説明

ベルトクリーニング装置、ベルト搬送装置及び画像記録装置

【課題】清掃液の供給源を個別に設ける必要なく、複数の清掃手段に対して効率的な清掃液の供給を可能とすることにより、清掃液の無駄をなくし、効率的な清掃を行うことができるベルトクリーニング装置、これを備えたベルト搬送装置及びこれを備えた画像記録装置の提供。
【解決手段】被搬送物を載置して搬送する無端ベルト23の表面に付着した異物を清掃液を用いて清掃するための複数の清掃手段と、清掃手段の各々に清掃液を供給する共通の清掃液供給手段とを備えたベルトクリーニング装置4であって、清掃液供給手段は、清掃手段の各々に対する清掃液の供給量を可変とする供給量可変手段を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトクリーニング装置、ベルト搬送装置及び画像記録装置に関し、詳しくは、無端ベルト表面に付着した異物を清掃液によって効率的に清掃することのできるベルトクリーニング装置、ベルト搬送装置及び画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙、布帛等の種々の記録媒体に対して高精細な画像を記録する装置として、インクジェット方式による画像記録装置が広く普及している。特に、記録媒体が長尺ウェブ状である場合には、無端ベルトを有するベルト搬送装置を使用し、記録媒体を無端ベルト上に密着させて搬送することが行われている。
【0003】
その際、記録媒体のミスフィードやいわゆる縁なし印刷、インクの裏抜け等のために、記録ヘッドから吐出されたインクが無端ベルトに付着する場合があり、無端ベルトに付着したインクが無端ベルト上に新たに供給されてきた記録媒体に転移して記録媒体を汚してしまう等のトラブルが生じる。
【0004】
また、記録媒体は、その種類によって紙粉や糸くず、前処理剤等の汚染物質を無端ベルト上に付着させる場合があり、これらが無端ベルト上のインクと混合して異物として付着してしまう場合がある。
【0005】
無端ベルトに付着した異物を放置した場合、これが新たに供給される記録媒体の裏面に付着して製品品質を低下させたり、無端ベルトと記録媒体との間の摩擦に影響を与えて記録媒体の搬送を不安定化させたりする問題が生じる。
【0006】
そのため、通常、このようなベルト搬送装置又は画像記録装置には、無端ベルトの表面に付着した異物をクリーニングするためのベルトクリーニング装置が設けられている。
【0007】
従来、無端ベルトの表面をクリーニングするベルトクリーニング装置を備えた画像記録装置として、図9に示すものが知られている(特許文献1)。
【0008】
図中、100はベルトクリーニング装置、200はベルト搬送装置、300は記録ヘッドである。ベルト搬送装置200は、3本のローラ201、202、203に架け渡された無端ベルト204を有し、上面に記録媒体Pを載置して図中A方向に向けて搬送するようになっている。
【0009】
ベルトクリーニング装置100は、無端ベルト204の移動方向上流側から順に、ブラシローラ101、ストレートブラシ102、吸液ローラ103をそれぞれ無端ベルト204の表面に当接するように設けている。ブラシローラ101の下方には清掃液を貯水した清掃桶104が配置されており、ブラシローラ101の一部が浸漬している。
【0010】
このベルトクリーニング装置100によれば、まず、ブラシローラ101が不図示の駆動源によって無端ベルト204の移動方向と逆方向に回転することにより、該無端ベルト204を摺擦しつつ、清掃液を掻き上げて無端ベルト204の表面に付着したインク等の汚染物質濃度を低下させる。次いで、ストレードブラシ102によってブラシローラ101によって付着した清掃液を掻き取り、その後、無端ベルト204の表面に残留する清掃液を吸液ローラ103で拭き取るように動作される。吸液ローラ103は、その下方に廃インク受け105が配置されており、吸液ローラ103に吸収されて滴下した水滴を収容するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−44108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、記録速度の高速化が進むにつれ、無端ベルトの搬送速度も高速化してきている。これに伴い、ベルトクリーニング装置による無端ベルトの清掃効率の向上が求められるようになってきた。
【0013】
