説明

ベルトコンベア

【課題】部品点数の少ない簡易な構成であって、不慮の跳ね上げによる事故発生のおそれがなく、コンベアベルトの脱着作業を何人も容易且つ迅速に行なうことができるベルトコンベアを提供することを課題とする。
【解決手段】コンベアフレーム1を支持する架台が一側面側を開放した片支持タイプであって、その一端又は両端に伸縮ユニットを有するベルトコンベアであり、前記伸縮ユニットは、コンベアフレーム1の側板2の外側に配置される可動板3と、一方又は双方の可動板3の外側に取り付けられるハンドル4とを含み、前記側板2と前記可動板3にはハンドル軸10を軸支するための孔が形成され、前記側板2には、先端が前記可動板3を通して前記ハンドル4に固定された円弧軌道軸8の動作を支持する円弧状孔5が形成され、更に前記側板2には、先端が前記可動板3に固定される軸9の動作を支持する横長孔6が形成される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベア、より詳細には、特に食品を搬送するベルトコンベアであって、洗浄、殺菌のためにベルトを取り外すことが容易なベルトコンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の製造加工工場等においては、食品の搬送にベルトコンベアが使用されるが、衛生管理上、少なくとも食品に接するベルト部分を、時々フレームから取り外して洗浄する必要がある。
【0003】
ベルトコンベアには、一端にドライブプーリを有するヘッドドライブタイプと、中間部にドライブプーリを有するセンタードライブタイプとがあり、ヘッドドライブタイプにあっては、コンベアベルトは何らかの方法でその緊張状態を緩めることにより、側面から比較的容易に脱着することができる。
【0004】
しかし、図8に示すようなセンタードライブタイプのベルトコンベアにあっては、ベルト51を支持するコンベアフレーム52に、ドライブプーリ54とベルト51を緊張させるテークアッププーリ55とを支持する駆動部支持プレート53が、溶接又はビス等により固定されるため、ベルト51を緩めるだけでは、側面からベルト51を外すことができない。
【0005】
このベルト51の取り外し作業を可能にするための手段として、図9に示すように、コンベアフレーム52を支持する架台56を、一側面側が開放されたコ字状の所謂片支持タイプとし、コンベアフレーム52の端部に、上方に回動可能にした補助フレーム57を設け、その跳ね上げによりベルトを緩め、脱着に障害となるテンションローラー等を外してベルトを取り外すという方法が提唱されている(実用新案登録第2582153号公報及び同第2567641号公報等)。
【0006】
この補助フレーム57の跳ね上げを可能にするために、図10に示すように、両側板58に水平方向のU字状切欠59と、垂直方向のU字状切欠60とが形成され、切欠59には、コンベアフレーム52に突設した補助フレーム57の回動軸となる突子61が係合され、切欠60には、コンベアフレーム52にネジ付けた固定ネジ62が係合され、この固定ネジ62の締緩により、補助フレーム57を水平に固定したり、跳ね上げ可能にしたりする。
【0007】
しかるに、食品業界等で使用される場合は使用後にベルトを水洗いすることが多いが、ベルトが布ベルトや樹脂ベルト等であるため、その特性から水洗い・乾燥を繰り返すことにより、縮み現象が起こりやすく、この縮み現象が起こった場合、並びに、搬送物が重かったり、ベルトの進行速度が速い場合にはベルト張力が増す。この増加したベルト張力は、逃げを求めて、補助フレーム57を跳ね上げるように作用する。補助フレーム57は、上記のように係止されているに過ぎないので、この増加したベルト張力によって不慮に跳ね上がる事故が起きやすい。
【0008】
この不慮の跳ね上がり事故により、運行中にコンベアが故障したり、運行中のベルトが破損したりする。このコンベアの使用例を見ると、何台ものコンベアを組み合わせて無人の場所に配置していることが多いが、その場合、跳ね上げ事故により1台のコンベアが停止すると、その損害は多大なものとなる。
【0009】
また、事故はそれだけでなく、コンベアを移動する際にも起こる。即ち、コンベアは細く長いものが多いため、両端を複数の人が持ち上げる等の作業を行うが、その際、固定ネジ62を締め付けるだけでは支え切れずに、補助フレーム57が不意に跳ね上がり、落下等により重大な事故を引起こしている例もある。
