説明

ベーカリー用オーブンのための炉床及びかかる炉床を有するオーブン

【課題】パン、菓子パン、ケーキ又はそれに類する被加工製品の焼成室を少なくとも一つ有するベーカリー用オーブンのための炉床であって、パンなどの被加工製品の味覚的品質が優れ、特にパンの皮の部位で焼け焦げなどの不良品が発生しないように、炉床を軽量化するとともに熱慣性を低くする。
【解決手段】この炉床(1)は、ステンレス鋼又は類似の材質の複数のワイヤ(3)及び複数のケーブル(2)で織り成されたメッシュ構造体からなる。各ワイヤ及びケーブルは、同等の断面であり0.8mm未満の直径を有し、それら相互間の間隔どりが、各ワイヤ等の直径の四倍未満に選定される。この炉床は、その表裏間で対流がされて、熱量の通流が改善される。また、曲率半径も小さい。本発明はさらに、かかる炉床を有するベーカリー用オーブンにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーカリー用オーブンのための炉床及びかかる炉床を備えたオーブンに関する。
【背景技術】
【0002】
この炉床は、少なくとも一つの焼成室を有する設備内で、パン、菓子パン、ケーキ又はそれに類する被加工製品を焼成するために利用されることを目的としている。
【0003】
前記被加工製品は、焼成中、直接、あるいは焼成用のプレート、網もしくは鋳型又はそれに類するものといった、適合した焼成用支持体を介して、可動型又は固定型のこの炉床上に載置されている。
【0004】
前記炉床の下には、炉床加熱手段を設けることができる。
【0005】
現在、不連続的又は連続的に機能する以上の記述を満たす焼成装置が知られている。前者の場合、オーブンは、投入物と呼ばれる一定数量の被加工製品を格納し得る。この投入物は焼成の終了時にオーブンから引き出され、新たな投入物の焼成に場所を譲る。連続焼成用オーブンの場合には、被加工製品は、入口と出口の間の適切な運搬手段により焼成室を通って運ばれ、通過時間は焼成時間に対応する。
【0006】
不連続機能型オーブンにおける被加工製品投入物の窯入れ及び取出しのため、又さらには連続機能型オーブンの中のこれらの被加工製品の通過のため、直接又は焼成用プレート、網もしくは鋳型といったような適合した焼成用支持体を介して前記被加工製品が載置される焼成室の炉床は、可動なものとして、例えば特に退出式炉床と呼ばれる炉床の場合には滑動テーブルの形で、又は適切な焼成用ベルトの形で構想され得る。このベルトは、金属タイプのもの、又は合成材料製のもの、さらには石又は金属でできたヒンジ連結ブレード式のものであり得る。
【0007】
本発明が特にその目的としているオーブンは、焼成すべき被加工製品が、適合した加熱手段に付される炉床である焼成室の炉床と直接的に接触しているか又はその焼成用支持体を介して接触しているオーブンである。
【0008】
特に、この炉床の下には、加熱用の電気抵抗器、加熱用流体導管又はその他のあらゆる発熱手段が設置され得る。
【0009】
本明細書の以下の記述では、少なくとも部分的に炉床の下に延びているこれらの加熱手段を「炉床用ホットプレート」と呼ぶこととする。
【0010】
この場合、被加工製品は、輻射加熱及び/又は対流による焼成も受けることがわかってはいるものの、部分的に、この炉床を介した伝導により焼成される。
【0011】
輻射は、熱負荷を受けた焼成室の天井板及び炉床からの熱の分散の結果として得られる。この点に関しては、天井板も又、加熱手段を備えることができる。
【0012】
これらの被加工製品は同様に、焼成室内を移動する熱量媒体流体により対流によっても焼成され得る。一部のオーブンは、被加工製品の焼成を行なうためにこれらの加熱様式(伝導、輻射、対流)の各々を応用する。特に、これは、加熱可能な炉床及び天井板を含む前述のとおりのオーブンにおいて、適合した攪拌手段に焼成室の空気を付すことから成る。
【0013】
被加工製品が直接炉床上に載置された場合、熱量は、接触ゾーン内で被加工製品により直接吸収され、このため、焼成作業を続行するには、局所的に、炉床用ホットプレートを介して炉床に熱エネルギーの充填や追充填などをしなくてはならない。前記炉床用ホットプレートを介した単なる輻射による炉床の加熱や追加熱は、ある程度の慣性を呈し、その結果、炉床を介しての輻射及び伝導による焼成作業は減速させられる。この現象は、焼成用支持体を介して被加工製品がこの炉床上に載置されている場合に顕著であり、焼成用支持体は、一般的には透かしになっているものの、輻射による加熱に対するバリアを作り上げ、炉床から被加工製品に向かっての伝導による熱量の伝達の慣性を増大する。