本発明者は、特許文献1のようなベルトクリーニング装置による清掃効率について検討したところ、無端ベルトの搬送速度が高速化するにつれ、清掃速度が追いつかなくなり、無端ベルト表面をきれいに清掃しきれなくなる問題があることを見出した。
【0014】
その原因は、無端ベルトが高速化するにつれ、ブラシローラ、ストレートブラシ及び吸液ローラによって除去された汚染物質が清掃桶内に溜まり、清掃液中の汚染物質濃度が早期に高くなってしまうことにある。ブラシローラや吸液ローラは、清掃桶内の清掃液に浸漬されるため、汚染された清掃液を使用し続けることによって、無端ベルトの清掃効率が低下してしまう。
【0015】
このため、清掃桶にオーバーフロー管を設け、清掃液を所定量かけ流しすることにより、各清掃桶内の汚染物質濃度を低く抑えるようにすることを試みているが、清掃桶内の清掃液中の汚染物質濃度は各清掃桶で必ずしも均一ではないため、各清掃桶への清掃液の供給量を同じくすると、清掃液中の汚染物質濃度が低い清掃桶と汚染物質濃度が高い清掃桶とで、効率的な清掃液の置換が行えず、無駄に清掃液を供給してしまう清掃桶が発生する一方で、清掃液の供給不足となる清掃桶が発生してしまう問題があった。
【0016】
この問題を解決するためには、清掃桶毎に清掃液の供給源を独立させ、それぞれ個別に供給量を制御すればよいが、清掃液の供給ユニットが複数必要となって供給経路が複雑化するばかりでなく、コストアップとなる問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、清掃液の供給源を個別に設ける必要なく、複数の清掃手段に対して効率的な清掃液の供給を可能とすることにより、清掃液の無駄をなくし、効率的な清掃を行うことができるベルトクリーニング装置、これを備えたベルト搬送装置及びこれを備えた画像記録装置を提供することを課題とする。
【0018】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0020】
請求項1記載の発明は、被搬送物を載置して搬送する無端ベルトの表面に付着した異物を清掃液を用いて清掃するための複数の清掃手段と、
前記清掃手段の各々に清掃液を供給する共通の清掃液供給手段とを備えたベルトクリーニング装置であって、
前記清掃液供給手段は、前記清掃手段の各々に対する清掃液の供給量を可変とする供給量可変手段を備えることを特徴とするベルトクリーニング装置である。
【0021】
請求項2記載の発明は、前記供給量可変手段は、共通の供給源から前記清掃手段のそれぞれに清掃液を分岐して供給するための一つの流入部と前記清掃手段毎の複数の流出部とを備えた分岐部材と、
前記分岐部材全体を傾斜させて前記流入部に対する前記複数の流出部のそれぞれの高さ位置を変化させることにより、前記複数の流出部への清掃液の供給量を可変とするための角度調整部材とを有することを特徴とする請求項1記載のベルトクリーニング装置である。
【0022】
請求項3記載の発明は、前記供給量可変手段は、共通の供給源から前記清掃手段のそれぞれに清掃液を供給する供給路にそれぞれ設けられた流量調整弁であることを特徴とする請求項1記載のベルトクリーニング装置である。
【0023】
請求項4記載の発明は、前記複数の清掃手段は、清掃液を貯水する清掃桶をそれぞれ有し、
前記清掃液供給手段は、共通の供給源から前記清掃桶のそれぞれに清掃液を供給することを特徴とする請求項1、2又は3記載のベルトクリーニング装置である。
【0024】
請求項5記載の発明は、前記供給量可変手段は、前記複数の清掃手段のうちで前記無端ベルトを最初に清掃する前記清掃手段に対して清掃液の供給量を最も多くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のベルトクリーニング装置である。
【0025】
請求項6記載の発明は、前記清掃桶内の清掃液の汚染濃度をそれぞれ検出する濃度検出手段を有し、
前記清掃液供給手段は、前記濃度検出手段の検出結果に基づいて、汚染濃度が最も高い前記清掃桶に対して清掃液の供給量が最も多くなるように前記供給量可変手段によって清掃液の供給量を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のベルトクリーニング装置である。
【0026】
請求項7記載の発明は、被搬送物を載置して搬送する無端ベルトと、
請求項1〜6のいずれかに記載のベルトクリーニング装置とを備えることを特徴とするベルト搬送装置である。