【0010】
それだけではなく、固定ネジ62はコンベアの幅方向両側に付いていて、操作に当って、コンベアの両側の固定ネジ62を緩めなくてはならないため、コンベア幅が広い場合には操作性の点で問題が生ずる。
【0011】
また、基本的にはネジ固定なので、跳ね上がり事故を防止するために、固定ネジ62は強固に締め付けることになる。しばしば経験するところであるが、強固に締め付けられたネジは、誰もが簡単に緩めることができる訳ではない。殊に、固定ネジ62が補助フレーム57を戻す際の度重なる衝撃を受けることによって、ネジ山が潰れたりし、緩めることが不可能になることもある。ベルトを取り外すことの多い食品業界では水洗いする関係上、ステンレス製のネジを使用することが多いが、一般に鉄製のネジよりステンレス製のネジのほうがネジ山が潰れやすい。
【0012】
このように、跳ね上げタイプのベルトコンベアには多くの問題があったことに鑑み、本願出願人は、そのような問題のないベルトコンベアとして、図11に示すような、コンベアフレーム41の一端又は両端に、コンベアフレーム41を挟んで対置されてテールローラー45が渡される一対の側板43、43を連結して構成されるスライドフレーム42を、水平方向に進退可能に設置したことを特徴とするベルトコンベアを提唱している(特開2004−238145号公報)。
【0013】
それは、側板43、43が水平方向に長いストレート又は湾曲する横長孔46を有し、横長孔46にコンベアフレーム41に突設されたフォロアシャフト47が係合することにより、スライドフレーム42が横長孔46の長さ分移動可能にするもので、スライドフレーム42の移動は、側板43、43にリンクプレート48を介して連結されたハンドル50の回動動作によって行われる。
【0014】
【特許文献1】実用新案登録第2582153号公報
【特許文献2】実用新案登録第2567641号公報
【特許文献3】特開2004−238145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記特開2004−238145号公報に記載の発明の場合は、スライドフレームにこれを跳ね上げるための要素がないので、不慮の跳ね上げによる事故発生のおそれがなくなるという効果が認められるものの、リンク機構を利用するため、部品点数が多くなって構造が複雑化する欠点がある。
【0016】
そこで本発明は、部品点数の少ない簡易な構成であって、不慮の跳ね上げによる事故発生のおそれがなく、コンベアベルトの脱着作業を何人も容易且つ迅速に行なうことができるベルトコンベアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、コンベアフレームを支持する架台が一側面側を開放し又は開放可能にした片支持タイプであって、その一端又は両端に伸縮ユニットを有するベルトコンベアであり、前記伸縮ユニットは、コンベアフレームの側板の外側に配置される可動板と、一方又は双方の可動板の外側に取り付けられるハンドルとを含み、前記側板と前記可動板にはハンドル軸を軸支するための孔が形成され、前記側板には、先端が前記可動板を通して前記ハンドルに固定された円弧軌道軸の動作を支持する円弧状孔が形成され、更に前記側板には、先端が前記可動板に固定される軸の動作を支持する横長孔が形成されることを特徴とするベルトコンベアを提唱する。
【0018】
前記横長孔はストレートなものであってもよいし、湾曲するものであってもよく、更に複数設けることもある。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述した通りであって、本発明に係るベルトコンベアは、簡易な構成にして、コンベアベルトの脱着作業を何人も容易且つ迅速に行なうことができ、また、伸縮ユニットにはこれを跳ね上げるための要素がないので、不慮の跳ね上げによる事故発生のおそれがない効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態につき、添付図面に依拠して説明する。本発明に係るベルトコンベアは、コンベアフレームを支持する架台が、一側面側を開放した、又は、掛け金等の手段を介して開放可能な構造にした所謂片支持タイプのベルトコンベアである。図1及び図2は、そのコンベアフレームの端部の一構成例を示すものであり、図3乃至図6はその動作例を示すものである。
