説明

ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体及び硬化体

【課題】熱線膨張率が低減され、寸法安定性に優れた、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記式(2)で表される構造(B)を含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、一官能又は二官能のフェノール化合物と、を含む熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体及び硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
分子構造中にベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、耐熱性、難燃性、電気絶縁性、及び低吸水性等が良好であり、他の熱硬化性樹脂には見られない優れた特性を有するため、積層板や半導体封止材等のエレクトロニクス材料、摩擦材や砥石等の結合材として注目されている。
【0003】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、オキサジン環がベンゼン環に隣接した構造を有する熱硬化性樹脂であり、例えばフェノール化合物、アミン化合物、アルデヒド化合物を反応させることにより製造できる。このようなベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の一例としては、フェノール化合物として、フェノールを、アミン化合物として、アニリンを、アルデヒド化合物として、ホルムアルデヒド用いて製造されるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が挙げられる(式(i)の左記)。
【0004】
式(i)に示すように、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂(式(i)の左記)は、加熱により開環重合を起こし、ポリベンゾオキサジン(式(i)の右記)となる。
【0005】
【化1】

【0006】
このようなベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂に関して、例えば特許文献1や特許文献2、非特許文献1では、二官能フェノール類、アミン類、及びアルデヒド類を反応させることにより得られる、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−64180号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0023007号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Polymer Preprints,Japan Vol.57,No.1,p1480(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記したエレクトロニクス材料等の部材には、優れた寸法安定性を有することが求められているが、上記した熱硬化性樹脂は、熱線膨張率の低減が十分ではないという問題がある。そのため、ガラス繊維等と複合させたりすることも試みられているが、未だ改善すべき点は多い。特に、熱硬化性樹脂のガラス転移点(Tg)よりも高い温度領域であっても熱線膨張率を低減できることも求められているが、この点についても未だ十分ではない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、熱線膨張率が低減され、寸法安定性に優れた、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、分子中に少なくとも2種類の特定構造のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂に、一官能又は二官能のフェノール化合物を加えた樹脂組成物とすることにより、熱線膨張率を大幅に低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
下記式(1)で表される構造(A)及び下記式(2)で表される構造(B)を含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、
一官能又は二官能のフェノール化合物と、
を含む熱硬化性樹脂組成物。
【化2】

【化3】

(式中、R1〜R4は、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表し、Y1及びY2は、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表し、n及びmは、各々独立して、1〜500の整数を表す。なお、*は、結合部位を表す。)
〔2〕
前記フェノール化合物が、二官能フェノール化合物である、〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔3〕
無機充填剤を更に含む、〔1〕又は〔2〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔4〕
下記式(1)で表される構造(A)及び下記式(2)で表される構造(B)を含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、一官能又は二官能であるフェノール化合物と、を混合する工程を有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【化4】

【化5】

(式中、R1〜R4は、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表し、Y1及びY2は、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表し、n及びmは、各々独立して、1〜500の整数を表す。なお、*は、結合部位を表す。)
〔5〕
〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物、又は〔4〕に記載の製造方法により得られる熱硬化性樹脂組成物から得られる成形体。
〔6〕
〔5〕に記載の成形体を硬化させて得られる硬化体。
〔7〕
〔5〕に記載の成形体、又は〔6〕に記載の硬化体を含む電子機器。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱線膨張率が低減され、寸法安定性に優れた、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】製造例1で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図2】製造例2で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0016】
本実施の形態に係るベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物は、
下記式(1)で表される構造(A)及び下記式(2)で表される構造(B)を含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、
一官能又は二官能のフェノール化合物と、
を含む。
【0017】
【化6】

【0018】
【化7】

【0019】
式中、R1〜R4は、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表し、Y1及びY2は、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表し、n及びmは、各々独立して、1〜500の整数を表す。なお、*は、結合部位を表す。
【0020】
<ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂>
本実施の形態において、熱硬化性樹脂中における、上記した構造Aの含有量:構造Bの含有量の比率(mol比)は、特に限定されないが、熱線膨張率を低減できるという観点から、1:99〜99:1であることが好ましく、10:90〜90:10であることがより好ましく、50:50〜90:10であることが更に好ましく、50:50〜70:30であることがより更に好ましい。これらの比率は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0021】
式(1)及び式(2)におけるY1及びY2は、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表す。特に、Y1及びY2の少なくともいずれかが、下記式(3)で表される構造であることが好ましい。あるいは、Y1及びY2の少なくともいずれかが、下記式(4)で表される構造であることが好ましい。Y1及びY2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
【化8】

