ベルト搬送装置及びこれを用いた画像形成装置
【課題】長期に亘る保管を行っても、画像形成装置に組み込まれた際のベルト姿勢やベルト張力が安定するベルト搬送装置を提供することにある。
【解決手段】複数の張架ロール1(1a,1b)と、これらの張架ロール1に掛け渡された無端状ベルト2と、複数の張架ロール1を支持し、複数の張架ロール1のうち少なくとも一つを配設位置が変更可能な可変張架ロール1bとし、この可変張架ロール1bの配設位置を変更するロール支持可変機構3とを備え、ロール支持可変機構3は、無端状ベルト2が使用時に必要な張力にて張架される使用張架位置P1と、無端状ベルト2が使用張架位置P1に比べ低減された張力にて張架され且つ使用張架位置P1にある無端状ベルト2の配設位置よりも外方で無端状ベルト2の張力を弛緩させる方向に変位する待機張架位置P2との間で可変張架ロール1bの配設位置を変更する。
【解決手段】複数の張架ロール1(1a,1b)と、これらの張架ロール1に掛け渡された無端状ベルト2と、複数の張架ロール1を支持し、複数の張架ロール1のうち少なくとも一つを配設位置が変更可能な可変張架ロール1bとし、この可変張架ロール1bの配設位置を変更するロール支持可変機構3とを備え、ロール支持可変機構3は、無端状ベルト2が使用時に必要な張力にて張架される使用張架位置P1と、無端状ベルト2が使用張架位置P1に比べ低減された張力にて張架され且つ使用張架位置P1にある無端状ベルト2の配設位置よりも外方で無端状ベルト2の張力を弛緩させる方向に変位する待機張架位置P2との間で可変張架ロール1bの配設位置を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト搬送装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子写真方式を採用した画像形成装置において、複数の張架ロールに張架されて循環する無端状ベルトを備えるベルト搬送装置が知られている。かかるベルト搬送装置では、無端状ベルトの蛇行を防止するなどのために、張架ロールを移動させる各種方式が提案されている。
【0003】
特許文献1では、ベルト張力を解除するため、スライド機構によって張力ロール(張架ロールの一つ)を内側方向に移動させるようにした方式が提案されている。また、特許文献2では、中間転写ベルト上の画像を記録材に転写する際に用いる転写ベルトに対して、駆動用の張架ロール以外の張架ロールの軸方向一端部側を揺動させることでベルトウォーク(蛇行)を低減する方式が提案されている。更に、特許文献3では、無端状ベルトが張架されている張架ロールを支持する両側のフレームのうち、一方のフレームの端部側を移動させて蛇行補正を行うようにした方式が提案されている。更にまた、特許文献4では、複数の張架ロールに張架された転写ベルトを感光体に接触させる際、一つの張架ロールを揺動部位にして転写ベルトを緊張させた状態で揺動させるようにした方式が提案されている。また、特許文献5では、ベルトの蛇行を防ぐため、張架ロールの両端を夫々移動できるようにした方式が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−109235号公報(実施の形態1、図1)
【特許文献2】特開2007−11107号公報(発明を実施するための最良の形態、図2)
【特許文献3】特開平5−193777号公報(実施例、図1)
【特許文献4】特開平6−35338号公報(実施例、図2)
【特許文献5】特開2001−80782号公報(実施の形態1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、画像形成装置に組み込まれる前のベルト搬送装置の状態で、長期に亘る保管を行っても、画像形成装置に組み込まれた際のベルト姿勢やベルト張力が安定するベルト搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、複数の張架ロールと、これらの張架ロールに掛け渡された無端状ベルトと、複数の張架ロールを支持し、複数の張架ロールのうち少なくとも一つを配設位置が変更可能な可変張架ロールとし、この可変張架ロールの配設位置を変更するロール支持可変機構とを備え、前記ロール支持可変機構は、無端状ベルトが使用時に必要な張力にて張架される使用張架位置と、無端状ベルトが使用張架位置に比べ低減された張力にて張架され且つ使用張架位置にある無端状ベルトの配設位置よりも外方で無端状ベルトの張力を弛緩させる方向に変位する待機張架位置との間で可変張架ロールの配設位置を変更するベルト搬送装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るベルト搬送装置において、前記ロール支持可変機構が、前記可変張架ロールが使用張架位置から待機張架位置に向かうように付勢する付勢部材を備えるベルト搬送装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係るベルト搬送装置のうち張架ロールが配設位置の固定される固定張架ロール及び配設位置の変更される可変張架ロールを有する態様において、前記ロール支持可変機構は、前記固定張架ロールが支持される固定支持枠と、この固定支持枠の固定張架ロールの支持部から離れた部位に揺動自在に支持され且つこの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて可変張架ロールを支持する揺動支持枠とを備えるベルト搬送装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係るベルト搬送装置のうち張架ロールが配設位置の変更される複数の可変張架ロールのみを有する態様において、前記ロール支持可変機構は、配設位置が固定される固定支持枠と、この固定支持枠の異なる部位にて夫々揺動自在に支持され且つこれらの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて夫々可変張架ロールを支持する複数の揺動支持枠とを備えるベルト搬送装置である。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項1又は2に係るベルト搬送装置において、前記ロール支持可変機構は、張架ロールが支持される支持枠と、この支持枠に設けられ且つ無端状ベルトが使用張架位置と待機張架位置との間で変位可能になるように可変張架ロールの回転軸を移動自在に案内する案内溝とを備えるベルト搬送装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに係るベルト搬送装置において、前記ロール支持可変機構が、前記可変張架ロールの両端部側に設けられるベルト搬送装置である。
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに係るベルト搬送装置において、無端状ベルトは、待機張架位置でのベルト軌跡長が使用張架位置での軌跡長よりも短くなるように張架ロールに張架されるベルト搬送装置である。
【0009】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれかに係るベルト搬送装置において、可変張架ロールは、弾性付勢部材にて弾性付勢されて無端状ベルトに張る方向の張力を付与する張力付与部材を兼ねるベルト搬送装置である。
請求項9に係る発明は、請求項8に係るベルト搬送装置のうち、ロール支持可変機構として可変張架ロールが揺動支持可能な揺動支持枠を備える態様において、可変張架ロールは、揺動支持枠に対して移動自在に支持されると共に前記弾性付勢部材にて弾性付勢されており、無端状ベルトが使用張架位置にある場合には前記弾性付勢部材の付勢力を最大に保ち、無端状ベルトが待機張架位置にある場合には前記弾性付勢部材の付勢力を制限するようにしたベルト搬送装置である。
請求項10に係る発明は、請求項9に係るベルト搬送装置において、前記揺動支持枠は、揺動支持部を有する枠本体と、この枠本体の揺動支持部と異なる部位に開設され且つ可変張架ロールの支持部がすべり移動可能な溝部とを有するものであり、揺動支持枠には、可変張架ロールの支持部が溝部に沿って移動するように弾性付勢する前記弾性付勢部材を設け、更に、無端状ベルトが待機張架位置にある場合に溝部に沿って移動する可変張架ロールの支持部の位置が規制される規制部材を設け、使用張架位置では可変張架ロールの支持部を前記規制部材に非接触配置させる一方、待機張架位置では可変張架ロールの支持部を前記規制部材に接触配置させるようにしたベルト搬送装置である。
請求項11に係る発明は、請求項1又は2に係るベルト搬送装置において、前記可変張架ロールが、無端状ベルトを駆動する駆動張架ロール以外の張架ロールであるベルト搬送装置である。
【0010】
請求項12に係る発明は、記録材に形成する画像が保持される一若しくは複数の像保持体と、像保持体からの画像を直接若しくは記録材を介して搬送する無端状ベルトを有し、無端状ベルトが全ての像保持体に接触配置するセット位置及び無端状ベルトが全ての像保持体から離間する非セット位置間で無端状ベルトが移動自在な請求項1乃至11のいずれかに記載のベルト搬送装置とを備え、ベルト搬送装置は、セット位置にて無端状ベルトが使用張架位置に配置され且つ非セット位置にて無端状ベルトが待機張架位置に配置されるロール支持可変機構を有し、セット位置にあるベルト搬送装置に対応した部位には、セット位置にて無端状ベルトが使用張架位置に位置するように前記ロール支持可変機構が動作させられて可変張架ロールの配設位置が拘束される位置拘束部材を設ける画像形成装置である。
請求項13に係る発明は、請求項12に係る画像形成装置において、ベルト搬送装置が使用張架位置に配置された際に前記可変張架ロールが一つの像保持体と無端状ベルトを挟んで対向配置される画像形成装置である。
請求項14に係る発明は、請求項13に係る画像形成装置において、前記可変張架ロールは、表面に半導電性弾性部材が被覆された導電体にて構成され、対向配置される像保持体上の画像を直接又は記録材を介して無端状ベルトに転写する転写ロールであることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、張架ロールの軸方向を変えずに相対移動させるだけで無端状ベルトの使用張架位置及び待機張架位置でのベルト張力を所望の値にすることができ、使用張架位置では緊張状態に保ち、待機張架位置では使用張架位置よりも弛緩状態に保つことができることから、待機張架位置での長期に亘る保管を行っても巻き癖などのない安定したベルト姿勢やベルト張力を確保することができるベルト搬送装置を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、使用張架位置にない場合には常に待機張架位置にするようにしたので、無端状ベルトへの負荷が軽減された状態を維持することができ、無端状ベルトの保管時の性能の長期安定化をもたらすことができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、簡単な構成で無端状ベルトを使用張架位置と待機張架位置との間で容易に変更できるようになる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、簡単な構成で無端状ベルトを使用張架位置と待機張架位置との間で容易に変更できるようになる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、簡単な構成で無端状ベルトを使用張架位置と待機張架位置との間で容易に変更できるようになる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、ロール支持可変機構を両側に設けることで、可変張架ロールの配設位置の変更が可変張架ロールの姿勢を一層安定した状態に保ってなされるようになる。
【0012】
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、待機張架位置での無端状ベルトの張力を使用張架位置よりも確実に低減することができる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、ベルト張力を安定させることができ、ベルトの搬送軌跡が一層安定したものとなる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、簡単な構成で使用張架位置と待機張架位置の変更ができるようになると共に使用張架位置でのベルト張力を一層安定化させることができる。
請求項10に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、簡単な構成でベルト張力の安定化を図ることができるようになる。
請求項11に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、駆動張架ロールを固定位置に配置することができるため、特にベルト搬送装置を組み込まれた際に他との駆動連結がやり易く、安定した駆動性能を確保し易くなる。
【0013】
請求項12に係る発明によれば、張架ロールの軸方向を変えずに相対移動させるだけで無端状ベルトの使用張架位置及び待機張架位置でのベルト張力を所望の値にすることができ、使用張架位置では緊張状態に保ち、待機張架位置では使用張架位置よりも弛緩状態に保つことができると共に、待機張架位置での長期に亘る保管を行っても巻き癖などのない安定したベルト姿勢やベルト張力を確保することができるベルト搬送装置を用いることができ、更に、ベルト搬送装置をセット位置に配置する際高い精度で行うことができるようになり、張架ロール自体への高い位置精度を不要にすることができるようになる。
請求項13に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、可変張架ロールを像保持体に対向配置させることで、ベルト搬送装置自体の占有領域を狭くすることができ、装置構成を小型化できる。
請求項14に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、可変張架ロールが転写ロールを兼用することで、小型且つ低コスト化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
◎実施の形態モデルの概要
先ず、本発明が適用される実施の形態モデルの概要について説明する。
図1(a)は本発明を具現化する実施の形態モデルに係るベルト搬送装置の概要を模式的に示したものである。同図において、本実施の形態モデルに係るベルト搬送装置は、複数の張架ロール1(1a,1b)と、これらの張架ロール1に掛け渡された無端状ベルト2と、複数の張架ロール1を支持し、複数の張架ロール1のうち少なくとも一つを配設位置が変更可能な可変張架ロール1bとし、この可変張架ロール1bの配設位置を変更するロール支持可変機構3とを備え、ロール支持可変機構3は、無端状ベルト2が使用時に必要な張力にて張架される使用張架位置P1と、無端状ベルト2が使用張架位置P1に比べ低減された張力にて張架され且つ使用張架位置P1にある無端状ベルト2の配設位置よりも外方で無端状ベルト2の張力を弛緩させる方向に変位する待機張架位置P2との間で可変張架ロール1bの配設位置を変更するようにしたものとなっている。
【0015】
ここで、張架ロール1(1a,1b)は本例では二個用いるものを示したが、その数量は特に限定せられず、複数備えるものであればよい。また、ここでは、分かり易くするため、可変張架ロール1bとして張架ロール1a以外のものを示したが、可変張架ロール1bの数量も特に限定せられず、幾つあっても差し支えない。
更に、無端状ベルト2の待機張架位置P2とは無端状ベルト2が使用張架位置P1でのベルト張力より低減され且つ張架された状態の位置を示すものであり、一つの位置に限られない。尚、変更される配設位置としては、使用張架位置P1及び待機張架位置P2の他、例えば無端状ベルト2の交換を行う際の第三の位置を設けるようにしてもよい。
そして、無端状ベルト2への負荷を軽減する観点から、ロール支持可変機構3は、可変張架ロール1bが使用張架位置P1から待機張架位置P2に向かうように付勢する付勢部材を備えることが好ましい。
【0016】
また、ベルト搬送装置のうち張架ロール1が配設位置の固定される固定張架ロール(本例では1a)及び配設位置の変更される可変張架ロール1bを有する態様において、簡単な構成で無端状ベルト2の位置変更を行う観点からすれば、図1(b)に示すように、ロール支持可変機構3は、固定張架ロール1aが支持される固定支持枠4と、この固定支持枠4の固定張架ロール1aの支持部から離れた部位に揺動自在に支持され且つこの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて可変張架ロール1bを支持する揺動支持枠5とを備えるようにすることが好ましい。