【0021】
図中1は、ベルトを挟んで対置される2枚の側板2で構成されるコンベアフレームで、その一端又は両端に伸縮ユニットが設置される。例えば伸縮ユニットは、コンベアフレーム1の側板2、2の外側に配置される可動板3、3と、一方又は双方の可動板3、3の外側に取り付けられるハンドル4を含む。
【0022】
側板2は端部に円弧状孔5を有し、更にそれよりも外端(図において右側、以下同じ)側に横長孔6を有する。横長孔6は通常ストレートであるが、若干湾曲させる場合もある。円弧状孔5の円弧の中心部付近には、軸孔7が形成される。円弧状孔5には、円弧軌道軸8の端部が、円弧状孔5に沿って円弧状に摺動可能に挿通され、横長孔6には、可動板3、3を連結する直線軌道軸9の端部が、横長孔6に沿って直線状又は湾曲状に摺動可能に挿通される。また、軸孔7には、ハンドル軸10の端部が回転可能に挿通される。
【0023】
可動板3、3はその内方端部に、円弧軌道軸8の端部を回転可能に挿通する軸孔11を有し、また、軸孔11よりも外方端側に、直線軌道軸9の端部を固定するための直線軌道軸固定孔12を有する。軸孔11と直線軌道軸固定孔12との間隔は、円弧状孔5の外方端側上端部と横長孔6の外方端部との間隔に一致させる。
【0024】
可動板3、3の更に外端側に、可動板3、3を連結する連結軸13の軸端に取り付けた調整ボルト支持板14を差込む差込み孔15が形成される。調整ボルト支持板14には、テールローラー17の軸端部18に設置されたブロック19に当接することによってベルトの張り具合を調整する、調整ボルト26が取り付けられる。可動板3、3は更に、外方端側端面から水平方向に切り込まれた係止溝16を有し、そこに、テールローラー17の軸端部18が、摺動可能に差し込まれる。
【0025】
ハンドル4は基板20と握持部21とから成るクランク形状で、その基板20に、二面取りしたハンドル軸10の係止部22を嵌合するための、係止部22に対応する形状の嵌合孔23を有すると共に、円弧軌道軸8の端部を固定するための円弧軌道軸固定孔24を有する。
【0026】
上述したようにハンドル4は、コンベアフレーム1の両側に配設する場合と片側にのみ配設する場合があるが、片側にのみ配設する場合において、ハンドル4を配設しない側には、嵌合孔23と円弧軌道軸固定孔24とを設けた基板20と同じ構成の受け板25を配する(図6参照)。
【0027】
図1において、27は軸孔7と嵌合孔23との間に配置してハンドル軸10を挿通するカラー(スペーサ)、28は円弧状孔5と軸孔11との間に配置して円弧軌道軸8を挿通するカラー(スペーサ)である。
【0028】
上記構成のベルトコンベアにおいて、コンベアフレーム1(テールローラー17、17間)に緊張状態にして架装されているベルトを取り外すに当っては、図3に示す緊張状態から、ハンドル4をハンドル軸10を軸に矢印方向に旋回させると、基板20の動きに伴って円弧軌道軸8が円弧状孔5に沿って円弧軌道を描いて移動する。この円弧軌道軸8の動きに伴ない、軸孔11部分においてこれに連結されている可動板3、3が引張られる。
【0029】
可動板3、3は、側板2の横長孔6に挿通されている直線軌道軸9に直線軌道軸固定孔12の部分で連結されているため、軸孔11の部分は円弧状孔5に沿った円弧軌跡を描いて変位し、直線軌道軸固定孔12の部分は、横長孔6がストレートの場合はそれに沿った直線状軌跡を描いて変位する。その結果、上記変位動作中側板3、3は、傾斜状態になる(図4参照)。また、横長孔6が湾曲している場合は、その傾斜状態がなくなるか減少することになる。
【0030】
ハンドル4を180度旋回させたところで円弧軌道軸8が円弧状孔5の内方側端部に達し、側板3、3は水平状態に戻る(図5参照)。但し、この状態において側板3、3は、円弧状孔5の一端から他端までの水平距離分内方に引込むことになり、かくしてテールローラー17、17間の距離が縮まってベルトの緊張が緩み、その取り外しが可能となる。
【0031】
