説明

ベーマイト粒子の製造方法、及びベーマイト粒子

【課題】ナノレベルのサイズで制御し、粒度分布幅が狭く(標準偏差10%以下)、高アスペクト比のベーマイト粒子を提供する。
【解決手段】アルミニウム金属塩水溶液中にアルカリ水溶液を添加し、得られた反応混合物中に水酸化アルミニウムのゲル状物質を生成する。次いで、前記ゲル状物質を含む前記反応混合物に対して室温以上の第1の温度で第1の熱処理を施し、次いで、前記第1の温度よりも高い第2の温度で第2の熱処理を施す。前記第2の熱処理の後、前記ゲル状物質を含む前記反応混合物に対して前記第2の熱処理における前記第2の温度よりも低い第3の温度で第3の熱処理を施し、次いで、前記ゲル状物質を含む前記反応混合物を室温以上の第4の温度で第4の熱処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーマイト粒子の製造方法、及びベーマイト粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ベーマイトの製造法は過去に種々提供されているが、一般的には原料の水酸化アルミニウムに水、金属触媒を加え、圧力釜で加熱し、反応熟成させる水熱法が中でも多く提供されている。前記水熱法の代表的な工程は、水酸化アルミニウムに金属などの反応促進触媒及び水を加えて得たスラリーの攪拌混合、耐圧容器中での加熱(水熱処理)、水洗、乾燥などから成り立っており、得られるベーマイト粒子の形状は針状、板状、粒状、リボン状、紡錘状、柱状、不定形などを呈する。
【0003】
例えば、針状ベーマイトの製造方法としては、特開2000−239014号公報に開示されている。この方法は、1.0μm以上の針状ベーマイトを製造するには適しているが、それ以下のサイズの粒子には適用できない。一方、特開平6−263436号公報で開示されている針状ベーマイトの製造方法では、粒子短軸径35nm、粒子長軸径360nmのサイズを有する粒子が得られるものの、出発溶液が希薄で収率も悪く、所望の大きさのベーマイト粒子を得る発展性も乏しい。
【0004】
また、板状ベーマイトの製造方法としては、例えば特開2000−86235号公報に開示されている。この方法ではアスペクト比10〜35の、μmサイズの板状ベーマイト粒子、及びアルミナ粒子を得ている。また、特開2003−221227号公報では、水熱法ではなく、乾燥粉末水酸化アルミニウムをオートクレーブ中、170℃にて加熱するものであるが、得られるベーマイトはナノサイズではなく(1〜2μm)、アスペクト比は5〜12と小さく、粒度分布にもばらつきがある。
【0005】
また、国内で市販されているベーマイト粒子としては巴工業株式会社の商品名CAM9010という粒子がある。このベーマイト粒子は短軸10−15nm、長軸約90nmの紡錘状粒子が5,6個縦につながった形状を示している。ただアスペクト比は6〜10と低く、つながる粒子の数を指定して任意の長さに制御できないばかりか、粒子を一つ一つに分けることができない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−239014号公報
【特許文献2】特開平6−263436号公報
【特許文献3】特開2000−86235号公報
【特許文献4】特開2003−221227号公報
【0007】
上記従来技術に開示されている製造方法によって得られる粒子はミクロンサイズとなり粒子サイズが大きいうえ、アスペクト比も10程度と小さいばかりか、粒度分布も広く、ナノサイズのレベルで形態制御ができていない。さらに、製造に際して、形態の制御や反応の促進の目的に、pHの低い硝酸や過酸化水素さらには各種金属を添加するために、製造方法や処理が複雑になる上、オートクレーブが腐食してしまうという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目したものである。その目的とするところはベーマイト粒子をナノレベルのサイズで制御し、粒度分布幅が狭く(標準偏差10%以下)、高アスペクト比を達成することができる新規な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、
アルミニウム金属塩水溶液中にアルカリ水溶液を添加し、得られた反応混合物中に水酸化アルミニウムのゲル状物質を生成する工程と、
前記ゲル状物質を含む前記反応混合物を室温以上の第1の温度で第1の熱処理を施す工程と、
前記第1の熱処理の後、前記ゲル状物質を含む前記反応混合物を前記第1の熱処理における前記第1の温度よりも高い第2の温度で第2の熱処理を施す工程と、
前記第2の熱処理の後、前記ゲル状物質を含む前記反応混合物を前記第2の熱処理における前記第2の温度よりも低い第3の温度で第3の熱処理を施す工程と、
前記第3の熱処理の後、前記ゲル状物質を含む前記反応混合物を室温以上の第4の温度で第4の熱処理を施す工程と、
を具えることを特徴とする、ベーマイト粒子の製造方法に関する。
【0010】
本発明によれば、ベーマイト粒子を製造するに際し、アルミニウム金属塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させ、ゲル状物質を含む反応混合物を製造するようにしている。したがって、成長過程にあるベーマイト粒子は前記ゲル状物質中で固定されるようになり、粒子同士の癒着や凝集を防止することができる。したがって、前記ベーマイト粒子の粒度分布幅を狭小化することができる。
