説明

ペットフード製造方法およびペットフード

【課題】嗜好性がより高い主食用のペットフードを提供すること。
【解決手段】生肉類を粉砕して形成された生肉ペースト11が、固形の主食用素材10の表面にコーティングされ乾燥されて固形化され、ジャーキー風の高い嗜好性を有する主食用のペットフード20を実現している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主食用のペットフードの嗜好性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫に与える主食用のペットフードには、大別してウェット型とドライ型があり、ドライ型はコストの面や包装の容易さなどの点でウェット型に対して有利である。
【0003】
一般的に主食用のドライ型のペットフードは、ペットの成長に必要で栄養バランスを考慮した材料、即ち、肉類(肉粉、肉骨粉、副産物粉、生肉類)、穀類、油脂、その他粉末飼育原料、ビタミン剤、ミネラル剤等を混合し、加水、加熱して粒状に成形し、乾燥させて製造されている。
【0004】
また、上記のように製造されたものを主食用素材として、より嗜好性を向上させるために、その素材表面に香料や油脂を噴霧したり、肉粉末をふりかけて付着させたものもあった。
【0005】
例えば次の特許文献1には、ドラム型コーティング装置を用いて、ペットフードの粒状素材に粉状のビーフエキスを付着させる技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−113549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ペットのうち特に犬、猫の場合には、肉類に対する嗜好性が強く、素材表面に香料や油脂を噴霧したものでは飽きられてしまい、ペットの成長に欠かせない主食用としては不十分であった。
【0008】
また、上記特許文献1のように素材表面に粉状のビーフエキスを付着させるペットフードの場合、素材表面に付着した粉状のビーフエキスが舐め落とされてしまう場合が多く、それによって素材への嗜好性が低下し、よく食べず、前記同様にペットの成長に欠かせない主食用として不満があった。
【0009】
本発明はこの点を改善し、嗜好性がより高い主食用のペットフードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明のペットフード製造方法は、
生肉類を粉砕し生肉ペーストを形成する段階(S5、S6)と、
前記生肉ペーストを固形のペットフードの主食用素材表面にコーティングする段階(S7)と、
前記主食用素材表面にコーティングされた生肉ペーストを乾燥させる段階(S8)とを含んでいる。
【0011】
また、本発明の請求項2のペットフードは、
生肉類を粉砕して形成された生肉ペースト(11、11a、11b)が固形のペットフードの主食用素材(10)の表面にコーティングされ乾燥されて固形化されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3のペットフードは、請求項2記載のペットフードにおいて、
材料の異なる複数種類の生肉ペースト(11a、11b)が前記主食用素材の表面に多層コーティングされ乾燥されて固形化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明では、生肉類を粉砕して形成された生肉ペーストが固形のペットフードの主食用素材の表面にコーティングされ乾燥されて固形化されたものであるので、主食用素材表面が生肉ペーストの層で容易にはがれないように密着した状態で完全に覆われ、表面を舐めた程度では肉類の香りがなくなることがなく、ペットフード全体がジャーキー風となり、嗜好性が格段に向上し、ペットの成長に欠かせない主食用として望ましい。
【0014】
また、異なる材料で形成して生肉ペーストを多層にコーティングしたものでは、より一層嗜好性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した主食用のペットフードの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【0016】
始めにペットフードの固形の主食用素材(以下、単に素材と記す)を製造する(S1〜S4)。
【0017】
この素材としては、前記したように主食用であり、ペットの成長に欠かせない各種材料、例えば生肉類(生肉、生レバー)、穀類、生野菜類、生果物類、油脂類を、栄養バランスを考慮して所定の割合で混合層等で混合し(S1)、加熱調理して(S2)、成形機により食べやすい大きさ(例えば最大長10〜20mm程度)の粒状に成形し(S3)、所定時間乾燥させる(S4)ことで、例えば図2のような形状の素材10を得ている。なお、図示しないがこの素材の表面には、細かい無数の凹凸や穴が形成されているものとする。
【0018】
次に、この素材に対して生肉類のコーティングを行う(S5〜S7)。
このコーティングには、ミンサー、フードプロセッサー等により、生肉類を粉砕し(S5)、コーティングする部位などに応じた生肉類に対する重量比(例えば0〜100パーセント)の加水処理等を行い、コーティングに適した粘性の生肉ペーストを形成する(S6)。
【0019】
ここで使用する生肉類とは、可食部位の筋肉組織部分および内臓副産物全てを含み、下記のいずれかあるいはその組合せたものが使用可能である。
【0020】
・鶏肉(むね肉、もも肉、ささみ、その他可食肉部位)
・鶏副産物(レバー、砂肝、ハツ、その他可食肉部位)
・豚肉(ヒレ肉、ロース、かた肉、もも肉、ばら肉、その他可食肉部位)
・豚副産物(レバー、ハツ、その他可食肉部位)
・羊肉(ヒレ肉、ロース、かた肉、もも肉、ばら肉、その他可食肉部位)
・羊副産物(レバー、ハツ、その他可食肉部位)
・馬肉(ヒレ肉、ロース、かた肉、もも肉、ばら肉、その他可食肉部位)
・馬副産物(レバー、ハツ、その他可食肉部位)