【0023】
式中、*は、結合部位を表す。
【0024】
【化9】

【0025】
式中、*は、結合部位を表す。
【0026】
式(1)及び式(2)におけるm及びnは、各々独立して、1〜500の整数であればよく、1〜250の整数であることがより好ましい。
【0027】
本実施の形態のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、下記式(5)で表される化合物と、下記式(6)で表される化合物と、ジアミン化合物と、アルデヒド化合物と、を反応させることにより得ることができる。本実施の形態では、二官能フェノール化合物として、式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物を少なくとも用いる。これらの二官能フェノール化合物と、ジアミン化合物と、アルデヒド化合物と、を反応させることで、式(1)で表される構造(A)及び式(2)で表される構造(B)を含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得ることができる。
【0028】
【化10】

【0029】
式(5)中、R1及びR2は、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表す。R1及びR2が有機基である場合、その構造は特に限定されず、例えばヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基であってもよい。R1及びR2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。官能基としては、例えばエーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0030】
式(5)中、カルボニル基は、左右のヒドロキシル基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、カルボニル基の結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよいし、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0031】
式(5)で表される二官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。式(5)で表される二官能フェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
【化11】

【0033】
式(6)中、R3及びR4は、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。
【0034】
3及びR4が有機基である場合、その構造は特に限定されず、例えばヘテロ元素又は官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基であってもよい。R3及びR4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。ここで、官能基としては、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0035】
式(6)中、Xは、左右のヒドロキシル基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Xの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよいし、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0036】
Xは、下記群G1からなる群より選択される少なくとも一つであってもよい。
【0037】
【化12】

【0038】
群G1中、*は、前記式(6)における芳香環への結合位置を表す。
【0039】
式(6)で表される二官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(ビスフェノールM)、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(ビスフェノールP)、4,4’−メチレンジフェノール(ビスフェノールF)等が挙げられる。式(6)で表される二官能フェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
ジアミン化合物としては、特に限定されず、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族ジアミン化合物、又は芳香族ジアミン化合物等を用いることができる。これらは置換されていてもよいし、無置換でもよく、ヘテロ元素又は官能基を含んでいてもよい。ここで、官能基としては、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0041】
脂環式ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば式(7)で表される化合物及び式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化13】

【0043】
式(7)で表される化合物及び式(8)で表される化合物は、各々、シス異性体、トランス異性体、又はシス異性体とトランス異性体との任意の混合物であってもよい。
【0044】
直鎖脂肪族ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば下記群G2からなる群より選択される直鎖脂肪族ジアミン化合物が挙げられる。
【0045】
【化14】

【0046】
また、芳香族ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば下記式(9)で表される化合物、下記式(10)で表される化合物、及び下記式(11)で表される芳香族ジアミン化合物等が挙げられる。
【0047】
【化15】

【0048】
式(9)で表される化合物としては、例えば下記式(12)で表される化合物(p−フェニレンジアミン)が挙げられる。
【0049】
【化16】

【0050】
式(11)中、Dは、各々独立して、直接結合手(原子又は原子団が存在しない)、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、若しくは芳香族の有機基を表す。式(11)中、Dは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。Eは、直接結合手(原子又は原子団が存在しない)、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、若しくは芳香族の有機基を表す。上記の脂肪族の有機基又は芳香族の有機基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換フェニル基等が挙げられる。ここで、官能基としては、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0051】
式(11)中、n’及びm’は、各々独立して、0〜10の整数を表す。
【0052】
式(9)、式(10)、及び式(11)の各芳香環は、置換基を有してもよい。置換基としては特に限定されず、例えば炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基等が挙げられる。置換基は、ヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい。ここで、官能基としては、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0053】
式(11)中、Dは、左右のアミノ基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Dの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよいし、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。Eは、左右のDの結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していてればよく、Eの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよいし、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0054】
ジアミン化合物が式(11)で表される化合物であり、式(11)のDが上記有機基である場合、Dは、下記群G3からなる群より選択される少なくともいずれかであってもよい。
【0055】
【化17】

【0056】
群G3中、*は、式(11)における芳香環への結合位置を表す。
【0057】
ジアミン化合物が式(11)で表される化合物であり、式(11)のEが上記有機基である場合、Eは、下記群G4からなる群より選択される少なくともいずれかであってもよい。
【0058】
【化18】

【0059】
群G4中、*は、式(11)における芳香環への結合位置を表す。
【0060】
式(11)において、n’及びm’は、各々独立して、0〜10の整数であればよいが、0〜5の整数であることが好ましく、入手容易性の観点から、0〜1の整数であることがより好ましい。
【0061】
式(11)において、n’及びm’が0である場合、ジアミン化合物は下記式(13)で表される化合物である。
【0062】
【化19】