ここで、可変張架ロール1bが支持される支持部と揺動支持部との間隔は一定に保たれるようになっていてもよいし、変化するようになっていてもよい。そして、このように揺動回転させる方式は、例えばばね等を用いて一方に付勢して行うようにしてもよいし、手動で回転させるようにしてもよいが、使用張架位置P1にある無端状ベルト2が使用状態から解放された場合に自動的に待機張架位置P2に移動できるようになっている方が好適である。
【0017】
更に、ベルト搬送装置のうち張架ロール1が配設位置の変更される複数の可変張架ロール1bのみを有する態様において、簡単な構成で無端状ベルト2の位置変更を行う観点からすれば、ロール支持可変機構3は、配設位置が固定される固定支持枠4と、この固定支持枠4の異なる部位にて夫々揺動自在に支持され且つこれらの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて夫々可変張架ロール1bを支持する複数の揺動支持枠5とを備えるようにすることが好ましい。
【0018】
更にまた、簡単な構成で無端状ベルト2の位置変更を行う観点からすれば、次のようにしてもよい。すなわち、ロール支持可変機構3は、張架ロール1が支持される支持枠と、この支持枠に設けられ且つ無端状ベルト2が使用張架位置P1と待機張架位置P2との間で変位可能になるように可変張架ロール1bの回転軸を移動自在に案内する案内溝とを備えることが好ましい。
【0019】
また、上述した態様において、ロール支持可変機構3を可変張架ロール1bの両端部側に設けることが好ましい。このように可変張架ロール1bの両端部側に揺動支持枠5や案内溝を設けることで、可変張架ロール1bの配設位置を変更する際、可変張架ロール1bの姿勢を安定した状態に保って行うことができるようになる。
【0020】
更に、無端状ベルト2の安定した姿勢を維持する観点から、無端状ベルト2は、待機張架位置P2でのベルト軌跡長が使用張架位置P1での軌跡長よりも短くなるように張架ロール1に張架されることが好ましい。ここで、無端状ベルト2は使用張架位置P1から待機張架位置P2に移動すると、ベルト軌跡長が短くなり弛緩された状態となるが、このとき、無端状ベルト2の張力はゼロに近い値で張架される方がよい。これにより、使用張架位置P1と待機張架位置P2との間で無端状ベルト2の配置変更がなされても、無端状ベルト2が張架ロール1に対し容易にずれない程度の張力が付与され、安定した配置変更がなされるようになる。
【0021】
そして、無端状ベルト2の搬送軌跡を安定化させる観点からすれば、可変張架ロール1bは、弾性付勢部材にて弾性付勢されて無端状ベルト2に張る方向の張力を付与する張力付与部材を兼ねることが好ましい。
また、可変張架ロール1bが張力付与部材を兼ね、更に、揺動支持枠5を備える態様において使用張架位置P1と待機張架位置P2との間で可変張架ロール1bの配設位置を変更するための簡単な構成を採用する観点からすれば、可変張架ロール1bは、揺動支持枠5に対して移動自在に支持されると共に弾性付勢部材にて弾性付勢されており、無端状ベルト2が使用張架位置P1にある場合には弾性付勢部材の付勢力を最大に保ち、無端状ベルト2が待機張架位置P2にある場合には弾性付勢部材の付勢力を制限するようにすることが好ましい。これによれば、使用張架位置P1での無端状ベルト2のベルト張力を確保しながら、待機張架位置P2でのベルト張力の低減が可能になる。
【0022】
ここで、弾性付勢部材による可変張架ロール1bへの付勢力の方向は、揺動支持部からの距離が変更できる方向になっていればよく、必ずしも揺動支持部から放射状になる方向に限られないが、可変張架ロール1bを安定して弾性付勢することからは放射状になる方向が好ましい。そして、このような付勢機構の代表的態様としては、次のようにすればよい。すなわち、揺動支持枠5は、揺動支持部を有する枠本体と、この枠本体の揺動支持部と異なる部位に開設され且つ可変張架ロール1bの支持部がすべり移動可能な溝部とを有するものであり、揺動支持枠5には、可変張架ロール1bの支持部が溝部に沿って移動するように弾性付勢する前記弾性付勢部材を設け、更に、無端状ベルト2が待機張架位置P2にある場合に溝部に沿って移動する可変張架ロール1bの支持部の位置が規制される規制部材を設け、使用張架位置P1では可変張架ロール1bの支持部を前記規制部材に非接触配置させる一方、待機張架位置P2では可変張架ロール1bの支持部を前記規制部材に接触配置させるようにすればよい。尚、規制部材は枠本体に一体的に構成されていてもよいし、別体であっても差し支えない。また、弾性付勢部材は支持部を付勢するように溝部に対して設けられればよく、溝部の中に弾性付勢部材全体を設けるようにしてもよいし、溝部に一部が設けられるようにしても差し支えない。
【0023】
そして、本実施の形態モデルでの可変張架ロール1bとしては、無端状ベルト2を駆動する駆動張架ロール以外の張架ロール1とすることが好ましく、この場合、駆動張架ロールを固定位置に配置することができるようになり、特に、ベルト搬送装置を画像形成装置等の装置に組み込んだ際にも他との駆動連結がやり易く、無端状ベルト2の安定した駆動がなされるようになる。尚、ここで、画像形成装置等の装置としては、ベルト搬送装置が適用される装置であればよく、画像形成装置や、記録材を搬送する処理装置や、その他の処理装置をも含む。
【0024】
また、このようなベルト搬送装置を画像形成装置に用いることも容易であり、次のようにすればよい。すなわち、図1(a)に示すように、記録材に形成する画像が保持される一若しくは複数の像保持体6と、像保持体6からの画像を直接若しくは記録材を介して搬送する無端状ベルト2を有し、無端状ベルト2が全ての像保持体6に接触配置するセット位置及び無端状ベルト2が全ての像保持体6から離間する非セット位置間で無端状ベルト2が移動自在な上述の搬送装置とを備え、ベルト搬送装置は、セット位置にて無端状ベルト2が使用張架位置P1に配置され且つ非セット位置にて無端状ベルト2が待機張架位置P2に配置されるロール支持可変機構3を有し、セット位置にあるベルト搬送装置に対応した部位には、セット位置にて無端状ベルト2が使用張架位置P1に位置するようにロール支持可変機構3が動作させられて可変張架ロール1bの配設位置が拘束される位置拘束部材を設けるようにすることが好ましい。
【0025】
ここで、ベルト搬送装置がセット位置に配置されるとは、像保持体6による画像形成がなされているか否かに拘わらず、画像形成が可能な状態に保持されている状態にあることを意味し、また、非セット位置とは、例えば画像形成装置の扉が開放され、画像形成ができない状態にあることを意味する。
更に、像保持体6としてはロール状、ベルト状を問わず、またその数量も特に限定せられないが、カラー画像を形成するには像保持体6を四つ備える態様が好適である。更に、無端状ベルト2としては、像保持体6上の画像を直接又は記録材を介して保持搬送するものであればよく、中間転写ベルトの態様や記録材搬送ベルトの態様が挙げられる。更にまた、位置拘束部材は可変張架ロール1bの位置が拘束できればいずれに設けられてもよく、画像形成装置の筐体側に設けるようにしてもよいし、例えばプロセスカートリッジや像保持体6に対応して設けるようにしてもよい。
【0026】
また、ベルト搬送装置を小型化する観点からすれば、ベルト搬送装置が使用張架位置P1に配置された際に可変張架ロール1bが一つの像保持体6と無端状ベルト2を挟んで対向配置されることが好ましい。このように可変張架ロール1bを像保持体6に対向配置させることで、ベルト搬送装置自体の占有領域を狭くすることができ、画像形成装置の小型化も推進されるようになる。更に、このような可変張架ロール1bとして、表面に半導電性弾性部材が被覆された導電体にて構成し、対向配置される像保持体6上の画像を直接又は記録材を介して無端状ベルト2に転写する転写ロールとすることが好ましい。
【0027】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は上述した実施の形態モデルのベルト搬送装置(以降ベルトユニットと称す)が適用された実施の形態1の画像形成装置の概要を示すものである。
同図において、画像形成装置は、画像形成装置筐体10内に略垂直方向に沿って四色(例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の各色プロセスカートリッジ20(20a〜20d)を並べ、これらの各色プロセスカートリッジ20に対向するように、縦方向に沿ったセット位置にベルトユニット30がセットされた状態となっている。
【0028】
各色プロセスカートリッジ20は、画像形成装置筐体10に対し、着脱できるように構成されており、夫々のプロセスカートリッジ20は使用するトナーを除けば略同一構成となっているため、ここでは一つのプロセスカートリッジ20について説明する。
本実施の形態のプロセスカートリッジ20は、トナー像を保持する像保持体としての感光体21と、感光体21を帯電する帯電ロール22と、帯電ロール22によって帯電された感光体21が露光されて潜像が形成され、この形成された潜像をトナーにて現像して可視像化する現像器24と、感光体21上のトナーを清掃する図示外のクリーナ等で構成されている。そのため、プロセスカートリッジ20の奥側でベルトユニット30の反対側には、帯電された感光体21上に潜像を形成する露光器としてのレーザ走査装置23が設けられ、夫々の感光体21に対し、一つのレーザ走査装置23からの四方向の光走査を行うことで、夫々の感光体21に色毎の潜像を形成できるようになっている。尚、本実施の形態では、感光体21上のトナー像を転写する転写ロール25が画像形成装置筐体10に着脱可能なベルトユニット30側に設けられている。
【0029】
ベルトユニット30は、セット位置では上下方向に配置される二つの張架ロール32,33と、これらの張架ロール32,33に張架されて循環する無端状ベルトとしての記録材搬送ベルト31と、下方の張架ロール33に記録材搬送ベルト31を挟んで対向する位置に設けられ、記録材に対し記録材搬送ベルト31への吸着を促す方向の電界を作用させる帯電部材34等で構成されている。そして、本実施の形態では、上方の張架ロール32を駆動ロールとし、下方の張架ロール33が従動回転されると共にその配設位置が変更される可変張架ロールとなっており、二つの張架ロール32,33に掛け渡された記録材搬送ベルト31が使用張架位置になっている。尚、後述するように、ベルトユニット30がセット位置から解放された状態の非セット位置では、可変張架ロール33の移動によって記録材搬送ベルト31が待機張架位置に至るようになっている。
【0030】
次に、本実施の形態における画像形成装置での記録材搬送系について説明する。
記録材は、画像形成装置筐体10内の下部側に設けられた記録材供給部11から、供給ロール12によって供給され、捌き機構13によって捌かれた一枚の記録材が下流側に搬送されるようになる。下流側に搬送された記録材は、レジストロール14によって位置決めされた後、所定のタイミングで下流側に搬送され、帯電部材34によって記録材搬送ベルト31への吸引力が付与されて記録材搬送ベルト31に吸着保持される。吸着保持された記録材は記録材搬送ベルト31の回転に伴ってそのまま移動する。
【0031】
記録材搬送ベルト31上に保持された記録材は各色のプロセスカートリッジ20との対向部位を通過する際、夫々の感光体21と転写ロール25との間に加えられた転写電界によって夫々の感光体21上のトナー像が記録材上に順次転写され、最下流側のプロセスカートリッジ20aを通過した後には、記録材上に各色のプロセスカートリッジ20にて多重化されたトナー像が転写されるようになる。
【0032】
多重化されたトナー像が転写された記録材は、駆動ロール32の近傍に配置される図示外の剥離部材によって記録材搬送ベルト31から剥離された後、ベルトユニット30より下流側に設けられた定着器15に導かれる。多重化されたトナーが定着器15によって定着された記録材は、排出ロール16によって画像形成装置筐体10の上部筐体に形成された記録材収容部17に排出収容されるようになる。
【0033】
次に、本実施の形態のベルトユニット30のロール支持可変機構40について説明する。本実施の形態のロール支持可変機構40は、図3に示すように、駆動ロール32の軸方向両端部に、駆動ロール32及び転写ロール25を支持する対構成の固定支持枠41を設け、この固定支持枠41の可変張架ロール33寄りには固定支持枠41に対し揺動支持部を構成する揺動回転軸42を回転可能に設けている。また、固定支持枠41に対しては、揺動回転軸42を支持すると共に可変張架ロール33の支持部を構成する回転軸33aを移動自在に支持する揺動支持枠としての揺動アーム50を揺動可能に設けている。
【0034】
そして、揺動回転軸42はベアリング43を介して固定支持枠41に取り付けられ、固定支持枠41に対して回転が自在になっている。また、固定支持枠41の揺動回転軸42寄りには、固定支持枠41から突出して設けられて後述するたわみコイルばね44の一端が係止される係止部45と、揺動アーム50の揺動範囲を規制するストッパ46が設けられている。
【0035】
一方、揺動アーム50には、揺動回転軸42と可変張架ロール33の回転軸33aの軸中心を結ぶ方向(揺動支持部から放射状に延びる方向)に沿って貫通した溝部51が、可変張架ロール33の回転軸33aに対応して開設されており、この溝部51の揺動回転軸42から離れた側は閉塞された状態となっている。つまり、本実施の形態では、揺動アーム50に設けられた溝部51は、可変張架ロール33の支持部がすべり移動可能な部位と、待機張架位置での可変張架ロール33の支持部を規制する規制部材とが一体に構成されたものとなっており、溝部51の一端側51aが規制部材を構成するものとなっている。そして、この溝部51に可変張架ロール33を外方に向けて押しやる方向の圧力を付与するコイルばね52を設けるようにしたもので、このコイルばね52によって可変張架ロール33の回転軸33aを支持するベアリング53が弾性付勢されている。このベアリング53は、溝部51内をすべり移動できるようになっているため、コイルばね52によって可変張架ロール33自体が常に記録材搬送ベルト31を張る方向の付勢力を持ったものとなり、所謂テンションロールとして作用するようになる。尚、ここでは溝部と規制部材とが一体となった溝部51を用いたが、規制部材を別体のもので構成するようにしても差し支えない。
【0036】
更に、揺動アーム50には、固定支持枠41に設けられたものと同様の係止部54が設けられており、揺動回転軸42のベアリング43の周囲に装着されたたわみコイルばね44の端部を夫々固定支持枠41の係止部45と揺動アーム50の係止部54とで係止するようになっている。そして、本実施の形態では、たわみコイルばね44によって、使用張架位置にある揺動アーム50に対し、プロセスカートリッジ20側へ揺動回転する方向の力が常に作用するようになっている。
【0037】
また、本実施の形態では、ベルトユニット30がセット位置にセットされ、記録材搬送ベルト31を使用張架位置に安定して配置するために、次のような位置決め機構が用いられている。
つまり、図中最下方にある最上流側のプロセスカートリッジ20dより下方位置には、ベルトユニット30側の可変張架ロール33に対応する位置に、可変張架ロール33の配設位置を拘束する位置拘束部材61が設けられている。一方、この位置拘束部材61に対応するように、ベルトユニット30側では、可変張架ロール33の回転軸33aの両端部側に対構成の位置決め部材60が取り付けられている。そのため、ベルトユニット30がセット位置にある場合、たわみコイルばね44の付勢力によって、揺動アーム50はプロセスカートリッジ20側に揺動する方向の力を受け、ベルトユニット30がプロセスカートリッジ20から離間する方向に働くが、ベルトユニット30がセット位置にセットされる状態では位置決め部材60がたわみコイルばね44の付勢力に抗して位置拘束部材61側に向かって常に付勢されるようになり、安定した位置決めが確保されるようになっている。尚、位置拘束部材61は直接画像形成装置筐体10に設けるようにしてもよいし、プロセスカートリッジ20や感光体21に対応する位置に設けるようにしても差し支えない。
一方、駆動ロール32の回転軸32aは、位置拘束部材62によって位置決めされることから、ベルトユニット30全体に対し安定した位置決めがなされ、記録材搬送ベルト31の安定した循環軌跡が確保されるようになる。
【0038】
図4は、セット位置にあるベルトユニット30を横から見たときの断面を示すものである。本実施の形態では、このように、揺動アーム50より外側に位置決め部材60を設け、この位置決め部材60を位置拘束部材61にて拘束することでベルトユニット30のセット位置への位置決めが容易になされるようになる。尚、揺動アーム50や位置決め部材60の可変張架ロール33の回転軸33aに対する実装は、回転軸33aに揺動アーム50や位置決め部材60を挿入した後に夫々例えばEリングにて係止することでなされる。尚、図中符号33bは可変張架ロール33の両端部を塞ぐ側板である。