【0014】
その結果、炉床と直接又は間接的に接触した状態にある被加工製品の下側と比べて、被加工製品の上面及び側面上で同一の条件で焼成が行なわれなくなる。
【0015】
味覚的品質が優れ、特にパンの皮の部位で優れた外観を呈する被加工製品を得るために、熱エネルギーの伝達順序が厳しい規則を満たしている焼成プロセスの良好な推移にとってはエネルギー伝達様式が極めて重要である。
【0016】
輸送手段の熱慣性と焼成手段の熱慣性とは、このプロセスに適合されなくてはならない。
【0017】
オーブン用のコンベアベルトとしては、金属製環、チェーンメッシュ、チェーンの環、ヒンジ連結角材、ヒンジ連結式の平面環及びそれに類似したもので構成されたコンベアベルトが知られている。これらのベルトは、15〜30kg/m2といった重いものである。そのため、これらは多大な熱慣性を呈している。
【0018】
この点に関して、欧州特許第0934699号明細書により、ヒンジ連結角材の形をしたかかるチェーンを有する焼成用装置が知られている。
【0019】
このような重く非常に高温の金属ベルトの上に被加工製品を載置する場合、エネルギーの伝達は、ほぼ瞬間的である。したがって、被加工製品内にベルトの構造の大まかな凹凸を刻印する赤熱鉄痕といったような被加工製品痕跡に結び付く、パンの皮の即時形成が存在する。この現象は、パンの金具焼けと呼ばれ、局所的焼け焦げと同一視されかねない。
【0020】
逆に、例えばトンネルオーブンの戻りの経路から低温で戻るこのような重量金属ベルトの上に、被加工製品が載置された場合、ペースト状態の被加工製品には、焼成操作が実効される前にベルトの構造の中に沈み込む時間があり、ベルトの凹凸形状がペースト状態の被加工製品にはまり込んでしまう。その結果、被加工製品に、その下部表面の部位で、深い痕跡がもたらされる。
【0021】
さらに、被加工製品に痕跡を残さないという利点を示す横断形状をもつ(ピアノの蝶番に匹敵する形態の)パレット式ベルトも知られている。逆に、さらに一層大きい重量のこれらのベルトは、上述の不具合をただただ増大させるばかりである。実際、炉床の最適な焼成温度においてパレット上に被加工製品を載置することは不可能である。したがって、ベルトは、慣性を補完するため高出力の加熱手段を用いて、被加工製品の配置後非常に迅速に適温に導かれなくてはならない。そのため、最適な焼成結果を得るには、不可能なほどの温度調整の必要性が生じる。
【0022】
最後に、一般にその戻りの経路の部位で加熱されている石の炉床を有するベルトが知られている。これらの炉床は、石の利用により、金具焼けの不具合ひいては金属支持体の場合のような瞬間的熱伝達の不具合を回避し、優れた焼成条件を守ることを可能にすることから、優れた焼成条件を確保する。反対に、多大な重量をもつかかるベルトは、さらに非常に嵩高いこと及び約600〜800mmといったように送り用ローラの直径が大きいことにより特徴づけされる。
【0023】
これらの大きな直径は、(一般に約300mmである)金属ベルトの場合と同様に、サーベルを用いた被加工製品の移送及び配置作業を困難にする。
【0024】
遂次的に機能できない重量システムは、いずれも、精巧な窯入れ装置を必要とする。しかし、この技術では、オーブンの部位での複数段の積重ねができない。
【0025】
これらの重量システムは同様に、その慣性のため、生産変更に適していない。実際、異なる被加工製品は、非常に異なる焼成温度及び焼成条件を必要とし得る。かくして、オーブンの炉床の熱慣性は、長い加熱や追加熱時間さらには冷却時間という形で現われ、それらの時間の間必然的に生産が停止される。
【0026】
重量ベルトは、それに付随する機械的応力に関する不具合をさらに有する。すなわち、その張力は、一般に、側縁に具備された駆動用チェーンを介して、確動的駆動により得られる。このようなチェーンの潤滑は、温度が300℃を超え得る焼成室内では困難である。この潤滑については、非常にコストの高い潤滑剤を必要とし、この潤滑剤は、厳しい食品規格を遵守しなければならないだけでなく、特に焼成の終了段階で無視できない燃焼の危険性を示しながらもかかる温度に適合しなければならない。実際、オーブンはこのとき空であり、したがって、エネルギーを取込むような投入物がないことから、エネルギーは、加熱室内に存在する構成要素の構造そのものに拡散され、加熱室の温度は利用される潤滑剤との関係において受容可能な閾値を上回りかねない。