・鹿肉(ヒレ肉、ロース、かた肉、もも肉、ばら肉、その他可食肉部位)
・鹿副産物(レバー、その他可食肉部位)
・カンガルー肉(ヒレ肉、ロース、かた肉、もも肉、ばら肉、その他可食肉部位)
・カンガルー副産物(レバー、ハツ、その他可食肉部位)
・ダチョウ肉(むね肉、もも肉、ささみ、その他可食肉部位)
・ダチョウ副産物(レバー、砂肝、ハツ、その他可食肉部位)
・家禽(むね肉、もも肉、ささみ、その他可食肉部位)
・家禽副産物(レバー、砂肝、ハツ、その他可食肉部位)
・その他食用となる肉類および副産物
【0021】
ただし、上記の生肉類の中で、嗜好性が高く、加水がほとんど不要で柔らかいペーストが得られるレバー類(鶏レバー、豚レバー、ラムレバー等)が望ましい。また、レバー類以外に鶏生肉も嗜好性が高く望ましい。
【0022】
次に、上記のようにして形成された生肉ペーストを、攪拌機などにより固形の素材10と混ぜ、素材10の表面に所定の厚さとなるようにコーティングする(S7)。ここで、生肉ペーストの内層側は素材表面の凹凸や穴に入り込む。前記したように、生肉ペーストの粘性は、予め素材10の表面の凹凸や穴に入り込みやすいようにしておく。
【0023】
そして、生肉ペーストが素材10の表面にコーティングされたものを乾燥機により、乾燥させる(S8)。
【0024】
この乾燥時には加熱処理も伴い、この加熱乾燥により、素材表面の凹凸や穴に入り込んだ生肉ペーストのタンパク質が固まり、図3のように固形の素材10の表面に生肉ペースト11の層が容易にはがれない程度にしっかりと密着した状態で形成されたペットフード20が完成する。
【0025】
なお、素材10と生肉ペーストの重量比の例として、素材1kgに対し鶏レバー(加水無し)の生肉ペースト約120gの割合を用いたもので必要十分な厚さにコーティングできることを確認している。他のレバー(加水無し)の場合でも同様の結果を得ており、加水無しのレバーによる生肉ペーストで、経済性等を考慮すれば、素材1kgに対して約100g〜200gまでの範囲で用いることが望ましいと思われる。
【0026】
このように、生肉類を粉砕して形成された生肉ペースト11が固形の素材10の表面にコーティングされ乾燥されて固形化されたペットフード20は、素材表面が生肉ペーストの層で容易にはがれないように密着した状態で完全に覆われているので、表面を舐めた程度では肉類の香りがなくなることがなく、主食用のペットフード20全体がジャーキー風となり、嗜好性が格段に向上し、飽きらせることなく、栄養バランスのとれた主食を与えることができ、ペットを健康的に成長させることができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、素材10の表面に所定の生肉ペースト11の層で覆った一層構造であったが、図4に示すように、異なる成分の複数(この例では2つ)の生肉ペースト11a、11bを用意しておき、生肉ペースト11aによるコーティング処理および乾燥処理が終わったものに対して、生肉ペースト11bによるコーティング処理および乾燥処理を繰り返し行い、図5のように風味の異なる生肉ペーストで多層(この例では2層だが3層以上でもよい)にコーティングされ乾燥されて固形化されたペットフード20′を形成することも可能であり、これにより嗜好性をさらに向上させることができる。
【0028】
なお、図5の2層コーティング型のペットフード20′において、嗜好性を向上させるための有効な生肉ペースト11a、11bの組合せとしては、以下の4つの例があげられる(ただしこの組合せは本発明を限定するものではない)。
【0029】
(1)一層目の生肉ペースト11aが鶏レバーで、二層目の生肉ペースト11bが鶏肉
(2)一層目の生肉ペースト11aが豚レバーで、二層目の生肉ペースト11bが鶏肉
(3)一層目の生肉ペースト11aが鶏レバーで、二層目の生肉ペースト11bが豚肉
(4)一層目の生肉ペースト11aが羊レバーで、二層目の生肉ペースト11bが鶏肉
【0030】
上記実施形態では、固形の素材10が、生肉類(生肉、生レバー)、穀類、生野菜類、生果物類、油脂類を適度な割合で混合して形成していたが、素材10の原料については上記例にかぎらず、ペットの成長に必要な各種栄養を考慮したものであればよく、従来の主食用の固形のペットフードそのものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のペットフードの製造方法例を示すフローチャート
【図2】ペットフードの製造方法を説明するための図
【図3】本発明の実施形態の単層コーティングされたペットフードの断面図
【図4】本発明のペットフードの別の製造方法例を示すフローチャート
【図5】本発明の実施形態の多層コーティングされたペットフードの断面図
【符号の説明】
【0032】
10……主食用素材、11、11a、11b……生肉ペースト、20、20′……ペットフード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生肉類を粉砕し生肉ペーストを形成する段階(S5、S6)と、
前記生肉ペーストを固形のペットフードの主食用素材表面にコーティングする段階(S7)と、
前記主食用素材表面にコーティングされた生肉ペーストを乾燥させる段階(S8)とを含むペットフード製造方法。
【請求項2】
生肉類を粉砕して形成された生肉ペースト(11、11a、11b)が固形のペットフードの主食用素材(10)の表面にコーティングされ乾燥されて固形化されたことを特徴とするペットフード。
【請求項3】
材料の異なる複数種類の生肉ペースト(11a、11b)が前記主食用素材の表面に多層コーティングされ乾燥されて固形化されたことを特徴とする請求項2記載のペットフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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