【0039】
このような画像形成装置にあって、本実施の形態では、図5に示すように、画像形成装置が上下方向に回転するように開閉される開閉扉10’を備えている。図5は、画像形成装置の開閉扉10’が開放された状態を示す斜視図であり、ベルトユニット30が非セット位置、つまり、記録材搬送ベルト31が待機張架位置にあるものを示している。そのため、図中矢印方向に開閉扉10’を回転させて閉塞することで、ベルトユニット30は非セット位置からセット位置にその状態が変更されるようになる。つまり、記録材搬送ベルト31は待機張架位置から使用張架位置にその状態が変更されるようになる。
【0040】
本実施の形態では、開閉扉10’側にベルトユニット30の他、定着器15や排出ロール16の一方を組み込むようにしているが、開閉扉10’にベルトユニット30を装着できるようになっていればよく、例えば定着器15や排出ロール16が開閉扉10’以外に設けられるようになっていても差し支えない。また、開閉扉10’の開閉方向はこれに限られず、画像形成装置の略水平方向に回転させるようにして開閉する方式を採用するようにしても差し支えない。尚、図5ではベルトユニット30側の帯電部材34は省略している。
【0041】
また、図6は、非セット位置にあるベルトユニット30を上方から見た図であり、記録材搬送ベルト31の裏面側には、駆動ロール32と可変張架ロール33の他に四本の転写ロール25が設けられ、可変張架ロール33に対向する位置には帯電部材34が取り付けられている。尚、図中符号35は駆動ロール32に駆動伝達を行うための駆動伝達ギアである。
【0042】
次に、本実施の形態におけるロール支持可変機構40の作動について説明する。
先ず、開放状態にある画像形成装置の開閉扉10’(図5参照)を閉塞させたときのベルトユニット30の変化について、図7(a)〜(d)を用いて説明する。開閉扉10’が開放された状態でベルトユニット30が開閉扉10’の所定位置に装着されると、(a)に示すように、ベルトユニット30は非セット位置になった状態を保つようになる。この状態でのベルト軌跡長を記録材搬送ベルト31の自由長より長くすることで、待機張架位置での記録材搬送ベルト31に対し若干の張力を作用させることができ、待機張架位置でのベルト姿勢を安定させることができるようになる。また、このときのベルト張力を小さくできることから、仮に、待機張架位置で長期に亘って保持したとしても記録材搬送ベルト31に対する巻き癖などを発生させる虞もない。
【0043】
開閉扉10’が閉塞されるに連れてベルトユニット30は矢印方向に回転し、(b)に示すように、可変張架ロール33側に設けられた位置決め部材60が画像形成装置筐体10(図5参照)側に設けられた位置拘束部材61に突き当たる。揺動アーム50が押されて回転するようになる。更に、開閉扉10’の閉塞動作が続くと、(c)に示すように、揺動アーム50が押されて徐々に回転し、この揺動アーム50の回転に連れて記録材搬送ベルト31が徐々に張られるようになる。このとき、位置決め部材60と位置拘束部材61との間では、互いの接触位置がすべり移動を生じるために、揺動アーム50の回転は支障なくなされるようになる。そして、開閉扉10’の閉塞が完了すると、ベルトユニット30は(d)のようにセット位置にセットされるようになる。このセット位置では、固定支持枠41と揺動アーム50とが略一直線上に配列されることから、記録材搬送ベルト31は最大に張られた状態となり、可変張架ロール33は張架付与ロール(所謂テンションロール)として機能するようになる。
【0044】
このような作動において、ロール支持可変機構40のうち、特に揺動アーム50での動きについて図8(a)〜(c)を用いて詳述する。ここで、(a)は非セット位置にあるベルトユニット30、(c)はセット位置にあるベルトユニット30、(b)は非セット位置からセット位置に至る途中段階のベルトユニット30を示すものとなっている。
非セット位置では、(a)に示すように、たわみコイルばね44の復旧力によって揺動アーム50が揺動回転軸42を中心に回転し、揺動アーム50がストッパ46に接触して拘束されることで、揺動アーム50と固定支持枠41とは所定の角度で傾斜配置した状態で停止するようになる。このとき、揺動アーム50の溝部51では、コイルばね52によって付勢されたベアリング53の端部が溝部51の内壁に接触するようになっている。つまり、非セット位置では記録材搬送ベルト31が待機張架位置にあり、記録材搬送ベルト31の軌跡長が短くなる分、コイルばね52の付勢力が勝り、可変張架ロール33の位置は溝部51の内壁によって規制された位置となる。このとき、駆動ロール32と可変張架ロール33の軸間距離L2は、固定支持枠41と揺動アーム50とのなす角及び溝部51の寸法によって決定された長さとなる。
【0045】
次に、(b)に示すように、揺動アーム50が回転し、固定支持枠41との間の角度が小さくなると、駆動ロール32と可変張架ロール33との軸間距離L2’は徐々に大きくなって行き、記録材搬送ベルト31の軌跡長も長くなる。そのため、記録材搬送ベルト31によって可変張架ロール33は駆動ロール32側へ引っ張られる力を受け、この力がコイルばね52の付勢力より勝るようになると、ベアリング53が溝部51内壁から離間するようになり、ベアリング53の端部と溝部51の内壁との間に間隙d’が発生するようになる。
【0046】
更に、揺動アーム50が回転して記録材搬送ベルト31が使用張架位置に至ると、(c)に示すように、駆動ロール32と可変張架ロール33との軸間距離L1は最大になり、記録材搬送ベルト31が最大に張られた状態となる。このとき、記録材搬送ベルト31によって可変張架ロール33は駆動ロール32側へ最大に引っ張られ、その分、ベアリング53と溝部51の内壁との間隙dも最大となる。
つまり、このようなベルト張力の変化は、使用張架位置での駆動ロール32と可変張架ロール33との軸間距離L1と、待機張架位置での軸間距離L2との関係が(L1>L2+d)の関係を満たすように設定されることでなされる。
【0047】
次に、このようなベルトユニット30を組み立てる組立方法について図9を用いて説明する。尚、ここでは、説明を分かり易くするため、転写ロール25等は省略し、揺動アーム50の詳細も省略している。
先ず、図9(a)に示すように、固定支持枠41に駆動ロール32を連結し、可変張架ロール33は別体として記録材搬送ベルト31の内側に駆動ロール32及び可変張架ロール33を収める。このとき、駆動ロール32と可変張架ロール33との間隔は小さくできることから、記録材搬送ベルト31の自由長により、記録材搬送ベルト31の内側に駆動ロール32及び可変張架ロール33を容易に収めることができる。
次に、図9(b)に示すように、可変張架ロール33が駆動ロール32に対し待機張架位置になる位置に可変張架ロール33を例えば治具等で仮固定し、固定支持枠41に設けられた揺動回転軸42と可変張架ロール33の回転軸33aに揺動アーム50の対応部位を位置合わせしながら揺動アーム50を取り付ける。そして、揺動回転軸42及び可変張架ロール33の回転軸33aに対し例えばEリングを用いて揺動アーム50を係止する。このとき、記録材搬送ベルト31は、わずかに緊張されているため、可変張架ロール33を待機張架位置に維持することにそれほどの困難さは伴わないため、揺動アーム50の取り付けは容易になされる。
更に、図9(c)に示すように、可変張架ロール33の回転軸33aに対して位置決め部材60を取り付け、例えばEリングを用いて係止する。その後、図示外のたわみコイルばね44(図3参照)を取り付ける。そして、図示外の帯電部材34(図6参照)を取り付けることで、ベルトユニット30が完成する。
【0048】
本実施の形態では、可変張架ロール33の回転軸33aに対し、内側より揺動アーム50、位置決め部材60の順番に取り付けるようにしたが、例えば位置決め部材60を先に取り付け、その外側に揺動アーム50を取り付けるようにしても差し支えない。尚、いずれにあっても、位置決め部材60に対応した位置に位置拘束部材61が設けられていることは云うまでもない。
【0049】
本実施の形態では、このようなロール支持可変機構40となっているため、ベルトユニット30単独の状態では非セット位置に維持され、ベルト張力が使用張架位置に比べ弛緩された状態の待機張架位置に保たれ、例えば保管時の記録材搬送ベルト31への巻き癖などが発生することを防ぎ、安定したベルト姿勢やベルト張力を確保することが可能になる。また、ベルトユニット30がプロセスカートリッジ20に対しセットされるセット位置に至ると、可変張架ロール33は位置拘束部材61によって位置決めされるようになり、可変張架ロール33の位置精度がこの位置決めによって容易になされることから可変張架ロール33自体の位置精度を不要に高める必要もない。
また、駆動ロール32を固定位置に配置することができるため、特にベルトユニット30を画像形成装置筐体10内に装着した際にも例えば駆動伝達ギア35(図6参照)と他部材との駆動連結がやり易く、安定した駆動を確保し易くなる。
【0050】
そして、本実施の形態では、プロセスカートリッジ20を縦方向に配置する例を示したが、横方向に配置するようにしてもよく、また、プロセスカートリッジ20の数量も四つより多くてもよいし、少なくてもよい。例えば、プロセスカートリッジ20を一つとしたモノクロ用画像形成装置に適用するようにしても差し支えない。
また、本実施の形態では、ベルトユニット30の張架ロールとして駆動ロール32と可変張架ロール33を備えるものを示したが、張架ロールの数量はこれに限られず、三個以上備えるものであっても差し支えない。
更に、位置決め部材60を可変張架ロール33より大きい径のもので示したが、例えば小さな径のものでもよく、その場合、対応する位置拘束部材61の大きさや配設位置を位置決め部材60に合わせるようにすればよい。
更にまた、位置決め部材60を用いる代わりに、例えば揺動アーム50の一部を位置決めに用いるようにしてもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、上述のロール支持可変機構40を用いる態様を示したが、次のような変形形態で行うことも可能である。
図10(a)(b)は、変形形態の第一態様を示すもので、揺動アーム50にはコイルばねを使用していないものとなっている。また、(a)では、揺動回転軸42を記録材搬送ベルト31で囲まれた領域内に設けているのに対し、(b)では揺動回転軸42を記録材搬送ベルト31で囲まれた領域外に設けている。つまり、(b)では固定支持枠(図示せず)が(a)に比べ大きなものとなる。
【0052】
そのため、使用張架位置(図中実線で示す)と待機張架位置(図中二点鎖線で示す)との間では、可変張架ロール33が揺動回転軸42を中心に回転してその位置を変更するようになるが、使用張架位置での軸間距離L1の方が待機張架位置での軸間距離L2より長くなっているため、使用張架位置では記録材搬送ベルト31が緊張され、待機張架位置では弛緩されるように設定できる。尚、(b)では待機張架位置では駆動ロール32及び可変張架ロール33の夫々の回転軸と揺動回転軸42の軸中心が一直線上に並ぶように配置したが、揺動アーム50を更に図の上方に回転させるようにしてもよく、あくまでも、軸間距離L2が軸間距離L1より小さくなっている範囲内でその位置を適宜選定するようにすればよいことは云うまでもない。尚、この場合、可変張架ロール33の配設位置を変更する過程で記録材搬送ベルト31が弛んでも位置ずれを起こさない程度の弛みに抑えられる範囲で移動するようになっていることは云うまでもない。
そして、ベルトユニット30の小型化を図る観点からすれば、揺動回転軸42を(a)のように記録材搬送ベルト31で囲まれた領域に設ける方がよい。
また、このようにコイルばねを用いない場合には、使用張架位置での記録材搬送ベルト31の張力を保ち、また、記録材搬送ベルト31の搬送軌跡を安定化させるように、テンションロールを固定支持枠41側に設けることが好ましい。
【0053】
また、図11は、変形形態の第二態様を示すもので、図10(b)の揺動アーム50に対しコイルばね52を備え、可変張架ロール33に付勢力を付与するようにしたものとなっている。本態様は、揺動回転軸42を記録材搬送ベルト31で囲まれる領域外に設けたもので、使用張架位置(図中実線で示す)では、揺動アーム50の溝部51の揺動回転軸42寄りの内壁と可変張架ロール33の回転軸33aに対応したベアリング53との間に間隙dが形成されるようになっている。つまり、この態様では、溝部51の揺動回転軸42寄りの一端側51aが規制部材となっている。
このようにしても、使用張架位置と待機張架位置(図中二点鎖線で示す)との間で記録材搬送ベルト31の張力を変化させることができるようになり、また、可変張架ロール33をテンションロールとして機能させることも可能になる。
【0054】
更に、図12は、変形形態の第三態様を示すもので、上述のものとは異なり、使用張架位置と待機張架位置との間で、可変張架ロール33のみならず、駆動ロール32の配設位置をも変更させるようにしたものである。そのため、揺動回転軸42を、可変張架ロール33に対応するものと駆動ロール32に対応するものとの二箇所に設け、二つの揺動アーム50を共に図の上方に移動させることで、使用張架位置(図中実線で示す)と待機張架位置(図中二点鎖線で示す)との間で可変張架ロール33及び駆動ロール32の配設位置を変更するようにしたものとなっている。このようにしても、記録材搬送ベルト31のベルト張力を使用張架位置では緊張させ、待機張架では弛緩させることができるようになる。
尚、ここでは、揺動回転軸42が記録材搬送ベルト31の幅方向の外方に設けられ、記録材搬送ベルト31の移動を損ねないようになっていることは云うまでもないが、例えば揺動アーム50の回転量を少なくし、待機張架位置においても揺動回転軸42が記録材搬送ベルト31で囲まれる領域内に設けるようにすれば、揺動回転軸42を記録材搬送ベルト31の幅方向に対して張り渡すことが可能となる。更に、固定支持枠41に張架ロールを設けるようにしても、上記と同様に、記録材搬送ベルト31を使用張架位置及び待機張架位置の間で変更することもできることは云うまでもない。
【0055】
また、この態様において、二つの揺動アーム50夫々に、例えば図3で示すコイルばね52を設けるようにすることも可能であり、この場合、使用張架位置での記録材搬送ベルト31の張力を一層安定させることができるようになる。
【0056】
◎実施の形態2
図13は、実施の形態2に係る画像形成装置の概略を示すものである。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1と略同様に構成されているが、ベルトユニット30の位置決め機構が実施の形態1のものと異なる。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0057】
本実施の形態のベルトユニット30は、実施の形態1(図3参照)より自由長が短い記録材搬送ベルト31を用いたものとなっている。すなわち、最上流側のプロセスカートリッジ20dの感光体21に対応する転写ロール25の代わりに可変張架ロール33を兼用するようになっている。そのため、可変張架ロール33の回転軸33aには、位置決め部材60が設けられる一方、最上流側のプロセスカートリッジ20d側には、感光体21の回転軸に対応して位置拘束部材63が設けられている。尚、本実施の形態では、記録材搬送ベルト31に記録材を吸引させるための帯電部材34(図2参照)は省かれている。
そして、本実施の形態では、プロセスカートリッジ20dの感光体21と可変張架ロール33との間には、使用張架位置にて所定の転写電界が作用するようになっている。
【0058】
本実施の形態では、非セット位置にあるベルトユニット30がセット位置にセットされると、可変張架ロール33の回転軸33aに設けた位置決め部材60が、対応する感光体21の位置拘束部材63によって位置決め拘束され、感光体21と可変張架ロール33とが所定の位置にて対向するようになる。
そのため、図示外の記録材供給部から供給された記録材は、図示外のレジストロールによって位置決め規制された後、感光体21と可変張架ロール33との対向部位にて記録材搬送ベルト31上に搬送される。そこで、所定のタイミングで感光体21上のトナー像が記録材上の所定位置に転写されるようになる。このとき、可変張架ロール33と感光体21との間に作用する転写電界によって、記録材は記録材搬送ベルト31側に吸引されるようになり、記録材搬送ベルト31の循環に伴って記録材が搬送されるようになる。その後、記録材搬送ベルト31にて搬送が継続された記録材上には、順次各色のトナー像が多重化されるようになる。
【0059】
このように、本実施の形態では、最下流側のプロセスカートリッジ20dに対応して可変張架ロール33を配置するようにしたので、ベルトユニット30自体の長さ(図中上下方向の長さ)を短くすることで占有領域を狭く設定することができ、より小型化された画像形成装置を提供できるようになる。