【0011】
また、本発明によれば、第1の温度から第4の温度に設定された第1の熱処理から第4の熱処理を施してベーマイト粒子を製造するようにしている。第1の熱処理では、前記反応混合物中に生じたアルカリ金属塩の加水分解を促進し、前記反応混合物中でのゲル状物質の生成を促進するようにしている。また、それぞれ上記要件を満足する、高温、低温、及び中温の第2の熱処理から第4の熱処理を施すようにしているので、成長過程にあるベーマイト粒子は前記ゲル状物質中で固定された状態において、高いアスペクト比を有するとともに、ナノレベルサイズであり、その粒度分布が極めて狭小化された状態で成長するようになる。
【0012】
したがって、ナノレベルのサイズで制御された、粒度分布幅が狭く(標準偏差10%以下)、高アスペクト比のベーマイト粒子を得ることができるようになる。
【0013】
なお、前記第2の熱処理及び前記第4の熱処理は、主としてベーマイト粒子の成長に寄与するものであり、前記第3の熱処理は、主としてベーマイト粒子の粒度分布幅を狭小化させることに寄与するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、ナノレベルのサイズで制御し、粒度分布幅が狭く(標準偏差10%以下)、高アスペクト比のベーマイト粒子を得ることができる。
【0015】
また、本発明によれば、従来法でいう反応促進剤、形態制御剤は原料および添加するアルカリ溶液中に含まれているため、別途加える必要も無く、出発原料さえ決めてしまえば、あとは熱処理を加えるだけで所望の長さのベーマイト粒子を得る事ができる。また、別途の反応促進剤、形態制御剤が不要なため、製造コストを低減化することもできる。
【0016】
さらに、従来法と異なり原料を高濃度化し、積極的にゲルを利用する製法(ゲルゾル法)を採用しているので、本来大量生産に不向きな水熱法でも、1バッチあたりの仕込み量を増量させることができ、生産性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について詳述する。
【0018】
(反応混合物の生成)
本発明においては、最初にアルミニウム金属塩水溶液中にアルカリ水溶液を添加し、得られた反応混合物中に水酸化アルミニウムのゲル状物質を生成する。
【0019】
前記アルミニウム金属塩水溶液を構成するアルミニウム塩としては、塩化アルミニウム無水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化アルミニウム、臭化アルミニウム六水和物、ヨウ化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、乳酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物(ナトリウムミョウバン)、過塩素酸アルミニウム九水和物、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムs-ブトキシド、アルミニウムt-ブトキシドなどから選ばれる少なくとも1種類のアルミニウム金属塩が使用される。上記に挙げた中でも市場の入手のし易さ、取り扱いの容易さ、価格が安価な、塩化アルミニウム六水和物、硝酸アルミニウム九水和物、臭化アルミニウム六水和物、硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物(ナトリウムミョウバン)、アルミニウムイソプロポキシドが好ましい。
【0020】
また、前記アルカリ水溶液は前記アルミニウム金属塩の加水分解を促進するために反応系に添加するものである。前記アルカリ水溶液を構成するアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化バリウムなどから選ばれる少なくとも1種を例示することができる。特には、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0021】
なお、反応混合物中に副産物として、水に不溶な塩が生成するアルカリは適宜取り除く。
【0022】
アルカリ化合物の使用量は、アルミニウム金属塩に対し、モル比で2〜4倍であることが好ましい。2倍未満では反応原料が熱処理して反応生成物を生成するのに不十分であり、反応溶液のゲル化も起きず、収率良く粒子を得ることができない場合がある。4倍以上では逆にpHが高すぎ、アルカリがゲルを溶かしてしまい、癒着や凝集する粒子が増す場合がある。
【0023】
また、アルミニウム金属塩水溶液の濃度が1.0M−3.0Mであり、アルカリ水溶液の濃度が4.0M−10.0Mであることが好ましい。これによって、アルミニウム金属塩水溶液とアルカリ水溶液との反応混合物中のゲル状物質の生成を簡易に実現できるようになる。なお、前記アルミニウム金属塩水溶液における金属塩の濃度としては、前述したように、1.0M〜3.0Mで行なうことが好ましいが、生産性からそれぞれのアルミニウム金属塩溶解度上限の濃度がより好ましい。
【0024】