【特許文献1】欧州特許第0934699号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、炉床の熱エネルギー充填や追充填の慣性の問題、又は最適な条件下での被加工製品の焼成を行なうための被加工製品の方向への熱量の伝達の問題を補正することを可能にする解決法を提案することによって、従来技術が示すこれらの不都合全体に応えようと試みるものである。
【0028】
発明的活動の枠内で、軽量でかつ熱慣性の低い炉床を作り出す可能性が想定された。
【課題を解決するための手段】
【0029】
このため、本発明は、少なくとも一つの焼成室を有する設備の中で、パン、菓子パン、ケーキ又はそれに類する被加工製品の焼成のために利用することを目的とするベーカリー用オーブンのための炉床において、ステンレス鋼又は類似のものでできたワイヤ及びケーブルで織り成されたメッシュ構造体を有することを特徴とする炉床に関する。
【0030】
前記被加工製品は、焼成中、可動型又は固定型のこの炉床上に、直接載置させるか、又は焼成用のプレート、網もしくは鋳型又はそれに類するものといった、適合した焼成用支持体を介して、載置させる。炉床の加熱用手段が、前記炉床の下に設置されている。
【0031】
その上、本発明に係る炉床は、炉床の加熱用手段により、輻射、及び/又は、対流、及び/又は、伝導によって加熱され得るものとして構想されている。
【0032】
本発明のその他の特徴によると、炉床は、この炉床を介して、この炉床の上に載置されている被加工製品を補完的加熱できるような、対流のための透過性のあるものとして構想される。
【0033】
有利には、少なくとも一つの下流側の送り用ローラ及び上流側の送り用ローラのまわりに巻きつくことにより閉路状に進行する可動型炉床ベルトの形をした炉床は、摩擦により駆動され得るように構想されている。
【0034】
本発明による炉床の引張り強度は、この炉床が可動型ベルトの形をしている場合、この炉床の推移方向に対応する経糸の方向で、少なくとも一本のケーブル、好ましくは、複数のケーブルの組により与えられる。
【0035】
本発明は、また、各々一つの焼成室を含む単数又は複数のモジュールで構成された焼成用オーブンにおいて、モジュールのうちの一つのモジュールの焼成室が少なくとも本発明による炉床を有するオーブンにも関する。
【0036】
本発明は、添付の図を参照して以下の詳細な説明を読むことにより、さらに良く理解することができるものである。
−図1は、本発明に係る炉床の一実施形態の概略的平面図を表わす。
−図2は、テンショナローラに作用する有利なオートテンショナ手段に係合され閉路を描く炉床ベルトの形をした本発明に係る炉床の概略的断面図を表わす。
−図3は、そのベルトが部分的にまわりに巻きつくことになる二本の送り用ローラのうちの一本に対し作用するオートテンショナ手段を有する炉床ベルトを例示する、図2と類似した図である。
【0037】
以下の記述においては、添付図面の図1〜3を参照する。
【実施例】
【0038】
本発明は、少なくとも一つの焼成室を有する設備の中で、パン、菓子パン、ケーキ又はそれに類する被加工製品の焼成のために利用することを目的とするベーカリー用オーブン(図示せず)のための炉床1に関する。
【0039】
本発明によると、この炉床1は、ステンレス鋼又は類似のものでできた複数のワイヤ及び複数のケーブルで織り成されたメッシュ構造体を有する。
【0040】
ある一つの好ましい実施形態においては、この炉床1は、続々と流れていく炉床ベルトの形をした可動型炉床1の場合には被加工製品の前進方向に対応する経糸方向Cの複数のケーブル2と、緯糸方向Tの複数のワイヤ3との編組の結果として得られる。
【0041】
これらの各ケーブル2及び各ワイヤ3は、好ましくは、ステンレス鋼で作られる。本発明は、この材料選択に制限されるものでは全くなく、パン及びケーキ類製造設備において普通である温度範囲、特に300℃を超え得る最高焼成温度にその機械的品質の改変なく耐えることのできるその他の材料に拡大させることができる。
【0042】
織り成された外観をもつメッシュ構造を作るために使用される方法は、製織、編組、ニット加工又はそれに類するものである。
【0043】
この炉床1の構造は、基本的にその熱慣性を最小限にするように構想される。したがって、この構造には、断面積の小さいケーブル2とワイヤ3とが使用され、旧来の重量ベルトよりもかなり低い重量、ひいてはかなり低い熱慣性を得るようになる。
【0044】