尚、本実施の形態では、記録材搬送ベルト31が待機張架位置から使用張架位置に移行する際、位置拘束部材63に位置決め部材60が接触した状態で行われるため、例えば少なくとも一方は、回転軸に対し空回りすることで、両者間での摩擦抵抗が小さくなるようになっている。
【0060】
◎実施の形態3
図14は、実施の形態3の画像形成装置の概要を示すものである。本実施の形態の画像形成装置は、これまでの実施の形態1,2と異なり、ベルトユニット300の無端状ベルトが記録材搬送ベルト31ではなく、トナー像を一時的に保持搬送する中間転写ベルト301となっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0061】
同図において、本実施の形態のベルトユニット300は、最下方に位置する張架ロールを駆動ロール302とし、最上方に位置する張架ロールを可変張架ロール303としている。また、中間転写ベルト301を張架する張架ロールとしては、駆動ロール302、可変張架ロール303の他に、もう一つの張架ロール304を設けている。そして、この張架ロール304と中間転写ベルト301を挟んで対向する位置には、中間転写ベルト301上のトナー像を記録材上に一括転写するための二次転写器19が張架ロール304をバックアップロールとして設けられ、二次転写器19と張架ロール304との間には、中間転写ベルト301上のトナー像を記録材上に一括転写させる転写電界が作用するようになっている。
【0062】
そして、中間転写ベルト301上には、各色のプロセスカートリッジ20によって各色トナー像が多重化されるようになる。
一方、本実施の形態での記録材搬送系は、次のようになっている。すなわち、記録材供給部11から供給ロール12や捌き機構13によって送り出された一枚の記録材は、搬送ロール18によって搬送された後、レジストロール14によって位置決めされ、所定のタイミングで下流側に搬送される。その後、レジストロール14の下流側に設けられた二次転写部位(二次転写器19と張架ロール304との対向部位)にて中間転写ベルト301上のトナー像が一括転写される。トナー像が一括転写された記録材は、定着器15によって定着された後、排出ロール16から記録材収容部17に排出収容されるようになる。
【0063】
このような実施の形態にあって、ベルトユニット300がセット位置と非セット位置との間で位置が変更される際の中間転写ベルト301の使用張架位置及び待機張架位置間での変更状態について説明する。
図15は、本実施の形態におけるベルトユニット300のセット位置(中間転写ベルト301が使用張架位置にある状態:図中実線で示す)及び非セット位置(中間転写ベルト301が待機張架位置にある状態:図中二点鎖線で示す)での様子を示すものであり、両位置の間では揺動アーム50が揺動回転軸42を中心に回転するため、結果的に可変張架ロール303が移動するようになっている。尚、揺動アーム50の構成は実施の形態1と同様の構成のため、ここでは、溝部51やコイルばね52等(図3参照)の詳細な機構は省略している。
【0064】
ここで、図のように、揺動回転軸42が可変張架ロール303と張架ロール304との間に設けられたものとして、中間転写ベルト301の周長変化(ベルト軌跡長の変化)について説明する。可変張架ロール303の配設位置が使用張架位置から待機張架位置に変更されると、可変張架ロール303と張架ロール304との軸間距離は長くなるものの、可変張架ロール303と駆動ロール302との軸間距離は短くなる。更に、張架ロール304を可変張架ロール303寄りに配置することで、可変張架ロール303と張架ロール304との軸間距離はさほど長くならないが、可変張架ロール303と駆動ロール302との軸間距離を一層短くすることができ、待機張架位置での中間転写ベルト301のベルト軌跡長を使用張架位置でのベルト軌跡長に比べ相当短くすることができるようになる。
【0065】
そのため、待機張架位置でのベルト張力を弛緩させた状態に保つことができ、中間転写ベルト301での余分な巻き癖などの発生を防ぎ、安定したベルト姿勢、ベルト張力を維持することができるようになる。また、揺動アーム50しては、コイルばね52を用いないようにすることも可能であり、この場合、別途テンションロールを設ける方が好ましいことは云うまでもない。
【0066】
◎実施の形態4
図16は、実施の形態4の画像形成装置に用いられるベルトユニット30’を示す概要図である。ここでは、実施の形態1のベルトユニット30と同様な構成を示しているが、
実施の形態1のベルトユニット30とは大きく相違する点がある。つまり、本実施の形態のベルトユニット30’は、揺動アームを備えずに、固定支持枠401が駆動ロール32と可変張架ロール33の両方に跨って延びる構造のものとなっている。
そのため、本実施の形態のロール支持可変機構400は、駆動ロール32を支持する固定支持枠401に対し、この固定支持枠401の可変張架ロール33側に可変張架ロール33の回転軸33aを案内移動させる案内溝402を形成したものとなっている。
【0067】
このようなベルトユニット30’をセット位置から非セット位置に変更するには、可変張架ロール33の回転軸33aが案内溝402の案内面402aを滑るように移動することでなされるようになる。すなわち、セット位置(記録材搬送ベルト31が使用張架位置にある状態:図中実線で示す)から非セット位置(記録材搬送ベルト31が待機張架位置にある状態:図中二点鎖線で示す)に変更する場合、可変張架ロール33の回転軸33aが案内面402aに沿って上方に移動して待機張架位置に至る。このとき、使用張架位置での駆動ロール32と可変張架ロール33との軸間距離L1より待機張架位置での軸間距離L2の方が短くなるように案内面402aを形成することで、使用張架位置では記録材搬送ベルト31を緊張させ、待機張架位置では弛緩させることができるようになる。
【0068】
また、可変張架ロール33が待機張架位置に向かう方向に可変張架ロール33の回転軸33aを付勢しておけば、ベルト姿勢を常に待機張架位置側に向けることができ、使用張架位置から解放された状態では常に待機張架位置に至らせることができるようになる。本実施の形態では、案内面402aを直線状のものとして示したが、曲線状に形成されていても差し支えない。そして、このような固定支持枠401を用いることで、実施の形態1と同様の作用を奏することができるようになる。
【0069】
このようなベルトユニット30’を組み立てるには、固定支持枠401が例えば駆動ロール32側と可変張架ロール33側に二つに分割されるようになっていたり、折り畳むようになっていればよい。更に、例えば案内面402aを移動する部材を可変張架ロール33の回転軸33aとは別体に設け、この部材と可変張架ロール33の回転軸33aとの間に記録材搬送ベルト31を張る方向に弾性付勢する弾性付勢部材を設けるようにすれば、可変張架ロール33を所謂テンションロールとして機能させることもできるようになる。
そして、本実施の形態では、張架ロールを二つ用い、ベルトとして記録材搬送ベルト31を用いる態様を示したが、例えば中間転写ベルトに対して上述のロール支持可変機構400を用いるようにしても差し支えない。
【実施例】
【0070】
本実施例は、実施の形態1の構成にて、使用張架位置と待機張架位置との間の揺動アームの角度変化とベルトの周長(ベルト軌跡長)との関係について一例を示すようにしたものである。
今、図17に示すように、使用張架位置と待機張架位置との間で、可変張架ロールの回転軸は揺動アームに対しその位置が変化しないものとし、固定支持枠での軸間距離(駆動ロールと揺動回転軸との軸間距離に相当)をa、揺動アームでの軸間距離(揺動回転軸と可変張架ロールとの軸間距離に相当)をb、固定支持枠と揺動アームとのなす角度をθとすると、待機張架位置でのベルトの軸間距離X(駆動ロールと可変張架ロールとの軸間距離に相当)は、図に示すように、X=(a2+2ab・cosθ+b2)1/2で表される。
【0071】
そこで、例えば、駆動ロール及び可変張架ロールの外径を共にφ20mm、aを180mm、bを50mm、θを40°とすると、Xは約220mmとなる。そのため、待機張架位置では使用張架位置に比べ、ベルト全体で約20mm弛ませることができるようになる。したがって、ベルト張力をほぼゼロとすることも可能になる。
【0072】
更に、使用張架位置で可変張架ロールの回転軸をコイルばねで付勢する状態(図8(b)の間隙d)を想定すると、この間隙dを10mmより狭くするようにコイルばねを選択することで、使用張架位置ではベルトを緊張させ、待機張架位置ではベルトを弛緩させた状態に容易に保つことができるようになる。
つまり、このように設定することで、待機張架位置でのベルトを弛ませ過ぎないようにすることができ、待機張架位置が長期に亘って保持されても、十分安定したベルト姿勢、ベルト張力が保たれるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】(a)は本発明を具現化する実施の形態モデルに係るベルト搬送装置の概要を示す説明図であり、(b)はその代表例を示す。
【図2】実施の形態1に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】実施の形態1の可変張架ロールの部位の断面図である。
【図5】実施の形態1の画像形成装置の斜視図である。
【図6】実施の形態1のベルトユニットを上方から見た図である。
【図7】(a)〜(d)は画像形成装置内にセットされる際のベルトユニットの変化の様子を示す説明図である。
【図8】ロール支持可変機構の変化の様子を示す説明図であり、(a)は待機張架位置、(c)は使用張架位置、(b)はその中間段階での様子を示す。
【図9】(a)〜(c)はベルトユニットの組立方法を示す説明図である。
【図10】(a)(b)は変形形態の第一態様を示す説明図である。
【図11】変形形態の第二態様を示す説明図である。
【図12】変形形態の第三態様を示す説明図である。
【図13】実施の形態2に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図14】実施の形態3に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図15】実施の形態3のベルトユニットの位置変更を示す説明図である。
【図16】実施の形態4に係る画像形成装置に用いられるベルトユニットの概要を示す説明図である。
【図17】実施例での各部位の寸法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1(1a,1b:可変張架ロール)…張架ロール,2…無端状ベルト,3…ロール支持可変機構,4…固定支持枠,5…揺動支持枠,6…像保持体,P1…使用張架位置,P2…待機張架位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト搬送装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子写真方式を採用した画像形成装置において、複数の張架ロールに張架されて循環する無端状ベルトを備えるベルト搬送装置が知られている。かかるベルト搬送装置では、無端状ベルトの蛇行を防止するなどのために、張架ロールを移動させる各種方式が提案されている。
【0003】
特許文献1では、ベルト張力を解除するため、スライド機構によって張力ロール(張架ロールの一つ)を内側方向に移動させるようにした方式が提案されている。また、特許文献2では、中間転写ベルト上の画像を記録材に転写する際に用いる転写ベルトに対して、駆動用の張架ロール以外の張架ロールの軸方向一端部側を揺動させることでベルトウォーク(蛇行)を低減する方式が提案されている。更に、特許文献3では、無端状ベルトが張架されている張架ロールを支持する両側のフレームのうち、一方のフレームの端部側を移動させて蛇行補正を行うようにした方式が提案されている。更にまた、特許文献4では、複数の張架ロールに張架された転写ベルトを感光体に接触させる際、一つの張架ロールを揺動部位にして転写ベルトを緊張させた状態で揺動させるようにした方式が提案されている。また、特許文献5では、ベルトの蛇行を防ぐため、張架ロールの両端を夫々移動できるようにした方式が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−109235号公報(実施の形態1、図1)
【特許文献2】特開2007−11107号公報(発明を実施するための最良の形態、図2)
【特許文献3】特開平5−193777号公報(実施例、図1)
【特許文献4】特開平6−35338号公報(実施例、図2)
【特許文献5】特開2001−80782号公報(実施の形態1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、画像形成装置に組み込まれる前のベルト搬送装置の状態で、長期に亘る保管を行っても、画像形成装置に組み込まれた際のベルト姿勢やベルト張力が安定するベルト搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、複数の張架ロールと、これらの張架ロールに掛け渡された無端状ベルトと、複数の張架ロールを支持し、複数の張架ロールのうち少なくとも一つを配設位置が変更可能な可変張架ロールとし、この可変張架ロールの配設位置を変更するロール支持可変機構とを備え、前記ロール支持可変機構は、無端状ベルトが使用時に必要な張力にて張架される使用張架位置と、無端状ベルトが使用張架位置に比べ低減された張力にて張架され且つ使用張架位置にある無端状ベルトの配設位置よりも外方で無端状ベルトの張力を弛緩させる方向に変位する待機張架位置との間で可変張架ロールの配設位置を変更するベルト搬送装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るベルト搬送装置において、前記ロール支持可変機構が、前記可変張架ロールが使用張架位置から待機張架位置に向かうように付勢する付勢部材を備えるベルト搬送装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係るベルト搬送装置のうち張架ロールが配設位置の固定される固定張架ロール及び配設位置の変更される可変張架ロールを有する態様において、前記ロール支持可変機構は、前記固定張架ロールが支持される固定支持枠と、この固定支持枠の固定張架ロールの支持部から離れた部位に揺動自在に支持され且つこの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて可変張架ロールを支持する揺動支持枠とを備えるベルト搬送装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係るベルト搬送装置のうち張架ロールが配設位置の変更される複数の可変張架ロールのみを有する態様において、前記ロール支持可変機構は、配設位置が固定される固定支持枠と、この固定支持枠の異なる部位にて夫々揺動自在に支持され且つこれらの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて夫々可変張架ロールを支持する複数の揺動支持枠とを備えるベルト搬送装置である。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項1又は2に係るベルト搬送装置において、前記ロール支持可変機構は、張架ロールが支持される支持枠と、この支持枠に設けられ且つ無端状ベルトが使用張架位置と待機張架位置との間で変位可能になるように可変張架ロールの回転軸を移動自在に案内する案内溝とを備えるベルト搬送装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに係るベルト搬送装置において、前記ロール支持可変機構が、前記可変張架ロールの両端部側に設けられるベルト搬送装置である。
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに係るベルト搬送装置において、無端状ベルトは、待機張架位置でのベルト軌跡長が使用張架位置での軌跡長よりも短くなるように張架ロールに張架されるベルト搬送装置である。
【0009】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれかに係るベルト搬送装置において、可変張架ロールは、弾性付勢部材にて弾性付勢されて無端状ベルトに張る方向の張力を付与する張力付与部材を兼ねるベルト搬送装置である。
請求項9に係る発明は、請求項8に係るベルト搬送装置のうち、ロール支持可変機構として可変張架ロールが揺動支持可能な揺動支持枠を備える態様において、可変張架ロールは、揺動支持枠に対して移動自在に支持されると共に前記弾性付勢部材にて弾性付勢されており、無端状ベルトが使用張架位置にある場合には前記弾性付勢部材の付勢力を最大に保ち、無端状ベルトが待機張架位置にある場合には前記弾性付勢部材の付勢力を制限するようにしたベルト搬送装置である。