【0027】
請求項8記載の発明は、前記被搬送物として記録媒体を載置して搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルト上に載置された前記記録媒体に向けてインクを吐出して記録を行う記録手段と、
請求項1〜6のいずれかに記載のベルトクリーニング装置とを備えることを特徴とする画像記録装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、清掃液の供給源を個別に設ける必要なく、複数の清掃手段に対して効率的な清掃液の供給を可能とすることにより、清掃液の無駄をなくし、効率的な清掃を行うことができるベルトクリーニング装置を提供することができる。
【0029】
また、本発明によれば、清掃液の供給源を個別に設ける必要なく、複数の清掃手段に対して効率的な清掃液の供給を可能とすることにより、清掃液の無駄をなくし、効率的な清掃を行うことができるベルト搬送装置を提供することができる。
【0030】
更に、本発明によれば、清掃液の供給源を個別に設ける必要なく、複数の清掃手段に対して効率的な清掃液の供給を可能とすることにより、清掃液の無駄をなくし、効率的な清掃を行うことができる画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る画像記録装置の一例を示す概略構成図
【図2】ベルトクリーニング装置における清掃液の供給のための構成を示す構成図
【図3】供給量可変部の一例を示す斜視図
【図4】供給量可変部の動作例を示す説明図
【図5】供給量可変部の他の一例を示す構成図
【図6】ベルトクリーニング装置の制御構成の一例を示すブロック図
【図7】制御部による清掃液の供給量の制御の一例を示すフローチャート
【図8】供給量可変部の更に他の一例を示す構成図
【図9】従来の画像記録装置を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0033】
図1は、本発明に係る画像記録装置の一例を示す概略構成図であり、図中、1は画像記録装置であり、この画像記録装置1は、ベルト搬送装置2、記録ヘッド3、ベルトクリーニング装置4を備えている。
【0034】
ベルト搬送装置2は、所定の間隔をおいて平行に配置された複数(図示の例では2つ)のローラ21、22に亘って所定幅の無端ベルト23が張架されている。これらローラ21、22間に架け渡された無端ベルト23の上面は、記録媒体Pを密着させて載置する載置面とされている。
【0035】
一方のローラ21は図示しない副走査モータに対して駆動力を伝達可能に接続された駆動ローラ、他方のローラ22は従動ローラであり、駆動ローラ21が副走査モータの回転駆動によって、図1において反時計回りに所定の速度で回転することにより、従動ローラ22との間に架け渡された無端ベルト23を回転移動させ、その上面に載置される記録媒体Pを副走査方向である図中のA方向に向けて搬送するようになっている。
【0036】
記録媒体Pには、例えば、紙、布帛、プラスチックフィルム、ガラス板等、インクジェット記録に通常使用される記録媒体を使用することができる。記録媒体Pは所定サイズに裁断されたシート状であってもよいし、ロール状に巻回された元巻から連続して繰り出される長尺状であってもよい。特に、布帛は、インクが裏抜けし易いため、無端ベルト23の表面にインクが付着するおそれが高く、後述するベルトクリーニング装置4を備えることによって特に顕著な効果が得られるために好ましい。
【0037】
記録ヘッド3は、無端ベルト23上の記録媒体Pが載置される面の上方に所定の間隔をおいて配設されており、その下面に設けられた多数のノズルからインク滴を吐出することにより、無端ベルト23の回転移動によって搬送される記録媒体P上に所望の画像を記録するインクジェットヘッドである。この記録ヘッド3は、図示しないキャリッジに搭載されて、間欠的に搬送される記録媒体Pの搬送方向と直交する主査方向に往復移動するシャトル型の記録ヘッドであってもよいし、無端ベルト23の幅方向に亘って固定状に架け渡され、連続的に搬送される記録媒体P上にインク滴を吐出することによって画像を記録するライン型の記録ヘッドであってもよい。
【0038】
ベルトクリーニング装置4は、ベルト搬送装置2に設けられており、本発明において駆動ローラ21の近傍に配置されている。このベルトクリーニング装置4は、無端ベルト23の移動方向に沿って順に複数の清掃手段が設けられている。ここでは清掃手段として、散水パイプ41、ブラシローラ42、掻き取りブレード43、吸液ローラ44を順に有している。