【0063】
式(13)中、Eは、直接結合手(原子又は原子団が存在しない)、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、若しくは芳香族の有機基を表す。官能基としては、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0064】
式(13)におけるEが、脂肪族の有機基又は芳香族の有機基である場合、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換フェニル基等が挙げられる。
【0065】
式(13)中、Eは、左右のアミノ基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Eの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよいし、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0066】
式(13)で表される化合物としては、例えば下記式(14)で表される化合物(4,4’−ジアミノジフェニルメタン)が挙げられる。
【0067】
【化20】

【0068】
ジアミン化合物としては、特に限定されず、具体的には、3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の脂環式ジアミン化合物;1,2−ジアミノエタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、及び1,18−ジアミノオクタデカン等の直鎖脂肪族ジアミン化合物;テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン等の分岐脂肪族ジアミン化合物;p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンM)、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンP)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等の芳香族ジアミン化合物;等が挙げられる。これらのジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0069】
ジアミン化合物の使用量は、全二官能フェノール化合物1molに対して、0.5〜1.5molであることが好ましい。例えば二官能フェノール化合物として、式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物のみを用いる場合、式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物の合計1molに対して、ジアミン化合物の使用量を上記範囲とすることを意味する。二官能フェノール化合物1molに対するジアミン化合物の使用量を、1.5mol以下とすることにより、反応溶液のゲル化を効果的に抑制することができる。二官能フェノール化合物1molに対するジアミン化合物の使用量を0.5mol以上とすることにより、二官能フェノール化合物を残存することなく十分に反応させて、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を更に高分子量化させることができる。
【0070】
本実施の形態では、式(5)で表される二官能フェノール化合物と、式(6)で表される二官能フェノール化合物と、を併用して、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を合成するが、式(6)で表される二官能フェノール化合物の使用量は、全二官能フェノールのうち、1〜99mol%であることが好ましい。
【0071】
アルデヒド化合物としては、特に限定されないが、ホルムアルデヒドが好ましく、ホルムアルデヒドとしては、その重合体であるパラホルムアルデヒドや、水溶液であるホルマリン等の形態で使用することができる。
【0072】
アルデヒド化合物の使用量は、ジアミン化合物1molに対して、4〜7molであることが好ましい。アルデヒド化合物の使用量を7mol以下とすることにより、人体及び環境への影響を低減できる。アルデヒド化合物の使用量を4mol以上とすることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂をさらに高分子量化させることができる。
【0073】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法においては、二官能フェノール化合物と共に一官能フェノール化合物を更に添加して反応させてもよい。一官能フェノール化合物を併用した場合、反応性末端がベンゾオキサジン環で封止された重合体が生成されることになる。その結果、合成反応中において重合体の分子量を制御でき、溶液のゲル化を効果的に防止できる。また、重合体の反応性末端を封止することで、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の保存安定性を向上させることもできる。その結果、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の不溶化を効果的に防止することができる。
【0074】
一官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ドデシルフェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−エトキシフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール等が挙げられる。一官能フェノール化合物としては、汎用性及びコストの観点からフェノールが好ましい。一官能フェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0075】
一官能フェノール化合物の使用量は、全二官能フェノール化合物1molに対して0.5mol以下が好ましい。一官能フェノール化合物の使用量が全二官能フェノール化合物1molに対して0.5mol以下とすることにより、合成反応中においてベンゾオキサジン環構造を有する熱硬化性樹脂をより高分子量化させることができるとともに、一官能フェノール化合物を十分に反応させることにより、一官能フェノールの残存量を減少させることができる。