請求項10に係る発明は、請求項9に係るベルト搬送装置において、前記揺動支持枠は、揺動支持部を有する枠本体と、この枠本体の揺動支持部と異なる部位に開設され且つ可変張架ロールの支持部がすべり移動可能な溝部とを有するものであり、揺動支持枠には、可変張架ロールの支持部が溝部に沿って移動するように弾性付勢する前記弾性付勢部材を設け、更に、無端状ベルトが待機張架位置にある場合に溝部に沿って移動する可変張架ロールの支持部の位置が規制される規制部材を設け、使用張架位置では可変張架ロールの支持部を前記規制部材に非接触配置させる一方、待機張架位置では可変張架ロールの支持部を前記規制部材に接触配置させるようにしたベルト搬送装置である。
請求項11に係る発明は、請求項1又は2に係るベルト搬送装置において、前記可変張架ロールが、無端状ベルトを駆動する駆動張架ロール以外の張架ロールであるベルト搬送装置である。
【0010】
請求項12に係る発明は、記録材に形成する画像が保持される一若しくは複数の像保持体と、像保持体からの画像を直接若しくは記録材を介して搬送する無端状ベルトを有し、無端状ベルトが全ての像保持体に接触配置するセット位置及び無端状ベルトが全ての像保持体から離間する非セット位置間で無端状ベルトが移動自在な請求項1乃至11のいずれかに記載のベルト搬送装置とを備え、ベルト搬送装置は、セット位置にて無端状ベルトが使用張架位置に配置され且つ非セット位置にて無端状ベルトが待機張架位置に配置されるロール支持可変機構を有し、セット位置にあるベルト搬送装置に対応した部位には、セット位置にて無端状ベルトが使用張架位置に位置するように前記ロール支持可変機構が動作させられて可変張架ロールの配設位置が拘束される位置拘束部材を設ける画像形成装置である。
請求項13に係る発明は、請求項12に係る画像形成装置において、ベルト搬送装置が使用張架位置に配置された際に前記可変張架ロールが一つの像保持体と無端状ベルトを挟んで対向配置される画像形成装置である。
請求項14に係る発明は、請求項13に係る画像形成装置において、前記可変張架ロールは、表面に半導電性弾性部材が被覆された導電体にて構成され、対向配置される像保持体上の画像を直接又は記録材を介して無端状ベルトに転写する転写ロールであることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、張架ロールの軸方向を変えずに相対移動させるだけで無端状ベルトの使用張架位置及び待機張架位置でのベルト張力を所望の値にすることができ、使用張架位置では緊張状態に保ち、待機張架位置では使用張架位置よりも弛緩状態に保つことができることから、待機張架位置での長期に亘る保管を行っても巻き癖などのない安定したベルト姿勢やベルト張力を確保することができるベルト搬送装置を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、使用張架位置にない場合には常に待機張架位置にするようにしたので、無端状ベルトへの負荷が軽減された状態を維持することができ、無端状ベルトの保管時の性能の長期安定化をもたらすことができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、簡単な構成で無端状ベルトを使用張架位置と待機張架位置との間で容易に変更できるようになる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、簡単な構成で無端状ベルトを使用張架位置と待機張架位置との間で容易に変更できるようになる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、簡単な構成で無端状ベルトを使用張架位置と待機張架位置との間で容易に変更できるようになる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、ロール支持可変機構を両側に設けることで、可変張架ロールの配設位置の変更が可変張架ロールの姿勢を一層安定した状態に保ってなされるようになる。
【0012】
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、待機張架位置での無端状ベルトの張力を使用張架位置よりも確実に低減することができる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、ベルト張力を安定させることができ、ベルトの搬送軌跡が一層安定したものとなる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、簡単な構成で使用張架位置と待機張架位置の変更ができるようになると共に使用張架位置でのベルト張力を一層安定化させることができる。
請求項10に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、簡単な構成でベルト張力の安定化を図ることができるようになる。
請求項11に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、駆動張架ロールを固定位置に配置することができるため、特にベルト搬送装置を組み込まれた際に他との駆動連結がやり易く、安定した駆動性能を確保し易くなる。
【0013】
請求項12に係る発明によれば、張架ロールの軸方向を変えずに相対移動させるだけで無端状ベルトの使用張架位置及び待機張架位置でのベルト張力を所望の値にすることができ、使用張架位置では緊張状態に保ち、待機張架位置では使用張架位置よりも弛緩状態に保つことができると共に、待機張架位置での長期に亘る保管を行っても巻き癖などのない安定したベルト姿勢やベルト張力を確保することができるベルト搬送装置を用いることができ、更に、ベルト搬送装置をセット位置に配置する際高い精度で行うことができるようになり、張架ロール自体への高い位置精度を不要にすることができるようになる。
請求項13に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、可変張架ロールを像保持体に対向配置させることで、ベルト搬送装置自体の占有領域を狭くすることができ、装置構成を小型化できる。
請求項14に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、可変張架ロールが転写ロールを兼用することで、小型且つ低コスト化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
◎実施の形態モデルの概要
先ず、本発明が適用される実施の形態モデルの概要について説明する。
図1(a)は本発明を具現化する実施の形態モデルに係るベルト搬送装置の概要を模式的に示したものである。同図において、本実施の形態モデルに係るベルト搬送装置は、複数の張架ロール1(1a,1b)と、これらの張架ロール1に掛け渡された無端状ベルト2と、複数の張架ロール1を支持し、複数の張架ロール1のうち少なくとも一つを配設位置が変更可能な可変張架ロール1bとし、この可変張架ロール1bの配設位置を変更するロール支持可変機構3とを備え、ロール支持可変機構3は、無端状ベルト2が使用時に必要な張力にて張架される使用張架位置P1と、無端状ベルト2が使用張架位置P1に比べ低減された張力にて張架され且つ使用張架位置P1にある無端状ベルト2の配設位置よりも外方で無端状ベルト2の張力を弛緩させる方向に変位する待機張架位置P2との間で可変張架ロール1bの配設位置を変更するようにしたものとなっている。
【0015】
ここで、張架ロール1(1a,1b)は本例では二個用いるものを示したが、その数量は特に限定せられず、複数備えるものであればよい。また、ここでは、分かり易くするため、可変張架ロール1bとして張架ロール1a以外のものを示したが、可変張架ロール1bの数量も特に限定せられず、幾つあっても差し支えない。
更に、無端状ベルト2の待機張架位置P2とは無端状ベルト2が使用張架位置P1でのベルト張力より低減され且つ張架された状態の位置を示すものであり、一つの位置に限られない。尚、変更される配設位置としては、使用張架位置P1及び待機張架位置P2の他、例えば無端状ベルト2の交換を行う際の第三の位置を設けるようにしてもよい。
そして、無端状ベルト2への負荷を軽減する観点から、ロール支持可変機構3は、可変張架ロール1bが使用張架位置P1から待機張架位置P2に向かうように付勢する付勢部材を備えることが好ましい。
【0016】
また、ベルト搬送装置のうち張架ロール1が配設位置の固定される固定張架ロール(本例では1a)及び配設位置の変更される可変張架ロール1bを有する態様において、簡単な構成で無端状ベルト2の位置変更を行う観点からすれば、図1(b)に示すように、ロール支持可変機構3は、固定張架ロール1aが支持される固定支持枠4と、この固定支持枠4の固定張架ロール1aの支持部から離れた部位に揺動自在に支持され且つこの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて可変張架ロール1bを支持する揺動支持枠5とを備えるようにすることが好ましい。
ここで、可変張架ロール1bが支持される支持部と揺動支持部との間隔は一定に保たれるようになっていてもよいし、変化するようになっていてもよい。そして、このように揺動回転させる方式は、例えばばね等を用いて一方に付勢して行うようにしてもよいし、手動で回転させるようにしてもよいが、使用張架位置P1にある無端状ベルト2が使用状態から解放された場合に自動的に待機張架位置P2に移動できるようになっている方が好適である。
【0017】
更に、ベルト搬送装置のうち張架ロール1が配設位置の変更される複数の可変張架ロール1bのみを有する態様において、簡単な構成で無端状ベルト2の位置変更を行う観点からすれば、ロール支持可変機構3は、配設位置が固定される固定支持枠4と、この固定支持枠4の異なる部位にて夫々揺動自在に支持され且つこれらの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて夫々可変張架ロール1bを支持する複数の揺動支持枠5とを備えるようにすることが好ましい。
【0018】
更にまた、簡単な構成で無端状ベルト2の位置変更を行う観点からすれば、次のようにしてもよい。すなわち、ロール支持可変機構3は、張架ロール1が支持される支持枠と、この支持枠に設けられ且つ無端状ベルト2が使用張架位置P1と待機張架位置P2との間で変位可能になるように可変張架ロール1bの回転軸を移動自在に案内する案内溝とを備えることが好ましい。
【0019】
また、上述した態様において、ロール支持可変機構3を可変張架ロール1bの両端部側に設けることが好ましい。このように可変張架ロール1bの両端部側に揺動支持枠5や案内溝を設けることで、可変張架ロール1bの配設位置を変更する際、可変張架ロール1bの姿勢を安定した状態に保って行うことができるようになる。
【0020】
更に、無端状ベルト2の安定した姿勢を維持する観点から、無端状ベルト2は、待機張架位置P2でのベルト軌跡長が使用張架位置P1での軌跡長よりも短くなるように張架ロール1に張架されることが好ましい。ここで、無端状ベルト2は使用張架位置P1から待機張架位置P2に移動すると、ベルト軌跡長が短くなり弛緩された状態となるが、このとき、無端状ベルト2の張力はゼロに近い値で張架される方がよい。これにより、使用張架位置P1と待機張架位置P2との間で無端状ベルト2の配置変更がなされても、無端状ベルト2が張架ロール1に対し容易にずれない程度の張力が付与され、安定した配置変更がなされるようになる。
【0021】
そして、無端状ベルト2の搬送軌跡を安定化させる観点からすれば、可変張架ロール1bは、弾性付勢部材にて弾性付勢されて無端状ベルト2に張る方向の張力を付与する張力付与部材を兼ねることが好ましい。
また、可変張架ロール1bが張力付与部材を兼ね、更に、揺動支持枠5を備える態様において使用張架位置P1と待機張架位置P2との間で可変張架ロール1bの配設位置を変更するための簡単な構成を採用する観点からすれば、可変張架ロール1bは、揺動支持枠5に対して移動自在に支持されると共に弾性付勢部材にて弾性付勢されており、無端状ベルト2が使用張架位置P1にある場合には弾性付勢部材の付勢力を最大に保ち、無端状ベルト2が待機張架位置P2にある場合には弾性付勢部材の付勢力を制限するようにすることが好ましい。これによれば、使用張架位置P1での無端状ベルト2のベルト張力を確保しながら、待機張架位置P2でのベルト張力の低減が可能になる。
【0022】
ここで、弾性付勢部材による可変張架ロール1bへの付勢力の方向は、揺動支持部からの距離が変更できる方向になっていればよく、必ずしも揺動支持部から放射状になる方向に限られないが、可変張架ロール1bを安定して弾性付勢することからは放射状になる方向が好ましい。そして、このような付勢機構の代表的態様としては、次のようにすればよい。すなわち、揺動支持枠5は、揺動支持部を有する枠本体と、この枠本体の揺動支持部と異なる部位に開設され且つ可変張架ロール1bの支持部がすべり移動可能な溝部とを有するものであり、揺動支持枠5には、可変張架ロール1bの支持部が溝部に沿って移動するように弾性付勢する前記弾性付勢部材を設け、更に、無端状ベルト2が待機張架位置P2にある場合に溝部に沿って移動する可変張架ロール1bの支持部の位置が規制される規制部材を設け、使用張架位置P1では可変張架ロール1bの支持部を前記規制部材に非接触配置させる一方、待機張架位置P2では可変張架ロール1bの支持部を前記規制部材に接触配置させるようにすればよい。尚、規制部材は枠本体に一体的に構成されていてもよいし、別体であっても差し支えない。また、弾性付勢部材は支持部を付勢するように溝部に対して設けられればよく、溝部の中に弾性付勢部材全体を設けるようにしてもよいし、溝部に一部が設けられるようにしても差し支えない。
【0023】
そして、本実施の形態モデルでの可変張架ロール1bとしては、無端状ベルト2を駆動する駆動張架ロール以外の張架ロール1とすることが好ましく、この場合、駆動張架ロールを固定位置に配置することができるようになり、特に、ベルト搬送装置を画像形成装置等の装置に組み込んだ際にも他との駆動連結がやり易く、無端状ベルト2の安定した駆動がなされるようになる。尚、ここで、画像形成装置等の装置としては、ベルト搬送装置が適用される装置であればよく、画像形成装置や、記録材を搬送する処理装置や、その他の処理装置をも含む。
【0024】
また、このようなベルト搬送装置を画像形成装置に用いることも容易であり、次のようにすればよい。すなわち、図1(a)に示すように、記録材に形成する画像が保持される一若しくは複数の像保持体6と、像保持体6からの画像を直接若しくは記録材を介して搬送する無端状ベルト2を有し、無端状ベルト2が全ての像保持体6に接触配置するセット位置及び無端状ベルト2が全ての像保持体6から離間する非セット位置間で無端状ベルト2が移動自在な上述の搬送装置とを備え、ベルト搬送装置は、セット位置にて無端状ベルト2が使用張架位置P1に配置され且つ非セット位置にて無端状ベルト2が待機張架位置P2に配置されるロール支持可変機構3を有し、セット位置にあるベルト搬送装置に対応した部位には、セット位置にて無端状ベルト2が使用張架位置P1に位置するようにロール支持可変機構3が動作させられて可変張架ロール1bの配設位置が拘束される位置拘束部材を設けるようにすることが好ましい。
【0025】
ここで、ベルト搬送装置がセット位置に配置されるとは、像保持体6による画像形成がなされているか否かに拘わらず、画像形成が可能な状態に保持されている状態にあることを意味し、また、非セット位置とは、例えば画像形成装置の扉が開放され、画像形成ができない状態にあることを意味する。
更に、像保持体6としてはロール状、ベルト状を問わず、またその数量も特に限定せられないが、カラー画像を形成するには像保持体6を四つ備える態様が好適である。更に、無端状ベルト2としては、像保持体6上の画像を直接又は記録材を介して保持搬送するものであればよく、中間転写ベルトの態様や記録材搬送ベルトの態様が挙げられる。更にまた、位置拘束部材は可変張架ロール1bの位置が拘束できればいずれに設けられてもよく、画像形成装置の筐体側に設けるようにしてもよいし、例えばプロセスカートリッジや像保持体6に対応して設けるようにしてもよい。
【0026】
また、ベルト搬送装置を小型化する観点からすれば、ベルト搬送装置が使用張架位置P1に配置された際に可変張架ロール1bが一つの像保持体6と無端状ベルト2を挟んで対向配置されることが好ましい。このように可変張架ロール1bを像保持体6に対向配置させることで、ベルト搬送装置自体の占有領域を狭くすることができ、画像形成装置の小型化も推進されるようになる。更に、このような可変張架ロール1bとして、表面に半導電性弾性部材が被覆された導電体にて構成し、対向配置される像保持体6上の画像を直接又は記録材を介して無端状ベルト2に転写する転写ロールとすることが好ましい。