特定の一実施例においては、本発明に係る炉床1は、同等の断面積及び小さい直径、特に0.8mm未満の直径を有する複数のケーブル2及び/又は複数のワイヤ3を内蔵しており、それぞれ経糸C及び緯糸Tの方向でのこれらの各ケーブル2相互間及び/又はこれらの各ワイヤ3相互間の間隔は、特に連続する二本のケーブル2又はワイヤ3相互間の最大の間隔どりが最小のケーブル2及び/又はワイヤ3の直径の四倍より大きくなることなく、これらの各ワイヤ3又は各ケーブル2自体の直径と同じ規模のものである。
【0045】
このようにして得られたフリース状のメッシュ構造体は、m2あたり5kg未満、好ましくはm2あたり2〜3kgの間に含まれる質量、ひいては特に低い熱慣性を有する炉床1を得ることを可能にする。
【0046】
本発明の一つの特徴によると、炉床1は、上部の面4上に直接載置されているか又は適合した焼成用支持体5を介して載置されている被加工製品が、加熱の補完ができるような対流のための透過性を有している。
【0047】
かかる構造を有する炉床1の熱慣性は、特に低いものである。
【0048】
かくして本発明によれば、本発明に係るこの構造には顕著な慣性がないことから、金属重量ベルトに固有の金具焼けの不具合を回避することが可能である。特に、こうしてオーブン内に入った直後から、被加工製品の表面及び芯部における温度勾配を、最適焼成条件を厳守しつつ完全に制御することが可能となる。
【0049】
炉床のメッシュの構造は非常に密であり平織物に類似していることから、その表面は滑らかで外観は規則的である。同様に、被加工製品には、温度の勾配及び維持の最適なサイクルを守ってこの炉床上に被加工製品を載置した直後に金具焼けのない焼成が開始し得るかぎりにおいて、迅速に得られる被加工製品の充分な表面強度の達成の前に、痕跡が発生することはない。
【0050】
ここで、理解すべきことは、炉床のこの構想は、その輻射による加熱を可能にするが、さらに、この炉床の一端部にある吸込口と反対側の端部にある吐出口との間で下で閉じられた状態で循環させられる熱量媒体の流体の対流による加熱をも可能にすることである。特に、細かく製織又は編組されたその構造体は、炉床用ホットプレートとも呼ばれる前記加熱手段と炉床との間の熱量媒体の流体の流路の導きに寄与する。
【0051】
なお、炉床1の透過性のため、炉床1の下に位置づけされたゾーン内に循環している対流による加熱用流体は、この炉床上に直接又は焼成用支持体5を介して載置されている被加工製品をかすめることができ、しかもそのために被加工製品のその上面上の焼成条件を修正することはない。
【0052】
本発明は、固定型炉床を伴う焼成装置に応用可能であるが、可動型炉床を伴う焼成装置内、特にトンネルオーブンタイプの連続焼成装置と呼ばれるものに特に有利であると思われる。この場合、炉床1は、炉床ベルトと呼ばれるベルトの形を呈する。
【0053】
以下では、図2及び図3に例示されているような閉路で進行する炉床ベルト6を伴うこのような装置についてより詳細に記述することとする。
【0054】
前述のとおり、メッシュの形をしたかかる炉床ベルト6の構成は、このベルトを約100〜200mmといった小さな直径の送り用ローラ7、8のまわりに巻付けることができるものにするという利点を有する。
【0055】
かかる配置は、この炉床ベルト6上に被加工製品を載置するか又はそれらをパン製造ラインの下流側のその他の作業ステーション上に移すのに有利である。かくして、被加工製品は、通常、サーベル9と呼ばれる工具を用いてかかる炉床ベルトの上に載置される。
【0056】
炉床ベルトの巻付けが大きい直径の送り用ローラのまわりで行なわれる場合、このサーベル9の端部10は、それが炉床ベルトと同一平面にあるならばこの炉床ベルトに一定の最小距離を超えて近づくことはできない。ペースト状態で被加工製品が、炉床ベルトとこのサーベルとの間に落ちるのを避けるため、炉床ベルトよりわずか上に位置づけるような形でサーベルを持ち上げることが頻繁に行なわれる。しかしながら、たとえわずかな高さであってもこのようにこの炉床ベルト上に被加工製品を載置しようとして、被加工製品を改変又は変形させる可能性がある。
【0057】
本発明を通して可能であるように、縮小された断面積をもつ送り用ローラ8上に巻付けることにより、炉床ベルトが画定する輸送の平面と同じ平面内にサーベルを維持しながらも、炉床ベルト6とサーベル9との間の離隔距離Eを最小限におさえることができる。こうして、改変も痕跡もない被加工製品の移送が可能となる。