【0076】
本実施の形態において、溶媒として公知の溶媒を用いることができるが、合成溶媒として環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒を用いることが好ましい。かかる溶媒を用いることにより、合成反応中に反応溶液のゲル化や反応生成物の不溶化が生じることなく、さらに、合成時のハンドリング性が良好であり、合成プロセスを容易にすることができる。環状エステル又はラクトン溶媒としては、特に限定されず、例えばγ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、3−メチルオクタノ−4−ラクトン、4−ヒドロキシ−3−ペンテン酸γ−ラクトン等の環状エステル又はラクトン溶媒が挙げられる。これらの中でも、汎用性が高いという観点から、γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、及びγ−バレロラクトン等が好ましい。環状エステル又はラクトン溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
溶媒としては、環状エステル又はラクトン溶媒と、アルコールと、の混合溶媒でもよい。アルコールとしては、特に限定されず、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メトキシエタノール、及び2−エトキシエタノール等が挙げられる。これらの中でも、イソブタノール及び2−メトキシエタノールが好ましい。アルコールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
環状エステル又はラクトン溶媒と、アルコールと、の混合溶媒としては、特に限定されないが、反応温度等の観点から、γ−ブチロラクトンとイソブタノール、及びγ−ブチロラクトンと2−メトキシエタノールの組み合わせが好ましい。
【0079】
環状エステル又はラクトン溶媒と、アルコールと、の混合溶媒中におけるアルコールの割合は、合成反応を効率的に進行させるという観点から、50体積%以下であることが好ましい。アルコールの割合が50体積%以下であることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応を短時間で行うことができ、合成効率を上昇させることができる。
【0080】
溶媒としては、環状エステル又はラクトン溶媒と、芳香族系非極性溶媒と、の混合溶媒でもよい。芳香族系非極性溶媒としては、特に限定されず、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、プソイドキュメン、メシチレン等が挙げられる。これらの中でも、汎用性が高く安価である観点から、トルエン、キシレンが好ましい。芳香族系非極性溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
環状エステル又はラクトン溶媒と、芳香族系非極性溶媒と、の混合溶媒としては、特に限定されないが、反応温度等の観点から、γ−ブチロラクトンとトルエン、及びγ−ブチロラクトンとキシレンの組み合わせが好ましい。
【0082】
環状エステル又はラクトン溶媒と、芳香族系非極性溶媒と、の混合溶媒中における芳香族系非極性溶媒の割合は、原料の溶解性を低下させない観点から、混合溶媒全体に対して、50体積%以下であることが好ましい。芳香族系非極性溶媒の割合を50体積%以下とすることにより、原料をより確実に溶解させることができ、反応効率を上昇させることができる。
【0083】
溶媒としては、環状エステル又はラクトン溶媒と、芳香族系非極性溶媒と、アルコールと、の混合溶媒でもよい。合成反応を効率的に進行させるという観点や、原料の溶媒への溶解性を低下させないという観点から、芳香族系非極性溶媒とアルコールとの合計は、混合溶媒の全体の50体積%以下であることが好ましい。
【0084】
本実施の形態において、溶媒の量は、二官能フェノール化合物のmol濃度が0.1mol/L〜3.0mol/Lとなる量であることが好ましい。二官能フェノール化合物のmol濃度を0.1mol/L以上とすることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応速度をより促進させることができ、反応効率を上昇させることができる。二官能フェノール化合物のmol濃度を3.0mol/L以下とすることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応時に、反応溶液のゲル化を効果的に抑制できるとともに、得られるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の不溶化を防止できる。
【0085】
上記した熱硬化性樹脂の製造方法において、原料を添加混合する順序は特に限定されず、例えば二官能フェノール化合物、ジアミン化合物及びアルデヒド化合物を順に溶媒に添加し混合してもよいが、二官能フェノール化合物と、ジアミン化合物と、溶媒と、を添加し混合して混合溶液とした後、この混合溶液にアルデヒド化合物を添加し混合することが好ましい。すなわち、上記した熱硬化性樹脂の製造方法は、二官能フェノール化合物(上記式(5)で表される化合物及び上記式(6)で表される化合物等)と、ジアミン化合物と、溶媒と、を混合させて混合溶液とする工程と、前記混合溶液にアルデヒド化合物をさらに添加し、反応させる工程と、を含んでいてもよい。
【0086】
上記した熱硬化性樹脂の製造方法において、反応効率を向上させる観点から、加熱してもよいし、適宜、撹拌機、撹拌子等を使用して溶媒の撹拌下、二官能フェノール化合物等を添加混合してもよい。反応は、必要に応じて、窒素ガス等の不活性ガスをパージし、不活性ガスの存在下で行ってもよい。
【0087】
加熱の方法は、特に限定されず、例えば油浴等の温度調節器を用いて、所定の温度まで一気に上昇させた後に、その温度で一定に保つ方法が挙げられる。
【0088】