【0027】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は上述した実施の形態モデルのベルト搬送装置(以降ベルトユニットと称す)が適用された実施の形態1の画像形成装置の概要を示すものである。
同図において、画像形成装置は、画像形成装置筐体10内に略垂直方向に沿って四色(例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の各色プロセスカートリッジ20(20a〜20d)を並べ、これらの各色プロセスカートリッジ20に対向するように、縦方向に沿ったセット位置にベルトユニット30がセットされた状態となっている。
【0028】
各色プロセスカートリッジ20は、画像形成装置筐体10に対し、着脱できるように構成されており、夫々のプロセスカートリッジ20は使用するトナーを除けば略同一構成となっているため、ここでは一つのプロセスカートリッジ20について説明する。
本実施の形態のプロセスカートリッジ20は、トナー像を保持する像保持体としての感光体21と、感光体21を帯電する帯電ロール22と、帯電ロール22によって帯電された感光体21が露光されて潜像が形成され、この形成された潜像をトナーにて現像して可視像化する現像器24と、感光体21上のトナーを清掃する図示外のクリーナ等で構成されている。そのため、プロセスカートリッジ20の奥側でベルトユニット30の反対側には、帯電された感光体21上に潜像を形成する露光器としてのレーザ走査装置23が設けられ、夫々の感光体21に対し、一つのレーザ走査装置23からの四方向の光走査を行うことで、夫々の感光体21に色毎の潜像を形成できるようになっている。尚、本実施の形態では、感光体21上のトナー像を転写する転写ロール25が画像形成装置筐体10に着脱可能なベルトユニット30側に設けられている。
【0029】
ベルトユニット30は、セット位置では上下方向に配置される二つの張架ロール32,33と、これらの張架ロール32,33に張架されて循環する無端状ベルトとしての記録材搬送ベルト31と、下方の張架ロール33に記録材搬送ベルト31を挟んで対向する位置に設けられ、記録材に対し記録材搬送ベルト31への吸着を促す方向の電界を作用させる帯電部材34等で構成されている。そして、本実施の形態では、上方の張架ロール32を駆動ロールとし、下方の張架ロール33が従動回転されると共にその配設位置が変更される可変張架ロールとなっており、二つの張架ロール32,33に掛け渡された記録材搬送ベルト31が使用張架位置になっている。尚、後述するように、ベルトユニット30がセット位置から解放された状態の非セット位置では、可変張架ロール33の移動によって記録材搬送ベルト31が待機張架位置に至るようになっている。
【0030】
次に、本実施の形態における画像形成装置での記録材搬送系について説明する。
記録材は、画像形成装置筐体10内の下部側に設けられた記録材供給部11から、供給ロール12によって供給され、捌き機構13によって捌かれた一枚の記録材が下流側に搬送されるようになる。下流側に搬送された記録材は、レジストロール14によって位置決めされた後、所定のタイミングで下流側に搬送され、帯電部材34によって記録材搬送ベルト31への吸引力が付与されて記録材搬送ベルト31に吸着保持される。吸着保持された記録材は記録材搬送ベルト31の回転に伴ってそのまま移動する。
【0031】
記録材搬送ベルト31上に保持された記録材は各色のプロセスカートリッジ20との対向部位を通過する際、夫々の感光体21と転写ロール25との間に加えられた転写電界によって夫々の感光体21上のトナー像が記録材上に順次転写され、最下流側のプロセスカートリッジ20aを通過した後には、記録材上に各色のプロセスカートリッジ20にて多重化されたトナー像が転写されるようになる。
【0032】
多重化されたトナー像が転写された記録材は、駆動ロール32の近傍に配置される図示外の剥離部材によって記録材搬送ベルト31から剥離された後、ベルトユニット30より下流側に設けられた定着器15に導かれる。多重化されたトナーが定着器15によって定着された記録材は、排出ロール16によって画像形成装置筐体10の上部筐体に形成された記録材収容部17に排出収容されるようになる。
【0033】
次に、本実施の形態のベルトユニット30のロール支持可変機構40について説明する。本実施の形態のロール支持可変機構40は、図3に示すように、駆動ロール32の軸方向両端部に、駆動ロール32及び転写ロール25を支持する対構成の固定支持枠41を設け、この固定支持枠41の可変張架ロール33寄りには固定支持枠41に対し揺動支持部を構成する揺動回転軸42を回転可能に設けている。また、固定支持枠41に対しては、揺動回転軸42を支持すると共に可変張架ロール33の支持部を構成する回転軸33aを移動自在に支持する揺動支持枠としての揺動アーム50を揺動可能に設けている。
【0034】
そして、揺動回転軸42はベアリング43を介して固定支持枠41に取り付けられ、固定支持枠41に対して回転が自在になっている。また、固定支持枠41の揺動回転軸42寄りには、固定支持枠41から突出して設けられて後述するたわみコイルばね44の一端が係止される係止部45と、揺動アーム50の揺動範囲を規制するストッパ46が設けられている。
【0035】
一方、揺動アーム50には、揺動回転軸42と可変張架ロール33の回転軸33aの軸中心を結ぶ方向(揺動支持部から放射状に延びる方向)に沿って貫通した溝部51が、可変張架ロール33の回転軸33aに対応して開設されており、この溝部51の揺動回転軸42から離れた側は閉塞された状態となっている。つまり、本実施の形態では、揺動アーム50に設けられた溝部51は、可変張架ロール33の支持部がすべり移動可能な部位と、待機張架位置での可変張架ロール33の支持部を規制する規制部材とが一体に構成されたものとなっており、溝部51の一端側51aが規制部材を構成するものとなっている。そして、この溝部51に可変張架ロール33を外方に向けて押しやる方向の圧力を付与するコイルばね52を設けるようにしたもので、このコイルばね52によって可変張架ロール33の回転軸33aを支持するベアリング53が弾性付勢されている。このベアリング53は、溝部51内をすべり移動できるようになっているため、コイルばね52によって可変張架ロール33自体が常に記録材搬送ベルト31を張る方向の付勢力を持ったものとなり、所謂テンションロールとして作用するようになる。尚、ここでは溝部と規制部材とが一体となった溝部51を用いたが、規制部材を別体のもので構成するようにしても差し支えない。
【0036】
更に、揺動アーム50には、固定支持枠41に設けられたものと同様の係止部54が設けられており、揺動回転軸42のベアリング43の周囲に装着されたたわみコイルばね44の端部を夫々固定支持枠41の係止部45と揺動アーム50の係止部54とで係止するようになっている。そして、本実施の形態では、たわみコイルばね44によって、使用張架位置にある揺動アーム50に対し、プロセスカートリッジ20側へ揺動回転する方向の力が常に作用するようになっている。
【0037】
また、本実施の形態では、ベルトユニット30がセット位置にセットされ、記録材搬送ベルト31を使用張架位置に安定して配置するために、次のような位置決め機構が用いられている。
つまり、図中最下方にある最上流側のプロセスカートリッジ20dより下方位置には、ベルトユニット30側の可変張架ロール33に対応する位置に、可変張架ロール33の配設位置を拘束する位置拘束部材61が設けられている。一方、この位置拘束部材61に対応するように、ベルトユニット30側では、可変張架ロール33の回転軸33aの両端部側に対構成の位置決め部材60が取り付けられている。そのため、ベルトユニット30がセット位置にある場合、たわみコイルばね44の付勢力によって、揺動アーム50はプロセスカートリッジ20側に揺動する方向の力を受け、ベルトユニット30がプロセスカートリッジ20から離間する方向に働くが、ベルトユニット30がセット位置にセットされる状態では位置決め部材60がたわみコイルばね44の付勢力に抗して位置拘束部材61側に向かって常に付勢されるようになり、安定した位置決めが確保されるようになっている。尚、位置拘束部材61は直接画像形成装置筐体10に設けるようにしてもよいし、プロセスカートリッジ20や感光体21に対応する位置に設けるようにしても差し支えない。
一方、駆動ロール32の回転軸32aは、位置拘束部材62によって位置決めされることから、ベルトユニット30全体に対し安定した位置決めがなされ、記録材搬送ベルト31の安定した循環軌跡が確保されるようになる。
【0038】
図4は、セット位置にあるベルトユニット30を横から見たときの断面を示すものである。本実施の形態では、このように、揺動アーム50より外側に位置決め部材60を設け、この位置決め部材60を位置拘束部材61にて拘束することでベルトユニット30のセット位置への位置決めが容易になされるようになる。尚、揺動アーム50や位置決め部材60の可変張架ロール33の回転軸33aに対する実装は、回転軸33aに揺動アーム50や位置決め部材60を挿入した後に夫々例えばEリングにて係止することでなされる。尚、図中符号33bは可変張架ロール33の両端部を塞ぐ側板である。
【0039】
このような画像形成装置にあって、本実施の形態では、図5に示すように、画像形成装置が上下方向に回転するように開閉される開閉扉10’を備えている。図5は、画像形成装置の開閉扉10’が開放された状態を示す斜視図であり、ベルトユニット30が非セット位置、つまり、記録材搬送ベルト31が待機張架位置にあるものを示している。そのため、図中矢印方向に開閉扉10’を回転させて閉塞することで、ベルトユニット30は非セット位置からセット位置にその状態が変更されるようになる。つまり、記録材搬送ベルト31は待機張架位置から使用張架位置にその状態が変更されるようになる。
【0040】
本実施の形態では、開閉扉10’側にベルトユニット30の他、定着器15や排出ロール16の一方を組み込むようにしているが、開閉扉10’にベルトユニット30を装着できるようになっていればよく、例えば定着器15や排出ロール16が開閉扉10’以外に設けられるようになっていても差し支えない。また、開閉扉10’の開閉方向はこれに限られず、画像形成装置の略水平方向に回転させるようにして開閉する方式を採用するようにしても差し支えない。尚、図5ではベルトユニット30側の帯電部材34は省略している。
【0041】
また、図6は、非セット位置にあるベルトユニット30を上方から見た図であり、記録材搬送ベルト31の裏面側には、駆動ロール32と可変張架ロール33の他に四本の転写ロール25が設けられ、可変張架ロール33に対向する位置には帯電部材34が取り付けられている。尚、図中符号35は駆動ロール32に駆動伝達を行うための駆動伝達ギアである。
【0042】
次に、本実施の形態におけるロール支持可変機構40の作動について説明する。
先ず、開放状態にある画像形成装置の開閉扉10’(図5参照)を閉塞させたときのベルトユニット30の変化について、図7(a)〜(d)を用いて説明する。開閉扉10’が開放された状態でベルトユニット30が開閉扉10’の所定位置に装着されると、(a)に示すように、ベルトユニット30は非セット位置になった状態を保つようになる。この状態でのベルト軌跡長を記録材搬送ベルト31の自由長より長くすることで、待機張架位置での記録材搬送ベルト31に対し若干の張力を作用させることができ、待機張架位置でのベルト姿勢を安定させることができるようになる。また、このときのベルト張力を小さくできることから、仮に、待機張架位置で長期に亘って保持したとしても記録材搬送ベルト31に対する巻き癖などを発生させる虞もない。
【0043】
開閉扉10’が閉塞されるに連れてベルトユニット30は矢印方向に回転し、(b)に示すように、可変張架ロール33側に設けられた位置決め部材60が画像形成装置筐体10(図5参照)側に設けられた位置拘束部材61に突き当たる。揺動アーム50が押されて回転するようになる。更に、開閉扉10’の閉塞動作が続くと、(c)に示すように、揺動アーム50が押されて徐々に回転し、この揺動アーム50の回転に連れて記録材搬送ベルト31が徐々に張られるようになる。このとき、位置決め部材60と位置拘束部材61との間では、互いの接触位置がすべり移動を生じるために、揺動アーム50の回転は支障なくなされるようになる。そして、開閉扉10’の閉塞が完了すると、ベルトユニット30は(d)のようにセット位置にセットされるようになる。このセット位置では、固定支持枠41と揺動アーム50とが略一直線上に配列されることから、記録材搬送ベルト31は最大に張られた状態となり、可変張架ロール33は張架付与ロール(所謂テンションロール)として機能するようになる。
【0044】
このような作動において、ロール支持可変機構40のうち、特に揺動アーム50での動きについて図8(a)〜(c)を用いて詳述する。ここで、(a)は非セット位置にあるベルトユニット30、(c)はセット位置にあるベルトユニット30、(b)は非セット位置からセット位置に至る途中段階のベルトユニット30を示すものとなっている。
非セット位置では、(a)に示すように、たわみコイルばね44の復旧力によって揺動アーム50が揺動回転軸42を中心に回転し、揺動アーム50がストッパ46に接触して拘束されることで、揺動アーム50と固定支持枠41とは所定の角度で傾斜配置した状態で停止するようになる。このとき、揺動アーム50の溝部51では、コイルばね52によって付勢されたベアリング53の端部が溝部51の内壁に接触するようになっている。つまり、非セット位置では記録材搬送ベルト31が待機張架位置にあり、記録材搬送ベルト31の軌跡長が短くなる分、コイルばね52の付勢力が勝り、可変張架ロール33の位置は溝部51の内壁によって規制された位置となる。このとき、駆動ロール32と可変張架ロール33の軸間距離L2は、固定支持枠41と揺動アーム50とのなす角及び溝部51の寸法によって決定された長さとなる。
【0045】
次に、(b)に示すように、揺動アーム50が回転し、固定支持枠41との間の角度が小さくなると、駆動ロール32と可変張架ロール33との軸間距離L2’は徐々に大きくなって行き、記録材搬送ベルト31の軌跡長も長くなる。そのため、記録材搬送ベルト31によって可変張架ロール33は駆動ロール32側へ引っ張られる力を受け、この力がコイルばね52の付勢力より勝るようになると、ベアリング53が溝部51内壁から離間するようになり、ベアリング53の端部と溝部51の内壁との間に間隙d’が発生するようになる。
【0046】
更に、揺動アーム50が回転して記録材搬送ベルト31が使用張架位置に至ると、(c)に示すように、駆動ロール32と可変張架ロール33との軸間距離L1は最大になり、記録材搬送ベルト31が最大に張られた状態となる。このとき、記録材搬送ベルト31によって可変張架ロール33は駆動ロール32側へ最大に引っ張られ、その分、ベアリング53と溝部51の内壁との間隙dも最大となる。
つまり、このようなベルト張力の変化は、使用張架位置での駆動ロール32と可変張架ロール33との軸間距離L1と、待機張架位置での軸間距離L2との関係が(L1>L2+d)の関係を満たすように設定されることでなされる。
【0047】
次に、このようなベルトユニット30を組み立てる組立方法について図9を用いて説明する。尚、ここでは、説明を分かり易くするため、転写ロール25等は省略し、揺動アーム50の詳細も省略している。
先ず、図9(a)に示すように、固定支持枠41に駆動ロール32を連結し、可変張架ロール33は別体として記録材搬送ベルト31の内側に駆動ロール32及び可変張架ロール33を収める。このとき、駆動ロール32と可変張架ロール33との間隔は小さくできることから、記録材搬送ベルト31の自由長により、記録材搬送ベルト31の内側に駆動ロール32及び可変張架ロール33を容易に収めることができる。
次に、図9(b)に示すように、可変張架ロール33が駆動ロール32に対し待機張架位置になる位置に可変張架ロール33を例えば治具等で仮固定し、固定支持枠41に設けられた揺動回転軸42と可変張架ロール33の回転軸33aに揺動アーム50の対応部位を位置合わせしながら揺動アーム50を取り付ける。そして、揺動回転軸42及び可変張架ロール33の回転軸33aに対し例えばEリングを用いて揺動アーム50を係止する。このとき、記録材搬送ベルト31は、わずかに緊張されているため、可変張架ロール33を待機張架位置に維持することにそれほどの困難さは伴わないため、揺動アーム50の取り付けは容易になされる。
更に、図9(c)に示すように、可変張架ロール33の回転軸33aに対して位置決め部材60を取り付け、例えばEリングを用いて係止する。その後、図示外のたわみコイルばね44(図3参照)を取り付ける。そして、図示外の帯電部材34(図6参照)を取り付けることで、ベルトユニット30が完成する。