さらに、本発明においては、前記反応混合物の濃度を変化させることによって、目的とするベーマイト粒子の形態を制御することができる。例えば、前記アルミニウム金属塩水溶液に対して前記アルカリ水溶液を総て滴下し、10分間撹拌して得た前記反応混合物のpHが4〜8となるように、前記アルカリ水溶液のpHを制御することにより、前記ベーマイト粒子の形態を針状とすることができる。この場合、pH値の低下とともに、アスペクト比は増大する傾向にある。
【0025】
一方、前記反応混合物のpHが10〜12となるように、前記アルカリ水溶液のpHを制御することにより、前記ベーマイト粒子の形態を板状とすることができる。この場合、pH値の上昇とともに、アスペクト比は増大する傾向にある。
【0026】
なお、前記反応混合物のpHが4未満、若しくは12より大きくなってしまう場合、ベーマイト粒子の形状が不定形となったり、針状や板状などの形状が混在してしまったりする場合がある。
【0027】
前記反応混合物のpH値は、添加するアルカリ水溶液の濃度、容量を変更することで制御することができる。
【0028】
一方、前記アルミニウム金属塩水溶液と前記アルカリ水溶液との容量は等しいか、前記アルカリ水溶液が少ないことが好ましい。前記アルカリ水溶液の濃度が薄く、溶液の量が多すぎるとゲル化が難しくなる。前記アルミニウム金属塩の濃度と、前記アルミニウム金属塩及び前記アルカリ水溶液の容量を固定すれば、後の形態制御は前記アルカリ水溶液の濃度を変えれば良いだけとなるので、合成条件項目を少なくするために容量は等しいことがより好ましい。
【0029】
また、本発明では、前記アルミニウム金属塩水溶液の種類、すなわち前記アルミニウム塩の種類を適宜変化させることにより、前記ベーマイト粒子の形態を制御することができる。例えば、前記アルミニウム金属塩水溶液を塩化アルミニウム六水和物の水溶液又は硝酸アルミニウムの水溶液から構成した場合、ベーマイト粒子の形態を針状化することが容易となる。但し、前記塩化アルミニウム六水和物の水溶液を用いた場合に、アスペクト比のより高い針状のベーマイト粒子をより簡易に製造することができる。
【0030】
また、前記アルミニウム金属塩水溶液をアルミニウムイソプロポキシドの水溶液から構成した場合、前記ベーマイト粒子の形態を板状とすることが容易になる。
【0031】
以上のような工程を経ることにより、前記反応混合物中に前記ゲル状物質を生成することができる。この結果、以下に示す熱処理によるベーマイト粒子の成長過程において、成長過程にあるベーマイト粒子が前記ゲル状物質中で固定され、粒子同士の癒着や凝集が抑制されて、粒度分布幅が狭小化されたナノサイズレベルのベーマイト粒子を得ることができるようになる。
【0032】
なお、このようなゲル状物質を利用した粒子の成長方法は、一般にゲルゾル法と呼ばれている(T. Sugimoto, Monodispersed Particles, ELSEVER, Amsterdam, 2001.)。従来の水熱法では粒子成長中の粒子同士の癒着、凝集を防ぐために希薄溶液中で反応をさせなければならず、収量の面で不利であった。一方、本発明では、濃度を高め溶液をゲル化させるゲルゾル法を採用し、凝集や癒着を防いでいる。この結果、前記高濃度溶液の使用に起因して従来法に比べ優れた収量を得ることができる。
【0033】
(熱処理)
本発明においては、上述したゲル状物質を含む反応混合物を生成した後、第1の熱処理から第4の熱処理を順次に行う。なお、以下の熱処理は、成長過程にあるベーマイト粒子がゲル状物質内に固定された状態で行われるため、極めて狭小化された粒度分布幅(標準偏差)を実現することができる。
【0034】
第1の熱処理は、前記反応混合物を室温以上の第1の温度に加熱することによって行う。第1の熱処理は、主として、前記反応混合物内に生じた前記アルカリ金属塩の加水分解を促進し、前記反応混合物内における前記ゲル状物質の生成を促進させるためのものである。
【0035】
前記第1の温度としては、室温(25℃)〜140℃で行なうことが好ましいが、反応時間を考慮すると120℃から140℃であることが好ましい。140℃を越える温度で第1の熱処理を行なうと、長さが不揃いのベーマイト粒子が生成してしまい、以降の熱処理を施行しても前記ベーマイト粒子の粒度分布幅(標準偏差)を狭小化できない場合がある。なお、熱処理時間は24時間以上が好ましく、24時間未満では標準偏差の小さくなる効果が見られない。
【0036】
第1の熱処理の後、第2の熱処理を行う。この第2の熱処理では、前記反応混合物を前記第1の熱処理における第1の温度よりも高い第2の温度に加熱することによって行う。この第2の熱処理は、主として高アスペクト比のベーマイト粒子を得るために行う。
【0037】
前記第2の温度は前記第1の温度よりも高い温度で行う必要があり、具体的には140℃〜250℃の温度で行なうことができるが、特には170℃〜250℃であることが好ましい。140℃未満であると粒子生成に時間がかかるばかりでなく、標準偏差が大きくなる(粒度分布幅が広い)。また、250℃以上ではアスペクト比の小さな粒子を製造するには有利であるが、市販の通常グレードのオートクレーブの耐熱、耐圧容器が250℃で限界を迎えること、250℃のために大量のエネルギーを必要とすることから本製造方法では250℃以上を推奨しない。