洗浄したベルトを再び配架するには、上記取り外し時の状態のコンベアフレーム1及び伸縮ユニット(テールローラー17)にベルトを掛け回した後、ハンドル4を逆方向に旋回させると、上記と逆の動作で側板3、3が前進し、テールローラー17、17を介してベルトが緊張する。その状態で更に、調整ネジ26を操作してベルトの緊張度を調整する。
【0032】
なお、円弧軌道軸8の位置を変える仕様も可能である。即ち、図3に示すベルト緊張時において、円弧状孔5の外端部5a(図1参照)側にあるハンドル4を、逆に円弧状孔5の内端部5b(図1参照)側に配置することもできる。但し、この場合のハンドル4は、下方旋回ではなく、上方旋回となる。
【0033】
また、円弧状孔5の向きを変える仕様も可能である。即ち、図1乃至図6における円弧状孔5は下方に湾曲しているが、これを逆にして上方に湾曲するものとすることもできる(図7参照)。この場合において、ハンドル4を円弧状孔5の内端部5b側に配置するとき(図7の状態)は、ハンドル4は下方旋回となり、外端部5a側に配置するときは上方旋回となる。なお、ハンドル軸10との接触を避けるために、可動板3に下方から切欠部29を設ける。
【0034】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るベルトコンベアのコンベアフレーム端部の一構成例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係るベルトコンベアのコンベアフレーム端部の一構成例(ベルト緊張時)を示す平面図である。
【図3】本発明に係るベルトコンベアのコンベアフレーム端部の一構成例(ベルト緊張時)を示す側面図である。
【図4】本発明に係るベルトコンベアのコンベアフレーム端部の一構成例(ベルト弛緩開始時)を示す側面図である。
【図5】本発明に係るベルトコンベアのコンベアフレーム端部の一構成例(ベルト弛緩時)を示す側面図である。
【図6】本発明に係るベルトコンベアのコンベアフレーム端部の一構成例(ベルト緊張時)の図2と反対側を示す側面図である。
【図7】本発明に係るベルトコンベアのコンベアフレーム端部の他の構成例を示す側面図である。
【図8】従来のベルトコンベア(センタードライブタイプ)の構成図である。
【図9】従来のベルトコンベア(片支持タイプ)の構成図である。
【図10】従来のベルトコンベアの補助フレームの構成図である。
【図11】従来のベルトコンベアの改良されたコンベアフレーム端部の構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 コンベアフレーム
2 側板
3 可動板
4 ハンドル
5 円弧状孔
5a 外端部
5b 内端部
6 横長孔
7 軸孔
8 円弧軌道軸
9 直線軌道軸
10 ハンドル軸
11 軸孔
12 直線軌道軸固定孔
13 連結軸
14 調整ボルト支持板
15 差込み孔
16 係止溝
17 テールローラー
18 軸端部
19 ブロック
20 基板
21 握持部
22 係止部
23 嵌合孔
24 円弧軌道軸固定孔
25 受け板
26 調整ネジ
27 カラー
28 カラー
29 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアフレームを支持する架台が一側面側を開放し又は開放可能にした片支持タイプであって、その一端又は両端に伸縮ユニットを有するベルトコンベアであり、前記伸縮ユニットは、コンベアフレームの側板の外側に配置される可動板と、一方又は双方の可動板の外側に取り付けられるハンドルとを含み、前記側板と前記可動板にはハンドル軸を軸支するための孔が形成され、前記側板には、先端が前記可動板を通して前記ハンドルに固定された円弧軌道軸の動作を支持する円弧状孔が形成され、更に前記側板には、先端が前記可動板に固定される軸の動作を支持する横長孔が形成されることを特徴とするベルトコンベア。
【請求項2】
前記横長孔はストレートなものである請求項1に記載のベルトコンベア。
【請求項3】
前記横長孔は湾曲したものである請求項1に記載のベルトコンベア。
【請求項4】
前記横長孔は複数形成される請求項1に記載のベルトコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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