説明

ペットフード

【課題】消化性が高く、バランスのとれた栄養成分とビタミン等に富み、嗜好性が改善され、好ましい食感・外観等を有するペットフードを提供すること。
【解決手段】焙煎処理された玄米を中心核とし、砂糖水をバインダーとしてこの中心核の周囲を動物性蛋白及び小麦粉を主成分とする外殻でコーティングする。このバインダーを用いたコーティング処理を3〜5回繰り返し、動物性蛋白及び小麦粉を主成分とする外殻を多層に被覆した多層構造の犬、猫等用のペットフードを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフードに関し、より詳細には、玄米含有物を中心核とし、その周囲に動物性蛋白及び小麦粉含有物を被覆する、多層構造のペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、犬、猫などのペット数は子供の数を超えるといわれる程、多くの人がペットを飼っている。そして、ペットの種類、年齢、体格、健康状態、飼育する環境等に応じ、ペットフードは、様々なものが出回り、特に栄養面でのバランス、嗜好性、外観(形状、サイズ)、コスト等の観点から種々の工夫がなされている。
【0003】
ペットフードとして、水分含有量によりウェットタイプ、セミモイストタイプ、ドライタイプ等があり、ドライタイプのものとして、コア部分と外層からなり、味を変化させてペットの嗜好に合わせ、或いは、種々の栄養成分を組み合わせたペットフードが知られている。
【0004】
例えば、栄養分のある物質で形成された多数の小片を含む動物用食品において、前記各小片は風味のよりよい食用物質からなる芳香被覆で実質的に被覆されており、更に、該被覆へは予備調理を施した食肉、家禽肉又は魚からなる風味添加粒子又はその混合物が付着されている動物用食品(例えば、特許文献1参照)や、油脂を吸着している多孔質の芯部材と、該芯部材を被覆している油脂中間層と、該油脂中間層の外側に付着している変性しやすい成分の粉末層と、その外側に付着している多糖類を主成分とする最外層とからなるドライタイプのペットフード(例えば、特許文献2参照)や、粒状物を内部に包含し、該粒状物が外層で被覆されている、歯切れの良い食感を有するドライペットフード(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0005】
また、玄米を用いたペットフードとしては、少なくとも、焙煎した後、粉末化した玄米全粒を含む穀物群を含有するペットフード(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0006】
一方、焙煎処理された玄米粒を中心核と、この中心核の周囲を覆い動物性蛋白及び小麦粉を主成分とする外殻を有するペットフードは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56−78565号公報
【特許文献2】特開昭62−296847号公報
【特許文献3】特開2000−60443号公報
【特許文献4】特開2003−144060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ペットフードの原材料として、ヒトが利用する植物質や動物質のものの他、様々な業種から出される副産物・廃棄物が利用されている。現代社会において、運動不足などから健康志向の食品が種々販売され、利用されていることは、ペットフードにおいても同様の傾向がある。ビタミン、ミネラル、食物繊維が白米より豊富に含まれている玄米を食することはヒトにとっては珍しいことではないが、その利用に当たり消化性や嗜好性において工夫がなされている。ペットフードにおいても玄米を原料として用いる場合、同様に前述の問題がある。従来、ペットフードとしては玄米を粉末化して利用されていた。しかしながら、粉末化した玄米を用いるペットフードは、他の粉末原料とともに混練成形することにより製造され、外観や形態ともに目新しいものではないものとなる。本発明の課題は、消化性が高く、バランスのとれた栄養成分とビタミン等に富み、嗜好性が改善され、好ましい食感・外観等を有するペットフードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
玄米に含まれる成分を具体的にみると、その胚芽部に粗タンパク、脂肪、ビタミンA、B1、B2、B6、B12、E、パントテン酸、葉酸、各種ミネラルなど、健康に欠かせない栄養素や、癌の抑制効果があるとされるナイアシンが含まれている。
本発明者らは、ペットフードにおいて、玄米の含有成分を生かし、かつ、他の蛋白や小麦粉等と組み合わせて、嗜好性を減ずることなく、かつ容易に製造し得るべく、鋭意検討した結果、従来では玄米を粉末化して利用していたところ、粉末工程を省き、玄米を焙煎処理し、該焙煎処理した玄米を中心核にし、この中心核の周囲を、動物性蛋白及び小麦粉を含む外殻とすることで、外殻に種々の風味成分を層状に形成したペットフードが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(1)玄米を含む中心核と、この中心核の周囲を覆い、動物性蛋白及び小麦粉を主成分とする外殻とを有することを特徴とするペットフードや、(2)玄米が、焙煎処理された玄米であることを特徴とする前記(1)記載のペットフードや、(3)中心核が、5〜10質量%であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のペットフードや、(4)外殻が、バインダーを用いて多層に形成されていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のペットフードに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、中心核に焙煎した玄米を使用することにより、消化性が高く、各種ビタミン、パントテン酸、葉酸、各種ミネラルの摂取を容易にし、外殻にタンパク質や炭水化物、及び嗜好成分の使用により、また、外殻を風味豊かな多層とすることにより、総合的にバランスのとれた、ペットに好まれるペットフードとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のペットフードとしては、玄米を含む中心核と、この中心核の周囲を覆い、動物性蛋白及び小麦粉を主成分とする外殻とを有するものであれば特に制限されるものでなく、上記中心核(コア)としては玄米を含むものであれば特に制限されず、玄米のみからなるものの他、適宜任意成分を含むものであってもよい。かかる任意成分として、麦粒、ナッツ、ドライフルーツ、トウモロコシ、大豆等を挙げることができる。