【0038】
第2の熱処理における熱処理時間は、昇温段階を含め10〜30分以内が好ましく、前記第2の温度の値に依存して変化する。また、上記規定時間を越える加熱は著しく平均粒子径の標準偏差を悪化させるばかりか、針状粒子は紡錘形状に、板状粒子は粒状となり、アスペクト比を損失する。
【0039】
第2の熱処理の後、第3の熱処理を行う。この第3の熱処理では、前記第2の熱処理における第2の温度よりも低い第3の温度で熱処理を行う。この第3の熱処理は、主として前記ベーマイト粒子の粒度分布幅(標準偏差)を狭小化するために行う。
【0040】
前記第3の温度は、例えば130℃以下、好ましくは室温以下に設定する。そして、好ましくは前記第2の熱処理における前記第2の温度から急速に冷却して、前記第3の温度に設定する。この場合、冷却装置の費用、容器の耐温度差を考慮すると、前記熱処理を実施している容器を流水中に入れて行うことができる。なお、前記冷却に要する時間は短いほど好ましく、具体的には10分以内であることが好ましい。また、第3の熱処理時間は、前記冷却に要した時間も含め10分以上であることが好ましい。これによって、目的とするベーマイト粒子の粒度分布幅(標準偏差)をより狭小化することができるようになる。
【0041】
前記第3の熱処理の後、第4の熱処理を行う。この第4の熱処理では、室温以上の第4の温度で熱処理を行う。この第4の熱処理は、主として前記高アスペクト比のベーマイト粒子の成長を行う。
【0042】
前記第4の温度は室温以上に設定することが必要であり、好ましくは室温〜180℃の温度、特に好ましくは100℃〜180度の温度範囲に設定する。前記第4の温度が180℃よりも高いと、粒度分布幅を拡大させ、標準偏差を悪化させるばかりでなく、針状粒子は紡錘形状に、板状粒子は粒状となり、アスペクト比を損失する場合がある。詳しく述べると、第4の熱処理において、180℃以上の温度で熱処理を行なうと、生成していた粒子が再溶解、再結晶化(オストワルド熟成)し、粒子の形状、粒度分布幅が制御不能になる場合があり、これによって前記粒度分布幅を劣化させてしまう場合がある。また、前記第4の温度が100℃未満であると収率が悪化する場合がある。処理時間は4時間〜1週間であり、設定温度に応じて加熱時間が相違する。
【0043】
上記の熱処理後、前記反応生成物が入った容器を放冷し、遠心分離機を用いて生成したベーマイト粒子と溶液とを分離する。その後、副生成物の塩を除くために硝酸ナトリウム水溶液(0.5M)で遠心洗浄(3回)し、遠心水洗(1回)し、水メタノール混合溶液(体積比 水:メタノール=0.5:9.5)で遠心洗浄を1回行った後、乾燥させることにより、目的とするベーマイト粒子を得る。
【0044】
以上のような工程を経て得たベーマイト粒子は、例えば短軸径が1−10nmであり、長軸径が20−400nmであり、アスペクト比(長軸径/短軸径)が10−40である高アスペクト比の針状形態を呈するようになる。また、厚さが5−10nmであり、1辺の長さが20−80nmであり、アスペクト比(1辺/厚さ)が4−10である高アスペクト比の板状形態を呈するようになる。
【0045】
なお、針状のベーマイト粒子の場合、前記短軸径、前記長軸径、及び前記アスペクト比の平均値に対する標準偏差が10%以内であり、板状のベーマイト粒子の場合、前記厚さ、前記1辺の長さ、及び前記アスペクト比の平均値に対する標準偏差が10%以内である。
【0046】
また、TEM観察の結果、針状のベーマイト粒子の場合、短軸の径の大きさに応じて、直径が0.5nm〜9.5nmの中空部を有している場合があることが判明した。一方、板状のベーマイト粒子の場合、その厚さに応じて、厚さ0.5nm〜9.5nm、1辺が5nm〜70nmの中空部を有することが判明した。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および比較例により本発明の実施の形態を詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明において採用した分析方法および分析機器は下記の通りである。
【0048】
(1) pH pHメータを用い、測定した。
pHメータ:東亜電波工業製WM - 50EG
【0049】
(2) 粒子形状、長さ
透過型電子顕微鏡(TEM)にて、粒子形状を観察した。
<観察方法(粒子形状)>
試料を純粋(2段蒸留水)にて希釈後、超音波洗浄器に15分間供した。その後銅メッシュ上の親水処理済カーボン被覆コロジオン膜に試料を塗布し、乾燥させて観察試料を準備した。TEMにてその試料の電子顕微鏡像を120 KV、70 mA、10万倍にて撮影して、観察した。
TEM用銅メッシュ:マイクログリット150-Bメッシュ、カーボン補強済み 応研商事株式会社
透過型電子顕微鏡:JEOL JEM-1200EX II 日本電子株式会社
<観察方法(粒子長さ)>
透過型電子顕微鏡にて撮影した写真を市販のスキャナーで電子データとして取り込み、市販のパソコン上で長さを測るソフトを用いて粒子の長さを測定した。短軸径、長軸径、厚さ、一辺の長さ共にそれぞれ無作為に100個体選び、測定した。
ソフト名:Scion Image for Windows(登録商標) Scion corp.