【0048】
本実施の形態では、可変張架ロール33の回転軸33aに対し、内側より揺動アーム50、位置決め部材60の順番に取り付けるようにしたが、例えば位置決め部材60を先に取り付け、その外側に揺動アーム50を取り付けるようにしても差し支えない。尚、いずれにあっても、位置決め部材60に対応した位置に位置拘束部材61が設けられていることは云うまでもない。
【0049】
本実施の形態では、このようなロール支持可変機構40となっているため、ベルトユニット30単独の状態では非セット位置に維持され、ベルト張力が使用張架位置に比べ弛緩された状態の待機張架位置に保たれ、例えば保管時の記録材搬送ベルト31への巻き癖などが発生することを防ぎ、安定したベルト姿勢やベルト張力を確保することが可能になる。また、ベルトユニット30がプロセスカートリッジ20に対しセットされるセット位置に至ると、可変張架ロール33は位置拘束部材61によって位置決めされるようになり、可変張架ロール33の位置精度がこの位置決めによって容易になされることから可変張架ロール33自体の位置精度を不要に高める必要もない。
また、駆動ロール32を固定位置に配置することができるため、特にベルトユニット30を画像形成装置筐体10内に装着した際にも例えば駆動伝達ギア35(図6参照)と他部材との駆動連結がやり易く、安定した駆動を確保し易くなる。
【0050】
そして、本実施の形態では、プロセスカートリッジ20を縦方向に配置する例を示したが、横方向に配置するようにしてもよく、また、プロセスカートリッジ20の数量も四つより多くてもよいし、少なくてもよい。例えば、プロセスカートリッジ20を一つとしたモノクロ用画像形成装置に適用するようにしても差し支えない。
また、本実施の形態では、ベルトユニット30の張架ロールとして駆動ロール32と可変張架ロール33を備えるものを示したが、張架ロールの数量はこれに限られず、三個以上備えるものであっても差し支えない。
更に、位置決め部材60を可変張架ロール33より大きい径のもので示したが、例えば小さな径のものでもよく、その場合、対応する位置拘束部材61の大きさや配設位置を位置決め部材60に合わせるようにすればよい。
更にまた、位置決め部材60を用いる代わりに、例えば揺動アーム50の一部を位置決めに用いるようにしてもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、上述のロール支持可変機構40を用いる態様を示したが、次のような変形形態で行うことも可能である。
図10(a)(b)は、変形形態の第一態様を示すもので、揺動アーム50にはコイルばねを使用していないものとなっている。また、(a)では、揺動回転軸42を記録材搬送ベルト31で囲まれた領域内に設けているのに対し、(b)では揺動回転軸42を記録材搬送ベルト31で囲まれた領域外に設けている。つまり、(b)では固定支持枠(図示せず)が(a)に比べ大きなものとなる。
【0052】
そのため、使用張架位置(図中実線で示す)と待機張架位置(図中二点鎖線で示す)との間では、可変張架ロール33が揺動回転軸42を中心に回転してその位置を変更するようになるが、使用張架位置での軸間距離L1の方が待機張架位置での軸間距離L2より長くなっているため、使用張架位置では記録材搬送ベルト31が緊張され、待機張架位置では弛緩されるように設定できる。尚、(b)では待機張架位置では駆動ロール32及び可変張架ロール33の夫々の回転軸と揺動回転軸42の軸中心が一直線上に並ぶように配置したが、揺動アーム50を更に図の上方に回転させるようにしてもよく、あくまでも、軸間距離L2が軸間距離L1より小さくなっている範囲内でその位置を適宜選定するようにすればよいことは云うまでもない。尚、この場合、可変張架ロール33の配設位置を変更する過程で記録材搬送ベルト31が弛んでも位置ずれを起こさない程度の弛みに抑えられる範囲で移動するようになっていることは云うまでもない。
そして、ベルトユニット30の小型化を図る観点からすれば、揺動回転軸42を(a)のように記録材搬送ベルト31で囲まれた領域に設ける方がよい。
また、このようにコイルばねを用いない場合には、使用張架位置での記録材搬送ベルト31の張力を保ち、また、記録材搬送ベルト31の搬送軌跡を安定化させるように、テンションロールを固定支持枠41側に設けることが好ましい。
【0053】
また、図11は、変形形態の第二態様を示すもので、図10(b)の揺動アーム50に対しコイルばね52を備え、可変張架ロール33に付勢力を付与するようにしたものとなっている。本態様は、揺動回転軸42を記録材搬送ベルト31で囲まれる領域外に設けたもので、使用張架位置(図中実線で示す)では、揺動アーム50の溝部51の揺動回転軸42寄りの内壁と可変張架ロール33の回転軸33aに対応したベアリング53との間に間隙dが形成されるようになっている。つまり、この態様では、溝部51の揺動回転軸42寄りの一端側51aが規制部材となっている。
このようにしても、使用張架位置と待機張架位置(図中二点鎖線で示す)との間で記録材搬送ベルト31の張力を変化させることができるようになり、また、可変張架ロール33をテンションロールとして機能させることも可能になる。
【0054】
更に、図12は、変形形態の第三態様を示すもので、上述のものとは異なり、使用張架位置と待機張架位置との間で、可変張架ロール33のみならず、駆動ロール32の配設位置をも変更させるようにしたものである。そのため、揺動回転軸42を、可変張架ロール33に対応するものと駆動ロール32に対応するものとの二箇所に設け、二つの揺動アーム50を共に図の上方に移動させることで、使用張架位置(図中実線で示す)と待機張架位置(図中二点鎖線で示す)との間で可変張架ロール33及び駆動ロール32の配設位置を変更するようにしたものとなっている。このようにしても、記録材搬送ベルト31のベルト張力を使用張架位置では緊張させ、待機張架では弛緩させることができるようになる。
尚、ここでは、揺動回転軸42が記録材搬送ベルト31の幅方向の外方に設けられ、記録材搬送ベルト31の移動を損ねないようになっていることは云うまでもないが、例えば揺動アーム50の回転量を少なくし、待機張架位置においても揺動回転軸42が記録材搬送ベルト31で囲まれる領域内に設けるようにすれば、揺動回転軸42を記録材搬送ベルト31の幅方向に対して張り渡すことが可能となる。更に、固定支持枠41に張架ロールを設けるようにしても、上記と同様に、記録材搬送ベルト31を使用張架位置及び待機張架位置の間で変更することもできることは云うまでもない。
【0055】
また、この態様において、二つの揺動アーム50夫々に、例えば図3で示すコイルばね52を設けるようにすることも可能であり、この場合、使用張架位置での記録材搬送ベルト31の張力を一層安定させることができるようになる。
【0056】
◎実施の形態2
図13は、実施の形態2に係る画像形成装置の概略を示すものである。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1と略同様に構成されているが、ベルトユニット30の位置決め機構が実施の形態1のものと異なる。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0057】
本実施の形態のベルトユニット30は、実施の形態1(図3参照)より自由長が短い記録材搬送ベルト31を用いたものとなっている。すなわち、最上流側のプロセスカートリッジ20dの感光体21に対応する転写ロール25の代わりに可変張架ロール33を兼用するようになっている。そのため、可変張架ロール33の回転軸33aには、位置決め部材60が設けられる一方、最上流側のプロセスカートリッジ20d側には、感光体21の回転軸に対応して位置拘束部材63が設けられている。尚、本実施の形態では、記録材搬送ベルト31に記録材を吸引させるための帯電部材34(図2参照)は省かれている。
そして、本実施の形態では、プロセスカートリッジ20dの感光体21と可変張架ロール33との間には、使用張架位置にて所定の転写電界が作用するようになっている。
【0058】
本実施の形態では、非セット位置にあるベルトユニット30がセット位置にセットされると、可変張架ロール33の回転軸33aに設けた位置決め部材60が、対応する感光体21の位置拘束部材63によって位置決め拘束され、感光体21と可変張架ロール33とが所定の位置にて対向するようになる。
そのため、図示外の記録材供給部から供給された記録材は、図示外のレジストロールによって位置決め規制された後、感光体21と可変張架ロール33との対向部位にて記録材搬送ベルト31上に搬送される。そこで、所定のタイミングで感光体21上のトナー像が記録材上の所定位置に転写されるようになる。このとき、可変張架ロール33と感光体21との間に作用する転写電界によって、記録材は記録材搬送ベルト31側に吸引されるようになり、記録材搬送ベルト31の循環に伴って記録材が搬送されるようになる。その後、記録材搬送ベルト31にて搬送が継続された記録材上には、順次各色のトナー像が多重化されるようになる。
【0059】
このように、本実施の形態では、最下流側のプロセスカートリッジ20dに対応して可変張架ロール33を配置するようにしたので、ベルトユニット30自体の長さ(図中上下方向の長さ)を短くすることで占有領域を狭く設定することができ、より小型化された画像形成装置を提供できるようになる。
尚、本実施の形態では、記録材搬送ベルト31が待機張架位置から使用張架位置に移行する際、位置拘束部材63に位置決め部材60が接触した状態で行われるため、例えば少なくとも一方は、回転軸に対し空回りすることで、両者間での摩擦抵抗が小さくなるようになっている。
【0060】
◎実施の形態3
図14は、実施の形態3の画像形成装置の概要を示すものである。本実施の形態の画像形成装置は、これまでの実施の形態1,2と異なり、ベルトユニット300の無端状ベルトが記録材搬送ベルト31ではなく、トナー像を一時的に保持搬送する中間転写ベルト301となっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0061】
同図において、本実施の形態のベルトユニット300は、最下方に位置する張架ロールを駆動ロール302とし、最上方に位置する張架ロールを可変張架ロール303としている。また、中間転写ベルト301を張架する張架ロールとしては、駆動ロール302、可変張架ロール303の他に、もう一つの張架ロール304を設けている。そして、この張架ロール304と中間転写ベルト301を挟んで対向する位置には、中間転写ベルト301上のトナー像を記録材上に一括転写するための二次転写器19が張架ロール304をバックアップロールとして設けられ、二次転写器19と張架ロール304との間には、中間転写ベルト301上のトナー像を記録材上に一括転写させる転写電界が作用するようになっている。
【0062】
そして、中間転写ベルト301上には、各色のプロセスカートリッジ20によって各色トナー像が多重化されるようになる。
一方、本実施の形態での記録材搬送系は、次のようになっている。すなわち、記録材供給部11から供給ロール12や捌き機構13によって送り出された一枚の記録材は、搬送ロール18によって搬送された後、レジストロール14によって位置決めされ、所定のタイミングで下流側に搬送される。その後、レジストロール14の下流側に設けられた二次転写部位(二次転写器19と張架ロール304との対向部位)にて中間転写ベルト301上のトナー像が一括転写される。トナー像が一括転写された記録材は、定着器15によって定着された後、排出ロール16から記録材収容部17に排出収容されるようになる。
【0063】
このような実施の形態にあって、ベルトユニット300がセット位置と非セット位置との間で位置が変更される際の中間転写ベルト301の使用張架位置及び待機張架位置間での変更状態について説明する。
図15は、本実施の形態におけるベルトユニット300のセット位置(中間転写ベルト301が使用張架位置にある状態:図中実線で示す)及び非セット位置(中間転写ベルト301が待機張架位置にある状態:図中二点鎖線で示す)での様子を示すものであり、両位置の間では揺動アーム50が揺動回転軸42を中心に回転するため、結果的に可変張架ロール303が移動するようになっている。尚、揺動アーム50の構成は実施の形態1と同様の構成のため、ここでは、溝部51やコイルばね52等(図3参照)の詳細な機構は省略している。
【0064】
ここで、図のように、揺動回転軸42が可変張架ロール303と張架ロール304との間に設けられたものとして、中間転写ベルト301の周長変化(ベルト軌跡長の変化)について説明する。可変張架ロール303の配設位置が使用張架位置から待機張架位置に変更されると、可変張架ロール303と張架ロール304との軸間距離は長くなるものの、可変張架ロール303と駆動ロール302との軸間距離は短くなる。更に、張架ロール304を可変張架ロール303寄りに配置することで、可変張架ロール303と張架ロール304との軸間距離はさほど長くならないが、可変張架ロール303と駆動ロール302との軸間距離を一層短くすることができ、待機張架位置での中間転写ベルト301のベルト軌跡長を使用張架位置でのベルト軌跡長に比べ相当短くすることができるようになる。
【0065】
そのため、待機張架位置でのベルト張力を弛緩させた状態に保つことができ、中間転写ベルト301での余分な巻き癖などの発生を防ぎ、安定したベルト姿勢、ベルト張力を維持することができるようになる。また、揺動アーム50しては、コイルばね52を用いないようにすることも可能であり、この場合、別途テンションロールを設ける方が好ましいことは云うまでもない。
【0066】
◎実施の形態4
図16は、実施の形態4の画像形成装置に用いられるベルトユニット30’を示す概要図である。ここでは、実施の形態1のベルトユニット30と同様な構成を示しているが、
実施の形態1のベルトユニット30とは大きく相違する点がある。つまり、本実施の形態のベルトユニット30’は、揺動アームを備えずに、固定支持枠401が駆動ロール32と可変張架ロール33の両方に跨って延びる構造のものとなっている。
そのため、本実施の形態のロール支持可変機構400は、駆動ロール32を支持する固定支持枠401に対し、この固定支持枠401の可変張架ロール33側に可変張架ロール33の回転軸33aを案内移動させる案内溝402を形成したものとなっている。
【0067】
このようなベルトユニット30’をセット位置から非セット位置に変更するには、可変張架ロール33の回転軸33aが案内溝402の案内面402aを滑るように移動することでなされるようになる。すなわち、セット位置(記録材搬送ベルト31が使用張架位置にある状態:図中実線で示す)から非セット位置(記録材搬送ベルト31が待機張架位置にある状態:図中二点鎖線で示す)に変更する場合、可変張架ロール33の回転軸33aが案内面402aに沿って上方に移動して待機張架位置に至る。このとき、使用張架位置での駆動ロール32と可変張架ロール33との軸間距離L1より待機張架位置での軸間距離L2の方が短くなるように案内面402aを形成することで、使用張架位置では記録材搬送ベルト31を緊張させ、待機張架位置では弛緩させることができるようになる。
【0068】
また、可変張架ロール33が待機張架位置に向かう方向に可変張架ロール33の回転軸33aを付勢しておけば、ベルト姿勢を常に待機張架位置側に向けることができ、使用張架位置から解放された状態では常に待機張架位置に至らせることができるようになる。本実施の形態では、案内面402aを直線状のものとして示したが、曲線状に形成されていても差し支えない。そして、このような固定支持枠401を用いることで、実施の形態1と同様の作用を奏することができるようになる。
【0069】
このようなベルトユニット30’を組み立てるには、固定支持枠401が例えば駆動ロール32側と可変張架ロール33側に二つに分割されるようになっていたり、折り畳むようになっていればよい。更に、例えば案内面402aを移動する部材を可変張架ロール33の回転軸33aとは別体に設け、この部材と可変張架ロール33の回転軸33aとの間に記録材搬送ベルト31を張る方向に弾性付勢する弾性付勢部材を設けるようにすれば、可変張架ロール33を所謂テンションロールとして機能させることもできるようになる。
そして、本実施の形態では、張架ロールを二つ用い、ベルトとして記録材搬送ベルト31を用いる態様を示したが、例えば中間転写ベルトに対して上述のロール支持可変機構400を用いるようにしても差し支えない。
【実施例】
【0070】
本実施例は、実施の形態1の構成にて、使用張架位置と待機張架位置との間の揺動アームの角度変化とベルトの周長(ベルト軌跡長)との関係について一例を示すようにしたものである。