【0013】
また、中心核に含まれる玄米としては、焙煎、炊飯、蒸煮等のα化した玄米粒が好ましく、焙煎処理された玄米がより好ましい。焙煎処理により、玄米の香りが増し、消化がよくなり、表面加工性が向上し、ペットの嗜好性を向上させることができる。このように、中心核には、ほぼ1粒の焙煎玄米粒を用いることが好ましい。玄米の焙煎処理は、例えば、玄米を水に浸漬後、120〜140℃で30〜50分間乾燥した後、250〜350℃で色調が全体に変化する程度(焦がさない程度)炒る。
【0014】
中心核の周囲を覆う外殻としては、動物性蛋白及び小麦粉を主成分とするものであり、ここで「主成分」とは、当該成分(動物性蛋白及び小麦粉)の量が50質量%以上、好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であることを意味する。かかる外殻は通常バインダーを用いて層状にコーティングされるが、中心核/バインダー1/外殻1/バインダー2/外殻2/バインダー3/外殻3・・・と多層、好ましくは3〜5層に形成することが、複数種類の風味・呈味付け、サクサク感等の食感の向上、表面の艶、物理的強度向上等の理由で好ましい。かかるバインダーとしては、砂糖、水飴、はちみつ、黒糖、メープルシロップ等の糖質の他、体温付近の温度で溶融状を呈し常温付近の温度で固体状を呈する油脂組成物を用いることもできる。
【0015】
上記動物性蛋白としては、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉等を原料とする肉粉、鰹節粉、チダイなどの魚粉、ホタテなどの貝類粉末を挙げることができる。また、小麦粉としては、薄力粉や中力粉を好適に挙げることができる。動物性蛋白と小麦粉とは、5:95〜50:50、好ましくは10:90〜30:70、より好ましくは15:85〜25:75の割合(質量比)で混合することができる。さらに動物性蛋白及び小麦粉を主成分とするものに、任意成分として、寒梅粉、ライ麦粉、マイカ粉、大麦粉、トウモロコシ粉、小麦胚芽、米糠油粕、米糠、海藻、魚油、オリーブ油、ゴマ、大豆油粕、牛脂、ラード、大豆等の動植物性油脂、ふすま等の食物繊維、野菜由来成分、糖蜜、砂糖、乳糖、オリゴ糖等の糖類、ビタミン、ミネラル等の微量栄養成分、多価アルコール、重曹、骨粉、水等を配合することができる。また、外殻の最外層表面には、好ましくは、猫、犬等の種類別、年齢、季節により選択される種々の嗜好性物質(香辛料)を付着させることが好ましい。
【0016】
中心核は、ペットフードの3〜30質量%、好ましく5〜10質量%、より好ましくは7〜9質量%とすることが、風味・呈味や食感の点で望ましい。また、本発明のペットフードの大きさ(粒径)は特に制限されないが、5〜15mm、好ましくは7〜11mmを例示することができる。
【0017】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。なお、配合割合は、質量%であるが、単に「%」で表わす。
【実施例1】
【0018】
(焙煎玄米の製造方法)
籾殻を有する米を精米し、玄米を得る。玄米4kgを水に30〜90分浸漬し、130℃で、40分乾燥した。乾燥後、玄米を焙煎機に供給して300℃で焙煎し、玄米の色を見ながら、焦げない程度に香ばしい匂いが出てきたら加熱を止め、50℃に冷却し、さらに室温となるように放冷した。一定の顆粒を得るため、篩にかけた。
【0019】
(焙煎玄米核を有するペットフードの製造方法)
焙煎処理し、一定の粒度を有する玄米1.5kgを加熱装置が付いたパン(鍋)に投入し、800gの砂糖水(バインダー液50℃、60%濃度,以下同じ)を振りかけながら撹拌し、焙煎玄米の表面に砂糖を付着させた。次に、小麦粉(薄力粉)2kgを振りかけながら撹拌して、小麦粉を焙煎玄米の表面に付着させた。小麦粉の表面に再び砂糖水800gを振りかけて撹拌して、砂糖水を付着させた。次に、混合粉(小麦粉60%、寒梅粉10%、ホタテ30%)2kgを振りかけて表面に付着させた。さらに、砂糖水800gを振りかけながら撹拌して、砂糖水を付着させた。次いで、かつお節粉3kgを振りかけながら撹拌して表面に付着させた。次に砂糖水800gを振りかけながら撹拌して砂糖水を付着させた後、表面に混合粉(小麦粉50%、嗜好物質50%)4kgを付着させた。次に篩にかけて、未付着の粉体を除去した後、180℃で15分焼成した。焼成後、室温まで放冷し、放冷後顆粒を一定の目の篩にかけて選別して、4層構造の6.7×8.6mmの長球状の猫用ペットフード14.5kgを製造した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄米を含む中心核と、この中心核の周囲を覆い、動物性蛋白及び小麦粉を主成分とする外殻とを有することを特徴とするペットフード。
【請求項2】
玄米が、焙煎処理された玄米であることを特徴とする請求項1記載のペットフード。
【請求項3】
中心核が、5〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載のペットフード。
【請求項4】
外殻が、バインダーを用いて多層に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のペットフード。