【0050】
(3) 粒子断面
粒透過型電子顕微鏡(TEM)にて、粒子断面を測定した。
<観察方法(粒子断面)>
凍結乾燥して得られた固体ベーマイト粒子をエポキシ樹脂に入れ、粒子を樹脂に包理した。硬化した樹脂を常温にてウルトラミクロトームを用いて厚さ約60〜100nmに薄片化した。その後、TEM用グリッドに薄片をつけ、観察試料を準備した。透過型電子顕微鏡にてその試料の電子顕微鏡像を300 KV、40万倍にて撮影し、観察した。
エポキシ樹脂:EPON812 応研商事株式会社
ウルトラミクロトーム:FC-S型ミクロトームREICHERT社
透過型電子顕微鏡:H-9000 株式会社日立製作所
【0051】
(4) ベーマイトの同定
粉末X線回折装置を用いて観察した。
<観察方法>
試料を測定用無反射板に圧粉することにより、これを観察試料とし、X線解析装置にて測定、ベーマイトのJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards) 21-1307と比較することにより同定した。
X線解析装置:RINT-2000 理学電機
【0052】
(実施例1)
機械攪拌機を備えたテフロン(登録商標)製ビーカーに塩化アルミニウム六水和物(2.0M、20ml、25 ℃)を入れ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(4.80M、20ml、25 ℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH = 4.54)。溶液10mlずつをテフロン(登録商標)ライナーを備えたオートクレーブに分け、オーブンで120℃、24時間経時させた(第1の熱処理)。第1の熱処理終了後、そのままオートクレーブをオイルバスへ移し、180℃で20分間加熱した(第2の熱処理)。
【0053】
第2の熱処理終了後、前記オートクレーブを40秒以内に流水へ入れ、約10℃まで急速冷却した(第3の熱処理)。なお、この第3の熱処理は、前記急速冷却時間を含め、約1時間続けた。次いで、第3の熱処理終了後、前記オートクレーブを再びオーブンへ入れ、140℃で、1週間加熱を続けた(第4の熱処理)。第4の熱処理終了後、前記オートクレーブを流水で冷やし、遠心分離(18000rpm、30min)で上澄みを除去した後、硝酸ナトリウム水溶液(0.5M)で遠心洗浄を3回、遠心水洗を1回、水メタノール混合溶液(体積比 水:メタノール=0.5:9.5)遠心洗浄を1回行った。その後凍結乾燥機を用い乾燥させることにより無色結晶を得た。
【0054】
前記無色結晶をX線回折で調べた結果、ベーマイトであることを確認した。また、前記ベーマイトの物性を調べたところ、長軸径が350±37nm、短軸径が5.5±0.5nm、アスペクト比が約45〜80の針状結晶であることが判明した(図1参照)。また、短軸断面を観察すると中空構造を有していることが判明した(図12参照)。なお、このような中空構造は、以下に示す実施例2、5、6、7、8、比較例1、2の方法で得られる針状のベーマイト粒子でも同じように観察することができた。
【0055】
(実施例2)
水酸化ナトリウムの濃度を4.80Mから5.10Mに変化させた以外は、実施例1と同様に滴下及び撹拌を行い、溶液を生成した。なお、この溶液のpHは7.18であった。その後、実施例1と同様にして第1の熱処理から第4の熱処理、並びに冷却、洗浄及び乾燥処理を行い、無色結晶を得た。X線回折の結果、前記無色結晶はベーマイトであり、長軸径が115±10nm、短軸径が4.6±0.6nm、アスペクト比が約20〜30の針状結晶であることが判明した(図2参照)。
【0056】
(実施例3)
水酸化ナトリウムの濃度を4.80Mから5.40Mに変化させた以外は、実施例1と同様に滴下及び撹拌を行い、溶液を生成した。なお、この溶液のpHは9.92であった。その後、実施例1と同様にして第1の熱処理から第4の熱処理、並びに冷却、洗浄及び乾燥処理を行い、無色結晶を得た。X線回折の結果、前記無色結晶はベーマイトであり、厚さが7.4±0.6nm、1辺が35±4nm、アスペクト比が約4〜6の板状結晶であることが判明した(図3参照)。また、この板状結晶の断面を観察すると、中空構造を有していた(図13参照)。このような中空構造は以下に示す実施例4の方法で得られる板状ベーマイト粒子でも同じように観察することができた。
【0057】
(実施例4)
水酸化ナトリウムの濃度を4.80Mから5.85Mに変化させた以外は、実施例1と同様に滴下及び撹拌を行い、溶液を生成した。なお、この溶液のpHは11.48であった。その後、実施例1と同様にして第1の熱処理から第4の熱処理、並びに冷却、洗浄及び乾燥処理を行い、無色結晶を得た。X線回折の結果、前記無色結晶はベーマイトであり、厚さが6.1±0.5nm、1辺が27±3nm、アスペクト比が約4〜5の板状結晶であることが判明した(図4参照)。
【0058】
(実施例5)
機械攪拌機を備えたテフロン(登録商標)製ビーカーに硝酸アルミ九水和物(1.50M、20ml、25℃)を入れ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(4.50M、20ml、 25℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH =3.59)。溶液10mlずつをテフロン(登録商標)ライナーを備えたオートクレーブに分け、オーブンで120℃、24時間経時させた(第1の熱処理)。第1の熱処理終了後、そのままオートクレーブをオイルバスへ移し、180℃で16分間加熱した(第2の熱処理)。