【0039】
散水パイプ41は、無端ベルト23の全幅に亘って架け渡されており、無端ベルト23の表面に対向する部位に、長さ方向に沿って多数のノズル(図示せず)が配列されている。この散水ポンプ41には、散水ポンプ41aの駆動によって散水チューブ41bを介して清掃液が供給され、供給された清掃液をノズルから無端ベルト23の表面に向けて噴射することにより、該無端ベルト23の表面に付着した異物を洗浄する。
【0040】
ブラシローラ42は、無端ベルト23の全幅に亘って架け渡された回転軸の周囲にブラシ毛が植毛されてローラ状に形成されている。ブラシ毛の先端は、散水パイプ41による散水位置よりも無端ベルト23の移動方向下流側において無端ベルト23の表面に常時接触状態にあり、不図示の駆動モータによって無端ベルト23の移動方向と逆方向に所定速度で回転することにより、該無端ベルト23の表面を摺擦し、上流側の散水パイプ41による清掃液の散水によって洗浄された異物を除去する。
【0041】
ブラシローラ42の下方には、清掃液を貯水する清掃桶45が配設されており、ブラシローラ42の下部は、この清掃液に一部浸漬しており、回転時に清掃液を掻き上げることにより、異物の除去効果を高めている。また、散水パイプ41への清掃液は、この清掃桶45内の清掃液が散水チューブ41bを介して供給され、無端ベルト23の表面に噴射されて滴下した清掃液が、再び清掃桶45内に収容されて再利用されるようになっている。
【0042】
掻き取りブレード43は、例えばゴム等の弾性材や、PETシート、ストレート状のブラシ等によって平板状に形成され、無端ベルト23の全幅に亘って架け渡されており、先端が無端ベルト23の表面に常時当接するように、ブラシローラ42よりも無端ベルト23の移動方向下流側において、清掃桶45の縁部に取り付けられている。この掻き取りブレード43は、無端ベルト23の回転移動によって、上流側の散水パイプ41及びブラシローラ42によって無端ベルト23の表面に付着した汚染物質を含む清掃液を掻き取ることによって除去する。除去された清掃液は、ブレード43の表面を流下して清掃桶45内に収容されるようになっている。
【0043】
吸液ローラ44は、無端ベルト23の全幅に亘って架け渡された回転軸の周囲に、スポンジ等の吸液性を有する多孔質体が巻回されてローラ状に形成されている。この吸液ローラ44の表面は、掻き取りブレード43よりも無端ベルト23の移動方向下流側において無端ベルト23の表面に常時接触状態にある。この吸液ローラ44は、不図示の駆動モータによって無端ベルト23の移動方向と同方向に所定速度で回転することにより、または、無端ベルト23の回転移動に従動して回転することにより、該無端ベルト23の表面に付着残留する汚染物質を含む清掃液を吸収して拭き取ることによって除去する。
【0044】
なお吸液ローラ44の線速は無端ベルト23の表面状態によって左右されるが、無端ベルト23の線速よりも早いことが望ましい。
【0045】
吸液ローラ44の下方には、ブラシローラ42の清掃桶45とは独立した清掃桶46が配設されている。吸液ローラ44の下部は、この清掃桶46内の清掃液に一部浸漬しており、浸漬することによって表面に吸収された汚染物質を洗浄し、無端ベルト23と接触する直前に設けられた絞りローラ44aによって絞られることにより、次の吸液に備えるようになっている。
【0046】
次に、このベルトクリーニング装置4における清掃液の供給のための構成の一例について図2を用いて更に説明する。
【0047】
図2において、400は清掃液貯留タンク、401は清掃液供給ユニット、402は清掃液供給管、403Aは清掃液供給管402から分岐され、ブラシローラ42が配設される清掃桶45に清掃液を供給するための分岐管、403Bは清掃液供給管402から分岐され、吸液ローラ44が配設される清掃桶46に清掃液を供給するための分岐管、404はこれら分岐管403A、403Bの分岐部分に設けられ、各分岐管403A、403Bへの清掃液の供給量を可変とする供給量可変部である。
【0048】
清掃液貯留タンク400は、内部に清掃液を貯留している。本発明において清掃液は特に限定されず、例えば工業用水、水道水、純水等が用いられる。
【0049】