【0058】
本発明による非常に細かい炉床ベルト6の利用は、過度に脆いものと推定されるかかる炉床ベルトに関する旧来の偏見に対抗するものである。
【0059】
軽量構造は、それでも、以上で説明してきたとおりの経糸Cにケーブル2を配備することにより、炉床ベルトの推移方向Dで充分な機械的強度を有している。
【0060】
この炉床ベルト6の軽量性を保つために、チェーンによる確動的駆動システムは削除された。このため、このチェーンの潤滑制約条件に関連する全ての不具合及び危険性がなくなる。
【0061】
実際、この炉床ベルト6は、その軌道の両端部に位置づけされた二本の送り用ローラ7、8の間でそれに張力を付加することを介して、摩擦により駆動されている。一般に、これらの送り用ローラ7、8は、炉床ベルト6が通過することとなる焼成室の両側に配置されている。この点に関して、この炉床ベルトには、有利にも温度変動の結果としての膨張現象を補償することになるオートテンショナ手段11が付随している。
【0062】
これらのオートテンショナ手段11は、好ましくは、炉床ベルト6が部分的に巻付くことになる特定のテンショナローラ13上又は送り用ローラ8(図3参照)のうちの一本の送り用ローラ上に作用を及ぼす少なくとも一つのプランジャシリンダ12により構成されている。特にこのテンショナローラ13は、炉床ベルト6の上流側14の端部に配置された送り用ローラ8の下で前方に位置づけされる。かくしてこの炉床ベルト6は、このテンショナローラ13と前記上流側の送り用ローラ8との間で、被加工製品の載置用サーベル9の下に延びる上昇斜面15を描く。
【0063】
この配置は、炉床ベルト6が上流側の送り用ローラ8上ひいてはこの上流側の送り用ローラ8と下流側の送り用ローラ7との間に延びるその輸送長全体にわたり係合する前でも、この炉床ベルト6の側方位置を制御することを可能にする。特に、前記オートテンショナ手段11はさらに有利にも、炉床ベルト6の整列性との関係における、これらのオートテンショナ手段が作用しているローラ8、13の平行性の調整用手段を構成する。実際、これらのオートテンショナ手段11は、炉床ベルト6との関係におけるその平行性を調節する目的で前記の送り用ローラ8又はテンショナローラ13の両側で作用可能である少なくとも二本のプランジャシリンダ12を有しており、これらのプランジャシリンダ12は、特に炉床ベルトの整列状態の検出手段16によって制御されている。
【0064】
このような検出手段16は、光学式及び/又は機械式とすることができ、この炉床ベルト6の側方はみ出しを検出し、かくして、ローラ8、13の平行性に作用することによってこの炉床ベルト6の適切な整列や整列修正を確保する二本のプランジャシリンダ12のうちのいずれか一方を制御するように構想され得る。
【0065】
すでに前述したとおり、本発明に係る炉床1は、それが可動式であるか固定式であるかに関わらずあらゆるタイプのベーカリー用オーブンにおいて応用可能であるのであり、例示として、及び網羅的ではなく、単段式又は複数段式のトンネルオーブン又は従来のオーブンにおいて応用可能である。
【0066】
この点において、本発明はさらに、各々一つの焼成室を含む単数又は複数のモジュールから成り、少なくともこれらのモジュールのうちの一つのモジュールの焼成室が前述のとおりの可動式又は固定式炉床を有しているオーブンにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る炉床の一実施形態の概略的平面図
【図2】オートテンショナ手段を含む本発明に係る炉床の概略的断面図
【図3】一本の送り用ローラに対し作用するオートテンショナ手段の例
【符号の説明】
【0068】
1 炉床
2 ケーブル
3 ワイヤ
5 支持体
6 炉床ベルト
7、8 ローラ
11 オートテンショナ手段
12 プランジャシリンダ
13 テンショナローラ
15 斜面
16 検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン、菓子パン、ケーキ等の被加工製品の焼成室を少なくとも一つ有するベーカリー用オーブンのための炉床(1)において、ステンレス鋼又は類似の材質の複数のワイヤ(3)と複数のケーブル(2)とで織り成されたメッシュ構造体からなることを特徴とする、ベーカリー用オーブンのための炉床。
【請求項2】