【0059】
第2の熱処理終了後、前記オートクレーブを40秒以内に流水へ入れ、約10℃まで急速冷却した(第3の熱処理)。なお、この第3の熱処理は、前記急速冷却時間を含め、約1時間続けた。次いで、第3の熱処理終了後、前記オートクレーブを再びオーブンへ入れ、140℃で、4日間加熱を続けた(第4の熱処理)。第4の熱処理終了後、実施例1と同様に、冷却、洗浄及び乾燥処理を行い、無色結晶を得た。
【0060】
前記無色結晶をX線回折で調べた結果、ベーマイトであることを確認した。また、前記ベーマイトの物性を調べたところ、長軸径が278±25nm、短軸径が5.4±0.5nm、アスペクト比が約45〜60の針状結晶であることが判明した(図5参照)。
【0061】
(実施例6)
硝酸アルミ九水和物の濃度を1.50Mから5.10Mに変化させた以外は、実施例5と同様に滴下及び撹拌を行い、溶液を生成した。なお、この溶液のpHは5.11であった。その後、実施例5と同様にして第1の熱処理から第4の熱処理、並びに冷却、洗浄及び乾燥処理を行い、無色結晶を得た。X線回折の結果、前記無色結晶はベーマイトであり、長軸径が165±15nm、短軸径が4.7±0.4nm、アスペクト比が約20〜40の針状結晶であることが判明した(図6参照)。
【0062】
(実施例7)
硝酸アルミ九水和物の濃度を1.50Mから5.40Mに変化させた以外は、実施例5と同様に滴下及び撹拌を行い、溶液を生成した。なお、この溶液のpHは7.20であった。その後、実施例5と同様にして第1の熱処理から第4の熱処理、並びに冷却、洗浄及び乾燥処理を行い、無色結晶を得た。X線回折の結果、前記無色結晶はベーマイトであり、長軸径が80±8nm、短軸径が5.2±0.6nm、アスペクト比が約10〜18の針状結晶であることが判明した(図7参照)。
【0063】
(実施例8)
機械攪拌機を備えたテフロン(登録商標)製ビーカーに硫酸アルミニウムナトリウム12水和物(2.0M、20ml、25℃)を入れ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(4.00M、20ml、25℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH = 4.13)。溶液10mlずつをテフロン(登録商標)ライナーを備えたオートクレーブに分け、オーブンで120℃、24時間経時させた(第1の熱処理)。第1の熱処理終了後、そのままオートクレーブをオイルバスへ移し、180℃で20分間加熱した(第2の熱処理)。
【0064】
第2の熱処理終了後、前記オートクレーブを40秒以内に流水へ入れ、約10℃まで急速冷却した(第3の熱処理)。なお、この第3の熱処理は、前記急速冷却時間を含め、約1時間続けた。次いで、第3の熱処理終了後、前記オートクレーブを再びオーブンへ入れ、140℃で、4日間加熱を続けた(第4の熱処理)。第4の熱処理終了後、実施例1と同様に、冷却、洗浄及び乾燥処理を行い、無色結晶を得た。
【0065】
前記無色結晶をX線回折で調べた結果、ベーマイトであることを確認した。また、前記ベーマイトの物性を調べたところ、長軸径が360±34nm、短軸径が5.5±0.5nm、アスペクト比が約50〜80の針状結晶であることが判明した(図8参照)。
【0066】
(比較例1)
機械攪拌機を備えたテフロン(登録商標)製ビーカーに塩化アルミニウム六水和物(2.0M、20ml、25 ℃)を入れ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(5.10M、20ml、25 ℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH = 7.05)。溶液10mlずつをテフロン(登録商標)ライナーを備えたオートクレーブに分け、オーブンで180℃、8時間経時させた。
【0067】
熱処理後、前記オートクレーブを流水で冷やし、遠心分離(18000rpm、30min)で上澄みを除去した後、硝酸ナトリウム水溶液(0.5M)で遠心洗浄を3回、遠心水洗を1回、水メタノール混合溶液(体積比 水:メタノール=0.5:9.5)遠心洗浄を1回行った。その後、凍結乾燥機を用いて乾燥させることにより無色結晶を得た。前記無色結晶をX線回折で調べた結果、ベーマイトであることを確認した。また、前記ベーマイトの物性を調べたところ、長軸径が129±21nm、短軸径が5.3±1.0nm、アスペクト比が約15〜30の針状結晶であることが判明した(図9参照)。
【0068】
(比較例2)
機械攪拌機を備えたテフロン(登録商標)製ビーカーに硝酸アルミニウム九水和物(1.50M、20ml、25 ℃)を入れ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(5.40M、20ml、25 ℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH = 7.14)。溶液10mlずつをテフロン(登録商標)ライナーを備えたオートクレーブに分け、オーブンで180℃、5時間経時させた。