加温処理の際の所定の温度は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応の効率化が図られる温度であれば、特に限定されないが、反応溶液温度が50〜150℃の範囲となるように調節することが好ましく、70〜130℃程度の範囲がより好ましい。反応溶液温度を50℃以上とすることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応を効果的に促進させることができ、反応効率をさらに上昇させることができる。反応溶液温度を150℃以下とすることにより、反応溶液のゲル化を効果的に抑制でき、得られるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の不溶化を効果的に防止できる。反応溶液の加熱を行っている間は、溶媒を還流させてもよい。
【0089】
上記した熱硬化性樹脂の製造方法は、反応により生成する水を除く工程を更に含んでいてもよい。反応により生成する水を除くことで、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応時間を短縮させることが可能となり、反応の効率化を図ることができる。生成する水を除く方法は、特に限定されず、反応溶液中の溶媒と共沸させる方法等が挙げられる。例えばコック付きの等圧滴下ロート、ジムロート冷却器、ディーン・スターク装置等を用いることで生成する水を反応系から除くことができる。
【0090】
加熱の継続時間は、特に限定されないが、例えば加熱開始後1時間〜20時間程度であることが好ましく、2時間〜15時間程度がより好ましい。加熱開始後1時間〜20時間加熱を継続させた後、反応溶液を、油浴等の温度調節器の接触から開放して放冷してもよいし、あるいは冷媒等を用いて冷却してもよい。
【0091】
上記した硬化性樹脂の製造方法は、式(5)で表される化合物と、式(6)で表される化合物と、ジアミン化合物と、アルデヒド化合物と、を含む溶液を反応させる工程の後に、反応後の溶液を塩基性水溶液により洗浄する工程を、更に含むことが好ましい。洗浄工程を更に含むことにより、反応溶液から未反応の一官能フェノール化合物や二官能フェノール化合物を効率よく取り除くことができる。
【0092】
塩基性水溶液としては、塩基性化合物を水に溶解させた水溶液であればよく、特に限定されない。塩基性化合物としては、特に限定されず、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、汎用性の観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0093】
洗浄工程において塩基性水溶液で上記反応溶液を洗浄した後、さらに蒸留水等で洗浄することが好ましい。例えば蒸留水により数回洗浄することにより、ナトリウムイオン等の塩基性水溶液由来のイオンを効果的に取り除くことができる。
【0094】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を反応溶液から回収する方法は、特に限定されず、例えば貧溶媒による再沈法、濃縮固化法(溶媒減圧留去)、スプレードライ法等が挙げられる。本実施の形態では、必要に応じて、前処理として、反応後に反応溶液のろ過を行ってもよい。
【0095】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、高分子量化されており、この熱硬化性樹脂を、一官能又は二官能のフェノール化合物(後述する)の存在下、加熱すること等により開環反応を効率よく促進させることができ、成形体や硬化体とすることができる。かかる成形体や硬化体は寸法安定性に優れるだけでなく、耐熱性や可とう性等の物性の向上も期待できる。
【0096】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られるポリエチレングリコール換算値での重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは2000〜300000であり、より好ましくは4000〜200000である。ここで、「高分子量化されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂」とは、プレポリマータイプのベンゾオキサジン樹脂、すなわち、繰り返し単位中にベンゾオキサジン環を有する構造の熱硬化性樹脂を指し、その重量平均分子量が2000〜300000程度に制御されていることを意味する。
【0097】
熱硬化性樹脂の重量平均分子量を2000以上とすることで、その後の開環反応により得られる成形体や硬化体の耐熱性及び可とう性を一層上昇させることができる。さらに、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造における回収作業性を上昇させることができ、収率を向上させることができる。重量平均分子量を300000以下とすることで、合成後に得られるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の各種有機溶媒へ溶解性を確保することができるため、熱硬化性樹脂組成物の調製を容易にすることができる。
【0098】
熱硬化性樹脂の重量平均分子量を制御する方法としては、例えば合成反応中に、反応溶液の一部を採取し、その溶液の分子量をGPCにより測定することで、熱硬化性樹脂の重量平均分子量を制御する方法が挙げられる。
【0099】
<一官能又は二官能のフェノール化合物>
本実施の形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、一官能又は二官能のフェノール化合物を含む。これにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の開環反応を効率的に促進させることができる。一官能又は二官能のフェノール化合物(以下、単に「フェノール化合物」という場合がある。)は、芳香環に少なくとも1つ又は2つのヒドロキシ基を有する有機化合物をいう。
【0100】
一官能フェノール化合物は、ヒドロキシ基以外の他の置換基を同じ芳香環内に有していてもよい。すなわち、下記式(15)で表される化合物であってもよい。ここで、ヒドロキシ基以外の他の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0101】
【化21】

