説明

ベルト式スペーサー

【課題】 配管と配管を保温するために配管を被覆する保温材との間に空隙(空間)を形成し、保温材を配管と非接触状態で支持する支持構造を極めて簡易且つ確実に実現できるベルト式スペーサーを提供することにある。
【解決手段】 ベルト式スペーサー10は、スペーサー本体20と突起部30と固定部40を備えて配管80に取り付けられる。スペーサー本体20は、配管の円周方向に沿って巻き付ける帯状体である。また、突起部30は、スペーサー本体20の長辺両端21,22より折曲して配管側へ延びる折曲片31,31,…からなるものである。さらに、固定部40は、スペーサー本体20の短辺一端24に挿入孔41を、スペーサー本体20の短辺他端23にその挿入孔41へ挿入する挿入片42をそれぞれ形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、配管と配管を保温するために配管を被覆する保温材との間に空隙(空間)を形成し、保温材を配管と非接触状態で支持する配管保温技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配管を被覆する保温材は、配管の外周面に直接取り付けられていた。このため、保温材(保温材内側・内部・外側)に溜まる水分が、配管を腐食させる原因となっており、これを防止するために配管と保温材の間に空隙(空間)を設けることが好ましい。空隙(空間)を設けることで、配管表面(外周面)に付着した水分を乾燥させることができるからである。
【0003】
上記方法は、オランダの石油化学関連規格(Cini:CommissieIsolatie Nederlandse Industrie)にも記載されている。例えば、非特許文献1には、スペーサーをネジ止めした帯鋼(鉄製)を配管に巻き、その後線径3mm、目開き50mmの金網をセットし、最後に再度帯鋼で金網を固定する方法が開示されている。図8に、その概要を示す。しかしながら、非特許文献1に開示された技術は、工程が複雑で作業効率が悪かった。保温材を施工する配管は長尺なものも多く、作業効率が悪いと多大な時間とコストが掛かることになる。
【0004】
そこで、本願出願人(ニチアス株式会社)は、配管と保温材の間を非接触状態で支持し、簡単な施工にて空隙を形成することのできるスペーサー(支持部材)を発明した。詳しくは、特許文献1に開示されているように、配管90の外周面に対して放射状に立設させる複数の接触棒11と、その接触棒11を固定するとともに接触棒11の反配管90側において配管90の外周面から離れた周囲を周回して前記の断熱材40における配管90側の面を支持する帯板19と、前記接触棒11における反配管90側の端部において前記帯板19を固定する帯板固定部15とを備え、接触棒11は、非金属製(たとえばセラミック製)とし、パイプ形状に形成するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cini4.1.34 (2006年10月1日)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−31948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに対して、本願発明は、上記する本願出願人による特許文献1に記載の発明を更に発展させて、配管と保温材とを非接触状態で支持するための支持構造を極めて簡易且つ確実に実現できるベルト式スペーサーの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明の第1の発明は、配管と保温材との間に空隙を形成するためのスペーサーであって、配管の円周方向に沿って巻き付けるベルト状(帯状)のスペーサー本体と、スペーサー本体から配管側へ突起する突起部とを備えたことを特徴とするベルト式スペーサーである。
第2の発明は、突起部が、スペーサー本体の長辺両端より折曲して延びる折曲片からなることを特徴とする同ベルト式スペーサーである。
第3の発明は、突起部が、スペーサー本体の長手方向に亘って形成されたディンプルからなることを特徴とする同ベルト式スペーサーである。
第4の発明は、配管の円周方向に沿って巻き付けたスペーサー本体を固定する固定部を備えたことを特徴とする同ベルト式スペーサーである。
第5の発明は、固定部が、挿入片をスペーサー本体の短辺一端に、その挿入孔へ挿入する挿入片をスペーサー本体の短辺他端にそれぞれ形成したことを特徴とする同ベルト式スペーサーである。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)ベルト式スペーサーが配管の円周方向に沿って巻き付けるベルト状(帯状)のスペーサー本体と、スペーサー本体から配管側へ突起する突起部とを備えることで、突起部の分だけベルト状のスペーサー本体が配管から突出することになり、その上に載置する保温材と配管との間に空隙(空間)を形成できる。また、スペーサー本体を配管の円周方向へ巻き付けるだけで簡易且つ確実に同空隙(空間)を形成できる。
(2)突起部が、スペーサー本体の長辺両端より折曲して延びる折曲片からなることで、スペーサー本体を配管の円周方向に沿って安定した状態で巻き付けることができる。
(3)突起部が、スペーサー本体の長手方向に亘って形成されたディンプルからなることで、スペーサー本体を配管の円周方向に沿って安定した状態で巻き付けることができる。
(4)ベルト式スペーサーが配管の円周方向に沿って巻き付けたスペーサー本体を固定する固定部を備えることで、ベルト式スペーサーを確実に配管へ取り付けることができる。
(5)固定部が、挿入片をスペーサー本体の短辺一端に、その挿入孔へ挿入する挿入片をスペーサー本体の短辺他端にそれぞれ形成したことで、簡易且つ確実にベルト式スペーサーを確実に配管へ取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明の第1実施形態を示す説明図(1)。
【図2】本願発明の第1実施形態を示す説明図(2)。
【図3】本願発明の第1実施形態を示す説明図(3)。
【図4】本願発明の第1実施形態を示す説明図(4)。
【図5】本願発明の第2実施形態を示す説明図(1)。
【図6】本願発明の第2実施形態を示す説明図(2)。
【図7】本願発明の第2実施形態を示す説明図(3)。