【0069】
熱処理後、比較例1と同様の冷却、洗浄及び乾燥の操作を施し、無色結晶を得た。前記無色結晶をX線回折で調べた結果、ベーマイトであることを確認した。また、前記ベーマイトの物性を調べたところ、長軸径が78±20nm、短軸径が4.8±0.9nm、アスペクト比が約10〜25の針状結晶であることが判明した(図10参照)。
【0070】
(比較例3)
水酸化ナトリウムの濃度を5.10Mから5.34Mに変化させた以外は、比較例1と同様に滴下及び撹拌を行い、溶液を生成した。なお、この溶液のpHは9.58であった。その後、比較例1と同様にして熱処理、並びに冷却、洗浄及び乾燥処理を行い、無色結晶を得た。X線回折の結果、前記無色結晶はベーマイトであることが判明した。但し、ベーマイトの形状はそれぞれ異なる不定形であることが判明した(図11参照)。
【0071】
図1〜図8に各々実施例1〜8のベーマイトに関する電子顕微鏡写真像を示し、図9〜10に各々比較例1及び2の電子顕微鏡写真像を示した。また、図14及び図15に、実施例2及び比較例1における針状ベーマイトの短軸径分布のグラフ及び長軸径分布のグラフを示した。さらに、表1に実施例および比較例によって得られた粒子の長さ、形状をまとめた。
【0072】
【表1】

【0073】
以上、表1から明らかなように、本発明の方法によれば短軸径1〜10nm、長軸径20〜400nmであって、高アスペクト比(長軸径/短軸径)の針状ベーマイト粒子、及び厚さ5〜10nm、1辺が20〜80nmであって、高アスペクト比(1辺 / 厚さ)の板状ベーマイト粒子が得られることが分かる。一方、本発明の異なり、熱処理を1段で実施した比較例においては、比較的小さいアスペクト比であって、比較的大きな標準偏差の針状ベーマイト粒子あるいは不定形のベーマイト粒子が得られることが判明した。
【0074】
また、本発明によれば、従来法でいう反応促進剤、形態制御剤は原料および添加するアルカリ溶液中に含まれているため、別途加える必要も無く、出発原料さえ決めてしまえば、あとは熱処理を加えるだけで所望の長さのベーマイト粒子を得る事ができる。また、別途の反応促進剤、形態制御剤が不要なため、製造コストを低減化することもできる。
【0075】
さらに、従来法と異なり原料を高濃度化し、積極的にゲルを利用する製法(ゲルゾル法)を採用しているので、本来大量生産に不向きな水熱法でも、1バッチあたりの仕込み量を増量させることができ、生産性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の製造方法は、プラスチック、ゴム等の難燃化、機械的物性向上のフィラー、触媒担体、製紙用塗工内充填剤、塗料用顔料、アルミナの原料等、要求目的に応じた形態のベーマイト粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例2により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例4により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例5により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例6により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例7により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例8により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図9】比較例1により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図10】比較例2により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図11】比較例3により製造されたベーマイトの電子顕微鏡写真である。
【図12】針状ベーマイト粒子断面の電子顕微鏡写真である。
【図13】板状ベーマイト粒子断面の電子顕微鏡写真である。
【図14】実施例2及び比較例1により製造されたベーマイトの短軸径分布を示すグラフである。
【図15】実施例2及び比較例1により製造されたベーマイトの長軸径分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム金属塩水溶液中にアルカリ水溶液を添加し、得られた反応混合物中に水酸化アルミニウムのゲル状物質を生成する工程と、
前記ゲル状物質を含む前記反応混合物を室温以上の第1の温度で第1の熱処理を施す工程と、
前記第1の熱処理の後、前記ゲル状物質を含む前記反応混合物を前記第1の熱処理における前記第1の温度よりも高い第2の温度で第2の熱処理を施す工程と、
前記第2の熱処理の後、前記ゲル状物質を含む前記反応混合物を前記第2の熱処理における前記第2の温度よりも低い第3の温度で第3の熱処理を施す工程と、
前記第3の熱処理の後、前記ゲル状物質を含む前記反応混合物を室温以上の第4の温度で第4の熱処理を施す工程と、