この清掃液貯留タンク400は、ベルトクリーニング装置4において一つだけ設けられており、この清掃液貯留タンク400内の清掃液が、一つだけ設けられた共通の清掃液供給ユニット401によって、共通の清掃液供給管402を介して各分岐管403A、403Bから各清掃桶45、46に対してそれぞれ供給されるようになっている。ここでは分岐管403A、403Bは同一内径である。
【0050】
各分岐管403A、403Bの先端は清掃桶45、46の内部にそれぞれ臨んでおり、清掃桶45、46内に清掃液を吐出する。各清掃桶45、46内には、更にオーバーフロー管405、406が設けられており、分岐管403A、403Bから吐出されて貯留される清掃液が所定液面以上となった場合に、オーバーフロー管405、406によって各清掃桶45、46から排出されるようになっている。
【0051】
なお、清掃桶45内の符号41cは、散水チューブ41bの流出口に設けられたフィルタであり、このフィルタ41cによって、散水パイプ41に供給するための清掃液から糸くず等の不純物が除去される。
【0052】
かかるベルトクリーニング装置4において、清掃液供給ユニット401によって清掃液供給管402を介して清掃液貯留タンク400内の清掃液が各清掃桶45、46にかけ流し状態で供給され、余剰分がオーバーフロー管405、406から排出されるが、供給量可変部404を経由することにより、清掃液供給管402からの清掃液は、分岐管403Aと分岐管403Bとでそれぞれ供給量が可変される。
【0053】
この供給量可変部404の具体的構成の一例を図3、図4に示す。
【0054】
図3は供給量可変部404の斜視図、図4はその動作状態を説明する説明図である。
【0055】
この供給量可変部404は、Y字型に3方向に分岐した分岐パイプ5と、この分岐パイプ5を取り付けている取付け板6とを有している。
【0056】
分岐パイプ5は、清掃液供給管402と接続される一つの流入部51と、清掃桶45へ清掃液を供給する分岐管403Aと接続される流出部52Aと、清掃桶46へ清掃液を供給する分岐管403Bと接続される流出部52Bとを備え、流入部51から流入された清掃液を流出部52A、52Bにそれぞれ分岐して供給することができるようになっている。流出部52A、52Bは同一内径である。
【0057】
流入部51に対する各流出部52A、52Bの角度は特に限定されないが、流入部51に対して流出部52A、52Bが同一角度で分岐していることが好ましく、一例を挙げれば、流入部51と各流出部52A、52Bとがそれぞれ135°の角度で分岐され、流出部52A、52B間が90°で分岐された形態とすることができる。
【0058】
取付け板6は、分岐パイプ5の全体を固定可能な大きさの平板によって形成されており、流出部52Aと52Bの中間部位に、一つの回動軸61が設けられ、ベルトクリーニング装置4における不図示の側板に回動可能に取り付けられている。従って、取付け板6は、この回動軸61を中心にして時計方向及び反時計方向にそれぞれ所定角度で揺動可能とされている。なお、分岐パイプ5は、取付け板6を傾斜させていない状態では、流入部51が鉛直方向に延びた状態にあり、このとき、清掃液供給管402から流入部51を経て供給される清掃液は、各流出部52A、52Bにそれぞれ均等に流出する。
【0059】
取付け板6の表面における流入部51の一側方には、回動軸61を中心とする円弧状のガイド穴62が形成されている。このガイド穴62には傾き固定用ねじ63が挿入され、ベルトクリーニング装置4の側板に対して固定されるようになっている。取付け板6の表面における流入部51の他側方には、操作ノブ64が突設されており、この操作ノブ64を摘まんで取付け板6を回動軸61を中心として左右に所定角度回転させることによって傾斜させ、傾き固定用ねじ63を締め付けることによって、取付け板6に固定された分岐パイプ5の姿勢を決定することができるようになっている。
【0060】
このように構成された供給量可変部404によって各分岐管403A、403Bへの清掃液の供給量を可変するには、取付け板6を回動軸61を中心として傾斜させ、取付け板6に固定された分岐パイプ5を所定角度傾斜させることによって行うことができる。
【0061】
すなわち、図4に示すように、取付け板6を回動軸61を中心にして鉛直方向に対して所定角度θだけ傾斜させると、流入部51の高さ位置に対する各流出部52A、52Bの高さ位置が変化する。これにより、流入部51から流入する清掃液が流出部52Aと52Bを経てそれぞれ流出する方向が、鉛直方向に対してそれぞれ異なる角度となる。