今、図17に示すように、使用張架位置と待機張架位置との間で、可変張架ロールの回転軸は揺動アームに対しその位置が変化しないものとし、固定支持枠での軸間距離(駆動ロールと揺動回転軸との軸間距離に相当)をa、揺動アームでの軸間距離(揺動回転軸と可変張架ロールとの軸間距離に相当)をb、固定支持枠と揺動アームとのなす角度をθとすると、待機張架位置でのベルトの軸間距離X(駆動ロールと可変張架ロールとの軸間距離に相当)は、図に示すように、X=(a2+2ab・cosθ+b2)1/2で表される。
【0071】
そこで、例えば、駆動ロール及び可変張架ロールの外径を共にφ20mm、aを180mm、bを50mm、θを40°とすると、Xは約220mmとなる。そのため、待機張架位置では使用張架位置に比べ、ベルト全体で約20mm弛ませることができるようになる。したがって、ベルト張力をほぼゼロとすることも可能になる。
【0072】
更に、使用張架位置で可変張架ロールの回転軸をコイルばねで付勢する状態(図8(b)の間隙d)を想定すると、この間隙dを10mmより狭くするようにコイルばねを選択することで、使用張架位置ではベルトを緊張させ、待機張架位置ではベルトを弛緩させた状態に容易に保つことができるようになる。
つまり、このように設定することで、待機張架位置でのベルトを弛ませ過ぎないようにすることができ、待機張架位置が長期に亘って保持されても、十分安定したベルト姿勢、ベルト張力が保たれるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】(a)は本発明を具現化する実施の形態モデルに係るベルト搬送装置の概要を示す説明図であり、(b)はその代表例を示す。
【図2】実施の形態1に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】実施の形態1の可変張架ロールの部位の断面図である。
【図5】実施の形態1の画像形成装置の斜視図である。
【図6】実施の形態1のベルトユニットを上方から見た図である。
【図7】(a)〜(d)は画像形成装置内にセットされる際のベルトユニットの変化の様子を示す説明図である。
【図8】ロール支持可変機構の変化の様子を示す説明図であり、(a)は待機張架位置、(c)は使用張架位置、(b)はその中間段階での様子を示す。
【図9】(a)〜(c)はベルトユニットの組立方法を示す説明図である。
【図10】(a)(b)は変形形態の第一態様を示す説明図である。
【図11】変形形態の第二態様を示す説明図である。
【図12】変形形態の第三態様を示す説明図である。
【図13】実施の形態2に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図14】実施の形態3に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図15】実施の形態3のベルトユニットの位置変更を示す説明図である。
【図16】実施の形態4に係る画像形成装置に用いられるベルトユニットの概要を示す説明図である。
【図17】実施例での各部位の寸法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1(1a,1b:可変張架ロール)…張架ロール,2…無端状ベルト,3…ロール支持可変機構,4…固定支持枠,5…揺動支持枠,6…像保持体,P1…使用張架位置,P2…待機張架位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の張架ロールと、
これらの張架ロールに掛け渡された無端状ベルトと、
複数の張架ロールを支持し、複数の張架ロールのうち少なくとも一つを配設位置が変更可能な可変張架ロールとし、この可変張架ロールの配設位置を変更するロール支持可変機構とを備え、
前記ロール支持可変機構は、無端状ベルトが使用時に必要な張力にて張架される使用張架位置と、無端状ベルトが使用張架位置に比べ低減された張力にて張架され且つ使用張架位置にある無端状ベルトの配設位置よりも外方で無端状ベルトの張力を弛緩させる方向に変位する待機張架位置との間で可変張架ロールの配設位置を変更することを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載のベルト搬送装置において、
前記ロール支持可変機構は、前記可変張架ロールが使用張架位置から待機張架位置に向かうように付勢する付勢部材を備えることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベルト搬送装置のうち張架ロールが配設位置の固定される固定張架ロール及び配設位置の変更される可変張架ロールを有する態様において、
前記ロール支持可変機構は、
前記固定張架ロールが支持される固定支持枠と、
この固定支持枠の固定張架ロールの支持部から離れた部位に揺動自在に支持され且つこの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて可変張架ロールを支持する揺動支持枠とを備えることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のベルト搬送装置のうち張架ロールが配設位置の変更される複数の可変張架ロールのみを有する態様において、
前記ロール支持可変機構は、
配設位置が固定される固定支持枠と、
この固定支持枠の異なる部位にて夫々揺動自在に支持され且つこれらの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて夫々可変張架ロールを支持する複数の揺動支持枠とを備えることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のベルト搬送装置において、
前記ロール支持可変機構は、
張架ロールが支持される支持枠と、
この支持枠に設けられ且つ無端状ベルトが使用張架位置と待機張架位置との間で変位可能になるように可変張架ロールの回転軸を移動自在に案内する案内溝とを備えることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のベルト搬送装置において、
前記ロール支持可変機構は、前記可変張架ロールの両端部側に設けられることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のベルト搬送装置において、
無端状ベルトは、待機張架位置でのベルト軌跡長が使用張架位置での軌跡長よりも短くなるように張架ロールに張架されることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のベルト搬送装置において、
可変張架ロールは、弾性付勢部材にて弾性付勢されて無端状ベルトに張る方向の張力を付与する張力付与部材を兼ねるものであることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項9】
請求項8記載のベルト搬送装置のうち、ロール支持可変機構として可変張架ロールが揺動支持可能な揺動支持枠を備える態様において、
可変張架ロールは、揺動支持枠に対して移動自在に支持されると共に前記弾性付勢部材にて弾性付勢されており、
無端状ベルトが使用張架位置にある場合には前記弾性付勢部材の付勢力を最大に保ち、無端状ベルトが待機張架位置にある場合には前記弾性付勢部材の付勢力を制限するようにしたことを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項10】
請求項9記載のベルト搬送装置において、
前記揺動支持枠は、揺動支持部を有する枠本体と、この枠本体の揺動支持部と異なる部位に開設され且つ可変張架ロールの支持部がすべり移動可能な溝部とを有するものであり、
揺動支持枠には、可変張架ロールの支持部が溝部に沿って移動するように弾性付勢する前記弾性付勢部材を設け、更に、無端状ベルトが待機張架位置にある場合に溝部に沿って移動する可変張架ロールの支持部の位置が規制される規制部材を設け、
使用張架位置では可変張架ロールの支持部を前記規制部材に非接触配置させる一方、待機張架位置では可変張架ロールの支持部を前記規制部材に接触配置させるようにしたことを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のベルト搬送装置において、
前記可変張架ロールは、無端状ベルトを駆動する駆動張架ロール以外の張架ロールであることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項12】
記録材に形成する画像が保持される一若しくは複数の像保持体と、
像保持体からの画像を直接若しくは記録材を介して搬送する無端状ベルトを有し、無端状ベルトが全ての像保持体に接触配置するセット位置及び無端状ベルトが全ての像保持体から離間する非セット位置間で無端状ベルトが移動自在な請求項1乃至11のいずれかに記載のベルト搬送装置とを備え、
ベルト搬送装置は、セット位置にて無端状ベルトが使用張架位置に配置され且つ非セット位置にて無端状ベルトが待機張架位置に配置されるロール支持可変機構を有し、
セット位置にあるベルト搬送装置に対応した部位には、セット位置にて無端状ベルトが使用張架位置に位置するように前記ロール支持可変機構が動作させられて可変張架ロールの配設位置が拘束される位置拘束部材を設けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項12記載の画像形成装置において、
ベルト搬送装置が使用張架位置に配置された際に前記可変張架ロールが一つの像保持体と無端状ベルトを挟んで対向配置されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項13記載の画像形成装置において、
前記可変張架ロールは、表面に半導電性弾性部材が被覆された導電体にて構成され、対向配置される像保持体上の画像を直接又は記録材を介して無端状ベルトに転写する転写ロールであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
複数の張架ロールと、
これらの張架ロールに掛け渡された無端状ベルトと、
複数の張架ロールを支持し、複数の張架ロールのうち少なくとも一つを配設位置が変更可能な可変張架ロールとし、この可変張架ロールの配設位置を変更するロール支持可変機構とを備え、
前記ロール支持可変機構は、無端状ベルトが使用時に必要な張力にて張架される使用張架位置と、無端状ベルトが使用張架位置に比べ低減された張力にて張架され且つ使用張架位置にある無端状ベルトの配設位置よりも外方で無端状ベルトの張力を弛緩させる方向に変位する待機張架位置との間で可変張架ロールの配設位置を変更することを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載のベルト搬送装置において、
前記ロール支持可変機構は、前記可変張架ロールが使用張架位置から待機張架位置に向かうように付勢する付勢部材を備えることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベルト搬送装置のうち張架ロールが配設位置の固定される固定張架ロール及び配設位置の変更される可変張架ロールを有する態様において、
前記ロール支持可変機構は、
前記固定張架ロールが支持される固定支持枠と、
この固定支持枠の固定張架ロールの支持部から離れた部位に揺動自在に支持され且つこの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて可変張架ロールを支持する揺動支持枠とを備えることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のベルト搬送装置のうち張架ロールが配設位置の変更される複数の可変張架ロールのみを有する態様において、
前記ロール支持可変機構は、
配設位置が固定される固定支持枠と、
この固定支持枠の異なる部位にて夫々揺動自在に支持され且つこれらの揺動支持部から離れた揺動自由端側にて夫々可変張架ロールを支持する複数の揺動支持枠とを備えることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のベルト搬送装置において、
前記ロール支持可変機構は、
張架ロールが支持される支持枠と、
この支持枠に設けられ且つ無端状ベルトが使用張架位置と待機張架位置との間で変位可能になるように可変張架ロールの回転軸を移動自在に案内する案内溝とを備えることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のベルト搬送装置において、
前記ロール支持可変機構は、前記可変張架ロールの両端部側に設けられることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のベルト搬送装置において、
無端状ベルトは、待機張架位置でのベルト軌跡長が使用張架位置での軌跡長よりも短くなるように張架ロールに張架されることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のベルト搬送装置において、
可変張架ロールは、弾性付勢部材にて弾性付勢されて無端状ベルトに張る方向の張力を付与する張力付与部材を兼ねるものであることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項9】
請求項8記載のベルト搬送装置のうち、ロール支持可変機構として可変張架ロールが揺動支持可能な揺動支持枠を備える態様において、
可変張架ロールは、揺動支持枠に対して移動自在に支持されると共に前記弾性付勢部材にて弾性付勢されており、
無端状ベルトが使用張架位置にある場合には前記弾性付勢部材の付勢力を最大に保ち、無端状ベルトが待機張架位置にある場合には前記弾性付勢部材の付勢力を制限するようにしたことを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項10】
請求項9記載のベルト搬送装置において、
前記揺動支持枠は、揺動支持部を有する枠本体と、この枠本体の揺動支持部と異なる部位に開設され且つ可変張架ロールの支持部がすべり移動可能な溝部とを有するものであり、
揺動支持枠には、可変張架ロールの支持部が溝部に沿って移動するように弾性付勢する前記弾性付勢部材を設け、更に、無端状ベルトが待機張架位置にある場合に溝部に沿って移動する可変張架ロールの支持部の位置が規制される規制部材を設け、
使用張架位置では可変張架ロールの支持部を前記規制部材に非接触配置させる一方、待機張架位置では可変張架ロールの支持部を前記規制部材に接触配置させるようにしたことを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のベルト搬送装置において、
前記可変張架ロールは、無端状ベルトを駆動する駆動張架ロール以外の張架ロールであることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項12】
記録材に形成する画像が保持される一若しくは複数の像保持体と、
像保持体からの画像を直接若しくは記録材を介して搬送する無端状ベルトを有し、無端状ベルトが全ての像保持体に接触配置するセット位置及び無端状ベルトが全ての像保持体から離間する非セット位置間で無端状ベルトが移動自在な請求項1乃至11のいずれかに記載のベルト搬送装置とを備え、
ベルト搬送装置は、セット位置にて無端状ベルトが使用張架位置に配置され且つ非セット位置にて無端状ベルトが待機張架位置に配置されるロール支持可変機構を有し、
セット位置にあるベルト搬送装置に対応した部位には、セット位置にて無端状ベルトが使用張架位置に位置するように前記ロール支持可変機構が動作させられて可変張架ロールの配設位置が拘束される位置拘束部材を設けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項12記載の画像形成装置において、
ベルト搬送装置が使用張架位置に配置された際に前記可変張架ロールが一つの像保持体と無端状ベルトを挟んで対向配置されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項13記載の画像形成装置において、
前記可変張架ロールは、表面に半導電性弾性部材が被覆された導電体にて構成され、対向配置される像保持体上の画像を直接又は記録材を介して無端状ベルトに転写する転写ロールであることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−288264(P2009−288264A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137502(P2008−137502)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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