説明

ペットフード被覆組成物及びこれを使用したセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフード

【課題】エキスを含むペットフード被覆組成物及びこれを使用したセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフードを提供すること。
【解決手段】ソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードに使用する粉末エキスを含む被覆組成物であって、被覆組成物中おから粉末を30質量部以上90質量部以下含むことを特徴とする被覆組成物である。また、前記被覆組成物を使用したソフトドライタイプ又はセミモイストタイプのペットフードである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフード被覆組成物及びこれを使用したセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
犬用のペットフードには、水分が10質量%以下のドライタイプ、水分が75質量%程度のウェットタイプ、水分が25質量%〜35質量%程度で加熱発泡させたソフトドライタイプや発泡させないセミモイストタイプ、その他としてジャーキー類や小麦菓子等がある。
ドライタイプのペットフードは、例えば、押出機を使用して、小麦粉、とうもろこし、脱脂大豆、チキンミール、ビーフミール、ミネラルやビタミン等を所定の量で配合したペットフード用原料混合物に適量の水(原料混合物100質量部に対して水を10〜40質量部の割合)を加えて100℃〜150℃で押し出し、それを所定の長さに切断した後、水分含量が10質量%以下になるまで乾燥することにより製造することができる。
水を加えた原料混合物の混練温度およびダイスからの押出温度が100℃以上であると、一般に膨化したペットフードが得られる。
ソフトドライタイプのペットフードは、前記した押出機によるドライタイプのペットフードの製造工程において、原料混合物に加える水の量をドライタイプのペットフードの製造時よりも多くし、押し出し切断後の乾燥処理を調整することで水分含量を25〜35質量%に調節することにより得ることができる。
セミモイストタイプのペットフードは、押出機による押し出し時に冷却して膨化させないようにすることにより得ることができる。
【0003】
大半のドライタイプのペットフードにおいて、ペットの嗜好性を高める手法として油脂やエキスで被覆することが行われている。
エキスの添加は嗜好性を決定する要因として大きな効果がある。
添加するエキスとしては、チキンエキス、ビーフエキス、ポークエキス、マトンエキスなどの畜肉エキス、カツオエキス、イワシエキス、マグロエキス、サバエキス、サケエキスなどの魚介エキス、酵母エキスなどが挙げられる。
ソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードなど水分の多いペットフードでは、エキスで被覆を行うとその水分が被覆したエキスに移行し表面がべたつくためラインの汚染や包装機の不具合の原因となっている。
そのため、ソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードではエキスで被覆することはあまり行われてはいない。
ソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードを被覆する例として、酒石酸又はリンゴ酸をペットフードの表面にまぶすか、または水溶液または乳濁液として表面に塗布または噴霧することが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、食塩および必要に応じて酸と魚介類および/または肉類のエキスのうちの少なくとも一方を含む表面処理剤を固形状ペットフードの表面に付着せしめることを特徴とする、ペットフードが知られている(例えば特許文献2参照)。
また、固形状ペットフードにおいて該ペットフード表面に酸性物質を粉末状または顆粒状で付着せしめたことを特徴とするペットフードが知られている(例えば特許文献3参照)。
また、酢酸及び蜂蜜を含有することを特徴とする香液組成物を被覆することが知られている(例えば特許文献4参照)。
さらに、ペットフードが、水分含量15〜40質量%のモイストタイプの粒状ペットフードであって、該粒状ペットフードの表面部分に、乳製品フレーバーを0.01〜0.1質量%の割合(外割り)で被覆してなるペットフードが知られている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−24860号公報
【特許文献2】特開平6−70695号公報
【特許文献3】特開平6−70697号公報
【特許文献4】特開2006−136292号公報
【特許文献5】特開2003−164262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のとおり、ソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードなど水分の多いペットフードでは、エキスで被覆を行うとその水分が被覆したエキスに移行し表面がべたつくためラインの汚染や包装機の不具合の原因となっているため、大半のドライタイプのペットフードでは行われているエキスでの被覆が行われていない。