【0062】
図4では、流入部51に対し、流出部52Aの方が流出部52Bよりも低い位置となっている。すなわち、流出部52Aの流出方向の方が流出部52Bの流出方向に比べて、鉛直方向に対して大きな角度で傾斜している。
【0063】
この状態で流入部51から清掃液が供給されると、分岐パイプ5内では、流出部52Aと52Bの2方向に分岐する部位において、高さ位置が高い流出部52Bよりも高さ位置が低い流出部52Aの方に流れ易くなり、流出部52Aの方に多くの清掃液が供給されるようになる。これは、清掃液が流出部52Aと52Bの2方向に分岐する部位において、高さ位置が高い流出部52B側に僅かながらヘッド(水頭)が掛かり、これが清掃液の流出に際して抵抗となるためであると考えられる。
【0064】
この構成によれば、各清掃桶45、46で共通の清掃液貯留タンク400、清掃液供給ユニット401を使用しても、取付け板6の傾斜角度を調整して分岐パイプ5を傾斜させるだけの簡単な操作で、各清掃桶45、46への清掃液の供給量を可変することができる。従って、共通の清掃液貯留タンク400と清掃液供給ポンプ401を使用しながら、清掃液の汚染物質濃度が高いいずれかの清掃桶45又は46に対して清掃液の供給量を相対的に多く供給できるようになり、効率的な清掃液の供給が可能となる。このため、清掃液の無駄をなくし、効率的な清掃を行うことができる。この供給量の可変のために、清掃液貯留タンクや清掃液供給ユニットを複数用意する必要がなく、低コストに構成することができる。
【0065】
このように清掃液の供給量を可変する場合は、複数の清掃手段のうち、無端ベルト23を最初に清掃する清掃手段に使用される清掃液が貯水される清掃桶45に対して清掃液の供給量が最も多くなるように変更することが好ましい。ここでは、散水パイプ41に供給される清掃液と無端ベルト23に最初に当接して清掃するブラシローラ42が浸漬する清掃液が共通に貯水される清掃桶45がそれに相当する。この清掃桶45内の清掃液は、散水パイプ41から噴射されて滴下した汚染物質を含む清掃液と、ブラシローラ42及び掻き取りブレード43によって掻き取られた汚染物質を含む清掃液とが共に収容されることにより、汚染物質濃度が最も高くなるため、無端ベルト23の移動方向下流側に当接する他の清掃手段よりも清掃桶45内の清掃液の汚染物質濃度が高くなるためである。
【0066】
図5は、供給量可変部404の具体的構成の他の一例を示す概略図である。
【0067】
ここでは、各分岐管403A、403Bにそれぞれ流量調整弁7A、7Bを設けており、分岐管403Aと403Bとで独立して清掃液の供給量を可変することができるようになっている。
【0068】
従って、流量調整弁7A、7Bを独立に調整して、清掃桶45、46内の清掃液の汚染物質濃度が高い清掃桶45又は46内に最も多くの清掃液を供給することにより、清掃液の汚れ度合いに応じた効率的な清掃液の供給が可能となり、それだけ清掃液の無駄をなくすことができると共に、無端ベルト23の清掃効率を高めることができる。
【0069】
図6は、清掃液の供給量を可変とする場合に特に好ましいベルトクリーニング装置4の制御構成を示すブロック図である。
【0070】
図中、8A、8Bは清掃桶45、46内の清掃液の汚染物質濃度を検知するための濃度検知センサ、9は制御部である。
【0071】
濃度検知センサ8A、8Bは、図2に示すように、各清掃桶45、46内に設けられており、その検知信号を制御部9に送信するように構成されている。濃度検知センサ8A、8Bとしては、清掃液中の汚染物質濃度を検知できるものであれば特に問わず、例えば近赤外線の光量変化を検知することによって清掃液中の汚染物質濃度を検知するセンサ等を用いることができる。
【0072】
図7は、供給量可変部404として流量調整弁7A、7Bを設け、各清掃桶45、46に濃度検知センサ8A、8Bを設けた場合の制御部9による制御の一例を示すフローチャートである。
【0073】
画像記録装置1が稼動開始状態とされてベルトクリーニング装置4が作動を開始すると、まず、流量調整弁7A、7Bはそれぞれの開度が初期状態に設定される(S1)。ここでは流量調整弁7A、7Bは共に同一開度となるように初期設定されている。
【0074】
次いで、清掃液供給ユニット401の作動を開始させ、清掃液貯留タンク400内の清掃液を各清掃桶45、46にかけ流し状態で供給開始し(S2)、更に、濃度検知センサ8Aから送られる検知信号D1と濃度検知センサ8Bから送られる検知信号D2の監視を開始する(S3)。
