザリル52.06gとDMF5滴を0℃で加え、室温で2時間反応させた。得られた酸クロリド溶液に塩化メチレン500mlを加え、10℃以下でトリエチルアミン33.12gを滴下して、室温で1時間反応させた。反応液は、水、炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、得られた残渣を減圧蒸留法により精製して、無色の液体として目的物29.30g得た。沸点130−150℃/17mmHg
一般式()で表される本発明化合物の代表例を、上記実施例の化合物を含めて、第3表に示す。
【0037】

【0038】

【0039】

【0040】


【0041】


【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、農薬、医薬中間体として有用な新規ヘテロ環置換チオフェノール化合物製造中間体が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(4)



(式中、は、C1−4アルキル基を表し、 Rは、水素原子またはC1−4アルキル基を表し、 Rは、水素原子,シアノ基,アミド基,C1−4アルキルカルボニル基またはC1−4アルコキシカルボニル基を表し、は、水素原子,シアノ基,C1−4アルキルカルボニル基またはC1−4アルコキシカルボニル基を表し、Qは、次のQ1,Q2またはQ3




(ここで、r〜rは、それぞれ独立して、水素原子もしくはC1−4アルキル基を表すか,またはrとrは一緒になって結合を形成してもよい)のいずれかの基を表す。)で表される化合物。
【請求項2】
一般式(5)



(式中、R〜Rは、前記と同じ意味を表す。)で表されるエノールラクトンと、一般式 Q−CH(式中、Q,Rは、前記と同じ意味を表す。)で表される化合物を反応させることを特徴とする、一般式(4)



(式中、R〜RおよびQは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物の製造法。

【公開番号】特開2010−90124(P2010−90124A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244081(P2009−244081)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【分割の表示】特願2000−553413(P2000−553413)の分割
【原出願日】平成11年6月3日(1999.6.3)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】