【0102】
式(15)中、Zは、ヒドロキシ基以外の他の置換基を表す。
【0103】
一官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ドデシルフェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−エトキシフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール等が挙げられる。
【0104】
二官能フェノール化合物は、ヒドロキシ基以外の他の置換基を同じ芳香環内に有していてもよい。すなわち、下記式(16)で表される化合物であってもよい。ここで、ヒドロキシ基以外の他の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、エーテル基、アルコキシ基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0105】
【化22】

【0106】
式(16)中、Zは、ヒドロキシ基以外の他の置換基を表す。
【0107】
三官能以上のフェノール化合物が含まれる熱硬化性樹脂組成物では、十分な硬化促進効果を得ることができないばかりか、室温において熱硬化性樹脂組成物を調製中に硬化してしまい、ハンドリング性を確保することが著しく困難となる傾向がある。一方、一官能又は二官能のフェノール化合物を用いることにより、適したハンドリング性を確保し、硬化促進効果を得ることができる。さらには、室温等の条件下で熱硬化性樹脂組成物として保存する場合等であっても、保存安定性に優れる。
【0108】
二官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(ビスフェノールM)、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(ビスフェノールP)、4,4’−メチレンジフェノール(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、4,4’−ビフェノール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ベンゼンジオール(ヒドロキノン)、1,3−ベンゼンジオール(レゾルシノール)、1,2−ベンゼンジオール(カテコール)等が挙げられる。なお、式(5)、式(6)で表される二官能フェノール化合物等のフェノール化合物等の上述した二官能フェノール化合物等であってもよい。
【0109】
一官能又は二官能のフェノール化合物の中でも、入手容易性、得られる成形体及び硬化体の寸法安定性の観点から、二官能フェノール化合物が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0110】
フェノール化合物の添加量は、特に限定されないが、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂100重量部に対して1〜50重量部であることが好ましく、10〜40重量部であることがより好ましく、20〜30重量部であることが更に好ましい。添加量を上記下限値以上とすることでより一層優れた硬化促進効果を得ることができ、添加量を上記上限値以下とすることで熱硬化性樹脂組成物の機械的物性の低下をより一層抑制することができる。
【0111】
<無機充填剤>
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、無機充填剤を更に含むことが好ましい。これにより、寸法安定性を向上させることができる。無機充填剤としては、特に限定されず、種々の無機充填剤を用いることができる。例えばシリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。無機充填剤はこれらを1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、上記したフェノール化合物や無機充填剤以外の、他の添加剤を配合することができる。例えば、難燃剤、離型剤、接着性付与剤、界面活性剤、着色剤、カップリング剤、レベリング剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、軟化剤、可塑剤、帯電防止剤、防曇剤等が挙げられる。さらに、その他の熱硬化性樹脂等を添加して、熱硬化性樹脂組成物とすることもできる。
【0113】
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族非極性溶媒、環状エステル又はラクトン溶媒等の有機溶媒を更に含んでいてもよい。
【0114】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等が挙げられる。
【0115】
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0116】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド等が挙げられる。
【0117】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0118】
芳香族系非極性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、プソイドキュメン、メシチレン等が挙げられる。
【0119】
環状エステル又はラクトン溶媒としては、例えば、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、3−メチルオクタノ−4−ラクトン、4−ヒドロキシ−3−ペンテン酸γ−ラクトン等が挙げられる。
【0120】
本実施の形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、一官能又は二官能のフェノール化合物と、を混合する工程(混合工程)を含む製造方法により得ることができる。混合の方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、上述した無機充填剤、他の充填剤や熱硬化性樹脂、さらには溶媒等を混合する場合、その混合順序等は、特に限定されず、適宜に好適な順序・条件にて混合することができる。混合方法等についても、特に限定されず、適宜に好適な方法を採用できる。例えば、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と溶媒とを、自転・公転ミキサー(例えばあわとり練太郎、シンキー社製)を用いて混合した後、一官能又は二官能のフェノール化合物を投入して、上記の自転・公転ミキサーを用いて混合し、さらに必要に応じて上記の無機充填剤、他の充填剤や熱硬化性樹脂等を投入後、上記の自転・公転ミキサーを用いて混合することができる。
【0121】
<成形体等>
本実施の形態の成形体は、上述した熱硬化性樹脂組成物を、必要により部分硬化させて、若しくは硬化させずに得られる成形体である。すなわち、本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、成形体とすることもできるし、硬化体とすることもできる。本実施の形態の硬化体としては、前述したベンゾオキサジン環構造を有する熱硬化性樹脂が硬化前にも成形性を有しているため、いったん硬化前に成形した後に熱をかけて硬化させたもの(硬化成形体)でも、成形と同時に硬化させたもの(硬化体)でもよい(以下、これらを「硬化体」と総称する場合がある)。また、その寸法や形状は特に限定されず、例えばフィルム状、シート状(板状)、ブロック状等であってもよく、さらに他の部位(例えば粘着層)を備えていてもよい。
【0122】
本実施の形態における硬化方法としては、特に限定されず、従来公知の任意の硬化方法を用いることができ、一般には120〜260℃程度で数時間加熱すればよいが、加熱温度がより低かったり、加熱時間が不足したりすると、場合によっては、硬化が不十分となって機械的強度が不足することがある。また、加熱温度がより高すぎたり、加熱時間が長すぎたりすると、場合によっては、分解等の副反応が生じて機械的強度が不都合に低下することがある。よって、本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物の特性に応じた適正な条件を選択することが好ましい。