【0075】
清掃液の供給が行われる間、制御部9は、これら検知信号D1、D2を所定時間間隔毎に監視し、各検知信号D1、D2に差が生じたか否か(D1=D2?)、すなわち、清掃桶45、46内の各清掃液に濃度差が生じたか否かを判断する(S4)。
【0076】
その結果、濃度差が生じていない場合(ステップS4において「Yes」の場合)、流量調整弁7A、7Bの開度を初期設定のまま変更せず、更に濃度検知センサ8A、8Bからの検知信号を監視し続ける。
【0077】
一方、濃度差が生じたと判断された場合(ステップS4において「No」の場合)、制御部9は、濃度検知センサ8A、8Bの各検知信号D1、D2の比較から、清掃桶45と46のいずれの清掃液の濃度が高いか(D1>D2?)を判断する(S4)。
【0078】
ここで、清掃桶45内の清掃液の方が濃度が高い(D1>D2)と判断された場合(ステップS5において「Yes」の場合)、制御部9は清掃桶45側への清掃液の供給量を調整する流量調整弁7Aの開度を、予め設定された所定開度だけ相対的に大きくし、清掃桶46よりも清掃桶45に清掃液が相対的に多く供給されるようにする(S6)。
【0079】
また、清掃桶46内の清掃液の方が濃度が高い(D1<D2)と判断された場合(ステップS5において「No」の場合)、制御部9は清掃桶46側への清掃液の供給量を調整する流量調整弁7Bの開度を、予め設定された所定開度だけ相対的に大きくし、清掃桶45よりも清掃桶46に清掃液が相対的に多く供給されるようにする(S7)。
【0080】
以上の制御部9の制御は、ベルトクリーニング装置4が作動している間、すなわち画像記録装置1が稼働している間継続され、その間、清掃桶45、46内の清掃液の濃度差が等しくなるように、各清掃桶45、46への清掃液の供給量を可変制御する。
【0081】
このように制御部9は、濃度検知センサ8A、8Bから送信される検知信号により、清掃桶45又は46内の清掃液中の汚染物質濃度が最も高い清掃液を貯水する清掃桶45又は46側に清掃液が最も多く供給されるように、流量調整弁7A、7Bの開度をそれぞれ調整するように制御を行う。
【0082】
従って、各清掃桶45、46内の清掃液の汚染具合に応じて、効率的な清掃液の自動供給が可能となり、より確実に清掃液の無駄をなくすことができると共に、無端ベルト23の清掃効率をより高めることができる。
【0083】
このように濃度検知センサ8A、8Bによって検知された濃度情報に基づいて制御部9によって清掃液の供給量の可変制御を行う態様は、図3、図4に示した分岐パイプ5及び取付け板6を用いた供給量可変部404に適用することもできる。
【0084】
すなわち、図8に示すように、回動軸61を中心とした取付け板6の回動を、回動軸61に接続したモータ65の回転駆動によって行う構成とし、このモータ65の正逆回転駆動を、濃度検知センサ8A、8Bによって検知された濃度情報に基づいて制御部9が制御する構成とすればよい。
【0085】
すなわち、図7のフローチャートの場合では、ステップS6において、モータ65を一方向に回転駆動させて取付け板6を図中反時計方向に所定角度傾動させ、流出部52Bの高さ位置の方を流出部52Aよりも高くすることで、分岐管403Aを介して清掃桶45側に相対的に多くの清掃液が供給されるようにし、また、ステップS7において、モータ65を逆方向に回転駆動させて取付け板6を図中時計方向に所定角度傾動させ、流出部52Aの高さ位置の方を流出部52Bよりも高くすることで、分岐管403Bを介して清掃桶46側に相対的に多くの清掃液が供給されるようにする。これによっても清掃液の供給量の可変制御を自動化でき、上記同様の効果を得ることができる。
【0086】
以上の説明では、清掃液は清掃桶45、46に対して常時かけ流すようにしているが、清掃液の供給は、例えば予め決められた時間間隔で清掃液供給ユニット401を駆動することで間欠的に行うようにしてもよい。その場合も、清掃液供給時には、オペレータの操作によって、もしくは濃度検知センサ8A、8Bの検知信号に基づく制御部9の制御によって、分岐パイプ5の傾斜角度又は流量調整弁7A、7Bの開度を適宜調整することにより、清掃液の汚れ具合に応じて清掃液の供給量を各清掃桶45、46で異ならせるようにすればよい。
【0087】