従って、本発明の目的は、エキスを含むペットフード被覆組成物及びこれを使用したセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードに使用する粉末エキスを含む被覆組成物におから粉末を配合することで表面のベタつきを抑えることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、ソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードに使用する粉末エキスを含む被覆組成物であって、被覆組成物中おから粉末を30質量部以上90質量部以下含むことを特徴とする被覆組成物である。
また、前記被覆組成物を使用したソフトドライタイプ又はセミモイストタイプのペットフードである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の被覆組成物を使用したソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードは嗜好性にすぐれベタつきが改善されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ソフトドライタイプのペットフードとは水分含量が25質量%以上35質量%以下の膨化したペットフードをいい、セミモイストタイプのペットフードは水分含量が25質量%以上35質量%以下の膨化していないペットフードをいう。
対象となるペットは犬又は猫である。
本発明の被覆組成物はエキス及びおから粉末を必須成分とし、これに必要に応じて色素、粉末油脂、pH調整剤、増粘剤などを使用することができる。
本発明において使用できるおから粉末は、粉末状のおからであれば製造方法などの限定はなく、市販されているおから粉末も使用することができる。
おから粉末は多孔質な性質を持つため、エキスによって外側に移行した水分を保持することができ、表面のべたつきを抑えることができる。
被覆組成物中のおから粉末の配合割合は30質量%以上90質量%である。
30質量%未満では効果が十分得られず表面がべたつく。
また、90質量%より多いと嗜好性の向上が見られない。
【0009】
本発明において使用する粉末エキスとしては、従来のペットフードに使用されている粉末状のエキスであれば特に限定はない。
例えば、鶏、カモ、うずら、七面鳥などの鳥類、牛、豚、馬、羊、ウサギなどを原料とした粉末状の畜類エキス、イワシ、マグロ、カツオ、サバ、タイ、ヒラメ、サケ、マス、カニ、エビ、イカ、タコなどを原料とした粉末状の魚介エキス、パン酵母、ビール酵母、トルラ酵母などを原料とした粉末状の酵母エキスなどを使用することが出来る。
【0010】
本発明の被覆組成物は粉末エキス、おから粉末及び必要に応じてその他副資材を混合することで得ることができる。
混合の方法は均一に混合できれば特に限定はなく、例えば、V型ミキサー、リボンミ
キサー等の通常の粉体混合機を使用することができる。
【0011】
本発明の被覆組成物をソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードに被覆する方法は、従来のドライタイプのペットフードに粉末エキスを被覆させる方法が使用できる。
例えば、ソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードと牛脂及び本発明の被覆組成物をドラムミキサーで攪拌して被覆することができる。
【実施例】
【0012】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1〜2]
とうもろこし41.0質量部、小麦粉13.8質量部、大豆粕12.0質量部、チキンミール16.0質量部、ブドウ糖10.5質量部、グリセリン5質量部、ミネラル1.7質量部を十分に混合した後、水20質量部を加えて、一軸押出機に供給して、140℃で混練してダイスから押し出し切断した後、室温で冷却し膨化したソフトドライフード(直径10mm、長さ10mm、水分活性 0.65)を製造した。
被覆組成物は粉末チキンエキスとおから粉末を表1に示す割合で混合し調製した。
横型ドラムミキサーで前記ソフトドライフードにあらかじめ70℃に温めておいた牛脂3質量部及び前記被覆組成物1質量部を攪拌しながら付着させて被覆した。
嗜好性試験は、20頭の犬を1頭ずつ分離して個々の犬舎に収容し、それぞれの犬に、前記被覆組成物で被覆したドッグフードと被覆していないドッグフードを別々の餌皿に同じ量で入れて午後2時から午後4時まで摂餌させる「二者択一」で行った。
同じ試験を2日間実施し摂取したドッグフードの全量に対するドッグフードの摂取量(質量%)の平均値を求めこれを嗜好性の評価指標とした。
べたつきの評価試験は、前記被覆組成物を被覆したソフトドライフードを常温で1時間放置後10名のパネラーにより以下の評価基準で行った。
[べたつき評価基準]
5点 非常に良い(サラサラしている)
4点 良い
3点 普通
2点 劣る
1点 非常に劣る(ベタつく)
結果を表1に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
嗜好性はおから粉末を20質量%以上70質量%以下含む場合が良好であった。
べたつきは、おから粉末を30質量%以上100質量%以下含む場合が良好であった。
結果として、おから粉末を30質量%以上90質量%以下含む場合が優れていた。
おから粉末を30質量%以上70質量%以下含む場合は特に優れていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトドライタイプやセミモイストタイプのペットフードに使用する粉末エキスを含む被覆組成物であって、被覆組成物中おから粉末を30質量部以上90質量部以下含むことを特徴とする被覆組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の被覆組成物を使用したソフトドライタイプ又はセミモイストタイプのペットフード。