【0123】
硬化温度として、加圧加熱蒸気を使って硬化させることを想定した場合、及び電熱線等その他の方法による加熱硬化を想定した場合には、省エネルギーの観点から、硬化可能で、かつ低い温度であることが好ましく、190℃以下で硬化させることが好ましく、185℃以下で硬化させることがより好ましい。硬化の完了の観点から、硬化時間の下限は10分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましい。生産性の面から考えると硬化時間の上限は10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、3時間以下が更に好ましい。
【0124】
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物を、従来公知の方法により成形又は硬化して得られる成形体又は硬化体は、電子部品・電子機器及びその材料として、低熱線膨張率が要求される多層基板、積層板、封止剤、接着剤等として好適に用いることができる。このような電子機器としては、例えば携帯電話、表示機器、車載機器、コンピュータ、通信機器等が挙げられる。その他、航空機部材、自動車部材、建築部材等にも使用でき、導電材料、特に金属フィラーの耐熱性結着剤として利用して直流又は交流の電流を流すことができる回路を形成する用途に用いてもよい。
【実施例】
【0125】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例に用いた評価方法及び測定方法は以下のとおりである。
【0126】
(ガラス転移点(Tg)の測定)
硬化成形体のガラス転移点は、TMA法により測定した。
【0127】
(熱線膨張率の測定)
SIIナノテクノロジー社製「TMA/SS6100」を用い、引っ張りモードで、窒素雰囲気下で、荷重5mN、昇温速度5℃/分で測定した。測定サンプルは、得られた硬化成形体を幅4mm、長さ20mmにカットし、チャック間の距離が10mmとなるようにセットした。サンプルについては、0〜50℃の熱線膨張率の平均値(ppm/℃)、25〜150℃の熱線膨張率の平均値(ppm/℃)、及び硬化成形体のTg〜250℃の熱線膨張率の平均値(ppm/℃)をそれぞれ求めた。なお、TgはTMA法により測定した値を用いた。
【0128】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
高速液体クロマトグラフシステム(島津製作所社製)
システムコントローラー:SCL−10A VP
送液ユニット:LC−10AD
VPデガッサー:DGU−12A
示差屈折計(RI)検出器:RID−10A
オートインジェクター:SIL−10AD VP
カラムオーブン:CTO−10AS VP
カラム:SHODEX KD803(排除限界分子量70000)×2(直列)
カラム温度:50℃
流量:0.8mL/分
溶離液:ジメチルホルムアミド(DMF;和光純薬工業社製、安定剤不含、HPLC用、LiBr(臭化リチウム) 10mmol/L含有))
サンプル:0.1重量%
検出器:RI
上記測定条件により、Mwが、20000、14000、10000、8000、6000、4000、3000、2000、1500、1000、900、600、400、300、200の標準ポリエチレングリコール(純正化学社製)により検量線を作成した。標準ポリエチレングリコール換算により、GPC測定により得られたポリエチレングリコール換算値での重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0129】
1H‐NMRの測定)
下記測定装置、溶媒を用いて、サンプル濃度1.3重量%で測定を行った。
測定装置:JEOL製、ECX400(400MHz)
溶媒:TMS(テトラメチルシラン)を0.05体積%含有する重DMSO(ジメチルスルホキシド;シグマアルドリッチ社製)、又はTMSを0.05体積%含有する重クロロホルム(Cambridge Isotope Laboratories社製)
【0130】
(ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造)
〔製造例1〕
(DHBP70−BisA30−PDAの製造)
300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン200mL(和光純薬工業社製)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(以下、DHBPという。)18.12g(0.084mol、和光純薬工業社製)、ビスフェノールA(以下、BisAという。)8.22g(0.036mol、日本ジーイープラスチックス社製)、p−フェニレンジアミン(以下、PDAという。)12.99g(0.12mol、大新化成工業社製)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。反応溶液を100℃で1時間攪拌し、DHBP、BisA、PDAの溶解を確認した後、パラホルムアルデヒド(以下、PFAという。)18.87g(0.58mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、4時間反応させた。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。
【0131】
析出した沈殿固体を減圧乾燥することにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が得られた。得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は7000であった。得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂(以下、樹脂aという。)の構造A:構造B(式(1)及び式(2)参照)の比率(モル比)は約70:30であることを、1H−NMRによって確認した。樹脂aの1H−NMRスペクトルを図1に示す。
【0132】
(DHBP70−BisA30−PDAの1H−NMR)
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.44ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.61ppm
BisA_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.26ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.46ppm
BisA由来のメチル基のプロトンピーク:1.48ppm
【0133】
〔製造例2〕
(DHBP50−BisA50−PDAの製造)
300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン200mL(和光純薬工業社製)、DHBP12.94g(0.06mol、和光純薬工業社製)、BisA13.70g(0.06mol、日本ジーイープラスチックス社製)、PDA12.99g(0.12mol、大新化成工業社製)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。反応溶液を100℃で1時間攪拌し、DHBP、BisA、PDAの溶解を確認した後、PFA18.87g(0.58mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、5時間反応させた。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。
【0134】
析出した沈殿固体を減圧乾燥することにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が得られた。得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は8000であった。得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂(以下、樹脂bという。)の構造A:構造B(式(1)及び式(2)参照)の比率(モル比)は約50:50であることを、1H−NMRによって確認した。樹脂bの1H−NMRスペクトルを図2に示す。