また、無端ベルト23の表面の清掃を清掃液を用いて行う清掃手段は、以上説明した散水パイプ41、ブラシローラ42、掻き取りブレード43及び吸液ローラ44の順に配設されるものに限らず、また、その種類も複数であればよく、以上の4種に限らない。特に、本発明は、以上説明したように、清掃液を複数の清掃桶に貯水し、それら清掃桶内の清掃液を再利用しながら無端ベルト表面の清掃を行う場合に顕著な効果を発揮する。
【符号の説明】
【0088】
1:画像記録装置
2:ベルト搬送装置
21:駆動ローラ
22:従動ローラ
23:無端ベルト
3:記録ヘッド
4:ベルトクリーニング装置
41:散水パイプ
41a:散水ポンプ
41b:散水チューブ
41c:フィルタ
42:ブラシローラ
43:掻き取りブレード
44:吸液ローラ
44a:絞りローラ
45、46:清掃桶
400:清掃液貯留タンク
401:清掃液供給ユニット
402:清掃液供給管
403A、403B:分岐管
404:供給量可変部
5:分岐パイプ
51:流入部
52A、52B:流出部
6:取付け板
61:回動軸
62:ガイド穴
63:傾き固定用ねじ
64:操作ノブ
65:モータ
7A、7B:流量調整弁
8A、8B:濃度検知センサ
9:制御部
P:記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を載置して搬送する無端ベルトの表面に付着した異物を清掃液を用いて清掃するための複数の清掃手段と、
前記清掃手段の各々に清掃液を供給する共通の清掃液供給手段とを備えたベルトクリーニング装置であって、
前記清掃液供給手段は、前記清掃手段の各々に対する清掃液の供給量を可変とする供給量可変手段を備えることを特徴とするベルトクリーニング装置。
【請求項2】
前記供給量可変手段は、共通の供給源から前記清掃手段のそれぞれに清掃液を分岐して供給するための一つの流入部と前記清掃手段毎の複数の流出部とを備えた分岐部材と、
前記分岐部材全体を傾斜させて前記流入部に対する前記複数の流出部のそれぞれの高さ位置を変化させることにより、前記複数の流出部への清掃液の供給量を可変とするための角度調整部材とを有することを特徴とする請求項1記載のベルトクリーニング装置。
【請求項3】
前記供給量可変手段は、共通の供給源から前記清掃手段のそれぞれに清掃液を供給する供給路にそれぞれ設けられた流量調整弁であることを特徴とする請求項1記載のベルトクリーニング装置。
【請求項4】
前記複数の清掃手段は、清掃液を貯水する清掃桶をそれぞれ有し、
前記清掃液供給手段は、共通の供給源から前記清掃桶のそれぞれに清掃液を供給することを特徴とする請求項1、2又は3記載のベルトクリーニング装置。
【請求項5】
前記供給量可変手段は、前記複数の清掃手段のうちで前記無端ベルトを最初に清掃する前記清掃手段に対して清掃液の供給量を最も多くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のベルトクリーニング装置。
【請求項6】
前記清掃桶内の清掃液の汚染濃度をそれぞれ検出する濃度検出手段を有し、
前記清掃液供給手段は、前記濃度検出手段の検出結果に基づいて、汚染濃度が最も高い前記清掃桶に対して清掃液の供給量が最も多くなるように前記供給量可変手段によって清掃液の供給量を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のベルトクリーニング装置。
【請求項7】
被搬送物を載置して搬送する無端ベルトと、
請求項1〜6のいずれかに記載のベルトクリーニング装置とを備えることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項8】
前記被搬送物として記録媒体を載置して搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルト上に載置された前記記録媒体に向けてインクを吐出して記録を行う記録手段と、
請求項1〜6のいずれかに記載のベルトクリーニング装置とを備えることを特徴とする画像記録装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−116617(P2012−116617A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267865(P2010−267865)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】