を具えることを特徴とする、ベーマイト粒子の製造方法。
【請求項2】
前記アルミニウム金属塩水溶液濃度と前記アルカリ水溶液濃度との比が、モル比において、1:2〜4であることを特徴とする、請求項1に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項3】
前記アルミニウム金属塩水溶液の濃度が1.0M〜3.0Mであって、前記アルカリ水溶液の濃度が4.0M〜10.0Mであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項4】
前記反応混合物のpHを変化させることにより、前記ベーマイト粒子の形態を変化させることを特徴とする、請求項3に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項5】
前記アルミニウム金属塩水溶液中に前記アルカリ水溶液を添加し、10分間撹拌して得た前記反応混合物のpHが4〜8となるようにして前記アルカリ水溶液のpHを制御し、前記ベーマイト粒子の形態を針状とすることを特徴とする、請求項4に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項6】
前記アルミニウム金属塩水溶液中に前記アルカリ水溶液を添加し、10分間撹拌して得た前記反応混合物のpHが10〜12となるようにして前記アルカリ水溶液のpHを制御し、前記ベーマイト粒子の形態を板状とすることを特徴とする、請求項4に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム金属塩水溶液の種類を変化させることにより、前記ベーマイト粒子の形態を変化させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項8】
前記アルミニウム金属塩水溶液を塩化アルミニウム六水和物の水溶液から構成し、前記ベーマイト粒子の形態を針状とすることを特徴とする、請求項7に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項9】
前記アルミニウム金属塩水溶液をアルミニウムイソプロポキシドの水溶液から構成し、前記ベーマイト粒子の形態を板状とすることを特徴とする、請求項7に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項10】
前記第1の熱処理における前記第1の温度が、室温から140℃の温度範囲であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項11】
前記第2の熱処理における前記第2の温度が、140℃〜250℃の温度範囲であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項12】
前記第3の熱処理における前記第3の温度が、130℃以下の温度範囲であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項13】
前記第2の熱処理における前記第2の温度から、前記第3の熱処理における前記第3の温度までの冷却時間が10分以内であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項14】
前記第4の熱処理における前記第4の温度が、室温から180℃の温度範囲であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一に記載のベーマイト粒子の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一に記載の製造方法で得られたことを特徴とする、ベーマイト粒子。
【請求項16】
前記ベーマイト粒子の、短軸径が1−10nmであり、長軸径が20−400nmであり、アスペクト比が10−40であって、前記ベーマイト粒子は針状の形態を呈することを特徴とする、請求項15に記載のベーマイト粒子。
【請求項17】
前記ベーマイト粒子における、前記短軸径、前記長軸径、及び前記アスペクト比の平均値に対する標準偏差が10%以内であることを特徴とする、請求項16に記載のベーマイト粒子。
【請求項18】
前記ベーマイト粒子の、厚さが5−10nmであり、1辺の長さが20−80nmであり、アスペクト比が4−10であって、前記ベーマイト粒子は板状の形態を呈することを特徴とする、請求項15に記載のベーマイト粒子。
【請求項19】
前記ベーマイト粒子における、前記厚さ、前記1辺の長さ、及び前記アスペクト比の平均値に対する標準偏差が10%以内であることを特徴とする、請求項18に記載のベーマイト粒子。
【請求項20】
前記ベーマイト粒子が中空部を有することを特徴とする、請求項15に記載のベーマイト粒子。

【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−56739(P2006−56739A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239442(P2004−239442)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(504316643)
【Fターム(参考)】