【図8】従来技術を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図4は、本願発明に係る第1の実施形態(第1実施形態)を図示したものであり、図5から図7は、本願発明に係る第2の実施形態(第2実施形態)を図示したものである。
【0012】
まず、第1実施形態について説明する。図1に示すように、第1実施形態に係るベルト式スペーサー10は、スペーサー本体20と突起部30と固定部40を備えて配管80に取り付けられるものである。
スペーサー本体20は、配管の円周方向に沿って巻き付ける帯状体である。また、突起部30は、スペーサー本体20の長辺両端21,22より折曲して配管側へ延びる折曲片31,31,…からなるものである。さらに、固定部40は、スペーサー本体20の短辺一端24に挿入孔41を、スペーサー本体20の短辺他端23にその挿入孔41へ挿入する挿入片42をそれぞれ形成している。
【0013】
そして、ベルト式スペーサー10は、ベルト状のスペーサー本体20を配管80の円周方向に沿って巻き付けるようにして取り付ける。この時、配管80側に折り曲げられた折曲片31が配管80と接触することで、スペーサー本体20は配管80から突出した状態になる。また、折曲片31はスペーサー本体20の長辺両端21,22より折曲して延びているため、スペーサー本体20を配管80の円周方向に沿って安定した状態で巻き付けることができる。なお、折曲片31は、図示するように連続して形成してもよいし、間隔をおいて形成してもよい。
【0014】
図2は、ベルト式スペーサー10の固定部40を図示したものである。図2に示すように、固定部40は、挿入片42を挿入孔41に挿入し折り返すことで、配管80の円周方向に沿って巻き付けたスペーサー本体20を固定する。このような固定部40を備えることで、簡易且つ確実にベルト式スペーサー10を配管80へ取り付けることができる。なお、挿入片42が長尺であることで、配管80のサイズに合わせてベルト式スペーサーを取り付けることができる(調整が容易にできる)。
【0015】
図3及び図4は、ベルト式スペーサー10の使用状態を図示したものである。図3に示すように、ベルト式スペーサー10の取り付けられた配管80を半円形状の保温材90(例:けい酸カルシウム製保温材)で被覆する。そして、図4の側面図に示すように、配管80と保温材90との間に確実に空隙(空間)を形成できる。その結果、配管80表面(外周面)に付着した水分を乾燥させることができて、配管80の外表面の腐食を防止できる。なお、配管80と保温材90との間の空隙(空隙)は、折曲片31の長さで調整できる。
【0016】
次に、第2実施形態について説明する。図5に示すように、第2実施形態に係るベルト式スペーサー15は、スペーサー本体50と突起部60と固定部70を備えて配管80に取り付けられるものである。第1実施形態に係るベルト式スペーサー10と異なる点は、突起部60であるので、突起部60について説明する。その他の点についてはベルト式スペーサー10と共通するので、その説明を省略する。
【0017】
ベルト式スペーサー15の突起部60は、スペーサー本体50の長手方向に亘って形成されたディンプル61,61,…からなるものである。そして、ベルト式スペーサー15は、ベルト状のスペーサー本体50を配管80の円周方向に沿って巻き付けるようにして取り付ける。この時、配管80側に膨らんだディンプル61が配管80と接触することで、スペーサー本体50は配管80から突出した状態になる。また、ディンプル61はスペーサー本体50の長手方向中心軸に亘って形成されているため、スペーサー本体50を配管80の円周方向に沿って安定した状態で巻き付けることができる。
【0018】
図6及び図7は、ベルト式スペーサー15の使用状態を図示したものである。図6に示すように、ベルト式スペーサー15の取り付けられた配管80を半円形状の保温材90(例:けい酸カルシウム製保温材)で被覆する。そして、図7の側面図に示すように、配管80と保温材90との間に確実に空隙(空間)を形成できる。その結果、配管80表面(外周面)に付着した水分を乾燥させることができて、配管80の外表面の腐食を防止できる。なお、配管80と保温材90との間の空隙(空隙)は、ディンプル61の深さで調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本願発明に係るベルト式スペーサーは、プラントその他各種配管に保温材、特に温度の上下動の大きい枝管の腐食防止に広く利用できるものである。また、新設又は既設のいずれの配管にも利用できるものである。
【符号の説明】
【0020】
10 ベルト式スペーサー(第1実施形態)
20 スペーサー本体
21,22 長辺端
23,24 短辺端
30 突起部
31 折曲片
40 固定部
41 挿入孔
42 挿入片
15 ベルト式スペーサー(第2実施形態)
50 スペーサー本体
60 突起部
61 ディンプル
70 固定部
71 挿入孔
72 挿入片
80 配管
90 保温材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管と保温材との間に空隙を形成するためのスペーサーであって、
配管の円周方向に沿って巻き付けるベルト状のスペーサー本体と、
スペーサー本体から配管側へ突起する突起部とを備えたことを特徴とするベルト式スペーサー。
【請求項2】
突起部は、スペーサー本体の長辺両端より折曲して延びる折曲片からなることを特徴とする請求項1記載のベルト式スペーサー。
【請求項3】
突起部は、スペーサー本体の長手方向に亘って形成されたディンプルからなることを特徴とする請求項1記載のベルト式スペーサー。
【請求項4】
配管の円周方向に沿って巻き付けたスペーサー本体を固定する固定部を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のベルト式スペーサー。
【請求項5】
固定部は、挿入片をスペーサー本体の短辺一端に、その挿入孔へ挿入する挿入片をスペーサー本体の短辺他端にそれぞれ形成したことを特徴とする請求項4記載のベルト式スペーサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−7426(P2013−7426A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140065(P2011−140065)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】