【0135】
(DHBP50−BisA50−PDAの1H−NMR)
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.43ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.61ppm
BisA_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.25ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.45ppm
BisA由来のメチル基プロトンピーク:1.48ppm
【0136】
〔製造例3〕
(BisA−BAPPの製造)
コック付きの等圧滴下ロート及びジムロート冷却器がセットされた500mLのフラスコ内に、トルエン190mL及びイソブタノール10mLを、室温条件下で添加混合した。その後、BisA 27.4g(0.12mol、日本ジーイープラスチックス社製)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPという。)51.3g(0.125mol、和歌山精化工業社製、製品名「BAPP」)、フェノール0.9g(0.0096mol)を前記フラスコ内に室温下で添加混合した。この時点から系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。反応溶液を油浴に浸し、油浴の温度が65℃になってから、目視で粉状物質がなくなるのを確認した後、PFA19.5g(0.60mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、還流させて2時間反応させた。その後、反応中に生成した水を、トルエン、イソブタノールと共沸させることで系外に留去しながら反応させた。留去開始後、6時間還流を行った。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。析出した沈殿固体を減圧乾燥することで、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
【0137】
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量は約16000であった。得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成は、1H−NMRによって確認した。
【0138】
〔実施例1〜4〕
(熱硬化性樹脂組成物及び硬化成形体の製造)
表1に示す組成、配合量に基づき、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とフェノール化合物とジメチルホルムアミド(DMF)を混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。固形分濃度は、55〜60重量%となるように調製した。撹拌、脱泡には自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いた。得られた熱硬化性樹脂組成物を、PETフィルム上にアプリケーターを用いて塗工し、80℃で10分、150℃で10分、180℃で30分、220℃で60分間それぞれ保持し、オーブン中で熱硬化し、硬化成形体を得た。得られた硬化成形体の物性を測定した。その結果を表1、2に示す。
【0139】
〔比較例1、2〕
表1に示す組成及び配合量とした以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物を製造し、硬化成形体を得た。得られた硬化成形体の物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0140】
〔比較例3、4〕
表1に示す組成及び配合量とした以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物を製造した。実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物から硬化成形体を得ようと試みたが、硬化成形体を得ることができなかった。その結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1から示されるように、各実施例の熱硬化性樹脂組成物から得られた硬化成形体は、広い温度領域において熱線膨張率が低く、寸法安定性に優れることが確認された。また実施例2、実施例4から示されるように、二官能フェノール化合物を配合した熱硬化性樹脂組成物から得られた硬化成形体の場合、Tgより高い温度領域において熱線膨張率が一層低く、寸法安定性に一層優れることが確認された。一方、比較例1、2の硬化成形体は、熱線膨張率を低く維持することができず、寸法安定性に劣ることが確認された。三官能フェノール化合物を配合した比較例3、4では熱硬化性樹脂組成物から硬化成形体を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物、その成形体、及び硬化体は、積層板や半導体封止材等のエレクトロニクス材料、摩擦材や砥石等の結合材の分野において産業上の利用可能性を有し、各種電子機器としても好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造(A)及び下記式(2)で表される構造(B)を含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、
一官能又は二官能のフェノール化合物と、を含む熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(式中、R1〜R4は、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表し、Y1及びY2は、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表し、n及びmは、各々独立して、1〜500の整数を表す。なお、*は、結合部位を表す。)
【請求項2】
前記フェノール化合物が、二官能フェノール化合物である、請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
無機充填剤を更に含む、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
下記式(1)で表される構造(A)及び下記式(2)で表される構造(B)を含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、一官能又は二官能であるフェノール化合物と、を混合する工程を有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【化3】

【化4】

(式中、R1〜R4は、各々独立して、水素又は炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族の有機基を表し、Y1及びY2は、各々独立して、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表し、n及びmは、各々独立して、1〜500の整数を表す。なお、*は、結合部位を表す。)
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物、又は請求項4に記載の製造方法により得られる熱硬化性樹脂組成物から得られる成形体。
【請求項6】
請求項5に記載の成形体を硬化させて得られる硬化体。
【請求項7】
請求項5に記載の成形体、又は請求項6に記載の硬化体を含む電子機器。

【図1】
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【図2】
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