各ケーブル(2)及び/又は各ワイヤ(3)が、同等の断面積及び0.8mm未満の直径を有し、これらの各ケーブル(2)及び/又は各ワイヤ(3)相互間の間隔どりが、各ケーブル(2)及び/又は各ワイヤ(3)の直径の四倍未満であることを特徴とする、請求項1に記載のベーカリー用オーブンのための炉床(1)。
【請求項3】
前記炉床が、m2あたり、5kgの質量、好ましくは2〜3kgの間に含まれる質量を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のベーカリー用オーブンのための炉床(1)。
【請求項4】
前記炉床が、この炉床(1)の上に載置されている被加工製品を補完的加熱できるような対流のための透過性を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載のベーカリー用オーブンのための炉床(1)。
【請求項5】
前記炉床が、可動型であり、少なくとも下流側の送り用ローラ(7)及び上流側の送り用ローラ(8)のまわりに巻き付いて閉路状に進行する炉床ベルトによって画定されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の炉床(1)。
【請求項6】
ケーブル(2)が、炉床ベルト(6)の進行方向(D)に対応する経糸方向Cに延びており、ワイヤ(3)が緯糸の方向Tに延びていることを特徴とする、請求項5に記載のベーカリー用オーブンのための炉床(1)。
【請求項7】
少なくとも上流側の送り用ローラ(8)が、200mm未満の断面で画定されていることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載のベーカリー用オーブンのための炉床(1)。
【請求項8】
炉床ベルト(6)が、摩擦により駆動され、自動的に張力を印加するオートテンショナ手段(11)に係合されることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一つに記載のベーカリー用オーブンのための炉床。
【請求項9】
オートテンショナ手段(11)が、前記炉床ベルト(6)が部分的に巻付くテンショナローラ(13)又は送り用ローラ(8)のうちの一本の送り用ローラ上に作用する少なくとも一つのプランジャシリンダ(12)で構成されていることを特徴とする、請求項8に記載のベーカリー用オーブンのための炉床(1)。
【請求項10】
炉床ベルト(6)が、テンショナローラ(13)と上流側の送り用ローラ(8)との間で上昇斜面(15)を描くように、テンショナローラ(13)が上流側の送り用ローラ(8)の下で前方に位置づけされていることを特徴とする、請求項9に記載のベーカリー用オーブンのための炉床(1)。
【請求項11】
オートテンショナ手段(11)が、炉床ベルト(6)の側方位置の調節のため場合に応じて送り用ローラ(8)又はテンショナローラ(13)の平行性の調整手段を構成することを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一つに記載のベーカリー用オーブンのための炉床(1)。
【請求項12】
オートテンショナ手段(11)が、炉床ベルト(6)に対するその平行性を調節する目的で前記送り用ローラ(8)又はテンショナローラ(13)の両側で作用することができるように構想された少なくとも二本のプランジャシリンダ(12)を有することを特徴とする、請求項11に記載のベーカリー用オーブンのための炉床(1)。
【請求項13】
オートテンショナ手段(11)が、炉床ベルト(6)の整列状態の検出手段(16)により制御されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載のベーカリー用オーブンのための炉床(1)。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の炉床を有するベーカリー用オーブン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−529515(P2008−529515A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554622(P2007−554622)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050132
【国際公開番号】WO2006/087492
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(595156780)メカテルム ソシエテ アノニム (3)